(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
X線発生器及びX線検出器を被写体に対して相対的に移動させるX線撮影を行い、前記X線検出器で取得される一連のX線画像データを送信する送信部を備えたX線撮影装置と、
前記一連のX線画像データを受信する受信部と、前記受信部が受信した前記X線画像データが示すX線画像を、前記X線撮影中に表示する表示部とを備えた画像処理装置と、
を含む医用X線画像処理システムであって、
前記送信部は、前記X線撮影中に、前記一連のX線画像データの前記受信部への送信を行い、各送信が完了したタイミングにおいて、前記X線画像データの取得量に対する前記X線画像データの送信量が低下している場合に、未送信のX線画像データのデータ容量に基づいて、前記未送信のX線画像データを、時間解像度及び空間解像度のうち少なくとも一方を低下させて送信する、医用X線画像処理システム。
X線発生器及びX線検出器を被写体に対して相対的に移動させるX線撮影を行い、前記X線検出器で取得される一連のX線画像データを送信する送信部を備えたX線撮影装置と、
前記一連のX線画像データを受信する受信部を備え、該受信部が受信した前記X線画像データを処理する画像処理装置と、
を含む医用X線画像処理システムであって、
前記送信部は、前記X線撮影中に、前記X線画像データの前記受信部への送信を行い、
各送信が完了したタイミングにおいて、前記X線画像データの取得量に対する前記X線画像データの送信量が低下している場合に、未送信のX線画像データを、時間解像度及び空間解像度のうち少なくとも一方を低下させて送信し、
前記画像処理装置は、
前記送信部から送信された前記X線画像データからX線の強度情報を取得する強度情報取得部、を備え、
前記X線撮影装置は、
前記強度情報取得部が取得したX線の強度情報に基づいて、前記X線発生器が発生させるX線の線量を制御する線量制御部、
を備えている、医用X線画像処理システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の技術では、X線撮像装置と表示制御装置との間の通信速度は、常に一定であることを前提とされている。しかしながら、通信帯域が、他のデータ転送にも用いられる場合、他のデータ転送のために通信帯域が不足して、X線撮影中における、X線画像データの転送速度が著しく低下してしまう虞がある。
【0007】
また、X線画像データを受信する受信側の装置において、他のデータ処理のために、受信処理能力が一時的に低下して、実質的に通信速度が大きく低下することも起こり得る。このような事態が発生した場合、X線画像データの送信処理が遅滞する虞があった。例えば、
図9に示されるように、昨今の病院等では、院内LANシステム900が採用されている場合がある。
図9に示される院内LANシステム900の例では、歯科向けの医用X線画像処理システム901(CT撮影、パノラマ撮影用のX線撮影装置を備える。),歯科向けの医用X線画像処理システム902(主にCT撮影、パノラマ撮影、セファロ撮影が可能なX線撮影装置を備える。),歯科向けの医用X線画像処理システム903(数本の歯牙等の局所的なX線撮影が可能なX線撮影装置を備える。)、及び、歯科向けの診療台904が、それぞれの備えるコンピュータを介してサーバー905とLAN接続されている。このような院内LANシステム900においては、サーバー905において、情報を一括管理するため、サーバー905と各コンピュータとの間でデータ通信等が行われる。したがって、各医用X線画像処理システム901,902,903において、各X線撮影装置において取得したX線画像データの送信処理に遅延が発生する可能性が高まっている。
【0008】
また、X線画像をリアルタイムで画面に表示するだけではなく、例えば、X線画像データをリアルタイムで解析し、その解析結果を、X線撮影の撮影条件にフィードバックすることも考えられる。例えば、X線画像データが示す画素のX線吸収度に応じた濃度値等から、X線強度を取得することによって、X線の線量を制御することが考えられる。このような場合に、X線画像データの送信処理が遅延すると、X線の強度情報の伝達に遅滞してしまうために、即時に線量を制御することができない、という問題も起こり得る。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、X線撮影中に、X線撮影装置と画像処理装置との間の通信速度が低下しても、X線画像データの送信処理が遅滞することを抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、X線発生器及びX線検出器を被写体に対して相対的に移動させるX線撮影を行い、前記X線検出器で取得される一連のX線画像データを送信する送信部を備えたX線撮影装置と、前記一連のX線画像データを受信する受信部と、前記受信部が受信した前記X線画像データが示すX線画像を、前記X線撮影中に表示する表示部とを備えた画像処理装置とを含む医用X線画像処理システムであって、前記送信部は、前記X線撮影中に、前記一連のX線画像データの前記受信部への送信を行い、各送信が完了したタイミングにおいて、前記X線画像データの取得量に対する前記X線画像データの送信量が低下している場合に、
未送信のX線画像データのデータ容量に基づいて、前記未送信のX線画像データを、時間解像度及び空間解像度のうち少なくとも一方を低下させて送信する。
【0011】
また、第2の態様は、
X線発生器及びX線検出器を被写体に対して相対的に移動させるX線撮影を行い、前記X線検出器で取得される一連のX線画像データを送信する送信部を備えたX線撮影装置と、前記一連のX線画像データを受信する受信部と、前記受信部が受信した前記X線画像データが示すX線画像を、前記X線撮影中に表示する表示部とを備えた画像処理装置と、を含む医用X線画像処理システムであって、前記送信部は、前記X線撮影中に、前記一連のX線画像データの前記受信部への送信を行い、各送信が完了したタイミングにおいて、予め定めた基準データ容量を超えて未送信のX線画像データが生じている場合に、前記未送信のX線画像データを、時間解像度及び空間解像度のうち少なくとも一方を低下させて送信する。
【0012】
また、第3の態様は、第1または第2の態様に係る医用X線画像処理システムにおいて、前記送信部は、前記一連のX線画像データのうち、X線撮影中に送信されなかった前記X線画像データ、または、前記空間解像度が低下されて送信された前記X線画像データを、前記X線撮影後に送信する。
【0013】
また、第4の態様は、第1から第3までのいずれか1態様に係る医用X線画像処理システムにおいて、前記送信部は、未送信の前記X線画像データのうち、一部のX線画像データを選択して送信することにより、前記X線画像データの前記時間解像度を低下させる。
【0014】
また、第5の態様は、第4の態様に係る医用X線画像処理システムにおいて、前記送信部は、前記未送信のX線画像データが示す一連のフレーム画像のうち、一部のフレーム画像に対応するフレーム画像データを送信する。
【0015】
また、第6の態様は、第5の態様に係る医用X線画像処理システムにおいて、前記送信部は、前記一連のフレーム画像データのうち、最後に取得されたフレーム画像に対応する前記フレーム画像データを選択して送信する。
【0016】
また、第7の態様は、第1から第6までのいずれか1態様に係る医用X線画像処理システムにおいて、前記送信部は、送信したX線画像データと、送信しなかった、または、空間解像度を低下させて送信したX線画像データとを識別するための識別情報を記録する。
【0017】
また、第8の態様は、第1から第7までのいずれか1態様に係る医用X線画像処理システムにおいて、前記送信部は、前記X線画像データが示すX線画像における、一部の画素の情報を破棄することによって、前記X線画像データの前記空間解像度を低下させる。
【0018】
また、第9の態様は、第1から第8までのいずれか1態様に係る医用X線画像処理システムにおいて、前記X線撮影は、CT撮影、パノラマ撮影またはセファロ撮影のいずれかである。
【0019】
また、第10の態様は、X線発生器及びX線検出器を被写体に対して相対的に移動させるX線撮影を行い、前記X線撮影において前記X線検出器により一連のX線画像データを取得し、
前記一連のX線画像データを受信する受信部を備えたX線画像処理装置に向けて前記X線画像データを送信する送信部を備えたX線撮影装置において、前記送信部は、前記X線撮影中に、前記一連のX線画像データの前記受信部への送信を行い、各送信が完了したタイミングにおいて、前記X線画像データの取得量に対する前記X線画像データの送信量が低下している場合に、未送信のX線画像データ
のデータ容量に基づいて、前記未送信のX線画像データを、時間解像度及び空間解像度のうち少なくとも一方を低下させて送信する。
【0020】
また、第11の態様は、X線発生器及びX線検出器を被写体に対して相対的に移動させるX線撮影を行い、前記X線検出器で取得される一連のX線画像データを送信する送信部を備えたX線撮影装置と、前記一連のX線画像データを受信する受信部を備え、該受信部が受信した前記X線画像データを処理する画像処理装置とを含む医用X線画像処理システムであって、前記送信部は、前記X線撮影中に、前記X線画像データの前記受信部への送信を行い、各送信が完了したタイミングにおいて、前記X線画像データの取得量に対する前記X線画像データの送信量が低下している場合に、未送信のX線画像データを、時間解像度及び空間解像度のうち少なくとも一方を低下させて送信し、前記画像処理装置は、前記送信部から送信された前記X線画像データからX線の強度情報を取得する強度情報取得部、を備え、前記X線撮影装置は、前記強度情報取得部が取得したX線の強度情報に基づいて、前記X線発生器が発生させるX線の線量を制御する線量制御部、を備えている。
【0021】
また、第12の態様は、第11の態様に係る医用X線画像処理システムにおいて、前記送信部は、前記未送信のX線画像データのデータ容量に基づいて、前記未送信のX線画像データを、前記時間解像度及び前記空間解像度のうち少なくとも一方を低下させて送信する。
【0022】
また、第13の態様は、第11または第12の態様に係る医用X線画像処理システムにおいて、前記線量制御部は、前記X線発生器に印加される管電圧または供給される管電流のうち、少なくとも一方を変更することにより、前記X線の線量を制御する。
【0023】
また、第14の態様は、第11から第13までのいずれか1態様に係る医用X線画像処理システムにおいて、前記X線撮影は、顎部を含むCT撮影、パノラマ撮影またはセファロ撮影であり、前記強度情報取得部は、前記X線画像データが示すX線画像のうち、上顎骨の上側部分の画素濃度に基づいて、前記強度情報を取得する。
【0024】
また、第15の態様は、第11から第14までのいずれか1態様に係る医用X線画像処理システムにおいて、前記送信部は、前記一連のX線画像データのうち、X線撮影中に送信されなかった前記X線画像データ、または、前記空間解像度が低下されて送信された前記X線画像データを、前記X線撮影後に送信する。
【0025】
また、第16の態様は、第11から15までのいずれか1態様に係る医用X線画像処理システムにおいて、前記送信部は、前記X線画像データのうち、一部のX線画像データを選択して送信することにより、前記X線画像データの前記時間解像度を低下させる。
【0026】
また、第17の態様は、第16の態様に係る医用X線画像処理システムにおいて、前記送信部は、前記未送信のX線画像データが示す一連のフレーム画像のうち、一部のフレーム画像に対応するフレーム画像データを送信する。
【0027】
また、第18の態様は、第17の態様に係る医用X線画像処理システムにおいて、前記送信部は、前記一連のフレーム画像のうち、最後に取得されたフレーム画像に対応する前記フレーム画像データを選択して送信する。
【0028】
また、第19の態様は、第10の態様に係るX線撮影装置に備えられる前記X線検出器であって、該X線検出器が前記送信部を備え、前記
X線撮影装置のX線検出部に対して装着可能に構成される。
また、第20の態様は、X線発生器及びX線検出器を被写体に対して相対的に移動させるX線撮影を行い、前記X線撮影において前記X線検出器により一連のX線画像データを取得し、前記一連のX線画像データを受信する受信部を備えたX線画像処理装置に向けて前記X線画像データを送信する送信部を備えたX線撮影装置において、前記送信部は、前記X線撮影中に、前記一連のX線画像データの前記受信部への送信を行い、各送信が完了したタイミングにおいて、予め定めた基準データ容量を超えて未送信のX線画像データが生じている場合に、前記未送信のX線画像データを、時間解像度及び空間解像度のうち少なくとも一方を低下させて送信する。
また、第21の態様は、X線発生器及びX線検出器を被写体に対して相対的に移動させるX線撮影を行い、前記X線検出器で取得される一連のX線画像データを送信する送信部を備えたX線撮影装置と、前記一連のX線画像データを受信する受信部と、前記受信部が受信した前記X線画像データが示すX線画像を、前記X線撮影中に表示する表示部とを備えた画像処理装置と、を含む医用X線画像処理システムであって、前記送信部は、前記X線撮影中に、前記一連のX線画像データの前記受信部への送信を行い、各送信が完了したタイミングにおいて、前記X線画像データの取得量に対する前記X線画像データの送信量が低下している場合に、未送信の前記X線画像データのうち、一部のX線画像データを選択して送信することにより、前記未送信のX線画像データを、時間解像度を低下させて送信する。
また、第22の態様は、第21の態様に係る医用X線画像処理システムにおいて、前記一連のX線画像データがフレーム画像をなすフレーム画像データからなり、前記送信部は、未送信の一連の前記フレーム画像のうち、一部のフレーム画像に対応するフレーム画像データを送信する。
また、第23の態様は、第22の態様に係る医用X線画像処理システムにおいて、前記送信部は、前記未送信の一連のフレーム画像のうち、最後に取得されたフレーム画像に対応する前記フレーム画像データを選択して送信する。
【発明の効果】
【0029】
第1〜第19の態様によると、X線撮影中に、X線撮影装置と画像処理装置との間における、データの通信速度が低下した場合であっても、X線画像データの時間解像度または空間解像度を低下させることにより、X線画像データのデータ通信が著しく遅延することを抑制できる。
【0030】
特に、第1〜第10の態様によると、通信速度の低下が発生した場合であっても、表示部において、撮影直後のX線画像を遅滞なく表示することができる。したがって、適切にX線撮影が行われているか、オペレータが適切に判断できる。
【0031】
特に、第3の態様によると、X線撮影後に、時間解像度または空間解像度が低下されていないX線画像データを、X線画像処理装置に送信することができる。これにより、X線画像処理装置において、全てのX線画像データに基づいた診断用の画像を生成することができる。
【0032】
特に、第4の態様によると、未送信のX線画像データのデータ容量に応じて、X線画像データを選択的に送信することで、通信速度の低下に合わせたデータ通信を行うことができる。
【0033】
特に、第5の態様によると、フレーム画像単位で、送信処理を行うことができる。
【0034】
特に、第6の態様によると、X線撮影中に、最新のフレーム画像を表示部に表示させることができる。このため、X線撮影が正常に行われているかどうか、オペレータがより適切に判断することができる。
【0035】
特に、第7の態様によると、解像度が低減されることなく送信されたX線画像データと、時間解像度の低下のため送信されなかった、または、空間解像度が低下されて送信されたX線画像とを、識別情報によって容易に識別することが可能となる。
【0036】
特に、第8の態様によると、一部の画素の情報を破棄することで、空間解像度を低下させることができるため、X線画像データの容量を減らすことができる。
【0037】
特に、第9の態様によると、X線撮影装置におけるCT撮影、パノラマ撮影またはセファロ撮影の撮影状況を、表示部に表示されるX線画像に基づいて、オペレータが適切に把握することができる。
【0038】
また、第11〜第18の態様によると、通信速度の低下が発生した場合であっても、空間解像度または時間解像度を低下させたX線画像データから取得したX線の強度情報に基づいて、X線の線量を制御することができる。このため、X線撮影中に、適切なX線の線量でX線撮影を行うことができる。
【0039】
特に、第12の態様によると、通信速度の低下が発生した場合であっても、時間解像度または空間解像度が低下されたX線画像データから、X線の強度情報を取得することができる。したがって、X線の線量制御を遅滞なく適切に行うことができる。
【0040】
特に、第13の態様によると、管電圧または管電流を変更することにより、X線の線量を制御することができる。
【0041】
特に、第14の態様によると、顎部よりも上側の部分の画素濃度から、X線の強度情報を取得することにより、X線吸収度が高い金属製の補綴物等が顎部に装着されている場合であっても、X線の強度を良好に検出できる。これにより、X線の線量を適切に制御することができる。
【0042】
特に、第19の態様によると、X線検出器が送信部を備えるので、X線撮影装置本体側の構成を簡易にできる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面を参照して実施の形態を詳細に説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0045】
<1. 第1実施形態>
<1.1. 構成>
図1は、第1実施形態に係る医用X線画像処理システム1の概略構成を示すブロック図である。医用X線画像処理システム1は、X線撮影装置2と、画像処理装置3とで構成されている。X線撮影装置2は、画像処理装置3との間で、通信用の電線または光ファイバ等で構成される、不図示の通信回線を介して、データ通信可能に接続されている。なお、X線撮影装置2と画像処理装置3との間で、無線通信が行われるようにしてもよい。
【0046】
図1に示されるように、X線撮影装置2は、X線照射部10とX線検出部20とを備えている。X線照射部10は、X線ビームを発生させるX線発生器11と、X線発生器11から放射されるX線の線量を制御する線量制御部13とを備えている。線量制御部13は、X線発生器11が備える不図示のX線管に印加される管電圧、X線管に供給される管電流の少なくとも一方を制御することにより、X線管から放射されるX線の線量を制御する。なお、線量制御が可能なX線管の構成については、公知の構成またはこれに類似する構成を採用することができる。
【0047】
X線検出部20は、X線を検出するX線検出器21を備えている。X線検出器21としては、例えばMOSセンサー、CCDセンサーまたはTFTが採用可能であるが、CMOSセンサー等のフラットパネルディテクタ(FPD)、X線蛍光増倍管(XII)またはその他の固体撮像素子等を採用することができる。
【0048】
図1に示される例では、X線検出部20内部にX線検出器21、画像記憶部23、送信部25が備えられるようになっている。しかしながら、例えば、X線検出器21を図示しない筐体で構成し、当該筐体で構成されるX線検出器21が送信部25Aを備えるようにして、送信部25AをX線検出部20に対して装着可能に構成してもよい。もちろん、当該X線検出器21が画像記憶部23を備えるようにしてもよい。送信部25Aまたは画像
記憶部23は、X線検出器21に対して、固定的に装着されるようにしてもよいし、あるいは、着脱自在に装着されるようにしてもよい。着脱自在に装着可能とする場合、X線検出部20にはX線検出器21を着脱自在に装着できる図示しない装着部を設けてもよい。X線検出器21は、X線検出部20に対して通信可能に構成されてもよい。
【0049】
X線検出器21は、被写体M1(ここでは、人の頭部)を透過したX線ビームを検出し、X線の強度に応じた電気信号に変換し、X線画像を示すX線画像データを取得する。X線発生器11及びX線検出器21は、図示を省略する回転機構によって、被写体M1を挟んだ状態でその周りを旋回するように構成されている。この旋回機構の構成については、例えば、特許文献2(特開2008−284395号公報)等に開示されている公知技術及びこれに類似する技術を採用することができる。
【0050】
医用X線画像処理システム1においては、X線撮影として、CT撮影、パノラマ撮影を実施可能に構成されている。また、医用X線画像処理システム1は、セファロ撮影(頭部X線規格写真撮影)も行えるように構成されていてもよい。これらのX線撮影を行う兼用型のX線撮影装置としては、例えば特許文献2に記載されている公知の構成またはこれに類似する構成を採用することができる。
【0051】
X線撮影中、X線撮影装置2は、被写体M1を挟んだ状態で、X線発生器11及びX線検出器21を被写体M1周りに旋回させる。その旋回中に、X線発生器11からX線ビームが所定の時間間隔で被写体M1に照射され、X線検出器21にて被写体M1におけるX線吸収度に応じた強度のX線が検出される。
【0052】
なお、X線撮影において、X線発生器11及びX線検出器21を固定して、被写体M1を、移動(旋回を含む。)をさせる構成としてもよい。すなわち、X線撮影における、X線発生器11及びX線検出器21の、被写体M1に対する移動は、相対的なものである。もちろん、X線撮影中に、X線発生器11及びX線検出器21と、被写体M1との双方を移動させるようにしてもよい。
【0053】
X線検出器21からの検出信号の読み出しは、X線検出器21の方式に応じて行われる。MOS、CCD、TFT等を備えるX線検出器21で多く採用されている構成では、各検出素子でX線の強度に応じて発生した信号電荷が読み出され、電圧信号に変換される。そして、その電圧信号がA/D変換されることによって、X線画像データが取得される。このようにして、X線撮影中、X線発生器11及びX線検出器21が所定の旋回角度回転する毎に、X線画像データが順次取得されることで、一連のX線画像データが取得される。X線検出器21から読み出されたX線画像データは、順次、画像記憶部23に保存される。
【0054】
なお、「一連のX線画像データ」とは、時間的に連続して取得されるX線画像データをいう。特に、本実施形態では、X線により被写体M1をX線検出器21に投影した時に得られる1枚のX線画像が、所定のフレームレートで取得される。そこで、このように連続的に取得される各X線画像をフレーム画像と称し、該フレーム画像を表現するX線画像データをフレーム画像データと称する。なお、X線画像データは、上記フレーム画像データを含む他、フレーム画像を構成する一部の画素群(例えば、フレーム画像の水平方向または垂直方向に並ぶ画素群)の画素情報を表すデータを含む概念である。
【0055】
送信部25は、X線撮影で得られた一連のX線画像データを、X線撮影中に、画像処理装置3に順次送信する。なお、X線画像データを送信する際、送信部25は、未だ画像処理装置3に送信されていない未送信のX線画像データのデータ容量に基づいて、該未送信のX線画像データを、時間解像度を低下させて送信することができる。
【0056】
より具体的には、送信部25は、送信画像選択部251を備えている。送信画像選択部251は、後述するように、未送信のX線画像データのデータ容量が、予めオペレータ等によって定められた基準データ容量を超えているかどうか判定する機能を備えている。基準データ容量を超えている場合には、X線撮影装置2と画像処理装置3との間の通信速度が低下していることが予想されるため、送信画像選択部251は、未送信のX線画像データが示す複数の未送信のフレーム画像の中から、1枚または複数枚のフレーム画像を選択する。選択されたフレーム画像に対応するフレーム画像データは、画像記憶部23から読み出され、送信部25によって画像処理装置3に送信される。なお、選択されなかった未送信のフレーム画像データ(未送信データ)については、X線撮影が完了した後に、送信部25が画像処理装置3に向けて送信する。これらの送信処理の詳細については、後に詳述する。
【0057】
識別情報記録部253は、送信部25がX線撮影中に、画像処理装置3に向けて送信したフレーム画像データと、送信しなかったフレーム画像データとを識別するための識別情報を記録する。本実施形態では、識別情報記録部253は、識別情報を、画像記憶部23に記憶されている各フレーム画像データに付加する。
【0058】
このような識別情報が付加されることで、X線撮影後に、全フレーム画像のうち、どのフレーム画像が未送信であるか、容易に識別することが可能となる。なお、識別情報記録部253は、フレーム画像データに付加するのではなく、識別情報データファイルとして識別情報を記録するようにしてもよい。このような識別情報が記録されたファイルが参照されることで、各フレーム画像データ毎に、送信部25がX線撮影中に送信したかどうかを容易に識別することが可能となる。
【0059】
送信部25が送信したX線画像データは、画像処理装置3が備える受信部31によって受信される。受信部31が受信したX線画像データは、表示制御部33に転送される。表示制御部33は、転送されたX線画像データが表すフレーム画像を表示部81に表示させる。
【0060】
送信部25と受信部31の間を双方向通信構成とし、受信部31に図示しない受信完了信号発信部を設けて、X線画像データの受信が完了したことを通知する信号を送信部25に発信するようにしてもよい。この場合、送信部25には、図示しない受診完了信号受信部を設けて、X線画像データ、具体的にはフレーム画像データの送信が完了したタイミングを検出するようにしてもよい。双方向通信のエラーが起こらない限り、送信部25からの送信は良好にできていると判断し、各フレーム画像データの送信が完了した時点を送信が完了したタイミングとしてもよい。
【0061】
また、画像処理装置3が備える強度情報取得部35は、受信部31が受信したX線画像データが示す1または複数の画素が持つ、X線吸収度に応じた濃度値に基づいて、X線の強度情報91を取得する。強度情報取得部35が取得した強度情報91は、線量制御部13に送信される。線量制御部13は、受け取った強度情報91に基づき、X線発生器11から放射されるX線の線量が適切な大きさとなるように、線量制御を行う。このように、医用X線画像処理システム1においては、X線撮影中に、X線画像データから取得された強度情報91に基づいて、X線発生器11から放射されるX線の線量が調整される。
【0062】
なお、強度情報91を取得するために選択される画素のX線画像(フレーム画像)における位置は、任意に決定することができる。しかしながら、好ましくは、X線吸収が著しく大きい部分が投影された位置またはその近傍に対応する画素は除かれる。例えば、被写体M1の歯牙を含む顎部について、X線撮影した場合、該顎部には、義歯、クラウンまたはブリッジ等の歯科用の補綴物が装着されている場合がある。このような補綴物にX線吸収度が高い金属(金、チタン等)が用いられていた場合、補綴物が投影された位置に対応する画素の濃度値は、実際のX線の強度がほとんど反映されていない場合がある。このため、このような位置にある画素の画素濃度から、被写体M1に照射されているX線の線量を適切に見積もることは困難である。そこで、医用X線画像処理システム1において、歯科向けのX線撮影、つまり人体の顎部付近のX線撮影(CT撮影、パノラマ撮影またはセファロ撮影等)が行われる場合、強度情報取得部35は、例えば、上顎骨の上側部分(例えば上顎洞)が投影された位置に対応する画素の濃度値を、強度情報として取得する。これにより、X線撮影中、金属製の補綴物によるX線吸収の影響を受けずに済み、X線の線量を良好に見積もることが可能となり、線量制御を適切に行うことができる。
【0063】
<1.2. 動作>
次に、医用X線画像処理システム1の動作について説明する。まず、X線撮影装置2によるX線画像データの送信処理について詳細に説明し、その次に、X線画像データを受信する画像処理装置3の動作等について説明する。
【0064】
<1.2.1. 送信処理>
図2は、第1実施形態に係るX線撮影装置2の送信部25による送信処理の流れ図である。
図2に示されるように、X線撮影が開始されると、X線撮影装置2は、送信部25がフレーム画像データを送信できる状態にあるか判定する(ステップS11)。送信部25がフレーム画像データを送信できる状態にある場合(ステップS11においてYES)、X線撮影装置2は、ステップS12に進む。一方、ステップS11において、送信部25が送信できる状態でない場合(ステップS11においてNO)、X線撮影装置2は、ステップS17に進む。
【0065】
ステップS12は、画像記憶部23において、未送信のフレーム画像データ(未送信データ)が存在するかどうかを、X線撮影装置2が判定する工程である。未送信データが存在する場合(ステップS12においてYES)、X線撮影装置2は、ステップS13に進む。未送信データがない場合(ステップS12においてNO)、X線撮影装置2は、ステップS17に進む。
【0066】
ステップS13は、ステップS12において存在すると判定された未送信データのデータ容量が、基準データ容量を超えているかどうかを、X線撮影装置2が判定する工程である。未送信データのデータ容量が、基準データ容量を超えている場合(ステップS13においてYES)、X線撮影装置2は、送信画像選択部251により、送信するフレーム画像の選択を行う(ステップS14)。そして、X線撮影装置2は、送信部25により、選択されたフレーム画像に対応するフレーム画像データの送信を行う(ステップS15)。一方、ステップS13において、未送信データのデータ容量が基準値を超えていない場合(ステップS13においてNO)、X線撮影装置2は、ステップS14をスキップして、ステップS15に進み、未送信データを送信する。
【0067】
このように、未送信データのデータ容量に応じて、送信するフレーム画像データが選択されることで、X線撮影中に、送信部25及び受信部31間の通信速度が低下した場合であっても、X線画像データ(フレーム画像データ)の送信遅延が発生することを抑制できる。したがって、遅延させずに撮影直後のフレーム画像を表示部81に表示させたり、あるいは、X線の線量制御を遅延することなく適切に行ったりすることができる。
【0068】
フレーム画像データの送信が完了すると、X線撮影装置2は、識別情報を記録する(ステップS16)。具体的には、上述したように、識別情報記録部253が、送信部25が送信したフレーム画像データと、送信されなかったフレーム画像データ(ステップS14において、選択されなかったフレーム画像データ)とを識別するための識別情報を、画像記憶部23に保存されている各フレーム画像データに付加する。なお、ステップS16の工程(識別情報の記録)は、ステップS15の工程(フレーム画像データの送信)と並行して、もしくは、ステップS15の工程よりも先に実行されてもよい。
【0069】
ステップS17は、X線撮影装置2が、X線撮影が完了したかどうかを判定する工程である。具体的には、例えば、X線発生器11及びX線検出器21を旋回させる不図示の旋回軸が、各種X線撮影(CT撮影、パノラマ撮影またはセファロ撮影等)毎に定められた角度分回転したかどうかをセンサー等によって検出することによって、X線撮影が完了したかどうか、判定される。もちろん、その他の方法で、X線撮影が完了したかどうかが判定されてもよい。例えば、X線撮影で取得すべき全フレーム画像分に相当するX線画像データが、画像記憶部23に保存されているかどうか確認することで、X線撮影が完了したかどうか判定することが可能である。X線撮影が完了していると判定された場合には(ステップS17においてYES)、X線撮影装置2は、ステップS18に進む。X線撮影が完了していないと判定された場合には(ステップS17においてNO)、X線撮影装置2はステップS11に戻る。
【0070】
ステップS18は、X線撮影装置2が、X線撮影中に送信されなかった未送信のフレームデータを送信する工程である。具体的には、ステップS14において、選択されなかったフレーム画像データが、ステップS18において送信される。なお、ステップS16において記録された識別情報を参照することにより、画像記憶部23に保存されている全フレーム画像データの中から、未送信のフレーム画像データを容易に抽出することが可能である。ステップS18の工程が実行されることにより、X線撮影中に送信されなかったフレーム画像データが、X線撮影後に送信されることとなる。したがって、X線撮影で得られた全てのX線画像データ(全フレーム画像データ)が、画像処理装置3に送信されることとなる。
【0071】
以上が、送信部25による送信処理の流れである。次に、
図2に示される送信処理の流れについて、具体例を挙げてさらに詳細に説明する。
【0072】
図3は、第1実施形態における、フレーム画像データの送信処理を説明するためのタイムチャートである。
図3に示される時間軸T1は、X線撮影の開始時点から終了時点までを示している。このX線撮影においては、N枚分のフレーム画像データi1,i2・・・iNが取得されるものとする。
【0073】
また、
図3において、「フレーム画像データの取得時間」は、各フレーム画像データi1〜iNの取得されるタイミングを、それぞれの符号が付されたブロックで示したものである。また、「フレーム画像データの送信時間」は、X線撮影中において、送信部25が送信するフレーム画像データiM(Mは1〜Nのいずれか)を示すものである。さらに「未送信のフレーム画像データ」は、送信部25がフレーム画像データを送信可能なタイミングt11,t12,t13,t14及びt15において、未送信状態となっているフレーム画像データを示すものである。
【0074】
タイミングt11は、X線撮影装置2においてX線撮影が開始された後に、1枚目のフレーム画像を示すフレーム画像データi1の取得が完了し、送信部25により送信可能となった時間を示している。つまり、このタイミングt11において、未送信のフレーム画像データi1が発生していることとなる(
図2:ステップS12においてYES)。そこで、X線撮影装置2は、未送信であるフレーム画像データi1のデータ容量と基準データ容量とを比較する(
図2:ステップS13)。ここで、この基準データ容量がフレーム画像1枚分に相当するデータ容量に設定されていたとする。すると、タイミングt11における、未送信データのデータ容量は、基準値を超えていないこととなる。このため、送信部25は、フレーム画像データi1をそのまま画像処理装置3に向けて送信する(
図2:ステップS15)。さらに、画像記憶部23に保存されているフレーム画像データi1に送信されたことを示す識別情報が記録される(
図2:ステップS16)。なお、上述の基準データ容量は、1枚分に限らず、複数枚にわたってもよい。
【0075】
タイミングt12は、送信部25によるフレーム画像データi1の送信が完了した時間を示している。このタイミングt12においては、2枚目のフレーム画像を示すフレーム画像データi2が取得済みであり、3枚目分のフレーム画像データi3が取得されている最中となっている。このため、タイミングt12において、未送信データは、フレーム画像データi2のみとなっている。この場合も、未送信データのデータ容量は、基準データ容量を超えていないため、先と同様に、フレーム画像データi2が、画像処理装置3に向けてそのまま送信されることとなる。
【0076】
タイミングt13は、送信部25によるフレーム画像データi2の送信が完了した時間を示している。ここで、
図3に示されるように、フレーム画像データi2の送信に要した時間(送信所要時間)は、フレーム画像データi1の送信所要時間よりも長くなっている。このことが影響して、タイミングt13の時点における、未送信のフレーム画像データは、2枚分の連続したフレーム画像データi3,i4となっている。この場合、未送信データのデータ容量は、基準データ容量を超えていることになるため、送信画像選択部251により、送信するフレーム画像の選択が行われる(
図2:ステップS14)。
【0077】
図3に示される送信処理の例では、未送信の一連のフレーム画像データi3,i4のうち、最後に取得されたフレーム画像データi4が、送信画像選択部251によって選択され、該フレーム画像データi4が、送信部25によって画像処理装置3に送信されている。このように、送信画像選択部251が、最後に取得されたフレーム画像データを選択するようにするように構成することで、X線撮影装置2と画像処理装置3との間の通信速度が低下した場合であっても、最新のフレーム画像データを画像処理装置3に送信することができる。これにより、例えば、表示部81に最新のフレーム画像を表示させることが可能となるため、オペレータが、X線撮影装置2においてX線撮影が適切に行われているかどうかをより適切に判断することができる。また、強度情報取得部35が、最新のフレーム画像データからX線の強度情報を取得することができるため、最新の強度情報に基づいたX線の線量制御を行うことが可能となる。また、選択されなかった(送信されなかった)フレーム画像データi3については、識別情報記録部253により、未送信であることを示す識別情報が記録される(
図2:ステップS16)。なお、選択される画像データは、1枚分に限らず、複数枚にわたってもよい。
【0078】
タイミングt14では、新たに取得された未送信のフレーム画像データとして、2枚分のフレーム画像データi5,i6が存在している。このため、この場合も、タイミングt13のときと同様に、送信画像選択部251が最後に取得されたフレーム画像データi6を選択することで、送信部25が該フレーム画像データi6を画像処理装置3に送信する。また、タイミングt15では、新たに取得された未送信のフレーム画像データは、1枚分のフレーム画像データi7のみとなっている。このため、フレーム画像データi7が、送信部25によって画像処理装置3に送信されることとなる。
【0079】
なお、取得されたフレーム画像データの受信部31への送信が終わりにさしかかってきて、X線撮影の最後に送信完了したタイミングにおいて最後のフレーム画像データiNが取得される最中であった場合は、フレーム画像データiNは、ステップ18における未送信のフレームデータに回され、ステップ18で送信される対象となる。
【0080】
以上のように、X線撮影装置2と画像処理装置3との間において、通信経路の容量に対して信号が込み合って通信帯域の不足が発生する等して、通信速度が低下することにより、未送信のフレーム画像データが蓄積される状況が生じることがある。医用X線画像処理システム1では、X線撮影中に、このような未送信のフレーム画像データが監視され、そのデータ容量に応じて、選択的に画像が送信される。つまり、一連のフレーム画像データが間引かれることで、X線画像データの時間的解像度が低減されて、画像処理装置3に送信される。これにより、X線撮影装置2と画像処理装置3との間における通信帯域の不足が発生する等しても、撮影直後のフレーム画像データを画像処理装置3に送信することが可能である。
【0081】
上述したように、送信部25は、X線撮影中に、一連のX線画像データの受信部31への送信を行い、各送信が完了したタイミングにおいて、X線画像データの取得量に対するX線画像データの送信量が低下している場合に、未送信のX線画像データを、時間解像度を低下させて送信する。
【0082】
なお、X線画像データの取得量に対するX線画像データの送信量が低下する状態とは、X線画像データの送信量に対して未送信のX線画像データの量が増大する状態をいう。言い換えれば、未送信のX線画像データの量に対する送信量が低下することである。
【0083】
この低下の状態は、様々な視点から捉えることができるが、具体的な例として、フレーム画像データの数量を基準にして捉えることができる。例えば、
図3の例で説明すると、タイミングt12においては、タイミングt11において未送信であったフレーム画像データi1が送信済となっており、フレーム画像データi2のみが未送信となっている。しかし、タイミングt13では、タイミングt12において未送信であったフレーム画像データi2は送信済であるが、フレーム画像データi3及びi4が未送信となっている。すなわち、タイミングt12のときに比べて、X線画像データの送信量(数)に対する未送信のX線画像データの量(数)が増大している。送信部
25は、未送信のX線画像データの量が増大した分、できるだけ迅速に現在の画像を表示させるべく、フレーム画像データi3及びi4のうち、フレーム画像データi4のみを送信している。
【0084】
図3で示される構成において、仮に、あるフレーム画像データの送信に大きな時間がかかって、あるタイミングで3つのフレーム画像データが未送信となったとすると、そのうちの1つのみが送信対象となるように設定してもよい。この場合、未送信のフレーム画像データ2つであった場合に比較して、解像度を低下させる度合いが大きくなる。
【0085】
このように、送信部
25は、X線撮影装置で撮影されているX線画像データを画像処理装置に送信してX線画像としてリアルタイムに表示させるにあたり、X線画像の送信量が低下してもリアルタイムの表示が可能なように、未送信のX線画像データをできるだけ迅速に送信する。詳細には、送信部
25は、未送信のX線画像データを、時間解像度及び空間解像度のうち少なくとも一方を低下させて送信する。さらに、送信部
25は、X線画像データの送信量の低下の度合いに従って未送信のX線画像データの時間解像度及び空間解像度のうち少なくとも一方を低下させるように構成してよい。
【0086】
また、送信部
25は、フレーム画像データを取得の順に基づいて送信するように構成できる。
図3の例で述べれば、送信部
25は、フレーム画像データi1、i2、i4、i6、…、というように、解像度を低めるために間をスキップしつつ、取得の順に従って送信している。
【0087】
<1.2.2. 画像処理装置の動作>
次に、フレーム画像データを受け取った画像処理装置3の動作について説明する。
図4は、第1実施形態に係る画像処理装置3の動作の流れ図である。画像処理装置3は、先ず、受信部31がフレーム画像データを受信したか判定する(ステップS21)。このフレーム画像データは、
図2に示されるステップS15において、送信部25が送信したものである。フレーム画像データを受信している場合(ステップS21においてYES)、画像処理装置3は、ステップS22に進む。一方、フレーム画像データを受信していない場合(ステップS21においてNO)、画像処理装置3は、ステップS25に進む。
【0088】
ステップS22は、表示部81にフレーム画像を表示する工程である。このステップS22では、表示制御部33が、受信部31によって受信されたフレーム画像データが示すフレーム画像であるX線画像を、表示部81に表示させる。X線撮影中、送信されてくるフレーム画像データのX線画像は遅滞なく表示部81に表示されるので、オペレータはリアルタイムでX線撮影の様子を確認することができる。
【0089】
また、受信部31によって受信されたフレーム画像データから、強度情報取得部35がX線の強度情報91を取得する(ステップS23)。なお、このステップS23の処理(強度情報の取得)は、ステップS22の処理(フレーム画像の表示)と並行して実行されてもよいし、もしくは、ステップS22の処理よりも先に実行されてもよい。取得された強度情報91は、X線撮影装置2の線量制御部13に送信されることにより、フィードバックされる(ステップS24)。そして、画像処理装置3は、ステップS24の処理を終えると、ステップS25に進む。
【0090】
ステップS25は、画像処理装置3が、X線撮影が完了したかどうかを判定する工程である。具体的には、
図2におけるステップS17のときと同様に、旋回軸の回転角度を検出すること等によって、X線撮影が完了したかどうかが判定される。
図2におけるステップS17の判定結果を受領するようにしてもよい。X線撮影が完了したと判定された場合(ステップS25においてYES)、送信部25がX線撮影中に送信しきれなかった、未送信のフレーム画像データを送信してくる(
図2:ステップS18)。このため、画像処理装置3は、受信部31を介して、これを受信する(ステップS26)。一方、X線撮影が完了していない場合は(ステップS25においてNO)、画像処理装置3は、ステップS11に戻って動作を継続する。なお、詳細な説明は省略するが、画像処理装置3は、全フレーム画像データを再構成する演算処理を行って、診断等に用いられる医用画像(CT画像、パノラマ画像またはセファロ画像等)を、自動で、または、オペレータの操作入力に基づいて生成する。以上が、画像処理装置3の主な動作の流れである。
【0091】
<1.2.3. 線量制御処理>
次に、線量制御部13による線量制御の流れについて説明する。
図5は、第1実施形態に係る線量制御処理の流れ図である。X線撮影が開始されると、線量制御部13は、X線発生器11から放射されるX線の線量を変更するかどうか判定する(ステップS31)。この工程では、
図4に示されるステップS24において、画像処理装置3の強度情報取得部35が送信する強度情報91を、図示しない受信部を介して、線量制御部13が受け取る。そして、線量制御部13は、受け取ったX線強度が、予め定められたX線強度の基準値の範囲内にあるかどうか判定する。
【0092】
X線強度が基準値の範囲外である場合には(ステップS31においてYES)、線量の変更が行われる(ステップS32)。具体的には、線量制御部13は、ステップS31にて取得した強度情報91が示すX線強度が、基準強度を超えていると判定された場合には、X線発生器11から放射されるX線の線量を所要分だけ低減させ、X線強度が、予め定められた基準強度を下回る場合には、X線発生器11から放射されるX線の線量を所要分だけ増加させる。このように強度情報91に基づいてX線の線量が変更されることによって、適切な線量でX線撮影を行うことができる。このため、過剰なX線被曝を抑制できる一方で、低線量のために、X線画像(フレーム画像)または該X線画像を再構成して得た再構成画像(CT画像、パノラマ画像またはセファロ画像)が不鮮明になることを抑制できる。
【0093】
X線強度が基準値の範囲内であると判定されたとき(ステップS31においてNO)、または、ステップS32の処理(線量の変更)が完了すると、線量制御部13は、X線撮影が完了したかどうかを判定する。具体的には、
図2におけるステップS17または
図4に示されるステップS25のときと同様に、旋回軸の回転角度を検出すること等によって、X線撮影が完了したかどうかが判定される。
図2におけるステップS17の判定結果または
図4におけるステップS25の判定結果を受領するようにしてもよい。X線撮影が完了したと判定された場合(ステップS33においてYES)、線量制御部13は、動作を終了する。X線撮影が完了していない場合(ステップS33においてNO)、線量制御部13は、ステップS31に戻る。以上がX線撮影中における、線量制御部13の動作の流れである。
【0094】
以上のように、本実施形態では、X線撮影装置2において、X線撮影が行われている最中に、規定のデータ容量を超える複数の未送信のフレーム画像データが発生すると、そのうちの一部のフレーム画像が選択されて、画像処理装置3に送信される。このため、X線撮影装置2と画像処理装置3との間における、通信速度の低下により、フレーム画像データの送信が遅滞することを低減できる。したがって、画像処理装置3によるフレーム画像の表示が遅延することを抑制できるとともに、フレーム画像データから抽出されるX線の強度情報91に基づいた線量制御を遅滞することなく適切に行うことができる。
【0095】
<2. 第2実施形態>
第1実施形態では、X線撮影装置2と画像処理装置3との間における通信速度が低下した場合に、送信部25が送信するフレーム画像を選択して送信することで、X線画像データの空間解像度を低下させることにより、送信するデータ容量を低減させている。しかしながら、通信速度に応じた送信方法は、このようなものに限定されるものではない。
【0096】
<2.1. 構成>
図6は、第2実施形態に係る医用X線画像処理システム1Aの概略構成を示すブロック図である。なお、本実施の形態の説明において、第1実施形態と同様の機能を有する要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0097】
図6に示されるように、第2実施形態に係る医用X線画像処理システム1Aは、X線撮影装置2Aと画像処理装置3とを備えている。X線撮影装置2Aは、X線撮影装置2とほぼ同様の構成を備えているが、送信部25とは異なる送信部25Aを備えている点で、X線撮影装置2と相違する。
【0098】
送信部25Aは、送信部25と同様に、X線画像データを、X線撮影中に取得されたX線画像データを画像処理装置3に順次送信する。ただし、送信部25Aは、X線画像データを送信する際、未送信のX線画像データのデータ容量が、予め定められた基準データ容量を超えている場合には、該未送信のX線画像データの空間解像度を低下させることにより、送信するデータ量を低減させる。
【0099】
より具体的に、送信部25Aは、空間解像度低減部251Aを備えている。空間解像度低減部251Aは、X線画像データを部分的に破棄することによって、情報量が低減された低空間解像度のX線画像データを生成する。具体的には、1枚のフレーム画像のうち、一部の画素の情報(濃度値等)を、フレーム画像データから除去する。つまり、空間解像度低減部251Aは、1枚のフレーム画像を構成する画素数を減らすことにより、低空間解像度のフレーム画像データを生成する。以下の説明においては、空間解像度が低減されていない元のフレーム画像データを、「完全な」フレーム画像データと称して、空間解像度が低減されたフレーム画像データから区別する場合がある。
【0100】
なお、低空間解像度のフレーム画像データを生成する方法は、上述したような元のフレーム画像の画素の情報を一部破棄するものに限定されない。例えば、フレーム画像の空間領域を周波数空間に変換して、その一部分の周波数成分を破棄して、残りの部分の周波数成分からなるフレーム画像データを生成することが考えられる。例えば、周波数変換されたフレーム画像を、高周波成分と低周波成分とに分離して、どちらかを破棄することによって、低空間解像度のフレーム画像データを生成することができる。また、画像のビット深度を減らすことによって、画像の情報量、すなわち,データ容量を低減させることによっても、低空間解像度のフレーム画像データを生成することが可能である。
【0101】
このようにして生成された低空間解像度のフレーム画像データは、送信部25Aによって、画像処理装置3に送信される。画像処理装置3では、受信部31により、低空間解像度のフレーム画像データが受信されると、該データが表示制御部33に送られる。そして、低空間解像度のフレーム画像が表示部81に表示される。また、低空間解像度のフレーム画像データは、強度情報取得部35に送られ、低空間解像度のフレーム画像における、1または複数の画素の濃度値に基づいて、X線の強度情報91が取得される。
【0102】
識別情報記録部253Aは、空間解像度を低下させて送信したフレーム画像データと、完全な状態で送信されたフレーム画像データとを識別するための識別情報を記録する。本実施形態においても、第1実施形態と同様に、画像記憶部23に保存された各フレーム画像に対応するフレーム画像データに、識別情報が付加される。
【0103】
<2.2. 動作>
次に、医用X線画像処理システム1Aの動作について説明する。なお、以下の説明では、主に、医用X線画像処理システム1の動作と異なる部分について主に説明し、共通する動作については、適宜説明を省略する。
【0104】
図7は、第2実施形態に係るX線撮影装置2Aの送信部25Aによる送信処理の流れ図である。
図7に示されるように、送信部25Aによる送信処理の流れは、
図2に示される送信部25による送信処理の流れとほぼ同様である。しかしながら、ステップS13において、未送信のフレーム画像データのデータ容量が、基準データ容量を超える場合に、低空間解像度のフレーム画像データの生成が行われる点(ステップS14A)、低空間解像度のフレーム画像データが画像処理装置3に向けて送信される点(ステップS15A)、低空間解像度のフレーム画像データとして送信されたことを示す識別情報が記録される点(ステップS16A)、及び、低空間解像度で送信したフレーム画像データについて、X線撮影完了後に、完全なフレーム画像データを再送信する点(ステップS18A)で相違する。これらの相違について、送信処理の具体例を挙げて説明する。
【0105】
図8は、第2実施形態における、フレーム画像データの送信処理を説明するためのタイムチャートである。なお、説明を容易にするため、
図8に示されるX線撮影の条件(CT撮影、パノラマ撮影、セファロ撮影等の撮影モード、撮影時間、フレームレート等)は、
図2に示されるタイムチャートにおける撮影条件と同一であるとする。また、
図8に示される時間軸T1上のタイミングt11〜t15は、それぞれ、
図2に示される時間軸T1上のタイミングt11〜t15と一致しているものとする。さらに、
図8に示されるタイムチャートにおいて、各タイミングt11〜t15において、送信されずに蓄積された未送信のフレーム画像データは、
図2に示されるタイムチャートの場合と一致しているものとする。
【0106】
タイミングt11,t12及びt15では、未送信のフレーム画像データが、それぞれ、1枚分のフレーム画像データi1,i2及びi7となっている。ここで、基準データ容量が1枚分のフレーム画像データのデータ容量に設定されていたとすると、タイミングt11,t12及びt15では、基準データ容量を超えないと判定される(
図7:ステップS13)。このため、ステップS14Aの処理はスキップされ、各タイミングt11,t12及びt15では、完全なフレーム画像データi1,i2及びi7が、それぞれ、画像処理装置3に向けて送信されることとなる(
図7:ステップS15A)。また、識別情報記録部253Aは、完全な状態でフレーム画像データを送信したことを示す識別情報を、画像記憶部23に保存されているフレーム画像データi1,i2及びi7に付加する(
図7:ステップS16A)。
【0107】
一方、その他のタイミングt13及びタイミングt14では、未送信のフレーム画像データが、それぞれ、フレーム画像データi3,i4またはフレーム画像データi5,i6となっている。これらのタイミングt13,t14では、未送信のフレーム画像データが、基準データ容量(1枚分のフレーム画像データのデータ容量)を超えていると判定される(
図7:ステップS13)。このため、タイミングt13では、低空間解像度のフレーム画像データi3x,i4xが、タイミングt14では、低空間解像度のフレーム画像データi5x,i6xが生成され(
図7:ステップS14A)、画像処理装置3に向けて送信される(
図7:ステップS15A)。また、識別情報記録部253Aは、空間解像度を低下させた状態でフレーム画像データを送信したことを示す識別情報を、画像記憶部23に保存されているフレーム画像データi3〜i6に付加する(
図7:ステップS16A)。また、未送信のフレーム画像データの数が多いほど空間解像度の低下の度合いが大きくなるように設定してもよい。
【0108】
低空間解像度のフレーム画像データは、完全なフレーム画像データに比べて、そのデータ容量が縮小されている。このため、X線撮影装置2Aと画像処理装置3との間の通信速度が低下した場合であっても、完全なフレーム画像データを送信する場合に比べて、短時間で送信することができる。また、画像処理装置3の表示制御部33は、この低空間解像度のフレーム画像データが示すフレーム画像を表示部81に表示する。したがって、表示部81におけるフレーム画像の表示遅延が発生することが抑制できる。また、強度情報取得部35は、低空間解像度のフレーム画像データから、X線強度を取得することが可能である。このため、本実施形態においても、線量制御を遅滞することなく即時に行うことができる。
【0109】
空間解像度を低くしたことによって、X線強度の検出が困難になる等の影響がある場合、適宜補正処理が行われる。例えば、ある1つの画素における濃度値PX1と、別の1つの画素における濃度値PX2を合計した値に基づいて、X線の強度情報91を取得するような場合を想定する。このとき、空間解像度を低くすることで、一方の画素の情報が欠落して、濃度値PX1とPX2の一方しか得られなくなるような場合、補正処理として、取得できた方の濃度値を2倍にする等の手当てを行うことが考えられる。
【0110】
また、X線撮影が完了すると、送信部25Aは、低空間解像度で送信したフレーム画像データ(例えば、フレーム画像データi3,i4,i5及びi6)を、空間解像度を低下させない完全なフレーム画像データの形で画像処理装置3に向けて送信する(
図7:ステップS18A)。これにより、X線撮影でX線撮影装置2Aが取得した完全なフレーム画像データi1〜iNの全てが、画像処理装置3に送信されることとなる。
【0111】
なお、
図8に示されたタイムチャートでは、未送信のフレーム画像データが基準データ容量を超えている場合、全ての未送信のフレーム画像データの空間解像度を低下させるとともに、その低下させた全てのフレーム画像データを送信している。しかしながら、一部のフレーム画像データのみの空間解像度を低下させて、その低下させたフレーム画像データのみが送信されるようにしてもよい。この場合には、空間解像度及び時間解像度の双方を低下させて、フレーム画像データを送信することとなる。このとき、最後に取得されたフレーム画像データについてのみ、空間解像度を低下させて送信することで、最新のフレーム画像を画像処理装置3に渡すことができる。
【0112】
図7に示される送信処理の流れにおいて、
図4に示される画像処理装置3の動作のうち、ステップS26の動作を厳密に述べれば、ステップS26は、送信部25がX線撮影中に完全なフレーム画像データとしては送信しきれなかった、未送信のフレーム画像データを完全なフレーム画像データの形で受信部31を介して受信するステップである。
【0113】
<3. 変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0114】
例えば、第1実施形態に係るX線撮影装置2では、時間解像度を、第2実施形態に係るX線撮影装置2Aでは、空間解像度を低下させて、フレーム画像データを送信するようにそれぞれ構成されている。しかしながら、フレーム画像データについて、時間解像度及び空間解像度どちらも選択的に低下させることができるように送信部を構成することで、オペレータがフレーム画像データの解像度を低下させる方法を選択できるようにしてもよい。
【0115】
また、上記の第1実施形態に係るX線撮影装置2では、未送信のX線画像データのデータ容量が、予めオペレータ等によって定められた基準データ容量を超えているかどうか判定する機能を、送信画像選択部251が備えている。しかしながら、このような機能を省略して、X線撮影中のフレーム画像データ送信の各タイミングで最終の部分のX線画像データのみが送信されるように構成することも考えられる。
【0116】
例えば、
図3に示されるタイミングt11ではフレーム画像データi1が、タイミングt12ではフレーム画像データi2が、タイミングt13ではフレーム画像データi4が、タイミングt14ではフレーム画像データi6が、それぞれ無条件で送信されるようにしてもよい。この場合において、送信するフレーム画像データi1、i2、i4、i6の空間解像度についても、所定の度合いで無条件に低下させるようにしてもよい。無条件で送信される対象のフレーム画像データは、1枚分に限らず、最後の部分の複数枚にわたってもよい。
【0117】
また、送信するフレーム画像データを、各タイミングで直近に取得された2つのフレーム画像データとする、といったように、複数のフレーム画像データが送信されるようにしてもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、X線撮影として、X線発生器11及びX線検出器21を被写体M1に対して旋回させることにより、X線撮影が行われる。しかしながら、例えば、被写体M1の特定位置における断層面の画像を得るため、X線発生器11及びX線検出器21を被写体M1に対して断層面に平行な方向に沿って互いに反対方向に直線移動させつつ、間欠的にX線を照射するX線撮影が行われてもよい。
【0119】
また、上記実施形態では、歯科向けの医用X線画像処理システムを例に挙げて説明しているが、本願発明は、その他の医科分野で用いられる医用X線画像処理システムにおいても有効であることは言うまでもない。
【0120】
また、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、あるいは、省略したりすることができる。