(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076802
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用負極の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/1395 20100101AFI20170130BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20170130BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20170130BHJP
C23C 28/00 20060101ALI20170130BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20170130BHJP
【FI】
H01M4/1395
H01M4/66 A
H01M4/38 Z
C23C28/00 B
H01M4/134
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-73088(P2013-73088)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-197499(P2014-197499A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2015年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100095463
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 潤三
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 實
【審査官】
結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−241670(JP,A)
【文献】
特開2006−324011(JP,A)
【文献】
特開2012−084522(JP,A)
【文献】
特開平03−081958(JP,A)
【文献】
特開平09−063564(JP,A)
【文献】
特開2006−269331(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0216604(US,A1)
【文献】
特開2006−269242(JP,A)
【文献】
米国特許第06432579(US,B1)
【文献】
特開2010−218848(JP,A)
【文献】
特開2007−019032(JP,A)
【文献】
特開2004−311141(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0234861(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
H01M 4/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン二次電池用負極を製造する方法であって、
集電体上に金属をめっきし、金属膜を形成する金属膜形成工程と、
前記金属膜上に、負極活物質粒子と可燃性粒子とを含むスラリーを塗布するスラリー塗布工程と、
前記スラリーが塗布された集電体を加熱する加熱工程と、
前記加熱後の集電体を冷却する冷却工程と
を含み、
前記可燃性粒子は、その燃焼温度が前記負極活物質粒子の燃焼温度よりも低く、
前記加熱工程において、前記可燃性粒子の燃焼温度以上、かつ前記金属の融点以上の温度に前記集電体を加熱することで、前記可燃性粒子を燃焼させるとともに、前記金属を溶融させ、
前記冷却工程において、溶融した前記金属を凝固させて、前記負極活物質粒子を前記集電体上に結着させる
ことを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【請求項2】
前記負極活物質粒子は、シリコン粒子であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【請求項3】
前記金属は、亜鉛であることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【請求項4】
前記可燃性粒子は、黒鉛粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【請求項5】
前記冷却工程により冷却した前記集電体上に銅をめっきし、銅薄膜を形成する銅めっき工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【請求項6】
前記銅めっき工程において、膜厚が0.001〜0.1μmになるように前記銅薄膜を形成することを特徴とする請求項5に記載のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池用負極の製造方法、リチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等のモバイル端末や電気自動車等の電源として、リチウムイオンを正極と負極との間で移動させることにより充放電を行うリチウムイオン二次電池が用いられている。近年においては、携帯電話等の高性能化に伴い、リチウムイオン二次電池の大容量化が切望されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池の負極活物質として、従来、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス等の炭素系材料が用いられている。しかし、これらの炭素系材料の理論容量は372mAh/gであり、リチウムイオン二次電池の大容量化の要求に対応することが困難になってきている。そのため、リチウムイオン二次電池の大容量化を達成可能な、炭素系材料に代わる負極活物質の開発が盛んに行われている。
【0004】
この炭素系材料に代わる負極活物質として、炭素系材料の約12倍の理論容量を有するシリコン(理論容量:4298mAh/g)が注目されている。負極活物質としてシリコンを用いることで、負極の容量を大幅に増大させることができるため、リチウムイオン二次電池の蓄電容量を増大させることができる。
【0005】
このようなシリコンを負極活物質として用いる負極の製造方法としては、シリコン粒子とバインダーとを含むスラリーを調製し、このスラリーを集電体上に塗布する方法(スラリー法)等が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第02/21616号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リチウムイオン二次電池の負極活物質としてのシリコンは、充電時にリチウムイオンを吸蔵して合金化し、その体積が約3〜4倍程度にまで膨張する。その結果、負極が充放電サイクル時に膨張と収縮とを繰り返す。
【0008】
上述のように、シリコン粒子を含むスラリーを集電体上に塗布することにより製造される負極において、集電体上にはシリコン粒子がほとんど隙間なく接着される。そのため、リチウムイオンの吸蔵によるシリコン粒子の体積膨張を吸収可能な隙間がないことで、充放電時の膨張・収縮の繰り返しによって、シリコンの微粉化による崩壊や、集電体からの剥離が生じ、負極の容量が低下し、サイクル特性が低下してしまう。その結果、リチウムイオン二次電池の寿命が極めて短くなってしまうという問題がある。
【0009】
また、シリコンは、炭素系材料に比べて電気伝導性が悪く、充放電に伴う電子の効率的な移動が制限されてしまうため、シリコンを負極活物質として用いる場合には炭素系材料等の導電性を補う導電助剤と組み合わせて使用されることがある。この場合においても、シリコン粒子と炭素系材料粒子との混合物が集電体上に隙間なく接着されるため、上述したのと同様の問題が生じる。
【0010】
さらに、シリコン粒子及び所望により導電助剤を集電体上に保持させることを目的として、上記スラリーにバインダーが含まれているが、電極反応には直接的に関与することのないバインダーが含まれることで、負極の単位面積容量を増大させるのが困難となるおそれがある。
【0011】
かかる問題に鑑みて、本発明は、充放電時において負極活物質粒子が膨張及び収縮を繰り返しても、負極活物質粒子の破壊や集電体からの剥離が生じ難く、サイクル特性が大幅に改善されてなるリチウムイオン二次電池用負極を製造する方法、当該方法により製造されるリチウムイオン二次電池用負極及び当該リチウムイオン二次電池用負極を用いたリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、リチウムイオン二次電池用負極を製造する方法であって、集電体上に金属をめっきし、金属膜を形成する金属膜形成工程と、前記金属膜上に、負極活物質粒子と可燃性粒子とを含むスラリーを塗布するスラリー塗布工程と、前記スラリーが塗布された集電体を加熱する加熱工程と、前記加熱後の集電体を冷却する冷却工程とを含み、前記可燃性粒子は、その燃焼温度が前記負極活物質粒子の燃焼温度よりも低く、前記加熱工程において、前記可燃性粒子の燃焼温度以上、かつ前記金属の融点以上の温度に前記集電体を加熱することで、前記可燃性粒子を燃焼させるとともに、前記金属を溶融させ、前記冷却工程において、溶融した前記金属を凝固させて、前記負極活物質粒子を前記集電体上に結着させることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極の製造方法を提供する(発明1)。
【0013】
上記発明(発明1)によれば、集電体上に負極活物質粒子とともに塗布される可燃性粒子が燃焼することにより、集電体上の負極活物質粒子間に、負極活物質粒子の体積膨張を吸収可能な空隙が形成される。その後、溶融した金属が凝固することで、負極活物質粒子間に空隙を形成しつつ、集電体上に結着させることができる。よって、充放電時において負極活物質粒子が膨張及び収縮を繰り返しても、負極活物質粒子の破壊や集電体からの剥離が生じ難く、サイクル特性が大幅に改善されてなるリチウムイオン二次電池用負極を製造することができる。
【0014】
また、上記発明(発明1)によれば、溶融した金属が負極活物質粒子としてシリコン粒子等を用いた場合における導電性を補助する導電助剤としての役割を果たすため、負極活物質粒子を含むスラリーに炭素系材料等の導電助剤を含有させる必要がない。よって、負極の単位面積あたりの容量を増大させることができ、大容量のリチウムイオン二次電池用負極を製造することができる。
【0015】
さらに、上記発明(発明1)においては、金属膜を構成する金属が負極活物質粒子を集電体上に結着させるためのバインダーとしての役割を果たす。よって、電極反応に直接的に関与しないバインダーをスラリー中に大量に含有させる必要がないため、負極の単位面積当たりの容量を増大させることができる。
【0016】
上記発明(発明1)において、前記負極活物質粒子としてシリコン粒子を用いるのが好ましく(発明2)、上記発明(発明1,2)において、前記金属として亜鉛を用いるのが好ましく(発明3)、上記発明(発明1〜3)において、前記可燃性粒子として黒鉛粒子を用いるのが好ましい(発明4)。
【0017】
上記発明(発明1〜4)において、前記冷却工程により冷却した前記集電体上に銅をめっきし、銅薄膜を形成する銅めっき工程をさらに含むのが好ましく(発明5)、かかる発明(発明5)において、前記銅めっき工程において、膜厚が0.001〜0.1μmになるように前記銅薄膜を形成するのが好ましい(発明6)。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、充放電時において負極活物質粒子が膨張及び収縮を繰り返しても、負極活物質粒子の破壊や集電体からの剥離が生じ難く、サイクル特性が大幅に改善されてなるリチウムイオン二次電池用負極を製造する方法、当該方法により製造されるリチウムイオン二次電池用負極及び当該リチウムイオン二次電池用負極を用いたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極の製造方法における各工程を模式的に示す工程フロー図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態におけるリチウムイオン二次電池の概略構成を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の他の実施形態におけるリチウムイオン二次電池の概略構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
〔リチウムイオン二次電池用負極の製造方法〕
図1は、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極の製造方法における各工程を模式的に示す工程フロー図である。
【0023】
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極の製造方法においては、まず、集電体2の一方の面2aに金属膜3をめっきにより形成する(金属膜形成工程,
図1(a)参照)。
【0024】
集電体2としては、例えば、銅、ステンレス、ニッケル等の金属からなる箔又は板を用いることができる。
【0025】
集電体2の一方の面2aにめっきにより形成される金属膜3を構成する金属としては、リチウムイオンとの合金化反応が生じ難い金属を用いることができ、後述する負極活物質粒子4の燃焼温度BTnよりも低い融点MTを有するものを用いることができる。
【0026】
上記金属としては、例えば、亜鉛(融点MT:約420℃程度)等を用いることができ、特に、可燃性粒子5として黒鉛粒子(燃焼温度BTc:約400℃程度)を用いる場合、上記金属として亜鉛を用いるのが好ましい。
【0027】
集電体2の一方の面2aに形成される金属膜3の厚さは、金属膜3の溶融・凝固により十分量の負極活物質粒子4を集電体2上に結着させ得る程度の厚さである限り特に制限されるものではなく、例えば、0.001〜1μm程度とすることができる。金属膜3の厚さが1μmを超えると、負極活物質粒子4の一次粒子の平均粒径にもよるが、溶融し、凝固した金属膜3中に負極活物質粒子4が埋まってしまうおそれがあるため、望ましくない。
【0028】
次に、集電体2の一方の面2aに形成した金属膜3上に、負極活物質粒子4及び可燃性粒子5を少なくとも含有するスラリーを、ロールコーター等の塗工機等を用いて塗布し、80℃程度に加熱して乾燥させる(スラリー塗布工程,
図1(b)参照)。なお、スラリーの塗布後、必要に応じて平板プレス、カレンダーロール等による圧延処理を行ってもよい。
【0029】
負極活物質粒子4としては、上記金属膜3を構成する金属の融点MT及び可燃性粒子5の燃焼温度BTcよりも高い燃焼温度BTnを有するものを用いることができ、例えば、シリコン、シリコン酸化物(一酸化シリコン等)、シリコンと金属との化合物(チタンシリサイド等のメタルシリサイド)等のシリコン系粒子(燃焼温度BTn:約1000℃程度)等を用いることができる。
【0030】
負極活物質粒子4の一次粒子の平均粒径は、0.001〜1μm程度であるのが好ましい。なお、負極活物質粒子4の一次粒子の平均粒径は、例えば、電子顕微鏡(SEM)等を用いて測定することができる。
【0031】
なお、負極活物質粒子4としてのシリコン系粒子であって、0.01μm以下程度のシリコン系粒子は、例えば、平均粒径が数百nm程度のシリコン系微粒子を、フッ化水素酸水溶液中に分散させることにより製造することができる(例えば、特開2012−229146号公報等)。
【0032】
本実施形態において、可燃性粒子5が上記スラリーに負極活物質粒子4とともに含まれることで、後述する加熱工程における加熱により当該可燃性粒子5が燃焼して、負極活物質粒子4間に空隙が形成される。また、可燃性粒子5の燃焼により負極活物質粒子4間に空隙が形成された状態で、後述の加熱工程における上記金属膜3を構成する金属の溶融及び冷却工程における上記金属膜3を構成する金属の凝固を経て、負極活物質粒子4を集電体2(金属膜3)に結着させる。したがって、可燃性粒子5の燃焼温度BTcは、負極活物質粒子4の燃焼温度BTnよりも低い限り、上記金属膜3を構成する金属の融点MTとの関係においては特に制限されるものではない。
【0033】
このような可燃性粒子5としては、燃焼温度BTcが負極活物質粒子4の燃焼温度BTnよりも低いものである限り特に制限はなく、黒鉛粒子、有機物粒子(粉末セルロース等)を用いることができる。例えば、上記金属膜3を構成する金属として亜鉛を用いる場合、可燃性粒子5として黒鉛粒子(燃焼温度BTc:約400℃程度)を用いるのが好ましい。
【0034】
可燃性粒子5の一次粒子の平均粒径は、0.02〜1μmであるのが好ましい。なお、可燃性粒子5の一次粒子の平均粒径は、例えば、電子顕微鏡(SEM)等を用いて測定することができる。
【0035】
なお、リチウムイオン二次電池用負極1における負極活物質粒子4の体積膨張を考慮し、可燃性粒子5の一次粒子の平均粒径は、負極活物質粒子4の一次粒子の平均粒径よりも大きいのが好ましい。特に、負極活物質粒子4としてシリコン系粒子を用いる場合、可燃性粒子5の一次粒子の平均粒径は、負極活物質粒子4の一次粒子の平均粒径の3〜4倍程度であるのが好ましい。
【0036】
上記スラリーにおける負極活物質粒子4及び可燃性粒子5の含有比(固形分換算)は、特に限定されるものではないものの、後述する加熱工程により負極活物質粒子4間に空隙を効果的に形成することができるとともに、リチウムイオン二次電池用負極1の大容量化を達成可能な十分量の負極活物質粒子4を集電体2上に結着可能な範囲で、適宜設定可能である。
【0037】
上記スラリーには、所望によりポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のバインダー、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体等の増粘剤等が含まれていてもよい。なお、本実施形態においては、金属膜3が負極活物質粒子4を集電体2に結着させるためのバインダーとしての役割を果たす。そのため、上記スラリーにPVdF等のバインダーを含ませる場合、スラリー中のバインダー含有量を、負極活物質粒子4及び可燃性粒子5を金属膜3上に仮接着可能な程度(スラリーを塗布した集電体2を容易に取回しできるように仮接着可能な程度)の極少量に設定するのが望ましい。
【0038】
上記スラリーは、例えば、負極活物質粒子4、可燃性粒子5及び水等の溶媒・分散媒、並びに所望によりバインダー及び増粘剤等をミキサーに加え、攪拌することにより調製することができる。
【0039】
続いて、上記スラリーが塗布された集電体2を、酸素の存在下で、金属膜3を構成する金属の融点MT以上、かつ可燃性粒子5の燃焼温度BTc以上の温度に加熱する(加熱工程)。例えば、金属膜3を構成する金属として亜鉛(融点MT:約420℃程度)を用い、可燃性粒子5として黒鉛粒子(燃焼温度BTc:約400℃)を用いた場合、約450℃程度に加熱する。これにより、可燃性粒子5が燃焼して負極活物質粒子4間に空隙が形成されるとともに、金属膜3を構成する金属が溶融する。
【0040】
加熱工程における加熱温度は、金属膜3を構成する金属の融点MT以上、かつ可燃性粒子5の燃焼温度BTc以上であって、負極活物質粒子4の燃焼温度BTn未満であればよい。このような温度で加熱することで、可燃性粒子5の燃焼により負極活物質粒子4間に空隙を形成することができ、その後の冷却工程によって、当該空隙を残存させつつ、金属の凝固により負極活物質粒子4を集電体2に結着させることができる。これにより、スラリーの塗布により金属膜3上に複数層に重なるようにして積層され得る負極活物質粒子4のうち、金属膜3上に直接的に接触している負極活物質粒子4(負極活物質粒子4のうち最下層に位置する粒子)は、少なくとも集電体2に結着される。
【0041】
なお、可燃性粒子5として黒鉛粒子を用いる場合、上記加熱工程において、すべての可燃性粒子5を燃焼させてもよいが、負極活物質粒子4間に十分な空隙を形成可能である限り、加熱工程後の集電体2において、一部の可燃性粒子5がわずかに残存していてもよい。可燃性粒子5としての黒鉛粒子が残存していたとしても、導電助剤としての役割をも果たすことができるため、得られるリチウムイオン二次電池用負極1の特性を低下させるおそれがない。
【0042】
そして、加熱工程後の集電体2を、少なくとも金属膜3を構成する金属の融点MT未満まで冷却する(冷却工程)。これにより、加熱工程により形成された空隙の一部に入り込んだ金属が凝固して、負極活物質粒子4間に空隙を形成しつつ、当該負極活物質粒子4を集電体2上に結着させることができる(
図1(c)参照)。
【0043】
最後に、上述のようにして得られる、負極活物質粒子4が決着されてなる集電体2上に、無電解銅めっきにより銅薄膜6を形成する(銅めっき工程,
図1(d)参照)。このようにして銅薄膜6を形成することで、リチウムイオン二次電池用負極1から負極活物質粒子4が剥離するのを、より効果的に防止することができる。また、上記加熱工程及び冷却工程を経て、金属膜3上に直接的に接触している負極活物質粒子4は少なくとも集電体2に結着されるが、当該負極活物質粒子4の上方に積層される負極活物質粒子4は必ずしも集電体2に結着されない。しかしながら、上記のようにして銅薄膜6を形成することで、金属膜3の溶融・凝固により集電体2に結着された負極活物質粒子4の上の負極活物質粒子4も集電体2上に固定することができる。
【0044】
かかる銅めっき工程において形成される銅薄膜6の厚みは、0.001〜0.1μmであるのが好ましく、0.01〜0.05μmであるのがより好ましい。銅薄膜6の厚みが0.001μm未満となると、集電体2からの負極活物質粒子4の剥離を効果的に防止するのが困難となるおそれがある。また、銅薄膜6の厚みが0.1μmを超えると、リチウムイオン二次電池において、負極活物質粒子4に電解液が接触し難くなることで当該負極活物質粒子4が効果的にリチウムイオンを吸蔵することができず、リチウムイオン二次電池の大容量化を図ることが困難となるおそれがある。
【0045】
上述した、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極の製造方法により、リチウムイオン二次電池用負極1を得ることができる(
図1(d)参照)。このようにして得られるリチウムイオン二次電池用負極1は、負極活物質粒子4間に十分な空隙を有するとともに、負極活物質粒子4が金属膜3を構成する金属の溶融・凝固を経て集電体2上に強固に結着されてなる。よって、本実施形態によれば、充放電時における負極活物質粒子4の膨張・収縮による粒子破壊や集電体2からの剥離を効果的に抑制可能であって、サイクル特性が大幅に改善されてなるリチウムイオン二次電池用負極を製造することができる。
【0046】
また、上述のようにして得られるリチウムイオン二次電池用負極1は、金属膜3を構成する金属の溶融・凝固によって負極活物質粒子4が集電体2上に結着されるため、負極活物質粒子4を集電体2上に結着させるためのバインダーの使用量を大幅に低減することができる。電極反応に直接的に寄与しないバインダーの使用量を大幅に低減可能であることで、単位面積あたりの容量を増大させることができ、電極特性に優れたリチウムイオン二次電池用負極を製造することができる。
【0047】
さらに、集電体2上に負極活物質粒子4を結着させるための金属が導電助剤としての役割をも果たすため、負極活物質粒子4を含むスラリーに炭素系材料等の導電助剤を含有させる必要がない。よって、単位面積あたりの容量を増大させてなるリチウムイオン二次電池用負極1を製造することができる。
【0048】
〔リチウムイオン二次電池〕
次に、本実施形態におけるリチウムイオン二次電池について説明する。
図2は、本実施形態におけるリチウムイオン二次電池の概略構成を模式的に示す断面図である。
【0049】
図2に示すように、本実施形態におけるリチウムイオン二次電池10は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用負極の製造方法により得られるリチウムイオン二次電池用負極1と;リチウムイオン二次電池用負極1に対向して配置されるリチウムイオン二次電池用正極11と;正極11及び負極1により挟まれるセパレータ13と;正極11、負極1及びセパレータ13を収納するコイン型ケース14と;封口板15と;ガスケット16とを備え、コイン型ケース14、封口板15及びガスケット16により内部が密閉された構造を有する。正極11は、正極活物質層11a及び正極集電体11bを有する。正極11及び負極1は、それぞれ正極活物質層11a及び負極活物質粒子4を含む負極活物質層4aがセパレータ13と接するように配置されている。正極11、負極1及びセパレータ13からなる電極群には、電解液12が含浸されている。
【0050】
リチウムイオン二次電池用正極11としては、従来公知のものを用いることができる。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、マンガン酸リチウム(LiMnO
2)等のリチウム含有遷移金属酸化物等の正極活物質粒子が、アルミニウム、ステンレス等の金属箔又は金属板等により構成される正極集電体11bの一方の面に結着されてなる構成を有するものが挙げられる。なお、リチウムイオン二次電池用正極11は、所望により導電助剤(炭素、金属(銅、スズ、亜鉛、ニッケル、銀等)等の導電性物質からなる粉末)を有していてもよい。
【0051】
電解液12としては、例えば、有機溶媒にリチウム塩を溶解させてなる有機溶媒系の非水電解液を用いることができる。電解液に含まれる有機溶媒としては、特に限定されるものではなく、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート等の鎖状エステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状エステル;鎖状エステルと環状エステルとの混合溶媒等が挙げられる。
【0052】
電解液12に含まれるリチウム塩としては、特に限定されるものではなく、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiI、LiCl、LiBr等の無機リチウム塩;LiB[OCOCF
3]
4、LiB[OCOCF
2CF
3]
4、LiPF
4(CF
3)
2、LiN(SO
2CF
3)
2、LiN(SO
2CF
2CF
3)
2等の有機リチウム塩等が挙げられる。
【0053】
セパレータ13としては、従来公知のリチウムイオン二次電池に用いられているセパレータを用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン製の微孔性フィルム、不織布、クロス等が挙げられる。
【0054】
上述したような構成を有する本実施形態におけるリチウムイオン二次電池10においては、リチウムイオン二次電池用負極1を構成する負極活物質粒子4としてシリコン系粒子を用いたときの充放電時における膨張・収縮による問題(粒子崩壊・集電体からの剥離等)が解消されている。そのため、本実施形態によれば、従来に比して大容量であり、サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【0055】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属するすべての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0056】
上記実施形態において、リチウムイオン二次電池用負極の製造方法は、冷却され、負極活物質粒子4が結着されてなる集電体2上に銅薄膜6を形成する銅めっき工程を含むが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、この銅めっき工程を含んでいなくてもよい。すなわち、得られるリチウムイオン二次電池用負極としては、
図1(c)に示す構造を有するものであってもよい。
【0057】
上記実施形態におけるリチウムイオン二次電池として、コイン型リチウムイオン二次電池を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池用負極と、セパレータとを渦巻状に巻回してなる巻回式極板群;リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池用負極と、必要に応じてセパレータとを積層してなる積層式極板群等の極板群と、電解液とを、電池容器中に封入してなる円筒型リチウムイオン二次電池であってもよい。
【0058】
例えば、
図3に示すように、リチウムイオン二次電池20は、正極11及び負極1を、セパレータ23を介して、セパレータ−負極−セパレータ−正極の順に積層配置し、正極11が内側に位置するように巻回して巻回式極板群を構成し、これが電池容器24内に挿入されてなる。正極11は正極リード25を介して正極端子26に、負極1は負極リード27を介して電池容器24にそれぞれ接続され、リチウムイオン二次電池20内部で生じた化学エネルギーを電気エネルギーとして外部に取り出し得るように構成されている。電池容器24内にて巻回式極板群は電解液12に含浸されている。
【符号の説明】
【0059】
1…リチウムイオン二次電池用負極
2…集電体
3…金属膜
4…負極活物質粒子
5…可燃性粒子
6…銅薄膜
10,20…リチウムイオン二次電池