【実施例1】
【0013】
図1ないし
図5は本発明の実施例1に係る自動車のワイパ装置取付け構造を説明するための図であり、本実施例において、前,後,左,右とは、車室内から車両前方を見た状態での前,後,左,右を意味している。
【0014】
図において、1は自動車でのワイパ装置である。このワイパ装置1は、ピボットシャフト2を軸支する左,右一対のピボットホルダ3,3をフレーム4で連結し、該フレーム4にモータ5を固定すると共に、該モータ5の出力をリンク機構6を介して前記ピボットシャフト2,2に伝達するように構成されている。
【0015】
前記ピボットホルダ3は、大略三角形状をなす厚板製のものであり、その底辺部寄りに筒部3aが上下に貫通するように配置固定され、該筒部3a内に前記ピボットシャフト2が回動可能に挿入配置されている。また前記ピボットホルダ3の頂角寄り部分には取付け孔3bが上下に貫通するように形成されている。
【0016】
前記フレーム4は棒状のものであり、その両端部4a,4aが前記ピボットホルダ3,3に溶接固定されており、その中央部にモータ取付け座4bが形成されている。
【0017】
前記モータ5は、モータ本体5aとこれに結合された減速機構5bとからなり、該減速機構5bに設けられた取付け片5c,5cが前記モータ取付け座4bにボルト5dで締め付け固定されている。
【0018】
前記リンク機構6は、前記減速機構5bの出力軸5eに固定された揺動アーム5fに連結されたリンクロッド6a,6aと、該各リンクロッド6aに連結された駆動アーム6bとを有し、該駆動アーム6bは前記ピボットシャフト2の下端に固定されている。
【0019】
そして前記減速機構5bの前壁部には、支持ピン5gが前方に突出するように形成されており、該支持ピン5gにはゴムブッシュ12が嵌合装着されている。このゴムブッシュ12は、支持ピン5gが嵌合する嵌合孔12aを有する円筒体に環状のスリット溝12bを形成してなるものである。
【0020】
前記ワイパ装置1は、
図2に示すように、ウインドシールド7の下端部7aの前側にて車幅方向に延びるように配設された樹脂製のカウルルーバー8の下方に配設されている。該カウルルーバー8の前縁部8aはエンジンルームを開閉するフード9の後端部下方に位置し、カウルインナ10の前縁部10aに支持されている。このカウルインナ10は板金製で、前壁部10b,底壁部10c及び後壁部10dを有する横断面凹状をなし、車幅方向に延びている。
【0021】
前記カウルインナ10の後壁部10dにはワイパ装置1の後部を取り付けるための棚部10d′が形成されている。該棚部10d′に前記ピボットホルダ3が載置され、前記取付け孔3bにボルト13aを挿通し、該棚部10d′の裏面に固定されたナット13a′に締め付けることにより前記ワイパ装置1の後部が固定されている。前記ピボットシャフト2は前記カウルルーバー8のウインドシールド7近傍部分にて上方に突出し、該突出端部にワイパアーム(図示せず)が固定される。
【0022】
また前記カウルインナ10の前壁部10bの高さ方向中途部には、該前壁部10bを屈曲部bから前方に屈曲させることによりブラケット取付け面10eが形成されている。このブラケット取付け面10eに前記取付けブラケット11が取付けられており、該取付けブラケット11の支持孔11dに前記ゴムブッシュ12を介在させて前記支持ピン5gが支持されている。
【0023】
前記取付けブラケット11は、モータ取付け面11aと、該モータ取付け面11aの左,右縁部から車両前方に折り曲げ形成された左,右の脚部11b,11bを有し、さらに前記脚部11bの前端縁から車幅方向外側に折り曲げ形成されたフランジ部11c,11cを有する。
【0024】
前記取付けブラケット11のモータ取付け面11aは後述の前後方向直線Bに直交するように形成されている。そしてこのモータ取付け面11aには、前記ゴムブッシュ12の環状のスリット溝12bが嵌合される前記支持孔11dが形成されており、さらに該支持孔11dを下方に開放させる切欠き部11eが形成されている。前記ゴムブッシュ12の組付け作業では、前記スリット溝12bを前記切欠き部11e内を通して上方に押し込み、前記支持孔11dに圧入嵌合させることとなる。
【0025】
ここで前記カウルインナ10の前壁部10bの屈曲部bは、下記位置に配置されている。即ち、
図2,
図5に示すように、前記屈曲部bは、前記各ピボットホルダ3,3の前記棚部10d′への後部固定点a,aを結ぶ後部固定直線Aに直交し、前記支持ピン5gの前記取付けブラケット11への前部固定点cを通る前後方向直線B上に位置している。また、前記前壁部10bの前記ブラケット取付け面10eは前記前後方向直線Bと直交するように形成されている。そして、前記取付けブラケット11は、前記脚部11bの下端11b′ひいてはフランジ部11cの下端が前記屈曲部bに一致するように位置合わせされ、該フランジ部11cが前記ブラケット取付け面10eに複数のスポット打点wにおいてスポット溶接により固定されている。
【0026】
本実施例によれば、車両正面衝突時に何らかの被衝突物、例えば歩行者がカウルルーバー8上に落下する等により上方から衝撃荷重Fが該カウルルーバー8に作用した場合、前記カウルインナ10の前壁部10bは、これの前縁部10aがカウルルーバー8の前縁部8aに押されることで前記屈曲部bを回動中心として前方に倒れ込むように変形する。この変形に連動して前記取付けブラケット11は、前記モータ取付け面11aと前記支持ピン5gとの前部固定点cが前記屈曲部bを中心にして半径R1の円弧を描くように上方に回動するため、前記支持孔11dの切欠き部11eが前記支持ピン5gひいてはゴムブッシュ12のスリット溝12bに対して相対的に上方に移動することとなり、該支持ピン5gと共にゴムブッシュ12が支持孔11dから外れる。
【0027】
一方、前記モータ5は、前記衝撃荷重Fによりカウルルーバー8越しに直接下方に押され、前記前部固定点bが前記後部固定直線Aを回動中心として半径R2の円弧を描くように車両下方に回動しようとするので、前記支持ピン5gはゴムブッシュ12と共に前記支持孔11dの切欠き部11eを通って下方に外れる。
【0028】
このように前記取付けブラケット11の支持孔11d部分が、前記屈曲部bを中心とする半径R1で回動する回動円弧R1′の接線C1と、前記モータ5の支持ピン5gが、前記後部固定直線Aを中心とする半径R2で回動する回動円弧R2′の接線C2とが同一直線をなすように前記取付けブラケット11及びモータ5が回動するので、前記支持ピン5gがゴムブッシュ12と共に取付けブラケット11の支持孔11dから前記衝撃力Fの入力時に迅速に、かつ容易確実に外れ、モータ5を下方に回動脱落させることができ、前記衝撃荷重Fを確実に緩和させることかでき、歩行者保護性能を向上できる。
【0029】
前記作用効果を、ワイパ装置1の、前記後壁部10dの棚部10d′への後部固定点a、取付けブラケット11のモータ取付け面11aの角度、モータ5の支持ピン5gのモータ取付け面11aへの前部固定点c、カウルインナ10の前壁部10bの屈曲部bの位置、及び取付けブラケット11の取付け位置を工夫するだけで実現できるので、別途複雑な座屈構造を採用する必要がなく、また通常のワイパ作動に支障が生じることもなく、コスト,重量増加や生産性悪化の問題が生じることもない。
【0030】
なお、前記実施例では、ブラケット取付け面10eが前後方向直線Bに直交している場合を説明したが、このブラケット取付け面10eは必ずしも前後方向直線Bと直交しなくても良く、直交状態からさらに前方に屈曲していても良い。
【0031】
また、前記実施例では、取付けブラケット11のモータ取付け面11aが前記後部固定直線Aに直交する前後方向直線Bに直交している場合、つまり
図2に示す側面視及び
図5に示す平面視の両方においてモータ取付け面11aが前後方向直線Bに直交している場合を説明したが、本発明のモータ取付け面11aは、前記後部固定直線A方向に見たとき、前記前後方向直線Bに直交していれば良い。例えば、前記モータ取付け面11aは、平面視では、
図5に二点鎖線で示すように車両前後方向に少し傾斜していても良い。
【0032】
また前記実施例では、取付けブラケット11の下端部11b′を前記屈曲部bに一致させたが、本発明の取付けブラケットは、これの下端部を、前記屈曲部bから下方にオーバーハングさせても良いし、逆に上方に位置させても良い。