【実施例】
【0019】
以下、この発明の第1実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1〜
図8に示す第1実施例は、容器本体1と、中栓2とを備える飲料容器からなる。
【0020】
容器本体1は、
図1および
図2に示すように、内部に飲料収容室3を形成し、着脱式の中栓2によって密封可能になっている。容器本体1は、外底面で水平面上に立てることが可能になっている。ここで、「上下」の概念は、その水平面に対して直角な上下方向での上下を意味する(以下、同じ。)。容器本体1は、例えば、ステンレス鋼製まほうびんとして構成することができる。
【0021】
中栓2は、中栓本体4と、中栓本体4に嵌着されたパッキン5と、飲料収容室3から外部へ飲料を導く飲料注出路6と、ユーザの操作によって飲料注出路6を外部側から開閉する操作弁7と、飲料注出路6を飲料収容室3側から開閉する自動弁8と、空気路9と、を備える。
【0022】
中栓本体4は、飲料注出路6が一体に形成されたベース部材からなり、中栓2を構成する各部材の取り付けベースになっている。各部材として、パッキン5、操作弁7や自動弁8の構成部品、容器本体1に螺着脱するためのねじ部材等がある。
【0023】
パッキン5は、飲料収容室3の内周との間を密封する。
【0024】
飲料注出路6は、飲料収容室3から外部へ飲料を導く流路であって、中栓本体4の下面と上面間に亘って貫通している管路部10を備える。管路部10の上端側に注ぎ口11が形成されている。飲料収容室3側である管路部10の下端側に自動弁8が設けられている。
【0025】
自動弁8は、
図1および
図3に示すように、弁孔部12と、弁体13と、弁ケース部14と、コイルばね15とを備える。
【0026】
弁孔部12は、
図1及び
図4に示すように、管路部10の下端に形成されている。弁体13は、
図6及び
図8に示すように、弁孔部12を開閉可能なシール部16を有する。シール部16と弁孔部12との正対方向(以下、単に「正対方向」と呼ぶ)は、上下方向に設定されている。弁孔部12は、正対方向の軸線をもった円周状の弁座を成している。シール部16は、弁孔部12と同軸の円板状に形成されている。
【0027】
弁ケース部14は、
図3、
図7及び
図8に示すように、飲料注出路6の入口17a、17bから弁孔部12に至る一連の流路を形成する。弁ケース部14の出口は、弁孔部12の内周によって形成されている。また、弁ケース部14は、弁体13を正対方向に案内する。
【0028】
図1、
図3〜
図5に示すように、弁ケース部14は、中栓本体4の下面に設けられた下カバー18と、正対方向の軸線周りに下カバー18から弁孔部12側に向かって延びる側カバー19とを備える。
【0029】
下カバー18は、
図5、
図7及び
図8に示すように、開弁位置にある弁体13を支持する弁体支持面を有する。この支持は、下カバー18に弁体13を当接させることによって実現されている。下カバー18は、弁ケース部14のうち、支持した弁体13よりも低所に位置する壁部分からなり、弁体13に対して下方からの飲料流れを制限する。側カバー19は、弁ケース部14のうち、下カバー18に支持された弁体13と同高さの壁部からなり、弁体13に対して側方からの飲料流れを制限する。
【0030】
図示例の下カバー18と側カバー19は、一体に形成されている。側カバー19の上端部を中栓本体4の下面に下側から組み合わせて融着等で接合することにより、弁ケース部14が分解不可能となされている。安全装置である自動弁8をユーザによる分解・組立箇所とすることが好ましくないためである。
【0031】
側カバー19のうち、開弁位置にある弁体13の側方位置に、複数の入口17bが形成されている。
【0032】
下カバー18のうち、開弁位置にある弁体13と当接しない位置に、複数の入口17aが形成されている。
【0033】
弁ケース部14は、下カバー18の弁体支持面と、弁体支持面に隣接する入口17aとを仕切る立壁20を有する。立壁20は、下カバー18と一体に形成されている。立壁20には、弁体13と正対方向に滑り接触する案内面21が形成されている。弁ケース部14は、案内面21を正対方向の軸線周りに等配された3か所以上に有する。このため、第1実施例は、弁体13を周方向に均等に案内可能なため、弁体13の姿勢を安定させたまま正対方向に移動させることができる。なお、第1実施例は、立壁20同士の間に対向方向のスリットを等配で形成し、各立壁20の各スリット面に案内面21を含めた態様になっている。
【0034】
弾性部材15は、
図1および
図2に示すように、弁体13を弁孔部12から離れた開弁位置に支える状態に設置され、当該弁体13の閉弁動に弾性力によって抵抗する。
【0035】
図示例の弾性部材15は、コイルばねからなる。そのコイル軸線は、弁孔部12と同軸に設定されている。
【0036】
図1、
図3、
図6に示すように、弾性部材15は、弁孔部12の周囲と弁体13のばね受け部23との間に介在している。第1実施例は、弁孔部12に対して弁体13を開弁位置に離すためのスペースを利用して弾性部材15を配置することができ、ひいては、自動弁8を正対方向にコンパクトに設けることができる。なお、弁体13の飲料収容室3側に弾性部材15を配置することは可能だが、下カバー18の底面位置を下げて弾性部材15の組み込みスペースを確保しなければならない。
【0037】
弾性部材15は、ある程度の圧縮状態で弁孔部12の周囲の下端と、ばね受け部22の上端との間に組み込まれている。このため、弁体13は、常時、弾性部材15によって下向き(開弁方向)に付勢されている。通常、弁体13は、弾性部材15によって下カバー18の弁体支持面に押し付けられているため、弁孔部12から離れた開弁位置に維持されている。なお、ばね受け部22は、立壁20間のスリットに嵌り、案内面21との滑り接触面23と、下カバー18の弁体支持面に接触する着座面24とを有する部分となっている。
【0038】
図1、
図3、
図7に示すように、下カバー18は、弁体13を正対方向に飲料収容室3側から覆うように設けられている。このため、弁体13が飲料収容室3から内部圧力や飲料を直接に正対方向に受けることがない。
【0039】
図8(a)に示すように、飲料収容室3の流体は、入口17a、17bから流入して、シール部16の外周に当たるか(流線A)、立壁20に当たってスリットに至るか(流線B)、立壁20を乗り越えるか(流線C)して、シール部16の上面と弁孔部12との間の隙間g1、又はシール部16の下面と下カバー18間の隙間g2に向かう。ここにおいて、流体は流通し易い流路を流れる。したがって、内圧の上昇によって飲料の噴出が起こるような場合には、隙間g1の流速が異常に早くなる。すると、隙間g1では減圧が生じ、隙間g2の内圧が優勢となって弁体13に飲料収容室3側から作用する。その結果、弁体13に作用する飲料収容室3側からの受圧力は、隙間g1側から弁体13に作用する受圧力に対して優勢となり、
図8(b)に示すように、弁体13が弁孔部12に密着する閉弁位置に移動させられる。通常時と、飲料噴出が起こり得るような異常時とでは、前述の隙間g1での流速が大きく異なるので、弾性部材15の設定が容易になる。
【0040】
図1、
図2に示すように、操作弁7は、操作部材25と、蓋26と、弁体弁軸27と、ばね28とを有する。操作部材25は、中栓本体4の内側に組み込まれている。蓋26は、中栓本体4に対してヒンジ回りに開閉可能に取り付けられている。弁体弁軸27は、中栓本体4の下面と上面間に亘って貫通する開口29に挿通されている。ばね28は、中栓本体4の上面とばねホルダ30の間に介在するコイルばねからなる。蓋26は、飲料注出路6を密封するための蓋パッキン31を有する。弁体弁軸27は、開口29を密封するためのシール32を有する。操作部材25を下方に押す操作が、蓋26の開放回転動作と、弁体弁軸27が下降する開弁動作とに変換され、当該操作が無くなると、ばね28の弾性反発が生じて弁体弁軸27が閉弁位置に復帰させられると共に、蓋26が閉塞回転させられるようになっている。
【0041】
空気路9の飲料収容室3側の出入口33は、
図4に示すように、開口29の内周一部分と弁体弁軸27の外周との間に隙間として僅かな流路断面積で形成されている。僅かな流路断面積の出入口33は、
図2に示すように、操作弁7の閉弁時、シール32によって密封されているが、操作弁7の開弁時、空気路9の飲料収容室3に連通する。空気路9の外部側の出入口34は、蓋26の開閉回転空間になっており、注ぎ口11の壁面と水平方向に対向している。したがって、空気路9は、操作弁7の開弁に伴って飲料収容室3から外部に連通する。空気路9を介して空気や飲料等の流体を流通させることができる。なお、空気路9は、
図2中に一点鎖線で示されている。図面上では空気路9は1経路のみ示しているが、実際にはその他にも操作弁7の開弁時に飲料収容室3に連通する空気路9は形成されている。
【0042】
飲料収容室3から空気路9を経由して外部へ流出する流体は、非常に狭い出入口33から中栓本体4の上方に入り、弁体弁軸27やばねホルダ30の迂回や操作部材25の下面に当たる等により、複雑に曲がって出入口34に至る流線を成す。飲料収容室3の内部圧力が異常に高いときに操作弁7が開弁したとき、非常に狭い出入口33から空気路9へは飲料が容易に入り難く、入ったとしても、複雑に曲がる際にばねホルダ30等により捕捉され、出入口34に至ったとしても、注ぎ口11の壁面に当たる。このため、空気路9は、飲料の噴出しない流路になっている。
【0043】
上述のような第1実施例は、80℃以上の高温飲料を飲料収容室3の規定容量の2/3程度だけ入れ、直ちに中栓2で密封し、その後直ぐに操作弁7を開弁した状態で、飲料容器が転倒したり急に傾けられたりする等の事態が生じた場合、密封当初、飲料収容室3の上層にあった空気が飲料収容室3の底部に移動する。移動した空気は、高温飲料に加熱されて急激に膨張しようとする。このような極めて稀な場合に、飲料収容室3の底部側から高温飲料を飲料注水路6側へ押し出す異常な内圧上昇が発生する(異常時)。そうすると、飲料収容室3内の飲料が入口17a、17bを通って飲料注出路6に流入するが、ここにおいて、飲料注出路6に流入する飲料の流速が増し、弁体13の弁孔部12側と飲料収容室3側とにおいて圧力差が生じる。具体的には、弁体13の弁孔部12側(弁体13と弁孔部12との間の隙間g1)が減圧されて弁体13の飲料収容室3側より圧力が小さくなる。このため、弁体13が隙間g2側から優勢に押され、弾性部材15が負けて正対方向に急速に圧縮される。これにより、弁体13が弁孔部12側に向かって正対方向に案内されつつ閉弁位置に至るため、飲料注出路6からの飲料噴出を簡単かつ確実に抑制することができる。
【0044】
また、コイルばねからなる弾性部材15において、その温度特性、ばね定数の設計は一般的なので、第1実施例は、飲料収容室6側の異常な内圧上昇時に弁体13が閉弁位置まで動くようにコイル軸方向長さの変化量を設定することが簡単である。
【0045】
また、第1実施例は、弁孔部13に対して弁体を開弁位置に離すためのスペースを利用して弾性部材15を配置することができ、弁体13の飲料収容室6側に弾性部材15を配置する場合と比して自動弁8を正対方向にコンパクトに設けることができる。
【0046】
また、弁体13が閉弁位置へ移動する際は複雑な流れに晒されるが、弁ケース部14の案内面21による周方向にバランスのよい案内性が奏される。このため、第1実施例は、弁体13の姿勢を安定させたまま正対方向に移動させ、弁体13を安定して作用させて、飲料注出路6からの飲料噴出を簡単かつ確実に防止することができる。
【0047】
また、第1実施例は、飲料注水路6からの飲料噴出の虞がない通常時、弾性部材15が弁体13を開弁位置に支える負担が軽く、弾性部材15に柔らかいものを使用し、異常時、弾性部材15が確実に負けるように設定することができる。
【0048】
また、操作弁7が開弁している場合、自動弁8の開閉状態によらず、空気路9から飲料収容室3を減圧することができる。このことより、異常時に空気路9から飲料が噴出することはなく、飲料収容室3の内圧が空気路9からゆっくりと外部へ逃げる。このため、第1実施例は、自動弁8が自然と開弁するまでに時間を要し、飲料容器を起こして安全な姿勢に直すための時間的な余裕(例えば20秒〜30秒程度)を確保することができる。飲料容器を起こすと、飲料収容室3の空気が上層となり、空気路9から徐々に抜けて隙間g2の内圧が徐々に大気圧に近づき、やがて負けていた弾性部材15の弾性反発力が優勢となり、これにより、弁体13が自然と開弁位置に復帰させられる。
【0049】
第2実施例を
図9、
図10に基づいて説明する。以下、第1実施例との相違点を述べるに留める。第2実施例は、図に示すように、下カバー41を中栓本体42に対して水平方向にスライドさせて着脱自在に取り付け可能としたものである。第2実施例は、自動弁のメンテナンス性に優れる。
【0050】
なお、この発明の技術的範囲は、上述の各実施形態や各実施例に限定されず、特許請求の範囲の記載に基づく技術的思想の範囲内での全ての変更を含むものである。