【実施例1】
【0012】
図1ないし
図6は本発明の実施例1に係るオープンカーの側部車体構造を説明するための図であり、本実施例において、前,後,左,右とは車室内から車両前方を見た状態での前,後,左,右を意味している。
【0013】
図において、1はオープンカーであり、該オープンカー1の骨格は以下の構成となっている。車幅方向左,右両側に車両前後方向に延びる左,右一対のロッカメンバ2,2が配設され、該左,右のロッカメンバ2,2の前端部同士,後端部同士はフロントクロスメンバ(不図示),リヤクロスメンバ4(
図3参照)で結合され、該両クロスメンバとロッカメンバ2上にフロントフロアパネル3が配設されている。また、前記ロッカメンバ2の前端部には上方に延びるフロントピラー5の下端部が結合され、後部には上方に延びるセンタピラー(ピラー部材)6の下端部が結合されている。このフロントピラー5,センタピラー6及び前記ロッカメンバ2によりドア開口部aが形成され、該ドア開口部aにはドア13が配設されている。また前記フロントピラー5の高さ方向中途部には前方に延びるアッパメンバ8の後端部が結合されており、また前記センタピラー6の上端部には後方に延びるクォータメンバ(クォータ部材)7の前端部が結合されている。このクォータメンバ7の前後方向中途部と前記ロッカメンバ2の後端部とには、後上がりに傾斜配置された補強メンバ9が結合されている。
【0014】
なお、11は前輪,12は後輪であり、前記各骨格構成部材は、樹脂製のフェンダパネルパネル10a,サイドパネル10b,リヤパネル10c等からなる外装パネルにより覆われており、また車室の上方には天井パネル10dが開閉可能に配設されている。
【0015】
前記ロッカメンバ2は、ロッカアウタ2aとロッカインナ2bとを中空状をなすようにそのフランジ部2c,2dを結合してなり、車両前後方向に延びる筒状のものである。
【0016】
前記センタピラー6は、ピラーアウタ6aとピラーインナ6bとを中空状をなすようにそれぞれのフランジ部6c,6dを溶接結合してなり、上下方向に延びる筒状のものである。前記ピラーインナ6bの下端部6b′は、前記ロッカメンバ2のロッカアウタ2aとロッカインナ2bの間に挿入され、該ロッカメンバ2に溶接結合されている。
【0017】
前記ロッカインナ2bの棚部2b′には前記フロアパネル3の一部を構成するサイド部3aが固定されている。該サイド部3aは車幅方向内側に斜め上方に傾斜しており、該サイド部3aの上面には台座3bが固定されており、下面には車両前後方向に延びるサイドメンバ7′が結合され、該サイドメンバ7′の内側には車幅方向に延びるリヤクロスメンバ4が固定されている。このリヤクロスメンバ4は前記台座3b,サイド部3aを介して前記サイドメンバ7′に結合されている。
【0018】
そして前記センタピラー6の下部内には、板金製のバルク部材14が配設されている。該バルク部材14はバルク本体14aと外側フランジ部14b,内側フランジ部14cからなる断面略コ字形状をなしている。前記外側フランジ部14bは前記ピラーアウタ6aに溶接固定され、前記バルク本体14aは車幅方向に水平に配置されている。
【0019】
また前記ピラーインナ6bの車室内側には、板金製のブレース部材15が配設されており、該ブレース部材15は下方に開口する横断面略コ字形状のブレース本体15aと、これの外側端部に上方に折り曲げ形成されたフランジ部15bとを有する。このフランジ部15bは前記ピラーインナ6b及び補強プレート6eを挟んで前記バルク部材14の内側フランジ部14cに対向配置され、4枚重ねでボルト20fにより締め付け固定されている。また前記ブレース本体15aは前記バルク本体14aと同じ高さに、かつ車幅方向に水平に配置されている。さらにまた、前記ブレース本体15aの車幅方向内側端部15cは前記台座3bの上面に溶接固定されており、これによりブレース本体15aと台座3bとの結合部bが構成されている。
【0020】
そして前記左,右のセンタピラー6,6間にはロールバー装置26が配設されている。このロールバー装置26は上クロスバー16及び下クロスバー17を備えている。
【0021】
前記上クロスバー16は、丸パイプ製で車幅方向に延びる上クロスバー本体16aと、同じく丸パイプ製で該上クロスバー本体16aの左,右端部に固定されて下方に延びる脚部16bとを有する。前記上クロスバー本体16aには丸パイプを逆U字形状に折り曲げてなる左,右一対のロールバー16cが配置固定されている。このロールバー16cは車両転倒時に車体を支えることにより、乗員の頭部に路面からの衝撃が作用するのを阻止するように機能する。
【0022】
前記脚部16aの上端部にはシートベルトアンカー27が固定されている。図示しないリトラクタから導出されたウェビングを前記シートベルトアンカー27に通し、該ウェビング先端のタングをシートクッション近傍に配置されたバックルに着脱可能に係止させることとなる。車両衝突時には乗員の慣性力が前記シートベルトアンカー27ひいては前記脚部16aに前方向の大きな荷重として作用する。
【0023】
前記脚部16bの下端部16b′にはフランジ16dが固定され、該フランジ16dは、前記ブレース部材15のブレース本体15aと台座3bとの結合部bに3枚重ねでボルト20eにより締め付け固定されている。なお、前記フランジ16dを前記結合部bに溶接により固定しても勿論構わない。
【0024】
前記下クロスバー17は、車幅方向に延びる角パイプ製の下クロスバー本体18と、これの左,右端部に固定された取付けブラケット19,19とを有し、該ブラケット19が前記センタピラー6に固定されている。ここで下クロスバー本体18は前記上クロスバー16の上クロスバー本体16aより下方かつ少し前方に配置されている。
【0025】
前記取付けブラケット19は、前側プレート19aと後側プレート19bとで構成された前後二分割構造のもので、前記脚部16bの中途部を固定支持する脚固定部19cと、前方に折り曲げ形成され、前記センタピラー6の中途部に固定されるフランジ部19dとを有する。前記前側,後側プレート19a,19bの基部19a′,19b′は前記下クロスバー本体18の外端部を前後から挟持してボルト20aにより締め付け固定されている。また前記前側,後側プレート19a,19bの、前記脚部16b外側部分はボルト20bにより該脚部16bを締め付け固定している。
【0026】
そして前記フランジ部19dは、前記センタピラー6のピラーインナ6bを挟んで該センタピラー6内に配置された補強部材21の内側壁22aにボルト20d,ウェルドナット20d′により締め付け固定されている。
【0027】
前記補強部材21は、車両前後方向前側に配置された第1コ字形プレート22と、後側に配置された第2コ字形プレート23とからなる平面視ボックス形状をなしている。該第2コ字形プレート23は前記第1コ字形プレート22の内側,外側壁22a,22b間に重ねて配置されている。
【0028】
前記第1コ字形プレート22は、車両前方に向いた前壁22cと、車幅方向内側,外側に向いた前記内側壁22a,外側壁22bとを有する。また第2コ字形プレート23は車両後方に向いた後壁23cと、車幅方向内側,外側に向いた内側壁23a,外側壁23bとを有する。前記第1コ字形プレート22の内側壁22aの後端部,外側壁22bの中途部と第2コ字形プレート23の内側壁23a,外側壁23bとが結合され、これにより平面視で前記ボックス形状が構成されている。この補強部材21は、前記ピラーインナ6bとピラーアウタ6aとに架け渡して固定されている。
【0029】
前記ピラーインナ6bの、前記第1コ字形プレート22の内側壁22aに対向する部位にロールバー装置26の下クロスバー17が取り付けられており、また前記第1コ字形プレート22外側壁22bの後端部22b′は後方に延長され、前記クォーターパネル7の前端部7aに溶接固定されている。
【0030】
さらにまた、前記第1コ字形プレート22の前壁部22cの前面には、係止プレート24が固定されている。この係止プレート24はL字形状のもので、そのコーナ部には凸部24aが前方に突出するように形成されている。この係止プレート24は、前記ドア13のベルトラインに配設されたベルトラインリインホース25の後端部25aに対向するように配置されており、詳細には前記凸部24aが前記後端部25aより少し車幅方向外側に位置している。
【0031】
ここで前記係止プレート24は、前突時の衝突荷重によりドア13が後方移動した際に車幅方向外側に開いてしまうのを、前記凸部24aに前記ベルトラインリインホース25の後端部25aを係止させることにより阻止するように機能する。
【0032】
本実施例によれば、側突時に前記下クロスバー17付近に作用する衝突荷重F2は、
図3に示すように、下クロスバー17及び上クロスバー16に伝達される(矢印B1,B1′参照)とともに、その一部は前記脚部16bを介して前記フロアパネル3に伝達される(矢印B2参照)。
【0033】
前記側突時の衝突荷重F2,前突時の衝突荷重F3及びシートベルトアンカー27からの荷重の伝達経路を、
図4に沿ってより詳細に説明する。
【0034】
前記センタピラー6の比較的上部に作用した前記側突荷重F2は、前記補強部材21の前壁22c,後壁23cの2面を介してロールバー装置26の下クロスバー17に伝達される(
図4の矢印f1,f1′参照)。
【0035】
またドア13のベルトラインリインホース25を介して入力された前突荷重F3は、前記補強部材21の前壁22cから内側壁22a,外側壁22bに分散されて伝達され(
図4の矢印f2参照)、さらに外側壁22bへの分散荷重はクォータメンバ7に伝達され(同図矢印f2′参照)、内側壁22aの分散荷重はロールバー装置26の下クロスバー17に伝達される(矢印f2′′参照)。さらにシートベルトアンカー27からの車両前方への荷重は、前記補強部材21の内側壁22aに伝達される(矢印f4参照)。
【0036】
このように本実施例では、センタピラー6内にボックス形状の補強部材21をピラーインナ6bとピラーアウタ6aに架け渡すように配設したので、補強部材21の大型化,厚肉化を来すことなくあらゆる方向の荷重を受け止めると共に、車体構成部材に効果的に伝達でき、乗員保護を図ることができ、コスト,車両重量が増大したり生産性が悪化したりすることもない。
【0037】
また、本実施例では、フロアパネル3の台座3bに結合されたブレース部材15とセンタピラー6内に配設されたバルク部材14とを、そのバルク本体14a及びブレース本体15aが車幅方向に略水平をなすように、つまり直線をなすように配設したので、車両側突時に下クロスバー17より下方に作用する衝突荷重F1はバルク部材14からブレース部材15を経てフロアパネル3に略直線的に伝達される(
図3の矢印A1参照)。
【0038】
また下クロスバー17に固定された脚部16bの下端部16b′をブレース部材15とフロアパネル3との結合部bに固定したので、前記バルク部材14からブレース部材15に直線的に伝達された側突荷重F1の一部は前記脚部16bから下クロスバー17さらには上クロスバー16にも伝達される(矢印A2参照)。
【0039】
このようにして側突荷重F1,F2を、フロアパネル3及び下クロスバー17,上クロスバー16に分散させて伝達することができ、その結果、車体側部の車内側への変形進入量を効果的に抑制できる。
【0040】
ここで本実施例では、バルク部材14とブレース部材15とを車幅方向に略水平に配置するとともに、下クロスバー17に固定された脚部16bの下端部16b′をブレース部材14とフロアパネル3との結合部b近傍に固定することにより前記作用効果を実現しているので、バルク部材14,ブレース部材15の大型化、厚肉化の必要がなく、コスト,車両重量の増大を回避でき、生産性を改善できる。