(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0046】
<1. 第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るX線CT撮影装霞1の概略斜視図である。
図2は、セファロスタット43が装着されたX線CT撮影装置1の部分正面図である。
図3は、X線CT撮影装置1の構成を示すブロック図である。
図4は、ビーム成形機構13(X線規制部)の概略斜視図である。
【0047】
また、
図5は、照射範囲が規制されたX線コーンビームBXを照射しているX線発生部10の概略斜視図である。詳細には、
図5(a)は、大照射野CT用X線コーンビームBX1を照射するX線発生部10の概略斜視図である。
図5(b)は、小照射野CT用X線コーンビームBX2を照射するX線発生部10の概略斜視図である。
【0048】
図6は、縦方向遮蔽板14および横方向遮蔽板15の位置調整についての説明図である。詳細には、
図6(a)は、X線コーンビームBXの照射方向(または、照射範囲)を大照射野CT用に規制する場合の縦方向遮蔽板14および横方向遮蔽板15の位置調整を説明するための正面図である。
図6(b)は、X線コーンビームBXの照射範囲を小照射野CT用に規制する場合の縦方向遮蔽板14および横方向遮蔽板15の位置調整を説明するための正面図である。
図6(c)は、X線の照射範囲をX線細隙ビームBXPとしてパノラマ撮影用に規制する場合の縦方向遮蔽板14および横方向遮蔽板15の位置調整を説明するための正面図である。
【0049】
また、
図7は、縦方向遮蔽板14および横方向遮蔽板15の位置調整についての説明図である。なお、
図7(a)、(b)、(c)は、
図6(a)、(b)、(c)と同様の状態をL型遮蔽板18で実施した場合について示している。
【0050】
X線CT撮影装置1は、関心領域について形状が長円状の長円状CT撮影領域CAaを設定するともに、表示手段として機能する操作表示部61と、該操作表示部61によって設定された長円状CT撮影領域CAaに対してX線CT撮影を実行して、投影データ群を収集する本体部2と、本体部2において収集された投影データ群を処理して、各種画像を生成する情報処理装置8とに大別される。
【0051】
本体部2の本体制御部60、情報処理装置8の制御部と演算処理部801b(
図3参照)は、X線CT撮影を含むX線撮影のプログラムIMP(図示省略)に従ってX線撮影を実行する。なお、プログラムIMPは、画像表示ステップS100、重畳表示ステップS110、設定操作受付ステップS120およびX線規制ステップS130をこの順で進行する。
【0052】
なお、本体部2はX線撮影の現場において、中空の縦長直方体状の防X線室70に収容することが望ましく、本体部2と、防X線室70の壁面に装着された操作表示部61と、防X線室70の外部に配置された情報処理装置8とは、接続ケーブル83によって相互に接続されている。
【0053】
本体部2は、被写体M1に向けてX線の束で構成されるX線コーンビームBXやX線細隙ビームBXPを出射するX線発生部10と、X線発生部10で出射されたあと、被写体M1を透過したX線ビームを検出するX線検出部20とを備えている。また本体部2は、X線発生部10とX線検出部20とをそれぞれ支持する支持体である旋回アーム30と、鉛直方向に延びる支柱50と、旋回アーム30を吊り下げるとともに、支柱50に対して鉛直方向に昇降移動可能な昇降部40と、本体制御部60とをさらに備えている。X線発生部10、X線検出部20およびX線発生部10のX線検出部20側に配置されているビーム成形機構13により撮像機構3が構成されている。
【0054】
X線発生部10およびX線検出部20は、旋回アーム30の旋回部30cの両端部にそれぞれ吊り下げ固定されており、互いに対向するように支持されている。旋回アーム30は、鉛直方向に延びる旋回軸31を介して、昇降部40に吊り下げ固定されている。
【0055】
旋回アーム30は、正面視略逆U字状であり、旋回部30cの上端部に備えた旋回軸31を旋回中心Scとして旋回する。なお、本実施形態において、昇降部40は昇降部40の上部から正面視で手前に向けて伸長する上部フレーム41を備え、旋回中心Scは上部フレーム41に対して固定された位置とされている。
【0056】
なお、本実施形態に係る旋回アーム30は、U字状に形成されているが、その他の形状とされてもよい。例えば、円柱状部材の外周部に、ボール軸受けなどを介して回転可能に嵌め込まれた環状部材を旋回アームとすることも考えられる。この場合、該環状部材にX線発生部10とX線検出部20とが、被写体M1を挟んで対向するように取り付けられる。
【0057】
以下においては、旋回軸31の軸方向と平行な方向(ここでは、鉛直方向、すなわち縦方向)を「Z軸方向」とし、このZ軸に交差する方向を「X軸方向」とし、さらにX軸方向およびZ軸方向に交差する方向を「Y軸方向」とする(XYZ直交座標系)。なお、X軸およびY軸方向は任意に定め得るが、ここでは、被写体M1である被検者がX線CT撮影装置1において位置決めされて支柱50に正対したときの、被検者の左右の方向をX軸方向とし、被検者の前後の方向をY軸方向と定義する。X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は、本実施形態では互いに直交するものとする。また、以下において、Z戦方向を鉛直方向、X軸方向とY軸方向の2次元方向で規定される平面上の方向を水平方向と呼ぶこともある。
【0058】
これに対して、旋回する旋回アーム30上の三次元座標については、X線発生部10とX線検出部20とが対向する方向を「y軸方向」とし、y軸方向に直交する水平方向を「x軸方向」とし、これらx軸およびy軸方向に直交する鉛直方向を「z軸方向」とする(xyz直交座標系)。本実施形態および以降の各実施形態では、z軸方向とZ軸方向は平行となっている。また、本実施形態に係る旋回アーム30は、鉛直方向に延びる旋回軸31を回転軸として旋回する。したがって、xyz直交座標系は、XYZ直交座標系に対してZ軸(=z軸)周りに回転することとなる。x軸方向とy軸方向は、z軸方向に直交する2次元平面上で互いに直交する2方向である。
【0059】
また、
図1に示されるX線発生部10、X線検出部20を上から平面視したときにX線発生部10からX線検出部20へ向かう方向を(+y)方向とし、この(+y)方向に直交する水平な右手方向(
図1において、X線検出部20の方からX線発生部10を見たときの左手方向)を(+x)方向とし、鉛直方向上向きを(+z)方向とする。
【0060】
昇降部40は、上部フレーム41(第一支持体保持部)と下部フレーム42とで構成されており、鉛直方向に沿って立設された支柱50に係合している。支持体の保持部として機能する上部フレーム41には、旋回軸31が取り付けられている。昇降部40が支柱50に沿って鉛直方向に移動することによって、旋回アーム30が上下に移動する。
【0061】
なお、旋回アーム30を旋回させる構造としては、上部フレーム41に対しては旋回不能に固定された旋回軸31に対し、旋回アームの旋回部30cを旋回可能に設け、旋回アーム30を旋回軸31に対して旋回駆動するようにしてもよい。また、上部フレーム41に対して旋回可能に設けた旋回軸31に旋回アーム30の旋回部30cを旋回不能に固定し、旋回軸31を旋回駆動することで旋回アーム30を旋回するようにしてもよい。
【0062】
前者の場合、例えば、不図示のベルトやプーリなどの動力伝達機構により、旋回用モータ37の回転力が旋回用モータ37を固定する旋回アーム30の回転に作用するようにすることができる。例えば、旋回用モータ37(支持体旋回駆動部)を旋回アーム30内部に固定し、旋回用モータ37の回転軸に固定したプーリと旋回軸31の双方に環状のベルトをかけ渡し、旋回用モータ37の回転力が旋回用モータ37を固定する旋回アーム30の回転に作用するようにすることができる。この場合、旋回軸31と旋回部30cとの間にはベアリングなどの軸受部材を介在させればよい。
【0063】
また、上部フレーム41に、旋回軸31を中心として、旋回アーム30を旋回させる旋回用モータ37を設け、不図示のベルトやプーリ、回転軸などからなり、旋回軸31中を通る伝達機構により、旋回用モータによる回転力が旋回アーム30に伝達されることで、旋回アーム30が旋回するようにしてもよい。
【0064】
無論、後者のように、上部フレーム41に対して旋回可能に設けた旋回軸31に旋回アーム30の旋回部30cを旋回不能に固定し、旋回軸31を旋回駆動することで旋回アーム30を旋回する構造を採用してもよく、この場合、旋回用モータ37を上部フレーム41内部に固定し、不図示のローラなどの伝達機構により、旋回用モータ37の回転力が旋回軸31の回転に作用するようにすることができる。この場合、旋回軸31と上部フレーム41との間にはベアリングなどの軸受部材を介在させればよい。
【0065】
また、本実施形態では、旋回軸31は、鉛直方向に沿って延びるように構成されているが、鉛直方向に対して任意の角度で傾けて配置されることも考えられる。
【0066】
旋回軸31と旋回アーム30の間には、不図示のベアリングが介在している。このため、旋回アーム30は、旋回軸31に対してスムーズに回転することができる。なお、旋回軸31、ベアリング、ベルトやプーリ、回転軸などからなる伝達機構および旋回用モータ37は、旋回アーム30を旋回させる旋回機構の一例である。本実施形態では、定位置に回転しないように固定された旋回軸31に対して旋回アーム30が旋回する。しかしながら、前述のとおり、旋回アーム30に固定された旋回軸31を上部フレーム41に対して回転させることで、旋回アーム30を旋回させることも考えられる。この場合、上部フレーム41側に、旋回軸31を回転可能に支持するベアリングが形成される。
【0067】
下部フレーム42には、被写体M1(ここでは、人体の頭部)を左右の両側から固定するイヤロッドや、顎を固定するチンレストなどで構成される、被写体固定部421が設けられている。
【0068】
旋回アーム30は、被写体M1の身長に合わせて昇降部40が昇降することにより、適当な位置に配置される。そして、その状態で被写体Mlが被写体固定部421に固定される。なお、被写体固定部421は、
図1に示される例では、被写体M1の体軸が旋回軸31の軸方向とほぼ同じ方向となるように被写体M1を保持する。
【0069】
本体制御部60は、本体部2の各構成の動作を制御する制御部であり、例えば、X線規制制御部および駆動制御部として機能する。本体制御部60は、
図1に示されるように、X線検出部20の内部に配置されている。
【0070】
また、本体制御部60の外側、すなわちX線検出部20の+Y側の面には、各種命令を入カするためのボタン類、または、各種情報を表示するタッチパネルで構成された操作表示部62が取り付けられている。
【0071】
本体部2を収容する防X線室70の壁の外側には、本体制御部60に接続され、各種命令を入力操作するためのボタンなどや各種情報を表示するタッチパネルで構成された操作表示部61が取り付けられている。
【0072】
なお、操作者(例えば、術者)は操作表示部62を介して本体部2を操作するようにしてもよいし、操作表示部61を介して本体部2を操作するようにしてもよい。操作表示部62と操作表示部61とで操作内容や表示内容が、異なっていてもよいし、あるいは、操作表示部62と操作表示部61とで、操作内容や表示内容の一部あるいは全部が、共通するようにしてもよい。
【0073】
また、防X線室70が省略されるなどの場合は、操作表示部61が省絡されてもよい。また、操作表示部62と操作表示部61のどちらか一方を省略することもできる。以下においては、操作表示部61による表示や操作について説明するが、操作表示部62による表示や操作に置き換えてもよい。
【0074】
操作表示部61は、生体器官などの撮影領域の位置などを指定することなどにも用いられる。また、X線撮影には各種のモードがあるが、操作表示部61の操作によって、モードの選択ができるように構成してもよい。
【0075】
図8は、CT撮影領域設定画面200の一例を示す図である。操作表示部61には、
図8に示されるような、長円状CT撮影領域CAaを設定するためのCT撮影領域設定画面200が表示される。長円状CT撮影領域CAaは、設定CT撮影領域の一例である。なお、操作表示部62に表示する場合は、CT撮影領域設定画面200と同様のCT撮影領域設定画面202(
図1参照)が操作表示部62に表示される。
【0076】
CT撮影領域設定手段(CT撮影領域設定部)として機能するCT撮影領域設定画面200は、歯列弓画像211を表示する画像表示部210と、上下顎選択部220と、選択範囲設定部230と、条件設定部240とで構成されている。画像表示部210は、湾曲する歯列弓領域を曲線で表した形状を表す歯列弓画像211を表示している。なお、
図8に示されるCT撮影領域設定画面200は、歯列弓領域Xに対して、歯列弓を構成するアーチ状の曲線に沿った、形状が長円状の長円状CT撮影領域CAaを設定する、長円状モードの設定画面である。
【0077】
画像表示部210には、表示された歯列弓画像211(画像表示ステップS100)に対して、設定する長円状CT撮影領域CAaにおける長手方向の中心を指定する指定カーソル(ポインタ)212と、指定カーソル212で指定された中心に対し、後述する選択範囲設定部230で指定された、長円状CT撮影領域CAaが囲む歯の本数に応じた長円状であり、設定CT撮影領域を示す設定領域画像であるCT撮影領域ライン213(設定領域画像)とが重畳表示されている(重畳表示ステップS110)。歯列弓画像211は、体軸方向から見た顎骨(ここでは顎)を表す画像である。
【0078】
図8に示されるCT撮影領域設定画面200は、歯列弓を旋回軸31の軸方向から平面視した図となっている。長円状CT撮影領域CAaの長円形状も、旋回軸31の軸方向から平面視したときの形状である。
【0079】
厳密には、CT撮影領域ライン213で示される表示上の設定CT撮影領域(
図8に示される例では、長円状CT撮影領域CAa)と、実際の三次元空間上におけるCT撮影領域とは区別されるものである。しかしながら、好ましくは、表示上の設定CT撮影領域と実際の三次元空間上のCT撮影領域とが、ほぼ対応するように設定される。ただし、操作者(術者)が認識しやすいように、実際の三次元空間上のCT撮影領域に対して、表示上の設定CT撮影領域が若干変形加工されて表示されるようにしてもよい。
【0080】
上下顎選択部220は、長円状CT撮影領域CAaを上顎に設定するためのUPPERボタン221と、上顎および下顎の両方に設定するためのFULLボタン222と、下顎に設定するためのLOWERボタン223とで構成されている。
【0081】
選択範囲設定部230は、1本刻みで歯数が設定されたスケール231aと、所望の歯数を指定するために、スケール231a上をスライド移動するスライダー231bとで構成されたスライド設定部231を備えている。
【0082】
条件設定部240は、Setボタン241と、Resetボタン242と、Startボタン243と、Modeボタン244と、Returnボタン245とで構成されている。Setボタン241は、画像表示部210、上下顎選択部220および選択範囲設定部230を介して設定された、長円状CT撮影領域CAaの指定内容を決定するために操作される(設定操作受付ステップS120)。Resetボタン242は、間像表示部210、上下顎選択部220および選択範囲設定部230で設定された長円状CT撮影領域CAaの指定内容をリセットする際に操作される操作ボタンである。
【0083】
Startボタン243は、Setボタン241で確定された指定内容に基づいて長円状CT撮影領域CAaのX線CT撮影を開始指示する操作ボタンである。Modeボタン244は、各種モードを選択するためのボタンである。本実施形態では、Modeボタン244は、複数本の歯を含む領域の指定に適した長円状CT撮影領域CAaを設定する長円状モードと、歯列弓領域Xにおける局所的な撮影対象物に対して真円状の真円状CT撮影領域CAdを設定する真円状モードとの間で、設定モードを切り替えるための操作ボタンである。なお、X線CT撮影装置1がパノラマ撮影も可能な装置である場合には、Modeボタン244を介して、X線CT撮影モードとパノラマモードとの切り替えができるようにしてもよい。このパノラマモードはパノラマ撮影(パノラマX線撮影)を行うモードを示しており、パノラマ画像はパノラマX線画像である。つまり、Modeボタン244は、X線CT撮影装置1が実行する撮影モードを、種々の形状をCT撮影領域とするX線CT撮影と、パノラマ撮影との間で切り替える撮影モード切換部として機能する。
【0084】
Returnボタン245は、不図示の初期画面に戻るための操作ボタンである。なお、上述の説明では、操作表示部61がタッチパネルで構成され、CT撮影領域設定画面200に表示された指定カーソル212の操作により、長円状CT撮影領域CAaの設定操作を受け付けるとしている。しかしながら、操作表示部61が液晶画面で構成され、マウスなどのポインティングデバイス、あるいは、操作表示部61近傍に設置される操作ボタン類を介して、CT撮影領域CAの設定操作が受け付けられるようにしてもよい。
【0085】
また、上述の説明では、操作表示部61にCT撮影領域設定画面200が表示されてCT撮影領域CAの設定操作が受け付けられている。しかしながら、CT撮影領域設定画面200が、後述する情報処理装置8の表示部81に表示されるようにして、情報処理装置8において、CT撮影領域CAの設定操作が受け付けられるようにしてもよい。
【0086】
情報処理装置8は、情報処理本体部80と、例えば液晶モニタなどのディスプレイ装置で構成される表示部81、および、キーボードやマウスなどで構成される操作部82を備えている。操作者(術者など)は、操作部82を介して情報処理装置8に対して各種指令を入力することができる。なお、表示部81は、タッチパネルで構成されていてもよく、この場合は、表示部81が操作部82の機能の一部または全部を備えていてもよい。表示部81と操作部82とは情報処理装置側の操作表示部61を構成する要素である。
【0087】
情報処理本体部80は、例えばコンピュータやワークステーションなどで構成されている。情報処理本体部80は、通信ケーブルである接続ケーブル83を介して、本体部2との間で各種データを送受信する。ただし、本体部2と情報処理本体部80との間で、無線通信によるデータ通信が行われてもよい。
【0088】
情報処理装置8は、本体部2で取得された投影データを加工して、ボクセルで表現される三次元データ(ボリュームデータ)を再構成する。例えば、この三次元データに特定の面を設定すると、その特定の面における、断層面画像を再構成することができる。
【0089】
なお、
図2に示されるように、X線CT撮影装置1にセファロスタット43を装着してもよい。セファロスタット43は、例えば、昇降部40の途中から水平方向に延びるアーム501に取り付けられる。セファロスタット43には、頭部を定位置に固定するための固定具431や、セファロ撮影用のX線検出器432が備えられる。なお、セファロスタット43は、例えば、特許文献4(特開2003−245277号公報)に開示されているセファロスタット、または、これに類するもの採用することができる。
【0090】
<ビーム成形機構13によるビーム成形>
次に、X線発生部10で発生したX線の照射範囲を遮蔽により規制して、X線検出部20に向けて角錐台状に広がるX線コーンビームBXを形成するビーム成形機構13について
図4〜7を参照しつつ説明する。
【0091】
旋回アーム30において、X線検出部20に対向配置されたX線発生部10は、ハウジング11に収容されたX線管からなるX線発生器10aを備えている。なお、ハウジング11の前面には、X線管で発生したX線の透過を許容する出射口12が設けられている。そして、出射口12の前方(
図4における手前側であり、X線発生部10に対してy軸方向)にビーム成形機構13が配置されている。
【0092】
ビーム成形機構13は、X線の照射方向を、縦方向(z軸方向)に移動して遮蔽する縦方向遮蔽板14と、横方向(x軸方向)に移動して遮蔽する横方向遮蔽板15と、縦方向遮蔽板14および横方向遮蔽板15をそれぞれ移動させる遮蔽板移動機構16とで構成されている。ビーム成形機構13の制御は、本体制御部60(X線規制制御部)により行われる。縦方向遮蔽板14と横方向遮蔽板15は、X線発生器10aから発生したX線の遮蔽量を制限可能に規制するために用いられる、X線遮蔽部材の例である。
【0093】
縦方向遮蔽板14は、出射口12の正面視上下(+z側および−z側)のそれぞれに配置された、横長板状の上側縦方向遮蔽板14aおよび下側縦方向遮蔽板14bで構成されている。また、横方向遮蔽板15は、出射口12の正面視左右(−x側および+x側)のそれぞれに配置された、縦長板状の左側横方向遮蔽板15aおよび右側横方向遮蔽板15bで構成されている。なお、
図4に示される例では、横方向遮蔽板15が縦方向遮蔽板14のハウジング11側(−y側)に配置されている。しかしながら、縦方向遮蔽板14を横方向遮蔽板15のハウジング11側に配置されていてもよい。
【0094】
遮蔽板移動機構16は、上側縦方向遮蔽板14a、下側縦方向遮蔽板14bをそれぞれ縦方向に移動させる一対の遮蔽板縦方向移動機構16aと、左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15bをそれぞれ横方向に移動させる一対の遮蔽板横方向移動機構16bとで構成されている。
【0095】
遮蔽板縦方向移動機構16aは、上側縦方向遮蔽板14a、下側縦方向遮蔽板14bのそれぞれに取り付けられているナット部材141と、ナット部材141が螺合するとともに縦方向に延びる縦方向ネジシャフト161aと、縦方向ネジシャフト161aを正・逆回転させる位置調整モータ162a(162)と、を備えている。位置調整モータ162aの駆動により縦方向ネジシャフト161aが正回転または逆回転することで、ナット部材141が縦方向に沿って上下に移動する。これにより、上側縦方向遮蔽板14a、下側縦方向遮蔽板14bは、独立して、縦方向に移動する。本体制御部60の制御に基づき、遮蔽板縦方向移動機構16aは、X線発生器10aから出射されたX線ビームの縦方向に関する遮蔽量を、上側縦方向遮蔽板14a、下側縦方向遮蔽板14bにより調整する。遮蔽板縦方向移動機構16aは、X線ビームの縦方向に関する広がり(照射範囲)を調整することで、照射方向(照射範囲の中心線が延びる方向)を制御する縦方向照射位置制御部の一例である。
【0096】
なお、上側縦方向遮蔽板14a、下側縦方向遮蔽板14bのそれぞれには、規制筒状体142が取り付けられている。規制筒状体142には、縦方向に沿って貫通する貫通孔が形成されている。また、規制筒状体142には、縦方向に延びる規制シャフト143が嵌挿されており、規制筒状体142の縦方向の移動が規制シャフト143によって規制されている。このため、上側縦方向遮蔽板14a、下側縦方向遮蔽板14bは、傾くことなく縦方向に移動する。
【0097】
遮蔽板横方向移動機構16bは、左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15bのそれぞれに取り付けられたナット部材161と、ナット部材161が螺合するととともに横方向に延びる横方向ネジシャフト161bと、横方向ネジシャフト161bを正・逆回転させる位置調整モータ162b(162)と、を備えている。位置調整モータ162bの駆動により横方向ネジシャフト161bが正・逆回転することで、ナット部材161が横方向に沿って左右に移動する。これにより、左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15bは、独立して、横方向に移動する。本体制御部60の制御に基づき、遮蔽板横方向移動機構16bは、X線発生器10aから出射されたX線ビームの横方向に関する遮蔽量を、左側横方向遮蔽板15a、横方向遮蔽板15bにより調整する。遮蔽板横方向移動機構16bは、X線ビームの横方向に関する照射範囲を調整することにより、照射方向を制御する横方向照射位置制御部の一例である。
【0098】
なお、左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15bのそれぞれには、規制筒状体152が取り付けられている。規制筒状体152には、横方向に沿って貫通する貫通孔が形成されている。また、規制筒状体152には、縦方向に延びる規制シャフト153が嵌挿されており、規制筒状体152の横方向の移動が規制シャフト153によって規制されている。このため、左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15bは、傾くことなく横方向に移動する。
【0099】
このように、本実施形態では、ビーム成形機構13が縦方向遮蔽板14、横方向遮蔽板15および遮蔽板移動機構16で構成され、該ビーム成形機構13がX線発生部10における出射口12の前方に配置される。これにより、X線発生部10にて発生したX線の照射範囲が遮蔽により規制され、X線検出部20に向けて角錐台状に広がるX線コーンビームBXが形成されることとなる。
【0100】
詳細には、上側縦方向遮蔽板14aおよび下側縦方向遮蔽板14bにおける対向縁部14c、14c間の間隔が、遮蔽板縦方向移動機構16aによって調整され、左側横方向遮蔽板15aおよび右側横方向遮蔽板15bにおける対向縁部15c、15c間の間隔が、遮蔽板横方向移動機構16bによって調整される。そして、対向縁部14c、14cおよび対向縁部15c、15cによって、所望形状のX線コーンビームBXを形成するための正面視四角形状の開口17が形成される。
【0101】
例えば、
図5(a)および
図6(a)に示されるように、対向縁部14c、14c間の間隔が広く調整され、対向縁部15c、15c間の間隔が広く調整されることで、開口17が正面視において比較的大きな正方形状の大照射野用開口17aとなる。大照射野用開口17aを透過したX線は、断面が正方形となり、X線検出部20に向けて正四角錐台状に広がる大照射野用X線コーンビームBX1となる。
【0102】
これに対して、
図5(b)および
図6(b)に示されるように、対向縁部14c、14c間の間隔が狭く調整され、対向縁部15c、15c間の間隔が狭く調整されることで、開口17が正面視において比較的小さい正方形状の小照射野用開口17bとなる。小照射野用開口17bを透過したX線は、断面が正方形であり、X線検出部20に向けて正四角錐台状に広がる小照射野用X線コーンビームBX2となる。
【0103】
また、
図6(c)に示されるように、対向縁部14c、14c間の間隔が広く調整され、対向縁部15c、15c間の間隔が狭く調整されることで、開口17が正面視縦長である長方形状のパノラマ撮影用開口17cとなる。パノラマ撮影用開口17cを透過したX線は、X線検出部20に向けて縦長角錐台状に広がるX線細隙ビームBXPとなる。
【0104】
なお、上述のビーム成形機構13は、それぞれ2枚の板材で構成されている縦方向遮蔽板14および横方向遮蔽板15を遮蔽板移動機構16で移動させ、所望のX線コーンビームBXを照射するための開口17を形成している。しかしながら、ビーム成形機構13は、このような構成に限定されるものではない。例えば、
図7に示されるように、正面視L型の2枚のL型遮蔽板18、18を、開口17の中心に対して点対称配置してもよい。この場合、2枚のL型遮蔽板18、18の内角部を構成する縁部18a、18aによって、開口17が構成される。
【0105】
開口17の形状は、例えば、遮蔽板縦方向移動機構16a、遮蔽板横方向移動機構16bの両方を設けることで、各L型遮蔽板18を縦方向および横方向に移動することで調整することができる。
【0106】
例えば、遮蔽板横方向移動機構16bと同様の横方向移動機構によって横方向に変位する不図示の基台上に、遮蔽板縦方向移動機構16aと同様の縦方向移動機構を設け、この縦方向移動機構によって、1枚のL型遮蔽板18を縦方向に変位させる。このような横方向移動機構、基台、縦方向移動機構によって、各L型遮蔽板18を縦方向または横方向に移動させることができる。
【0107】
X線検出部20は、X線を検出するための検出面21’を有するX線検出器21を備えており、確実に検出面21’にX線コーンビームBXを投影させる。
【0108】
X線CT撮影装置1は、
図3に示されるように、ビーム成形機構13、旋回用モータ37、X線発生部10およびX線検出部20は、本体制御部60に接続されている。ビーム成形機構13、旋回用モータ37、X線発生部10およびX線検出部20は、予め決められたプログラムに従って駆動されることにより、撮影対象物に対して設定された長円状CT撮影領域CAaについて、適切にX線CT撮影することができる。
【0109】
次に、X線CT撮影装置1によって、被写体M1の右側歯列撮影対象物OB1(
図8においてCT撮影領域ライン213で囲まれる範囲。)をX線CT撮影する態様について説明する。なお、以下の説明においては、前歯を含む前歯側の歯(前歯群T1)、左側臼歯を含む左側臼歯側の歯(左側臼歯群T2)および右側臼歯を含む右側臼歯側の歯(右側臼歯群T3)で構成される上顎の歯列弓において、前歯群T1から右側臼歯群T3までの範囲を右側歯列撮影対象物OB1としている。また、上顎における右側歯列撮影対象物OB1をX線CT撮影するため、旋回軸31の軸方向から見て、右側歯列撮影対象物OB1が歯列弓領域Xにおける右側の曲線に沿った長円状の長円状CT撮影領域CAaとして設定されているものとする。
【0110】
なお、
図8などにおいては、下顎頭を有する下顎骨が示されているが、上顎についてCT撮影領域CAが設定される場合であっても、下顎骨の形状が表示されていれば、歯牙などの位置を容易に把握することができるので、下顎骨の画像を用いて差し支えない。したがって、画像表示部210に表示される画像は、下顎骨を示す歯列弓画像211のみであってもよい。もちろん、上顎骨を示す歯列弓画像211と下顎骨を示す歯列弓画像211とが切り替え可能に表示されてもよい。また、上顎と下顎の双方にCT撮影領域CAが設定される場合にも下顎骨の画像を用いてよいし、上顎と下顎の双方用の画像に切り替わるようにしてもよい。歯列弓画像211は、被写体M1に関する領域指定用画像の一例である。
【0111】
次に、CT撮影領域設定画面200の画像表示部210に表示されている歯列弓画像211に対して、指定カーソル212で長円状CT撮影領域CAaにおける長手方向の中心が指定される。また、選択範囲設定部230におけるスライダー231bが左右にスライドされることにより、長円状CT撮影領域CAaに含められる歯数が設定される。
【0112】
例えば、スライド設定部231で指定される歯数が奇数本である場合は、長内状CT撮影領域CAaにおける長手方向の中心として、長手方向の中心となる特定の歯が、指定カーソル212によって指定される。
【0113】
具体的に、不図示の歯TH1、TH2、TH3がこの順で並んでおり、歯TH2が長円状CT撮影領域CAaの長手方向の中心の歯であって、歯TH1、TH2、TH3がCT撮影対象とされる場合、指定カーソル212で歯TH2が指定されるとともに、スライド設定部231にて3本の歯数が指定される。これにより、歯TH1、TH2、TH3に対して、長円状CT撮影領域CAaが設定される。
【0114】
長円状CT撮影領域CAaの長円の長径は指定操作によって定まるが、短径も長径の指定操作に従って自動的に定まるように設定されている。このとき、そのつど幾何学的演算がなされてもよいし、予めテーブルに長径と対応する短径が定められていてもよい。いずれにしても、X線発生器10a、X線検出器21、ビーム成形機構13からなる撮像系によって撮影が可能で、かつ歯列弓に沿ってなるべく無駄なく、対象歯牙のみがCT撮影対象になるように長円状CT撮影領域CAaの長円の形状が定められる。
【0115】
また、スライド設定部231で指定される歯数が偶数本である場合は、長円状CT撮影領域CAaにおける長手方向の中心として、長手方向の中心付近の2本の歯の間が指定カーソル212によって指定される。
【0116】
具体的に、歯TH1、TH2、TH3、TH4、TH5がこの順で並んでおり、歯TH1〜TH4が関心領域とされる場合、指定カーソル212によって歯TH2、TH3の間の地点が指定され、スライド設定部231にて4本の歯数が指定される。これにより、歯TH1〜TH4を含むように、長円状CT撮影領域CAaが設定される。
【0117】
ただし、必ずしも、指定カーソル212によって歯TH2、TH3の間を指定しなくてもよい。例えば、指定歯数が奇数本のときと同様に、関心領域の中心付近にある歯を指定されてもよい。この場合、長円状CT撮影領域CAaとして、実際にどのような範囲が設定されるか、任意に決めておくことができる。
【0118】
例えば、歯TH3が指定され、スライド設定部231で4本の歯数が指定された場合に、歯TH1、歯TH5のそれぞれの中央部分が境界領域になるようにして、長円状CT撮影領域CAaが歯TH1の半分の領域と、歯TH2〜TH4の全領域と、歯TH5の半分の領域とに跨がるように設定されてもよい。
【0119】
また、長円状CT撮影領域CAaにおける長手方向の中心位置が若干調整されることにより、長円状CT撮影領域CAaが、前歯寄りの4本の歯TH1〜TH4に対して長円状CT撮影領域CAaが設定されたり、奥歯寄りの4本の歯TH2〜TH5に対して長円状CT撮影領域CAaを設定されたり、設定歯数を4から5に切り上げて、歯TH1〜TH5の全てに対して長円状CT撮影領域CAaが設定されたり、あるいは、設定歯数を4から3に切り下げて、歯TH2〜TH4に対して設定されるようにすることも考えられる。
【0120】
CT撮影領域設定画面200上で入力された指定情報(長円状CT撮影領域CAaの長手方向中心の位置情報と、長円状CT撮影領域CAaに含める歯数に関する情報)は、情報処理装置8に送信される。指定情報を受け付けた情報処理装置8は、中心位置と歯数とに応じて予め設定された長円状のCT撮影領域ライン213に関する情報を操作表示部61に送信する。CT撮影領域ライン213に関する情報を受信した操作表示部61は、CT撮影領域設定画面200の画像表示部210に、歯列弓画像211と、受信した情報に基づくCT撮影領域ライン213とを、重畳表示する。
【0121】
CT撮影領域設定画面200を確認した操作者(例えば術者)により、CT撮影領域ライン213が歯列弓画像211に対して所望の位置および範囲に設定されていることが確認される。この状態でSetボタン241が押下されると、CT撮影領域ライン213が長円状CT撮影領域CAaとして確定され、情報処理装置8に送信される。さらに、Startボタン243が押下されると、後述するように、確定された長円状CT撮影領域CAaに基づいて、X線CT撮影装置1による、右側歯列撮影対象物OB1のX線CT撮影が開始される。
【0122】
これに対して、Resetボタン242が押下されると、画像表示部210、上下顎選択部220および選択範囲設定部230による指定操作がキャンセルされ、指定前のデフォルト(初期状態)画面に戻される。なお、1つの操作前の操作状態に戻ったり、1つ操作後の操作状態に進めたりする、不図示のUNDOボタン、REDOボタンなどがCT撮影領域設定画面200上に用意されていてもよい。
【0123】
X線CT撮影装置1による右側歯列撮影対象物OB1のX線CT撮影は、被写体M1がX線CT撮影装置1における所定位置に配置された状態において(
図1参照)、旋回アーム30が、右側臼歯群T3側にX線発生部10、左側臼歯群T2側にX線検出部20を配置した初期位置(第1旋回位置)から、
図9に示されるように、旋回軸31を旋回中心Scとして180度以上旋回することにより行われる(X線規制ステップS130)。
【0124】
なお、旋回角度が180度のみの場合でもX線CT撮影は可能である。しかしながら、CT撮影領域のいずれの筒所についても、180度以上の各方向からX線コーンビームBXの投影データを得ることが好ましい。そこで、好適には、旋回軸31の軸方向から見た、X線コーンビームBXの広がり角(ファン角)を180度に加えた旋回角度(=180度+ファン角)のX線CT撮影が行われる。また、旋回角度が360度以上とされることにより、CT画像の画質を向上させることができる。ただし、CT画像の画質を向上させつつ、CT撮影時間を短縮し、X線被曝量を低減するためには、旋回角度が360度となるようにX線CT撮影が行われることが好ましい。
【0125】
なお、上述の旋回角度(180度、180度+ファン角または360度)は、画像再構成上、実質的な差が生じない程度の多少の角度の増減を含む範囲を想定している。
【0126】
X線CT撮影装置1は、旋回軸31を旋回中心Scとして旋回アーム30を回転させることで、X線コーンビームBXを旋回させている間、予め定められた回数分、X線検出部20にて検出する。より具体的には、本体制御部60は、旋回用モータ37を監視し、旋回軸31周りに旋回する旋回アーム30が所定の角度分回転する毎に、X線検出器21で取得される検出信号を投影データとして収集する。
【0127】
なお、旋回アーム30が旋回する間、X線コーンビームBXが被写体M1に対して常時照射されるようにしてもよいが、X線検出部20がX線を検出するタイミングに合わせて、X線コーンビームBXが間欠的に照射されるようにしてもよい。後者の場合、被写体M1に対して、X線が間欠的に照射されることとなるため、被写体M1のX線被曝量を低減することができる。
【0128】
収集された投影データ群は、逐次情報処理装置8に転送され、例えば記憶部802に記憶される。そして収集された投影データ群は、演算処理部801bにおいて加工され、三次元データに再構成される。演算処理部801bにおける再構成の演算処理は、所定の前処理、フィルタ処理、逆投影処理などで構成される。これらの演算処理については、周知技術を含む各種画像処理技術を適用することが可能である。
【0129】
図9は、長円状CT撮影領域CAaについてのX線CT撮影における、X線発生器10a、横方向遮蔽板15およびX線検出器21の軌跡を示す概略平面図である。なお、同図においては、X線発生器10a、横方向遮蔽板15およびX線検出器21が第1旋回位置に位置する場合が実線で示されており、第2旋回位置〜第5旋回位置に位置する場合が破線で示されている。
【0130】
また、
図10〜
図12は、長円状CT撮影領域CAaがX線CT撮影されるときの、X線発生器10a、横方向遮蔽板15およびX線検出器21を示す概略平面図である。より具体的には、
図10(a)は、旋回アーム30が初期位置(第1旋回位置)に位置するときの平面概略図である。
図10(b)は、旋回アーム30が第2旋回位置に位置するときの平面概略図である。
図11(a)は、旋回アーム30が第3旋凹位置に位置するときの平面概略図である。
図11(b)は、旋回アーム30が第4旋回位置に位置するときの平面概略図である。
図12(a)は、旋回アーム30が第5旋回位置に位置するときの平面概略図である。
図12(b)は、旋回アーム30が第1旋回位置〜第5旋回位置まで旋回移動する様子を示す平面概略図である。
【0131】
図9〜
図12に示される、旋回アーム30の各旋回位置は、X線CT撮影の状況について説明を容易にするために所定角度ごとに図示しているにすぎない。つまり、CT撮影中、旋回アーム30は停止させることなく、連続して旋回する。なお、
図9(a)に示される第1旋回位置と、
図12(a)に示される第5旋回位置(旋回アーム30が第1旋回位置から180度旋回したときの位置)とは、旋回中心Scを通る不図示の対象軸に関して、対照関係にある。
【0132】
ここで、非規制時のX線コーンビームBXをX線コーンビームBXVとする。歯列弓領域X全体を含むZ軸方向から見た断面形状が真円形状である円柱状CT撮影領域CAoが従来のX線CT撮影のCT撮影領域であって、X線コーンビームBXVでCT撮影領域CAoを照射してX線CT撮影を行うことができるものとする。
【0133】
従来のX線CT撮影であれば、CT撮影の間、CT撮影領域CAoの全域に対して、
図10(a)から
図12(a)に示されるように、常にX線コーンビームBXVが旋回中心Scを旋回中心としてCT撮影領域CAoに対して照射される。これに対して、長円状CT撮影領域CAaのX線CT撮影を行う場合には、
図9〜
図12に示されるように、X線コーンビームBXの水平方向における照射範囲が、長円状CT撮影領域CAaの形状に合わせてX線コーンビームBXVよりも狭くなるように調整される。
【0134】
図9〜
図12に示されるように、第1旋回位置から旋回中心Sc周りに旋回する旋回アーム30において、X線発生部10からy軸方向に沿って照射するX線コーンビームBXの中心(X線コーンビームBXVの中心であり、旋回方向基準照射中心線BCL1)は、常に旋回中心Scを通り、X線検出部20に向かう。しなしながら、右側歯列撮影対象物OB1を含む長円柱状の長円状CT撮影領域CAaは、旋回アーム30のある旋回角度範囲では旋回中心Scに対して+x側に偏心し、旋回アーム30の別の旋回角度範囲では旋回中心Scに対して−x側に偏心している。このため、X線発生部10から出射されるX線コーンビームBXの水平方向における照射範囲が、ビーム成形機構13によって調整される。
【0135】
すなわち、
図9(a)などに示される長円状CT撮影領域CAaについて、X線CT撮影が行われる場合、旋回アーム30の旋回が進むにつれて、X線発生部10側から見た長円状CT撮影領域CAaの横方向端部の、旋回中心Scに対する偏心量が変化する。この偏心量の変化に合わせてX線コーンビームBXの水平方向における照射方向が、ビーム成形機構13によって調整される。
【0136】
また、右側歯列撮影対象物OB1を含む長円柱状の長円状CT撮影領域CAaの横方向の幅は、横方向の広がりを規制しないときのX線コーンビームBXに対して狭くなる場合がある。そこで、X線CT撮影中、ビーム成形機構13は、X線コーンビームBXの横方向の広がりを長円柱状の長円状CT撮影領域CAaの幅に合わせて狭めるように調整する。
【0137】
具体的には、横方向遮蔽板15(左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15b)の出射口12に対する横方向位置が、遮蔽板横方向移動機構16bにより、旋回角度に応じて調整されることにより、X線コーンビームBXの横方向の広がりが長円状CT撮影領域CAaの幅に合わせて狭められる。また、出射口12に対して、開口17の中心を−x側または+x側に偏心させることにより、X線コーンビームBXの照射方向が、長円状CT撮影領域CAaに合わせて調整される。これにより、
図10(a)、
図10(b)、
図11(a)、
図11(b)および
図12(a)において、斜線のハッチングで示される部分については、X線の照射が規制されるため、被写体M1のX線被曝量を低減することができる。
【0138】
より詳細には、
図10(a)に示されるように、旋回アーム30が、長円状CT撮影領域CAaの長手方向に対して、略直行する方向にX線コーンビームBXが照射される第1旋回位置に位置する場合、左側横方向遮蔽板15aがわずかに−x側に変位され、右側横方向遮蔽板15bが+x側に大きくに変位される。これにより、開口17が、
図6(a)に示される大照射野用開口17aの半分程度の幅を形成する。その結果、X線コーンビームBXの−x側の境界ラインが旋回方向基準照射中心線BCL1に一致する程度に、X線コーンビームBXの照射方向が+x側に偏心される。そして、X線コーンビームBXの境界ラインが長円状CT撮影領域CAaに接するように、X線コーンビームBXが出射される。
【0139】
このようなX線の規制が行われない従来のX線CT撮影の場合、歯列弓領域X全体を含む円形状のCT撮影領域CAoがX線CT撮影されることとなる。この場合と本実施形態のX線CT撮影とを比較した場合、
図10(a)において斜線のハッチングで示される領域(長円状CT撮影領域CAaの外側)について、被写体M1のX線被曝量を低減することができる。
【0140】
旋回アーム30が
図10(b)に示される第2旋回位置に位置する場合、X線コーンビームBXの照射方向が、長円状CT撮影領域CAaの長手方向と略平行となる。このとき、左側横方向遮蔽板15aが
図10(a)に示される状態から、−x側に変位されるとともに、右側横方向遮蔽板15bがさらに+x側に変位される。これにより、
図10(a)における開口17が、さらに半分程度の幅にまで狭められる。また、X線コーンビームBXの照射方向が、旋回方向基準照射中心線BCL1からさらに+x測に偏心される。そして、X線コーンビームBXの境界ラインが長円状CT撮影領域CAaに接するように、X線コーンビームBXが出射される。したがって、
図10(a)に示される状態よりも、さらに、X線の照射範囲が規制されるため、被写体M1のX線被曝量を低減することができる。
【0141】
旋回アーム30が
図11(a)に示される第3旋回位置に位置する場合、X線コーンビームBXの照射方向が、長円状CT撮影領域CAaの長手方向とほぼ交差する。このとき、左側横方向遮蔽板15aが
図10(b)に示される状態から、さらに−x側に変位されるが、右側横方向遮蔽板15bは、
図10(a)に示される状態の位置に戻される。これにより、開口17の幅が、
図10(a)に示される状態に比べて、2/3倍程度とされる。また、
図10(b)に示されるX線コーンビームBXの照射方向に比べて、照射方向が−x側に戻されることにより、
図10(a)に示されるのと同様に、X線コーンビームBXの−x側の境界ラインが旋回方向基準照射中心線BCL1に一致する程度にまで、X線コーンビームBXの照射方向が偏心される。そして、X線コーンビームBXの境界ラインが長円状CT撮影領域CAaに接するように、X線コーンビームBXが出射される。
【0142】
図11(a)に示される状態の場合、被写体M1のX線を受ける範囲は、
図10(b)に示される状態に比べて、増加している。しかしながら、X線被曝量は、必要最小限に留めることができている。
【0143】
旋回アーム30が
図11(b)に示される第4旋回位置に位置する場合、X線コーンビームBXの照射方向と、長円状CT撮影領域CAaの長手方向との交差角度は、第3旋回位置より大きくなっている。このとき、左側横方向遮蔽板15aおよび右側横方向遮蔽板15bは、
図11(a)に示される状態から、−x側に移動され、
図10(a)に示される状態のときと同程度の幅の開口17が形成される。また、X線コーンビームBXの境界ラインが長円状CT撮影領域CAaに接するように、X線コーンビームBXが出射される。これにより、長円状CT撮影領域CAa外における被写体M1のX線被曝量を、
図10(a)に示される初期状態と同程度とすることができる。
【0144】
図12(a)に示される第5旋回位置は、上述したように、旋回中心Scを通る不図示の直線を対象軸として、第1旋回位置と対象関係にある。このため、旋回アーム30が第5旋回位置に位置する場合は、
図10(a)に示される状態のときと同程度の開口17が形成される。そして、X線コーンビームBXは、
図11(b)に示される状態に比べて、照射方向が−x側に偏心される。そして、X線コーンビームBXの境界ラインが、長円状CT撮影領域CAaに接するように、X線コーンビームBXが出射される。したがって、長円状CT撮影領域CAa外における被写体M1の被曝量を、
図10(a)に示される初期状態と同程度にまで低減することができる。
【0145】
上述のように、X線発生部10からX線検出部20に向かって照射するX線コーンビームBXの旋回方向基準照射中心線BCL1に対する、長円状CT撮影領域CAaの位置は、旋回アーム30の旋回位置(旋回角度)に応じて変化する。つまり、遮蔽板横方向移動機構16bによって、左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15bの出射口12に対する横方向位置が、旋回アーム30の旋回角度に応じてそれぞれ調整される。これにより、出射口12に対して開口17が、X線発生部10からX線検出部20に向かう方向に対し、+x側もしくは−x側に適宜偏心される。これにより、操作者によって設定された長円状CT撮影領域CAaに合わせて、X線コーンビームBXの照射範囲および照射方向が調整される。このように、X線CT撮影中、x軸方向に関し、X線コーンビームBXが設定CT撮影領域のみに照射されるように、X線コーンビームBXの照射範囲をx軸方向に変更する制御が行われる。
【0146】
仮に、右側歯列撮影対象物OB1の全域に対して真円形状のCT撮影領域を設定した場合と比較すると、上述の長円状CT撮影領域CAaに対するX線照射量は著しく低いことは容易に理解できる。
【0147】
また、X線コーンビームBXの縦方向の広がりについても、長円状CT撮影領域CAaに合わせて規制される。例えば、長円状CT撮影領域CAaが上顎の歯牙に設定されている場合は、X線CT撮影中、X線コーンビームBXの上下部分がその上顎歯牙の部分を含む長円状CT撮影領域CAaに接するように、X線コーンビームBXが照射される。
【0148】
図13は、縦方向に関して照射範囲が規制されたX線コーンビームBXについての説明図である。なお、
図13は、X線発生器10a、X線コーンビームBX、X線検出部20(具体的にはX線検出器21)を−x方向から+x方向に向かって見た図である。なお、
図13においては、X線CT撮影の対象が、上顎の歯牙などの、X線発生部10に対して上側(+z側)に存在する場合について、図示されている。
【0149】
図13において、右側歯列撮影対象物OB1を含む長円状CT撮影領域CAaは、X線発生部10からX線検出部20に向かって水平に照射される、非規制時のX線コーンビームBXの中心線(鉛直方向標準照射中心線BCL2)に対して、縦方向に偏心している。このため、X線発生部10から出射されるX線コーンビームBXの鉛直方向における照射範囲がビーム成形機構13に調整されることで、X線コーンビームBXの照射方向が調整される。
【0150】
図13に示される例では、鉛直方向標準照射中心線BCL2が、X線検出器21に対して略垂直に入射している。しかしながら、X線検出器21をX線発生器10aよりも低い位置に配置した構成としてもよい。この場合、後述するパノラマ撮影のように、X線発生器10aよりもX線検出器21を相対的に高い位置に配置される場合、X線コーンビームBXの照射方向が、水平面に対して上向きになるように、照射されることとなる。
【0151】
また、
図13に示されるように、右側歯列撮影対象物OB1を含む長円状CT撮影領域CAaの縦方向の高さは、縦方向の広がりについて規制されていないときのX線コーンビームBXに対して狭い。このため、X線コーンビームBXの縦方向の広がりが、長円状CT撮影領域CAaの高さ幅に合わせて狭くなるよう、ビーム成形機構13により調整される。
【0152】
詳細には、上側縦方向遮蔽板14a、下側縦方向遮蔽板14bの、出射口12に対する縦方向位置が、遮蔽板縦方向移動機構16aによってそれぞれ調整される。これにより、出射口12に対して、開口17が、+z側に偏心される。これにより、X線コーンビームBXの縦方向に関する照射範囲が長円状CT撮影領域CAaに合わせて狭められ、照射方向が変更される。
【0153】
また、
図13(b)に示されるように、鉛直方向標準照射中心線BCL2に対する長円状CT撮影領域CAaの位置は、旋回アーム30の旋回位置(旋回角度)に応じて相対的に変化する。つまり、旋回アーム30の旋回位置に応じて、上側縦方向遮蔽板14a、下側縦方向遮蔽板14bの出射口12に対する縦方向位置がそれぞれ調整される。これにより、出射口12に対して、開口17が+z側に偏心される。これにより、X線コーンビームBXの照射方向が、長円状CT撮影領域CAaに合わせて上側に変更される。
【0154】
図13(b)に示される例では、同図中における長円状CT撮影領域CAaの右上角の位置が、
図13(a)に示される長円状CT撮影領域CAaよりも、旋回中心Scに近い側に位置する。このため、X線コーンビームBXの上端の高さが、下側(−z側)に下げられている。同様に、X線コーンビームBXの下端の高さについても、下側に下げられている。
【0155】
以上のように、長円状CT撮影領域CAaの高さ幅に合わせて、X線コーンビームBXの縦方向に関する照射範囲を調整することにより、長円状CT撮影領域CAa外における、被写体M1のX線被曝量を低減することができる。
【0156】
なお、旋回アーム30の旋回位置(旋回角度)に応じて、上側縦方向遮蔽板14a、下側縦方向遮蔽板14bの位置を変動させることで、水平面に対するX線コーンビームBXの照射方向の仰角(または俯角)を変更するようにしてもよい。この場合、X線CT撮影中に、z軸方向に関して、X線コーンビームBXの照射範囲が変更されることとなる。
【0157】
なお、上述の説明では、長円状CT撮影領域CAaを設定するために、画像表示部210上において、長内状CT撮影領域CAaの中心付近が、指定カーソル212で指定されるとともに、選択範囲設定部230を介して長円状CT撮影領域CAaに含む歯数が指定されている。しかしながら、CT撮影領域CAの指定方法は、これに限定されるものではない。以下において、その他のCT撮影領域CAの設定態様について、
図14〜
図17を参照しつつ説明する。
【0158】
図14は、その他のCT撮影領域設定画面200Aを示す図である。CT撮影領域設定画面200Aは、
図8に示されるCT撮影領域設定画面200と同様に、画像表示部210A、上下顎選択部220および条件設定部240を備えている。しかしながら、CT撮影領域設定画面200Aでは、選択範囲設定部230が省略されている。CT撮影領域設定画面200Aにおける上下顎選択部220および条件設定部240の機能は、それぞれ、CT撮影領域設定画面200における上下顎選択部220、条件設定部240の機能と同様である。
【0159】
画像表示部210Aには、CT撮影領域設定画面200における画像表示部210と同様に、歯列弓画像211と指定カーソル212とが表示される。なお、CT撮影領域設定画面200では、CT撮影領域ライン213を設定するために、長円状CT撮影領域CAaの長手方向の中心付近が、指定カーソル212で指定されていた。これに対して、CT撮影領域設定画面200Aでは、長円状CT撮影領域CAaの長手方向の両端部である2点(始点および終点)が、指定カーソル212で指定される。これら始点および終点のうち、どちらか一方が一端に相当し、他方が他端に相当する。
【0160】
なお、
図14では、説明の便宜のため、2つの指定カーソル212が図示されているが、実際には、ひとつの指定カーソル212で始点の歯が指定された後、指定カーソル212が移動されて、終点の歯が指定されている様子が、図示されている。ただし、始点の歯が指定された後、その位置に指定カーソル212が固定表示され、新たに出現させた指定カーソル212で終点の歯が指定されるようにすることも考えられる。
【0161】
また、誤って指定が行われた場合、始点または終点の位置変更ができるようにしてもよい。また、長円状CT撮影領域CAaの指定が、始点の歯、終点の歯というように、歯単位で行われるようにしてもよいが、初期段階で、ある範囲をCT撮影領域ライン213として表示しておき、その長手方向の両端部分を指定カーソル212で選択して、ドラッグ操作によりCT撮影領域ライン213を変形または移動させることで、CT撮影領域ライン213の範囲が変更されるようにしてもよい。
【0162】
入力された指定情報(指定カーソル212によって指定された始点および終点の歯に関する情報)は、情報処理装置8に送信される。指定情報を受け付けた情報処理装置8は、始点の歯と終点の歯の組み合わせに応じて、長円状のCT撮影領域ライン213に関する情報を操作表示部61に送信する。なお、歯列弓領域Xには、全部で16箇所に歯が並んでいるため、この中から選択される2つの歯の組合せは、120通り考えられる。したがって、120通りの長円状のCT撮影領域ライン213が予め設定されることで、情報処理装置8が、2つの歯のあらゆる組み合わせにも対応することができる。
【0163】
もちろん、単一の歯(上顎および下顎の両方がCT撮影領域CAに含まれる場合は、上下に並ぶ2本の歯)のみが、長円状CT撮影領域CAaとして設定できるようにしてよい。この場合、合計136通のCT撮影領域ライン213を予め登録しておけばよい。
【0164】
なお、単一の歯のみを撮影対象とされる場合のCT撮影領域ライン213は、例えば、長手方向と短手方向の長さがほぼ同一となる略真円状とされてもよい。
【0165】
さらに、インプラントの植立対象となる頻度が高い箇所のみをX線CT撮影の対象とするため、智歯が指定カーソル212によって選択できないようにしてもよい。また、歯の本数に関係なく、単に、CT撮影領域ライン213で囲まれた範囲が、そのまま長円状CT撮影領域CAaに設定されるようにしてもよい。
【0166】
顎骨の少なくともいずれかの領域がCT撮影領域となるように構成してもよく、歯牙のみが撮影対象となるのではなく、顎関節がCT撮影領域に含まれてもよい。この場合、顎関節のみのCT撮影または顎関節と他の歯を含む領域のCT撮影が可能なように構成できる。
【0167】
情報処理装置8からCT撮影領域ライン213に関する情報を受信した操作表示部61は、画像表示部210Aにおいて、歯列弓画像211とCT撮影領域ライン213とを重畳表示させる。重畳表示後の処理フローは、
図8において説明した処理フローと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0168】
図15は、その他のCT撮影領域設定画面200Bを示す図である。CT撮影領域設定画面200Bは、
図14に示されるCT撮影領域設定画面200Aと同様に、画像表示部210B、上下顎選択部220および条件設定部240を備えている。CT撮影領域設定画面200Bにおける上下顎選択部220および条件設定部240の機能は、それぞれ、CT撮影領域設定画面200における上下顎選択部220、条件設定部240の機能と同様である。
【0169】
画像表示部210Bには、CT撮影領域設定画面200の画像表示部210と同様、歯列弓画像211と指定カーソル212が表示される。さらに、CT撮影領域設定画面200Bでは、画像表示部210Bにおける歯列弓画像211に対して、歯列弓領域Xを複数(ここでは5つ)の領域に分割した複数の分割エリア214が重畳表示されている。CT撮影領域設定画面200Bでは、指定カーソル212を介して、複数の分割エリア214の中から特定の分割エリア214が指定される。
【0170】
例えば、右側歯列撮影対象物OB1がX線CT撮影の対象領域とする場合、画像表示部210Bにおいて、右側歯列撮影対象物OB1が含まれる分割エリア214が指定カーソル212により指定される。この入力された指定情報(特定の分割エリア214を示す情報)は情報処理装置8に送信される。指定情報を受け付けた情報処理装置8は、その分割エリア214に対応する予め設定された長円状CT禄影領域CAaに関する情報をX線CT撮影装置1の本体部2に送信する。そして、本体部2は、その長円状CT撮影領域CAaに関して、X線CT撮影を実行する。
【0171】
なお、
図15に示されるCT撮影領域設定画面200Bでは、歯列弓画像211に対して、前歯群T1を中心とする部分、左側臼歯群T2を中心とする部分、右側臼歯群T3を中心とする部分、および、左右の顎関節部分、全部で5つの分割エリア214が設定されている。しかしながら、分割エリア214の分割パターンは、これに限定されるものではない。また、予め様々な分割パターンを保存しておき、分割パターンを切り替える不図示の切り替えボタンの操作に応じて、特定の分割パターンが呼び出されるようにしてもよい。
【0172】
また、分割エリア214の境界線を指定カーソル212で選択し、ドラッグ操作などで変形または移動させることで、分割エリア214を変形または移動できるようにしてもよい。なお、分割エリア214選択指定後のX線CT撮影の処理フローは、情報処理装置8に示される画像表示部210において、CT撮影領域ライン213が設定されたあとの処理フローとほぼ同様である。
【0173】
図16は、その他のCT撮影領域設定画面200Cを示す図である。CT撮影領域設定画面200Cは、
図14に示されるCT撮影領域設定画面200Aと同様に、画像表示部210C、上下顎選択部220および条件設定部240とを備えている。CT撮影領域設定画面200Cにおける上下顎選択部220および条件設定部240は、それぞれ、
図8に示されるCT撮影領域設定画面200における上下顎選択部220、条件設定部240の機能と同様である。
【0174】
画像表示部210Cには、歯列弓画像211が表示される。CT撮影領域設定画面200では、CT撮影領域ライン213を設定するために、CT撮影領域CAの長手方向の中心付近が指定カーソル212によって指定される。これに対して、CT撮影領域設定画面200Cでは、描画ペン250で関心領域(例えば、右側歯列撮影対象物OB1)を含む長円状の閉曲線(手書きCT撮影領域ライン213C)が描画されることで、長円状CT撮影領域CAaが指定される。
【0175】
画像表示部210Cにおいて、描画ペン250を介して描画入力された、手書きCT撮影領域ライン213Cの位置および大きさを示す情報(指定情報)は、情報処理装置8に送信される。指定情報を受け付けた情報処理装置8は、予め用意されている長円状CT撮影領域CAaのうち、手書きCT撮影領域ライン213Cに近い長円状CT撮影領域CAaに関する情報を、X線CT撮影装置1の本体部2に送信する。そして、本体部2は、受信した長円状CT撮影領域CAaに関する情報に基づいて、X線CT撮影を実行する。
【0176】
予め用意されている長円状CT撮影領域CAaのうち、手書きCT撮影領域ライン213Cに近い長円状CT撮影領域CAaに関する情報を選ぶ構成のみならず、手書きCT撮影領域ライン21がそのままCT撮影領域となるように制御してもよい。この場合、手書きであることによる線ブレなどをある程度自動補正するようにすることもできる。
【0177】
なお、CT撮影領域CAは、径外側向きに凸状の曲線で定義される閉領域とされるため、手書きCT撮影領域ライン213Cの一部に、径内側向きの凹状となる部分が含まれていたとしても、その手書きCT撮影領域ライン213Cに近い、径外側向きに凸状の曲線のみで形成された長円状CT撮影領域CAaが選択される。もちろん、手書きCT撮影領域ライン213Cのうち、径内側向きの凹状となる部分が、径外側向きの凸状部分となるように自動補正されるようにしてもよい。
【0178】
図17は、その他のCT撮影領域設定画面200Dを示す図である。CT撮影領域設定画面200Dは、
図14に示されるCT撮影領域設定画面200Aと同様に、画像表示部210D、上下顎選択部220および条件設定部240を備えている。CT撮影領域設定商面200Dにおける上下顎選択部220および条件設定部240の機能は、それぞれ、CT撮影領域設定画面200における上下顎選択部220、条件設定部240の機能と同様である。
図17に示されるCT撮影領域設定画面200Dの特徴的な点は、歯列弓をY軸方向から見た図(パノラマ画像211D)が表示される点である。
【0179】
画像表示部210Dには、歯列弓画像211の代わりに、被写体M1の歯列弓領域Xを予めX線を用いてパノラマ撮影した、パノラマ画像211Dが表示される。画像表示部210Dでは、このパノラマ画像211D上において、CT撮影領域CAが設定される。
図17に示される例では、CT撮影領域ライン213がまず設定される。このCT撮影領域ライン213の指定は、図示を省略するが、上述した指定カーソル212、もしくは、描画ペン250を用いて行われる。
【0180】
画像表示部210Dにおいて、パノラマ画像211Dに対して、長円状CT撮影領域CAaを指定するために入力された指定情報は、情報処理装置8に送信される。情報処理装置8は、受け付けた指定情報に対応するCT撮影領域ライン213に関する情報を操作表示部61に送信する。
【0181】
CT撮影領域ライン213に関する情報を受信した操作表示部61は、CT撮影領域設定画面200Dの画像表示部210Dに、パノラマ画像211Dと、受信した情報に基づくCT撮影領域ライン213とを重畳表示させる。重畳表示後の処理フローは、CT撮影領域設定画面200における処理フローと同様である。
【0182】
なお、被写体固定部421に固定された被写体M1のパノラマ断層位置の三次元位置情報は、被写体固定部421と設定されているパノラマ断層位置との位置関係から、演算処理部801bによる演算処理によって容易に特定できる。したがって、パノラマ画像211Dに対して指定された位置の三次元座標は、演算により取得される。
【0183】
また、パノラマ画像211Dは、X線CT撮影装置1により取得されたものに限定されず、他の撮影装置で取得されたパノラマ画像であってもよい。この場合でも、パノラマ撮影した際の、パノラマ断層の位置情報さえ既知であれば、パノラマ画像211D上で指定された位置の三次元座標を、演算により取得することができる。また、パノラマ画像211Dは、必ずしも被写体M1をパノラマ撮影して得た実写画像でなくてもよい。例えば、標準骨格の顎部のパノラマ断層の画像、もしくは、実写のパノラマ画像を模したイラストなどがパノラマ画像211Dとして用いられてもよい。
【0184】
CT撮影領域設定画面200、200A、200B、200C、200Dを利用することで、関心領域に相当するCT撮影領域CA(長円状CT撮影領域CAa)を適切に設定することができる。右側歯列撮影対象物OB1以外の対象物をCT撮影領域CAとすることも、当然可能である。
【0185】
図18は、撮影対象物OBを含む楕円状CT撮影領域CAbをX線CT撮影するときの、X線発生部10、横方向遮蔽板15およびX線検出部20の軌跡を示す概略平面図である。
図18では、前歯群T1の複数の歯牙が、撮影対象物OBとされており、楕円状CT撮影領域CAbが長円状CT撮影領域CAaよりも小さい小照射野X線CT撮影とされている。
図18に示されるように、楕円状CT撮影領域CAbに合わせて、左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15bが横方向に移動されることで、X線コーンビームBXの照射範囲が調整される。これにより、楕円状CT撮影領域CAb外における被写体M1のX線被曝量が、低減される。
【0186】
図19は、その他の形状のCT撮影領域CAを示す図である。
図19(a)に示される、CT撮影領域CAのその他の例は、歯列弓領域Xのうち、前歯群T1の右側と右側臼歯群T3および顎骨Kの右端付近の位置Khまでを含む長円状CT撮影領域CAa1である。また、
図19(b)に示される、CT撮影領域CAのその他の例は、長円状CT撮影領域CAa1からさらに左側臼歯群T2の一部までを含む長円状CT撮影領域CAa2である。
【0187】
また、
図19(c)に示される、CT撮影領域CAのその他の例は、顎骨の左右端付近の位置Khおよび前歯群T1を含む歯列弓領域X全体を取り囲む、略三角形状CT撮影領域CAcである。詳細には、略三角形状CT撮影領域CAcは、3つの角部が弧状とされているとともに、各角部間を結ぶ3辺が、外側に凸状となる弧状とされる。また、略三角形状CT撮影領域CAcは、前歯群T1の歯列に沿った弧状部分を頂点部分とされており、平面視で顎骨の左右端付近の位置Kh同士を結ぶ弧状の底辺部の曲率が、頂点部分と底辺部を結ぶ斜辺部の曲率よりも大きくなっている。なお、この略三角形状CT撮影領域CAcの形状は、いわゆるルーローの三角形の3つの角部を外側に凸な円弧でつないだ略ルーローの三角形状と換言することができる。図示を省略するが、CT撮影領域CAを、旋回軸31の軸方向から見て前歯近傍に頂部が位置し、歯列弓領域の外周を結ぶ略半円形状としてもよい。この、旋回軸31の軸方向から見て前歯近傍に頂部が位置し、歯列弓領域の外周を結ぶ条件は、略三角形状CT撮影領域CAcに当てはめられる。
【0188】
図23または
図24に示されるように、従来のX線CT撮影においては、歯列弓領域X全体をX線CT撮影するためには、CT撮影領域CAが真円の円形状のCT撮影領域CAoとされる。また、全ての歯列と顎関節を含む広い領域をCT撮影するには、大きな真円状CT撮影領域CAjを設定しなければならない。CT撮影領域CAoでは顎関節が領域から外れてしまい、真円状CT撮影領域CAjではX線被曝量が高くなる。これに対して、略三角形状CT撮影領域CAcの場合、CT撮影領域CAを歯列弓領域Xの形状に近づけることができる。このため、顎骨を対象として広い領域をCT撮影しながら、被写体M1の歯列弓領域X外におけるX線被曝量を低減することができる。
【0189】
また、
図19(d)に示される、CT撮影領域CAのその他の例は、歯牙のみが含まれるように、略三角形状CT撮影領域CAcを縮小させた略三角形状CT撮影領域CAc1である。顎骨の左右端を含めた歯列弓領域X全域の形状と、歯列弓領域Xのうちの歯牙部分のみの領域の形状は似た形状を有している。このため、X線CT撮影装置1は、略三角形状CT撮影領域CAcを拡縮させることで、歯列弓領域X全域または全歯牙などを丁度含む領域に合わせて、X線CT撮影を行うことができる。
【0190】
略三角形状CT撮影領域CAc1は、
図23に示される真円形状のCT撮影領域CAoと比べて、同程度の歯列領域をCT撮影領域に収めながら、必要最小限度の範囲にとどまっていることが明らかである。
【0191】
図19(e)に示される、CT撮影領域CAのその他の例は、前歯群T1の並びに沿った曲線が底辺部となる、平面視略逆三角形状の略三角形状CT撮影領域CAc2である。略三角形状CT撮影領域CAc2は、略三角形状CT撮影領域CAc、CAc1に比べて、扁平とされており、また、底辺部の両端部(曲率が変化する部分)が単一の円弧によって結ばれることにより形成されている。
【0192】
図19(c)に示される略三角形状CT撮影領域CAcについて、X線CT撮影が行われる場合、
図9に示される長円状CT撮影領域CAaのX線CT撮影と同様に、旋回アーム30の旋回位置(旋回角度)に応じて、X線コーンビームBXの照射範囲が、X線発生部10から見た略三角形状CT撮影領域CAcの横幅に合うよう、左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15bによって調整される。
【0193】
図19(f)または
図19(g)に示される、CT撮影領域CAのその他の例は、一対の平行線と、外一対の平行線の端部同士を接続する一対の円弧とで構成されるオーバル形状の略卵形CT撮影領域CAa3、および、角丸の略長方形状CT撮影領域CAa4である。
【0194】
図9および
図14に示される長円状CT撮影領域CAa、
図18に示される楕円状CT撮影領域CAb、
図19(a)、(b)に示される長円状CT撮影領域CAa1、CAa2、および、
図19(f)、(g)に示される略卵形CT撮影領域CAa3、略長方形状CT撮影領域CAa4は、歯列弓領域Xに沿った長手方向を有する略長円形状のCT撮影領域CAとして総括される。なお、オーバル形状は、略卵形以外の略長円形状も含まれる。
【0195】
図19に示される各CT撮影領域CAについて、X線CT撮影が行われる場合、X線CT撮影中に、左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15bの出射口12に対する横方向位置が、遮蔽板横方向移動機構16bにより調整されることで、X線コーンビームBXの横方向の照射範囲が、各CT撮影領域CAの横幅に合わせて調整される。これにより、X線CT撮影中、X線コーンビームBXの照射方向が、横方向に適宜変更されることとなる。
【0196】
長円状CT撮影領域CAa、CAa1、CAa2、楕円状CT撮影領域CAb,略卵形CT撮影領域CAa3、略長方形状CT撮影領域CAa4は、好ましくは、その長手方向が歯列弓領域Xに沿うように設定され、より好ましくは、その長手方向が、歯列弓領域Xの曲線上の所要箇所における接線と略平行となるように設定される。
【0197】
このように、本実施形態では、関心領域(例えば、右側歯列撮影対象物OB1)の大きさ、範囲および歯列弓領域Xにおける位置に対して、CT撮影領域CAを歯列弓領域Xの曲線に沿った部分を有する長円状、楕円状、略三角形状またはオーバル形状のCT撮影領域CAとして設定される。これにより、余分なX線被曝量を低減しつつ、確実に、関心領域に対してX線が各方向から照射され、これにより投影データが取得される。
【0198】
図20は、局所的撮影対象物OB2について、X線CT撮影する様子を示す概略平面図である。例えば歯科診療においては、埋もれた智歯の領域において、智歯が横倒しの状態になっていないかどうかの診察、各種腫瘍の広がりについての診察、または、歯列弓領域Xのみではなく、その周辺部(舌側もしくは頬側部分)の診察などが行われる場合がある。このような場合には、
図20に示されるように、2,3本の右側臼歯群T3を局所的な局所的撮影対象物OB2として、真円状CT撮影領域CAdが設定されることも考えられる。
【0199】
局所的撮影対象物OB2を取り囲む真円状CT撮影領域CAdについて、X線CT撮影が行われる場合、旋回アーム30の旋回位置(旋回角度)に応じて、出射口12に対する左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15bの横方向位置が遮蔽板横方向移動機構16bにより調整される。これにより、X線CT撮影中、X線発生部10から正視した真円状CT撮影領域CAdの横幅に合わせて、X線コーンビームBXの横方向の照射範囲および照射方向が調整される。
【0200】
図21は、真円状CT撮影領域CAdを設定するための、CT撮影領域設定画面300を示す図である。CT撮影領域設定画面300は、画像表示部310、上下顎選択320、選択範囲設定部330および条件設定部340を備えている。条件設定部340は、Setボタン341、Resetボタン342、Startボタン343、Modeボタン344、Returnボタン345を備えている。上下顎選択部320および条件設定部340の機能は、それぞれ、
図8に示される上下顎選択部220、条件設定部240の機能と同様である。
【0201】
画像表示部310には、歯列弓画像211、各点を指定するための指定カーソル312、および、指定カーソル312によって指定された中心と、後述する選択範囲設定部330で指定された半径に応じた真円状の真円状CT撮影領域ライン313が重畳表示される。
【0202】
選択範囲設定部330は、真円状CT撮影領域ライン313の半径(または直径)が入力されるテキストボックス331を備えている。なお、予め半径(または直径)の目盛りが付けられたスケールバーに沿って、スライダーを移動させることで、真円状CT撮影領域ライン313の半径(または直径)が設定されるようにしてもよい。また、画像表示部310上において、真円状CT撮影領域ライン313を指定カーソル312で選択し、ドラッグ操作によって真円状CT撮影領域ライン313を拡大または縮小させることで、その大きさを指定できるようにしてもよい。
【0203】
真円状CT撮影領域CAdを設定するため、操作表示部61に表示されたCT撮影領域設定画面300において、局所的撮影対象物OB2を取り囲むように真円状CT撮影領域ライン313が設定される。詳細には、局所的撮影対象物OB2の位置に応じて、まず、上顎、下顎、上下額のいずれかが、上下顎選択部320にて選択される。そして、画像表示部310に表示された歯列弓画像211において、指定カーソル312により真円状CT撮影領域ライン313の中心が指定され、テキストボックス331に真円状CT撮影領域ライン313の半径(または直径)が入力される。このようにして、局所的撮影対象物OB2が真円状CT撮影領域ライン313に取り囲まれるよう、真円状CT撮影領域ライン313の位置、および、大きさが設定される。
【0204】
CT撮影領域設定画面300において入力された指定情報(真円状CT撮影領域CAdの中心の位置情報および半径(直径)情報)は、情報処理装置8に送信される。そして、指定情報を受け付けた情報処理装置8は、真円状CT撮影領域ライン313に関する情報を操作表示部61に送信する。真円状CT撮影領域ライン313に関する情報を受信した操作表示部61は、画像表示部310において、歯列弓画像211、真円状CT撮影領域ライン313を重畳表示する。
【0205】
真円状CT撮影領域ライン313が歯列弓画像211上の所望の位置および範囲に適切に設定されている場合、操作者(例えば術者)によって、Setボタン341が押下される。すると、真円状CT撮影領域ライン313に対応する真円状CT撮影領域CAdの情報が、情報処理装置8に送信される。そして、Startボタン343が押下されると、後述するように、本体部2において、局所的撮影対象物OB2のX線CT撮影が開始される。
【0206】
このようにして、局所的撮影対象物OB2を取り囲む真円状CT撮影領域CAdが設定されることにより、関心領域である右側歯列撮影対象物OB2に対して、適切にX線CT撮影を行うことができる。
【0207】
なお、X線CT撮影装置1によると、旋回軸31の軸心を、水平面上の特定位置に固定された状態で、パノラマ撮影を行うことも可能である。
【0208】
図22は、パノラマ撮影を行う様子を示す概略平面図である。パノラマ撮影が行われる場合、X線コーンビームBXが、ビーム成形機構13により規制されることで、パノラマ撮影用のX線細隙ビームBXPに調整される。また、X線細隙ビームBXPの照射方向は、旋回アーム30の旋回位置(旋回角度)に応じて、左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15bにより調整される。
【0209】
X線細隙ビームBXPは、
図6(c)に示されるように、ビーム成形機構13が成すパノラマ撮影用開口17cによって形成される。
図22に示されるように、X線発生部10、左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15bおよびX線検出部20(詳細には、X線検出器21)は、不図示の旋回アーム30とともに、初期位置である旋回開始位置LC1から180度旋回して、旋回終了位置まで旋回する。
【0210】
図22に示される例では、X線発生部10の初期位置LC1は、歯列弓領域Xの右真横とされており、その後、X線発生部10は、頭部の背後側を旋回する。旋回中心Scは、被写体M1の正中線上であって、左右の奥歯の間付近に設定されている。
【0211】
なお、
図22では、旋回アーム30が30度ずつ回転することで、X線発生部10が初期位置LC1、旋回位置LC2、LC3、LC4に移動したときの各状態が図示されており、旋回角度が90度から180度にある状態の図示は省略されている。なお、旋回アーム30の旋回角度が90度から180度に変化する場合、X線発生部10は、旋回位置LC3、LC2および初期位置LC1と対称の位置に順次移動する。
【0212】
パノラマ撮影中、歯列弓領域Xに対して、X線細隙ビームBXPの照射が継続的に行われる。初期位置LC1では、X線発生部10のX線管焦点とX線検出器21の検出面21’の中央とを結ぶ水平方向基準中央線SCLに対し、X線細隙ビームBXPの照射方向がx軸方向に沿って偏心するように、左側横方向遮蔽板15a、右側横方向遮蔽板15bの位置が調整される。詳細には、X線細隙ビームBXPが、歯列弓領域Xに沿う曲線に対して、法線方向に照射されるよう、X線細隙ビームBXPの照射方向が調整される。
【0213】
具体的に、初期位置LC1において、X線細隙ビームBXPの照射方向は水平方向基準中央線SCLに対し、−x側に若干偏心しているが、X線発生部10が初期位置LC1から旋回位置LC2に移動するに連れて、X線細隙ビームBXPの照射方向は、水平方向基準中央線SCLに対し、+x側に若干偏心される。すなわち、初期位置LC1における−x側への偏心量よりも、旋回位置LC2における−x側への偏心量が小さく、その分、+x側への偏心調整がされる。そして、X線発生部10が旋回位置LC2から旋回位置LC3に移動するに連れて、X線細隙ビームBXPの照射方向が、水平方向基準中央線SCLに対し、さらに+x側へ偏心される。
【0214】
X線発生部10が旋回位置LC3から旋回位置LC4に移動するに連れて、X線細隙ビームBXPの照射方向は、水平方向基準中央線SCLに対して、−x側に戻される。そして、X線発生部10が旋回位置LC4に到達すると、X線細隙ビームBXPの照射方向は、水平方向基準中央線SCLと一致するように調整される。
【0215】
このようにX線細隙ビームBXPの照射方向が制御されることで、X線細隙ビームBXPが包絡線EMを形成する様に移動することとなる。
【0216】
図23は、様々なCT撮影領域CAを示す平面図である。
図23に示されるように、従来の径80mmの比較的小さい真円状のCT撮影領域CAoに比べて、顎骨の一部や智歯を含む、例えば、径100mmの比較的の大きな真円状CT撮影領域CAd(顎骨の一部や智歯を含む大きな真円状CT撮影領域CAj)を設定してもよい。
【0217】
しかしながら、CT撮影領域CAが略三角形状CT撮影領域CAcとされた場合、真円状CT撮影領域CAjのときと比べて、
図23中、斜線のハッチングで示される領域に関して、X線被曝量を低減することができる。そのため、関心領域が略三角形状CT撮影領域CAcでカバーできる場合は、CT撮影領域CAを径100mmの真円状CT撮影領域CAjとするよりも、X線被爆量が低減される点で有利である。
【0218】
図25は、X線検出器21の検出面21’における読出領域を変更制御する様子を説明するための図である。
図25では、
図20に示されるように、真円状CT撮影領域CAdについてX線CT撮影が行われる際に、X線検出器21が旋回位置LC1a、LC2a、LC3a、LC4a、LC5aの各々に移動したときの、X線検出器21の検出面21’が図示されている。
【0219】
図25に示されるように、X線検出器21の検出面21’は、多数の画素のマトリクスで構成されるが、この画素がセグメントに分けられ、x軸方向に関して10個の検出セグメント22a〜22jに分割されている。X線検出器21では、各検出セグメント22a〜22j単位で、情報処理装置8へのX線検出信号の送信が行われる。また、各検出セグメント22a〜22jに対するX線検出信号の読出制御は、
図3に示される本体制御部60が備えるX線検出制御部により行われる。つまり、X線検出制御部が、読出領域制御部として機能する。
【0220】
なお、X線検出器21としては、例えばMOSセンサ、CCDセンサ、TFTが挙げられるが、CMOSセンサ等のフラットパネルディテクタ(FPD)やX線蛍光増倍管(XII)、その他の固体撮像素子等、様々なものを採用することができる。
【0221】
X線検出制御部は、X線CT撮影が行われる間、X線検出器21におけるX線検出信号を読み出す読出領域を、X線コーンビームBXの照射範囲に対応させて変更制御する。すなわち、X線検出制御部は、検出面21’のうち、X線コーンビームBXが照射される部分(被照射領域XA1)からのみ、X線検出信号の読み出しが行われるよう、X線検出器21を制御する。
【0222】
例えば、X線検出器21が旋回位置LC1aにある場合(
図20参照)、
図25に示されるように、被照射領域XA1は、検出セグメント22a〜22jのうち検出セグメント22f、22g、22hに重なる。そこで、X線検出制御部は、この検出セグメント22f、22g、22hのみをアクティブ化して、これらの検出セグメント22f、22g、22hから検出信号を所要のフレームレートで取得する。なお、ここでいうアクティブ化は、検出信号が発生できるように作動し、活性化することを意味する。同様に、X線検出器21が旋回位置LC2aにある場合、X線検出制御部は、検出セグメント22g、22h、22iをアクティブ化して、検出信号の取得を行う。また、X線検出器21が旋回位置LC3aにある場合、X線検出制御部は、検出セグメント22f、22g、22hをアクティブ化して、検出信号の取得を行う。また、X線検出器21が旋回位置LC4aにある場合、X線検出制御部は、検出セグメント22e、22f、22gをアクティブ化して、検出信号の取得を行う。さらに、X線検出器21が旋回位置LC5aにある場合、X線検出制御部は、検出セグメント22c、22d、22eをアクティブ化して、検出信号の取得を行う。以上のように、検出面21’におけるX線コーンビームBXの照射される被照射領域XA1の位置に合わせて、X線検出信号の読出領域の変更制御が行われる。
【0223】
上述のように、本実施形態では、旋回アーム30の旋回位置(旋回角度)に応じて、X線コーンビームBXの照射範囲が、CT撮影領域CAの形状に合わせてx軸方向に変更制御される。このため、被照射領域XA1についても、この照射範囲のx軸方向に変更される。したがって、
図25に示されるように、読出領域(つまり、アクティブ化される検出セグメント)についても、X線CT撮影中、x軸方向に関して変更されることとなる。
【0224】
このような読出領域の変更制御が行われることにより、X線検出器21から、X線検出信号を効率良く読み出すことができる。なお、CT撮影領域設定画面200などを介して、CT撮影領域CAが設定されると、旋回アーム30の旋回位置(旋回角度)に応じた、X線コーンビームBXの照射範囲も定められる。このため、被照射領域XA1も必然的に定まる。したがって、旋回アーム30の旋回位置(旋回角度)に応じて、検出セグメント22a〜22jのうちアクティブ化すべき検出セグメントは、容易に決定することができる。具体的には、アクティブ化する検出セグメントは、本体制御部60または演算処理部801bによる所定プログラムにしたがった演算処理により、決定される。
【0225】
なお、パノラマ撮影(
図22参照)においても、X線検出器21の検出面21’におけるX線細隙ビームBXPの被照射領域は、パノラマ撮影中、旋回アーム30の旋回位置(旋回角度)に応じて、x軸方向に関して変位する。そこで、
図25に示される検出セグメント22a〜22jのうち、アクティブ化する検出セグメントをx軸方向に関して変更制御することで、効率的に検出信号を読み出すことができる。
【0226】
図26は、その他のX線検出器21aの検出面21a’を示す図である。X線検出器21aは、
図25に示される検出セグメント22a〜22jのそれぞれについて、さらに上下に2分割されることで、計20個の検出セグメントを備えている。この場合、例えば、CT撮影領域CAが上顎の一部(または、下顎の一部)とされて、X線コーンビームBXの照射範囲がz軸方向に関して規制されることで(
図13参照)、
図26に示されるように、検出面21a’の上側(または下側)のみにX線コーンビームBXが照射されたとする。このときのX線コーンビームBXの被照射領域XA2に対応して、上段側の検出セグメントの一部を選択的にアクティブ化させることで、さらに効率的にX線検出信号を読み出すことができる。
【0227】
X線検出制御部(読出領域制御部)は、読出領域(つまり、アクティブ化された検出セグメント)から、X線検出信号を読み出すフレームレートを、旋回アーム30の旋回軸31周りにおける旋回位置(旋回角度)に応じて、変更するように構成されていてもよい。フレームレートを向上させることで、画質を向上させることができる。特に、読出領域が小さい場合(つまり、アクティブ化された検出セグメントが少ない)場合、転送すべきX線検出信号のデータ量は相対的に小さくなる。このため、フレームレートを増大させたとしても、X線検出信号の転送効率に与える影響は比較的小さい。一方、フレームレートを低下させると、X線検出器からの画像信号の転送を効率的に行うことができる。特に、読出領域が大きい場合(つまり、アクティブ化された検出セグメントが多い場合)、転送すべきX線検出信号のデータ量が相対的に大きくなる。このような場合に、フレームレートを低下させることで、X線検出信号の効率的な転送を実現することができる。
【0228】
読出領域の大きさは、CT撮影領域の大きさによって変わり、CT撮影領域の大きさはCT撮影領域設定画面200をはじめとするCT撮影領域設定手段で設定できる。したがって、CT撮影領域設定手段をフレームレート設定部と捉えることができる。
【0229】
撮影部位(CT撮影領域)の別、撮影対象部位の位置、撮影目的に応じてフレームレートが変更されるようにしてもよい。例えば、高精細な観察を要する重要部位については高フレームレートで撮影を行い、他の部位についてはそれより低いフレームレートで撮影が行われるよう、部位の選択または入力に基づいて、当該部位に応じたフレームレートを選択する不図示の撮影対象部位選択手段が設けられていてもよい。また、撮影目的の選択または入力をすると当該撮影目的に応じてフレームレートを選択する不図示の撮影目的選択手段が設けられていてもよい。
【0230】
撮影対象部位選択手段または撮影目的選択手段は、フレームレートの変更を行う点で、フレームレート設定部の一例である。
【0231】
また、撮影対象部位(CT撮影領域)の位置に応じて、フレームレートが変更されるようにしてもよい。例えば、撮影対象部位が、頚椎のような、X線散乱の起こり易い部位の付近にある場合を想定する。この場合、CT撮影中、X線コーンビームBXが頚椎を通過しないで撮影対象部位を通過する期間(期間T1)と、X線コーンビームBXが頚椎および撮影対象部位を通過する期間(期間T2)とが想定される。この場合、期間T1については、比較的鮮明な投影画像データ(投影データ)が得られるので、高フレームレートで撮影が行われ、期間T2については、それよりも低いフレームレートで撮影が行われることが考えられる。撮影対象部位はCT撮影領域設定画面200をはじめとするCT撮影領域設定手段で設定される。したがって、この場合、CT撮影領域設定手段をフレームレート設定部と捉えることができる。
【0232】
また、X線CT撮影装置1において、X線CT撮影中、X線コーンビームBXがX線検出器21の検出面21’全面に照射されるように、CT撮影領域CAが設定されるX線CT撮影もできるようにしてもよい。この場合、X線発生部10は、
図5(a)に示される大照射野CT用X線コーンビームBX1を照射する。この場合の大照射野CT用X線コーンビームBX1は、X線検出器21の検出面21’全面に照射されるように設定されている。このような大照射野CT用X線コーンビームBX1の照射においては、CT撮影中に
図25に示される検出面21’全面、すなわち全ての検出セグメントをアクティブ化しておく。このように、X線CT撮影装置1が実行する撮影モードを、検出面21’全面を用いるX線CT撮影モードと、読出領域が制御されるX線CT撮影モードとの間で、Modeボタン244などの撮影モード切替部を介して切り替えられるようにしてもよい。
【0233】
検出面21’全面を用いるX線CT撮影モードは、検出面21’の全領域でX線CT撮影を行う全領域CT撮影モードであり、読出領域が制御されるX線CT撮影モードは検出面21’の全領域の部分領域でX線CT撮影を行う部分領域CT撮影モードである。
【0234】
検出面21’全面を用いるX線CT撮影モードについては、x軸方向については検出面21’全面を用いるが、z軸方向については制限をかけたX線照射を行うモードと、x軸方向についてもz軸方向についても制限をかけないX線照射を行うモードとにさらに細分される場合がある。このうち、z軸方向について制限したX線照射を行うモードでは、例えば、
図26に示されるように、CT撮影領域CAが上顎の全部(または、下顎の全部)とされて、X線コーンビームBXの照射範囲がz軸方向に関して規制され、検出面21a’の上側(または下側)のみにX線コーンビームBXが照射される。このときのX線コーンビームBXの被照射領域XA2に対応して、上段側のみ(または下段側のみ)の検出セグメントの全部がアクティブ化される。
【0235】
ここで、x軸方向に並んだ要素(検出セグメント)を「行」とし、z軸方向に並んだ要素を「列」とする。
図25に示される例では、検出セグメントが10列で並んでいることとなる。ここで、1つの検出セグメントの横幅を細らせることで、検出セグメントの列数を増やすことが考えられる。また逆に、1つの検出セグメントの横幅を大きくすることで、検出セグメントの列数を減らすことも考えられる。例えば、右、左、中央に配置された3列の検出セグメントとしたり、右、左に配置された2列の検出セグメントとしたりすることが考えられる。
【0236】
また、
図26に示される、z軸方向における検出面21’の分割数についても同様である。つまり、検出面21’が3行以上の検出セグメントで構成されることも妨げられない。
【0237】
また、読出領域が画素単位で制御されるようにしてもよい。この場合、検出面21’において、X線コーンビームBXの被照射領域XA2に対応する画素のみを読出領域としてアクティブ化するよう制御がなされる。(被照射領域XA2と読出領域が一致する。)被照射領域XA2よりも周囲1画素(または2画素以上の画素数)分広い領域を読出領域としてアクティブ化するようにしてもよい。
【0238】
X線コーンビームBXの被照射領域XA2の画素のみを読出領域としてアクティブ化するよう制御する場合、検出面21’において、読出領域がX線撮影中に、z軸方向に変更されるようにしてもよい。例えば、前述の
図13の実施例において、
図13(a)と
図13(b)とでは、検出面21’において、X線コーンビームBXに照射される範囲がz軸方向に変位している。このX線コーンビームBXに照射される範囲の変位に合わせて、読出領域が変更されるようにしてもよい。
【0239】
図27は、その他のビーム成形機構13aの概略正面図である。
図27において、
図4に示される要素と同じ、または同種の要素については、同一の符号を付し、説明を省略する。ビーム成形機構13aは、主に、3枚の遮蔽板19a、19b、19cを備えている。遮蔽板19a、19b、19cは、y軸方向において順番に配置されている。また、遮蔽板19a、19b、19cには、それぞれ、中央部に長方形状の開口171a,171b,171cが形成されている。また、遮蔽板19a、19bには、それぞれ、遮蔽板横方向移動機構16bが接続されており、遮蔽板19cには、遮蔽板縦方向移動機構16aが接続されている。このため、遮蔽板19a、19bは横方向へ、遮蔽板19cは、縦方向へ移動させることが可能となっている。
【0240】
図28は、3枚の遮蔽板19a、19b、19cの位置調整についての説明図である。
図28(a)〜(d)では、遮蔽板19cは遮蔽板19a(または遮蔽板19b)の裏側に重なるよう配置されている。また、
図28に示される被写体N1は、ビーム成形機構13aの+y側に仮想的に配置された物体である。
図28(a)〜(d)に示されるように、遮蔽板19a、19bを横方向に所要の長さ分ずらすことで、被写体N1の+x側部分(
図28(a))、被写体N1のx軸方向中央部分(
図28(b))、被写体M2の−x側部分(
図28(c))、および、被写体N1の全部分(
図28(d))にX線コーンビームBXが照射されるよう、開口17を形成することができる。
【0241】
また、遮蔽板19a、19bの横方向位置を調整するとともに、遮蔽板19cの縦方向位置を変更することで、例えば
図28(e)に示されるように、被写体N1の+x側かつ+z側の部分のみに、X線コーンビームBXが照射されるように、開口17を形成することができる。
【0242】
また、
図27に示されるビーム成形機構13aは、3枚の遮蔽板19a、19b、19cを備えているが、X線コーンビームBXの照射範囲を横方向にのみ制御する場合は、
図28(a)〜(d)に示されるように、横方向に移動する遮蔽板19a、19bのみを備えておればよい。
【0243】
図29は、2枚の遮蔽板19a、19cの位置調整についての説明図である。
図29に示されるように、遮蔽板19cが、縦方向だけでなく、横方向にも移動できるように構成されることにより、遮蔽板19bを省略することも可能である。遮蔽板19cを移動させる具体的構成は、図示を省略するが、例えば、
図27に示される遮蔽板19cおよびその遮蔽板縦方向移動機構16aが図示しない基台に載置され、その基台が遮蔽板横方向移動機構16bと類似の移動機構により横方向に移動するように構成される。つまり、遮蔽板19a,19cが横方向に所要の長さ分ずらされることによって、
図29(a)に示されるように、被写体N1の+x側部分のみに、または、
図29(b)に示されるように、被写体N1の−x側部分のみに、それぞれX線コーンビームBXを照射する開口17が形成される。
【0244】
また、
図29(c)に示されるように、遮蔽板19aに対して、遮蔽板19cを縦方向に所要の長さ分ずらすことで、被写体N1の+z側部分のみにX線コーンビームBXが照射されるよう、開口17を形成することができる。さらに、
図29(d)に示されるように、遮蔽板19cに対して、遮蔽板19aを所要の長さ分ずらすことで、被写体N1の+z側かつ−x側部分のみにX線コーンビームBXが照射されるよう、開口17を形成することができる。さらに、
図29(e)に示されるように、遮蔽板19a、19cを同位置に重ねることで、被写体N1の全部にX線コーンビームBXが照射されるよう、開口17を形成することができる。
【0245】
<2. 第2実施形態>
第1実施形態では、旋回アーム30が被写体M1に対してX軸方向およびY軸方向に移動できるように構成されているが、旋回軸が固定された状態で、固定されていてもよい。また、第1実施形態では、旋回アーム30の旋回軸31が鉛直方向に延びているが、旋回軸が鉛直に延びた構造を有していなくてもよい。
【0246】
図30は、第2実施形態に係るX線CT撮影装置1Aの全体斜視図である。この実施形態では、後述する回転支持部41Aの回転軸(軸31A)は、水平に延びている。また、
図31は、第2実施形態に係るX線CT撮影装置1Aの側面図である。X線CT撮影装置1Aは、患者の局部、例えば、頭部、頚椎、腕関節、手指、腰椎、股関節、膝、足などをX線CT撮影するための装置である。X線CT撮影装置1Aの構成の詳細は、特許文献5(特開2011ー25012号公報)に開示されている。
【0247】
X線CT撮影装置1Aは、基体90と、旋回アーム30Aと、旋回用モータ37Aと、筒状体63とを備えている。
【0248】
旋回アーム30Aは、基体90に取り付けられている。
図30に示される例では、基体90のうち鉛直方向に沿った一主面に旋回アーム30Aが取り付けられている。なお、以下の説明では、便宜上、基体90のうち旋回アーム30Aが設けられた側を前側、その反対側を後ろ側と称する場合がある。
【0249】
また、基体90の下部には、床上を転がり可能な車輪として、一対の車輪24および方向変換可能な補助車輪25が設けられている。また、基体90の上側部分の後部には手押し用ハンドル26が設けられている。利用者などが上記手押し用ハンドル26を持って進行方向を操作しつつ基体90を押すことで、X線CT撮影装置1Aが床面などの上を走行移動することで、搬送される。すなわち、X線CT撮影装置1Aは、その設置場所を変更可能な可搬型のX線CT撮影装置として構成されている。なお、X線CT撮影装置1Aを移動可能とする構成は上記のものに限定されない。
【0250】
また、基体90の上側部分の後部には、操作表示部61Aが設けられている。操作表示部61Aは、
図1に示される操作表示部61と同様に、CT撮影領域設定画面200などが表示され、CT撮影領域CAを操作者(術者など)が設定するために利用される。
【0251】
また、基体90の内部には、不図示のCT撮影処理ユニットが備えられる。このCT撮影処理ユニットは、CPUまたはRAMなどを備える一般的なコンピュータによって構成された処理制御ユニットである。このCT撮影処理ユニットは、
図1に示される本体制御部60または情報処理装置8と同様の機能を持つ。
【0252】
また、基体90の一主面には取付穴部90hが形成されており、この取付穴部90hを利用して旋回アーム30が基体90に設けられている。
【0253】
旋回用モータ37Aは、回転速度、回転角度などを制御可能なモータなどによって構成されている。この旋回用モータ37Aは、その駆動軸部を略水平姿勢にして取付穴部90hの略中心に向けた姿勢で、上記基体90内に一定位置又は位置変更可能に支持されている。なお、旋回用モータ37Aを基体90内で位置変更可能に支持する例については変形例として後に説明する。そして、この旋回用モータ37Aに後述する回転支持部41Aが連結されることで、旋回アーム30Aが回転駆動可能に支持される。
【0254】
旋回アーム30Aは、U字状に形成されており、それぞれの端部において、X線発生部10AとX線検出部20Aとを対向させた状態で支持する。また、旋回アーム30Aは、基体90に対して旋回アーム30Aを回転可能に支持する回転支持部41Aを備えている。
【0255】
回転支持部41Aは、内側回転支持部42A(第二支持体保持部)と外側回転支持部44とを備えている。内側回転支持部42Aは、有底円筒状に形成されており、上記取付穴部90hを通って基体90内に配設されている。また、外側回転支持部44は、内側回転支持部42Aよりも大きい部材で形成されており、取付穴部90h部分で基体90の外方位置に配設されている。
【0256】
また、内側回転支持部42Aの底部には、不図示のボール軸受け部が設けられている。ボール軸受け部は、ボールなどの転動体などを介して相対回転可能に連結された外リング部材と内リング部材を備えている。旋回用モータ37Aは、不図示の回転体などの動力伝達機構を介して、上述の内リング部材を回転させることで、回転支持部41Aを回転させる。
【0257】
X線発生部10Aは、X線管など、X線コーンビームBXを発生させるX線発生器によって構成されている。このX線発生部10Aは、旋回アーム30Aの他方の端部に取り付けられているX線検出部20Aに向けて、X線コーンビームBXを照射する。X線発生部10Aは、X線発生部10と同様に、X線コーンビームの照射範囲を調整するビーム成形機構13Aを備えている。ビーム成形機構13Aは、
図4に示されるビーム成形機構13と同様の構成を備えている。
【0258】
また、X線検出部20Aは、X線検出器21Aを備えている。X線検出器21Aは、
図25または
図26に示されるX線検出器21、21aと同様に、そのX線を検出する検出面が複数の検出セグメントに分割されている。基体90に内蔵されているCT撮影処理ユニットが備えるX線検出制御部によって、X線検出器21Aの検出面における、X線検出信号の読出領域が変更制御される。
【0259】
旋回用モータ37Aの駆動により、上記回転支持部41Aが水平方向に延びる軸31Aを回転軸として回転すると、旋回アーム30Aが軸31A周りに旋回する。これにより、旋回アーム30Aに取り付けられたX線発生部10AおよびX線検出部20Aが軸31A周りに旋回する。
【0260】
回転支持部41Aには、旋回軸31A周りの図示しない空洞部が設けられ、この空洞部に筒状体63が嵌まり込んでいる。ただし、筒状体63は、基体90に固定されるが、回転支持部41Aには固定されない。これため、筒状体63は、回転支持部41Aと一緒には旋回しないようになっている。したがって、旋回アーム30Aが旋回しても、筒状体63は旋回アーム30Aと共に旋回しない。筒状体63をこのように構成することで、患者が筒状体63内に体の一部を安全に載置できるようになっている。これと同じ目的を達成するために、筒状体63と回転支持部41Aとの間にベアリングなどの軸受機構を介在させて、筒状体63を回転支持部41Aに対して回転自在に固定してもよい。
【0261】
X線CT撮影装置1Aにおいて、患者の局部、例えば、上腕M2aを撮影する場合には、まず、患者の上腕M2aが、X線発生部10AとX線検出部20Aとの間の位置であって、軸31Aに沿うよう配設される(
図31参照)。この状態で、旋回用モータ37Aの駆動により、軸31A周りにX線発生部10AおよびX線検出部20Aが旋回する。このとき、旋回アーム30Aの旋回位置(旋回角度)に応じて、X線コーンビームBXの照射範囲が、X線発生部10側からCT撮影領域CAを正視したときの、CT撮影領域CAのz軸方向の位置およびx軸方向の幅に合わせて、照射範囲が調整される。また、X線検出器21Aにおいては、X線コーンビームBXの照射範囲に対応して、X線検出信号の読出領域が変更制御される。
【0262】
X線CT撮影装置1Aのように、X線CT撮影中、軸31Aが水平方向に延びるように配置されている場合であっても、X線コーンビームBXの照射範囲をビーム成形機構13Aによって調整することができる。このため、CT撮影領域CA外における被写体M2のX線被曝量を低減することができる。また、X線コーンビームBXの照射範囲に対応して、X線検出器21AにおけるX線検出信号の読出領域が変更制御されるため、X線検出信号の転送を効率的に行うことができる。
【0263】
<3. 変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0264】
例えば、第1実施形態に係るX線CT撮影装置1において、画像表示部210には、歯列弓画像211が表示されるとしているが、この歯列弓画像211の代わりに、被写体M1のX線投影画像、もしくは被写体M1を模した模式図(イラストなど)が表示されるようにしてもよい。
【0265】
また、
図1に示されるように、X線CT撮影装置1では、患者が立位の姿勢で固定されており、X線発生部10およびX線検出部20が被写体M1周りで旋回するように構成されている。しかしながら、被写体M1(患者)が着座する座席を設けて、被写体M1が着座姿勢にて固定されるようにしてもよい。また、患者を仰臥姿勢(または伏臥姿勢)にて支持する台を設けて、その患者の周りをX線発生部10およびX線検出部20が旋回することも考えられる。
【0266】
また、上記実施形態に係るX線CT撮影装置1では、
図9、
図18、
図20に示されるように、X線CT撮影中、X線コーンビームBXがCT撮影領域CAの全範囲に照射されるノーマルスキャンCT撮影が行われている。しかしながら、X線CT撮影装置1において、X線CT撮影中、X線コーンビームBXがCT撮影領域CAの一部にのみ照射されるオフセットスキャンCT撮影が行われてもよい。このオフセットスキャンCT撮影では、x軸方向に関して、X線コーンビームBXの照射範囲が限定される。オフセットスキャンCT撮影の具体的な方法については、特許文献6(特許4516626号)の
図3A〜
図4D、特許文献7(特開2008−114056号公報)の
図16〜
図20、または、特許文献8(国際公開第2009/063974号パンフレット)の
図2A〜
図12などに開示されている。
【0267】
なお、本願においてはCT撮影中、X線コーンビームBXがCT撮影領域CAの全範囲に照射されるCT撮影を、ノーマルスキャンCT撮影と呼ぶ。ノーマルスキャンCT撮影の典型例は、
図20に示されるように、CT撮影領域が旋回軸の軸方向から見て真円の形状であるCT撮影である。
【0268】
オフセットスキャンCT撮影によると、同一のCT撮影領域CAをX線CT撮影する際に、ノーマルスキャンCT撮影のときに比べて、X線コーンビームBXがx軸方向に関してして狭められる。したがって、X線検出器21を小さくすることができるので、装置コストの点で有利である。また、オフセットスキャンCT撮影によると、同一サイズのX線検出器21を用いてX線CT撮影が行われる場合に、ノーマルスキャンCT撮影のときに比べて、より広いCT撮影領域CAを設定することができる。
【0269】
また、上記各実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。