(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記メッシュシートが熱可塑性繊維を主成分とする編物であり、編成後定長熱固定されたものである請求項1から請求項4の何れかに記載の複合メッシュシートの製造方法。
前記メッシュシートは、周縁部が加熱加圧されて該周縁部の内側が加圧されることなく定長熱固定されたものである請求項1から請求項5の何れかに記載の複合メッシュシートの製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂シートの補強策として、メッシュシートを樹脂シートに複合する方法が知られている。これらの複合は、樹脂ラミネート加工や溶融押出しなどによってメッシュシートと樹脂層とを積層することによりなされるのが一般的である。
【0003】
下記特許文献1に示すように、樹脂ラミネート加工は、通常、シ−ト基材とメッシュクロス(上記のメッシュシートに相当)の間にサンド樹脂としてラミネ−ト樹脂層を介在させ、それらを圧接して積層シ−トとする方法、或いはシ−ト基材にメッシュクロスを重ね合わせて該メッシュクロス上面からラミネ−ト樹脂を被覆し、クロス目隙部を通してラミネート樹脂とシ−ト基材を接着して積層シ−トとする方法により行われている。
【0004】
このようにメッシュクロスを複合して補強した積層シ−トはメッシュクロスとラミネ−ト樹脂層が一体化されているが、前者の方法は、メッシュクロスを構成するフラットヤ−ンの組織における交差部等の厚い部分が盛り上がるなどして積層体に凹凸が生じ、表面平滑性に劣ったものとなりやすい。また、後者の方法は、メッシュクロスが積層シ−トの中間に位置するためにシート基材とフラットヤ−ンの当接面が非接着の状態となり、積層体として接合強力が劣り剥離しやすいものとなる点で問題となることがある。
【0005】
一方、溶融押出しに不適な樹脂からなる樹脂フィルムの補強のためにメッシュシートを複合することもある。その場合、一旦樹脂フィルムを作成したのちメッシュシートを積層するという方法をとることが考えられるが、この方法ではメッシュシートを樹脂シートに埋没状態で複合することが難しく、工程も増える。
【0006】
また、他の方法として、溶融押出しに不適な樹脂を溶媒に溶解させた溶液をスリットダイから押出してメッシュシートに積層することも考えられる。しかしながら、その場合には、加工のための装置が大掛かりになり、また、溶液の貯留時のゲル化問題などもあって多品種少量生産には不適である。さらには、メッシュシートが持ち込んだ空気が製品中に気泡として残留することを防ぎきれない。
【0007】
これに対する方策として、メッシュシート上に樹脂の溶液を流下したのち溶媒を乾燥させて、メッシュシートが樹脂シートに埋没状態で複合されてなる複合メッシュシートを得るという方法が考えられる。ところが、かかる方法では、メッシュシート上に樹脂の溶液を流下するときにメッシュシートが浮き上がるのでメッシュシートを押さえておく必要があって、そのために特殊な治具を必要とするなど操作が煩雑になるという問題がある。また、操作の過程で気泡が混入し、製品中に残留するという問題がある。さらには、メッシュシートに抱かれた空気が製品中に気泡として残留することを防ぎきれない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明についての理解を容易にするために、本明細書におけるいくつかの用語を以下に定義する。
【0019】
メッシュシート:糸条、あるいは繊維をシート状に加工した通気性のある布をいう。
樹脂含有液:樹脂が溶剤に溶解された溶液、または樹脂が液に分散された分散液をいう。
複合メッシュシート:メッシュシートが樹脂シートに埋没状態で複合されてなるシートをいう。
スキージ:液体中に板の先端部を押し込んだ状態で液体を押しやるようにその板を略液面方向に移動することをいう。
【0020】
本発明の複合メッシュシートの製造方法を図を用いて説明する。始めに、
図1に示す操作を行うための事前準備として、槽2、樹脂含有液4、メッシュシート8、及びスキージ板10を準備する。
【0021】
続いて、
図1(a)に示すように、槽2に樹脂含有液4(以下液4と称する)を入れて留置する。槽2に液4を入れる方法については特に限定されない。例えば、ポンプなどの供給手段(図示省略)を用いてもよいし、人為的に供給する方法を採用してもよい。槽2は得るべき複合メッシュシートのサイズに応じた縦幅、横幅を有する。通常、縦幅、横幅とも10〜50cmほどであるがこの範囲に限定されない。槽2の深さは液4を所定量留置できる深さ以上であればいい。好ましくは2〜5cmである。槽2は通常平底のものが用いられるが、底面が凹凸を有したり3次元的に曲がった面であってもよい。
【0022】
槽2の内底面6の一の底辺部15には、メッシュシート8の一辺部11(
図1(b))を固定するための固定手段16が設けられている。
【0023】
次に、
図1(b)に示すように、液面5の方向に広がった状態のメッシュシート8を、槽2に入れられた液4の液面5に積層するように置く。メッシュシート8は液面5上に置かれた後には非拘束状態となる。このとき、メッシュシート8の液4に対する濡れ性やメッシュシート8と液4の比重差にもよるが、大抵の場合、メッシュシート8の一部分が液4中に沈降した状態となる。なお、メッシュシート8を液面5上に置く操作の意味するところは、この操作のときにメッシュシート8の少なくとも一部が液4の液中に入った場合も含む。さらに、メッシュシート8を液面5上に落下させる場合も含む。
【0024】
その次に、
図1(c)に示すように、スキージ板10の先端部に位置するスキージ板辺部12を液4の上方からメッシュシート8の一辺部11に向けて液4中へ進入させる。メッシュシート8が矩形であれば、スキージ板辺部12をその長手方向がメッシュシート8の一辺部11の長手方向と略平行になるようにして液4中に進入させる。このとき、メッシュシート8の一辺部11を固定手段16及び固定手段16に付随する治具18により挟持するなどして固定することが好ましいが、
図1(d)におけるスキージ板10の移動が低速の場合など、スキージ操作によりメッシュシート8が横方向にあまり動かない場合には固定手段16及び治具18は省略可能である。その場合は、メッシュシート8の一辺部11をスキージ板10の先端部で液4中に押し込むだけでよい。なお、メッシュシート8の形状は特に限定されず、例えば、その一辺や一辺に対向する他辺は一直線状に限られず、折れ曲がった線状や曲線状や波形の線状であってもよい。
【0025】
スキージ板10の材質は、樹脂(エンジニアリングプラスチック、ゴムなど)、セラミックス、金属でもよく、また、スキージ板10を加温できるようにヒータを備え、コントローラ等によりスキージ板10の温度を制御してもよい。また、スキージ板10の形状は断面の縦横比がほぼ同じような棒状であってもよいし、ナイフ状の薄板状のものであってもよい。
【0026】
その次に、
図1(d)に示すように、スキージ板10の先端部をメッシュシート8に接触させつつ液4に押し込んだ状態で、メッシュシート8のスキージ板10との接触部がメッシュシート8の他辺部13へ向けて移動するようにスキージ板10を液面5の方向に他辺部13に向けて移動させる。他辺部13は一辺部11と対向するメッシュシート8の辺部である。但し、メッシュシート8の形状との関係において、スキージ板10を移動させる方向(即ち、スキージの方向)は、特に限定されるものではない。例えば、本実施形態のように矩形のメッシュシート8の場合、その長手方向に沿ってスキージ板10を移動させてもよいし、短手方向に沿ってスキージ板10を移動させてもよい。あるいは、長手方向、短手方向と交差する方向へスキージ板10を移動させるように構成してもよい。なお、スキージ板10のスキージ面と液面5との角度が鋭角になるような状態でスキージしてもよい。また、この移動の過程では、スキージ板辺部12と液面5との距離を略一定に保ってもよく、スキージ板辺部12でメッシュシート8を深く押し込んだり、浅く押し込んだりする動作をさせてもよい。
【0027】
このスキージ板10の移動によりメッシュシート8が液4中に押し込まれてゆき、
図1(e)に示すように、メッシュシート8が液4に埋没した状態となる。また、スキージ板10の移動により、気泡がほとんど残っていない状態でメッシュシート8が液4中に沈められるので、液4に埋没したメッシュシート8の繊維の間の隙間に残存する気泡やメッシュシート8と液4との間に残存する気泡、あるいはメッシュシート8の表面に付着している気泡などがほとんどない状態でメッシュシート8が液4中に浸漬されている状態が実現される。なお、
図1(a)〜
図1(e)に示す各ステップが完了するまでは、少なくとも槽2内の液4がゲル化あるいは固化しないように温湿度管理を行う方が好ましい。例えば、液4にゲル化が始まる温度が比較的低い樹脂が含まれている場合などは、液4を液体状態に維持するために槽2を加温するようにしてもよい。
【0028】
続いて、治具18を開放して、槽2に留置された液4中にメッシュシート8が埋没された状態で、槽2内にある液4を加熱乾燥することで複合メッシュシートが得られる。乾燥は加熱を伴わない乾燥であってもよいし、減圧乾燥であってもよい。例えば、
図1(f)に示すように、槽2ごと、加熱乾燥機14に入れて加熱乾燥することによっても複合メッシュシートが得られる。
【0029】
このようにして、内部に気泡が残存していない複合メッシュシートが得られる。また、この方法は、バッチ式でありシートの生産速度はスリットダイを用いた連続方式に比べて小さいものの、生産設備は連続方式に比べて大掛かりでなく、製造条件の変更が容易で品種切り替えも容易であり、また、製造の操作も簡単である。さらに、個々の操作が単純であり、用いる装置の構造も複雑なものはないので、個々の操作を容易に自動化することができる。例えば、スキージ板10の液4への進入や液4からの後退の動作、及び一辺部11から他辺部13への移動は、複数のリニアアクチュエータあるいはX−Y軸駆動アクチュエータを組み合わせて用いてシーケンス制御して行なわせることができる。
【0030】
本発明においては、メッシュシート8の材料、繊維径、シートサイズにもよるが、メッシュシート8を液面5に置く前に、予め液4と同じかもしくはそれに近い成分を有する処理液に浸漬処理して、メッシュシート8の繊維表面を液4と同じ処理液かもしくはそれに近い成分を有する処理液で濡らしておくことにより、上述の気泡の発生をより少なくする場合もある。
【0031】
メッシュシート8の一辺部11を固定する固定手段16はメッシュシート8の一辺部11を着脱可能に固定する固定手段であり、一辺部11を治具18と共に挟持する、あるいはピンを突き刺して固定する、などの操作を行なわせるものである。前述のようにスキージ板10の移動が低速であったり、スキージ板10とメッシュシート8との摩擦力が小さいような場合は、固定手段16は省略することもできる。
【0032】
なお、本発明の複合メッシュシートの製造方法においては、スキージ板10の移動が終了した段階でスキージ板10を液4から引き上げるときにメッシュシート8の他辺部13がスキージ板10とともに引き上げられるというトラブルが生ずることがある。このトラブルに対処する方法としては、例えば、
図2に示すようなスキージ板10の操作を行うことが有効である。即ち、
図2(a)に示すように、スキージ板10の移動が終了した段階で、スキージ板10と液面5との角度αが90度以下になるように、スキージ板10を矢印Aの図面視反時計回り方向に回転させ、続いて、
図2(b)に示すように、回転させた状態から、スキージ板10を矢印Bの方向に液面5の上方まで引き上げ、最終的に、
図2(c)に示すように、スキージ板10を液4中から脱離させた状態となるようにする。また、この引き上げの場合、矢印Bのように液面5に対して略垂直に引き上げてもよく、液面5に対して斜め方向に引き上げてもよい。なお、このスキージ板10の回転方向は図面視時計回り方向であってもよい。
【0033】
本発明において用いる樹脂は、溶媒に可溶な樹脂であればとくに限定されない。溶媒の取り扱い性のうえでは、水溶性の樹脂であることが好ましい。
【0034】
液4の粘度は1〜100cPであることが、複合メッシュシートの樹脂中に気泡を残存させないうえで好ましい。1〜30cPであることがさらに好ましい。
【0035】
スキージ板10の槽2に対する移動速度すなわちスキージの速度は10〜100mm/secであることが、工程の安定化の上で好ましい。
【0036】
図1(a)において、槽2に入れられた液4の深さhは、得られる複合メッシュシートの目標とする目付によって決められるが、2〜10mmが好ましい。2.5〜5mmが工程の安定化の上でさらに好ましい。
【0037】
槽2に入れる液4中の樹脂の濃度も、得られる複合メッシュシートの目標とする目付と液4の設定粘度によって調整されるが、3〜10重量%であることを目安とする。
【0038】
図1(c)において、液4中に進入させたスキージ板10のスキージ板辺部12におけるスキージ板10の先端から内底面6までの距離、すなわち、スキージ板10と内底面6との間の隙間の幅dは1〜2mmであることが好ましい。
【0039】
本発明において用いるメッシュシートとしては、メッシュ状の編物、メッシュ状の織物、孔あき不織布などを用いることができる。メッシュシートの素材は繊維化可能な樹脂であればとくに限定されない。天然繊維であってもよい。なお、メッシュシートに対して後述する定長熱固定を行う場合、メッシュシートの素材は熱可塑性繊維であることが望ましい。熱可塑性繊維とは、熱が加わることで軟化する材料から成る繊維であり、生体吸収性を有する材料から成るものである方がより好ましい。また、編地の種類としては、目ずれをおこさず構造が安定している点からトリコット編地が好ましい。
【0040】
メッシュシートの目開きは2〜10mmであることが好ましい。メッシュシートのみかけ厚さは50〜100μmであることが好ましい。
【0041】
本発明の複合メッシュシートの製造方法により得られる複合メッシュシートは、素材を選択することにより、生体吸収性シートのような医療用の生体適合性シートとして好適に用いることができる。この場合、液4の樹脂としては天然高分子であることが望ましい。このような天然高分子としては、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、アルギン酸、キチン、キトサンなどを例示することができる。このなかでも、水に容易に溶解させることができ、加工性に優れるゼラチンを用いることが好ましい。
【0042】
本発明の複合メッシュシートを生体吸収性シートのような医療用の生体適合性シートとして用いる場合、メッシュシート8を構成する繊維の素材としては、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、グリコリド−ラクチド共重合体、ラクチド−εカプロラクトン共重合体、ポリジオキサノン、グリコリド-トリメチレンカーボネート共重合体、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸(PHB)、3−ヒドロキシ酪酸−3−ヒドロキシ吉草酸共重合体(PHBV)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリεカプロラクトン(PLC)、酢酸セルロース系(PH)重合体、ポリエチレンサクシネート(PESu)、ポリエステルアミドなどが挙げられる。
【0043】
メッシュシート8を構成する繊維の繊度は1〜20texであることが好ましい。メッシュシート8を構成する糸条の太さ(線密度)は1/20g/m〜1/100g/mであることが好ましい。
【0044】
メッシュシート8として熱可塑性繊維から成るトリコット編地等の編地を用いる場合、編地は定長熱固定されたものであることが好ましい。定長熱固定により波打ちのない平面状に形体が固定された編地が得られ、複合メッシュシートとしても波打ちのないフラットなシートが得られる。
【0045】
定長熱固定は、シートの辺部を、対向する辺部間の距離が一定になる状態に拘束してシートを加熱して熱固定することをいう。拘束された辺部間の距離LLは拘束前(フリー状態)で熱固定前の辺部間の距離Lfと同じであってもよい。LL>Lfであってもよい。LL<Lfであってもよい。
【0046】
定長熱固定の温度はメッシュシート8の素材のガラス転移温度以上融点未満であることが好ましい。
【0047】
定長熱固定のやり方としては、メッシュシートを平面プレスした状態で加熱することもあり得るが、このようにして平面プレスにより熱固定されたメッシュシートは、糸条の交差部が押しつぶされており、この部分は気泡が逃げ難い。これに対してメッシュシートの辺部のみを拘束して熱固定処理を行った場合は、熱固定処理後も糸条の交差部が押しつぶされなくて、糸条の交差部で糸条のループが維持されているので、糸条間に隙間があり、スキージしたときにこの隙間から気泡を逃がすことができる。このため、複合メッシュシート内に残留する気泡を少なくすることができる。
【0048】
この点に鑑み、平面プレス機を用いて、
図3に示すようにメッシュシート8aの辺部(周縁部)のみが加圧される状態で熱プレスすると、周縁部20がプレスされ、周縁部20の内側22が加圧されることなく熱固定処理されたことになる。さらに、このようなメッシュシート8aは、周縁部20が周縁部20の内側22に比べて剛直になっていて形体安定性が良好である。また、周縁部が剛直になっていることにより固定されているので内側22の編目構造の交差部も動き難くなるので、内側22の形体安定性も増すという効果もある。従って、メッシュシート8aは取り扱いが容易であり、本発明の複合メッシュシートの製造方法を実施するうえで好適に用いることができる。
【0049】
その他、本発明は、主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。例えば、
図1(a)において、槽2に液4を入れる場合、樹脂とその溶媒を槽2の中で調合してもよい。
【0050】
また、上記の実施形態では、スキージ板10の液4への進入(
図1(c))や液4からの後退(
図2(c))の動作、及びスキージ板10の一辺部11から他辺部13への移動(
図1(d))に関する操作について、いずれもスキージ板10を移動させるように構成されているが、スキージ板10のこれらの移動は槽2に対する相対的な移動であってもよい。すなわち、スキージ板10の液4への進入や液4からの後退の動作については、槽2を上昇及び下降させるように、スキージ板10の一辺部11から他辺部13への移動に関する操作については、槽2を水平方向へ移動させるように構成することも可能である。
【0051】
さらに、スキージ板10の先端部の断面形状は、
図4に示すように、テーパ状に面取り加工された面取り形状(
図4(a))やR形状(
図4(b))であることが望ましい。これにより、メッシュシート8との接触面積が低減され、
図2に示すような液面5に対するスキージ板10の角度調整操作に依存することなく、スキージ板10を液4から引き上げる際に生じ得るトラブルを回避できるという利点が得られる。この点、スキージ板10の先端部の断面形状をR形状とすれば、当該先端部におけるメッシュシート8との接触部が常に点接触に近い状態に保持され接触面積を最小限に抑えることができる点でより望ましい。
【0052】
また、上記の実施形態では、
図1(c)に示すように、メッシュシート8の一辺部11を液4中へ押し込むようにしてスキージ板10を液4へ進入させるように構成されているが、スキージ板10を液4へ進入させる際におけるスキージ板10とメッシュシート8の相対的な位置関係については特に限定されるものではない。
【0053】
例えば、
図5に示すように、スキージ板10の液4への進入位置が、メッシュシート8から外れた位置(
図5(a))であってもよいし、メッシュシート8の中央部を押し込むような位置(
図5(b))であってもよい。あるいは、これ以外の任意の位置へスキージ板10を進入させても構わない。その際、液4へ進入した時点でのスキージ板10とメッシュシート8の相対的な位置関係に応じて、メッシュシート8のスキージ板10との接触部を、例えば、一辺部11側から他辺部13側へ又はその逆方向へ往復移動させるようなスキージ操作を行うように構成してもよい。
【0054】
さらに、メッシュシート8を液4中に沈めるためのスキージ操作は、複数のスキージ板10を用いて行うこともできる。例えば、
図5(b)に示すように、メッシュシート8の中央部を液4中へ押し込むように複数のスキージ板10を液4に進入させたのち、メッシュシート8の各スキージ板10との接触部が互いに遠ざかる方向へ移動するように、各スキージ板10と槽2とを相対的に移動させるような構成を採用することも可能である。このように、本発明においては、気泡がほとんど付着していない状態でメッシュシート8を液4中に沈めることができる限り、スキージ操作の開始位置やスキージの回数、スキージに使用するスキージ板10の数は不問である。
【0055】
また、液4を入れるための槽2は、必ずしも一体型のものである必要はなく、複数の構成部材を適宜分離可能なものであってもよい。例えば、
図6に示す槽2’のように、底板部材2aと、この底板部材2aの主面上に載置される枠部材2bとを備えたものを用いてもよい。底板部材2aの主面には、例えば、枠部材2bを位置決めする不図示の突起部が設けられていてもよい。また、枠部材2bは、その各辺部を構成する棒状部材をさらに分離可能なように構成されていてもよいし、一体的に連結されたものであってもよい。さらに、槽2’に投入する液4がゼラチン等のようなゲル化性高分子化合物を含む液体である場合、槽2’への投入直後に液4がゲル化するのを防止するために、ヒータ等の加温手段により槽2’の温度を調整するようにしてもよい。
【0056】
なお、液4がゼラチン等のようなゲル化性高分子化合物を含む液体である場合、槽2’を用いて上記の各ステップ(
図1(a)〜(e))を行い、メッシュシート8が沈められた液4をゲル化させた後、これを枠部材2bと底板部材2aとを分離させた状態で乾燥するようにしてもよい。液4をゲル化させる方法としては、例えば、液4を冷却する(放置等による自然冷却を含む)、液4へゲル化剤を添加する、あるいは液4に振動を与えるなどの方法が挙げられる。冷却によるゲル化の手法としては、例えば、ペルチェ冷却器などの冷却装置を用いて強制的に冷却する手法が挙げられる。具体的には、底板部材2aを冷却装置が取り付けられた板上に載置して下方から強制冷却してもよいし、底板部材2a自体に冷却装置を直接取り付けてもよい。あるいは、底板部材2aを冷蔵庫のような冷却空間へ自動的に若しくは手動により移送して冷却することも可能である。これらの方法は、液4に含まれるゲル化性高分子化合物の種類やそのゲル化特性、液4におけるゲル化性高分子化合物の含有量などに応じて適宜選択される。
【0057】
本発明に係る複合メッシュシートの製造方法において槽2’を用いれば、底板部材2aと、枠部材2bとに分離してそれぞれを別工程において同時に使用することが可能となる。これにより、底板部材2aに対する枠部材2bの数を大幅に削減しつつ、複合メッシュシートの生産効率をより高めることができる。また、使用後の槽2’の洗浄作業を行い易いという利点もある。
【0058】
なお、本発明に係る複合メッシュシートの製造方法において、メッシュシート8の目開きの形状とスキージの方向(即ち、スキージ板10と槽2とを水平方向へ相対的に移動させる方向)との関係については特に限定されないが、目開き近傍への気泡の付着(スキージによる気泡の噛み込み)をより低減するために、以下に示す方向へスキージすることが好ましい。即ち、
図7に示すように、メッシュシート8の目開きの形状が正方形である場合(
図7(a))や菱形である場合(
図7(b))には、その目開きの形状を規定する各辺と交差する方向(例えば、対角線に沿った方向)へスキージする方が望ましい。
【0059】
但し、スキージの方向は、必ずしもメッシュシート8の目開きの形状を規定する全ての辺に対し非平行である必要はない。例えば、
図3に示すメッシュシート8のように、目開きの形状が六角形等の多角形状であるなど目開きの形状を規定する辺の数が比較的多いときに、ある辺に対し平行方向へスキージしても特に問題はない。また、メッシュシート8の目開きの形状が正方形や菱形の場合において、ある辺に対し平行方向へスキージしても構わない。