【実施例】
【0046】
後述する実施例で得られた化合物の分析条件は以下の通りである。
【0047】
<NMRスペクトル>
1H−NMRスペクトルは、CHCl
3(7.24)を内部標準物質として用いて、Bruker社製Avance−600により測定した。
13C−NMRスペクトルは、CHCl
3(77.0)を内部標準物質として用いて、Bruker社製Avance−600により測定した。
【0048】
単離例
下記の単離スキームに従い、下記式で表されるエリトロ−Δ8'−4,7−ジヒドロキシ−3,3',5'−トリメトキシ−8−O−4'−ネオリグナン(以下、エリトロ体(1)とも称する)をニクズクより単離した。
【0049】
【化5】
【0050】
ニクズク(Myristica fragrans Houtt.)の種子400gに、50vol%エタノール水溶液を4L添加し、室温で2日間浸漬して抽出した後、濾過して粗抽出液を得た。これを減圧濃縮後、エタノール2Lを添加し、不溶物を濾過した。濾液を減圧濃縮後、水と酢酸エチルを各2L添加して分液を行い、酢酸エチル層を減圧乾燥して固形分13.15gを得た。このうち5.00gをシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、エリトロ体(1)を含む画分1.10gを得た。これを更に逆相HPLC(Inertsil ODS−3)によって精製し、エリトロ体(1)を得た。
【0051】
実施例1
単離例1で得られたエリトロ体(1)(11.0mg)を60℃で融解したl−メントール(190mg)に溶解後、濃塩酸(2μL)を添加して60℃で3時間反応させた。冷却後、酢酸エチルと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチル層を減圧濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、Δ8'−7−(l−メントキシ)−4−ヒドロキシ−3,3',5'−トリメトキシ−8−O−4'−ネオリグナン(以下、混合物(2)とも称する)(8.9mg)を、ジアステレオマー比36:26:26:12で得た。
【0052】
実施例2
実施例1と同様にして、エリトロ体(1)(13.5mg)を60℃で融解したd−メントール(134mg)に溶解後、濃塩酸(2μL)を添加して60℃で3時間反応させた。冷却後、酢酸エチルと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチル層を減圧濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、Δ8'−7−(d−メントキシ)−4−ヒドロキシ−3,3',5'−トリメトキシ−8−O−4'−ネオリグナン(以下、混合物(3)とも称する)(9.5mg)を、ジアステレオマー比36:26:26:12で得た。
【0053】
得られた混合物(2)および(3)のNMRスペクトルと化学構造を以下に示す。なお、混合物(2)および(3)は互いにエナンチオマーの関係にあるため、NMRスペクトルは一致する。
【0054】
1HNMR (600 MHz, CDCl
3) δ 7.19 (d, J = 1.7 Hz, 0.12H), 7.06 (dd, J = 8.1, 1.7 Hz, 0.12H), 6.95 (m, 0.26H), 6.92 (d, J = 1.6 Hz, 0.26H), 6.88-6.76 (m, 2.24H), 6.38 (s, 0.24H), 6.36 (s, 0.52H), 6.26 (s, 0.72H), 5.98-5.86 (m, 1H), 5.58-5.44 (br, 1H), 5.11-5.01 (m, 2H), 4.71 (d, J = 5.8 Hz, 0.26H), 4.69 (d, J = 3.8 Hz, 0.12H), 4.60 (d, J = 4.2 Hz, 0.26H), 4.47 (d, J = 6.4 Hz, 0.36H), 4.37 (m, 0.26H), 4.35 (m, 0.12H), 4.31 (m, 0.36H), 4.22 (m, 0.26H), 3.88 (s, 0.36H), 3.86 (s, 0.78H), 3.84 (s, 0.78H), 3.80 (s, 1.08H), 3.78 (s, 1.56H), 3.76 (s, 0.72H), 3.71 (s, 1.56H), 3.66 (s, 2.16H), 3.45 (td, J = 10.5, 4.1 Hz, 0.26H), 3.33-3.24 (m, 2H), 3.16 (td, J = 10.5, 4.1 Hz, 0.12H), 2.98 (td, J = 10.5, 4.1 Hz, 0.36H), 2.91 (td, J = 10.5, 4.1 Hz, 0.26H), 2.60-2.51 (m, 0.26H), 2.30-2.18 (m, 1.1.36H), 2.12-2.07 (m, 0.26H), 1.86 (m, 0.12H), 1.70-1.46 (m, 2H), 1.33 (d, J = 6.3 Hz, 1.08H), 1.32-0.67 (m, 14.06), 0.46 (d, J = 6.9 Hz, 0.78H), 0.31 (d, J = 7.0 Hz, 1.08H);
13CNMR (150 MHz, CDCl
3) δ 153.5, 153.4, 153.2, 153.1, 146.1, 145.9, 145.8, 145.6, 144.8, 144.7, 144.3 (2C), 137.5, 137.4 (2C), 137.3, 135.7, 135.2, 134.9 (2C), 134.8, 134.7 (2C), 134.6 (2C), 132.8, 132.7, 131.6, 121.9, 121.5, 120.6, 120.3, 115.9, 115.8 (2C), 115.7, 113.4, 113.2, 113.1 (2C), 110.7, 110.5, 110.4, 110.0, 105.8, 105.6, 105.5 (2C), 83.2, 82.9, 81.4(2C), 80.9, 80.8, 80.3, 80.0, 79.8, 79.6, 74.6 (2C), 56.1, 55.9 (2C), 55.8 (4C), 55.7, 49.3, 48.8, 48.4, 42.2, 41.9, 40.5 (3C), 40.4, 39.9, 39.5, 34.6 (3C), 34.5, 31.6 (2C), 31.4, 31.2, 25.2, 25.1, 24.9, 24.8, 22.9 (2C), 22.8, 22.7, 22.5 (2C), 22.4, 22.3, 21.5, 21.4, 21.3 (2C), 16.5, 16.4, 15.9 (2C), 14.9, 14.8.
【0055】
【化6】
【0056】
試験例1 TRPM8活性化作用確認試験
以下の手順に従い、試験サンプルのTRPM8活性化作用におけるEC
50値を測定した。
(1)ヒトTRPM8安定発現株の作製
ヒトTRPM8安定発現HEK293細胞株を作製するため、ヒトTRPM8遺伝子のクローニングを行った。全長ヒトTRPM8遺伝子は、ヒト前立腺組織全RNA(COSMOBIO社製)より、RT−PCR法を用いて増幅した。
得られたPCR産物をエントリーベクターpENTR−D/TOPO(インビトロジェン社製)へクローニングした後、pCDNA3.2−V5/DEST(インビトロジェン社製)へサブクローニングし、リポフェクトアミン2000(インビトロジェン社製)によりHEK293細胞へ形質導入した。形質導入された細胞を、450μg/mLのG−418(プロメガ社)を含有するDMEM培地中で増殖させて選抜した。HEK293細胞は内在性のTRPM8を発現しないため、TRPM8形質導入株に対するコントロールとして使用できる。
【0057】
(2)カルシウムイメージング
HEK293細胞へ形質導入したTRPM8活性の測定は、蛍光カルシウムイメージング法により行った。
まず、培養したTRPM8発現細胞をポリ−D−リジンコートされた96ウェルプレート(BDファルコン社製)へ播種(30,000細胞/ウェル)し、37℃で一晩インキュベートした後、培養液を除去し、Fluo4−AM液(同仁化学社製;カルシウムキットII)を添加し、37℃で30〜60分間インキュベートした。その後、96ウェル穴プレートを蛍光プレートリーダー(FDSS3000;浜松ホトニクス社製)にセットし、装置庫内温度を32℃とした状態で、励起波長480nmで励起したときのFluo4による蛍光イメージを、CCDカメラを用いて検出波長520nmにより捕捉した。
測定は1秒毎に計4分間行い、測定開始15秒後に、FDSS3000内蔵の分注器から試験サンプル(下記表1に示す各化合物を10mM濃度でそれぞれエタノールに溶解したストック液を作成し、さらにハンクスリンガー液に終濃度の3倍の濃度で溶解させたもの)を添加し、蛍光強度の変化によりTRPM8の活性を評価した。
【0058】
(3)TRPM8活性化の評価
TRPM8活性は、試験サンプル添加後の蛍光強度比の最大値を用いて評価した。下記の式を用いて蛍光強度比を算出した。
蛍光強度比=各時点の蛍光強度/測定開始時蛍光強度
各処理群あたり2ウェルで評価を行い、その平均値を用いた。
【0059】
(4)TRPM8活性化作用の評価結果
以下の表1に示す各試験サンプルのTRPM8活性化作用を、終濃度1nMから1μMの範囲で上記方法により測定した。測定結果より、最小二乗法を用いてヒルの式に近似した容量依存曲線を求め、これよりEC
50値を算出した。各試験サンプルのTRPM8活性化作用におけるEC
50値は以下の表1に示すとおりであった。
【0060】
【表1】
【0061】
前記表1に示すように、実施例で得られた各化合物は優れたTRPM8活性化作用を有する。したがって、これら実施例で得られた各化合物によれば強い冷感を付与することができる。