(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076824
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】熱接触式画像形成装置及び熱接触式画像形成方法
(51)【国際特許分類】
B41M 1/06 20060101AFI20170130BHJP
B41C 1/055 20060101ALI20170130BHJP
B41C 1/10 20060101ALI20170130BHJP
B41F 7/02 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
B41M1/06
B41C1/055 501
B41C1/10
B41F7/02
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-97301(P2013-97301)
(22)【出願日】2013年5月7日
(65)【公開番号】特開2013-241007(P2013-241007A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2016年5月6日
(31)【優先権主張番号】13/476,395
(32)【優先日】2012年5月21日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・アール・ムーア
【審査官】
藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−241131(JP,A)
【文献】
特開2010−241137(JP,A)
【文献】
特表2009−527387(JP,A)
【文献】
特開2002−067393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41C 1/00 − 1/18
B41F 7/00 − 7/40
B41M 1/00 − 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルリソグラフィインク印刷に有用な熱接触式画像形成装置であって、
溶液を受け取る表面を有する画像形成ローラと、
前記画像形成ローラが1回転する間に、前記画像形成ローラを第1の温度(Tp)に加熱するよう配置された少なくとも1つの発熱体と、
前記溶液を前記画像形成ローラの前記表面に吐出して、潜熱画像を生成する前記画像形成ローラの表面を選択的に冷却する滴吐出システムであって、前記加熱及び前記溶液の塗布によって、前記画像形成ローラの前記表面上に、前記第1の温度を有するTp領域と前記第1の温度より低い第2の温度を有するTc領域とが生成される、滴吐出システムと、
画像形成プレートであって、該画像形成プレートと前記画像形成ローラとによって形成された画像形成ニップを通過する湿し水膜であるFS膜を受け取ることができる画像形成プレートと、
を備え、
前記画像形成ニップを通過することで前記Tp領域が十分な熱エネルギを前記画像形成プレート上の前記FS膜に伝えて前記FS膜を気化させ、
前記画像形成ローラの前記表面の前記Tc領域が接触した前記画像形成プレート上の部分には前記FS膜が残る、
熱接触式画像形成装置。
【請求項2】
選択的な冷却が、前記加熱された画像形成ローラの前記表面から熱エネルギを吸収することである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記滴吐出システムから吐出された溶液が、前記画像形成ローラの前記表面を、前記第1の温度より低い前記第2の温度まで局所的に冷却するのに十分な温度である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの発熱体及び前記画像形成ローラが、前記画像形成ローラが1回転する間に、前記画像形成ローラを加熱するように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの発熱体及び前記画像形成ローラが、前記画像形成ローラの前記表面を前記第1の温度まで加熱するよう構成され、前記滴吐出システムが、前記画像形成ローラの前記表面の選択領域に前記溶液を吐出して前記画像形成ローラの前記表面の前記選択領域を前記第1の温度より低い前記第2の温度まで冷却し、前記画像形成ローラの前記表面における前記第1の温度の領域、及び画像形成ローラの前記表面における前記第2の温度の領域が潜熱画像を形成する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記溶液の温度が、前記加熱された画像形成ローラの前記第1の温度より低く、前記溶液が、デジタル画像データに従って、前記画像形成ローラの前記表面の所望の部分に接触する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記画像形成ローラの前記表面の前記所望の部分が、前記デジタルリソグラフィインク印刷の処理においてインク画像を形成するために、前記画像形成プレートの表面に塗布されるインクが弾かれる前記画像形成プレートの部分に対応する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記溶液が水を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記滴吐出システムがプリントヘッドを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
デジタルリソグラフィインク印刷に有用な熱接触式画像形成方法であって、
画像形成ローラの表面を第1の温度(Tp)に加熱するステップと、
前記第1の温度を有する領域であるTp領域と前記第1の温度より低い第2の温度を有する領域であるTc領域とを含む潜熱画像を形成する、前記画像形成ローラの前記表面の選択領域に溶液を吐出するステップと、
画像形成プレート上に湿し水膜であるFS膜を受け取るステップであって、前記溶液が、該画像形成プレートと前記画像形成ローラとによって形成された画像形成ニップを通過する際に、前記画像形成プレート上に画像を形成するステップと、
を含み、
前記画像形成ニップを通過することで前記Tp領域が十分な熱エネルギを前記画像形成プレート上の前記FS膜に移動させて前記FS膜を気化させ、
前記画像形成ローラの前記表面の前記Tc領域が接触した前記画像形成プレート上部分には前記FS膜が残る、
熱接触式画像形成方法。
【請求項11】
前記吐出がデジタル画像データに従い、前記溶液がプリントヘッドによって吐出される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の温度を有する前記画像形成ローラの表面領域から、前記画像形成プレート上に形成された前記FS膜に熱エネルギを伝達して、インク画像の形成のためにインクが堆積される前記画像形成プレートの領域から湿し水を選択的に除去する、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、平板インクを用いて印刷を行うインクベースのデジタル印刷システム、又はデジタルアーキテクチャの印刷システムに関する。具体的には、本明細書は、デジタル平板インク印刷システムの中央画像形成ドラムの画像形成プレートとニップを形成する画像形成ローラを含む熱接触画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクベースの可変データ印刷に対して、デジタルオフセットの印刷システム又はデジタルアーキテクチャの印刷システムを使用することができる。デジタルオフセットの印刷処理では、光エネルギーを吸収可能な画像形成プレート、又はブランケットを、回転可能な画像形成ドラム、又はシリンダの外周部に配置することができ、この画像形成プレート又はブランケットの表面全体に湿し水の薄膜を均一に塗布する。回転可能な画像形成シリンダは、それに隣接するサブシステム即ち処理ステーションを通過させながら、画像形成プレートの表面の領域を移動させるよう設定可能であり、それらの処理ステーションには、湿し水を塗布する湿しローラと、画像の形成つまり画像形成プレートの選択領域から画像の形状の湿し水を気化させる画像形成システムと、画像形成プレートの表面にインクを塗布するインク塗布ローラと、印刷媒体にインク画像を転写させる転写ステーションと、画像プレートの表面から残留物を取り除き、処理を再度始めるために表面を整えるクリーナシステムと、が含まれる。
【0003】
湿し水を画像形成プレートに塗布した後、インクベースのデジタル印刷処理では、高出力のレーザを備える画像形成システムを用いて、プレートの表面の選択領域から画像の形状で湿し水を気化させることができる。湿し水を局所的に加熱しプレートの表面から蒸発させるために、光エネルギーを吸収するよう画像形成プレートは設定される。デジタル画像のデータによりインクが付着し、これによりインク画像が形成されるプレート上の領域で、湿し水を選択的に気化させるために高出力レーザ等の変調光源を実装することができる。画像形成ゾーンから湿し水の蒸気を取り除くために吸引マニホールドを実装することができる。インクはインク塗布ローラにより塗布され、湿し水が気化した後の画像形成プレート内の選択領域に付着して、インク画像が形成され得る。これとは反対に、湿し水が残る画像形成プレート表面内の領域では、インクは弾かれ得る。インク画像は、転写ステーションで圧力のもと、紙又はその他の好適な媒体に転写され得る。
【0004】
従来技術のデジタル平板インク印刷に関する画像形成システムでは製造コストがかかる。従来技術の画像形成システムでは、光強度に関する要求条件を緩和する努力として、赤外線(「IR」)レーザ等の高出力の光源、及び低い気化熱を有する代替的な湿し水を使用している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術のIRレーザ光源を用いる従来の高出力レーザベースの画像形成システムは、コスト高である。平板インク印刷で使用するために水ベースの湿し水が所望されるが、水の蒸発潜熱が高温のため、画像の形成処置中に非常に多い電力の供給が余儀なくされる。例えば、2m/sで走行する単色の24インチ幅の処理では、2μmの厚さ水の膜を蒸発させるために、画像形成装置から6.3KWの最少放射電力の供給が必要となり得る。これらのコストを軽減するために、より低い気化熱を有するシンナーベースの湿し水層や代替的な湿し水の材料の開発が行われてきた。従来のシステムと比べると、エネルギー及びコストの節約に対応する、熱接触式画像形成装置、システム、及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、装置はデジタル平板インク印刷に対して有用な熱接触式画像形成装置を含むことができる。熱接触式画像形成装置は、画像形成ローラと、滴吐出システムとを含むことができ、この滴吐出システムは、画像形成ローラの表面を選択的に冷却するために画像形成ローラの表面に溶液を吐出するよう設定される。この装置は、少なくとも1つの外部発熱体を含むことができ、これらの発熱体は、画像形成ローラの表面を第1の温度まで加熱するよう設定される。この装置は、少なくとも1つの内部発熱体を含むことができ、この内部発熱体は画像形成ローラの表面を第1の温度まで加熱するよう設定される。この装置は、滴吐出システムを含むことができ、この滴吐出システムは、周囲温度で、あるいは画像形成ローラの表面を第2の温度まで局所的に冷却するのに十分な温度で、溶液を吐出するよう設定され、この第2の温度は第1の温度よりも低い。
【0007】
この実施形態では、溶液の温度は、加熱済みの画像形成ローラの第1の温度より低くてよく、この溶液は、デジタル画像データに従って画像形成ローラの表面の所望部分に接触する。この画像形成ローラの表面の所望部分は、デジタル平板インクの印刷処理においてインク画像を形成するために、画像形成プレートの表面に塗布されるインクが弾かれる画像形成プレートの部分に対応する。実施形態では、この溶液は水ベースの溶液を含むことができる。実施形態では、少なくとも1つの発熱体を含んで、画像形成ローラを加熱することができ、この少なくとも1つの発熱体及び画像形成ローラは、画像形成ローラが1回転する間に、画像形成ローラの表面を第1の温度まで加熱するよう設定される。
【0008】
一実施形態では、装置は画像形成ローラの表面を第1の温度まで加熱するよう設定された少なくとも1つの発熱体及び画像形成ローラと、画像形成ローラの表面の選択領域を第1の温度より低い第2の温度まで冷却するために、画像形成ローラの表面の選択領域に溶液を塗布するよう設定された滴吐出システムと、を含むことができ、第1の温度の表面領域と第2の温度の表面領域とが潜熱画像を形成する。滴吐出システムは、印刷ヘッドを含むことができる。この印刷ヘッドは、デジタル画像データに従って、印刷ヘッドを制御するデータソースを含むことができる。
【0009】
システムの一実施形態では、デジタル平板印刷システム又はインクベースのデジタル印刷システムは、湿し水又はベースの溶液の膜を選択的にパターン化する画像形成装置を含むことができ、この画像形成処理装置は、画像形成ローラと、画像形成装置の画像形成ローラと画像形成ニップを形成する、画像形成シリンダ内の画像形成プレートとを含み、この画像形成プレートは、湿し水又は水ベースの溶液の膜を画像形成ニップに運ぶよう設定される。一実施形態では、滴吐出システムのメカニズムは、溶液を画像形成ローラ上に吐出して、湿し水又は水ベースの溶液の膜を選択的にパターン化するための熱潜像を形成するよう設定される。システムの一実施形態では、画像形成装置は、画像形成ローラを第1の温度まで加熱にするよう設定され得、滴吐出システムは、デジタル画像データに従って、溶液を画像形成ローラの表面の選択部分上に吐出して、画像形成ローラの選択部分を第2の温度まで冷却するよう設定され、第2の温度は第1の温度より低い。
【0010】
システムの一実施形態では、画像形成装置は、画像形成ローラを加熱する少なくとも1つの発熱体を含むことができ、これらの少なくとも1つの発熱体及び画像形成ローラは、画像形成ローラが1回転する間に、画像形成ローラの表面を第1の温度まで加熱するよう設定される。システムは、印刷ヘッドを含む滴吐出システムのメカニズムを含むことができる。印刷ヘッドは、データソースに接続することができ、このデータソースは印刷ヘッドと通信することができる、且つ/又は、デジタル画像データに従って、印刷ヘッドを制御することができる。一実施形態では、システムは、湿し水又は水ベースの溶液の膜を選択的にパターン化した後にインクを画像形成プレートに塗布するインク塗布システムを含むことができる。一実施形態では、画像形成ニップで第2の温度まで冷却された画像形成ローラの選択領域に接触する画像形成プレートの部分にインクが付着されるようシステムは設定され得る。
【0011】
方法の一実施形態では、デジタル平板インクの印刷に有用な接触式画像形成処理では、画像形成ローラの表面を第1の温度まで加熱するステップと、第1の温度の領域と第2の温度の領域とを含む熱潜像を形成する画像形成ローラの表面の選択部分に湿し水を吐出するステップと、を含むことができる。一実施形態では、湿し水を吐出するステップは、デジタル画像データに従って実行され、制御装置に接続した印刷ヘッドにより溶液が吐出される。一実施形態では、方法は、インク画像を形成するためにインクが塗布され付着される、画像形成プレートの領域から湿し水を選択的に取り除くために、第1の温度のままの画像形成ローラの表面領域、即ち溶液が吐出なかった領域から画像形成プレート上に形成された湿し水の膜に、熱エネルギーを転移させるステップを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、デジタルアーキテクチャの印刷システム及びプロセスの概略側面図である。
【
図2】
図2は、例示的な実施形態による、デジタルアーキテクチャの画像形成システムの概略斜視図である。
【
図3】
図3は、例示的な実施形態による、デジタル平板インク印刷の方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
熱接触式画像形成ローラの画像形成システムを用いるデジタルアーキテクチャの印刷を行う装置、システム、及び方法の理解に対応するために図面を参照する。図面では、全体を通して同様の参照符号を用いて、類似又は同一の要素を指定する。図面では、平板インクを用いてデジタルアーキテクチャの印刷を実行する例示の装置、及びシステムの実施形態に関連する種々の実施形態が示される。
【0014】
平板インクを用いる可変データ印刷に対して、デジタルオフセット印刷システム、又はデジタルアーキテクチャの印刷システムを使用することができる。
図1には、紙のカットシート、紙のウェブ、及び/又は平板インクを用いる印刷に好適なその他の材料等の媒体上に印刷を行うデジタルオフセットシステム、又はデジタルアーキテクチャの印刷システム100が示される。システム100は、シリンダ101等の画像形成部を含むことができる。画像形成シリンダ101は、画像形成プレート105を含むことができ、この画像形成プレート105はシリンダ101の外周部上に形成される。このプレートは、天然エストマー又は合成エストマーのどちらかで形成され得る。従来技術のシステムでは、このプレートが光エネルギーを吸収して画像形成処理に適用するよう設定され、光エネルギーをプレートの表面の選択領域に集中させて、その選択領域上に位置する湿し水を局所的に蒸発させる。実施形態の熱接触式画像形成装置、システム、及び方法により、画像形成プレートに対する光吸収機能は必要なくなる。
【0015】
画像形成シリンダ101は、それに隣接するサブシステムを通過させながら画像形成プレートの領域105表面を移動させるために、
図1に示す画像形成シリンダの矢印に対応して処理方向に回転することができ、これらの隣接するブシステムの中には、画像形成プレート105の表面に湿し水を塗布する湿しローラ又は湿し水システム107と、平行レーザ光源を用いて画像形成プレート105の選択領域から湿し水を画像の形状で気化させる、関連する画像形成装置システム111と、画像形成プレート105の表面にインクを塗布するインク塗布ローラ113と、圧力のもとでインク画像を紙等の印刷媒体に転写させる転写ステーション121と画像形成プレート105の表面から、残留物を取り除き、処理を再度始めるために画像形成プレート105表面を整えるクリーナシステム122と、が含まれる。
【0016】
図1に示すシステムを用いるデジタル平板印刷処理では、エラストーマの画像形成プレート105を含む画像形成シリンダ101を、薄い湿し水の均一の膜で湿らせる。高出力の変調光源を用いて、画像コンテンツが所望される画像形成プレートの領域105の湿し水を選択的に気化させる。吸引マニホールド又は類似の装置を用いて、湿し液の蒸気を画像形成ゾーンからそらして、画像形成処理への障害を防止することができる。回転可能な画像形成シリンダ101により、画像形成プレート105はインク塗布ローラのニップを通過することができる。インク塗布ローラのニップは、インク塗布ローラ113を含むことができ、このインク塗布ローラ113はプレート105上にインクを塗布するよう設定され得、これにより、湿し水が気化した後のプレートの部分にインクが付着する。転写ステーション121での転写を容易にするために、1つ以上のUVランプを用いて、プレート上のインクを部分的に硬化させることができる。画像形成プレート105上に形成されたインク画像を、転写ニップで圧力を用いて媒体に転写させることができる。転写効率が、ほぼ100%に近くない場合、プレート105から残余インクを取り除くようクリーニングシステムを設定することができる。
【0017】
従来技術の画像形成システムを含むデジタル平板インク印刷システムの特性は、湿し水を蒸発させるのに必要な電力量により制限される。水ベースの湿し水は平板印刷業界では一般的であり、その低コストのために好まれているが、水の蒸発潜熱が高温のため、かなりの電力要求条件が必要となる。赤外線レーザ光源を用いる画像形成装置では、これらの電力要求条件を満たすことができるが、かなりの製造コストがかかる。従来技術の画像形成装置は、平行レーザ光源と、マイクロミラー変調器のアレイと、投影光学系とを含むことができ、レーザからの光エネルギーが、個々のマイクロミラーから画素単位で反射され、次いで光学系により、画像形成プレート105の表面の最上段の画像面上に集められる。プレート105により光エネルギーが吸収されて、湿し水を局所的に加熱し蒸発させる。極端に薄い湿し水の層を表面に均一に塗布することができない場合、全ての水ベースの湿し水では、その処理速度が制限される。そのため、より低い蒸発潜熱を有する代替的な湿し水の材料が検討されてきたが、そのような
湿し水の材料はコストが高く、その使用に関して独自の健康や環境に対する懸念がある。
【0018】
画像形成ローラを用いる従来技術のレーザベースの画像形成システムに代わり、熱接触式画像形成装置、システム、及び方法を提供する。画像形成ローラの表面材料が、特定な力学特性及び熱特性を持つよう設定することができる。ローラの表面が湿し水の沸点より高い温度まで加熱され、温度制御システムにより、絶えずその温度で維持するようこのローラを設定することができる。温度制御システムは、1つ以上の発熱体を含むことができ、これらの発熱体は、ローラ、及び/又は水ベースの内部ローラ加熱システムに接続する。熱接触式画像形成システムの画像形成ローラを、この画像形成ローラと画像形成プレートにより形成された画像形成ニップで、
図1に示す画像形成プレート105等の印刷プレートと接触するよう設定することができる。印刷ヘッドが、湿し水又は水滴を画像形成ローラの表面上に吐出することができるよう、全幅アレイの印刷ヘッドを処理方向に対して、画像形成ニップの前に設定し配置することができる。吐出された湿し水が、加熱済みの画像形成ローラと接触し、そして画像形成ローラの表面から熱エネルギーを吸収し、その表面を局所的に冷却すると、その湿し水は加熱され気化することができる。その結果、水滴がローラ上のどの位置に付着しても、画像形成ローラの表面を局所的に冷却することができる。
【0019】
印刷ヘッドを画像形成ローラと画像形成プレートにより形成された画像形成ニップに十分近づけて配置することにより、画像形成ローラの表面の高温領域である背景に対する、画素に対応する一連の冷却スポットを用いて、画像形成ローラの表面温度をパターン化することができる。このパターンを有する表面、又は熱潜像が画像形成ニップに入ると、画像形成ローラの表面のうちの高温である背景部分と接触する画像形成プレートの領域では、画像形成プレートに塗布された湿し水の膜が気化することができる。印刷ヘッドにより、湿し水又は水が吐出された画像形成ローラ上の位置に対応する冷温のスポットがパターン化された領域では、湿し液は気化しない。画像形成ニップの出口部で、内部加熱器、及び/又は外部加熱器が、画像形成ローラの表面の温度を均一な高温に再設定する。クロス処理方向に沿ってニップと均一に接触できるよう、画像形成ローラが柔軟表面を持つようを設定することができる。熱接触式画像形成装置、システム、及び方法は、低コストの画像形成システム、及び水ベースの湿し水を用いた状態で高速の動作に対応する。
【0020】
一実施形態による熱接触式画像形成装置、及びシステムを
図2に示す。具体的に、
図2は、装置及びシステムによるデジタル平板インク印刷システム、及び画像形成システムを示す。
図2に示されるデジタル平板印刷システム200は、中央画像形成シリンダ201を含み、このシリンダ201は、
図2に示される中央画像形成シリンダの矢印に対応して処理方向に回転することができる。中央画像形成シリンダ201は、画像形成プレート205を含む。画像形成プレート205は、天然エストマー又は合成エストマーあるいはその他の平板インク印刷に適する材料で形成することができる。実施形態の画像形成装置、システム、及び方法では、画像形成プレートが光吸収材料から形成されている必要はない。
【0021】
装置及びシステムは、画像形成ローラ215を含むことができる。この画像形成ローラは、
図2に示される画像形成ローラの矢印に対応して処理方向に回転することができる。画像形成ローラ215は処理幅を有して形成され、その幅は画像形成プレート205の処理幅とほぼ同じである。画像形成ローラ215を1つ以上の外部発熱体、及び/又は内部発熱体、及び/又は1つ以上の温度センサと接続することができ、且つ/又はそれらと隣接して配置することができる。
図2には、画像形成ローラ215を加熱するよう配置された外部発熱体219が示される。発熱体219及び画像形成ローラ215を、画像形成ローラ215が1回転する間に画像形成ローラ215を高温Tpまで加熱するよう配置し設定することができる。画像形成ローラ215、発熱体219、1つ以上の温度センサ217、及び/又は1つ以上の接続される制御装置(図示せず)を画像形成ローラ215の表面の温度を高温Tpまで加熱するよう設定することができ、このTpは湿し水の沸点より高温である。画像形成ローラ215を、柔軟表面を持つよう設定することができ、画像形成プレート205とニップを形成するよう配置することができる。平板インク印刷の処理中、画像形成ローラ215は、画像形成プレート205の表面上に形成された湿し水の層と密着する。このような接触の間、湿し水の膜に熱エネルギーを移し、この湿し水を温度Tpまで加熱し、画像形成プレート205の表面から気化させることができる。
【0022】
印刷ヘッド230を、画像形成ローラ215と隣接して配置することができる。印刷ヘッド230は、全幅アレイの印刷ヘッドでよい、又は一連の部分幅アレイの印刷ヘッドでよい。湿し水又は水ベースの溶液を画像形成ローラ215の表面上に吐出するよう印刷ヘッドを設定することができる。デジタルデータに従って、画像形成ローラ215の表面上に湿し水を吐出して、画像の背景領域、即ち「白の書き込み」画像に対応する熱潜像を形成するよう印刷ヘッド230を設定することができる。吐出された液体の滴がそれぞれ、画像形成ローラ215表面に接触すると、それらの滴は急速に加熱され、その沸点を超えて蒸発する。この相転移に要するエネルギーは、画像形成ローラの表面から供給され、これにより、画像形成ローラの表面の滴が付着した位置に、例えば、平均温度Tcの領域の局所冷却ゾーンが現れる。温度Tcは湿し水の沸点より低温であることが望ましく、これは、画像形成ローラの熱特性及び滴の質量を設定することにより、所望通りに調整可能である。画像形成ローラ215の表面の局所冷却領域を回転させて、画像形成ローラ215と画像形成プレート205により形成されたニップに入れることができる。印刷プレート205上の湿し液の膜は、画像形成ニップ内で分割され、この湿し水のうちの約半分は画像形成プレート205上に残る。局所的に温度Tcまで冷却された画像形成ローラの表面の位置で湿し水は残る。画像形成ローラ215表面上で滴が付着した領域に対応する印刷プレート205上の位置は、その下流のインク塗布ローラのステーションでインクを弾いて、画像の背景に対応する。これとは反対に、画像形成ローラ215の表面のうちの印刷ヘッド230から滴を受けなかった領域又はゾーンは、高温Tpのままの状態で画像形成ニップを通過し、画像形成プレート205上の湿し水の膜に十分な熱エネルギーを移して、その領域の湿し水の膜を局所的に加熱し蒸発させる。
図2に概略的に示す通り、空気流、及び/又は真空吸引を供給して、画像形成ニップの画像形成ローラ215の上流、画像形成ニップ、画像形成プレート205の下流でそれぞれ発生した蒸気を排出する。
【0023】
平板インクの印刷処理中にローラが画像形成ニップに入ると、画像形成ローラ215表面、及び画像形成ローラ215の中心部いくつかの性質により、特定のローラの熱標識が影響を受ける可能性がある。例えば、横方向に低い熱伝導率を有するローラ表面が好まれ得る。射出された滴の温度及び滴質量も、システム設計に影響を与える。
【0024】
デジタル平板インク印刷処理には、
図3に示すシステム及び装置を用いる熱接触式画像形成が含まれる。具体的には、
図3には、デジタル平板インクの印刷で有用な熱接触式画像形成の方法が示される。インクベースのデジタル印刷に対する熱接触式画像形成の方法は、S305で、画像形成ローラの表面を高温Tpまで加熱するステップを含むことができる。この高温Tpは、デジタル平板インクの印刷処理で画像形成プレートに塗布される湿し水、及び/又は水ベースの溶液の沸点よりも高温でよい。方法は、S315で、加熱済みの画像形成ローラの表面の所望の領域上に、湿し水又は水ベースの溶液を吐出するステップを含むことができる。吐出された湿し水が、加熱済みの画像形成ローラの表面の所望の領域に付着し熱エネルギーを吸収すると、その所望の領域が選択的に冷却される。このように、所望の領域は温度Tcまで冷却され、画像形成ローラ上に潜熱画像を形成する。
【0025】
図2を参照すると、デジタル平板インクの印刷処理中、湿し水又は水は、湿し水塗布システムにより、画像形成プレート205の表面に薄い均一の層として塗布され得る。湿し水の薄膜237がその上に形成された画像形成プレート205が、画像形成プレート205と画像形成ローラ215により形成されたニップを通過すると、画像形成ローラ上に形成された潜熱画像及びそれに対応する画像形成ローラ215の表面領域が、画像形成プレート205及び湿し水237と接触する。S320で、吐出後に温度Tpのまま残る加熱済みの画像形成ローラの領域から熱エネルギーを転移して、画像形成プレートの表面の対応する領域の湿し水を蒸発させる。そのため、印刷処理中に画像形成ニップから画像形成プレートが処理方向に向かって出るとき、残余湿し水239が画像形成プレート205上に残る。S315で、温度Tcまで冷却された、対応する画像形成ローラ215の表面領域に接触した画像形成プレート205の表面領域には、残余湿し水239が残る。残余湿し水239を含む画像形成プレート205の表面は、インク塗布ローラシステムにより、インクが塗布され得る。
図3に示す通り、画像形成プレート205で湿し水が残っていない領域では、インクは付着することができ、S305からS320までの間、画像形成プレート205で残余湿し水239が残っている領域では、インクが弾かれる。さらにデジタルインクベースの印刷を行うために、S305からS320までのステップを繰り返すことができる。
【0026】
熱接触式画像形成装置、システム、及び方法を含むデジタル平板インクの印刷システムは、製造コスト及び処理コストの削減に対応する。システムは、従来技術のデジタル平板インクの印刷システム内に組み込まれているような高出力の線レーザ源を含む画像形成システムよりも、大幅に安価な既知の印刷ヘッドを組み込むことができる。提供する装置、システム及び方法は、既知の好適な外部発熱体、及び/又は内部発熱体を用いることができ、これらの発熱体は安価で、処理速度、湿し水材料の組成のオプション、又は湿し水膜の厚さを制限する可能性のある入力電力に制限に制限されない。さらに装置、システム、及び方法は、画像形成プレートに対する赤外線吸収の要求条件により制限されない。