(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076861
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】気体圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 29/00 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
F04C29/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-175442(P2013-175442)
(22)【出願日】2013年8月27日
(65)【公開番号】特開2015-45230(P2015-45230A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(74)【代理人】
【識別番号】100180068
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 怜史
(72)【発明者】
【氏名】石橋 泰央
(72)【発明者】
【氏名】田尻 政義
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敬太
【審査官】
山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−247034(JP,A)
【文献】
特開2008−095566(JP,A)
【文献】
特開平09−068180(JP,A)
【文献】
特開2014−231787(JP,A)
【文献】
特開2007−092709(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0246055(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/00−2/077
F04C 2/30−2/352
F04C 18/00−18/0777
F04C 18/30−18/352
F04C 18/48−18/56
F04C 23/00−29/12
F04C 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側が開口し他端側が塞がれた略筒状のハウジングと、
前記ハウジングの開口端面を塞ぐように取り付けられたフロントヘッドと、
一端側が前記フロントヘッド内に固定されるとともに、前記一端側を除く略全体が前記ハウジング内に収納され、駆動源からの駆動力によって回転される回転軸の回転にともなって、圧縮された高圧の媒体を外部に吐出させる圧縮機構部と、
前記ハウジングの開口端面側の外周面に形成され、外部の構造部材に固定される固定受部とを備え、
前記圧縮機構部の前記ハウジング内に収納されている他端側の外周面が、ハウジング内周面に圧入されるようにして固定されている気体圧縮機であって、
前記ハウジングの外周面に、前記固定受部から前記圧縮機構部の他端側が前記ハウジング内周面に圧入されている位置まで少なくとも延びているリブが一体に形成されていることを特徴とする気体圧縮機。
【請求項2】
前記圧縮機構部の中央部に前記ハウジングの長手方向に沿って前記回転軸が回転可能に保持され、前記ハウジングの外周面の径方向の対向位置に、前記固定受部が前記回転軸の軸方向に対して直交方向に延びるようにしてそれぞれ形成されており、前記リブは、前記各固定受部の長手方向中央部から前記回転軸の軸方向に沿ってそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1に記載の気体圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両などに搭載された空調装置に設置される気体圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車などの車両には、車室内の温度調整を行うための空調装置が設けられている。このような空調装置は、冷媒(冷却媒体)を循環させるようにしたループ状の冷媒サイクルを有しており、この冷媒サイクルは、蒸発器、気体圧縮機、凝縮器、膨張弁が順に設けられている。前記空調装置の気体圧縮機は、蒸発器で蒸発されたガス状の冷媒(冷媒ガス)を圧縮して高圧の冷媒ガスとし、凝縮器へ送出するものである。
【0003】
このような気体圧縮機として、従来より、略楕円状の内周面を有するシリンダ内に、先端部がシリンダの内周面に摺接し、突出収納自在に設けた複数枚のベーンを有するロータが回転自在に軸支されたベーンロータリー型の気体圧縮機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載のベーンロータリー型の気体圧縮機は、回転軸と一体に回転可能なロータと、ロータ外周面の外方から取り囲む輪郭形状の内周面を有するシリンダと、ロータ外周面からシリンダ内周面に向けて突出自在に設けられた複数枚のベーンと、ロータ及びシリンダの両端を塞ぐとともに回転軸の両側を回転可能に軸支した2つのサイドブロックとを有する圧縮機構部(圧縮機本体)を備えている。
【0005】
この圧縮機構部は、隣り合う2枚のベーンにより、ロータ外周面とシリンダ内周面との間に形成される圧縮室の容積をロータの回転にともなって減少させることで、圧縮室に導入した低圧の冷媒ガスを圧縮し、圧縮された高圧の冷媒ガスを外部に吐出するように構成されている。
【0006】
この圧縮機構部は、一端が開口したハウジング内に収納されており、ハウジングの一端側の開口はフロントヘッドで塞がれている。詳細には、圧縮機構部の一方側(フロントヘッドと反対側)のサイドブロックの外周面がハウジング内周面に嵌合(圧入)され、圧縮機構部の他方側(フロントヘッド側)のサイドブロックの外側面がフロントヘッド内にボルト固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−95566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記ベーンロータリー型の気体圧縮機の運転時において、回転軸(ロータ)の回転によって圧縮室で冷媒ガスが圧縮されるときに生じる圧縮反力等の加振力が周期的にシリンダに伝わるため、シリンダに周期的な振動が発生する。
【0009】
このため、圧縮機構部の一方のサイドブロックがハウジング内周面に嵌合(圧入)されているので、シリンダに発生した振動が、このサイドブロックを介してハウジングに直接伝わり、ハウジングが振動する。
【0010】
このため、回転軸(ロータ)を回転駆動する駆動源としての車両のエンジンが近くに設置されている場合、このエンジンが取り付けられているエンジンブラケットに、前記ハウジングの外周部に形成された取付足をボルト等で固定しているため、ハウジングの振動がこの取付足を介してエンジンブラケット側にも伝わる不具合が生じる。
【0011】
そこで、本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、運転時にシリンダに発生した振動がハウジングに直接伝えられても、ハウジングに生じる振動を効果的に低減(制振)することができる気体圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、一端側が開口し他端側が塞がれた略筒状のハウジングと、前記ハウジングの開口端面を塞ぐように取り付けられたフロントヘッドと、一端側が前記フロントヘッド内に固定されるとともに、前記一端側を除く略全体が前記ハウジング内に収納され、駆動源からの駆動力によって回転される回転軸の回転にともなって、圧縮された高圧の媒体を外部に吐出させる圧縮機構部と、前記ハウジングの開口端面側の外周面に形成され、外部の構造部材に固定される固定受部とを備え、前記圧縮機構部の前記ハウジング内に収納されている他端側の外周面が、ハウジング内周面に圧入されるようにして固定されている気体圧縮機であって、前記ハウジングの外周面に、前記固定受部から前記圧縮機構部の他端側が前記ハウジング内周面に圧入されている位置まで少なくとも延びているリブが一体に形成されていることを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記圧縮機構部の中央部に該ハウジングの長手方向に沿って前記回転軸が回転可能に保持され、前記ハウジングの外周面の径方向の対向位置に、前記固定受部が前記回転軸の軸方向に対して直交方向に延びるようにしてそれぞれ形成されており、前記リブは、前記各固定受部の長手方向中央部から前記回転軸の軸方向に沿ってそれぞれ形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る気体圧縮機によれば、ハウジングの外周面に、固定受部から圧縮機構部の他端側がハウジング内周面に圧入されている位置まで少なくとも延びているリブが一体に形成されているので、ハウジングの外周面の、固定受部と圧縮機構部の他端側がハウジング内周面に圧入されている位置付近までの剛性を高めることができる。
【0015】
このため、リブによって、気体圧縮機の運転時に圧縮機構部からの振動の伝搬を直接的に抑制することができるので、圧縮機構部の振動がハウジングに直接伝えられても、ハウジングの振動を効果的に低減(制振)させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る気体圧縮機(ベーンロータリー型の気体圧縮機)の外観を示す図。
【
図3】この気体圧縮機のハウジング側を断面形状として示した図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る気体圧縮機としてのベーンロータリー型の気体圧縮機(以下、「コンプレッサ」という)の外観を示す図、
図2は、このコンプレッサの分解斜視図である。
【0018】
(コンプレッサ1の全体構成)
図示のコンプレッサ1は、例えば、冷却媒体の気化熱を利用して冷却を行なう空気調和システム(以下、「空調システム」という)の一部として構成され、この空調システムの他の構成要素である凝縮器、膨張弁、蒸発器等(いずれも図示を省略する)とともに冷却媒体の循環経路上に設けられている。なお、このような空調システムとしては、例えば、車両(自動車など)の車室内の温度調整を行うための空調装置が挙げられる。
【0019】
コンプレッサ1は、空調システムの蒸発器から取り入れた気体状の冷却媒体としての冷媒ガスを圧縮し、この圧縮された冷媒ガスを空調システムの凝縮器に供給する。凝縮器は圧縮された冷媒ガスを液化させ、高圧で液状の冷媒として膨張弁に送出する。そして、高圧で液状の冷媒は、膨張弁で低圧化され、蒸発器に送出される。低圧の液状冷媒は、蒸発器において周囲の空気から吸熱して気化し、この気化熱との熱交換により蒸発器周囲の空気を冷却する。
【0020】
コンプレッサ1は、
図1、
図2に示すように、一端側(
図1、
図2の左側)が開口し他端側が塞がれた略円筒状の金属製のハウジング2と、このハウジング2の一端側の開口を塞ぐ金属製のフロントヘッド3と、ハウジング2内に収納される圧縮機構部4と、駆動源である車両(自動車)のエンジン(不図示)からの駆動力を圧縮機構部4に伝達するための電磁クラッチ5を備えている。
【0021】
フロントヘッド3は、ハウジング2の開口端面を塞ぐ蓋状に形成されており、ハウジング2の一端側の開口端部周囲に複数のボルト6で固定されている。フロントヘッド3には、空調システムの蒸発器(不図示)から低圧の冷媒ガスを吸入する吸入ポート7を有し、ハウジング2には、圧縮機構部4で圧縮された高圧の冷媒ガスを空調システムの凝縮器(不図示)に吐出する吐出ポート8を有している。
【0022】
ハウジング2の開口端部付近の外周面の径方向の対向位置には、車両のエンジンが取り付けられているエンジンブラケット(不図示)にボルト固定するための取付足9a,9bが形成されている。また、取付足9a,9bとハウジング2の外周面との間には、
図1、
図3に示すように、リブ10a,10bが一体に形成されている。本発明の特徴であるリブ10a,10bの詳細については後述する。なお、
図3は、コンプレッサ1のハウジング2側を断面形状として示した図である。
【0023】
圧縮機構部4は、
図4に示すように、回転軸20と一体的に回転する略円柱状のロータ21と、このロータ21をその外周面21aの外方から取り囲む略楕円形状の内周面22aを有するシリンダ22と、ロータ21の外周面21aからシリンダ22の内周面22aに向けて突出自在に設けられた5枚の板状のベーン23と、ロータ21及びシリンダ22の両端を塞ぐ2つのサイドブロック(フロントサイドブロック24、リヤサイドブロック25(
図2参照))とを備えている。
図4は、
図3のA−A線断面図である。なお、
図4では、圧縮機構部4の外周面側のハウジング2は省略している。
【0024】
フロントサイドブロック24とリヤサイドブロック25の外周面には、それぞれシール部材としてのOリング26全周にわたって設置されており(フロントサイドブロック24側のOリングは不図示)、フロントサイドブロック24側のフロントヘッド3とハウジング2間に形成された吸入室(不図示)と、リヤサイドブロック25側のハウジング2内に形成された吐出室27との間を気密性よく仕切っている。リヤサイドブロック25の外面には、油分離部28が吐出室27内に位置するようにして取付けられている。
【0025】
フロントサイドブロック24は、フロントヘッド3の開口端部周囲の内周面に複数のボルトで締結固定されている。リヤサイドブロック25の外周面は、ハウジング2の内周面2a(
図3参照)に嵌合(圧入)されている。このように、ハウジング2内に収納された圧縮機構部4は、フロントサイドブロック24側がフロントヘッド3にボルトで締結固定され、リヤサイドブロック25側がハウジング2の内周面2aに嵌合(圧入)されるようにして保持されている。
【0026】
電磁クラッチ5は、フロントヘッド3の外面側に設置されており、エンジンの回転駆動力がベルト(不図示)を介してプーリ29に伝達される。回転軸20の一端側(
図2の左側)は、電磁クラッチ5のアーマチュア30の中心貫通孔に嵌合されている。なお、回転軸20は、フロントサイドブロック24とリヤサイドブロック25の中心貫通孔に軸支されている。
【0027】
そして、コンプレッサ1(圧縮機構部4)の運転時に、プーリ29内の電磁石(不図示)の励磁によってアーマチュア30がプーリ29の側面に吸着されることにより、ベルト(不図示)を介してプーリ29に伝達されているエンジンの駆動力が、アーマチュア30を介して回転軸20(ロータ21)に伝達される。
【0028】
(圧縮機構部4の構成、動作)
図4に示すように、シリンダ22の内周面22aとロータ21の外周面21aと両サイドブロック24,25(
図2参照)との間の空間には、等間隔で設置された5つのベーン23によって仕切られた複数の圧縮室31a,31bが形成されている。
【0029】
ベーン23は、ロータ21に形成されたベーン溝32に摺動可能に設置されていて、ベーン溝32に供給される冷凍機油による背圧により、ロータ21の外周面21aから外方向に突出する。なお、
図4では、シリンダ22の内周面22aとロータ21の外周面21aとの間の上部側の空間に形成される圧縮室を圧縮室31aとし、下部側の空間に形成される圧縮室を圧縮室31bとしている。
【0030】
シリンダ22は、ロータ21の外周面21aの外方を取り囲む断面輪郭が略楕円形状の内周面22aを有している。各圧縮室31a,31bは、ロータ21の回転にともなう冷媒ガスの吸入工程及び圧縮工程で、それぞれ容積の増大及び減少を繰り返す。なお、本実施形態のコンプレッサ1(圧縮機構部4)は、ロータ21が1回転する間に2回の吸入工程と圧縮工程を有している。
【0031】
シリンダ22には、各圧縮室31a,31bへ冷媒ガスa1,a2を吸入するための各吸入孔(不図示)と、各圧縮室31a,31bで圧縮された冷媒ガスb1,b2を吐出するための各吐出孔33a,33bが設けられている。
【0032】
具体的には、圧縮室31a,31bの容積が増加する行程において、低圧の冷媒ガスをフロントサイドブロック24に形成された各吸入孔(不図示)を通して圧縮室31a,31b内に吸入し、容積が減少する行程において、圧縮室31a,31b内に閉じこめられた冷媒ガスを圧縮し、これによって冷媒ガスは高温、高圧となる。そして、この高温、高圧の冷媒ガスb1,b2は、各吐出孔33a,33bを通して、シリンダ22、ハウジング2および2つのサイドブロック24,25で囲まれて区画された空間である吐出チャンバ34a,34bに吐出される。
【0033】
各吐出孔33a,33bには、冷媒ガスの圧縮室31a,31b側への逆流を阻止する吐出弁35と、吐出弁35の過大な変形を阻止する弁サポート36が設けられている。吐出孔33a,33bから吐出チャンバ34a,34bに吐出された高温、高圧の冷媒ガスは、リヤサイドブロック25形成された吐出路37a,37bを通して吐出室27内に設けた油分離部28に導入される。なお、各吐出孔33a,33b(吐出弁35、弁サポート36)は、ロータ21の長手方向(回転軸20の軸方向)に沿って2つ設けられている。
【0034】
油分離部28は、冷媒ガスと混ざった冷凍機油(ロータ21に形成されたベーン溝32から圧縮室31a,31bに漏れたベーン背圧用の油)を冷媒ガスから分離するものであり、各吐出孔33a,33bに吐出されて吐出チャンバ34a,34b、吐出路37a,37bを通って導入された高圧の冷媒ガスを、内周面で螺旋状に旋回させることで冷凍機油を遠心分離するように構成されている。
【0035】
そして、油分離部28内で冷媒ガスから分離された冷凍機油は吐出室27の底部に溜まり、冷凍機油が分離された後の高圧の冷媒ガスは、吐出室27の吐出ポート8(
図1参照)を通って凝縮器(不図示)に吐出される。
【0036】
(リブ10a,10bの詳細構造)
図1〜
図3に示したように、ハウジング2の外周面において、開口端部付近の径方向の対向位置(
図3では、上下位置)には、圧縮機構部4の中央部に回転可能に保持された回転軸20の軸方向に対して直交方向に延びた取付足9a,9bが一体に形成されている。
【0037】
各取付足9a,9bには、回転軸20の軸方向に対して直交方向に沿ってボルト挿通孔9cが形成されており、各取付足9a,9bのボルト挿通孔9cにボルト(不図示)を挿通して、車両のエンジン(不図示)が固定されているエンジンブラケット(不図示)の締結部に固定されている。これにより、コンプレッサ1がエンジンブラケット(不図示)に固定されている。
【0038】
そして、ハウジング2の外周面に、各取付足9a,9bの長手方向中央部から回転軸20の軸方向に沿って、圧縮機構部4のリヤサイドブロック25の外周面がハウジング2の内周面2aに嵌合(圧入)されている位置(以下、「リヤサイドブロック圧入部」という)C(
図3参照)付近まで延びているリブ10a,10bがそれぞれ一体に形成されている。
【0039】
上記したコンプレッサ1の運転時において、ロータ21(回転軸20)の回転によって圧縮室31a,31bで冷媒ガスが圧縮されるときに生じる圧縮反力等の加振力が周期的にシリンダ21に伝わるため、シリンダ21の半径方向に対して周期的な振動が発生する。そして、このシリンダ21の振動はリヤサイドブロック25を介して、このリヤサイドブロック25が嵌合(圧入)されて圧接しているハウジング内周面からハウジング2に直接伝わり、ハウジング2を振動させる加振力となる。
【0040】
そこで、本実施形態では、上記したようにハウジング2の外周面の、エンジンブラケット(不図示)にボルト固定される各取付足9a,9bとリヤサイドブロック圧入部C間に、回転軸20の軸方向に沿ってリブ10a,10bをそれぞれ一体に形成しているので、ハウジング2の外周面の各取付足9a,9bとリヤサイドブロック圧入部C間の部分の剛性を高めることができる。
【0041】
このため、リブ10a,10bによって、リヤサイドブロック圧入部C付近でのシリンダ21からの振動の伝搬を直接的に抑制することができる。よって、シリンダ21の振動にともなうハウジング2の振動を効果的に低減(制振)することができる。よって、各取付足9a,9bに伝わる振動も低減されるので、各取付足9a,9bをボルト固定しているエンジンブラケット(不図示)へ振動が伝わることも低減される。
【0042】
また、ハウジング2の外周面の、各取付足9a,9bとリヤサイドブロック圧入部C間に、回転軸20の軸方向に沿ってリブ10a,10bをそれぞれ一体に形成してハウジング2の剛性を高めたことにより、ハウジング2の固有振動数を高周波領域に上げることができる。よって、シリンダ21の振動数がハウジング2の固有振動数に達することが抑制されるので、共振現象が発生することが防止され、この共振現象にともなうハウジング2の振動を低減することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 コンプレッサ(気体圧縮機)
2 ハウジング
3 フロントヘッド
4 圧縮機構部
5 電磁クラッチ
9a,9b 取付足(固定受部)
10a,10b リブ
20 回転軸
21 ロータ
22 シリンダ
23 ベーン
24 フロントサイドブロック
25 リヤサイドブロック
28 油分離部
31a,31b 圧縮室
C リヤサイドブロック圧入部