特許第6076903号(P6076903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6076903印刷可能な化合物半導体デバイスをリリースするための材料及びプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076903
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】印刷可能な化合物半導体デバイスをリリースするための材料及びプロセス
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20170130BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20170130BHJP
   H01L 31/0256 20060101ALI20170130BHJP
   H01L 31/18 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   H01L21/306 N
   H01L21/20
   H01L21/306 C
   H01L31/04 320
   H01L31/04 400
【請求項の数】43
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-523333(P2013-523333)
(86)(22)【出願日】2011年8月4日
(65)【公表番号】特表2013-539211(P2013-539211A)
(43)【公表日】2013年10月17日
(86)【国際出願番号】US2011046575
(87)【国際公開番号】WO2012018997
(87)【国際公開日】20120209
【審査請求日】2014年7月23日
(31)【優先権主張番号】61/371,467
(32)【優先日】2010年8月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509202938
【氏名又は名称】セムプリウス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】メイトル,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】バウアー,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】メナール,エティエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】カーター,ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】グレイ,アレン
(72)【発明者】
【氏名】ボナフェデ,サルヴァトーレ
【審査官】 溝本 安展
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−108943(JP,A)
【文献】 特開2005−259912(JP,A)
【文献】 特開2006−108441(JP,A)
【文献】 特表2010−504649(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/104561(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/20
H01L 31/0256
H01L 31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写可能な半導体デバイスを製造する方法であって、
基板上にインジウム・アルミニウム・リン化物を含むリリース層を設けるステップと、
前記リリース層上に支持層を設けるステップであって、前記リリース層が前記支持層及び前記基板に対してエッチング選択性を有する支持層を設けるステップと、
前記支持層上に少なくとも1つのデバイス層を設けるステップと、
前記支持層及び前記基板を実質的にエッチングすることなく、塩酸及びエタノールを含むエッチング液を用いて、前記リリース層を選択的に横方向エッチングするステップと、
を含み、
前記エッチング液は、前記基板及び/又は前記支持層上に自己組織化した単一層を形成するように構成された化合物をさらに含む、方法。
【請求項2】
前記基板及び/又は前記支持層がヒ化物ベースの材料を含み、かつ前記リリース層が前記支持層を前記基板に接触及び結合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リリース層、前記支持層、及び前記少なくとも1つのデバイス層を設けるステップが、
ヒ化物ベースの材料を含む前記基板上にインジウム・アルミニウム・リン化物を含む前記リリース層をエピタキシャル成長させるステップと、
前記リリース層上にヒ化物ベースの材料を含む前記支持層をエピタキシャル成長させるステップと、
前記支持層上に前記少なくとも1つのデバイス層をエピタキシャル成長させるステップと、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記支持層が前記デバイス層、前記リリース層、及び/又は前記基板に対して圧縮歪みを受ける状態にある、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記リリース層と前記基板との間の格子ミスマッチが、500ppm未満である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記基板及び/又は前記支持層はグループIII族のヒ化物材料及び/又はグループIII−V族のヒ化物材料を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒ化物ベースの材料が、インジウム・ガリウム・ヒ化物、ヒ化ガリウム、インジウム・ガリウム窒化物ヒ化物、及び/又はインジウム・ガリウム窒化物ヒ化物アンチモン化物を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記リリース層の厚さが0.02マイクロメータ(μm)から1μmであり、前記選択エッチングが時間当たり0.1ミリメータ(mm)よりも早い速度で前記リリース層を十分にエッチングする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのデバイス層が、前記少なくとも1つのデバイス層の厚さよりも100倍を超える長さの距離まで、前記支持層上を横方向に延びる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
半導体デバイスを部分的又は全体的に前記少なくとも1つのデバイス層上に形成するステップ、及び前記リリース層の一部を、前記リリース層を選択的にエッチングする前に微細加工技術によって露出するステップをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記リリース層を選択的にエッチングする前に、封入するためのカプセル層を前記少なくとも1つのデバイス層上に形成するステップをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記封入するためのカプセル層がフォトレジスト材料を含み、前記リリース層を選択的にエッチングする前に、前記フォトレジスト材料を焼成するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
固定構造体及び/又は係留構造体を前記封入するためのカプセル層内に形成するステップをさらに含み、前記固定構造体及び/又は係留構造体を、前記選択エッチング中に及びその後で前記半導体デバイスの空間的な配向を維持するように構成する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのデバイス層が、光電池のアクティブ層を含み、前記封入するためのカプセル層を形成する前に、
インジウム・アルミニウム・リン化物形ウィンドウ層を前記アクティブ層上に設けるステップと、
誘導体反射防止コーティングを前記ウィンドウ層上に設けるステップと、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのデバイス層が、インジウム・アルミニウム・リン化物及び/又はアルミニウム・ガリウム・リン化物を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記支持層は、シート抵抗が平方当たり50オーム未満のグループIII族のヒ化物ベースの横方向伝導層である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのデバイス層が転写可能形光電池、発光ダイオード、無線周波数デバイス、又は無線デバイスのアクティブ層を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
化合物半導体デバイスの構造体であって、
基板と、
前記基板上のインジウム・アルミニウム・リン化物を含むリリース層と、
前記リリース層上の支持層であって、前記基板及び前記支持層は、それぞれ、前記リリース層がそれらに対してエッチング選択性を有するような材料を含む、支持層と、
前記支持層上の光電池のアクティブ層と、
前記アクティブ層を囲む封入するためのカプセル層であって、前記封入するためのカプセル層は、前記封入するためのカプセル層の中に固定構造体及び係留構造体を含み、前記固定構造体及び前記係留構造体は、前記リリース層の選択エッチング中及びその後でも前記光電池の空間的な配向を維持するように前記光電池を前記基板に取り付ける、封入するためのカプセル層と、
を含む、構造体。
【請求項19】
前記基板及び/又は前記支持層がヒ化物ベースの材料を含み、かつ前記リリース層が前記支持層を前記基板に接触及び結合させる、請求項18に記載の構造体。
【請求項20】
前記基板及び/又は前記支持層が、グループIII族のヒ化物材料及び/又はグループIII−V族のヒ化物材料を含む、請求項19に記載の構造体。
【請求項21】
前記リリース層が、前記支持層及び前記基板に対して、塩酸を含むエッチング液に対するエッチング選択性を有する、請求項18に記載の構造体。
【請求項22】
前記リリース層の厚さが、0.02マイクロメータ(μm)〜1μmである、請求項18に記載の構造体。
【請求項23】
前記アクティブ層が、前記アクティブ層の厚さよりも少なくとも50倍を超える長さの距離まで、前記支持層上を横方向に延びる、請求項18に記載の構造体。
【請求項24】
前記アクティブ層が、インジウム・ガリウム・リン化物及び/又はアルミニウム・ガリウム・ヒ化物を含む、請求項18に記載の構造体。
【請求項25】
前記リリース層、前記支持層、及び前記アクティブ層の少なくとも1つがエピタキシャル層を含む、請求項18に記載の構造体。
【請求項26】
前記アクティブ層上にインジウム・アルミニウム・リン化物のウィンドウ層と、
前記ウィンドウ層上に誘導体反射防止コーティングと、
をさらに含む、請求項18に記載の構造体。
【請求項27】
前記基板が目標基板を含み、前記リリース層が前記支持層と前記基板との間にインジウム・アルミニウム・リン化物の残留物を含む、請求項18に記載の構造体。
【請求項28】
印刷可能形デバイスを形成するための化合物半導体材料のエピタキシャル・スタックであって、
ヒ化ガリウム基板と、
インジウム・アルミニウム・リン化物のリリース層と、
前記インジウム・アルミニウム・リン化物のリリース層に隣接するヒ化物ベース層と、及び
前記ヒ化物ベース層上の1つ又は複数のデバイス層と、
前記1つ又は複数のデバイス層上の封入するためのカプセル層であって、前記封入するためのカプセル層は、前記封入するためのカプセル層の中に固定構造体及び係留構造体を含む焼成されたフォトレジスト層を含み、前記固定構造体及び前記係留構造体は、前記リリース層の選択エッチング中及びその後でも前記デバイス層の空間的な配向を維持するように、前記1つ又は複数のデバイス層を前記ヒ化ガリウム基板に取り付ける、封入するためのカプセル層と、
を含むスタック。
【請求項29】
前記リリース層の厚さが、20ナノメータと1マイクロメータとの間である、請求項28に記載のスタック。
【請求項30】
前記リリース層に隣接するヒ化ベース層が、インジウム・ガリウム・ヒ化物、ヒ化ガリウム、インジウム・ガリウム窒化物ヒ化物、及び/又はインジウム・ガリウム窒化物ヒ化物アンチモン化物を含む、請求項28に記載のスタック。
【請求項31】
前記リリース層に隣接するヒ化ベース層が、前記デバイス、前記リリース層、及び/又は前記基板の部分に対して圧縮して設けられている、請求項28に記載のスタック。
【請求項32】
前記デバイス層が、光電池、発光ダイオード、レーザ、無線周波数デバイス、又は無線デバイスに対して活物質を形成する、請求項28に記載のスタック。
【請求項33】
前記デバイス層が、インジウム・アルミニウム・リン化物及び/又はアルミニウム・ガリウム・ヒ化物を含む、請求項28に記載のスタック。
【請求項34】
リリース層を介して印刷可能形デバイス層をヒ化ガリウム基板上に設け、該印刷可能形デバイス層をヒ化ガリウム基板からリリースするプロセスであって、
前記デバイス層を前記ヒ化ガリウム基板から分離するために、
塩酸とエタノールとの混合液中でインジウム・アルミニウム・リン化物の前記リリース層を選択的に横方向エッチングするステップを含み、
前記混合液が、前記デバイス層上に自己組織化した単一層を形成する化合物をさらに含む、プロセス。
【請求項35】
前記ヒ化ガリウム基板上で前記リリース層、前記リリース層に隣接するヒ化物ベース層、及びデバイス層をエピタキシャル成長させ、これによって、エピタキシャル・スタックを形成するステップと、
部分的又は全体的に前記エピタキシャル・スタック上にデバイスを形成し、そして微細加工技術によって前記リリース層のいくらかの部分を露出するステップと、次に
前記混合液内で前記リリース層を選択的に横方向エッチングして、これにより、前記部分的又は全体的に形成されたデバイスをリリースするステップと、
をさらに含む、請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
前記リリース層の厚さが、20ナノメータと1マイクロメータとの間である、請求項35に記載のプロセス。
【請求項37】
前記リリース層に隣接するヒ化ベース層は、インジウム・ガリウム・ヒ化物、ヒ化ガリウム、インジウム・ガリウム窒化物ヒ化物、及び/又はインジウム・ガリウム窒化物ヒ化物アンチモン化物を含む、請求項35に記載のプロセス。
【請求項38】
前記リリース層に隣接するヒ化ベース層は、前記デバイス、前記リリース層、及び/又は前記基板の部分に対して圧縮して成長させる、請求項35に記載のプロセス。
【請求項39】
前記デバイス層が、光電池、発光ダイオード、レーザ、又は無線デバイス形成する、請求項35に記載のプロセス。
【請求項40】
前記デバイス層が、インジウム・アルミニウム・リン化物及び/又はアルミニウム・ガリウム・ヒ化物を含む、請求項35に記載のプロセス。
【請求項41】
前記微細加工技術が、部分的又は全体的に形成されたデバイスを塩酸とエタノールとの混合液による化学的攻撃から保護するために、フォトレジスト材料を有するカプセル層を加えるステップをさらに含む、請求項35に記載のプロセス。
【請求項42】
前記微細加工技術が、リリース・プロセスを通して前記部分的又は全体的に形成されたデバイスの空間的な配向を維持するように、固定構造体及び係留構造体を形成するステップをさらに含む、請求項35に記載のプロセス。
【請求項43】
前記微細加工技術が、フォトレジストの中に固定構造体及び係留構造体を形成するステップをさらに含む、請求項41に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権主張]
本願は、2010年8月6日に米国特許商標庁に出願した「Materials and Processes for Releasing Printable Compound Semiconductor Devices」という題名の米国仮特許出願第61/371,467号の優先権を主張する。この特許の開示内容は、参照することによってその全体が本願に組み込まれるものとする。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、化合物半導体デバイスの製造に関し、より詳細には、成長基板からリリースすることができる化合物半導体デバイス及び構造体の製造に関する。
【背景技術】
【0003】
下側の層又は上側の層をエッチングする又は損傷することなく、ウエファーの表面から化学的に層を取り除く微細加工プロセスの中では、選択エッチングが使用される。特に、ウエファー又は他の層から1つ又は複数の層を分離するために、リリース層を使用することができる。例えば、米国特許出願公開第2009/0321881号及び米国特許第4,846,931号は、化合物半導体デバイス及び構造体をヒ化ガリウム(GaAs)基板からリリースすることを説明している。このヒ化ガリウム基板は、リリース層及び剥離剤用のフッ化水素酸系のウェット・エッチングとして高いアルミニウム含有量又は純粋のヒ化アルミニウム(AlAs)を有するヒ化アルミニウム・ガリウム(AlGaAs)層を使用している。
【0004】
アルミニウム含有量が少ないヒ化物の上のアルミニウム含有量が多いヒ化物に対して、フッ化水素酸のエッチング選択性が良好なため、そのようなシステムは一般に成功する。そのようなシステムの幾つかの欠点には、リリース層の安定性が空中では低い可能性があること、及び厚い(20ミクロンより大きい)ポリマー・コーティング又は他のマスクがない場合は、転写可能なデバイスや構造体の上部及び側部をリリース・プロセスの間にフッ化水素酸から保護することが難しい可能性があることが含まれる。また、そのようなシステムは、太陽電池などの化合物半導体デバイスの微細転写印刷とほとんど又は全く互換性がないことがある(例えば、米国特許第7,622,367号で説明されているように、この特許の開示内容は、参照することによって本願にその全体が組み込まれるものとする)。太陽電池は、その表面(特に、上面)に化合物半導体のエピタキシャル層を含み、このエピタキシャル層は、デバイスの表面をリリース・プロセスの間にフッ化水素酸から保護することが難しい又は不可能な場合があるため、かなりのアルミニウムの部分(例えば、太陽電池のウィンドウ層)又は多くの誘導体(例えば、二酸化シリコンの反射防止コーティング)を含んでいる。
【0005】
米国特許第5,641,381号は、リリース層としてインジウム・ガリウム・ヒ化物(InGaAs)を用いてリン化インジウム(InP)基板から、リン化インジウム(InP)のデバイスをリリースすることを説明している。この手法の幾つかの欠点には、インジウム・ガリウム・ヒ化物(InGaAs)のエッチング速度が比較的遅いことが挙げられ、またリン化インジウム(InP)の上のインジウム・ガリウム・ヒ化物(InGaAs)に対する特定の湿式化学エッチングの選択性が、極めて高いアスペクト比のリリース・プロセスに対して不十分である可能性があることである。この場合、リリース可能デバイスの横方向の広がりは、リリース層上のデバイスの層の厚さの50倍以上である。
【0006】
米国特許出願公開第2008/0054269号は、塩酸または他の化学物質を使用して選択的にエッチングすることができる窒化物系化合物半導体の発光体を使用することを記載している。このシステムは、デバイスがリリース用化学物質による攻撃に対して影響を受けにくい場合は、うまく使用される可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
この要約が簡略化された形式で概念の選択を紹介するために提供されていることは理解されたい。この概念を、下記の詳細な説明の中でさらに説明する。この要約は、この開示内容の主要な特徴又は本質的な特徴を識別することを意図するものではなく、また開示内容の範囲を限定することを意図するものでもない。
【0008】
本発明の幾つかの実施形態は、他のリリース・プロセスに敏感な印刷可能形化合物半導体デバイスのリリースを可能にする材料に向けられている。
【0009】
本発明の幾つかの実施形態は、他のリリース・プロセスに敏感な印刷可能形化合物半導体デバイスのリリースを可能にするプロセスに向けられている。
【0010】
本発明の幾つかの実施形態によれば、転写可能形半導体デバイスを製造する方法には、基板上にインジウム・アルミニウム・リン化物を含むリリース層を設けるステップと、このリリース層上に支持層を設けるステップとを含んでいる。支持層及び基板は、リリース層が支持層及び基板に対するエッチング選択性を有するような材料をそれぞれ有している。少なくとも1つのデバイス層を支持層の上に設ける。リリース層は、支持層及び基板を実質的にエッチングすることなく選択的にエッチングされる。
【0011】
幾つかの実施形態では、基板及び/又は支持層は、ヒ化物ベース材料とすることができ、リリース層は、支持層を基板に接触及び連結することができる。
【0012】
幾つかの実施形態では、リリース層、支持層、及び少なくとも1つのデバイス層を提供するステップが、ヒ化物ベース材料を含む基板上にインジウム・アルミニウム・リン化物を含むリリース層をエピタキシャル成長させるステップと、リリース層上にヒ化物ベース材料を含む支持層をエピタキシャル成長させるステップと、及び支持層上に少なくとも1つのデバイス層をエピタキシャル成長させるステップとを含むことができる。
【0013】
幾つかの実施形態では、支持層は、デバイス層、リリース層、及び/又は基板に対して圧縮歪みを受ける状態にあることができる。
【0014】
幾つかの実施形態では、リリース層と基板との間の格子ミスマッチは、約500ppm未満とすることができる。
【0015】
幾つかの実施形態では、基板及び/又は支持層はグループIII族のヒ化物材料及び/又はグループIII−V族のヒ化物材料とすることができる。
【0016】
幾つかの実施形態では、ヒ化物ベース材料は、インジウム・ガリウム・ヒ化物、ヒ化ガリウム、インジウム・ガリウム窒化物ヒ化物、及び/又はインジウム・ガリウム窒化物ヒ化物アンチモン化物とすることができる。
【0017】
幾つかの実施形態では、インジウム・アルミニウム・リン化物のリリース層は、塩酸を含むエッチング液を用いて選択的に横方向エッチングすることができる。
【0018】
幾つかの実施形態では、エッチング液は、さらにエタノールを含むことができる。
【0019】
幾つかの実施形態では、エッチング液は、基板及び/又は支持層上に自己組織化した単一層を形成するように構成された化合物をさらに含むことができる。
【0020】
幾つかの実施形態では、リリース層の厚さを約0.02マイクロメータ(μm)〜約1μmとすることができる。
【0021】
幾つかの実施形態では、選択エッチングは時間当たり約0.1ミリメータ(mm)よりも早い速度でリリース層を十分にエッチングすることができる。
【0022】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つのデバイス層は、少なくとも1つのデバイス層の厚さよりも約100倍を超える長さの距離だけ、支持層上を横方向に延びることができる。
【0023】
幾つかの実施形態では、半導体デバイスを部分的又は全体的に少なくとも1つのデバイス層上に形成して、リリース層の一部を、このリリース層を選択的にエッチングする前に微細加工技術によって露出することができる。
【0024】
幾つかの実施形態では、リリース層を選択的にエッチングする前に、カプセル化層を少なくとも1つのデバイス層上に形成することができる。
【0025】
幾つかの実施形態では、カプセル化層はフォトレジスト材料とすることができ、リリース層を選択的にエッチングする前に、このフォトレジスト材料を焼成することができる。
【0026】
幾つかの実施形態では、固定構造体及び/又は係留構造体をカプセル化層内に形成することができる。幾つかの実施形態では、この固定構造体及び/又は係留構造体を支持層内に形成することができる。この固定構造体及び/又は係留構造体は、選択エッチング中に半導体デバイスの空間的な配向を維持するように構成することができる。
【0027】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つのデバイス層は、光電池のアクティブ層とすることができる。カプセル化層を形成する前に、インジウム・アルミニウム・リン化物形ウィンドウ層をアクティブ層上に設けることができ、誘導体反射防止コーティングをこのウィンドウ層上に設けることができる。
【0028】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つのデバイス層は、インジウム・アルミニウム・リン化物及び/又はアルミニウム・ガリウム・リン化物とすることができる。
【0029】
幾つかの実施形態では、支持層は、シート抵抗が平方当たり約50オーム未満のグループIII族のヒ化物ベースの横方向伝導層とすることができる。
【0030】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つのデバイス層は転写可能形光電池、発光ダイオード、無線周波数デバイス、又は無線デバイスのアクティブ層とすることができる。
【0031】
本発明のさらに別の実施形態によれば、転写可能形半導体デバイスは、支持層及びこの支持層上に少なくとも1つの半導体デバイス層を備えている。少なくとも1つのデバイス層の反対側の支持層の表面は、その上にインジウム・アルミニウム・リン化物ベースのリリース層の一部を含んでいる。
【0032】
本発明のさらに別の実施形態によれば、化合物半導体デバイスの構造体は、基板、この基板上にインジウム・アルミニウム・リン化物を含むリリース層、このリリース層上の支持層、及びこの支持層上の少なくとも1つの転写可能形半導体デバイス層を備えている。基板及び支持層は、それぞれ、リリース層がそれらに対してエッチング選択性を有するような材料を含んでいる。
【0033】
本発明の別の実施形態によれば、印刷可能形デバイスを形成するための化合物半導体材料のエピタキシャル・スタックは、ヒ化ガリウム基板、この基板上のインジウム・アルミニウム・リン化物のリリース層、このインジウム・アルミニウム・リン化物のリリース層に隣接するヒ化物ベース層、及びこのヒ化物ベース層上のデバイス層を備えている。
【0034】
幾つかの実施形態では、リリース層の厚さは、約20ナノメータと約1ミクロンとの間である。
【0035】
幾つかの実施形態では、リリース層に隣接するヒ化ベース層は、インジウム・ガリウム・ヒ化物、ヒ化ガリウム、インジウム・ガリウム窒化物ヒ化物、及び/又はインジウム・ガリウム窒化物ヒ化物アンチモン化物とすることができる。
【0036】
幾つかの実施形態では、リリース層に隣接するヒ化ベース層は、デバイス、リリース層、及び/又は基板の部分に対して圧縮して成長させることができる。
【0037】
幾つかの実施形態では、デバイス層は、光電池、発光ダイオード、レーザ、無線周波数デバイス、又は無線デバイスに対して活物質を形成することができる。
【0038】
幾つかの実施形態では、デバイス層は、インジウム・アルミニウム・リン化物及び/又はアルミニウム・ガリウム・ヒ化物を含むことができる。
【0039】
本発明のさらに別の実施形態によれば、印刷可能形デバイスをヒ化ガリウム基板からリリースするプロセスには、塩酸とエタノールとの混合液中でインジウム・アルミニウム・リン化物のリリース層を選択的に横方向エッチングするステップが含まれる。この混合液は、化合物半導体上に自己組織化した単一層を形成する化合物をさらに含むことができる。
【0040】
本発明のさらに別の実施形態によれば、リリース可能で印刷可能形デバイスを作成する方法には、ヒ化ガリウム基板上でインジウム・アルミニウム・リン化物のリリース層、このリリース層に隣接するヒ化物ベース層、及びデバイス層をエピタキシャル成長させるステップが含まれ、これにより、エピタキシャル・スタックを形成する;部分的又は全体的にエピタキシャル・スタック上に機能デバイスを形成し、そして微細加工技術によってリリース層のいくらかの部分を露出する;及び塩酸とエタノールとの混合液内でリリース層を選択的に横方向エッチングして、これにより、このデバイスをリリースする。
【0041】
幾つかの実施形態では、この微細加工技術は、部分的又は全体的に形成されたデバイスを塩酸とエタノールとの混合液による化学的攻撃から保護するために、フォトレジストを加えて焼成するステップをさらに含むことができる。
【0042】
幾つかの実施形態では、この微細加工技術は、リリース・プロセスを通して印刷可能形デバイスの空間的な配向を維持するように、固定構造体及び係留構造体を形成するステップをさらに含むことができる。
【0043】
幾つかの実施形態に基づいた他の方法及び/又はデバイスは、下記の図面及び詳細な説明を精査すれば当業者には明らかになるであろう。上記の実施形態の幾つかの及び全ての組合せに加えて、全てのそのような付加的な実施形態は、この説明の中に含まれる、本発明の範囲の中にある、及び添付の請求項によって保護されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1A図1Cは、本発明の幾つかの実施形態に基づいて、印刷可能形化合物半導体デバイスを製造するための構造及び方法を例示する断面図である。
図2図2A図2Cは、カプセル化層を含む本発明の別の実施形態に基づいて、印刷可能形化合物半導体デバイスを製造するための構造及び方法を例示する断面図である。
図3】本発明の幾つかの実施形態に基づいて、印刷可能形化合物半導体デバイスを製造するための方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の実施形態が示されている添付した図面を参照して、本発明をここで説明する。しかしながら、本発明をここで示された実施形態に限定されると解釈してはならない。それどころか、これらの実施形態は、この開示内容が十分かつ完全であって、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるために提供するものである。図面では、明確にするために、層の厚さや領域は誇張されている。全体を通して、同様の番号は、同様の要素を指すものとする。
【0046】
層、領域又は基板などの構成部品が別の構成部品の「上に」ある又は他の構成部品の「上まで」延びると呼ばれる場合、その構成部品は別の構成部品の直接上にあるか若しくは直接上までに延びることがある、又は介在する構成部品が存在することもあることは理解されよう。その一方で、ある構成部品が別の構成部品の「直接上に」ある又は「直接上まで」延びると呼ばれる場合は、介在する構成部品は存在しない。構成部品が別の構成部品と「接触する」又は「接続する」又は「連結する」と呼ばれる場合、別の構成部品に直接接触する若しくは接続する若しくは連結することがあり、又は介在する構成部品が存在することがあることも理解されよう。対照的に、構成部品が別の構成部品と「直接接触する」又は「直接接続する」又は「直接連結する」と呼ばれる場合は、介在する構成部品は存在しない。
【0047】
第1、第2といった用語は本願では種々の構成部品を説明するために使用されることがあるが、これらの構成部品をこれらの用語で限定すべきではないことも理解されよう。これらの用語は、1つの構成部品を他の構成部品から区別する場合のみ使用される。例えば、第1の構成部品を、本発明の範囲から逸脱することなく、第2の構成部品と名付けることができ、また同様に、第2の構成部品を第1の構成部品と名付けることができる。
【0048】
さらに、「下に」又は「下方の」又は「一番下の」及び「〜の上に」又は「上方の」又は「一番上の」といった相対語は、図面で例示されているように、本願では1つの構成部品の他の構成部品に対する関係を説明するために使用することができる。相対語は、図面に示された向きに加えて、デバイスの異なる向きも含むことを意図していることは理解されよう。例えば、図面の1つの中のデバイスがひっくり返される場合、他の構成部品の「下方の」側にあると説明された構成部品は、この場合、他の構成部品の「上方の」側に向けられることになる。このため、この典型的な用語「下方の」は、図面の特定の向きに応じて、「下方の」及び「上方の」という両方の向きを含むことができる。同様に、図面の1つの中のデバイスがひっくり返される場合、他の構成部品の「下方に」又は「下に」にあると説明された構成部品は、この場合、他の構成部品の「上に」向けられることになる。このため、この典型的な用語「下方に」又は「下に」は、「上に」及び「下方に」という両方の向きを含むことができる。
【0049】
本願の発明の説明の中で使用される専門用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものであり、本発明を限定することは意図していない。本発明の説明及び添付した特許請求の範囲の中で使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、特に文脈が明確に示されない限り、複数形も含むことが意図される。「及び/又は」という用語は、本願で使用する場合、1つ又は複数の列挙された関連項目の任意の及び全ての可能な組合せを指す、また、この組合せを含むことも理解されよう。「構成する」及び/又は「構成している」という用語は、この明細書で使用される場合は、提示された特徴、完全体、ステップ、操作、構成部品、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ又は複数の他の特徴、完全体、ステップ、操作、構成部品、構成要素、及び/又はそのグループの存在又は追加を排除しないことはさらに理解されよう。
【0050】
本発明の実施形態は、本願では、本発明の理想的な実施形態(及び中間構造体)の概略図である断面図を参照して説明される。このため、例えば、製造技術及び/又は許容差を受けて、図の形状からの変動が予想される。従って、本発明の実施形態は、本願で例示された領域の特定の形状に限定されると解釈するべきできなく、例えば、製造する場合に結果として生じた形状の変形例を含むものとする。言い換えると、図面に示された領域は現実には概略的であり、その形状はデバイスの領域の実際の形状を示すことを意図するものではなく、また本発明の範囲を限定することを意図するものでもない。
【0051】
別段の規定がない限り、技術的用語及び科学的用語を含む、本発明の実施形態を開示する場合に使用する全ての用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解するものと同じ意味を持っており、本発明を説明する時点で知られている特定の定義に必ずしも限定されるものではない。従って、これらの用語は、そのような時間の後に作られた等価の用語を含むことができる。一般的に使用する辞書の中で定義されるような用語は、本明細書の中でまた該当する技術の文脈の中でそれらの意味と一貫性がある意味を有するものと解釈されるべきであり、また特に本願で明白にそのように定義されない限り、理想的な又は過度に形式的な感覚で解釈されないことはさらに理解されよう。本願に記載されている全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、その全体が参考として援用される。
【0052】
「半導体部品」、「半導体素子」、及び「半導体構造体」という表現は、本願の中で使用される場合、同義語として使用され、広く半導体材料、構造体、層、デバイス、及び/又はデバイスの構成部品を指している。半導体素子には、高品質の単結晶及び多結晶の半導体、高温処理により製造された半導体材料、ドープされた半導体材料、有機及び無機の半導体及び複合半導体材料、及び誘電体の層又は材料及び/又は導電層又は材料などの1つ又は複数の付加的な半導体部品及び/又は非半導体部品を有する構造体が含まれる。半導体素子には、トランジスタ、太陽電池を含む光電池、ダイオード、発光ダイオード、レーザー、p−n接合、フォトダイオード、集積回路、及びセンサを含む半導体デバイス及びデバイス構成部品が含まれるが、これらに限定されることはない。さらに、半導体素子は、終端機能半導体を形成する部位又は部分も意味する。
【0053】
「印刷」は、第1の面から第2の面に、このような半導体の部品や素子などの機能を転写するプロセスのことを指す。幾つかの実施形態では、第1の面はドナー面であり第2の面は受容面である、そして転写はエラストマ・スタンプなどの中間面によって仲介される。これにより、素子を対象基板上の受容面に放出して、半導体素子を転写することができる。幾つかの実施形態では、印刷は印刷可能な半導体の乾式転写印刷であり、この方式では、固体とスタンプ面との間の接着力は転写速度に影響される。転写印刷方法は、例えば、2005年6月2日に出願された米国特許出願第11/145,574号の中でさらに説明されており、その開示内容は参照することによって本願に組み込まれるものとする。
【0054】
本発明の幾つかの実施形態では、印刷可能又は転写可能な化合物半導体デバイスをリリースするための方法と互換性があるリリース層が提供される。このリリース層は、半導体デバイス層及び/又はこの半導体デバイス層の上に設けられた(ヒ化物ベースの支持層などの)支持層のものに対して高いエッチング選択性を有しており、また幾つかの実施形態では、デバイス層及び/又は支持層と同じ基板上に成長させることができる。特定の実施形態では、このリリース層は、インジウム・アルミニウム・リン化物(InAlP)を含み、インジウム・ガリウム・ヒ化物、ヒ化ガリウム、インジウム・ガリウム窒化物ヒ化物、インジウム・ガリウム窒化物ヒ化物アンチモン化物、又はその変形体などのヒ化物ベースのグループIII−V族材料の層間に配置することができる。本発明の幾つかの態様によれば、InAlPは、ヒ化ガリウム基板上でエピタキシャル成長させることができるという点で、転写可能な半導体デバイスを製造する場合にかなり実際的な利点を提供する。
【0055】
本発明の実施形態は、塩酸(HCl)とエタノールの混合液を含むエッチング液を用いて、InAlP層に隣接したヒ化物ベースの材料をほとんどエッチングすることなく、InAlPを含むリリース層を選択的に横方向エッチングするための湿式化学リリース・プロセスも提供する。リリース層をエッチングするために塩酸ベースのエッチング液を用いることは、従来のフッ化水素酸(HF)ベースの湿式エッチングに対して幾つかの利点を提供することができる。例えば、HFは高アルミニウム含有ヒ化物ベースのリリース層に対して良好なエッチング選択性を提供することができるが、HFベースのエッチング液からデバイスのアクティブ層を保護することが難しい場合がある。HClは対照的に、InAlPに良好なエッチング選択性を提供し、アクティブ・デバイス層をより容易に塩酸系エッチング液に対してカプセル化することができる。
【0056】
本発明の実施形態は、同時に幾つかの利点を提供することができる。例えば、本発明の実施形態によるリリース層は、空気中で十分に安定した状態を保つことができ、一般的な化合物半導体基板に対して格子整合することができる。リリース層はさらに比較的高いエッチング速度を提供して、例えば、時間当たり0.1ミリメートルを超える速度でデバイスをリリースする。さらに、本願で説明するリリース層は、隣接するヒ化物のデバイス層に対するリリース層のエッチング速度において、リリース層に隣接するデバイス層の厚さよりも数百倍又は数千倍も大きい横方向の広がりを持つデバイスをリリースするのに十分な、極めて良好な選択性を提供する。本発明の実施形態によるリリース・プロセスは、デバイス層の容易に利用可能なカプセル化(例えば、フォトレジストを使用すること)と互換性があり、また、このため、これがなければリリース用の化学薬品(例えば、InAlP、AlGaAs)によって容易に攻撃されてしまう材料を含む印刷可能な化合物半導体デバイスと互換性がある。幾つかの実施形態では、リリース・プロセスの中でエタノール又は他の界面活性剤を使用することにより、InAlPの化学エッチング・プロセスの間に発生する気泡の大きさを小さくすることができる。エタノール又は他の適当な界面活性剤を使用しないと、リリース・プロセスが大きな気泡を発生して、印刷可能な及び/又はリリース可能なデバイスを損傷することがある。
【0057】
上記及び他の利点の組合せは、化合物半導体デバイスをリリースするための別のリリース層の材料及び/又はプロセスによっては提供されない可能性がある。従って、本発明の実施形態は、化合物半導体デバイス(光電池、発光ダイオード、レーザー、及び無線周波数デバイス又は無線デバイスなど)の製造を容易にすることができる。この化合物半導体デバイスは、スタンプ又は他の適合する転写部品を用いるマイクロ転写印刷によって、成長基板又は他のドナー基板/ソース基板とは異なる受容基板/コピー先基板上に転写又は印刷することができる。
【0058】
図1A図1Cは、本発明の幾つかの実施形態に基づいて、化合物半導体デバイスの構造及び製造方法を例示している。図1Aに示すように、印刷可能な化合物半導体デバイスの構造体100は、ウエファー又は基板101と、基板101上のリリース層105と、リリース層105上の支持層110と、及び支持層110上の1つ又は複数の印刷可能な又は転写可能なデバイス層115とを備えている。リリース層105は、支持層110を基板101に接触及び接続させる。図1A図1Cの実施形態では、リリース層105はインジウム・アルミニウム・リン化物(InAlP)の層であり、基板101及び支持層110はヒ化物ベースの材料から形成されている。InAlPのリリース層105の厚さは、約0.02ミクロン(又はマイクロメータ(μm))と約1ミクロンとの間である。
【0059】
層105、110及び/又は115は、基板101上でエピタキシャル成長することができる。特に、リン化インジウムのリリース層105は、ヒ化物ベースのソース基板101上でエピタキシャル成長することができる。例えば、ソース基板101がGaAsの場合、InAlPのリリース層105は、GaAs基板101上でエピタキシャル成長し、その基板101と密接に格子整合することができる(例えば、X線回折法により測定した格子不整合は約500ppm未満)。また、ヒ化物ベースの支持層110はリリース層105上でエピタキシャル成長することができ、デバイス層115は支持層110上でエピタキシャル成長することができる。幾つかの実施形態では、支持層110の少なくとも一部は、デバイス層115、リリース層105、及び/又は基板101に対して圧縮歪みを示す。特に、図1Aでは、リリース層105に隣接するヒ化物ベースの支持層110の少なくとも一部が、リリース層105、基板101、及び/又はデバイス層115の部分に対していくらか圧縮した状態で成長する。
【0060】
トランジスタ、光電池、発光ダイオード、及び/又は無線周波数デバイス又は他の無線デバイスなどの半導体デバイスは、部分的に又は全面的に、微細加工技術によって成長基板101からデバイス層115を分離する前に、デバイス層115の中又は上に形成することができる。また、固定構造体及び/又は係留構造体(図示せず)を、支持層110及び/又は他の層の中に形成することができ、またデバイス層115を基板101から分離するための後続の操作中に、半導体デバイスの空間的な配向を維持するように構成することができる。そのような固定構造体及び/又は係留構造体は、例えば、2011年3月22日に出願したPCT出願第PCT/US2011/029365号及びPCT/US2011/029357号、並びに2010年3月26日に出願したPCT/US2010/28844号の中で記述されている。この開示内容は、参照することによって本願に組み込まれるものとする。部分的又は全体的に形成されたデバイスを後続の処理中に化学的攻撃から保護するために、カプセル化構造体(図示せず)をデバイス層115の上にさらに設けることができる。
【0061】
さらに詳細には、図1Bに示すように、支持層110、デバイス層115、及び/又は基板101をほとんどエッチングすることなく、リリース層105を選択的にエッチングすることができる。このように、基板101及び支持層110は、それぞれ、リリース層105のエッチングに対するエッチング選択性を有する材料を含んでいる。特に、図1Bは、デバイス層115の中又は上に形成された印刷可能デバイスを、溶液120の中でInAlPのリリース層105を選択的に横方向にエッチングすることによって、ヒ化物ベースの基板101からリリースするプロセスを例示している。この溶液120は、ヒ化物ベースの支持層110及びその上のデバイス層115を基板101から分離するための塩酸を含んでいる。幾つかの実施形態では、基板101及び/又は支持層110は、グループIII族のヒ化物材料(ヒ化ガリウム(GaAs)及びインジウム・ガリウム・ヒ化物(InGaAs)など)及び/又はグループIII−V族のヒ化物材料(インジウム・ガリウム窒化物ヒ化物(InGaNAs)及びインジウム・ガリウム窒化物ヒ化物アンチモン化物(InGaNAsSb)など)を含むことができる。幾つかの実施形態では、(例えば、上記のカプセル化層が使用され場合)、デバイス層115は、インジウム・アルミニウム・リン化物(InAlP)、アルミニウム・ガリウム・ヒ化物(AlGaAs)、及び/又はそうでなければリリース層105と一緒にエッチングされる可能性がある他の材料から形成することができる。
【0062】
エッチング液120は、幾つかの実施形態では、エタノールを含むこともできる。さらに、本願で説明するリリース処理及び/又はエッチング液120は、リリース処理の間に露出した構造体100の表面を滑らかにするために、及び/又はエッチング液120の表面張力を変化させるために、化合物半導体の表面に自己組織化した単一層を形成するように構成される化合物(例えば、1−ヘキサデカンチオール)をさらに含むことができる。
【0063】
図1Bに例示したリリース処理は、支持層110を基板101から時間当たり約0.1ミリメータ(mm)を超える比較的早いエッチング速度で分離するのに十分である。本願で説明するInAlPのリリース層105は、ヒ化物ベースの層101及び110に対して極めて良好な選択性も提供する。これにより、デバイス層115の厚さよりも少なくとも100倍まで横方向に延長するデバイス層115のリリースが可能にされる。このように、本発明の実施形態により、上にデバイス層115を含むヒ化物ベースの支持層110をヒ化物ベースの基板101から分離するために、塩酸を含むエッチング液120を用いて、インジウム・アルミニウム・リン化物のリリース層105を選択的に横方向エッチングすることが可能にされる。
【0064】
内部に半導体デバイスを含むデバイス層115は、分離されると、例えば、スタンプ・ベースの技術及び/又は他のマイクロ転写印刷技術を用いて、異なる対象基板又はコピー先基板に転写することができる。図1Cは、本願で説明した実施形態に基づいてリリース層105をエッチングした後の、2つの転写可能なデバイス又はチップレット100’及び100”を例示している。図1Cに示すように、転写可能デバイス100’及び100”は、ブレイク可能なマイクロブリッジ又は係留体145によって支持層110の部分140に連結しており、この支持層110の部分140は、図1Bで示した選択的なエッチング処理の後で残留しているリリース層105の部分によって、基板101に結合した状態で残っている。また、デバイス層115の反対側の支持層110の表面に、少なくともいくらかの残りの部分すなわち残留物又はわずかなInAlPのリリース層105が上に残ることがある(図示せず)。例えば、リリース・デバイス100’及び100”は、過酸化水素の水溶液で洗浄することができるが、いくらかのリン含有残留物(例えば、リリース層のエッチング反応生成物)が支持層110の表面になおも残る可能性がある。デバイス100’及び100”は、次に、エラストマ・スタンプ(又は他の中間転写部品)をデバイス100’及び100”に押し付けることによって、別の対象基板に転写することができる。ここでスタンプは、係留体145を切断して、デバイス100’及び100”を所望のコピー先基板に転写するに十分な接着強度を有している。
【0065】
図2A図2Cは、本発明のさらに別の実施形態による化合物半導体デバイスの構造及び製造方法を例示している。図2Aに示すように、印刷可能な化合物半導体デバイスの構造体200は、ウエファー又は基板201と、基板201上のリリース層205と、リリース層205上の支持層210と、及び支持層210上の1つ又は複数の印刷可能な又は転写可能なデバイス層215とを備えている。幾つかの実施形態では、リリース層205はInAlPベースの層であり、支持層210は、リリース層205に隣接した、比較的小さいシート抵抗(平方当たり約50オーム未満)を与えるグループIII族のヒ化物ベースの横伝達層である。例えば、支持層210は、GaAs、InGaAs、InGaNAsSb、又は幾つかの実施形態では、InGaNAsから形成することができる。上記で述べたのと同様に、基板201は、グループIII族のヒ化物材料(ヒ化ガリウム(GaAs)及びインジウム・ガリウム・ヒ化物(InGaAs)など)及び/又はグループIII−V族のヒ化物材料(インジウム・ガリウム窒化物ヒ化物(InGaNAs)及びインジウム・ガリウム窒化物ヒ化物アンチモン化物(InGaNAsSb)など)を含むことができる。
【0066】
基板201はソース基板又は成長基板とすることができ、層205、210及び/又は215は、幾つかの実施形態では、基板201上にエピタキシャル成長させることができる。構造体200は、リリース層205に隣接したGaAs、InGaAs、InGaNAsSb、及び/又はInGaNAsの層をさらに含むことができる。この層は、デバイス層215、リリース層205、及び/又は基板201の部分に対していくらか圧縮した状態(例えば、X線回折法により測定した格子不整合は約100ppmから約1000ppmまで)で成長する。
【0067】
図2A図2Cの実施形態では、印刷可能なデバイス層215は、1つ又は複数の光電池又は太陽電池のためのアクティブ層を提供する。部分的に透明なウィンドウ層225を、デバイス層225の上面に設け、誘電体反射防止コーティング230をこのウィンドウ層225の上に設ける。この誘電体反射防止コーティング230は、デバイス層215及び支持層210の側壁をさらにカバーすることができる。この誘電体反射防止コーティング230は、単層コーティング又は多層コーティングとすることができる。図2A図2Cの実施形態では、誘電体反射防止コーティング230は、デバイス層215の中又は上の太陽電池を囲むカプセル化層235によって、さらにカバーされている。例えば、誘電体反射防止コーティング230はフォトレジストによりカバーされ、このフォトレジストは次に焼成されて、カプセル化層235を提供することができる。このカプセル化層235は、図2Bに示すように、次に行われるリリース処理の間にデバイス層を保護する。
【0068】
ここで図2Bを参照すると、リリース層205が、支持層210、デバイス層215、及び/又は基板201をほとんどエッチングすることなく、選択的にエッチングされている。特に、リリース層205は、ヒ化物ベースの基板201に対してエッチング選択性を与える材料(InAlP)から形成されるため、このリリース層205を、支持層210及びその上のデバイス層215を基板201から分離するために塩酸を含む溶液220の中で選択的に横方向エッチングすることができる。カプセル化層235は、リリース層205を選択的にエッチングするために使用される溶液220による攻撃から、デバイス層215、ウィンドウ層225、及び誘電体反射防止コーティング230をさらに保護している。例えば、カプセル化層235によって保護が与えられるため、ウィンドウ層225はInAlP及び/又は、幾つかの実施形態では、そうでなければエッチング溶液220によってエッチングされてしまう他の材料から形成することができる。同様に、デバイス層を、インジウム・アルミニウム・リン化物及び/又はアルミニウム・ガリウム・ヒ化物で形成することができる。エッチング液220は、エタノール及び/又は、幾つかの実施形態では、化合物半導体の表面に自己組織化単一層を形成するように構成された化合物を含むこともできる。このため、太陽電池のアクティブ層215を、太陽電池、ウィンドウ層、及び/又はその上の反射防止コーティングを損傷することなく、ヒ化物ベースの基板201から分離することができる。
【0069】
太陽電池は、次に、スタンプ又は他の適合する転写部品を用いるマイクロ転写印刷によって、別の受容基板/コピー先基板上に転写又は印刷することができる。図2Cは、本願で説明した実施形態に基づいてリリース層205をエッチングした後の、2つの転写可能な太陽電池のデバイス又はチップレット200’及び200”を例示している。図2Cに示すように、転写可能デバイス200’及び200”は、固定具240に結合したブレイク可能な係留体245に取り付けられ、この固定具240はまた、図2Bに示した選択的なエッチング処理の間中またその後でも、基板201に取り付けられている。幾つかの実施形態では、係留体245及び固定具240は、カプセル化層235の中に形成される。デバイス層215の反対側の支持層210は、その上にInAlPのリリース層205の少なくともいくらかの残りの部分すなわち残留物を含むことがある(図示せず)。デバイス200’及び200”は、次に、エラストマ・スタンプ又は他の中間転写部品を、係留体245を切断するのに十分な力でデバイス200’及び200”に押し付けることによって、別の対象基板に転写することができる。ここでスタンプは、デバイス200’及び200”を所望のコピー先基板に転写するに十分な接着強度を有している。
【0070】
図3は、本発明の実施形態に基づいて、印刷可能な化合物半導体デバイスの構造体を製造する方法及びそのような構造体を成長基板又は他のドナー基板からリリースする方法を示すフローチャートである。図3に示すように、ヒ化物ベースの基板がブロック305で提供される。インジウム・アルミニウム・リン化物(InAlP)を含むリリース層、ヒ化物ベースの支持層、及び少なくとも1つの半導体デバイスの層を、それぞれブロック310、315、及び320において、ヒ化物ベースの基板上に順次設ける。エピタキシャル・スタック構造体を画定するために、幾つかの実施形態では、リリース層、支持層、及び/又はデバイス層をヒ化物ベースの基板上にエピタキシャル成長させることができる。トランジスタ、光電池、及び/又は発光ダイオードなどの1つ又は複数の半導体デバイスは、ブロック322において、微細加工技術を用いてデバイス層の中/上に形成することができる。また、ブロック322で微細加工技術を用いて、リリース層の1つ又は複数の部分を露出させることもできる。
【0071】
図3をさらに参照すると、リリース層の材料は、ヒ化物ベースの基板及び/又は支持層の材料にエッチング選択性を与えている。このため、ブロック325において、基板及び/又は支持層を実質的にエッチングすることなく、リリース層が選択的にエッチングされる。特に、塩酸(HCl)を含むエッチング液を用いて、ヒ化物ベースの層を実質的にエッチングせずに、InAlPのリリース層を選択的に横方向にエッチングすることができる。エッチング液は、エタノール又は他の適当な界面活性剤をさらに含んで、InAlPのリリース層をエッチングする間に発生する気泡の大きさを小さくすることができ、これにより、デバイス構造体を損傷する可能性を減らすことができる。幾つかの実施形態では、カプセル化層をデバイス層及び/又はデバイス構造体の他の部分の上に設けて、そうしないとエッチング液の攻撃を受けやすい層を保護することができる。HCl及びエタノールを含むエッチング液は、比較的早い速度(例えば、時間当たり約0.1ミリメータ(mm)よりも大きい速度)でリリース層を選択的にエッチングして、支持層を基板から分離することができる。次に、デバイス層は、例えば、マイクロ転写印刷技術を用いて別の基板に転写することができる。
【0072】
多くの異なる実施形態を、上記の説明及び図面に関連して本願で開示してきた。これらの実施形態の全ての組合せ及びサブコンビネーションを文字通り説明し例示することは、過度の繰り返しになり、また不明瞭になる可能性があることは、理解されよう。このため、図面を含む本明細書は、本願で説明した実施形態の全ての組合せ及びサブコンビネーション、及びそれらを作り、また使用する方法及びプロセスの完全な書面による明細書を構成すると解釈すべきであり、また任意のそのような組合せ及びサブコンビネーションに対する請求項をサポートすべきである。
【0073】
明細書の中で、本発明の実施形態を説明してきた。特定の用語が使用されるが、それらの用語は一般的で説明のためのみに使用されたものであり、限定する目的で使用したのではない。それ故に、上記の実施形態及び全てのその変形例及び修正例は、下記のクレームで定義されるように、本発明の範囲及び精神の中に含まれるものとする。
図1
図2
図3