【文献】
Determination of micro-litre volumes with high accuracy for flow cytometric blood cell counting,Meas Sci Technol,2010年,Vol.21 No.7 Page.074006,1-9
【文献】
Microfluidic structures for flow cytometric analysis of hydrodynamically focussed blood cells fabricated by ultraprecision micromachining,Lab on a chip,2009年,Vol. 9, No. 7, pp. 972-81
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施の形態は、血液に関する検査および分析を行うための血球分析装置とその光照射光学系に本発明を適用したものである。以下、本実施の形態に係る血球分析装置について、図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本実施の形態に係る血球分析装置1の外観を示す斜視図である。
【0023】
血球分析装置1は、血液検体に含まれる白血球、赤血球、血小板等を検出し、各血球を計数する多項目血球分析装置である。血球分析装置1は、測定ユニット2と、測定ユニット2の前面側に配置された搬送ユニット3と、情報処理ユニット4とを備えている。患者から採取された末梢血である血液検体は、検体容器(採血管)Tに収容される。複数の検体容器TがサンプルラックLに支持され、このサンプルラックLが搬送ユニット3により搬送されて、血液検体が測定ユニット2へ供給される。
【0024】
情報処理ユニット4は、表示部41と入力部42を備えており、測定ユニット2と、搬送ユニット3と、ホストコンピュータ5(
図2参照)に対して、通信可能に接続されている。情報処理ユニット4は、測定ユニット2と搬送ユニット3の動作を制御し、測定ユニット2で行われた測定結果に基づいて解析を行い、解析結果をホストコンピュータ5(
図2参照)に送信する。情報処理ユニット4は、パーソナルコンピュータからなっている。
【0025】
図2は、測定ユニット2の構成を模式的に示す図である。
【0026】
測定ユニット2は、ハンド部21と、検体容器セット部22と、バーコードユニット23と、検体吸引部24と、試料調製部25と、検出部26とを備えている。検体吸引部24は、ピアサ24aを備えており、検体容器Tから検体を吸引する。試料調製部25は、混合チャンバMCとヒータHを備えており、検体に試薬または希釈液を混和することにより測定に用いられる測定試料を調製する。検出部26は、光学検出器Dを備えており、測定試料から血球を検出する。測定ユニット2の各部は、情報処理ユニット4からの指示に基づいて制御される。
【0027】
搬送ユニット3により位置P1に位置付けられた検体容器Tは、ハンド部21により把持され、サンプルラックLから上方向に抜き出される。そして、ハンド部21が揺動されることにより、検体容器T内の検体が撹拌される。攪拌が終了した検体容器Tは、ハンド部21により、位置P1に位置付けられた検体容器セット部22にセットされる。しかる後、この検体容器Tは、検体容器セット部22により位置P2まで搬送される。
【0028】
検体容器Tが位置P2に位置付けられると、位置P2の近傍に設置されたバーコードユニット23により、検体容器Tに貼付されたバーコードラベルから検体番号が読み取られる。しかる後、この検体容器Tは、検体容器セット部22により位置P3まで搬送される。検体容器Tが位置P3に位置付けられると、検体吸引部24によりピアサ24aを介して検体容器Tから所定量の検体が吸引される。検体の吸引が終了すると、この検体容器Tは、検体容器セット部22により前方に搬送され、ハンド部21により元のサンプルラックLの支持位置に戻される。ピアサ24aを介して吸引された検体は、ピアサ24aが混合チャンバMCの位置へ移送された後、検体吸引部24により混合チャンバMCに所定量だけ吐出される。
【0029】
試料調製部25は、第1試薬を収容する容器251と、第2試薬を収容する容器252と、希釈液を収容する容器253に、チューブを介して接続されている。また、試料調製部25はコンプレッサ(図示せず)に接続されており、このコンプレッサにより発生される圧力により容器251〜253から、それぞれ、第1試薬と、第2試薬と、希釈液を分取することが可能となっている。第1試薬と第2試薬を用いる場合、試料調製部25は、混合チャンバMC内で、血液検体と試薬とを混合し、この混合液を所定時間だけヒータHにより加温して、測定試料を調製する。第1試薬と第2試薬を用いない場合、試料調製部25は、混合チャンバMC内で、血液検体と希釈液とを混合して、測定試料を調製する。なお、第1試薬と第2試薬を用いない場合でも、適宜、混合液を加温しても良い。試料調
製部25で調製された測定試料は、検出部26の光学検出器Dに供給される。
【0030】
なお、第1試薬は、核酸を染色可能な蛍光色素を含有し、第2試薬で処理された血液試料中の有核細胞の核酸を蛍光染色するための試薬である。第2試薬は、赤血球を溶血させ、白血球の細胞膜に上記の蛍光色素が透過できる程度の損傷を与えるための試薬である。
【0031】
検出部26は、シース液を収容する容器261に、チューブを介して接続されている。また、検出部26はコンプレッサ(図示せず)に接続されており、このコンプレッサにより発生される圧力により容器261からシース液を分取することが可能となっている。
【0032】
図3(a)、(b)は、光学検出器Dの光学系の構成を模式的に示す図である。便宜上、
図3(a)には、互いに直交するXYZ座標軸が示されている。X軸方向は、紙面上下方向、Z軸方向は紙面左右方向である。
図3(a)は、光学検出器Dの光学系をY軸負方向に見た図、
図3(b)は、光学検出器Dの光学系をX軸正方向に見た図である。
【0033】
また、
図4(a)は、フローセルD1の構成を模式的に示す図、
図4(b)は、ビームストッパ203の構成を模式的に示す図、
図4(c)は、ピンホール204の構成を模式的に示す図、
図4(d)は、フォトダイオード205の構成を模式的に示す図である。
【0034】
図3(a)を参照して、光学検出器Dは、フローセルD1と、シースフロー系D2と、光照射光学系D3と、前方散乱光受光光学系D4と、側方散乱光受光光学系D5と、蛍光受光光学系D6を有している。
【0035】
シースフロー系D2は、フローセルD1内に測定試料をシース液に包まれた状態で送り込み、フローセルD1中に液流を発生させるように構成されている。
図3(b)に示すように、フローセルD1は、測定試料を細孔部D13に向かって上方へ噴射する試料ノズルD11と、シース液供給口D12と、廃液口D14を備える。細孔部D13内に、測定試料が流れる流路D15が形成される。
【0036】
光照射光学系D3は、半導体レーザ101、103と、コリメータレンズ102、104と、ダイクロイックミラー105と、シリンドリカルレンズ106と、コンデンサレンズ107を備えている。
【0037】
半導体レーザ101は、発光部(図示せず)の半導体層の積層方向がX軸方向に一致するよう配置される。したがって、半導体レーザ101から出射されるレーザ光の広がり角は、X軸方向において最大となり、Y軸方向において最小となる。半導体レーザ101は、所定波長のレーザ光(以下、「赤レーザ光RL」という)をZ軸正方向に出射する。半導体レーザ101の出射波長は、610〜750nmの範囲に含まれるよう設定される。半導体レーザ101の出射光軸は、光照射光学系D3の光軸Oに一致している。
【0038】
コリメータレンズ102は、半導体レーザ101から出射された赤レーザ光RLを平行光に変換する。
【0039】
半導体レーザ103は、発光部(図示せず)の半導体層の積層方向がZ軸方向に一致するよう配置される。したがって、半導体レーザ103から出射されるレーザ光の広がり角は、Z軸方向において最大となり、Y軸方向において最小となる。半導体レーザ103は、所定波長のレーザ光(以下、「青レーザ光BL」という)をX軸負方向に出射する。半導体レーザ103の出射波長は、400〜435nmの範囲に含まれるよう設定される。半導体レーザ103の出射光軸は、光照射光学系D3の光軸Oに交差する。
【0040】
コリメータレンズ104は、半導体レーザ103から出射された青レーザ光BLを平行光に変換する。
【0041】
ダイクロイックミラー105は、コリメータレンズ102を透過した赤レーザ光RLを透過し、コリメータレンズ104を透過した青レーザ光BLを反射する。ダイクロイックミラー105は、ダイクロイックミラー105によって反射された青レーザ光BLの進行方向が、
図3(b)に示すように、Z軸方向からややY軸方向に傾くように、配置されている。
【0042】
シリンドリカルレンズ106は、ダイクロイックミラー105を経由した赤レーザ光RLと青レーザ光BLをX軸方向にのみ収束させる。コンデンサレンズ107は、シリンドリカルレンズ106を透過した赤レーザ光RLと青レーザ光BLを集光する。コンデンサレンズ107は、赤レーザ光RLと青レーザ光BLをY軸方向に収束させてフローセルD1の流路D15(
図4(a)参照)の位置に合焦させ、また、赤レーザ光RLと青レーザ光BLをX軸方向に収束させて流路D15の手前(Z軸負側)の位置に合焦させる。したがって、コンデンサレンズ107によってX軸方向に収束された光は、合焦位置から流路D15の位置に達するまでに、やや広がる。よって、流路D15には、
図4(a)に示すように、X軸方向に細長いビーム形状で、赤レーザ光RLと青レーザ光BLが照射される。
【0043】
図3(b)に示すように、ダイクロイックミラー105によって反射された青レーザ光BLは、Z軸方向からY方向にやや傾いた方向に進むため、流路D15に対する青レーザ光BLの照射位置EP1は、赤レーザ光RLの照射位置EP2よりもY軸正方向にずれている。赤レーザ光RLの照射位置EP2は、光軸O上にある。
【0044】
前方散乱光受光光学系D4は、前方集光レンズ201と、絞り202と、ビームストッパ203と、ピンホール204と、フォトダイオード205を備える。フローセルD1から前方(Z軸正方向)へと向かう赤レーザ光RLおよび青レーザ光BLの散乱光(前方散乱光)は、それぞれ、前方集光レンズ201によってピンホール204の位置に集光され、その後、ピンホール204を通って、フォトダイオード205により受光される。フォトダイオード205は、受光した前方散乱光のピーク値に基づいて前方散乱光信号を出力する。
【0045】
前方集光レンズ201は、その光軸が、光照射光学系D3の光軸OからY軸正方向にずれるように配置されている。したがって、赤レーザ光RLの前方散乱光(以下、「赤散乱光RS」という)の中心を通る光線は、前方集光レンズ201を透過した後、Z軸正方向からややY軸負方向に傾く方向に進む。また、青レーザ光BLの前方散乱光(以下、「青散乱光BS」という)の中心を通る光線は、前方集光レンズ201を透過した後、Z軸正方向からややY軸正方向に傾く方向に進む。
【0046】
図4(c)に示すように、ピンホール204には、Y軸方向に並ぶ2つの孔204a、204bが形成されている。孔204a、204bの径W2は、それぞれ、青散乱光BS、赤散乱光RSの収束スポットの径よりもやや大きく設定されている。赤散乱光RSは、Y軸正側の孔204bの位置に集光され、孔204bを通り抜ける。また、青散乱光BSは、Y軸負側の孔204aの位置に集光され、孔204bを通り抜ける。
【0047】
図4(d)に示すように、フォトダイオード205には、Y軸方向に並ぶ2つの受光面205a、205bが配置されている。受光面205a、205bは、Z軸方向において同じ位置にあり、それぞれ、X−Y平面に平行である。フォトダイオード205上において、受光面205a、205bは、同一平面上に配置されている。ピンホール204の孔
204aを通り抜けた青散乱光BSは、受光面205aに照射され、孔204bを通り抜けた赤散乱光RSは、受光面205bに照射される。
【0048】
なお、前方散乱光受光光学系D4の倍率は、受光面205a、205bに照射される際の青散乱光BSと赤散乱光RSの間隔が、受光面205aの中心と受光面205bの中心との間隔に一致するように設定される。これにより、青散乱光BSと赤散乱光RSは、
図4(d)に示すように、それぞれ、受光面205a、205bの中央に照射される。
【0049】
図3(a)、(b)に戻り、フローセルD1に照射された赤レーザ光RL、青レーザ光BLのうち、粒子(血球、等)に照射されずにフローセルD1を透過したレーザ光(以下、「直接光」という)は、前方集光レンズ201によってビームストッパ203上に集光される。ビームストッパ203は、光を透過しない薄板状の部材によって構成されている。
図4(b)に示すように、ビームストッパ203は、半円状の開口203a、203bと、これら開口203a、203b間に形成された遮光部203cとを備える。遮光部203cのX軸方向の幅W1は一定である。この遮光部203c上に、直接光が集光される。上記のように、コンデンサレンズ107は、X軸方向におけるレーザ光の焦点位置がY軸方向におけるレーザ光の焦点位置よりも手前(Z軸負側)となるようにレーザ光を収束させる。このため、直接光は、X軸方向の焦点位置がY軸方向の焦点位置よりも手前(Z軸負側)となるように、前方集光レンズ201によって集光される。ビームストッパ203は、入射面が、直接光のX軸方向の焦点位置に位置付けられるように配置される。したがって、直接光は、
図4(b)に示すように、Y軸方向に長いビーム形状で、遮光部203c上に照射される。
【0050】
フローセルD1からの赤散乱光RSと青散乱光BSは、大部分が、ビームストッパ203の開口203a、203bを通過し、一部が、遮光部203cによって遮光される。遮光部203cによる前方散乱光の遮光量は、遮光部203cの幅W1によって決まる。このため、遮光部203cの幅W1は、なるべく小さいことが望ましい。しかしながら、遮光部203cの幅W1は、直接光を確実に遮光できるよう、直接光のX軸方向の幅の10倍程度に設定される。
【0051】
側方散乱光受光光学系D5は、コリメータレンズD51と、ダイクロイックミラーD52と、側方集光レンズD53と、フォトダイオードD54を備える。フローセルD1から側方(X軸正方向)へと向かう散乱光(側方散乱光)は、コリメータレンズD51にて平行光に変換される。上記のように、フローセルD1には、赤レーザ光RLと青レーザ光BLが照射されるため、各レーザ光に基づく2つの側方散乱光が生じる。コリメータレンズD51は、これら2つの側方散乱光をそれぞれ平行光に変換する。平行光に変換された2つの側方散乱光は、ダイクロイックミラーD52で反射され、さらに、側方集光レンズD53により集光されて、フォトダイオードD54により受光される。
【0052】
フォトダイオードD54は、フォトダイオード205と同様、各波長の側方散乱光をそれぞれ受光する2つの受光面D54a、D54bを有する。受光面D54a、D54bはY軸方向に並び、Z軸方向において同じ位置にある。フォトダイオードD54上において、受光面D54a、D54bは、同一平面上に配置されている。フォトダイオードD54は、受光した各波長の側方散乱光のピーク値に基づいて側方散乱光信号を出力する。
【0053】
なお、側方散乱光受光光学系D5の倍率は、受光面D54a、D54bに照射される際の青レーザ光BLの散乱光と赤レーザ光RLの散乱光との間隔が、受光面D54aの中心と受光面D54bの中心との間隔に一致するように設定される。これにより、これら散乱光は、それぞれ、受光面D54a、D54bの中央に照射される。
【0054】
蛍光受光光学系D6は、分光フィルタD61と、蛍光集光レンズD62と、アバランシェフォトダイオードD63と、コリメータレンズD64と、ミラーD65を備える。フローセルD1からX軸正方向へと向かう蛍光は、コリメータレンズD51にて平行光に変換され、ダイクロイックミラーD52を透過し、さらに分光フィルタD61に通されて、蛍光集光レンズD62により集光される。また、フローセルD1からX軸負方向へと向かう蛍光は、コリメータレンズD64にて平行光に変換され、ミラーD65によって反射される。ミラーD65によって反射された蛍光は、再び、コリメータレンズD64とフローセルD1を通ってコリメータレンズD51に入射する。その後、この蛍光は、ダイクロイックミラーD52を透過し、さらに分光フィルタD61に通されて、蛍光集光レンズD62により集光される。こうして、蛍光集光レンズD62により集光された蛍光は、アバランシェフォトダイオードD63に受光される。アバランシェフォトダイオードD63は、受光した蛍光のピーク値に基づいて蛍光信号(SFL)を出力する。蛍光信号の取得の際には、通常、半導体レーザ101、103の何れか一方が駆動される。
【0055】
なお、
図3(a)、(b)に示す光学系において、前方集光レンズ201は、アクロマティックレンズからなっており、赤散乱光RSと青散乱光BSの2つの波長に対して色収差を補正する機能を備えている。このため、赤散乱光RSと青散乱光BSは、同一平面上に配置された受光面205a、205b上に適正に照射される。同様に、側方集光レンズD53も、アクロマティックレンズからなっており、赤レーザ光RLと青レーザ光BLに基づく2つの側方散乱光の波長に対して色収差を補正する機能を備えている。このため、これら2つの側方散乱光は、同一平面上に配置された受光面D54a、D54b上に適正に照射される。
【0056】
図2に戻り、光学検出器Dにより取得された前方散乱光信号と、側方散乱光信号と、蛍光信号は、情報処理ユニット4に送信される。情報処理ユニット4は、受信したこれら信号に基づいて解析を実行する。
【0057】
図5は、測定ユニット2の構成を示す図である。
【0058】
測定ユニット2は、
図2に示す検体吸引部24、試料調製部25および検出部26の他、センサ部27と、駆動部28と、制御部29を備える。センサ部27は、検体容器TおよびサンプルラックLの位置を検出するためのセンサ等を含み、駆動部28は、検体の測定を行うための機構を含む。
図2に示すバーコードユニット23は、センサ部27に含まれる。
【0059】
制御部29は、CPU291と、メモリ292と、通信インターフェース293と、I/Oインターフェース294を含んでいる。
【0060】
CPU291は、メモリ292に記憶されているコンピュータプログラムを実行する。メモリ292は、ROM、RAM、ハードディスク等からなる。また、CPU291は、通信インターフェース293を介して、情報処理ユニット4との間でデータの送受信を行う。また、CPU291は、I/Oインターフェース294を介して、測定ユニット2内の各部を制御すると共に、各部から出力された信号を受信して処理する。検出部26により得られた血液検体の測定データは、CPU291により処理され、メモリ292に格納される。血液検体に対する測定が終了すると、メモリ292に格納された測定データが、通信インターフェース293を介して、情報処理ユニット4に送信され、情報処理ユニット4において解析処理が行われる。
【0061】
図6は、情報処理ユニット4の構成を示す図である。
【0062】
情報処理ユニット4は、パーソナルコンピュータからなり、本体40と、表示部41と、入力部42から構成されている。本体40は、CPU401と、ROM402と、RAM403と、ハードディスク404と、読出装置405と、画像出力インターフェース406と、入出力インターフェース407と、通信インターフェース408を有する。
【0063】
CPU401は、ROM402に記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM403にロードされたコンピュータプログラムを実行する。RAM403は、ROM402およびハードディスク404に記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、RAM403は、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU401の作業領域としても利用される。
【0064】
ハードディスク404には、オペレーティングシステム、CPU401に実行させるためのコンピュータプログラム、およびコンピュータプログラムの実行に用いるデータが記憶されている。また、ハードディスク404には、後述の解析処理を実行させるためのプログラム404aが記憶されている。読出装置405は、CDドライブまたはDVDドライブ等によって構成されており、記録媒体405aに記録されたコンピュータプログラムおよびデータを読み出すことができる。なお、上記プログラム404aが記録媒体405aに記録されている場合には、読出装置405により記録媒体405aから読み出されたプログラム404aが、ハードディスク404に記憶される。
【0065】
画像出力インターフェース406は、画像データに応じた映像信号を表示部41に出力し、表示部41は、画像出力インターフェース406から出力された映像信号に基づいて画像を表示する。ユーザは入力部42を介して指示を入力し、入出力インターフェース407は、入力部42を介して入力された信号を受け付ける。通信インターフェース408は、測定ユニット2と、搬送ユニット3と、ホストコンピュータ5に接続されており、CPU401は、通信インターフェース408を介して、これら装置との間で指示信号およびデータの送受信を行う。
【0066】
ところで、
図3(a)、(b)に示す光学検出器Dは、血液検体に試薬が混和された測定試料がフローセルD1に流される場合の他、試薬が混和されない測定試料がフローセルD1に流される場合にも、血球分析のための信号を取得するために用いられる。試薬が混和されない測定試料がフローセルD1に流される場合、半導体レーザ101、103が駆動され、青レーザ光BLと赤レーザ光RLが、それぞれ、照射位置EP1、EP2に照射される。そして、照射位置EP1、EP2から生じた青散乱光BSと赤散乱光RSが、それぞれ、フォトダイオード205の受光面205a、205bにより受光され、フォトダイオード205から、青散乱光BSと赤散乱光RSに基づく前方散乱光信号が出力される。こうして取得された2種類の前方散乱光信号に基づいて、血球の分類と計数が行われる。
【0067】
以下、これら2種類の前方散乱光信号に基づく血球の分類および計数の処理について説明する。なお、以下の解析処理では、青散乱光BSと赤散乱光RSに基づく前方散乱光信号が用いられているが、青レーザ光BLと赤レーザ光RLからそれぞれ生じる2種類の側方散乱光に基づく側方散乱光信号を、同様の解析に用いることも可能である。
【0068】
<解析例1>
本解析例は、赤散乱光RSと青散乱光BSを用いて、赤血球と他の血球とを分類する処理に関するものである。なお、本解析例では、測定試料の調製において、検体容器Tから吸引された検体には希釈液のみが混和され、染色剤や溶血剤等の試薬は混和されない。
【0069】
図3(b)に示すように、青レーザ光BLの照射位置EP1と赤レーザ光RLの照射位
置EP2は、互いに、Y軸方向にずれている。また、測定試料は、流路D15をY軸正方向に流れる。したがって、流路D15を流れる血球に赤レーザ光RLが照射されてから、この血球に青レーザ光BLが照射されるまでには、所定のタイムラグがある。このため、青レーザ光BLと赤レーザ光RLからそれぞれ生じる2種類の前方散乱光に基づく前方散乱光信号を解析に用いる場合には、同一の血球から生じた2種類の前方散乱光信号から取得された2種類のデータ(以下、「前方散乱光データ」という)を互いに対応付ける必要がある。
【0070】
図7(a)、(b)は、2種類の前方散乱光データを対応付ける方法を説明する図である。
図7(a)は、粒子濃度が低い場合に赤散乱光RSと青散乱光BSが検出されるタイミングを示すタイミングチャート、
図7(b)は、粒子濃度が高い場合(通常濃度の血液試料を用いた場合)に赤散乱光RSと青散乱光BSが検出されるタイミングを示すタイミングチャートである。
【0071】
図7(a)を参照して、測定試料の濃度が低い場合、赤散乱光RSの検出タイミングと青散乱光BSの検出タイミングは離散的になる。この場合、通常、一つの血球に対する赤散乱光RSの検出タイミングと青散乱光BSの検出タイミングとの間の期間に、次の血球に対する赤散乱光RSの検出タイミングが入ることはない。したがって、赤散乱光RSの検出タイミングの次に到来する青散乱光BSの検出タイミングが、同一血球に対する検出タイミングとして対応づけられる。
図7(a)の例では、検出タイミングT21〜T25が、それぞれ、検出タイミングT11〜T15に対応づけられる。同一血球に対する検出タイミングの時間差は、何れの血球の場合も略同じである。したがって、たとえば、互いに対応付けられた2つの検出タイミングの時間差の平均値Δtを、各血球に対する赤散乱光RSと青散乱光BSの検出タイミングの時間差として用いることができる。
【0072】
図7(b)を参照して、粒子濃度が高い場合(通常濃度の血液試料を用いる場合)には、赤散乱光RSの検出タイミングと青散乱光BSの検出タイミングが混在し合うことになる。この場合、同一の血球に対する赤散乱光RSの検出タイミングと青散乱光BSの検出タイミングとを対応付けることが難しい。しかしながら、フローセルD1を流れる測定試料の速度は、粒子濃度が高い場合と粒子濃度が低い場合とで殆ど変わらない。よって、粒子濃度が低い場合に取得された時間差Δtを、粒子濃度が高い場合の同一血球に対する赤散乱光RSの検出タイミングと青散乱光BSの検出タイミングの時間差として用いることができる。
図7(b)の例では、時間差Δtを用いることにより、検出タイミングT2n、T2mが、それぞれ、検出タイミングT1n、T1mに対応づけられる。
【0073】
本解析例では、青散乱光BSと赤散乱光RSを用いた血球分析が行われる前に、粒子濃度の低い試料がフローセルD1に流され、時間差Δtが取得される。そして、こうして取得された時間差Δtが、青散乱光BSと赤散乱光RSを用いた血球分析が行われる場合に用いられ、青散乱光BSに基づいて取得された前方散乱光データと赤散乱光RSに基づいて取得された前方散乱光データが互いに対応づけられる。この対応付けは、
図5に示す測定ユニット2の制御部29において行われる。制御部29のCPU291は、検出部26(光学検出器D)から受信した赤散乱光RSおよび青散乱光BSに基づく2種類の前方散乱光データを、順次、時間差Δtを用いて対応づけて、メモリ292に格納する。
【0074】
なお、時間差Δtの取得方法は、上述の方法に限られるものではない。たとえば、フローセルD1を流れる測定試料の速度は、測定試料の温度によって変化する。したがって、フローセルD1を流れる測定試料の温度を測るための検出器をフローセルD1中に配置しておき、検出された温度に基づいて時間差Δtのデフォルト値を調整して、時間差Δtを取得するようにしても良い。
【0075】
次に、赤血球により生じる前方散乱光と、赤血球以外の血球(血小板や白血球)により生じる前方散乱光との違いについて説明する。
【0076】
光が照射されることにより粒子から生じる散乱光は、その粒子の粒径と屈折率とにより定まる(Mie散乱理論)。ここで、屈折率は、実数部と虚数部とからなる複素数により表すことができる。すなわち、複素屈折率をm、屈折率をn
r、吸収をn
iとすると、複素屈折率mは、以下の式により算出することができる。
【0078】
上記式によれば、複素屈折率mは吸収n
iに応じて変化するため、光に対する粒子の吸収度合いが異なれば、屈折率も異なることになる。よって、異なる種類の粒子が互いに異なる吸収度合いを有する場合、これら粒子に対して光を照射すると、生じる散乱光も互いに異なったものとなる。
【0079】
図8(a)は、赤血球に含まれるヘモグロビンの吸収特性を示す図である。横軸は、ヘモグロビンに照射される光の波長を示し、縦軸は、吸収係数(任意単位)を示している。
【0080】
図8(a)には、酸素化ヘモグロビン(HbO
2)と脱酸素化ヘモグロビン(Hb)の吸収係数がそれぞれ示されている。赤血球中のヘモグロビンは、酸素化ヘモグロビンと、脱酸素化ヘモグロビンとが混在した状態にあり、一般的には、静脈血のヘモグロビン酸素飽和度は約75%、すなわち、酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの存在比率が3対1となっている。このため、血液検体に含まれる赤血球では、酸素化ヘモグロビンの性質が支配的となる。
【0081】
図8(a)に示すように、波長が400〜435nmの範囲では、酸素化ヘモグロビン(HbO
2)の吸収係数は、他の波長帯に比べて数段大きくなっている。一方、波長が610〜750nmの範囲では、酸素化ヘモグロビン(HbO
2)の吸収係数は、他の波長帯に比べて数段小さくなっている。すなわち、青レーザ光BLに対する赤血球の吸収度合いと、赤レーザ光RLに対する赤血球の吸収度合いとの差は、大きいものとなる。他方、赤血球以外の血球(血小板や白血球)はヘモグロビンを含んでいないため、青レーザ光BLに対する赤血球以外の血球の吸収度合いと、赤レーザ光RLに対する赤血球以外の血球の吸収度合いとの差は、小さいものとなる。
【0082】
以上のことから、赤血球と、赤血球以外の血球(血小板や白血球)とでは、青レーザ光BLに対する吸収度合いと、赤レーザ光RLに対する吸収度合いとの差が顕著に異なるため、青レーザ光BLが照射される場合に生じる青散乱光BSの強度と、赤レーザ光RLが照射される場合に生じる赤散乱光RSの強度との差も異なるものとなる。具体的には、赤血球では、青散乱光BSの強度は、赤散乱光RSの強度よりも小さくなり易く、赤血球以外の他の血球では、青散乱光BSの強度と赤散乱光RSの強度は、同程度になり易い。
【0083】
図8(b)、(c)は、それぞれ、本解析例と比較例における粒子分析のシミュレーション結果を示す図である。
【0084】
本シミュレーションは、上記光学検出器Dにおいて、前方散乱光受光光学系D4のNAを0.22に、ビームストッパ203の遮光部203cの幅W1を0.3mmに、フローセルD1とビームストッパ203との間を6mmに、フローセルD1に照射されるビームのY軸方向の幅を10μmとして行われた。また、本シミュレーションでは、赤血球と同様の性質を有する粒子と、血小板と同様の性質を有する粒子とが設定され、これら粒子に対して所定波長のレーザ光を照射することにより生じる前方散乱光の強度がシミュレーシ
ョンにより算出された。
【0085】
本解析例のシミュレーションでは、赤血球と血小板に相当する粒子に、波長640nmの赤レーザ光RLと波長405nmの青レーザ光BLを照射し、各粒子により生じる640nmと405nmの前方散乱光信号が、
図8(b)に示すようにスキャッタグラム上にプロットされている。比較例のシミュレーションでは、赤血球と血小板に相当する粒子に、約632nmの波長のレーザ光を照射し、各粒子により生じる低角(2〜3度)と高角(8〜20度)の前方散乱光信号が、
図8(c)に示すようにスキャッタグラム上にプロットされている。
【0086】
図8(b)、(c)に示すスキャッタグラムには、それぞれ、赤血球に相当する粒子が分布するマップM1、M2が示されている。マップM1、M2は、体積の値がV30〜V150であり、ヘモグロビン濃度の値がHC22〜HC46である81個の粒子に基づいて作成されており、各粒子は、マップM1、M2の格子の交点にプロットされている。なお、健常者の赤血球では、概ね、体積がV60〜V120であり、ヘモグロビン濃度がHC31〜HC37である。また、
図8(b)、(c)に示すスキャッタグラムには、それぞれ、血小板に相当する粒子が分布する分布線C11、C12が示されている。分布線C11、C12は、体積の値がV0.5〜V33である4つの粒子に基づいて作成されている。
【0087】
図8(b)、(c)に示すように、赤血球と血小板に相当する粒子に対して行ったシミュレーション結果から、被検者から採取される赤血球も、マップM1、M2内に分布すると考えられ、被検者から採取される血小板も、分布線C11、C12上に分布すると考えられる。
【0088】
本解析例において、赤血球の分布を示すマップM1は、血小板の分布を示す分布線C11よりも、左上に位置しており、マップM1と分布線C11とが重なり合わない。これは、
図8(a)を参照して説明したように、赤血球に含まれるヘモグロビンにより青レーザ光BLが吸収され、青散乱光BSの強度が赤散乱光RSに比べて小さくなっているためと考えられる。一方、比較例において、赤血球の分布を示すマップM2は、血小板の分布を示す分布線C12と、左右方向において同様の位置にあり、マップM2に分布線C12が重なっている。
【0089】
本解析例の場合、被検者から採取される血小板の体積が大きいと、この血小板は、分布線C11の延長線C11aに位置付けられることになる。しかしながら、延長線C11aはマップM1と交わらないため、この血小板はマップM1と重なることはない。このため、本解析例では、血小板の体積が大きい場合でも、赤血球と血小板を弁別する精度が高められる。一方、比較例の場合、被検者から採取される血小板の体積が大きいと、この血小板は、分布線C12の延長線C12aに位置付けられることになる。この場合、延長線C12aはマップM2と交わるため、この血小板はマップM2と重なる惧れがある。このため、比較例では、血小板の体積が大きい場合、赤血球と血小板を弁別する精度が悪くなる惧れがある。
【0090】
なお、血小板と白血球は、概ね同様の屈折率を有していると考えられ、ヘモグロビンを有しないという点でも同様の性質を有している。このため、白血球から生じる前方散乱光信号も、概ね分布線C11、C12上に位置すると考えられる。なお、白血球は血小板に比べて大きいため、白血球は血小板よりも、赤散乱光RSと青散乱光BSの値が大きい領域に位置付けられる。本解析例では、白血球がマップM1と重なりにくいため、赤血球と白血球を弁別する精度が高められる。一方、比較例では、白血球がマップM2と重なりやすいため、赤血球と白血球を弁別する精度が悪くなる惧れがある。
【0091】
よって、本解析例のように青レーザ光BLと赤レーザ光RLを用いると、
図8(b)に示すように、赤血球と、赤血球以外の血球(血小板や白血球)とを精度良く弁別することが可能になる。
【0092】
図8(d)は、本解析例において、実際の測定試料から得られる赤散乱光RSと青散乱光BSに基づくスキャッタグラムを示す図である。縦軸と横軸は、それぞれ、フォトダイオード205から出力される赤散乱光RSと青散乱光BSの信号を示しており、各血球から得られた赤散乱光RSと青散乱光BSの信号をパラメータとして、各血球がスキャッタグラム上にプロットされている。
【0093】
この場合、赤血球を示す点は領域A1近傍に分布しており、血小板を示す点は、領域A2近傍に分布しており、白血球を示す点は領域A3近傍に分布している。また、赤血球が分布する領域A1は、分布曲線C1上に位置しており、血小板が分布する領域A2と白血球が分布する領域A3は、分布曲線C2上に位置している。また、分布曲線C2は、
図8(b)に示す分布線C11と延長線C11aに対応するものであり、分布曲線C1と分布曲線C2とは、互いに異なる角度で伸びているため、交わることがない。
図8(d)のように分布曲線C1と分布曲線C2とが互いに離れるのは、上記のように、赤血球がヘモグロビンを有しており、ヘモグロビンの吸収係数が波長によって大きく変わるためであると考えられる。
【0094】
このように、実測値において、分布曲線C1上に位置する赤血球が分布する領域A1と、分布曲線C2上に位置する赤血球以外の血球が分布する領域A2、A3が重なりにくいことが分かる。なお、赤散乱光RSの信号を示す閾値V1は、後述するようにノイズを含む信号を除くために用いられる。
【0095】
図9は、本解析例の血球分析装置1による解析処理を示すフローチャートである。
【0096】
血球分析装置1が起動されると、まず、
図7(a)、(b)を参照して説明したように、赤散乱光RSの検出タイミングと青散乱光BSの検出タイミングの時間差に基づいて、時間差Δtが取得される(S11)。そして、取得された時間差Δtは、測定ユニット2のメモリ292に記憶される。なお、時間差Δtは、たとえば、フローセルD1に粒子濃度が低い精度管理用試料を流すことにより取得されても良く、あるいは、フローセルD1中に配置された温度を測るための検出器が検出する温度に基づいてデフォルト値を修正することにより取得されても良い。
【0097】
解析処理が開始されると、上述したように検体容器Tが測定ユニット2に取り込まれ、位置P3に位置付けられる。そして、測定ユニット2のCPU291は、ピアサ24aにより検体容器Tから検体を吸引し、試料調製部25により吸引した検体から測定試料を調製する(S12)。この場合の測定試料の調製は、赤血球を溶血する試薬や、白血球を染色する試薬等が混和されることなく行われる。
【0098】
次に、CPU291は、赤レーザ光RLと青レーザ光BLをフローセルD1に照射し、測定試料をフローセルD1に流す(S13)。これにより、同一の血球から生じた2種類の前方散乱光(赤散乱光RSと青散乱光BS)が生じ、これら前方散乱光がフォトダイオード205により受光される。CPU291は、フォトダイオード205から出力される2種類の前方散乱光信号に基づく前方散乱光データを取得する。そして、CPU291は、経過時間のカウントを開始する(S14)。
【0099】
続いて、CPU291は、赤散乱光RSの信号が
図8(d)に示す閾値V1以下である
かを判定する(S15)。なお、閾値V1は微小な値に設定されており、ノイズを含む信号を除くために用いられる。赤散乱光RSの信号が閾値V1より大きいと(S15:NO)、CPU291は、上記時間差Δtに基づいて、同一の血球から生じた2種類の前方散乱光データを互いに対応付けて、メモリ292に記憶する(S16)。他方、赤散乱光RSの信号が閾値V1以下であると(S15:YES)、CPU291は、この場合の血球についての2種類の前方散乱光データを記憶せず、処理をS17に進める。
【0100】
こうして、所定時間が経過するまで、血球ごとにS15、S16の処理が繰り返し行われる(S17)。所定時間が経過することにより測定が終了すると(S17:YES)、CPU291は、メモリ292に記憶した前方散乱光データを、情報処理ユニット4に送信する(S18)。
【0101】
一方、情報処理ユニット4のCPU401は、測定ユニット2から前方散乱光データを受信すると(S21:YES)、
図8(d)に示すようなスキャッタグラムを作成し、表示部41に表示する(S22)。続いて、CPU401は、作成したスキャッタグラム上に領域A1を設定する(S23)。こうして、CPU401は、スキャッタグラム上の領域A1に含まれる点を測定試料に含まれる赤血球として区分し、領域A1に含まれる点に基づいて赤血球の解析処理を行い(S24)、解析結果を表示部41に表示する(S25)。
【0102】
なお、S23で設定される領域A1は、あらかじめ決められた固定領域であっても良く、固定領域に基づいて微調整された領域であっても良い。ここで、領域A1の境界は、たとえば、直線や曲線の数式により定義される。
【0103】
また、ここでは、説明の便宜上、作成したスキャッタグラム上に領域A1が設定され、このスキャッタグラム上の領域A1に含まれる点が赤血球に対応する点として区分されたが、スキャッタグラムは、必ずしも図形またはグラフとして作成される必要はなく、領域A1の設定と領域A1に含まれる点の区分は、データ処理によって行われるようにしても良い。
【0104】
以上、本解析例によれば、染色剤や溶血剤等の試薬を用いることなく、血球を、赤血球とその他の血球に良好に分類することができる。上記のように、赤血球は、波長により吸収係数が大きく変化するヘモグロビンを含むため、赤血球と他の血球では、赤散乱光RSの強度と青散乱光BSの強度が、大きく異なる。このため、
図8(d)のスキャッタグラムに示すように、赤血球が分布する領域A1と、血小板および白血球が分布する領域A2、A3とが大きく離れるようになる。赤血球は、
図8(d)のスキャッタグラム上に模式的に示した分布曲線C1に沿うように分布し、血小板と白血球は、分布曲線C2に沿うように分布する。上記のように、分布曲線C1と分布曲線C2との間には、大きな開きが生じ、且つ、分布曲線C1と分布曲線C2とが交差することもない。よって、横軸を青散乱光BSの強度とし、縦軸を赤散乱光RSの強度とするスキャッタグラムでは、
図8(d)に示すように、赤血球が分布する領域A1と、血小板および白血球が分布する領域A2、A3とが大きく離れるようになる。したがって、本解析例によれば、染色剤や溶血剤等の試薬を用いることなく、血球を、赤血球とその他の血球に、良好に分類することができる。
【0105】
このように、本解析例によれば、実施の形態に記載の血球分析装置1を用いることにより、染色剤や溶血剤等の試薬を用いることなく、簡易な工程により、良好に、測定試料に含まれる血球から、赤血球を弁別し計数することができる。また、測定試料に含まれる血球から、赤血球と血小板を分類することができる。さらに、測定試料に含まれる血球から、血小板を弁別し計数することもできる。
【0106】
なお、本解析例によれば、
図8(d)に示すように、赤血球の他、血小板と白血球を弁別することが可能である。しかしながら、白血球の血球数は、赤血球と血小板の血球数に比べてかなり少ないため、本解析例により白血球を弁別して精度の高い解析結果を得ようとする場合には、測定時間を長くして、測定結果に含まれる白血球の数を高める必要がある。しかし、測定時間を長くすると、赤血球と血小板の血球数が多くなり過ぎ、赤血球と血小板の弁別が非効率となる。よって、本解析例は、測定時間を制限しながら、赤血球と血小板を効率的に弁別・分類する際に用いて好適なものである。白血球については、追って示す解析例2を用いることにより、効率的に、弁別・分類することが可能である。
【0107】
また、本解析例によれば、染色剤や溶血剤等の試薬を用いる必要がないため、血液検体に試薬を混和する工程を省略することができる。よって、簡易な工程で良好に、血球を区分することができる。
【0108】
また、本解析例によれば、染色剤や溶血剤等の試薬を用いる必要がないため、コストの削減を図ることができる。さらに、試薬の消費を削減でき、且つ、試薬を含む測定試料が廃棄されることを抑制できるため、環境に配慮した分析手法を実現することができる。
【0109】
また、本解析例によれば、
図7(a)、(b)を参照して説明したように、同一血球から取得された赤散乱光RSおよび青散乱光BSに基づくデータが互いに対応づけられるため、血球の濃度が高く、各散乱光に基づくデータが混在する場合にも、解析処理を適正に行うことができる。
【0110】
また、本実施の形態に係る光学検出器Dでは、
図3(b)に示すように、青レーザ光BLの照射位置EP1と赤レーザ光RLの照射位置EP2が流路D15に平行な方向にずれているため、別途、青散乱光BSと赤散乱光RSとを分離する素子を配さなくとも、前方散乱光受光光学系D4の倍率を調整することにより、青散乱光BSと赤散乱光RSを、それぞれ、フォトダイオード205の受光面205a、205bに集光させることができる。同様に、側方散乱光受光光学系D5の倍率を調整することにより、青レーザ光BLに基づく散乱光と赤レーザ光RLに基づく散乱光を、それぞれ、フォトダイオードD54の受光面D54a、D54bに集光させることができる。
【0111】
また、本実施の形態に係る光学検出器Dによれば、一つのフォトダイオード205に受光面205a、205bが配置されているため、光学検出器Dの構成を簡素にすることができる。同様に、一つのフォトダイオードD54に受光面D54a、D54bが配置されているため、光学検出器Dの構成を簡素にすることができる。
【0112】
また、本実施の形態に係る光学検出器Dによれば、受光面205a、205bが同一平面上に配置されるため、フォトダイオード205の構成を簡素にすることができる。同様に、受光面D54a、D54bが同一平面上に配置されるため、フォトダイオードD54の構成を簡素にすることができる。
【0113】
また、本実施の形態に係る光学検出器Dによれば、前方集光レンズ201が、赤散乱光RSと青散乱光BSの2つの波長に対して色収差を補正する機能を備えているため、赤散乱光RSと青散乱光BSを、受光面205a、205b上に適正に照射することができる。同様に、側方集光レンズD53も、赤レーザ光RLと青レーザ光BLに基づく2つの側方散乱光の波長に対して色収差を補正する機能を備えているため、これら2つの側方散乱光を、受光面D54a、D54b上に適正に照射することができる。
【0114】
<解析例2>
上記解析例1では、赤散乱光RSと青散乱光BSを用いて、測定試料に含まれる血球から赤血球を弁別する処理について説明した。本解析例では、赤散乱光RSと青散乱光BSを用いて、測定試料に含まれる血球から白血球を弁別し、白血球を3つの分類に区分する処理について説明する。なお、本解析例でも、上記解析例1と同様、測定試料の調製において、検体容器Tから吸引された検体には希釈液のみが混和され、染色剤や溶血剤等の試薬は混和されない。
【0115】
上記のように、白血球はヘモグロビンを持たないため、白血球に対する赤散乱光RSと青散乱光BSの強度変化に寄与するパラメータは、粒径が支配的となる。すなわち、粒径が異なれば、
図8(d)のスキャッタグラムに模式的に示された分布曲線C2上における血球の分布位置が異なることとなる。本解析例では、かかる分布位置の差異に基づいて、白血球が、リンパ球、単球および顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)に区分される。
【0116】
また、上記解析例1において説明したとおり、赤血球が分布する領域A1(分布曲線C1)は、白血球を含む他の血球が分布する領域A2、A3(分布曲線C2)から大きく離れている。このため、白血球を分類および計数する際に、赤血球が分布する領域A1に含まれるデータを処理対象から除外することが可能である。本解析例では、フォトダイオード205から出力される前方散乱光信号のうち、赤血球が分布する領域A1に対応する前方散乱光信号については、前方散乱光データの取得が禁止され、これにより、処理負荷の軽減が図られる。
【0117】
図10(a)〜(c)は、本解析例において、異なる被検者から採取された3つの血液検体に基づいて作成されたスキャッタグラムを示す図である。縦軸と横軸は、それぞれ、フォトダイオード205から出力される赤散乱光RSと青散乱光BSの信号を示している。なお、この場合の測定試料の調製では、赤血球の解析と同様の希釈液による希釈が行われ、この場合の測定試料の測定では、赤血球の解析を行う場合と同様の測定時間で測定が行われている。
【0118】
本解析例では、青散乱光BSの信号が所定の閾値V2以下である血球は、解析処理に用いられない。具体的には、フォトダイオード205から出力される青散乱光BSの信号が閾値V2以下であると、この血球から取得された2種類の前方散乱光信号はメモリ292には記憶されない。これにより、
図10(a)〜(c)に示すように、各検体に基づいて作成されるスキャッタグラムには、青散乱光BSの信号が閾値V2以下である領域A10に、血球がプロットされなくなる。なお、閾値V2は、領域A10に、大部分の赤血球が含まれる値に設定される。これにより、領域A10以外の領域に、大部分の白血球が含まれることになる。こうして、
図10(a)〜(c)に示すように、領域A10に含まれる血球が除かれることにより、赤血球が分布する領域A1も大きく除かれることになる。
【0119】
図10(d)〜(f)は、異なる被検者から採取された8つの血液検体に基づいて行われた白血球の分類結果を示す図である。
図10(d)〜(f)の縦軸と横軸は、ぞれぞれ、本解析例に基づく処理によって得られた結果と、染色剤や溶血剤等の試薬を用いて測定試料を調製する解析手法(比較手法)によって得られた結果を示している。
【0120】
本解析例では、
図10(a)〜(c)と同様に、閾値V2以下の血球が解析の対象から除外される。そして、領域A31〜A33内の血球数を、それぞれ、3つの分類(リンパ球、単球および顆粒球)の血球数として取得し、全体の血球数に占める各分類の血球数の比率を求める。
図10(d)〜(f)の縦軸には、それぞれ、本解析例におけるリンパ球と、単球と、顆粒球とが全体の血球数に占める比率(%)が示されている。一方、比較手法においても、この手法に従って白血球を3つの種類に分類し、全体の血球数に占める各分類の血球数の比率を求める。
図10(d)〜(f)の横軸には、それぞれ、この装置に
おけるリンパ球と、単球と、顆粒球とが全体の血球数に占める比率(%)が示されている。こうして、
図10(d)〜(f)には、本解析例による比率と比較手法による比率とをパラメータとして、それぞれ、8つの検体に対応する比率を示す点がプロットされる。
【0121】
また、
図10(d)〜(f)には、それぞれ、8つの検体の比率を示す点の近似直線L1〜L3と、x(横軸の値)とy(縦軸の値)からなる近似直線L1〜L3の式が示されている。また、
図10(d)〜(f)には、本解析例による結果と、比較手法による結果との相関係数R
2の値が示されている。近似直線の傾きと相関係数の値は、何れも1に近づくほど、本解析例による結果と比較手法による結果との相関性が高くなる。
【0122】
図10(d)〜(f)に示すように、近似直線L1〜L3の傾きは、それぞれ、1.1735、0.9436、1.183であり、相関係数R
2の値は、それぞれ、0.9397、0.4948、0.9149であるため、リンパ球と顆粒球では、本解析例の結果と比較手法の結果との相関性は、比較的高いことが分かる。このことから、本解析例によれば、リンパ球と顆粒球の結果は、染色剤や溶血剤等の試薬を用いて測定試料を調製する比較手法と、同程度の精度を有することが分かる。
【0123】
なお、単球では、近似直線L2に対する各点の収束度合いがやや低いため、本解析例の結果と比較手法の結果との相関性は、やや低いことが分かる。しかしながら、本解析例の解析処理は、赤血球の解析手法(赤血球用の希釈と測定時間)に基づいて行われているため、本解析例の解析処理が、白血球の解析手法(白血球用の希釈と測定時間)に基づいて行われれば、本解析例と比較手法との相関性は高められる可能性がある。
【0124】
図11は、本解析例の血球分析装置1による解析処理を示すフローチャートである。
図11に示すフローチャートは、
図9に示す上記解析例1のフローチャートにおいて、S15の替わりにS101が追加され、S23の替わりにS201が追加されている。
【0125】
測定ユニット2のCPU291は、上記解析例1と同様にして、S11〜S14の処理を行う。続いて、CPU291は、青散乱光BSの信号が
図10(a)〜(c)に示す閾値V2以下であるかを判定する(S101)。青散乱光BSの信号が閾値V2より大きいと(S101:NO)、CPU291は、上記時間差Δtに基づいて、同一の血球から生じた2種類の前方散乱光データを互いに対応付けて、メモリ292に記憶する(S16)。他方、青散乱光BSの信号が閾値V2以下であると(S101:YES)、CPU291は、この血球についての2種類の前方散乱光データを記憶せず、処理をS102に進める。
【0126】
こうして、所定時間が経過するまで、血球ごとにS201、S16の処理が繰り返し行われる(S17)。なお、この場合の所定時間は、赤血球よりも数段個数の少ない白血球をより多く検出するために、上記解析例1のS17(
図9参照)で設定される所定時間よりも長く設定される。所定時間が経過することにより測定が終了すると(S17:YES)、CPU291は、メモリ292に記憶した前方散乱光データを、情報処理ユニット4に送信する(S18)。
【0127】
一方、情報処理ユニット4のCPU401は、測定ユニット2から前方散乱光データを受信すると(S21:YES)、
図10(a)〜(c)に示すようなスキャッタグラムを作成し、表示部41に表示する(S22)。続いて、CPU401は、作成したスキャッタグラム上に領域A31〜A33(領域A3)を設定する(S201)。こうして、CPU401は、領域A31〜A33に含まれる点を測定試料に含まれるリンパ球、単球および顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)として区分し、領域A31〜A33に含まれる点に基づいて白血球の解析処理を行い(S24)、解析結果を表示部41に表示する(S2
5)。
【0128】
なお、S201で設定される領域A31〜A33は、あらかじめ決められた固定領域であっても良く、固定領域に基づいて微調整された領域であっても良い。ここで、領域A31〜A33の境界は、たとえば、直線や曲線の数式により定義される。
【0129】
また、ここでは、説明の便宜上、作成したスキャッタグラム上に領域A31〜A33が設定され、このスキャッタグラム上の領域A31〜A33に含まれる点が、それぞれ、リンパ球、単球および顆粒球に対応する点として区分されたが、スキャッタグラムは、必ずしも図形またはグラフとして作成される必要はなく、領域A31〜A33の設定と領域A31〜A33に含まれる点の区分は、データ処理によって行われるようにしても良い。
【0130】
以上、本解析例によれば、染色剤や溶血剤等の試薬を用いることなく、白血球を、リンパ球、単球および顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)に区分し計数することができる。また、
図3(a)、(b)に示す構成の光学検出器Dを用いることにより、染色剤や溶血剤等の試薬を用いることなく、簡易な工程により、良好に、測定試料に含まれる血球から、白血球を弁別し、白血球を3つの分類に区分し計数することができる。
【0131】
また、本解析例によれば、青散乱光BSの信号が閾値V2以下であると、この血球の前方散乱光データはメモリ292に記憶されない。これにより、白血球の解析処理に不要な前方散乱光データが記憶されないため、解析処理の負荷軽減を図りながら、効率的に、測定試料に含まれる血球から、白血球を弁別し計数することができる。
【0132】
<解析例3>
上記解析例2では、赤散乱光RSと青散乱光BSを用いて、測定試料に含まれる血球から白血球を弁別し、白血球を3つの分類に区分する処理について説明した。本解析例では、赤散乱光RSと青散乱光BSを用いて測定試料に含まれる血球から、赤血球を弁別する処理と、白血球を弁別し、白血球を3つの分類に区分する処理を、一つの測定試料を用いて同時に行う処理について説明する。なお、本解析例でも、上記解析例1、2と同様、測定試料の調製において、検体容器Tから吸引された検体には希釈液のみが混和され、染色剤や溶血剤等の試薬は混和されない。
【0133】
図12は、本解析例の血球分析装置1による解析処理を示すフローチャートである。
図12に示すフローチャートは、
図11に示す上記解析例2のフローチャートにおいて、S14、S101の間にS111〜S113が追加され、S22、S201の替わりにS211〜S214が追加されている。
【0134】
測定ユニット2のCPU291は、上記解析例1、2と同様にして、S11〜S14の処理を行う。続いて、CPU291は、
図9のS15と同様、赤散乱光RSの信号が
図8(d)に示す閾値V1以下であるかを判定する(S111)。赤散乱光RSの信号が閾値V1より大きいと(S111:NO)、CPU291は、
図9のS16と同様、上記時間差Δtに基づいて、同一の血球から生じた2種類の前方散乱光データを互いに対応付けて、メモリ292に記憶する(S112)。他方、赤散乱光RSの信号が閾値V1以下であると(S111:YES)、CPU291は、この場合の血球についての2種類の前方散乱光データを記憶せず、処理をS104に進める。
【0135】
こうして、所定時間が経過するまで、血球ごとにS111、S112の処理が繰り返し行われる(S113)。所定の時間が経過すると(S113:YES)、処理がS101へ進められる。なお、フローセルD1への測定試料の供給は継続される。
【0136】
次に、CPU291は、上記解析例2と同様、青散乱光BSの信号が閾値V2以下であるかを判定する(S101)。青散乱光BSの信号が閾値V2より大きいと(S101:NO)、前方散乱光データをメモリ292に記憶し(S16)、青散乱光BSの信号が閾値V2以下であると(S101:YES)、この血球についての2種類の前方散乱光データを記憶しない。所定時間が経過することにより測定が終了すると(S17:YES)、CPU291は、S112においてメモリ292に記憶した前方散乱光データと、S16においてメモリ292に記憶した前方散乱光データとを、情報処理ユニット4に送信する(S18)。
【0137】
一方、情報処理ユニット4のCPU401は、測定ユニット2から前方散乱光データを受信すると(S21:YES)、S112で取得された前方散乱光データに基づいて、
図8(d)に示すようなスキャッタグラムを作成し、表示部41に表示する(S211)。そして、CPU401は、S211で作成したスキャッタグラム上に領域A1を設定する(S212)。続いて、CPU401は、S16で取得された前方散乱光データに基づいて、
図10(a)〜(c)に示すようなスキャッタグラムを作成し、表示部41に表示する(S213)。そして、CPU401は、S213で作成したスキャッタグラム上に領域A31〜A33(領域A3)を設定する(S214)。
【0138】
次に、CPU401は、S211で作成したスキャッタグラムとS212で設定した領域A1に基づいて、上記解析例1と同様にして、赤血球の解析処理を行い、S213で作成したスキャッタグラムとS214で設定した領域A31〜A33に基づいて、上記解析例2と同様にして、白血球の解析処理を行う(S24)。そして、CPU401は、解析結果を表示部41に表示する(S25)。
【0139】
以上、本解析例によれば、染色剤や溶血剤等の試薬を用いることなく、測定試料に含まれる血球から、赤血球を弁別することができ、且つ、白血球を弁別し、白血球を、リンパ球、単球および顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)に区分し計数することができる。
【0140】
また、本解析例によれば、1回の測定工程において、白血球の弁別に必要な前方散乱光データと、赤血球の弁別に必要な前方散乱光データの両方を取得することができる。これにより、同一の測定試料を用いて、白血球の弁別と、白血球以外の他の血球(赤血球)の弁別とを行うことができるため、白血球の弁別と、白血球以外の他の血球の弁別とを行うために、個別に測定試料の調製を行う必要がなくなる。
【0141】
<変更例>
以上、本発明の実施の形態および解析例について説明したが、本発明の実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0142】
たとえば、上記解析例1では、
図8(d)に示すスキャッタグラム上に領域A1を設定することにより、血球が、赤血球とその他の血球に分類されたが、さらに、このスキャッタグラム上に領域A2、A3を設定することにより、それぞれ、血小板と白血球を分類しても良い。さらに、このスキャッタグラム上に、
図10(a)〜(c)に示す領域A31〜A33を設定することにより、白血球(リンパ球、単球および顆粒球)が3つに分類されるようにしても良い。
【0143】
また、測定に用いる光学系も、
図3(a)、(b)に記載された構成に限らず、異なる波長の光をフローセルD1に照射でき、各波長の光の散乱光をそれぞれ受光できる構成であれば、他の構成であってもよい。たとえば、
図3(a)、(b)の光学系では、一つにフォトダイオード205に2つの受光面205a、205bが配置されたが、前方散乱光受光光学系D4に青散乱光BSと赤散乱光RSの光路を分離させる手段を配置し、光路が
分離された青散乱光BSと赤散乱光RSをそれぞれ個別に受光する2つのフォトダイオードが配置されても良い。
【0144】
また、フローセルD1に照射される2つの光の波長も上記に記載された波長に限られず、ヘモグロビンの吸収係数がそれぞれ異なるように波長を適宜選択してもよい。たとえば、青レーザ光BLと同様に赤血球の吸収度合いの高い黄レーザ光(出射波長550〜600nm)を青レーザ光BLに替えて用いてもよい。さらに、散乱光の特性が血球毎に異なるのであれば、他の波長が用いられても良い。ただし、青レーザ光BLの波長を上記実施の形態に示された波長に設定することにより、上記のように、各血球の分布をより明確に区分し、各血球を計数することができる。
【0145】
また、解析例1では、赤散乱光RSの強度に対してのみ閾値V1が設定され、前方散乱光データの取得が制限されたが、さらに青散乱光BSの強度に対しても閾値を設定して前方散乱光データの取得が制限されても良い。また、解析例2では、青散乱光BSの強度に対してのみ閾値V2が設定され、前方散乱光データの取得が制限されたが、さらに赤散乱光RSの強度に対しても閾値を設定して前方散乱光データの取得が制限されても良い。
【0146】
また、上記解析例1〜3では、表示部41にスキャッタグラムが表示されたが、スキャッタグラムは必ずしも表示されなくても良い。ただし、スキャッタグラムが表示された方が、各血球の分離具合を視覚により確認できるため、解析結果の評価を円滑に行うことができる。
【0147】
また、上記実施の形態では、第1試薬と第2試薬が混和されない測定試料だけでなく、これら試薬が混和された測定試料に対しても測定可能なように、血球分析装置1が構成された。しかしながら、血球分析装置1は、必ずしも、第1試薬と第2試薬が混和された測定試料を処理するための構成を備えずとも良く、たとえば、上記解析例1〜3に従って、第1試薬と第2試薬が混和されない測定試料のみを測定可能なように、血球分析装置1が構成されても良い。この場合、
図2に示す測定ユニット2から、第1試薬を収容する容器251と、第2試薬を収容する容器252が省略される。また、
図3(a)に示す光学検出器Dから、蛍光受光光学系D6が省略され、ダイクロイックミラーD52が全反射ミラーに変更される。こうすると、血球分析装置1の構成を簡素にすることができる。また、容器251、252が省略されるため、試料調製部25に容器251、252を接続する手間が省略されると共に、コストの削減を図ることができる。
【0148】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。