(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸入、経口、直腸、膣、非経口、局所、経皮、肺、鼻内、口腔、眼、クモ膜下、およびその組み合わせからなる群より選択される投与経路によって投与されるように用いられる、請求項7〜19のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
本発明は、転移性播種は初回治療介入後に起こり、残留腫瘍または再発部から離れつつある癌細胞が原因となりうるとの発見に関する。したがって、転移疾患の出現は、手術を実施する時点ですでに起こっており、したがってもはや防止不可能な事象によって完全に決定されるという概念は、実際の臨床上のシナリオを十分に表してはいない。例えば、原発乳癌に対する局所手術は、癌細胞の増殖に大いに影響をおよぼし、外科的切除によって除去されなかった細胞に影響をおよぼしうる、多くの創傷因子の生成を誘導する。再介入の前に、陽性の切断境界部を有する患者における残留癌細胞は、播種を促進する増殖しやすい間質環境から利益を受けることもある。このプロセスは、何年も前に播種したものと少なくとも同等の、肉眼で見える腫瘍へと発生する可能性を有する、微小転移の二次波を生じるであろう。したがって、癌細胞の骨格への到達を妨害することを目標とした補助的手段の採用は、癌患者を術後の腫瘍播種から保護する。1つの態様において、本発明の範囲内と考えられる癌は、任意の種類の癌または腫瘍である。別の態様において、癌は固形癌または腫瘍である。さらに別の態様において、癌は乳房または前立腺の癌または腫瘍である。
【0025】
定義
本明細書において用いられる以下の用語はそれぞれ、本項においてそれに関連する意味を有する。
【0026】
特に記載がないかぎり、本明細書において用いられるすべての技術および科学用語は一般に、本発明が属する技術分野の当業者によって共通して理解されるものと同じ意味を有する。一般に、本明細書において用いられる命名法ならびに細胞培養、分子遺伝学、有機化学、およびペプチド化学における実験手順は、当技術分野において周知であり、一般に用いられるものである。
【0027】
本明細書において用いられる「a」および「an」なる冠詞は、冠詞の文法上の目的語の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指す。例として、「要素(an element)」は1つの要素または複数の要素を意味する。
【0028】
本明細書において用いられる「停止する」なる用語は、循環中の癌細胞の、器官、例えば、骨などの固定された生体標的への動員および/または固定化を意味する。
【0029】
本明細書において用いられる「対象」は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物でありうる。非ヒト哺乳動物には、例えば、ヒツジ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコおよびマウス哺乳動物などの、家畜およびペットが含まれる。好ましくは、対象はヒトである。
【0030】
本明細書において用いられる「約」なる用語は、当業者には理解されると考えられ、それが用いられる状況である程度変動することになる。量、持続時間などの測定可能な値に言及する際に本明細書において用いられる「約」なる用語は、そのような変動が開示する方法を実施するのに適切であるような、明記された値からの±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、さらにより好ましくは±0.1%の変動を含むことになる。
【0031】
本明細書において用いられる「化合物1」なる用語は、5-(4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-2,2-ジフェニルペンタンニトリルまたはその塩を意味する。
【0032】
本明細書において用いられる「化合物2」なる用語は、N-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)-9H-キサンテン-9-カルボキサミドまたはその塩を意味する。
【0033】
本明細書において用いられる「化合物3」なる用語は、5-(3-(4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)プロピル)ピロロ[1,2-a]キノキサリン-4(5H)-オンまたはその塩を意味する。
【0034】
本明細書において用いられる「化合物4」なる用語は、5-(3-(4-(4-クロロフェニル)ピペリジン-1-イル)プロピル)ピロロ[1,2-a]キノキサリン-4(5H)-オンまたはその塩を意味する。
【0035】
本明細書において用いられる「疾患」とは、動物がホメオスタシスを維持することができず、その疾患が寛解しなければ動物の健康が悪化し続ける、動物の健康状態である。
【0036】
本明細書において用いられる動物の「障害」とは、動物がホメオスタシスを維持することはできるが、動物の健康状態が障害のない状態に比べて好ましくない、健康状態である。未処置のままにしても、障害は必ずしも動物の健康状態のさらなる低下を引き起こすことはない。
【0037】
本明細書において用いられる「処置」または「処置すること」なる用語は、癌、癌の症状または癌を発生する可能性を治癒する、癒す、緩和する、軽減する、変える、治す、寛解させる、改善する、または影響をおよぼすことを目的としての、癌、癌の症状または癌を発生する可能性を有する対象への、治療薬、すなわち本発明の範囲内で有用な化合物(単独または別の薬剤との組み合わせ)の適用もしくは投与、または対象から単離された組織もしくは細胞株への治療薬の適用もしくは投与(例えば、診断またはエクスビボ適用のため)と定義される。そのような処置は、薬理ゲノミクスの分野から得た知識に基づき、特に調整または改変してもよい。
【0038】
本明細書において用いられる「防止する」または「防止」なる用語は、何も起こっていない場合は、障害もしくは疾患の発生がないこと、または障害もしくは疾患の発生がすでにある場合は、それ以上の障害もしくは疾患の発生がないことを意味する。同様に考えられることは、障害または疾患に関連する症状のいくつか、またはすべてを防止する、人の能力である。疾患および障害は本明細書において交換可能に用いられる。
【0039】
本明細書において用いられる「阻害する」および「拮抗する」なる用語は、分子、反応、相互作用、遺伝子、mRNA、および/またはタンパク質の発現、安定性、機能もしくは活性を測定可能な量で低減すること、あるいは完全に防止することを意味する。阻害剤は、例えば、結合して、部分的または完全に、刺激を阻止する、タンパク質、遺伝子、およびmRNAの安定性、発現、機能および活性を低減、防止、活性を遅延、不活化、感受性低下、またはダウンレギュレートする化合物、例えば、アンタゴニストである。
【0040】
本明細書において用いられる、化合物の「有効量」または「治療的有効量」または「薬学的有効量」なる用語は交換可能に用いられて、化合物を投与する対象に有益な効果を提供するのに十分な、化合物の量を意味する。本明細書において用いられる「処置する」なる用語は、患者もしくは対象が経験する症状の頻度を低減すること、または症状を経験する重症度を低減するための作用物質もしくは化合物を投与することを意味する。任意の個々の場合における適切な治療量は、当業者が日常的な実験を用いて決定してもよい。本明細書において用いられる「特異的に結合する」なる用語は、第一の分子(例えば、抗体)が第二の分子(例えば、特定の抗原エピトープ)に優先的に結合するが、必ずしもその第二の分子にのみ結合するものではないことを意味する。
【0041】
本明細書において用いられる「薬学的に許容される」なる用語は、化合物の生物活性または特性を抑制せず、比較的非毒性である、担体または希釈剤などの材料を意味し、すなわち、望ましくない生物作用を引き起こすことなく、または材料が含まれる組成物の任意の成分と有害な様式で相互作用することなく、材料を個体に投与してもよい。
【0042】
本明細書において用いられる「薬学的に許容される塩」なる用語は、無機酸、有機酸、溶媒和物、水和物、またはその包接化合物を含む、薬学的に許容される非毒性酸から調製した、投与した化合物の塩を意味する。
【0043】
本明細書において用いられる「薬学的組成物」なる用語は、本発明の範囲内で有用な少なくとも1つの化合物と、担体、安定化剤、希釈剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、および/または賦形剤などの、他の化学成分との混合物を意味する。薬学的組成物は化合物の生物への投与を促進する。以下を含むが、それらに限定されるわけではない、化合物を投与する複数の技術が当技術分野において存在する:静脈内、経口、エアロゾル、非経口、眼、肺および局所投与。
【0044】
「薬学的に許容される担体」なる用語は、本発明の化合物を対象の内部で、または対象に対して、その所期の機能を実施しうるように、運搬または輸送することに関与する、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または封入材料などの、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される材料、組成物または担体を含む。典型的には、そのような化合物は1つの器官、または体の一部から別の器官、または体の一部に運搬または輸送される。塩または担体はそれぞれ、製剤の他の成分と適合性であり、対象に有害ではないという意味で「許容され」なければならない。薬学的に許容される担体として役立ちうる材料のいくつかの例には以下が含まれる:ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類;トウモロコシデンプンおよびバレイショデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオ脂および坐剤ワックスなどの賦形剤;落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝化剤;アルギン酸;発熱原を含まない水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;希釈剤;造粒剤;滑沢剤;結合剤;崩壊剤;湿潤剤;乳化剤;着色剤;放出剤;コーティング剤;甘味剤;着香剤;香料;保存剤;抗酸化剤;可塑剤;ゲル化剤;増粘剤;硬化剤;凝結剤;懸濁化剤;界面活性剤;保水剤;担体;安定化剤;ならびに薬学的製剤において用いられる他の非毒性適合性物質、またはその任意の組み合わせ。本明細書において用いられる「薬学的に許容される担体」は、化合物の活性と適合性であり、対象にとって生理的に許容される、任意の、およびすべてのコーティング、抗菌および抗真菌剤、ならびに吸収遅延剤なども含む。補助的活性化合物も組成物に組み込まれてもよい。
【0045】
本明細書において用いられる、それ自体または別の置換基の一部としての「アルキル」なる用語は、特に記載がないかぎり、明示された数の炭素原子(すなわち、C
1〜C
10は1から10個の炭素原子を意味する)を有する直鎖または分枝鎖炭化水素を意味し、直鎖、分枝鎖、または環式置換基を含む。例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、およびシクロプロピルメチルが含まれる。最も好ましいのは(C
1〜C
6)アルキル、特にエチル、メチル、イソプロピル、イソブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルおよびシクロプロピルメチルである。
【0046】
本明細書において用いられる、それ自体または別の置換基の一部としての「シクロアルキル」なる用語は、特に記載がないかぎり、明示された数の炭素原子(すなわち、C
3〜C
6は3から6個の炭素原子からなる環基を含む環式基を意味する)を有する環式鎖炭化水素を意味し、直鎖、分枝鎖、または環式置換基を含む。例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロクチルが含まれる。最も好ましいのは(C
3〜C
6)シクロアルキル、特にシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルである。
【0047】
本明細書において用いられる、単独または他の用語との組み合わせで使用される「アルケニル」なる用語は、特に記載がないかぎり、記載された数の炭素原子を有する、安定な一不飽和または二不飽和直鎖または分枝鎖炭化水素基を意味する。例には、ビニル、プロペニル(またはアリル)、クロチル、イソペンテニル、ブタジエニル、1,3-ペンタジエニル、1,4-ペンタジエニル、ならびにより高級同族体および異性体が含まれる。アルケンを表す官能基は-CH
2-CH=CH
2で例示される。
【0048】
本明細書において用いられる、単独または他の用語との組み合わせで使用される「アルキニル」なる用語は、特に記載がないかぎり、記載された数の炭素原子を有する、炭素-炭素三重結合を伴う安定な直鎖または分枝鎖炭化水素基を意味する。例には、エチニルおよびプロピニル、ならびにより高級同族体および異性体が含まれる。
【0049】
本明細書において用いられる「置換アルキル」、「置換シクロアルキル」、「置換アルケニル」または「置換アルキニル」なる用語は、ハロゲン、-OH、アルコキシ、-NH
2、-N(CH
3)
2、-C(=O)OH、トリフルオロメチル、-C≡N、-C(=O)O(C
1〜C
4)アルキル、-C(=O)NH
2、-C(=O)NH(C
1〜C
4)アルキル、-C(=O)N((C
1〜C
4)アルキル)
2、-SO
2NH
2、-C(=NH)NH
2、および-NO
2からなる群より選択される1、2または3つの置換基で置換され、好ましくはハロゲン、-OH、アルコキシ、-NH
2、トリフルオロメチル、-N(CH
3)
2、および-C(=O)OHから選択され、より好ましくはハロゲン、アルコキシおよび-OHから選択される1または2つの置換基を含む、上で定義したアルキル、シクロアルキル、アルケニルまたはアルキニルを意味する。置換アルキルの例には、2,2-ジフルオロプロピル、2-カルボキシシクロペンチルおよび3-クロロプロピルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0050】
本明細書において用いられる、単独または他の用語との組み合わせで使用される「アルコキシ」なる用語は、特に記載がないかぎり、例えば、メトキシ、エトキシ、1-プロポキシ、2-プロポキシ(イソプロポキシ)ならびにより高級同族体および異性体などの、分子の残部に酸素原子を介して連結されている、上で定義した、明示された数の炭素原子を有するアルキル基を意味する。好ましいのは(C
1〜C
3)アルコキシ、特にエトキシおよびメトキシである。
【0051】
本明細書において用いられる、単独または別の置換基の一部としての「ハロ」または「ハロゲン」なる用語は、特に記載がないかぎり、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子、好ましくはフッ素、塩素、または臭素、より好ましくはフッ素または塩素を意味する。
【0052】
本明細書において用いられる、それ自体または別の用語との組み合わせでの「ヘテロアルキル」なる用語は、特に記載がないかぎり、記載された数の炭素原子ならびにO、NおよびSからなる群より選択される1または2個のヘテロ原子からなり、ここで窒素および硫黄原子は任意に酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は任意に四級化されていてもよい、安定な直鎖または分枝鎖アルキル基を意味する。ヘテロ原子は、ヘテロアルキル基の残部とそれが結合している断片との間、ならびにヘテロアルキル基の最も遠位の炭素原子への結合を含む、ヘテロアルキル基の任意の位置に置いてもよい。例には:-O-CH
2-CH
2-CH
3、-CH
2-CH
2-CH
2-OH、-CH
2-CH
2-NH-CH
3、-CH
2-S-CH
2-CH
3、および-CH
2CH
2-S(=O)-CH
3が含まれる。例えば、-CH
2-NH-OCH
3、または-CH
2-CH
2-S-S-CH
3のように、2個までのヘテロ原子が連続していてもよい。
【0053】
本明細書において用いられる、それ自体または別の用語との組み合わせでの「ヘテロアルケニル」なる用語は、特に記載がないかぎり、記載された数の炭素原子ならびにO、NおよびSからなる群より選択される1または2個のヘテロ原子からなり、ここで窒素および硫黄原子は任意に酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は任意に四級化されていてもよい、安定な直鎖または分枝鎖一不飽和または二不飽和炭化水素基を意味する。2個までのヘテロ原子を連続で置いてもよい。例には-CH=CH-O-CH
3、-CH=CH-CH
2-OH、-CH
2-CH=N-OCH
3、-CH=CH-N(CH
3)-CH
3、および-CH
2-CH=CH-CH
2-SHが含まれる。
【0054】
本明細書において用いられる「芳香族」なる用語は、1つまたは複数の多不飽和環を伴い、芳香族特性を有する、すなわち、(4n+2)の非局在化したπ(パイ)電子を有し、ここでnは整数である、炭素環または複素環を意味する。
【0055】
本明細書において用いられる、単独または他の用語との組み合わせで使用される「アリール」なる用語は、特に記載がないかぎり、1つまたは複数の環(典型的には1、2または3つの環)を含む炭素環式芳香族系を意味し、ここでそのような環はビフェニルのように側鎖の様式で一緒に結合していてもよく、またはナフタレンのように縮合していてもよい。例には、フェニル、アントラシル、およびナフチルが含まれる。好ましいのはフェニルおよびナフチルであり、最も好ましいのはフェニルである。
【0056】
本明細書において用いられる「アリール-(C
1〜C
3)アルキル」なる用語は、炭素1から3個のアルキレン鎖がアリール基に結合している官能基、例えば、-CH
2CH
2-フェニルを意味する。好ましいのはアリール-CH
2-およびアリール-CH(CH
3)-である。「置換アリール-(C
1〜C
3)アルキル」なる用語は、アリール基が置換されているアリール-(C
1〜C
3)アルキル官能基を意味する。好ましいのは置換アリール(CH
2)-である。同様に、「ヘテロアリール-(C
1〜C
3)アルキル」なる用語は、炭素1から3個のアルキレン鎖がヘテロアリール基に結合している官能基、例えば、-CH
2CH
2-ピリジルを意味する。好ましいのはヘテロアリール-(CH
2)-である。「置換ヘテロアリール-(C
1〜C
3)アルキル」なる用語は、ヘテロアリール基が置換されているヘテロアリール-(C
1〜C
3)アルキル官能基を意味する。好ましいのは置換ヘテロアリール-(CH
2)-である。
【0057】
本明細書において用いられる、それ自体または別の置換基の一部としての「複素環」または「ヘテロシクリル」または「複素環式」なる用語は、特に記載がないかぎり、炭素原子ならびにN、O、およびSからなる群より選択される少なくとも1個のヘテロ原子からなり、ここで窒素および硫黄ヘテロ原子は任意に酸化されていてもよく、窒素原子は任意に四級化されていてもよい、無置換または置換された、安定な単環式または多環式複素環系を意味する。複素環系は、特に記載がないかぎり、安定な構造を提供する任意のヘテロ原子または炭素原子で結合していてもよい。複素環は本来芳香族または非芳香族であってもよい。1つの態様において、複素環はヘテロアリールである。
【0058】
本明細書において用いられる「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」なる用語は、芳香族特性を有する複素環を意味する。多環式ヘテロアリールは、部分飽和である1つまたは複数の環を含んでいてもよい。例には、テトラヒドロキノリンおよび2,3-ジヒドロベンゾフリルが含まれる。
【0059】
非芳香族複素環の例には、アジリジン、オキシラン、チイラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ピロリジン、ピロリン、イミダゾリン、ピラゾリジン、ジオキソラン、スルホラン、2,3-ジヒドロフラン、2,5-ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、チオファン、ピペリジン、1,2,3,6-テトラヒドロピリジン、1,4-ジヒドロピリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、ピラン、2,3-ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキサン、ホモピペラジン、ホモピペリジン、1,3-ジオキセパン、4,7-ジヒドロ-1,3-ジオキセピンおよびヘキサメチレンオキシドなどの単環式基が含まれる。
【0060】
ヘテロアリール基の例には、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル(特に2-および4-ピリミジニル)、ピリダジニル、チエニル、フリル、ピロリル(特に2-ピロリル)、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル(特に3-および5-ピラゾリル)、イソチアゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,3,4-トリアゾリル、テトラゾリル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリルおよび1,3,4-オキサジアゾリルが含まれる。
【0061】
多環式複素環の例には、インドリル(特に3-、4-、5-、6-および7-インドリル)、インドリニル、キノリル、テトラヒドロキノリル、イソキノリル(特に1-および5-イソキノリル)、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリル、シンノリニル、キノキサリニル(特に2-および5-キノキサリニル)、キナゾリニル、フタラジニル、1,8-ナフチリジニル、1,4-ベンゾジオキサニル、クマリン、ジヒドロクマリン、1,5-ナフチリジニル、ベンゾフリル(特に3-、4-、5-、6-および7-ベンゾフリル)、2,3-ジヒドロベンゾフリル、1,2-ベンズイソキサゾリル、ベンゾチエニル(特に3-、4-、5-、6-、および7-ベンゾチエニル)、ベンゾキサゾリル、ベンゾチアゾリル(特に2-ベンゾチアゾリルおよび5-ベンゾチアゾリル)、プリニル、ベンズイミダゾリル(特に2-ベンズイミダゾリル)、ベンズトリアゾリル、チオキサンチニル、カルバゾリル、カルボリニル、アクリジニル、ピロリジジニル、およびキノリジジニルが含まれる。
【0062】
複素環およびヘテロアリール部分の前述のリストは、代表的であることが意図され、限定を意図するものではない。
【0063】
本明細書において用いられる「置換(されている)」なる用語は、原子または原子群が別の基に結合された置換基として水素に置き換わっていることを意味する。
【0064】
アリール、アリール-(C
1〜C
3)アルキルおよびヘテロシクリル基について、これらの基の環に適用される「置換(されている)」なる用語は、そのような置換が許容される、任意のレベルの置換、すなわち、モノ、ジ、トリ、テトラ、またはペンタ置換を意味する。置換基は独立に選択され、置換は任意の化学的に接近可能な位置でありうる。1つの態様において、置換基の数は1から4の間で変動する。別の態様において、置換基の数は1から3の間で変動する。さらに別の態様において、置換基の数は1から2の間で変動する。さらに別の態様において、置換基はC
1〜
6アルキル、-OH、C
1〜
6アルコキシ、ハロ、アミノ、アセトアミドおよびニトロからなる群より独立に選択される。さらに別の態様において、置換基はC
1〜
6アルキル、C
1〜
6アルコキシ、ハロ、アセトアミド、およびニトロからなる群より独立に選択される。本明細書において用いられるとおり、置換基がアルキルまたはアルコキシ基である場合、炭素鎖は分枝、直鎖または環式であってもよく、直鎖が好ましい。
【0065】
本明細書において用いられる「抗体」なる用語は、抗原上の特定のエピトープに特異的に結合することができる免疫グロブリン分子を意味する。抗体は天然原料由来または組換え原料由来の無傷の免疫グロブリンであり得、無傷の免疫グロブリンの免疫反応性部分でありうる。本発明において有用な抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、細胞内抗体(「intrabody」)、Fv、FabおよびF(ab)
2、ならびに単鎖抗体(scFv)、ラクダ抗体およびヒト化抗体を含む、様々な形で存在しうる(Harlow et al., 1998, Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY;Harlow et al., 1989, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York;Houston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;Bird et al., 1988, Science 242:423-426)。
【0066】
本明細書において用いられる「重鎖抗体」なる用語は、抗原による免疫化とその後の血清の単離、またはそのような抗体をコードする核酸配列のクローニングおよび発現のいずれかによる、ラクダ科の種類由来の免疫グロブリン分子を含む。「重鎖抗体」なる用語は、重鎖病の動物から単離した、または動物からのV
H(可変重鎖免疫グロブリン)遺伝子のクローニングおよび発現によって調製した、免疫グロブリン分子をさらに含む。
【0067】
本明細書において用いられる「合成抗体」なる用語は、例えば、本明細書に記載のバクテリオファージによって発現される抗体などの、組換えDNA技術を用いて生成される抗体を意味する。この用語は、抗体をコードするDNA分子の合成によって生成され、DNA分子が抗体タンパク質、または抗体を規定するアミノ酸配列を発現する、抗体を意味すると解釈されるべきでもあり、ここでDNAまたはアミノ酸配列は当技術分野において利用可能かつ周知の合成DNAまたはアミノ酸配列技術を用いて得られている。
【0068】
本明細書において用いられる「抗原」または「Ag」なる用語は、免疫応答を誘発する分子と定義される。この免疫応答は、抗体産生、もしくは特定の免疫学的に適格な細胞の活性化のいずれか、または両方に関与しうる。当業者であれば、実質的にすべてのタンパク質またはペプチドを含む、任意の高分子は抗原としてはたらきうることを理解するであろう。さらに、抗原は組換えまたはゲノムDNA由来でありうる。当業者であれば、免疫応答を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNAは、したがって、その用語が本明細書において用いられる場合の「抗原」をコードすることを理解するであろう。さらに、当業者であれば、抗原は遺伝子の全長ヌクレオチド配列によってのみコードされる必要はないことを理解するであろう。本発明は、複数の遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用を含むが、それらに限定されるわけではないこと、およびヌクレオチド配列は所望の免疫応答を誘発するために様々な組み合わせで配列されることは、容易に明らかである。さらに、当業者であれば、抗原は「遺伝子」によってコードされる必要はまったくないことを理解するであろう。抗原は合成により生成することもでき、または生物試料由来でありうることは容易に明らかである。そのような生物試料は、組織試料、腫瘍試料、細胞または生物学的液体を含みうるが、それらに限定されるわけではない。
【0069】
用語が本明細書において用いられる場合、「アプリケーター」なる用語は、本発明の化合物および組成物を投与するための、皮下シリンジ、ピペットなどを含むが、それらに限定されるわけではない、任意の装置を意味する。
【0070】
本明細書において用いられる「アプタマー」とは、別の分子に特異的に結合することができる小分子を意味する。アプタマーは典型的にはポリヌクレオチドまたはペプチドに基づく分子のいずれかである。ポリヌクレオチドアプタマーは、通常は、他の有機および無機分子の中でも、ペプチド、タンパク質、薬物、ビタミンなどの特定の標的分子に対して、適切な結合親和性および特異性を有するように設計された、非常に特異的な三次元配座をとる、いくつかの核酸鎖を含む、DNAまたはRNA分子である。そのようなポリヌクレオチドアプタマーは、指数関数的強化によるリガンドの系統的発展の使用を通じて、膨大な数の無作為な配列から選択することができる。ペプチドアプタマーは、典型的には、特定のリガンドに結合するタンパク質骨格に結合している、約10から約20アミノ酸のループである。ペプチドアプタマーは、酵母ツーハイブリッド法などの方法を用いて、コンビナトリアルライブラリから同定し、単離してもよい。
【0071】
目的物に適用する場合の「天然」とは、目的物を天然において見いだしうるという事実を意味する。例えば、天然の原料から単離することができ、人によって意図的に改変されていない生物(ウイルスを含む)中に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然配列である。
【0072】
本明細書において用いられる「内因性」とは、生物、細胞、組織または系由来の、またはその内部で産生される任意の材料を意味する。本明細書において用いられる「外因性」なる用語は、生物、細胞、組織または系から誘導される、またはその外部で産生される任意の材料を意味する。
【0073】
本明細書において用いられる「エピトープ」なる用語は、Bおよび/またはT細胞応答を誘導する、免疫応答を誘発しうる抗原上の小さい化学分子と定義される。抗原は1つまたは複数のエピトープを有しうる。ほとんどの抗原は多くのエピト−プを有し;すなわち、それらは多価である。一般に、エピトープのサイズはおおよそ5つのアミノ酸および/または糖である。当業者であれば、一般には、分子の特定の線形配列ではなく、全体の三次元構造が、抗原特異性の主な基準であり、したがって1つのエピトープを別のエピトープから識別する。
【0074】
「ポリペプチド」とは、ペプチド結合を介して連結された、アミノ酸残基からなるポリマー、関連する天然の構造変異体、およびその合成非天然類縁体を意味する。合成ポリペプチドは、例えば、自動ポリペプチド合成機を用いて合成することができる。「タンパク質」なる用語は、典型的には大きいポリペプチドを意味する。「ペプチド」なる用語は、典型的には短いポリペプチドを意味する。
【0075】
ポリペプチド配列を記載するために、本明細書において通常の表示法を用いる:ポリペプチド配列の左端はアミノ末端であり;ポリペプチド配列の右端はカルボキシル末端である。本明細書において用いられる「ペプチド模倣体」は、親ペプチドの生物学的作用を模倣することができる、非ペプチド構造要素を含む化合物である。ペプチド模倣体はペプチド結合を含んでいても、含んでいなくてもよい。
【0076】
「説明材料」は、その用語が本明細書において用いられる場合、キット中の本発明の組成物および/または化合物の有用性を伝えるために用いうる出版物、記録、図表、または任意の他の表現媒体を含む。キットの説明材料は、例えば、本発明の化合物および/もしくは組成物を含む容器に添付されていてもよく、または化合物および/もしくは組成物を含む容器と一緒に出荷されてもよい。または、説明材料は、受容者が説明材料と化合物とを協同的に用いることを意図して、容器とは別に出荷してもよい。説明材料の送付は、例えば、キットの有用性を伝える出版物もしくは他の表現媒体の物理的送付によるものであってもよく、または、例えば、電子メール、もしくはウェブサイトからのダウンロードなどの、コンピューターによる電子伝達によって達成してもよい。
【0077】
本開示の全体を通して、本発明の様々な局面を範囲形式で提示することができる。範囲形式での記載は便宜および簡潔のためにすぎず、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定と解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、すべての可能な部分範囲ならびにその範囲内の個々の数値を具体的に開示したと考えられるべきである。例えば、1〜6などの範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6などの部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数字、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6を具体的に開示したと考えられるべきである。これは範囲の広さには関係なくあてはまる。
【0078】
組成物
1つの局面において、本発明の方法において有用な組成物は式(I)の化合物、またはその塩を含む、
(I)の式中:
A
1はCH
2またはシクロペンタン-1,3-ジイルであり;
n、はAがCH
2である場合、0、1、2、3、4もしくは5であり、またはnは、Aがシクロペンタン-1,3-ジイルである場合、0、1、もしくは2であり;
A
2およびA
3はいずれもHであるか、またはA
2およびA
3は一緒になってメタンジイル、エタン-1,2-ジイル、もしくはプロパン-1,3-ジイルからなる群より選択される二価の基を形成し;
A
4はCH
2、CH(CF
3)、またはCF
2であり;
R
1はH、CN、CO
2R
6、(C
1〜C
6)CH
2NH
2、または(C
1〜C
6)CH
2NHC(=O)NH(4-ピペリジニル)であり;
R
2およびR
3は独立にアリールもしくは置換アリールであるか;またはR
2およびR
3は一緒になって二価の断片(a)を形成し、ここでXは-S-、-O-、-CH
2S-、-CH
2S(=O)-、-CH
2S(=O)
2-、-SCH
2-、-S(=O)CH
2-、-S(=O)
2CH
2-、-CH
2CH
2-、-CH=CH-、-CH
2O-、-OCH
2-、-N(CH
3)C(=O)-、および-C(=O)N(CH
3)-からなる群より選択され;
;
あるいはR
1およびR
2はいずれもHであり、かつR
3は以下からなる群より選択され:
式中、環Aはフェニル、置換フェニル、ピリジニル、置換ピリジニル、チオフェニル、置換チオフェニル、1H-ピラゾール、および1-(C
1〜C
6)アルキル-1H-ピラゾールからなる群より選択され;
R
4は無いか、または(C
1〜C
6)アルキルであり、ここでR
4が(C
1〜C
6)アルキルである場合、式(I)の化合物は4級アンモニウム塩であり;
R
5は(C
1〜C
6)アルキル、置換(C
1〜C
6)アルキル、フェニル、置換フェニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリールであり;
R
6はH、(C
1〜C
6)アルキル、置換(C
1〜C
6)アルキル、アリールまたは置換アリールであり;かつ、
R
7はOH、CH
2OH、またはC(=O)OR
6である。
【0079】
1つの態様において、本発明の組成物および/または本発明の方法において有用な組成物は式(Ia)の化合物、またはその塩を含む、
(Ia)の式中:
nは0、1、2、3、4または5であり;
R
1はH、CN、CO
2R
6、(C
1〜C
6)CH
2NH
2、または(C
1〜C
6)CH
2NHC(=O)NH(4-ピペリジニル)であり;
R
2およびR
3は独立にアリールもしくは置換アリールであるか;またはR
2およびR
3は一緒になって二価の断片(a)を形成し、ここでXはS、O、CH
2S、CH
2S(=O)、CH
2S(=O)
2、SCH
2、S(=O)CH
2、S(=O)
2CH
2、CH
2CH
2、CH=CH、CH
2O、OCH
2、N(CH
3)C(=O)、およびC(=O)N(CH
3)からなる群より選択され;
;
R
4は原子が無いか、または(C
1〜C
6)アルキルであり、ここでR
4が(C
1〜C
6)アルキルである場合、化合物(I)は4級アンモニウム塩であり;
R
5は(C
1〜C
6)アルキル、置換(C
1〜C
6)アルキル、フェニル、置換フェニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリールであり;
R
6はH、(C
1〜C
6)アルキル、置換(C
1〜C
6)アルキル、アリールまたは置換アリールであり;かつ、
R
7はOH、CH
2OH、またはC(=O)OR
6である。
【0080】
1つの態様において、R
2およびR
3は独立にフェニル、置換フェニル、ナフトリルまたは置換ナフトリルである。別の態様において、nは2である。
【0081】
1つの態様において、R
5はフェニル、2-クロロフェニル、3-クロロフェニル、4-クロロフェニル、2-メトキシフェニル、3-メトキシフェニル、または4-メトキシフェニルである。
【0082】
1つの態様において、式(I)中、R
1およびR
2はHであり、かつR
3は以下からなる群より選択される:
。
【0083】
1つの態様において、式(I)の化合物は以下からなる群より選択される:
5-(3-(4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)プロピル)ピロロ[1,2-a]キノキサリン-4(5H)-オン;
5-(3-(4-(4-クロロフェニル)-ピペリジン-1-イル)プロピル)ピロロ[1,2-a]キノキサリン-4(5H)-オン;その組み合わせ;またはその塩。
【0084】
別の態様において、本発明の方法において有用な組成物は式(II)の化合物、またはその塩を含む、
式中:
Aは式(a)、(b)または(c):
の環であり、
R
1およびR
2は独立にH、C
1〜C
8アルキル、C
2〜C
8アルケニル、C
2〜C
8アルキニルまたはC
3〜C
7飽和もしくは部分不飽和シクロアルキルを表し、
ここでR
1またはR
2において、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびシクロアルキル基は、OH、C
1〜C
6アルコキシ、CH
2OR
4、NR
5R
6、CO
2R
7およびCONR
8R
9からなる群より独立に選択される1つまたは複数の置換基で独立にさらに置換されていてもよく;
R
3はC
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニルまたはC
3〜C
7飽和もしくは部分不飽和シクロアルキルであり;
ここでR
3において:
アルキル、アルケニルおよびアルキニル鎖は独立に、かつ任意に、鎖中にO、NR
10またはS原子を含み;
アルキル、アルケニル、アルキニルおよびシクロアルキル基は、フェニルまたはO、SおよびNからなる群より独立に選択される1から3個のヘテロ原子を含む5もしくは6員ヘテロ芳香環で独立にさらに置換されていてもよく;
フェニルまたはヘテロ芳香族基は、ハロゲン、C
1〜C
4アルキル、OH、C
1〜C
4アルコキシ、CN、CO
2R
11、NR
12R
13、C(=O)NR
14R
15、SO
2R
16、NR
17R
18およびSO
2N
19R
20からなる群より選択される1つまたは複数の置換基で独立にさらに置換されていてもよく;
XはO、SまたはS(O)であり;
R
21はH、CH
2OR
24、CH
2NR
24R
25、CO
2R
24またはC(=O)NR
24R
25であり;
nは0、1または2であり;
R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
24、R
25およびR
26は独立にHまたはC
1〜C
6アルキルである。
【0085】
1つの態様において、式(II)の化合物は式(III)の化合物またはその塩である:
【0086】
1つの態様において、式(II)の化合物は式(IV)の化合物またはその塩である:
【0087】
1つの態様において、式(II)の化合物は式(V)の化合物またはその塩である:
【0088】
1つの態様において、式(II)の化合物は以下からなる群より選択される:
(2R)-2-{[2-アミノ-5-(ベンジルオキシ)[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル]アミノ}-4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-({2-アミノ-5-[(3-メトキシベンジル)オキシ][1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル}アミノ)-4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-{[2-アミノ-5-(2-フェニルエトキシ)[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル]アミノ}-4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-{[2-アミノ-5-(2-フェノキシエトキシ)[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル]アミノ}-4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-[{2-アミノ-5-[(2-メチルベンジル)オキシ][1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル}(メチル)アミノ]-4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-[{2-アミノ-5-[(4-クロロベンジル)オキシ][1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル}(メチル)アミノ]-4-メチルペンタン1-オール;
(2R)-2-[(2-アミノ-5-[(3-クロロベンジル)オキシ][1,3]チアゾロ4,5-d]ピリミジン-7-イル}(メチル)アミノ]-4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-[{2-アミノ-5-[(2-メトキシベンジル)オキシ][1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル}(メチル)アミノ]-4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-[[2-アミノ-5-(ベンジルオキシ)[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル](メチル)アミノ]-4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-[{2-アミノ-5-[(4-ブロモ-2-フルオロベンジル)-(R
s,S
s)-スルフィニル][1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル}(メチル)アミノ]-4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-[(2-アミノ-5-{[2-(4-ブロモフェニル)エチル](R
s,S
s)-スルフィニル}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル)アミノ]4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-[(2-アミノ-5-{[2-(2-ブロモフェニル)エチル](R
s,S
s)-スルフィニル}[1,3]チアゾル[4,5-d]ピリミジン-7-イル)アミノ]4-メチルペンタン-1-オール;
(R)-2-[(2-アミノ-5-{[2-(2-ブロモフェニル)エチル](R
s,S
s)-スルフィニル}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7イル)(メチル)アミノ]-4-メチルペンタン-1-オール;
2-[(2,3-ジフルオロベンジル)オキシ]-4-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)-3-メチルブチル]アミノ}プテリジン-7(8H)-オン;
4-[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)-3-メチルブチル]アミノ}-2-[(3-メトキシベンジル)オキシ]プテリジン-7(8H)-オン;
2-[(2-クロロ-3-メトキシベンジル)オキシ]-4-[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)-3-メチルブチル]アミノ}プテリジン-7(8H)オン;
4-([(1R)-1-(ヒドロキシメチル)-3-メチルブチル]アミノ}-2-(2-フェニルエトキシ)プテリジン-7(8H)-オン;
4-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)-3-メチルブチル]アミノ}-2-(2-フェノキシエトキシ)プテリジン-7(8H)-オン;
2-[(2-クロロベンジル)オキシ]-4-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)-3-メチルブチル]アミノ}プテリジン-7(8H)-オン;
2-[(4-クロロベンジル)オキシ]-4-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)-3-メチルブチル]アミノ}プテリジン-7(8H)-オン;
4-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)-3-メチルブチル]アミノ}-2-[(4-メチルベンジル)オキシ]プテリジン-7(8H)-オン;
4-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)-3-メチルブチル]アミノ}-2-[(3-メチルベンジル)オキシ]プテリジン-7(8H)-オン;
2-[(3-クロロベンジル)オキシ]-4-{[(1S,2S)-2-ヒドロキシル-(ヒドロキシメチル)プロピル]アミノ}-7-オキソ-7,8-ジヒドロプテリジン-6-カルボキサミド;
2-[(2,3-ジフルオロベンジル)-(R
s,S
s)-スルフィニル]-4-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)-3-メチルブチル]アミノ}プテリジン-7(8H)-オン;
5-(ベンジルオキシ)-7-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)-3-メチルブチル]アミノ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)オン;
7-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)-3-メチルブチル]アミノ}-5-[(3-メトキシベンジル)オキシ][1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
7-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)-3-メチルブチル]アミノ}-5-(2-フェニルエトキシ)[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
5-(ベンジルオキシ)-7-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)ブチル]アミノ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
7-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)ブチル]アミノ}-5-{[(1S)-1-フェニルエチル]オキシ)[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
N-(3-{[(7-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)ブチル]アミノ}-2-オキソ-2,3-ジヒドロ[1,3]チアゾロ[4.5-d]ピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}フェニル)-N-メチルメタンスルホンアミド;
N-(3-{[(7-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロピル]アミノ}-2-オキソ-2,3-ジヒドロ[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}フェニル)メタンスルホンアミド;
5-(ベンジルオキシ)-7-{[1-(ヒドロキシメチル)シクロペンチル]アミノ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
7-{[1-(ヒドロキシメチル)シクロペンチル]アミノ}-5-((2-メチルベンジル)オキシ][1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)オン;
7-{[1-(ヒドロキシメチル)シクロペンチル])アミノ}-5-[(3-メチルベンジル)オキシ][1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
5-[(2-クロロベンジル)オキシ]-7-{[1-(ヒドロキシメチル)シクロペンチル)アミノ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
5-[(3-クロロベンジル)オキシ]-7-{[1-(ヒドロキシメチル)シクロペンチル]アミノ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
5-[(4-クロロベンジル)オキシ]-7-{[1-(ヒドロキシメチル)シクロペンチル]アミノ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
7-{[1-(ヒドロキシメチル)シクロペンチル]アミノ)-5-[(2-メトキシベンジル)オキシ][1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
7-{[1-(ヒドロキシメチル)シクロペンチル]アミノ}-5-[(3-メトキシベンジル)オキシ][1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
4-{[(7-{[1-(ヒドロキシメチル)シクロペンチル]アミノ}-2-オキソ-2,3-ジヒドロ[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-5-イル)オキシ]メチル}ベンゾニトリル;
(R,S)-7-[[1-(ヒドロキシメチル)シクロペンチル]アミノ]-5-(1-フェニルエトキシ)-チアゾロ[4.5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
7-{[1-(ヒドロキシメチル)シクロペンチル]アミノ}-5-{[(1S)-1-フェニルエチル]オキシ}[1,3]チアゾロ[4.5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
5-{[2-(3-クロロフェニル)エチル]-(R
s,S
s)-スルフィニル}-7-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)-3-メチルブチル]アミノ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
5-{[2-(2-ブロモフェニル)エチル]-(R
s,S
s)-スルフィニル}-7-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)-3-メチルブチル]アミノ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
5-[(2,3-ジフルオロベンジル)-(Rs,Ss)-スルフィニル]-7-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)-3-メチルブチル]アミノ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
5-[ベンジル-(R
s,S
s)-スルフィニル]-7-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)-3-メチルブチル]アミノ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
5-[(2-クロロベンジル)-(R
s,S
s)-スルフィニル]-7-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)-3-メチルブチル]アミノ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
5-[(4-クロロベンジル)-(R
s,S
s)-スルフィニル]-7-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)-3-メチルブチル]アミノ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
5-[ベンジル-(R
s,S
s)-スルフィニル]-7-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロピル]アミノ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
11-[3-[4-(4-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-ピペリジニル]プロピル]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]チエピン-11-カルボニトリル;
6,11-ジヒドロ-11-[3-(4-ヒドロキシ-4-フェニル-1-ピペリジニル)-プロピル]ジベンゾ[b,e]チエピン-11-カルボニトリル;
11-[3-[4-ヒドロキシ-4-(2-メチルフェニル)-1-ピペリジニル]プロピル]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]チエピン-11-カルボニトリル;
11-[3-[4-ヒドロキシ-4-(3-トリフルオロメチルフェニル)-1-ピペリジニル]プロピル]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]チエピン-11-カルボニトリル;
11-[3-[4-ヒドロキシ-4-(3-トリフルオロメチル-4-クロロフェニル)-1-ピペリジニル]プロピル]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]チエピン-11-カルボニトリル;
11-[3-[4-(4-ブロモフェニル)-4-ヒドロキシ-1-ピペリジニル]プロピル]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]チエピン-11-カルボニトリル;
11-[3-[4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-ピペリジニル]プロピル]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]チエピン-11-カルボニトリル;
6,11-ジヒドロ-11-[3-(4-フェニル-1-ピペリジニル)プロピル]-ジベンゾ[b,e]チエピン-11-カルボニトリル;
1-[3-(11-シアノ-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]チエピン-11-イル)-プロピル]-4-フェニル-4-ピペリジンカルボニトリル;
11-[3-(4-アセチル-4-フェニル-1-ピペリジニル)プロピル]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]チエピン-11-カルボニトリル;
6,11-ジヒドロ-11-[3-[4-ヒドロキシ-4-(フェニルメチル)-1-ピペリジニル]プロピル]ジベンゾ[b,e]チエピン-11-カルボニトリル;
6,11-ジヒドロ-11-[3-[4-(ヒドロキシジフェニルメチル)-1-ピペリジニル]プロピル]ジベンゾ[b,e]チエピン-11-カルボニトリル;
9-[3-[4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-ピペリジニル]プロピル]-9H-キサンテン-9-カルボニトリル;
5-[3-[4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-ピペリジニル]プロピル]-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン-5-カルボニトリル;
5-[3-[4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-ピペリジニル]プロピル]-5H-ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン-5-カルボニトリル;
11-[3-[4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-ピペリジニル]プロピル]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-11-カルボニトリル;
11-[3-[4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-ピペリジニル]プロピル]-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]チエピン-11-カルボニトリル,5-オキシド;
11-[3-[4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-ピペリジニル]プロピル]-6,11-ジヒドロ-5-メチル-6-オキソ-5H-ジベンゾ[b,e]アゼピン-11-カルボニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α,α-ジフェニル-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-α,α-ジフェニル-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-ブロモフェニル)-4-ヒドロキシ-α,α-ジフェニル-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-ヒドロキシ-α,α-4-トリフェニル-1-ピペリジンペンタンニトリル;
1-(4-シアノ-4,4-ジフェニルブチル)-4-フェニル-4-ピペリジンカルボン酸,メチルエステル;
1-(4-シアノ-4,4-ジフェニルブチル)-4-フェニル-4-ピペリジンカルボン酸;
4-(ヒドロキシメチル)-α,α-4-トリフェニル-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-ヒドロキシ-α,α-ジフェニル-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-ヒドロキシ-α,α-ジフェニル-4-(2-チエニル)-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-ヒドロキシ-α,α-ジフェニル-4-(2-ピリジニル)-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-ヒドロキシ-4-(2-ナフタレニル-α,α-ジフェニル-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-ヒドロキシ-r,r-ジフェニル-4-(3-ピリジニル)-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-[1,1'-ビフェニル]-4-イル-4-ヒドロキシ-α,α-ジフェニル-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-ブチル-4-ヒドロキシ-α,α-ジフェニル-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-ヒドロキシ-4-(4-ヨードフェニル)-α,α-ジフェニル-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(3-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α,α-ジフェニル-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(3,5-ジクロロフェニル)-4-ヒドロキシ-r,r-ジフェニル-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-ヒドロキシ-4-(4-メトキシフェニル-α,α-ジフェニル-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-ヒドロキシ-α,α-ジフェニル-4-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-アミノフェニル)-4-ヒドロキシ-α,α-ジフェニル-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-4-ヒドロキシ-α,α-ジフェニル-1-ピペリジンペンタンニトリル;
3-(4-フルオロフェニル)-α-(1,5-シクロヘキサジエン-1-イル)-3-ヒドロキシ-α-フェニル-1-ピペリジンヘキサンニトリル;
3-(4-フルオロフェニル)-α-(1,5-シクロヘキサジエン-1-イル)-3-ヒドロキシ-α-フェニル-1-ピロリジンヘキサンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α,α-ジフェニル-1-ピペリジンペンタンニトリル,N-オキシド;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-[5-シアノ-5-(1,5-シクロヘキサジエン-1-イル)-5-フェニルペンチル]-1-メチル-ピペリジニウム;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-[5-(1,5-シクロヘキサジエン-1-イル)-5-フェニルペンチル]-1-メチル-ピペリジニウム;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-[5-シアノ-5-(2-ナフタレニル)ペンチル]-1-メチル-ピペリジニウム;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α-(2-ナフタレニル)-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α,α-ジフェニル-1-ピペリジンブタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α,α-ジフェニル-1-ピペリジンヘキサンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α,α-ジフェニル-1-ピペリジンヘプタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α-フェニル-1-ピペリジンペンタンニトリル;
α-(3-ブロモ-4-メトキシフェニル)-4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-α-(2-シアノフェニル)-4-ヒドロキシ-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α-(3-ヒドロキシフェニル)-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-α-(2-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-α-(4-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-ピペリジンペンタンニトリル;
α-(2-ブロモフェニル)-4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-ピペリジンペンタンニトリル、
α,4-ビス(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-ピペリジンペンタンニトリル;
α-(2-クロロフェニル)-4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α-[2-(トリフルオロメチル)-フェニル]-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α-[2-(フェニルメトキシ)-フェニル]-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α-[3-(フェニルメトキシ)-フェニル]-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α-[4-(フェニルメトキシ)-フェニル]-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α-(3-フェノキシフェニル)-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α-(2-ヒドロキシフェニル)-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α-(4-ヒドロキシフェニル)-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α-(3-ニトロフェニル)-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α-(4-メトキシフェニル)-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α-(4-エトキシフェニル)-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α-(2-チエニル)-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α-(3-チエニル)-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α-(1-ナフタレニル)-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α-(2-ピリジニル)-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α-(3-ピリジニル)-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α-(1-メチル-1H-ピロル-2-イル)-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-α-シアノ-4-ヒドロキシ-α-フェニル-1-ピペリジンペンタン酸,エチルエステル;
4-(4-クロロフェニル)-α-シアノ-4-ヒドロキシ-α-フェニル-1-ピペリジンペンタン酸,メチルエステル;
4-(4-クロロフェニル)-α-(3-クロロプロピル)-4-ヒドロキシ-α-フェニル-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α-メチル-α-フェニル-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-α-エチル-4-ヒドロキシ-α-フェニル-1-ピペリジンペンタンニトリル;
2-[3-[4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-ピペリジニル]プロピル]-2-フェニルブタンジニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-α-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-α-フェニル-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α-フェニル-α-(1-ピペリジニル)-1-ピペリジンペンタンニトリル;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-α,α-ジフェニル-1-ピペリジンペンタン酸,メチルエステル;
1-(5-アミノ-4,4-ジフェニルペンチル)-4-(4-クロロフェニル)-4-ピペリジノール;
4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-[5-(1,5-シクロヘキサジエン-1-イル)-5-フェニルペンチル]ピペリジン;
およびその薬学的に許容される塩。
【0089】
さらに別の局面において、本発明の方法において有用な組成物は式(VI)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む:
式中:
R
1はCH
3またはCH
3CH
2であり;
R
2はH、2-F、2-Cl、3-F、3-OCH
3、3-CN、3-CF
3、3-CONH
2または3-SO
2CH
3であり;
R
3はHまたはCH
3であり;
R
4はHまたはCH
3であり、かつ
R
5はHであるか;または、R
4がCH
3であるとき、R
5はHもしくはFである。
【0090】
1つの態様において、式(VI)の化合物は以下からなる群より選択される:
(2R)-2-[(2-アミノ-5-{[(1S)-1-(2-フルオロフェニル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル)アミノ]ペンタン-1-オール;
(2R)-2-[(2-アミノ-5-{[(1S)-1-(2-フルオロフェニル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル)アミノ]-4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-({2-アミノ-5-[(1-フェニルエチル)チオ][1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル}アミノ)-4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-[(2-アミノ-5-{[(1R)-1-フェニルエチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル)アミノ]-4-メチルペンタン-1-オール;
3-{(1S)-1-[(2-アミノ-7-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)ブチル]アミノ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-5-イル)チオ]エチル}ベンゾニトリル;
(2R)-2-{[2-アミノ-5-({(1S)-1-[3-(メチルスルホニル)フェニル]エチル}チオ)[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-オル]アミノ}-4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-[(2-アミノ-5-{[(1S)-1-フェニルエチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル)アミノ]ペンタン-1-オール;
3-{(1S)-1-[(2-アミノ-7-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)-3-メチルブチル]アミノ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-5-イル)チオ]エチル}ベンゾニトリル;
(2R)-2-({2-アミノ-5-[(1-フェニルプロピル)チオ][1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル}アミノ)-4-メチルペンタン-1-オール;
3-{1-[(2-アミノ-7-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)-3-メチルブチル]アミノ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-5-イル)チオ]エチル}ベンズアミド;
(2R)-2-{[2-アミノ-5-({1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}チオ)[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル]アミノ}-4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-[{2-アミノ-5-[(1-フェニルエチル)チオ][1,3]チアゾロ[,5-d]ピリミジン-7-イル}(メチル)アミノ]-4-メチルペンタン-1-オール:
(2R)-2-[(2-アミノ-5-{[1-(2-クロロフェニル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル)アミノ]-4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-[(2-アミノ-5-{[1-(3-メトキシフェニル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル)アミノ]-4-111エチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-[(2-アミノ-5-{[(1S)-1-フェニルエチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル)アミノ]-4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-[(2-アミノ-5-{[(1S)-1-フェニルエチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル)アミノ]-4-フルオロ-4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-[(2-アミノ-5-{[(1S)-1-(2-フルオロフェニル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4f5-d]ピリミジン-7-イル)アミノ]-4-フルオロ-4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-[(2-アミノ-5-{[(1S)-1-(3-フルオロフェニル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル)アミノ]-4-メチルペンタン-1-オール;
およびその薬学的に許容される塩。
【0091】
さらに別の局面において、本発明の方法において有用な組成物は式(VII)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む:
式中:
R
1はCH
3またはCH
3CH
2であり;
R
2はHまたはCH
3であり;
R
3はHまたはCH
3であり;
R
4、R
5、R
6およびR
7は独立にH、CH
3またはCH
2CH
3である。
【0092】
1つの態様において、式(VII)の化合物は以下からなる群より選択される:
7-[(R)-1-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-イルアミノ]-5-[1-(ピリジン-2-イル)エチルチオ]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
7-[(R)-1-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-イルアミノ]-5-[1-(2,4-ジメチルピリジン-2-イル)エチルチオ]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
7-[(R)-1-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-イルアミノ]-5-[1-(2-メチルピリジン-2-イル)エチルチオ]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
7-[(R)-1-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-イルアミノ]-5-[1-(3-メチルピリジン-2-イル)エチルチオ]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
7-[(R)-1-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-イルアミノ]-5-[1-(2-エチルピリジン-2-イル)エチルチオ]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
7-[(R)-1-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-イルアミノ]-5-[1-(3-エチルピリジン-2-イル)エチルチオ]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
7-[(R)-1-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-イルアミノ]-5-[1-(3,5-ジメチルピリジン-2-イル)エチルチオ]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
7-[(R)-1-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-イルアミノ]-5-[1-(2,4-ジメチルピリジン-2-イル)プロピルチオ]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
7-[(R)-1-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-イルアミノ]-5-[1-(2-メチルピリジン-2-イル)プロピルチオ]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
7-[(R)-1-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-イルアミノ]-5-[1-(3-メチルピリジン-2-イル)プロピルチオ]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
7-[(R)-1-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-イルアミノ]-5-[1-(3,5-ジメチルピリジン-2-イル)プロピルチオ]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
7-[(R)-1-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-イルアミノ]-5-[(1S/R)-(ピリジン-2-イル)エチルチオ]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
7-[(R)-1-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-イルアミノ]-5-[(1R/S)-(ピリジン-2-イル)エチルチオ]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-2(3H)-オン;
およびその薬学的に許容される塩。
【0093】
さらに別の局面において、本発明の方法において有用な組成物は式(VIII)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む:
式中:
R
1はCH
3またはCF
3であり;
R
2はハロ、CNまたはC
1〜C
6アルキルであり;
R
3およびR
4は独立にHまたはCH
3であり;
nは0、1または2である。
【0094】
1つの態様において、式(VIII)の化合物は以下からなる群より選択される:
(2R)-2-[(2-アミノ-5-{[1-(5-フルオロピリジン-2-イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル)アミノ]-4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-[(2-アミノ-5-{[(1S)-1-(5-クロロピリジン-2-イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル)アミノ]-4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-[(2-アミノ-5-{[(1S)-1-(5-フルオロピリジン-2-イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル)アミノ]-4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-[(2-アミノ-5-{[1-(3-クロロピリジン-4-イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル)アミノ]-4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-[(2-アミノ-5-{[(1S)-1-(3-クロロピリジン-4-イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル)アミノ]-4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-[(2-アミノ-5-{[(1R)-1-(3-クロロピリジン-4-イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル)アミノ]-4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-[(2-アミノ-5-{[(1S)-1-(3-フルオロピリジン-2-イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル)アミノ]-4-メチルペンタン-1-オール;
(2R)-2-[(2-アミノ-5-{[(1S)-1-(6-クロロピリジン-3-イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル)(メチル)アミノ]ペンタン-1-オール;
(2R)-2-[(2-アミノ-5-{[(1S)-1-(6-クロロピリジン-3-イル)エチル]チオ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-イル)アミノ]ペンタン-1-オール;および
2-{(1S)-1-[(2-アミノ-7-{[(1R)-1-(ヒドロキシメチル)-3-メチルブチル]アミノ}[1,3]チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-5-イル)チオ]エチル}イソニコチノニトリル;
ならびにその薬学的に許容される塩。
【0095】
さらに別の局面において、本発明の方法において有用な組成物は式(IX)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む:
R
A-R
B(IX)
式中、
R
Aは以下:
からなる群より選択される基であり;かつ、
R
Bは以下:
からなる群より選択される基である。
【0096】
さらに別の局面において、本発明の方法において有用な組成物は式(X)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む:
式中、R
1は(C
1〜C
8)アルキル、置換(C
1〜C
8)アルキル、フェニル、置換フェニル、(C
1〜C
8)シクロアルキルまたは置換(C
1〜C
8)シクロアルキルである。
【0097】
1つの態様において、式(X)中、R
1はn-ヘキシル、フェニルまたはシクロペンチルである。
【0098】
さらに別の局面において、本発明の方法において有用な組成物は式(XI)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む:
式中、
Rは以下からなる群より選択され:
;
R
1およびR
4の各存在は独立にH、(C
1〜C
6)アルキル、置換(C
1〜C
6)アルキル、フェニル、置換フェニル、(C
1〜C
6)シクロアルキル、または置換(C
1〜C
6)シクロアルキルであり;かつ、
R
2およびR
3は独立にH、(C
1〜C
6)アルキル、置換(C
1〜C
6)アルキル、フェニル、置換フェニル、(C
1〜C
6)シクロアルキル、置換(C
1〜C
6)シクロアルキル、ハロ、OR
4、N(R
4)(R
4)、NO
2、またはNHAcである。
【0099】
さらに別の局面において、本発明の方法において有用な組成物は式(XII)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む:
式中、
Rは以下からなる群より選択され:
;
R
1およびR4およびR
5の各存在は独立にH、(C
1〜C
6)アルキル、置換(C
1〜C
6)アルキル、フェニル、置換フェニル、(C
1〜C
6)シクロアルキル、または置換(C
1〜C
6)シクロアルキルであり;かつ、
R
2およびR
3は独立にH、(C
1〜C
6)アルキル、置換(C
1〜C
6)アルキル、フェニル、置換フェニル、(C
1〜C
6)シクロアルキル、置換(C
1〜C
6)シクロアルキル、ハロ、OR
4、N(R
4)(R
4)、NO
2、またはNHAcである。
【0100】
さらに別の局面において、本発明の方法において有用な組成物は以下の群より選択される化合物を含む:
;
またはその薬学的に許容される塩。
【0101】
化合物の調製
本発明の方法において有用な化合物を、当業者には公知の方法を用いて調製してもよい。
【0102】
非限定例において、式(I)の例示的化合物を、Ng et al., 1999, J. Med. Chem. 42:4680-94において示される方法を用いて調製してもよい。
【0103】
非限定例において、式(I)の例示的化合物を、以下に示す化学を用いて調製してもよい。
【0104】
非限定例において、式(I)の例示的化合物を、以下に示す化学を用いて調製してもよい。中間体ピロロ[1,2-a]キノキサリン-4(5H)-オンは商業的供給源から得てもよく、または文献の手順に従って合成してもよい(Campiani et al., 1991, Synth. Commun. 21:1567-1576;Prunier et al., 1997, J. Med. Chem. 40:1808-1819)。
【0105】
出発原料ピリド[3,4-e]ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(5H)-オンは以下の手順に従って調製してもよい(Prunier et al., 1997, J. Med. Chem. 40:1808;Guilon, 2004, J、Med. Chem. 47:1997)。
【0106】
出発原料ピリド[3,4-e]ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(5H)-オンは以下の手順に従って調製してもよい(Prunier et al., 1997, J. Med. Chem. 40:1808)。
【0107】
出発原料ピロロ[1,2-a]チエノ[3,2-e]ピラジン-5(4H)-オンは以下の手順に従って調製してもよい(Rault et al., 1996, J. Med. Chem. 39:2068)。
【0108】
出発原料1-メチル-1H-ピラゾロ[4,3-e]ピロロ[1,2-a]ピラジン-5(4H)-オンを以下の手順に従って調製してもよい(PCT出願国際公開公報第2011/074709号)。
【0109】
以下の中間体を概要を示した反応スキームに従って調製してもよい。
【0110】
非限定例において、式(I)の化合物5-(3-(4-(4-クロロフェニル)ピペリジン-1-イル)シクロペンチル)ピロロ[1,2-a]キノキサリン-4(5H)-オンを以下の合成スキームに従って調製してもよい。
【0111】
非限定例において、式(I)の化合物6-(2-(4-(4-クロロフェニル)ピペリジン-1-イル)エチル)ベンゾ[b]ピロロ[1,2-d][1,4]オキサゼピン-7(6H)-オンを以下の合成スキームに従って調製してもよい。
【0112】
非限定例において、式(II)〜(V)の化合物を、米国特許出願公開第US 20070142386号に示す方法を用いて調製してもよく、その内容は全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0113】
非限定例において、式(VI)の化合物を、米国特許出願公開第US 20080214578号に示す方法を用いて調製してもよく、その内容は全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0114】
非限定例において、式(VII)の化合物を、国際公開公報第20091201490号に示す方法を用いて調製してもよく、その内容は全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0115】
非限定例において、式(VIII)の化合物を、その全体が参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第2008039139号、およびWalters et al., 2008, Bioorg. Med. Chem. Lett. 18:798-803に示す方法を用いて調製してもよい。
【0116】
非限定例において、式(IX)の化合物を以下のスキームに示す方法を用いて調製してもよい。
【0117】
非限定例において、式(X)の化合物を以下のスキームに示す方法を用いて調製してもよい。
【0118】
非限定例において、式(XI)の化合物を以下のスキームに示す方法を用いて調製してもよい。
【0119】
非限定例において、式(XII)の化合物を以下のスキームに示す方法を用いて調製してもよい。
【0120】
塩
本明細書に記載の化合物は酸と塩を形成してもよく、そのような塩は本発明に含まれる。1つの態様において、塩は薬学的に許容される塩である。「塩」なる用語は、本発明の方法の範囲内で有用な遊離酸の付加塩を含む。「薬学的に許容される塩」なる用語は、薬学的適用において有用性を提供する範囲内の毒性特性を有する塩を意味する。薬学的に許容されない塩は、それにもかかわらず、高い結晶性などの特性を有することもあり、これらは、例えば、本発明の方法の範囲内で有用な化合物の合成、精製または製剤の工程における有用性などの、本発明の実施において有用性を有する。
【0121】
適切な薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸または有機酸から調製してもよい。無機酸の例には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸、およびリン酸が含まれる。適切な有機酸は、有機酸の脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族、複素環式、カルボン酸およびスルホン酸クラスから選択してもよく、その例には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ステアリン酸、アルギン酸、β-ヒドロキシ酪酸、サリチル酸、ガラクタル酸およびガラクツロン酸が含まれる。
【0122】
組成物
本発明は、以下を含む組成物を含む:
(i)式(I)の化合物またはその塩
式中:
A
1はCH
2またはシクロペンタン-1,3-ジイルであり;
nは、AがCH
2である場合、0、1、2、3、4もしくは5であり、またはnは、Aがシクロペンタン-1,3-ジイルである場合、0、1、もしくは2であり;
A
2およびA
3はいずれもHであるか;またはA
2およびA
3は一緒になってメタンジイル、エタン-1,2-ジイル、もしくはプロパン-1,3-ジイルからなる群より選択される二価の基を形成し;
A
4はCH
2、CH(CF
3)、またはCF
2であり;
R
1およびR
2はいずれもHであり、かつR
3は以下からなる群より選択され:
式中、環Aはフェニル、置換フェニル、ピリジニル、置換ピリジニル、チオフェニル、置換チオフェニル、1H-ピラゾール、および1-(C
1〜C
6)アルキル-1H-ピラゾールからなる群より選択され;
R
4は無いか、または(C
1〜C
6)アルキルであり、ここでR
4が(C
1〜C
6)アルキルである場合、化合物(I)は4級アンモニウム塩であり;
R
5は(C
1〜C
6)アルキル、置換(C
1〜C
6)アルキル、フェニル、置換フェニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリールであり;
R
6はH、(C
1〜C
6)アルキル、置換(C
1〜C
6)アルキル、アリールまたは置換アリールであり;かつ、
R
7はOH、CH
2OH、またはC(=O)OR
6である;
(ii)式(IX)の化合物:
R
A-R
B(IX)
式中、
R
Aは以下:
からなる群より選択される基であり;かつ、
R
Bは以下:
からなる群より選択される基である;
(iii)式(X)の化合物:
式中、R
1は(C
1〜C
8)アルキル、置換(C
1〜C
8)アルキル、フェニル、置換フェニル、(C
1〜C
8)シクロアルキルまたは置換(C
1〜C
8)シクロアルキルである;
(iv)式(XI)の化合物:
式中、
Rは以下からなる群より選択され:
;
R
1およびR
4の各存在は独立にH、(C
1〜C
6)アルキル、置換(C
1〜C
6)アルキル、フェニル、置換フェニル、(C
1〜C
6)シクロアルキル、または置換(C
1〜C
6)シクロアルキルであり;かつ、
R
2およびR
3は独立にH、(C
1〜C
6)アルキル、置換(C
1〜C
6)アルキル、フェニル、置換フェニル、(C
1〜C
6)シクロアルキル、置換(C
1〜C
6)シクロアルキル、ハロ、OR
4、N(R
4)(R
4)、NO
2、またはNHAcである;
(v)式(XII)の化合物またはその薬学的に許容される塩:
式中、
Rは以下からなる群より選択され:
;
R
1、R
4およびR
5の各存在は独立にH、(C
1〜C
6)アルキル、置換(C
1〜C
6)アルキル、フェニル、置換フェニル、(C
1〜C
6)シクロアルキル、または置換(C
1〜C
6)シクロアルキルであり;かつ、
R
2およびR
3は独立にH、(C
1〜C
6)アルキル、置換(C
1〜C
6)アルキル、フェニル、置換フェニル、(C
1〜C
6)シクロアルキル、置換(C
1〜C
6)シクロアルキル、ハロ、OR
4、N(R
4)(R
4)、NO
2、またはNHAcである。
【0123】
本発明の抗体
本発明は、CX
3CR1抗体を含む組成物も含む。本発明は、フラクタルカイン抗体を含む組成物も含む。1つの態様において、フラクタルカイン抗体は可溶性フラクタルカインに向けられる。別の態様において、フラクタルカイン抗体は膜結合フラクタルカインに向けられる。さらに1つの態様において、抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、合成抗体、重鎖抗体、ヒト抗体、および抗体の生物活性断片から選択される抗体を含む。
【0124】
当業者であれば、抗体は、天然原料由来であるか、または組換え原料由来であるかにかかわらず、任意の免疫グロブリン分子を含み、これは標的分子上に存在するエピトープに特異的に結合しうることを理解するであろう。
【0125】
本発明の1つの局面において、CX
3CR1はCX
3CR1上のエピトープに特異的に結合する抗体によって直接阻害される。本発明の別の局面において、CX
3CR1の効果は下流のエフェクター上のエピトープに特異的に結合する抗体によって阻止される。本発明のさらに別の局面において、CX
3CR1の効果はCX
3CR1の上流レギュレーターのエピトープに結合する抗体によって阻止される。
【0126】
本発明の組成物および方法において用いるCX
3CR1阻害剤がポリクローナル抗体(IgG)である場合、抗体は適切な動物に全長CX
3CR1タンパク質、またはその断片、上流レギュレーター、またはその断片を含むペプチドを接種することによって生成する。これらのポリペプチド、またはその断片は、本明細書の他所に記載の、化学合成および生物学的合成を含む、当技術分野において公知の任意の方法によって得てもよい。これに関して、例示的CX
3CR1配列はSEQ ID NO.:1である。次いで、CX
3CR1、またはその断片に特異的に結合する、接種した動物において産生される抗体を、動物から得た液体から単離する。
【0127】
本発明の1つの局面において、フラクタルカインはフラクタルカイン上のエピトープに特異的に結合する抗体によって直接阻害される。本発明の別の局面において、フラクタルカインの効果は下流のエフェクター上のエピトープに特異的に結合する抗体によって阻止される。本発明のさらに別の局面において、フラクタルカインの効果はフラクタルカインの上流レギュレーターのエピトープに結合する抗体によって阻止される。
【0128】
本発明の組成物および方法において用いるフラクタルカイン阻害剤がポリクローナル抗体(IgG)である場合、抗体は適切な動物に全長フラクタルカインタンパク質、またはその断片、上流レギュレーター、またはその断片を含むペプチドを接種することによって生成する。これらのポリペプチド、またはその断片は、本明細書の他所に記載の、化学合成および生物学的合成を含む、当技術分野において公知の任意の方法によって得てもよい。これに関して、例示的フラクタルカイン配列はSEQ ID NO.:2である。次いで、フラクタルカイン、またはその断片に特異的に結合する、接種した動物において産生される抗体を、動物から得た液体から単離する。
【0129】
抗体は、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ラクダ、ウサギ、およびロバなどであるが、それらに限定されるわけではない、いくつかの非ヒト哺乳動物において、この様式で生成してもよい。ポリクローナル抗体の生成法は当技術分野において周知で、例えば、Harlow, et al.(1998, In: Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, NY)に記載されている。
【0130】
全長CX
3CR1もしくはフラクタルカイン、またはその断片に対するモノクローナル抗体は、例えば、Harlow et al.(1998, In: Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, NY)およびTuszynski et al.(1988, Blood, 72: 109-115)に記載のものなどの、任意の周知のモノクローナル抗体調製手順を用いて調製してもよい。ヒトモノクローナル抗体は、米国特許出願公開第2003/0224490に記載の方法によって調製してもよい。抗原に対するモノクローナル抗体は、本明細書において参照する標準の手順を用いて、抗原で免疫したマウスから生成する。本明細書に記載の手順を用いて得たモノクローナル抗体をコードする核酸を、当技術分野において利用可能で、例えば、Wright et al.(1992, Critical Rev. Immunol. 12(3,4): 125-168)およびその中で引用される参照文献に記載されている技術を用いて、クローン化し、配列決定してもよい。
【0131】
本発明の方法において用いる抗体が生物学的に活性な抗体断片あるいは全長CX3CR1もしくはフラクタルカイン、またはその断片に対する抗体に対応する合成抗体である場合、抗体は以下のとおりに調製する:所望の抗体またはその断片をコードする核酸を適切なベクターにクローン化する。ベクターを、大量の抗体またはその断片の生成に適した細胞中に形質移入する。次いで、所望の抗体をコードするDNAを細胞内で発現させ、それにより抗体を産生する。所望のペプチドをコードする核酸を、当技術分野において利用可能で、例えば、Wright et al.(1992, Critical Rev. in Immunol. 12(3,4): 125-168)およびその中で引用される参照文献に記載されている技術を用いて、クローン化し、配列決定してもよい。または、多量の所望の抗体またはその断片を化学合成技術を用いて合成してもよい。抗体のアミノ酸配列が既知であれば、所望の抗体を、本明細書の他所に記載の当技術分野において公知の方法を用いて化学的に合成することができる。
【0132】
本発明は、標的分子上に存在するエピトープと特異的に反応性のヒト化抗体の使用も含む。これらの抗体は標的分子に結合することができる。本発明において有用なヒト化抗体はヒトフレームワークを有し、標的細胞表面分子と特異的に反応性の抗体、典型的にはマウス抗体からの1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)を有する。
【0133】
本発明において用いる抗体がヒト化されている場合、抗体をQueen et al.(米国特許第6,180,370号)、Wright et al.、(1992, Critical Rev. Immunol. 12(3,4): 125-168)およびその中で引用される参照文献、またはGu et al.(1997, Thrombosis & Hematocyst 77(4):755-759)に記載のとおり、または当技術分野において公知の他のヒト化抗体生成法を用いて生成することができる。Queen et al.に開示される方法は、部分的には、アクセプターヒトフレームワーク領域をコードするDNAセグメントに結合された、所望の抗原に結合することができるドナー免疫グロブリンからの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)をコードする組換えDNAセグメントを発現することによって産生される、ヒト化免疫グロブリンを設計することを目的としている。概して、Queenの特許における発明は、実質的にいかなるヒト化免疫グロブリンの設計に対しても適用可能である。Queenは、DNAセグメントは典型的には、天然に結合された、または異種プロモーター領域を含む、ヒト化免疫グロブリンコード配列に機能的に連結された発現制御DNA配列を含むと説明している。発現制御配列は、宿主真核細胞を形質転換もしくは形質移入しうるベクター中の真核プロモーター系でありえ、または発現制御配列は、宿主原核細胞を形質転換もしくは形質移入しうるベクター中の原核プロモーター系でありうる。いったんベクターが適切な宿主に取り込まれれば、宿主を導入されたヌクレオチド配列の高レベル発現に適した条件下で維持し、望まれる場合には、続いてヒト化軽鎖、重鎖、軽/重鎖二量体もしくは無傷の抗体、結合断片または他の免疫グロブリン型の回収および精製を行ってもよい(Beychok, Cells of Immunoglobulin Synthesis, Academic Press, New York, (1979)、これは参照により本明細書に組み入れられる)。
【0134】
様々なヒト細胞からのヒト定常領域(CDR)DNA配列を、周知の手順に従って単離することができる。好ましくは、ヒト定常領域DNA配列を、国際公開公報第198702671号に記載の不死化B細胞から単離する。本発明の抗体を産生する際に有用なCDRは、標的分子に結合しうるモノクローナル抗体をコードするDNAから洞様に誘導してもよい。そのようなヒト化抗体は、マウス、ラット、ラクダ、ラマ、ウサギ、または他の脊椎動物を含むが、それらに限定されるわけではない、抗体を産生しうる任意の好都合な哺乳動物原料から、周知の方法を用いて生成してもよい。定常領域およびフレームワークDNA配列に適した細胞ならびに抗体が発現および分泌される宿主細胞は、American Type Culture Collection, Manassas, VAなどの、いくつかの供給元から入手することができる。
【0135】
当業者であれば、本発明がラクダ科の種由来の抗体の使用を含むことをさらに理解するであろう。すなわち、本発明は、ラクダ科の種由来の抗体の使用を含むが、それに限定されるわけではない。当技術分野において周知のとおり、ラクダ科の抗体は軽鎖を欠き、したがって完全で多様な抗原結合能を有する重鎖だけを含む点で、ほとんどの他の哺乳動物のものとは異なる(Hamers-Casterman et al., 1993, Nature, 363:446-448)。そのような重鎖抗体は、通常の哺乳動物抗体よりも小さく、通常の抗体よりも溶解性が高く、かついくつかの他の抗体に比べて安定性の増加を示すという点で、有用である。ラクダ科の種には、フタコブラクダ(C. bactrianus)およびヒトコブラクダ(C. dromedarius)などの旧世界ラクダが含まれるが、それらに限定されるわけではない。ラクダ科は、ラマ、アルパカ、ビクーナおよびグアナコを含むが、それらに限定されるわけではない、新世界ラクダをさらに含む。ラクダ科の種からのポリクローナル血清の産生は、ヒツジ、ロバ、ヤギ、ウマ、マウス、ニワトリ、ラットなどの他の動物からのポリクローナル血清の産生と実質的にほぼ同等である。当業者が本開示および本明細書に詳細に記載する方法を読めば、ラクダ科の種から高い抗体価の抗体を調製することができる。一例として、哺乳動物における抗体の産生がHarlow et al.(1998, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York)などの参照文献中に詳細に記載されている。
【0136】
重鎖病(Seligmann et al., 1979, Immunological Rev. 48:145-167、参照により本明細書に組み入れられる)を有する動物などの、他の供給源から単離したV
Hタンパク質も、本発明の組成物および方法において有用である。本発明は、Ward et al.(1989, Nature 341:544-546、参照により本明細書に組み入れられる)に詳細に記載されているとおり、マウスおよび他の哺乳動物から産生される可変重鎖免疫グロブリンをさらに含む。簡単に言うと、V
H遺伝子をマウス脾臓調製物から単離し、大腸菌(E. coli)中で発現させる。本発明は、本明細書に詳細に記載する組成物および方法におけるそのような重鎖免疫グロブリンの使用を含む。
【0137】
本発明においてCX
3CR1またはフラクタルカイン阻害剤として有用な抗体を、ファージ抗体ライブラリから得てもよい。ファージ抗体ライブラリを生成するために、まずcDNAライブラリを、ファージ表面上で発現される所望のタンパク質、例えば、所望の抗体を発現する細胞、例えば、ハイブリドーマから単離されるmRNAから得る。mRNAのcDNAコピーを、逆転写酵素を用いて産生する。免疫グロブリン断片を規定するcDNAをPCRによって得、得られたDNAを適切なバクテリオファージベクターにクローン化し、免疫グロブリン遺伝子を規定するDNAを含むバクテリオファージDNAライブラリを生成する。異種DNAを含むバクテリオファージライブラリを作成する手順は当技術分野において周知で、例えば、Sambrook et al.(2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY)に記載されている。
【0138】
所望の抗体をコードするバクテリオファージを、タンパク質がその対応する結合タンパク質、例えば、抗体が向けられる抗原への結合に利用可能であるような様式で、その表面上に提示されるように改変してもよい。したがって、特定の抗体を発現するバクテリオファージを、対応する抗原を発現する細胞存在下でインキュベートすると、バクテリオファージは細胞に結合することになる。抗体を発現しないバクテリオファージは、細胞に結合しない。そのようなパニング技術は当技術分野において周知で、例えば、Wright et al.(1992, Critical Rev. Immunol. 12(3,4):125-168)に記載されている。
【0139】
M13バクテリオファージディスプレイを用いてのヒト抗体産生のために、前述のものなどの方法が開発されている(Burton et al., 1994, Adv. Immunol. 57:191-280)。基本的に、抗体産生細胞の集団から得たmRNAからcDNAライブラリを生成する。mRNAは再配列された免疫グロブリン遺伝子をコードし、したがって、cDNAは同じものをコードする。増幅したcDNAをM13発現ベクターにクローン化して、その表面上にヒトFab断片を発現するファージのライブラリを作成する。関心対象の抗体を提示するファージを抗原結合によって選択し、細菌中で増殖させて可溶性ヒトFab免疫グロブリンを産生する。したがって、通常のモノクローナル抗体合成とは対照的に、この手順はヒト免疫グロブリンを発現する細胞ではなく、ヒト免疫グロブリンをコードするDNAを不死化する。
【0140】
直前に示した手順は、抗体分子のFab部分をコードするファージの生成を記載している。しかし、本発明は、Fab抗体をコードするファージの生成だけに限定されると解釈されるべきではない。むしろ、単鎖抗体をコードするファージ(scFv/ファージ抗体ライブラリ)も本発明に含まれる。Fab分子は全Ig軽鎖を含む、すなわち、Fab分子は軽鎖の可変領域および定常領域の両方を含むが、重鎖の可変領域および第一定常領域ドメイン(CH1)だけを含む。単鎖抗体分子はIg Fv断片を含むタンパク質の単鎖を含む。Ig Fv断片は抗体の重鎖および軽鎖の可変領域だけを含み、その中に定常領域は含まれない。scFv DNAを含むファージライブラリを、Marks et al., 1991, J. Mol. Biol. 222:581-597に記載の手順に従って生成してもよい。所望の抗体単離のためのそのように生成したファージのパニングを、Fab DNAを含むファージライブラリについて記載されたものと同様の様式で行う。
【0141】
本発明は、重鎖および軽鎖可変領域をそれらがほぼすべての可能な特異性を含むように合成しうる、合成ファージディスプレイライブラリを含むと解釈されるべきでもある(Barbas, 1995, Nature Medicine 1:837-839;de Kruif et al., 1995, J. Mol. Biol. 248:97-105)。
【0142】
いったん発現されれば、全抗体、それ由来の二量体、個々の軽鎖および重鎖、または他の形の抗体を、当技術分野において公知の標準の手順に従って精製することができる。そのような手順は、硫酸アンモニウム沈澱、アフィニティカラムの使用、日常的カラムクロマトグラフィ、ゲル電気泳動などを含むが、それらに限定されるわけではない(一般には、R. Scopes, ''Protein Purification'', Springer-Verlag, N.Y. (1982)参照)。少なくとも約90%から95%の均一性の実質的に純粋な抗体が好ましく、98%から99%以上の均一性を有する抗体が薬学的使用のために最も好ましい。いったん精製すれば、本発明の方法を実施するために、または本発明の方法を実施する際に有用な薬学的組成物を調製するために、抗体を用いてもよい。
【0143】
本発明の抗体を、当技術分野において公知の任意の方法により、免疫特異的結合についてアッセイすることができる。用いることができるイムノアッセイには、いくつかではあるが例を挙げると、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫アッセイ法)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ法、沈降素反応、ゲル拡散沈降素反応、免疫拡散アッセイ法、凝集アッセイ法、補体結合アッセイ法、免疫放射線アッセイ法、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイなどの技術を用いての競合的および非競合的アッセイ系が含まれるが、それらに限定されるわけではない。そのようなアッセイ法は日常的で、当技術分野において公知である(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, (Ausubel et al., eds.), Greene Publishing Associates and Wiley-Interscience, New York (2002)参照)。例示的イムノアッセイを以下に簡単に記載する(が、いかなる様式でも限定的であるとの意図はない)。
【0144】
本発明の方法
本発明は、癌と診断された対象において転移を防止または処置する方法を含む。方法は、それを必要としている対象に、少なくとも1つの薬学的に許容される担体および少なくとも1つのCX
3CR1またはフラクタルカインアンタゴニストを含む薬学的製剤の有効量を投与する段階を含む。
【0145】
1つの態様において、対象を癌に関連する初回手術にかける。別の態様において、薬学的製剤の投与を初回手術前、手術中、または手術後に行う。さらに別の態様において、癌は乳癌または前立腺癌を含む。さらに別の態様において、転移は骨転移を含む。さらに別の態様において、投与は初回手術の少なくとも6ヶ月前に開始する。さらに別の態様において、投与は初回手術の少なくとも3ヶ月前に開始する。さらに別の態様において、投与は初回手術の少なくとも1ヶ月前に開始する。さらに別の態様において、投与は手術後1週間以内に開始する。
【0146】
さらに別の態様において、少なくとも1つのCX
3CR1またはフラクタルカイン阻害剤は、抗体、siRNA、リボザイム、アンチセンス、アプタマー、ペプチド模倣体、小分子、またはその任意の組み合わせを含む。別の態様において、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、合成抗体、重鎖抗体、ヒト抗体、および抗体の生物活性断片から選択される抗体を含む。
【0147】
1つの態様において、小分子は以下から選択される:
(i)式(I)の化合物、
(I)の式中:
A
1はCH
2またはシクロペンタン-1,3-ジイルであり;
nは、AがCH
2である場合、0、1、2、3、4もしくは5であり、またはnは、Aがシクロペンタン-1,3-ジイルである場合、0、1、もしくは2であり;
A
2およびA
3はいずれもHであるか、またはA
2およびA
3は一緒になってメタンジイル、エタン-1,2-ジイル、もしくはプロパン-1,3-ジイルからなる群より選択される二価の基を形成し;
A
4はCH
2、CH(CF
3)、またはCF
2であり;
R
1はH、CN、CO
2R
6、(C
1〜C
6)CH
2NH
2、または(C
1〜C
6)CH
2NHC(=O)NH(4-ピペリジニル)であり;
R
2およびR
3は独立にアリールもしくは置換アリールであるか;またはR
2およびR
3は一緒になって二価の断片(a)を形成し、ここでXは-S-、-O-、-CH
2S-、-CH
2S(=O)-、-CH
2S(=O)
2-、-SCH
2-、-S(=O)CH
2-、-S(=O)
2CH
2-、-CH
2CH
2-、-CH=CH-、-CH
2O-、-OCH
2-、-N(CH
3)C(=O)-、および-C(=O)N(CH
3)-からなる群より選択され;
;
あるいはR
1およびR
2はいずれもHであり、かつR
3は以下からなる群より選択され:
式中、環Aはフェニル、置換フェニル、ピリジニル、置換ピリジニル、チオフェニル、置換チオフェニル、1H-ピラゾール、および1-(C
1〜C
6)アルキル-1H-ピラゾールからなる群より選択され;
R
4は無いか、または(C
1〜C
6)アルキルであり、ここでR
4が(C
1〜C
6)アルキルである場合、式(I)の化合物は4級アンモニウム塩であり;
R
5は(C
1〜C
6)アルキル、置換(C
1〜C
6)アルキル、フェニル、置換フェニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリールであり;
R
6はH、(C
1〜C
6)アルキル、置換(C
1〜C
6)アルキル、アリールまたは置換アリールであり;かつ、
R
7はOH、CH
2OH、またはC(=O)OR
6である;
(ii)式(II)の化合物:
式中:
Aは式(a)、(b)または(c):
の環であり、
R
1およびR
2は独立にH、C
1〜C
8アルキル、C
2〜C
8アルケニル、C
2〜C
8アルキニルまたはC
3〜C
7飽和もしくは部分不飽和シクロアルキルを表し、
ここでR
1またはR
2において、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびシクロアルキル基は、OH、C
1〜C
6アルコキシ、CH
2OR
4、NR
5R
6、CO
2R
7およびCONR
8R
9からなる群より独立に選択される1つまたは複数の置換基で独立にさらに置換されていてもよく;
R
3はC
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニルまたはC
3〜C
7飽和もしくは部分不飽和シクロアルキルであり;
ここでR
3において:
アルキル、アルケニルおよびアルキニル鎖は独立に、かつ任意に、鎖中にO、NR
10またはS原子を含み;
アルキル、アルケニル、アルキニルおよびシクロアルキル基は、フェニルまたはO、SおよびNからなる群より独立に選択される1から3個のヘテロ原子を含む5もしくは6員ヘテロ芳香環で独立にさらに置換されていてもよく;
フェニルまたはヘテロ芳香族基は、ハロゲン、C
1〜C
4アルキル、OH、C
1〜C
4アルコキシ、CN、CO
2R
11、NR
12R
13、C(=O)NR
14R
15、SO
2R
16、NR
17R
18およびSO
2N
19R
20からなる群より選択される1つまたは複数の置換基で独立にさらに置換されていてもよく;
XはO、SまたはS(O)であり;
R
21はH、CH
2OR
24、CH
2NR
24R
25、CO
2R
24またはC(=O)NR
24R
25であり;
nは0、1または2であり;
R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
24、R
25およびR
26は独立にHまたはC
1〜C
6アルキルである;
(iii)式(VI)の化合物:
式中:
R
1はCH
3またはCH
3CH
2であり;
R
2はH、2-F、2-Cl、3-F、3-OCH
3、3-CN、3-CF
3、3-CONH
2または3-SO
2CH
3であり;
R
3はHまたはCH
3であり;
R
4はHまたはCH
3であり、かつ
R
5はHであるか;または、R
4がCH
3であるとき、R
5はHもしくはFである;
(iv)式(VII)の化合物:
式中:
R
1はCH
3またはCH
3CH
2であり;
R
2はHまたはCH
3であり;
R
3はHまたはCH
3であり;
R
4、R
5、R
6およびR
7は独立にH、CH
3またはCH
2CH
3である;
(v)式(VIII)の化合物:
式中:
R
1はCH
3またはCF
3であり;
R
2はハロ、CNまたはC
1〜C
6アルキルであり;
R
3およびR
4は独立にHまたはCH
3であり;
nは0、1または2である;
(vi)式(IX)の化合物:
R
A-R
B(IX)
式中、
R
Aは以下:
からなる群より選択される基であり;かつ、
R
Bは以下:
からなる群より選択される基である;
(vii)式(X)の化合物:
式中、R
1は(C
1〜C
8)アルキル、置換(C
1〜C
8)アルキル、フェニル、置換フェニル、(C
1〜C
8)シクロアルキルまたは置換(C
1〜C
8)シクロアルキルである;
(viii)式(XI)の化合物:
式中、
Rは以下からなる群より選択され:
;
R
1およびR
4の各存在は独立にH、(C
1〜C
6)アルキル、置換(C
1〜C
6)アルキル、フェニル、置換フェニル、(C
1〜C
6)シクロアルキル、または置換(C
1〜C
6)シクロアルキルであり;かつ、
R
2およびR
3は独立にH、(C
1〜C
6)アルキル、置換(C
1〜C
6)アルキル、フェニル、置換フェニル、(C
1〜C
6)シクロアルキル、置換(C
1〜C
6)シクロアルキル、ハロ、OR
4、N(R
4)(R
4)、NO
2、またはNHAcである;
(ix)式(XII)の化合物:
式中、
Rは以下からなる群より選択され:
;
R
1およびR4およびR
5の各存在は独立にH、(C
1〜C
6)アルキル、置換(C
1〜C
6)アルキル、フェニル、置換フェニル、(C
1〜C
6)シクロアルキル、または置換(C
1〜C
6)シクロアルキルであり;かつ、
R
2およびR
3は独立にH、(C
1〜C
6)アルキル、置換(C
1〜C
6)アルキル、フェニル、置換フェニル、(C
1〜C
6)シクロアルキル、置換(C
1〜C
6)シクロアルキル、ハロ、OR
4、N(R
4)(R
4)、NO
2、またはNHAcであり;
(x)以下の群より選択される化合物:
;
またはその薬学的に許容される塩。
【0148】
1つの態様において、式(I)中、R
2およびR
3は独立にフェニル、置換フェニル、ナフトリルまたは置換ナフトリルである。
【0149】
1つの態様において、式(II)の化合物は以下である:
(a)式(III)の化合物:
;
(b)式(IV)の化合物:
;
(c)式(V)の化合物:
;
またはその薬学的に許容される塩。
【0150】
1つの態様において、式(X)中、R
1はn-ヘキシル、フェニルまたはシクロペンチルである。
【0151】
1つの態様において、小分子は5-(4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-2,2-ジフェニルペンタンニトリル、N-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)-9H-キサンテン-9-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩である。
【0152】
1つの態様において、対象は哺乳動物である。別の態様において、哺乳動物はヒトである。さらに別の態様において、組成物を、吸入、経口、直腸、膣、非経口、局所、経皮、肺、鼻内、口腔、眼、クモ膜下、または静脈内投与経路によって投与する。
【0153】
併用療法
本明細書に記載の方法を用いて同定した化合物は、癌を治療するために有用な1つまたは複数の追加の化合物との組み合わせで、本発明の方法において有用である。これらの追加の化合物は、本明細書において同定した化合物または癌の症状および/もしくは転移を治療、防止、または軽減することが公知の化合物、例えば、市販の化合物を含んでいてもよい。
【0154】
相乗作用を、例えば、シグモイド-E
max式(Holford & Scheiner, 19981, Clin. Pharmacokinet. 6: 429-453)、ロエベ相加式(Loewe & Muischnek, 1926, Arch, Exp, Pathol Pharmacol. 114: 313-326)および半効果式(Chou & Talalay, 1984, Adv. Enzyme Regul. 22: 27-55)などの適切な方法を用いて計算してもよい。前述のそれぞれの式を実験データに適用して、薬物併用の効果を評価する際に助けとなる対応するグラフを生成してもよい。前述の式に関連する対応するグラフは、それぞれ濃度-効果曲線、アイソボログラム曲線および併用指数曲線である。
【0155】
薬学的組成物および製剤
本発明は、本発明の方法を実施するための、少なくとも1つの本発明の化合物またはその塩の薬学的組成物の使用も含む。
【0156】
そのような薬学的組成物は、対象への投与に適した形での、少なくとも1つの本発明の化合物またはその塩からなっていてもよく、あるいは薬学的組成物は少なくとも1つの本発明の化合物もしくはその塩、および1つもしくは複数の薬学的に許容される担体、1つもしくは複数の追加の成分、またはいくつかのこれらの組み合わせを含んでいてもよい。少なくとも1つの本発明の化合物は、当技術分野において周知のとおり、生理的に許容されるカチオンまたはアニオンとの組み合わせなどの、生理的に許容される塩の形で薬学的組成物中に存在してもよい。
【0157】
1つの態様において、本発明の方法を実施するために有用な薬学的組成物を、1ng/kg/日から100mg/kg/日の間の用量を送達するために投与してもよい。別の態様において、本発明の方法を実施するために有用な薬学的組成物を、1ng/kg/日から500mg/kg/日の間の用量を送達するために投与してもよい。
【0158】
本発明の薬学的組成物中の活性成分、薬学的に許容される担体、および任意の追加の成分の相対量は、治療する対象の同一性、サイズ、および状態に依存し、さらに組成物を投与する経路に依存して変動することになる。例として、組成物は0.1重量%から100重量%の間の活性成分を含んでいてもよい。
【0159】
本発明の方法において有用な薬学的組成物を、吸入、経口、直腸、膣、非経口、局所、経皮、肺、鼻内、口腔、眼、クモ膜下、静脈内または別の投与経路のために適切に開発してもよい。他の企図される製剤には、突出型ナノ粒子(projected nanoparticle)、リポソーム調製物、活性成分を含有する再封赤血球(resealed erythrocyte)、および免疫学に基づいた製剤が含まれる。投与経路は当業者には容易に明らかになると考えられ、治療中の疾患のタイプおよび重症度、治療中の獣医学的またはヒト患者のタイプおよび年齢などを含む、任意の数の因子に依存することになる。
【0160】
本明細書に記載する薬学的組成物の製剤は、薬学の分野において公知または今後開発される任意の方法によって調製してもよい。一般に、そのような調製方法は、活性成分を担体または1つもしくは複数の他の補助成分と混合し、次いで、必要または望まれる場合、生成物を所望の単一または複数用量単位に形成または包装する段階を含む。
【0161】
本明細書において用いられる「単位用量」は、あらかじめ決められた量の活性成分を含む薬学的組成物の個別の量である。活性成分の量は一般に、対象に投与する活性成分の用量、または、例えば、そのような用量の2分の1もしくは3分の1などの、そのような用量の好都合な一部に等しい。単位剤形は単一の1日用量または複数の1日用量(例えば、1日に約1から4回以上)の1つのためのものであってよい。複数の1日用量を用いる場合、単位剤形は各投与で同じでも異なっていてもよい。
【0162】
本明細書において提供する薬学的組成物の記載は主にヒトへの倫理的投与に適した薬学的組成物を対象とするが、当業者であれば、そのような組成物は一般にすべての種類の動物への投与にも適していることが理解されるであろう。組成物を様々な動物への投与に適したものとするための、ヒトへの投与に適した薬学的組成物の改変は十分に理解されており、獣医学的薬理学の当業者であれば、実験を行うとしても、単なる通常の実験によってそのような改変を設計し、実施することができる。本発明の薬学的組成物の投与が企図される対象には、ヒトおよび他の霊長類、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、およびイヌなどの商業的に関連する哺乳動物を含む哺乳動物が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0163】
1つの態様において、本発明の組成物を、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤または担体を用いて製剤する。1つの態様において、本発明の薬学的組成物は、少なくとも1つの本発明の化合物の治療的有効量および薬学的に許容される担体を含む。有用な薬学的に許容される担体には、グリセロール、水、食塩水、エタノールならびにリン酸塩および有機酸の塩などの他の薬学的に許容される塩溶液が含まれるが、それらに限定されるわけではない。これらおよび他の薬学的に許容される担体の例は、Remington's Pharmaceutical Sciences(1991, Mack Publication Co., New Jersey)に記載されている。
【0164】
担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、および植物油を含む溶媒または分散媒であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には必要な粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、維持しうる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成しうる。多くの場合、組成物中に、等張化剤、例えば、糖、塩化ナトリウム、またはマンニトールおよびソルビトールなどのポリアルコールを含むことが好ましい。注射用組成物の長期の吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを含むことによってもたらしうる。1つの態様において、薬学的に許容される担体はDMSO単独ではない。
【0165】
製剤は通常の賦形剤、すなわち、経口、非経口、鼻、静脈内、皮下、腸内、または当技術分野において公知の任意の他の適切な投与様式に適した、薬学的に許容される有機または無機担体物質との混合物で用いてもよい。薬学的調製物を滅菌し、望まれる場合には補助物質、例えば、滑沢剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧緩衝剤に影響をおよぼすための塩、着色剤、着香剤および/または芳香物質などと混合してもよい。これらは、望まれる場合には、他の活性物質、例えば、他の鎮痛剤と組み合わせてもよい。
【0166】
本明細書において用いられる「追加の成分」には、以下の1つまたは複数が含まれるが、それらに限定されるわけではない:賦形剤;界面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;造粒および崩壊剤;結合剤;滑沢剤;甘味剤;着香剤;着色剤;保存剤;ゼラチンなどの生理的に分解性の組成物;水性媒体および溶媒;油性媒体および溶媒;懸濁化剤;分散または湿潤剤;乳化剤、粘滑剤;緩衝剤;塩;増粘剤;充填剤;乳化剤;抗酸化剤;抗生物質;抗真菌剤;安定化剤;ならびに薬学的に許容されるポリマー性または疎水性材料。本発明の薬学的組成物中に含まれうる他の「追加の成分」は、当技術分野において公知で、例えば、Genaro, ed.(1985, Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA)に記載されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0167】
本発明の組成物は、組成物の全重量の約0.005%から2.0%の保存剤を含んでいてもよい。環境中の汚染物質への曝露の場合、保存剤を用いて腐敗を防止する。本発明に従って有用な保存剤の例には、ベンジルアルコール、ソルビン酸、パラベン、イミド尿素およびその組み合わせからなる群より選択されるものが含まれるが、それらに限定されるわけではない。特に好ましい保存剤は、約0.5%〜2.0%ベンジルアルコールおよび0.05%〜0.5%ソルビン酸の組み合わせである。
【0168】
組成物は好ましくは、化合物の分解を阻害する抗酸化剤およびキレート剤を含む。いくつかの化合物のために好ましい抗酸化剤は、組成物の全重量の約0.01%〜0.3%の好ましい範囲のBHT、BHA、アルファ-トコフェロールおよびアスコルビン酸、より好ましくは0.03%〜0.1%の範囲のBHTである。好ましくは、キレート剤は組成物の全重量の0.01重要%〜0.5重量%の量で存在する。特に好ましいキレート剤は、組成物の全重量の約0.01重量%〜0.20重量%の重量範囲、より好ましくは0.02重量%〜0.10重量%の範囲のエデト酸塩(例えば、エデト酸2ナトリウム)およびクエン酸を含む。キレート剤は、製剤の貯蔵寿命にとって有害でありうる、組成物中の金属イオンをキレート化するのに有用である。いくつかの化合物にとってBHTおよびエデト酸2ナトリウムはそれぞれ特に好ましい抗酸化剤およびキレート剤であるが、当業者には公知のとおり、他の適切で等価の抗酸化剤およびキレート剤をその代わりに用いてもよい。
【0169】
液体懸濁剤を、水性または油性媒体中の活性成分の懸濁液を得るための通常の方法を用いて調製してもよい。水性媒体には、例えば、水および等張食塩水が含まれる。油性媒体には、例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、またはヤシ油などの植物油、分留植物油、および流動パラフィンなどの鉱油が含まれる。液体懸濁剤は、懸濁化剤、分散または湿潤剤、乳化剤、粘滑剤、保存剤、緩衝剤、塩、着香剤、着色剤、および甘味剤を含むが、それらに限定されるわけではない、1つまたは複数の追加の成分をさらに含んでいてもよい。油性懸濁剤は増粘剤をさらに含んでいてもよい。公知の懸濁化剤には、ソルビトールシロップ、硬化食用脂肪、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントガム、アカシアガム、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。公知の分散または湿潤剤には、レシチンなどの天然ホスファチド;アルキレンオキシドの、脂肪酸、長鎖脂肪族アルコール、脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステル、または脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合生成物(例えば、それぞれ、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、およびモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。公知の乳化剤には、レシチン、およびアカシアが含まれるが、それらに限定されるわけではない。公知の保存剤には、パラ-ヒドロキシ安息香酸メチル、エチル、またはn-プロピル、アスコルビン酸、およびソルビン酸が含まれるが、それらに限定されるわけではない。公知の甘味剤には、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、スクロース、およびサッカリンが含まれる。油性懸濁剤のための公知の増粘剤には、例えば、蜜ろう、固形パラフィン、およびセチルアルコールが含まれる。
【0170】
水性または油性溶媒中の活性成分の液体液剤は、液体懸濁剤と実質的に同じ様式で調製してもよく、主な差は活性成分を溶媒中に懸濁するのではなく、溶解することである。本明細書において用いられる「油性」液体は、炭素含有液体分子を含み、水よりも極性が低い特性を示すものである。本発明の薬学的組成物の液体液剤は、液体懸濁剤に関して記載したそれぞれの成分を含んでいてもよいが、懸濁化剤が活性成分の溶媒中への溶解を必ずしも助けるとは限らないことが理解される。水性溶媒には、例えば、水、および等張食塩水が含まれる。油性溶媒には、例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、またはヤシ油などの植物油、分留植物油、および流動パラフィンなどの鉱油が含まれる。
【0171】
本発明の薬学的調製物の粉末および顆粒製剤は、公知の方法を用いて調製してもよい。そのような製剤を対象に直接投与してもよく、それらを用いて、例えば、錠剤を形成しても、カプセル剤を充填しても、または水性もしくは油性媒体をそれに添加することによって水性もしくは油性懸濁剤もしくは液剤を調製してもよい。これらの製剤はそれぞれ、分散または湿潤剤、懸濁化剤、および保存剤の1つまたは複数をさらに含んでいてもよい。充填剤および甘味剤、着香剤、または着色剤などの追加の賦形剤もこれらの製剤中に含まれていてもよい。
【0172】
本発明の薬学的組成物を、水中油型乳剤または油中水型乳剤の形で調製、包装、または販売してもよい。油相は、オリーブ油もしくはラッカセイ油などの植物油、流動パラフィンなどの鉱油、またはこれらの組合せであってもよい。そのような組成物は、アカシアガムまたはトラガントガムなどの天然ガム、ダイズまたはレシチンホスファチドなどの天然ホスファチド、モノオレイン酸ソルビタンなどの脂肪酸とヘキシトール無水物との組合せに由来するエステルまたは部分エステル、およびモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどのそのような部分エステルのエチレンオキシドとの縮合生成物などの、1つまたは複数の乳化剤をさらに含んでいてもよい。これらの乳剤は、例えば、甘味剤または着香剤を含む、追加の成分を含んでいてもよい。
【0173】
化学組成物で材料を含浸またはコーティングする方法は当技術分野において公知で、化学組成物を表面上に沈着または結合する方法、材料の合成中に材料の構造に化学組成物を組み込む方法(すなわち、生理的に分解性の材料によるなど)、および水性または油性溶液または懸濁液を吸収性材料に吸収させ、その後乾燥する、または乾燥しない方法が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0174】
投与/投薬
投与の計画は、有効量を構成するものに影響をおよぼしうる。治療的製剤を患者に、癌に関連する外科的介入の前または後のいずれかに投与してもよい。さらに、いくつかの分割用量、ならびに互い違いの用量を毎日もしくは逐次投与してもよく、または用量を連続的に注入してもよく、またはボーラス注射であってもよい。さらに、治療的製剤の用量を、治療的または予防的状況の緊急性によって示されるのに比例して増量または減量してもよい。
【0175】
本発明の組成物の患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトへの投与を、公知の手順を用い、患者の癌を治療するのに有効な用量で、有効な期間実施してもよい。治療効果を達成するのに必要な治療化合物の有効量は、用いる特定の化合物の活性;投与の時間;化合物の排出速度;治療の期間;化合物と併用する他の薬物、化合物または材料;疾患または障害の状態、治療中の患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康および以前の病歴、ならびに医学の技術分野において周知の同様の因子などの、因子に応じて変動しうる。投与計画を調節して、最適な治療反応を提供してもよい。例えば、いくつかの分割用量を毎日投与してもよく、または治療的状況の緊急性によって示されるのに比例して減量してもよい。本発明の治療化合物に対する有効用量範囲の非限定例は、約0.01〜50mg/kg体重/日である。当業者であれば、過度の実験を行うことなく、治療化合物の有効量に関して、関連する因子を調べ、決定することができるであろう。
【0176】
化合物を動物に、1日に数回の頻度で投与することもでき、または1日1回、1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月に1回などのより低頻度で、もしくは数ヶ月に1回、さらには1年に1回以下などのさらにより低頻度で投与してもよい。1日に投与する化合物の量を、非限定例において、毎日、1日おき、2日に1回、3日に1回、4日に1回、または5日に1回投与しうることが理解される。例えば、1日おきの投与では、1日5mgの用量を月曜日に開始し、続く1回目の1日5mg用量を水曜日に投与し、続く2回目の1日5mg用量を金曜日に投与し、その後も同様に投与してもよい。投与の頻度は当業者には容易に明らかとなり、治療中の疾患のタイプおよび重症度、動物のタイプおよび年齢などであるが、それらに限定されるわけではない、任意の数の因子に依存することになる。
【0177】
本発明の薬学的組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、患者に対して毒性であることなく、特定の患者、組成物、および投与様式に対して所望の治療反応を達成するのに有効な活性成分の量を得るように、変動しうる。
【0178】
当技術分野において公知の技術分野において通常の技術を有する医師、例えば、内科医または獣医は、必要な薬学的組成物の有効量を容易に決定し、処方しうる。例えば、内科医または獣医は、薬学的組成物中で用いる本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を達成するのに必要とされるよりも低いレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで徐々に用量を高めることができるであろう。
【0179】
特定の態様において、投与の容易さおよび用量の均一性のために、化合物を単位剤形に製剤することは特に有利である。本明細書において用いられる単位剤形とは、治療する患者に対する単位用量に適した物理的に別個の単位を意味し;各単位は所望の治療効果を生じるよう計算した、あらかじめ決められた量の治療化合物を、必要な薬学的媒体と共に含む。本発明の単位剤形は、(a)治療化合物の独特の特徴および達成すべき特定の治療効果、ならびに(b)患者の癌の治療用にそのような治療化合物を調剤/製剤する技術分野に固有の制限によって指示され、それらに直接依存する。
【0180】
1つの態様において、本発明の組成物を患者に、1日に1〜5回以上の範囲の用量で投与する。別の態様において、本発明の組成物を患者に、1日に1回、2日に1回、3日に1回から1週間に1回、および2週間に1回を含むが、それらに限定されるわけではない、用量の範囲で投与する。当業者であれば、本発明の様々な組み合わせ組成物の投与頻度は、年齢、治療する疾患または障害、性別、全体の健康、および他の因子を含むが、それらに限定されるわけではない、多くの因子に依存して、対象ごとに変動することが容易に明らかであろう。したがって、本発明は、任意の特定の投与計画に限定されると解釈されるべきではなく、任意の患者に投与する正確な用量および組成物は主治医が患者に関するすべての他の因子を考慮して決定することになる。
【0181】
投与のための本発明の化合物は、約1μg〜約7,500mg、約20μg〜約7,000mg、約40μg〜約6,500mg、約80μg〜約6,000mg、約100μg〜約5,500mg、約200μg〜約5,000mg、約400μg〜約4,000mg、約800μg〜約3,000mg、約1mg〜約2,500mg、約2mg〜約2,000mg、約5mg〜約1,000mg、約10mg〜約750mg、約20mg〜約600mg、約30mg〜約500mg、約40mg〜約400mg、約50mg〜約300mg、約60mg〜約250mg、約70mg〜約200mg、約80mg〜約150mg、ならびにその間の任意のおよびすべての全または部分的増分の範囲でありうる。
【0182】
いくつかの態様において、本発明の化合物の用量は、約0.5μg〜約5,000mgである。いくつかの態様において、本明細書に記載の組成物中で用いる本発明の化合物の用量は、約5,000mg未満、または約4,000mg未満、または約3,000mg未満、または約2,000mg未満、または約1,000mg未満、または約800mg未満、または約600mg未満、または約500mg未満、または約200mg未満、または約50mg未満である。同様に、いくつかの態様において、本明細書に記載の第二の化合物の用量は、約1,000mg未満、または約800mg未満、または約600mg未満、または約500mg未満、または約400mg未満、または約300mg未満、または約200mg未満、または約100mg未満、または約50mg未満、または約40mg未満、または約30mg未満、または約25mg未満、または約20mg未満、または約15mg未満、または約10mg未満、または約5mg未満、または約2mg未満、または約1mg未満、または約0.5mg未満、ならびにその任意のおよびすべての全または部分的増分である。
【0183】
1つの態様において、本発明は、治療的有効量の本発明の化合物を、単独または第二の医用薬剤との組み合わせで保持する容器;および患者の癌の1つまたは複数の症状を治療、防止、または軽減するために化合物を用いるための説明書を含む、包装された薬学的組成物を目的とする。
【0184】
「容器」なる用語は、薬学的組成物を保持するための任意の入れ物を含む。例えば、1つの態様において、容器は薬学的組成物を含む包装である。他の態様において、容器は薬学的組成物を含む包装ではない、すなわち、容器は、包装した薬学的組成物または包装していない薬学的組成物および薬学的組成物を用いるための説明書を含む箱またはバイアルなどの入れ物である。さらに、包装技術は当技術分野において周知である。薬学的組成物を用いるための説明書は、薬学的組成物を含む包装上に含まれてもよく、したがって、説明書は包装した生成物に対して高い機能的関係を形成することが理解されるべきである。しかし、説明書は化合物のその所期の機能を実施する能力、例えば、患者の癌を治療、防止、または軽減することに関する情報を含みうることが理解されるべきである。
【0185】
投与の経路
任意の本発明の組成物の投与経路には、吸入、経口、鼻、直腸、非経口、舌下、経皮、経粘膜(例えば、舌下、舌、(経)口腔、(経)尿道、膣、(例えば、経膣および膣周囲)、鼻(内)、および(経)直腸)、膀胱内、肺内、十二指腸内、胃内、クモ膜下、皮下、筋肉内、皮内、動脈内、静脈内、気管支内、吸入、および局所投与が含まれる。
【0186】
適切な組成物および剤形には、例えば、錠剤、カプセル剤、カプレット、丸剤、ゲルキャップ、トローチ、分散剤、懸濁剤、液剤、シロップ、顆粒剤、ビーズ、経皮パッチ、ゲル、散剤、ペレット、マグマ剤、ロゼンジ、クリーム、ペースト、硬膏剤、ローション、ディスク、坐剤、鼻または経口投与用の液体噴霧剤、吸入用のドライパウダーまたはエアロゾル製剤、膀胱内投与用の組成物および製剤などが含まれる。本発明において有用と考えられる製剤および組成物は、本明細書に記載の特定の製剤および組成物に限定されないことが理解されるべきである。
【0187】
経口投与
経口適用のために、特に適切なのは錠剤、糖衣錠、液体、滴剤、坐剤、またはカプセル剤、カプレットおよびゲルキャップである。経口投与に適した他の製剤には、粉末もしくは顆粒製剤、水性もしくは油性懸濁剤、水性もしくは油性液剤、ペースト、ゲル、磨歯剤、洗口剤、コーティング剤、オーラルリンス、または乳剤が含まれるが、それらに限定されるわけではない。経口使用が意図される組成物を、当技術分野において公知の任意の方法に従って調製してもよく、そのような組成物は、錠剤の製造に適した不活性、非毒性薬学的賦形剤からなる群より選択される、1つまたは複数の作用物質を含んでいてもよい。そのような賦形剤には、例えば、ラクトースなどの不活性希釈剤;トウモロコシデンプンなどの造粒および崩壊剤;デンプンなどの結合剤;ならびにステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤が含まれる。
【0188】
錠剤はコーティングしていなくてもよく、または対象の胃腸管内での崩壊遅延を達成し、それにより活性成分の持続放出および吸収を提供するために、公知の方法を用いてコーティングしてもよい。例として、モノステアリン酸グリセリルまたは2ステアリン酸グリセリルなどの材料を用いて錠剤をコーティングしてもよい。さらに例として、米国特許第4,256,108号;第4,160,452号;および第4,265,874号に記載の方法を用いて錠剤をコーティングし、浸透圧による制御放出錠剤を形成してもよい。錠剤は、薬学的に上品で美味な製剤を提供するために、甘味剤、着香剤、着色剤、保存剤、またはこれらの組み合わせをさらに含んでいてもよい。
【0189】
活性成分を含む硬カプセル剤を、ゼラチンなどの生理的に分解性の組成物を用いて作成してもよい。そのような硬カプセル剤は活性成分を含み、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンなどの不活性固体希釈剤を含む、追加の成分をさらに含んでいてもよい。
【0190】
活性成分を含むゼラチン軟カプセル剤を、ゼラチンなどの生理的に分解性の組成物を用いて作成してもよい。そのような軟カプセル剤は活性成分を含み、活性成分は水またはラッカセイ油、流動パラフィン、もしくはオリーブ油などの油性媒質と混合してもよい。
【0191】
経口投与のために、本発明の化合物は、結合剤;充填剤;滑沢剤;崩壊剤;または湿潤剤などの薬学的に許容される賦形剤と共に通常の手段で調製した錠剤またはカプセル剤の剤形であってもよく、望まれる場合には、錠剤は適切な方法およびColorcon, West Point, Pa.から入手可能なOPADRY(商標)フィルムコーティングシステム(例えば、OPADRY(商標) OY Type、OYC Type、Organic Enteric OY-P Type、Aqueous Enteric OY-A Type、OY-PM TypeおよびOPADRY(商標) White、32K18400)などのコーティング材料を用いてコーティングしてもよい。
【0192】
経口投与用の液体製剤は、液剤、シロップまたは懸濁剤の剤形であってもよい。液体製剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロースまたは硬化食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性媒体(例えば、アーモンド油、油性エステルまたはエチルアルコール);および保存剤(例えば、パラヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピルまたはソルビン酸)などの薬学的に許容される添加物と共に、通常の手段で調製してもよい。経口投与に適した本発明の薬学的組成物の液体製剤は、液体の形、または使用前に水もしくは別の適切な媒体で再構成することが意図された乾燥生成物の形のいずれかで調製、包装、および販売してもよい。
【0193】
活性成分を含む錠剤は、例えば、活性成分を、任意に1つまたは複数の追加の成分と共に圧縮または成形することにより作成してもよい。圧縮錠剤は、適切な装置中で、粉末または顆粒調製物などの流動性の形態の活性成分を、任意に結合剤、滑沢剤、賦形剤、界面活性剤、および分散剤の1つまたは複数と混合して圧縮することにより調製してもよい。成型錠剤は、適切な装置中で、活性成分、薬学的に許容される担体、および少なくとも混合物を湿潤させるのに十分な液体の混合物を成型することによって作成してもよい。錠剤の製造において使用する薬学的に許容される賦形剤には、不活性希釈剤、造粒および崩壊剤、結合剤、ならびに滑沢剤が含まれるが、それらに限定されるわけではない。公知の分散剤には、ジャガイモデンプンおよびデンプングリコール酸ナトリウムが含まれるが、それらに限定されるわけではない。公知の界面活性剤には、ラウリル硫酸ナトリウムが含まれるが、それらに限定されるわけではない。公知の希釈剤には、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、微結晶セルロース、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、およびリン酸ナトリウムが含まれるが、それらに限定されるわけではない。公知の造粒および崩壊剤には、トウモロコシデンプンおよびアルギン酸が含まれるが、それらに限定されるわけではない。公知の結合剤には、ゼラチン、アカシア、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれるが、それらに限定されるわけではない。公知の滑沢剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリカ、およびタルクが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0194】
活性成分の出発粉末または他の粒状材料を改変するための造粒技術は、薬学の技術分野において周知である。粉末を典型的には結合材料と混合して、「顆粒化物」と呼ぶ大きい永続する流動性の凝塊または顆粒とする。例えば、溶媒使用「湿式」造粒法は一般に、粉末を結合材料と混合し、水または有機溶媒で、湿式造粒された塊の形成を引き起こす条件下で湿らせ、次いでこれから溶媒を蒸発させなければならないことで特徴づけられる。
【0195】
溶融造粒は一般に、基本的に追加の水または他の液体溶媒非存在下で、粉末または他の材料の造粒を促進するための、室温で固体または半固体の(すなわち、比較的低い軟化点または融点範囲を有する)材料の使用にある。低融点固体を融点範囲の温度まで加熱すると、液化して結合剤または造粒媒質として作用する。液化した固体はそれが接触している粉末材料の表面全体に広がり、冷却後、その中で初期材料が結合している固体顆粒塊を形成する。得られる溶融顆粒化物を次いで経口剤形を調製するために錠剤圧縮に提供してもよく、またはカプセル化してもよい。溶融顆粒化物は固体分散物または固溶体を形成することにより活性物(すなわち薬物)の溶解速度およびバイオアベイラビリティを改善する。
【0196】
米国特許第5,169,645号は、改善された流動特性を有する、直接圧縮可能なワックス含有顆粒を開示している。顆粒は、ワックスを溶融物中で特定の流動改善添加物と混合し、続いて混合物を冷却し、造粒して得る。特定の態様において、ワックスおよび添加物の溶融組み合わせ中でワックス自体だけが溶融し、他の場合には、ワックスおよび添加物の両方が溶融する。
【0197】
本発明は、本発明の方法の範囲内で有用な1つまたは複数の化合物の遅延放出を提供する層、および本発明の方法の範囲内で有用な1つまたは複数の化合物の即時放出を提供するさらなる層を含む、多層錠も含む。ワックス/pH感受性ポリマー混合物を用いて、活性成分が捕捉された胃で不溶性の組成物を得、その遅延放出を確実にしてもよい。
【0198】
非経口投与
本明細書において用いられる、薬学的組成物の「非経口投与」は、対象の組織を物理的に破り、組織の破れた部分から薬学的組成物を投与することによって特徴付けられる任意の投与経路を含む。したがって、非経口投与には、組成物の注射、外科的切開からの組成物の適用、組織を貫通する非外科的創傷からの組成物の適用などによる薬学的組成物の投与が含まれるが、それらに限定されるわけではない。特に、非経口投与には、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内注射、および腎臓透析注入技術が含まれるが、それらに限定されるわけではないことが企図される。
【0199】
非経口投与に適した薬学的組成物の製剤は、滅菌水または滅菌等張食塩水などの、薬学的に許容される担体と混合した活性成分を含む。そのような製剤は、ボーラス投与または持続投与に適した形で調製、包装、または販売してもよい。注射用製剤は、アンプル中または保存剤を含有する複数回用量容器中などの単位剤型で調製、包装、または販売してもよい。非経口投与のための製剤には、 懸濁剤、液剤、油性または水性媒体中の乳剤、ペースト、および埋込み型の持続放出または生分解性製剤が含まれるが、それらに限定されるわけではない。そのような製剤は、懸濁化剤、安定化剤、または分散剤を含むが、それらに限定されるわけではない、1つまたは複数の追加の成分をさらに含んでいてもよい。非経口投与用の製剤の1つの態様において、活性成分を、適切な媒体(例えば、滅菌した発熱性物質を含まない水)により再構成した後、再構成した組成物を非経口投与するための乾燥(すなわち、散剤または顆粒剤)形態で提供する。
【0200】
薬学的組成物は、滅菌注射用水性または油性懸濁剤または液剤の形で調製、包装、または販売してもよい。この懸濁剤または液剤は、公知の技術に従って製剤してもよく、活性成分に加えて、本明細書に記載の分散剤、湿潤剤、または懸濁化剤などの追加の成分を含んでいてもよい。そのような滅菌注射用製剤は、例えば、水または1,3-ブタンジオールなどの、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒を使用して調製してもよい。他の許容される希釈剤および溶媒には、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液、および合成モノまたはジグリセリドなどの固定油が含まれるが、それらに限定されるわけではない。有用な他の非経口投与可能な製剤には、活性成分を、微結晶形態、リポソーム調製物、または生分解性ポリマー系の構成成分として含むものが含まれる。持続放出または埋込みのための組成物は、エマルジョン、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー、または難溶性塩などの薬学的に許容されるポリマー性または疎水性材料を含んでいてもよい。
【0201】
局所投与
薬剤の局所投与に対する障害物は表皮の角質層である。角質層はタンパク質、コレステロール、スフィンゴ脂質、遊離脂肪酸および様々な他の脂質からなる高度に抵抗性の層であり、角化した生細胞を含む。角質層を通っての化合物の透過速度(フラックス)を制限する因子の1つは、皮膚表面上に添加または適用しうる活性物質の量である。皮膚の単位面積あたり適用する活性物質の量が多いほど、皮膚表面と皮膚の下層との間の濃度勾配が大きくなり、皮膚を通っての活性物質の拡散力もまた大きくなる。したがって、より高濃度の活性物質を含む製剤は、その他はすべて等しい低濃度の製剤に比べて、皮膚を通っての活性物質の透過を引き起こす可能性が高く、その量も多く、より一貫した速度で透過する。
【0202】
局所投与に適した製剤には、リニメント、ローション;クリーム、軟膏またはペーストなどの水中油型または油中水型乳剤;および液剤または懸濁剤が含まれるが、それらに限定されるわけではない。典型的には、投与可能な製剤は、例えば、約1重量%〜約10重量%の活性成分を含んでいてもよいが、活性成分の濃度は溶媒中の活性成分の溶解性限度までの高さでありうる。局所投与用製剤は、本明細書に記載の1つまたは複数の追加の成分をさらに含んでいてもよい。
【0203】
透過の増強剤を用いてもよい。これらの材料は皮膚を通過しての薬物の透過速度を高める。当技術分野における典型的な増強剤には、エタノール、モノラウリン酸グリセロール、PGML(モノラウリン酸ポリエチレングリコール)、ジメチルスルホキシドなどが含まれる。他の増強剤には、オレイン酸、オレイルアルコール、エトキシジグリコール、ラウロカプラム、アルカンカルボン酸、ジメチルスルホキシド、極性脂質、またはN-メチル-2-ピロリドンが含まれる。
【0204】
本発明の組成物のいくつかを局所送達するための1つの許容される媒体はリポソームを含んでいてもよい。リポソームの組成およびそれらの使用は当技術分野において公知である(例えば、Constanza、米国特許第6,323,219号参照)。
【0205】
別の態様において、局所で活性な薬学的組成物は任意に、補助剤、抗酸化剤、キレート剤、界面活性剤、発泡剤、湿潤剤、乳化剤、増粘剤、緩衝剤、保存剤などの他の成分と組み合わせてもよい。別の態様において、浸透増強剤を欠く組成物に関して、浸透または透過増強剤を組成物中に含め、これは角質層の中へ、および角質層を通っての活性成分の経皮透過を改善する際に有効である。オレイン酸、オレイルアルコール、エトキシジグリコール、ラウロカプラム、アルカンカルボン酸、ジメチルスルホキシド、極性脂質、またはN-メチル-2-ピロリドンを含む、様々な透過増強剤が当業者には公知である。別の局面において、組成物は、ヒドロトロピー剤をさらに含んでいてもよく、これは角質層の構造における無秩序を増加させるよう機能し、したがって角質層を通過しての輸送を増加させる。イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、またはキシレンスルホン酸ナトリウムなどの様々なヒドロトロピー剤が当業者には公知である。
【0206】
局所で活性な薬学的組成物は、所望の変化に影響をおよぼすのに有効な量で適用すべきである。本明細書において用いられる「有効な量」は、変化が望まれる皮膚表面の領域をカバーするのに十分な量を意味する。活性化合物は、組成物の重量の約0.0001%〜約15%の量で存在すべきである。より好ましくは、活性化合物は組成物の約0.0005%〜約5%の量で存在すべきで;最も好ましくは、組成物の約0.001%〜約1%の量で存在すべきである。そのような化合物は合成または天然由来でありうる。
【0207】
口腔投与
本発明の薬学的組成物は、口腔投与に適した製剤で調製、包装または販売してもよい。そのような製剤は、例えば、通常の方法を用いて作成した錠剤またはロゼンジの形であってもよく、例えば、0.1〜20重量%の活性成分を含んでいてもよく、残りは、経口で溶解可能または分解性の組成物、および任意に本明細書に記載の追加の成分の1つまたは複数を含む。または、口腔投与に適した製剤は、活性成分を含む散剤またはエアロゾル化もしくは微粒化した液剤もしくは懸濁剤を含んでいてもよい。そのような粉末、エアロゾル化、またはエアロゾル化製剤は、分散時には、好ましくは約0.1〜約200ナノメートルの範囲の粒子または液滴の平均サイズを有し、本明細書に記載の追加の成分の1つまたは複数をさらに含んでいてもよい。本明細書に記載の製剤の例は網羅的ではなく、本発明はこれらおよび本明細書に記載していないが、当業者には公知の他の製剤のさらなる改変を含むことが理解される。
【0208】
直腸投与
本発明の薬学的組成物は、直腸投与に適した製剤で調製、包装、または販売してもよい。そのような組成物は、例えば、坐剤、滞留浣腸製剤、および直腸または結腸灌注のための溶液の形であってもよい。
【0209】
坐剤製剤は、活性成分を、通常の室温(すなわち、約20℃)では固体であり、対象の直腸温度(すなわち、健常なヒトでは約37℃)では液体である、非刺激性の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせることによって作成してもよい。適切な薬学的に許容される賦形剤には、カカオ脂、ポリエチレングリコール、および様々なグリセリドが含まれるが、それらに限定されるわけではない。坐剤製剤は、抗酸化剤、および保存剤を含むが、それらに限定されるわけではない、様々な追加の成分をさらに含んでいてもよい。
【0210】
滞留浣腸製剤、または直腸もしくは結腸灌注のための溶液は、活性成分を、薬学的に許容される液体担体と組み合わせることによって作成してもよい。当技術分野において周知のとおり、浣腸製剤は、対象の直腸の解剖学的構造に適合させた送達装置を用いて投与してもよく、その内部に包装してもよい。浣腸製剤は、抗酸化剤、および保存剤を含むが、それらに限定されるわけではない、様々な追加の成分をさらに含んでいてもよい。
【0211】
さらなる投与形態
本発明のさらなる剤形には、米国特許第6,340,475号、第6,488,962号、第6,451,808号、第5,972,389号、第5,582,837号、および第5,007,790号に記載の剤形が含まれる。本発明のさらなる剤形には、米国特許出願第20030147952号、第20030104062号、第20030104053号、第20030044466号、第20030039688号、および第20020051820に記載の剤形も含まれる。本発明のさらなる剤形には、PCT出願国際公開公報第03/35041号、国際公開公報第03/35040号、国際公開公報第03/35029号、国際公開公報第03/35177号、国際公開公報第03/35039号、国際公開公報第02/96404号、国際公開公報第02/32416号、国際公開公報第01/97783号、国際公開公報第01/56544号、国際公開公報第01/32217号、国際公開公報第98/55107号、国際公開公報第98/11879号、国際公開公報第97/47285号、国際公開公報第93/18755号、および国際公開公報第90/11757号に記載の剤形も含まれる。
【0212】
制御放出製剤および薬物送達系
本発明の薬学的組成物の制御放出製剤または持続放出製剤は、通常の技術を用いて作成してもよい。いくつかの場合には、例えば、様々な比率の所望の放出特性を提供するために、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過性膜、浸透圧系、多層コーティング、微小粒子、リポソーム、もしくはミクロスフェア、またはその組み合わせを用いて、用いる剤形をその中の1つまたは複数の活性成分の徐放または制御放出として提供することができる。本明細書に記載のものを含む、当業者には公知の適切な制御放出製剤は、本発明の薬学的組成物と共に用いるために容易に選択することができる。したがって、制御放出のために適合させた、錠剤、カプセル剤、ゲルキャップ、およびカプレットなどの、経口投与に適した単一の単位剤形は本発明に含まれる。
【0213】
ほとんどの制御放出薬学的生成物は、それらの非制御の相手によって達成されるものよりも薬物療法を改善するという共通のゴールを有する。理想的には、内科的処置における最適に設計された制御放出製剤の使用は、最小限の時間で、状態を治癒または制御するために用いる最小限の薬物によって特徴付けられる。制御放出製剤の利点には、薬物活性の延長、投薬頻度の低下、および患者のコンプライアンス増加が含まれる。加えて、制御放出製剤は作用開始時間または薬物の血中レベルなどの他の特徴に影響をおよぼすために用いることもでき、したがって副作用の出現に影響をおよぼすことができる。
【0214】
ほとんどの制御放出製剤は、所望の治療効果を即座に生じるある量の薬物を最初に放出し、長期間にわたってこのレベルの治療効果を維持するための他の量の薬物を徐々に、かつ持続的に放出するよう設計されている。体内で薬物のこの一定レベルを維持するために、薬物を剤形から、代謝され、体から排出される薬物の量に置き換わる速度で放出しなければならない。
【0215】
活性成分の制御放出は、様々な誘導因子、例えば、pH、温度、酵素、水、または他の生理的条件もしくは化合物によって刺激されうる。本発明の文脈における「制御放出成分」なる用語は、本明細書において、活性成分の制御放出を促進する、ポリマー、ポリマーマトリックス、ゲル、透過性膜、リポソーム、もしくはミクロスフェア、またはその組み合わせを含むが、それらに限定されるわけではない、化合物と定義される。
【0216】
特定の態様において、本発明の製剤は、短期、急速オフセット、ならびに制御放出、例えば、持続放出、遅延放出および拍動性放出製剤でありうるが、それらに限定されるわけではない。
【0217】
持続放出なる用語は、長期にわたって薬物の徐々の放出を提供し、必須ではないが、長期にわたって実質的に一定の薬物血中レベルをもたらしうる、薬物製剤を意味するための、その通常の意味で用いられる。期間は一ヶ月以上もの間であってもよく、ボーラスの形で投与した同じ量の薬剤よりも長い放出であるべきである。
【0218】
持続放出のために、化合物に持続放出特性を提供する適切なポリマーまたは疎水性材料と共に化合物を製剤してもよい。したがって、本発明の方法において用いる化合物を微小粒子の形で、例えば、注射により、またはウェーファーもしくはディスクの形で埋め込みにより投与してもよい。
【0219】
本発明の好ましい態様において、本発明の化合物を患者に、持続放出製剤を用いて、単独または別の薬剤との組み合わせで投与する。
【0220】
遅延放出なる用語は、本明細書において、薬物投与後、いくらかの遅延の後に薬物の最初の放出を提供し、必須ではないが、約10分から最大約12時間までの遅延を含みうる薬物製剤を意味するための、その通常の意味で用いられる。
【0221】
拍動性放出なる用語は、本明細書において、薬物投与後に薬物のパルス血漿特性を生じるような様式での薬物の放出を提供する薬物製剤を意味するための、その通常の意味で用いられる。
【0222】
即時放出なる用語は、薬物投与の直後に薬物の放出を提供する薬物製剤を意味するための、その通常の意味で用いられる。
【0223】
本明細書において用いられる、短期とは、薬物投与後、薬物投与後、約8時間、約7時間、約6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、約1時間、約40分、約20分、または約10分、およびその任意の、またはすべての全または部分的増分まで、およびそれらを含む、任意の期間を意味する。
【0224】
本明細書において用いられる、急速オフセットとは、薬物投与後、約8時間、約7時間、約6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、約1時間、約40分、約20分、または約10分、ならびにその任意の、およびすべての全または部分的増分まで、およびそれらを含む、任意の期間を意味する。
【0225】
当業者であれば、日常的実験だけを用いて、本明細書に記載の具体的な手順、態様、特許請求の範囲、および実施例に対する多くの等価物を理解するか、または確認することができるであろう。そのような等価物は本発明の範囲内であり、本明細書に添付の特許請求の範囲によってカバーされると考えられた。例えば、当技術分野において認められている代替物による、日常的実験だけを用いての、溶媒、触媒、圧、空気の状態、例えば、窒素雰囲気、および還元/酸化剤などの、反応時間、反応サイズ/量、および実験試薬を含むが、それらに限定されるわけではない、反応条件における改変は、本出願の範囲内であることが理解されるべきである。
【0226】
本明細書において値および範囲が提供される場合はどこでも、これらの値および範囲に含まれるすべての値および範囲は、本発明の範囲内に含まれることになることが理解されるべきである。さらに、これらの範囲内に入るすべての値、ならびに値の範囲の上限または下限も、本出願によって企図される。
【0227】
以下の実施例は、本発明の局面をさらに例示する。しかし、これらはけっして本明細書に示す本発明の教示または開示を限定するものではない。
【実施例】
【0228】
本発明をここで以下の実施例に関して記載する。これらの実施例は例示のために提供するにすぎず、本発明はこれらの実施例に限定されることはないが、むしろ本明細書において提供する教示の結果明らかになるすべての変動を含む。
【0229】
材料:
特に記載がないかぎり、すべての出発原料および樹脂は商業的供給元から入手し、それ以上精製せずに用いた。
【0230】
ERK/Aktアッセイプロトコル
第1日に、細胞を完全F12培地中(2.5×10
5細胞/mL)で黒色96穴プレートに分注した(1.5×10
4細胞/ウェル)。細胞を4〜6時間インキュベートして接着させた。プレート中の液体を交換し(無血清培地約100μL/ウェル)、プレートを37℃のインキュベーターに戻して終夜置いた。
【0231】
第2日に、TBS、BSA、0.25%トリトンX100/TBS、および4%ホルムアルデヒド/TBSを冷蔵庫から取り出し、室温まで加温した。プレート中の液体を交換し(「SF」培地-90μL/ウェル)、プレート加温器の電源を入れて37℃とした。化合物を希釈した:最終出発濃度10μM:10mM保存溶液2uL+SF培地200uL。溶液をよく混合し、96穴丸底プレートを用いて、プレート全域で連続希釈した:前の希釈液20μL+SF培地90μL。化合物をプレートに加え(10μL/ウェル)、プレート加温器上で5分間インキュベートした。5分後、培地を除去し、50μL/ウェルの4%ホルムアルデヒド/TBSを加えた。系を振盪機上、室温で10分間インキュベートした。固定液を除去し、50μL/ウェルの0.25%トリトンX 100/TBSを加えた。系を振盪機上、室温で15分間インキュベートした。PEアッセイ緩衝液および1×PE緩衝液を冷蔵庫から取り出し、室温まで加温した。プレートを100〜200μL/ウェルの1×TBSで2回洗浄し、ペーパータオル上で水分を吸い取った。2%BSA/TBS-20mg/mLを毎日新しく作成した−500mg BSA/25mL TBS。50μlの2%BSA/TBSをウェルごとに加え、系を振盪機上、室温で45分間インキュベートした。各ウェルを100〜200μLのTBSで1回洗浄し、続いて水分を吸い取った。一次AbをPEアッセイ緩衝液中での希釈により調製した:CST pERK 1/2;1:400;およびCST pAkt;1:400。50μLの一次抗Abをウェルごとに加え、系を振盪しながら室温で1〜1.5時間インキュベートした。系をPE洗浄緩衝液を用い、150〜200μL/ウェルで4回洗浄し、洗浄の間に水分を吸い取った。1回目の洗浄は短時間洗浄で、その後の洗浄はそれぞれ3〜5分間であった。二次Ab(PE DELFIA Eu標識抗ウサギ抗体)を、ラベルどおりの希釈を用いて調製した。100μLのPE増強溶液をウェルごとに加え、カバープレートを別の黒色プレートでただちにカバーした。系を振盪機上、室温で5〜15分間インキュベートし、プレートをPackard Fusionで読み取った。
【0232】
プレートによるphos-ERKおよびAktアッセイを、DELPHIAアッセイ法を用いて進めてもよい。標準の蛍光検出では、試薬およびマイクロプレート干渉が高いバックグラウンドおよび低い感度の一因となりうる。DELFIAは時間分解蛍光定量法の原理を用いて、バックグラウンド干渉を除去する。ランタニドキレートは、長い蛍光減衰時間と、わずかなバックグラウンド干渉で、ある波長での減衰シグナル測定を可能にする特性である、大きいストークスシフトの両方を有する。加えて、ランタニドは、鋭い発光ピークおよび高い蛍光強度を示す安定な蛍光シグナルを放出する。DELFIAアッセイの原理は、標準のサンドイッチELISAと実質的に同じである。分析物をまずコーティングしたマイクロプレート上に捕捉し、続いて検出抗体を加えて、サンドイッチを完了する。ELISAとは異なり、DELFIAは、それ自体では最小限の蛍光を示すランタニドキレート標識した検出抗体を用いる。DELFIAに特有の増強段階が、抗体複合体からランタニドを放出して、保護ミセル内に含まれる新しい、蛍光強度の高いランタニドキレートを生成する。4. 増幅された蛍光シグナルを、時間分解蛍光定量法を用いて検出する。この検出法は非特異的な干渉蛍光バックグラウンドシグナルを除去し、DELFIAで公知のすぐれた感受性を提供する。
【0233】
細胞株および細胞培養
MDA-MB-231(MDA-231)およびMDA-MB-436(MDA-436)ヒト乳癌細胞をATCC(Manassas, VA)から購入した。PC3-ML亜系統を親PC-3から以前に記載されたとおりに誘導した(Wang & Sterns, 1991, Differntiation 48:115-25)。すべての細胞を10%ウシ胎仔血清(Hyclone, Logan, UT)および0.1%ゲンタマイシン(Invitrogen, Carlsbad, CA)を含むDMEM中で増殖させ、37℃、5%CO
2で維持した。インビボで行う実験のために、細胞を、America Pharma Source(Bethesda, MD)からのレンチウイルスベクターを用いて、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)を安定に発現するよう改変した。
【0234】
形質移入および安定な細胞株の選別
野生型および突然変異型CX
3CR1アイソフォームのcDNAをpEGFP-N1ベクター(Clontech, Inc., Mountain View, CA)に挿入した。MDA-436に3μgのプラスミドDNAを、Lipofectamine 2000形質移入システム(Invitrogen)を製造者の指示に従って用いて形質移入した。安定な形質移入細胞をジェネテシン(Invitrogen)を用いて選別した。
【0235】
免疫組織化学および組織アレイ分析
乳房組織マイクロアレイ(BRC1502、BR1002)をUS Biomax(Rockville, MD)から入手し、CX
3CR1に対する染色を、以前に記載されたとおり(Jamieson et al., 2008, Cancer Res. 68:1715-22)、Abcam(Cambridge, MA)から入手したCX3CR1に対する抗体(7201)を3.3μg/mlの濃度で用いて実施した。合計で、乳癌の組織中核106例および健常乳房組織中核36例を調べた。
【0236】
転移の動物モデル
5週齢の雌CB17-SCID、C57B1/6およびBalb/cマウスはTaconic(Germantown, NY)から入手し、無菌バリアー内に収容した。C57B1/6-FKN-/-トランスジェニックマウスはSchering-Plough(現在はMerck-Schering Plough、Whitehouse Station, NJ)から入手し、施設内で飼育した。Balb/cおよびCB17-SCIDマウスは、それぞれ接種後24時間および72時間の時点で、骨播種乳癌細胞の検出のために用いた。C57B1/6マウスは、接種後24時間の時点で骨格に播種した癌細胞を検出するために、C57B1/6-FKN-/-トランスジェニックマウスの同系統対照として用いた。6〜8週齢で、マウスをケタミン(80mg/kg)およびキシラジン(10mg/kg)で麻酔し、左心室にヒト癌細胞(全量100mlのDMEM/F12中、MDA-436およびPC3-ML細胞については5×10
5およびMDA-231細胞については1×10
5)を接種した。血液循環への送達が成功したことを確認するために、青色蛍光ポリスチレンビーズ(直径10μm、Invitrogen-Molecular Probes)を同時注射した。すべての実験はNIHの動物の人道的使用についてのガイドラインに従って行った。動物の使用に関連するすべてのプロトコルは大学の委員会(Drexel University College of Medicine Committee for the Use and Care of Animals)によって承認された。
【0237】
組織調製および癌細胞検出
動物を屠殺し、組織を固定し、必要があれば0.5M EDTA中で脱灰し、以前に記載されたとおりにO.C.T.包埋剤(Electron Microscopy Sciences, Hatfield, PA)中で凍結した(Russell et al., 2009, Oncogene 28:412-21)。厚さ80μmの連続組織切片を、Microm HM550クリオスタット(Mikron, San Marcos, CA)を用いて得た。各後脚および軟部組織器官の切片をスライドガラス上に移し、-20℃で保存し、Olympus IX70蛍光倒立顕微鏡またはOlympus SZX12蛍光立体顕微鏡のいずれかを用いて、癌細胞を調べた。明視野および蛍光画像をOlympus DT70 CCDカラーカメラで取得した。
【0238】
マウス骨髄中の可溶性FKNの検出
骨髄を野生型C57B1/6マウスまたはFKNを持たないマウスの後脚から採取した。細胞成分を4℃、2000r.p.m.で10分間遠心沈降することにより除去した。可溶性FKNを、以前に記載されたとおり(Jamieson et al., 2008, Cancer Res. 68:1715-22)、マウス用のELISA DuoSetキット(R&D Systems)を用いて検出した。
【0239】
インビトロ実験プロトコル
細胞を4時間血清飢餓状態にし、次いで50nMの組換えヒトFKN(R&D systems, Minneapolis, MN)に指定の時点で曝露した。
【0240】
SDS-PAGEおよびウェスタンブロッティング
細胞溶解物を得た後、以前に記載されたもの(Shulby et al., 2004, Cancer Res. 64:4393-98)に少しの改変を加えて、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびウェスタンブロット分析を行った。膜を、CX
3CR1に対する抗体(0.5μg/ml、Torrey Pines Biolabs, East Orange, NJ)およびアクチン(Sigma, St. Louis, MO)をプローブに用い、阻止試薬として5%ミルクを用いて調べた。膜を、phospho-p44/42 MAPK(Thr202/Tyr204、Cell Signaling)および全p44/42 MAPK(Cell Signaling)を標的とする抗体もプローブに用いて調べた。すべての一次抗体インキュベーションは4℃で終夜実施した。一次抗体結合を、セイヨウワサビペルオキシダーゼ結合抗ウサギ二次抗体(Pierce, Rockford, IL)を用いて検出した。化学発光シグナルをSuperSignal West Femto試薬(Pierce)を用いて得、Fluorochem 8900撮像システムおよび関連のソフトウェア(Alpha Innotech, San Leandro, CA)を用いて検出した。
【0241】
免疫蛍光および共焦点顕微鏡検査
細胞を15mmのカバーガラス上で増殖させ、4%ホルムアルデヒドにより4℃で固定し、透過化処理せず、阻止剤中CX
3CR1に対する抗体(Torrey Pines Biolabs)と共に室温で30分間インキュベートした。CY3結合二次抗体(Jackson Immunoresearch, West grove, PA)を用いて一次抗体を検出し、室温で30分間インキュベートした。核染色をHoechst 33343で行った。試料を、開口数0.8のPlan Apochromat 20×対物レンズを備えたAxio Imager.Zlm顕微鏡に接続したLSM5 EXCITER共焦点システム(Carl Zeiss, Usa)を用いて撮像した。専用ソフトウェアのバージョン4.2を用い、z軸に沿って2μmのステップサイズを用いて画像を収集した。
【0242】
インビトロでのCX
3CR1シグナル伝達
細胞を4時間血清飢餓状態にし、次いで50nMの組換えヒトFKN(R&D systems, Minneapolis, MN)に指定の時点で曝露した。
【0243】
細胞表面CX
3CR1タンパク質の単離
MDA-436乳癌細胞によって原形質膜レベルで発現されたCX
3CR1の野生型または機能突然変異型いずれかの量を、Pierce(Rockford, IL)から入手した専用キット(カタログ番号89881)を製造者が提供するプロトコルに従って用い、細胞表面ビオチン化により測定した。
【0244】
統計学
インビボ試験における統計学的有意性は、Windows(登録商標)用のGraphPad Prismバージョン3.0(GraphPad Software, San Diego, CA)を用い、片側スチューデンツT検定を用いて判定し、データは平均±平均の標準誤差(S.E.M.)で表す。
【0245】
実施例1:
癌転移におけるCX3CR1受容体の関与
乳腺癌からの骨格転移はこの腫瘍に関連するほとんどの疾病率死亡率の原因であり、治療に対する重大で未解決の問題である。循環中の癌細胞の骨格への到達は、まず、骨髄洞様血管を裏打ちする内皮細胞との接着性相互作用と、次いで、周囲の骨間質によって産生される化学誘引分子に向かっての溢出に依存する。
【0246】
本明細書に記載の試験は、乳癌細胞によって発現されるCX
3CR1受容体と骨組織内のフラクタルカインとの間の接着性および走化性相互作用についての説得力のある証拠を提供する。CX
3CR1タンパク質を正常および悪性乳腺の組織マイクロアレイ中で検出した。血行性転移の前臨床動物モデルを用いて、この受容体を高レベルで発現する癌細胞は骨格に播種する傾向がより高いことが判明した。さらに、フラクタルカインを持たないトランスジェニックマウスによる試験により、CX
3CR1の接着性および走化性リガンドの除去は乳癌細胞の骨格播種を劇的に損なうことが明らかとなった。最後に、外因性のCX
3CR1の野生型または機能突然変異型を発現するよう改変された細胞を用いて、乳癌細胞の骨格への停止におけるこの受容体の決定力のある役割を決定的に確認した。
【0247】
CX
3CR1-FKN機能的相互作用による直接干渉を試験した。このために、FKNがないことによって癌細胞の骨格への到達におよぼされる影響を、ケモカインを持たないトランスジェニックマウスモデルを用いて試験した。これらのマウスの血液循環中にMDA-231細胞を与えると、標的とする骨の検査により、播種した癌細胞の数の劇的な減少が見られ、これはFKN発現動物に比べて60〜70%低下した。このプロセスにおけるCX
3CR1の役割をさらに確立するために、以前にこのケモカイン受容体を高レベルで発現することが示され、高度に骨転移性である(Russell et al., 2009, Oncogene 28:412)、PC3-ML前立腺癌細胞を用いて類似の実験を行った。MDA-231細胞で見られたとおり、PC3-ML細胞も、FKNを持たないマウスに接種すると、骨へのそれらの到達が有意に損なわれた(
図4)。
【0248】
乳癌細胞の播種における他のケモカイン受容体の関与が提唱されているが、今日までケモカインリガンドを持たないトランスジェニックモデルは用いられていないことが強調されるべきである。特に、そのケモカインリガンドCXCL12-SDF-1ノックアウトマウスは致命的な表現型を提示するため、CXCR4の役割はこの様式では調べることができなかった。
【0249】
したがって、これらの試験は、組になっているケモカインを遺伝的に除去することによって、癌細胞の転移能力におけるケモカインの役割を決定的に確立するための、最初の前臨床研究である。
【0250】
全体として、これらの知見は、選択的かつ強力な薬理的化合物によってCX
3CR1-FKN相互作用を阻止することで、動物モデルにおけるFKN発現の遺伝子操作によって得られた結果を再現し、乳癌細胞の骨格播種を有効に妨害しうることを示唆している。これらのアンタゴニストは、転移性播種の危険度が高い乳癌患者で行う臨床試験において、予防的戦略を用いて試験するのに利用可能な最初のものであろう。
【0251】
CX
3CR1シグナル伝達の特徴付けや、免疫学および特にリウマチ学のプロセスにおけるその機能的役割を理解することに捧げられた妥当な数の試験にもかかわらず、その活性化およびシグナル伝達を損なうための薬理学的ツールはまだない。
【0252】
1つの局面において、本発明は、循環している癌細胞の異なる器官、特に骨格への到達を阻害または軽減する、ケモカイン受容体CX
3CR1の新規非ペプチド小分子アンタゴニストの同定を含む。戦略を
図5に示す。
【0253】
実施例2:
CX3CR1の新規アンタゴニストの合成
出発点としてCX
3CR1と類似のケモカイン受容体に結合する非選択的ケモカインアンタゴニストを用いて、3つの異なる化学系列からの類縁体を合成し、薬品化学を用いて最適化して、新規および特異的CX
3CR1アンタゴニストを生成する。
【0254】
ケモカイン受容体はクラスAのGタンパク質共役受容体(GPCR)スーパーファミリーに属している(gerard & Rollins, 2001, Nat. Immunol. 2:108)。構造活性相関および突然変異誘発試験は、7回膜貫通バンドル内部に一般的結合ポケットがあることを示唆している(Allen et al., 2007, Annu. Rev. Immunol. 25:787)。
【0255】
CX
3CR1の非ペプチド小分子アンタゴニストの同定は、類似の受容体の特別な構造(priviledged structure)モティーフおよび非選択的リガンドを結合および機能的活性の阻害についてスクリーニングする、ファルマコフォアアプローチに基づいている。ケモカインFKNとその受容体CX
3CR1との分子相互作用が、突然変異誘発を通じて大々的に試験されてきた。塩基性残基群および1つの芳香族残基が受容体相互作用にとって重要な鍵となるホットスポットを規定する(Mizoue et al., 2001, J. Biol. Chem. 276:33906)。
【0256】
N末端付近の塩基性残基は、受容体上の酸性残基、おそらくはケモカイン受容体に共通のTM7における保存されたグルタミン酸(Glu)残基への結合を示唆している(Rosenkilde & Schwartz, 2006, Curr. Top. Med. Chem. 6:1319)。フェニルアラニン残基(Phe)の必要性は、受容体における芳香族ポケットとの関与を示唆している。膜結合FKNは7回膜貫通ヒトサイトメガロウイルス受容体US28に、ナノモルでの親和性で結合する。US28はFKNと相互作用するだけでなく、MCP-1(CCL2)などのCCケモカインともナノモルの親和性で結合する(Kledal et al., 1998, FEBS Lett. 441:209)。
【0257】
興味深いことに、CCR2およびUS28の非ペプチド小分子リガンドが公知で、これらは、いずれも受容体親和性にとって重要な、塩基性アミンおよび芳香族部分などの共通のファルマコフォア特性を有する。この証拠に基づき、2つの初期化合物を合成した。
【0258】
以前にUS28の逆アゴニストであると報告された化合物1を、
図6に従って合成した。化合物1はCCR1のアンタゴニストとして機能するとも報告されたため、周知のCCR1アンタゴニストである化合物2を、
図7に従って合成した。
【0259】
次いで、化合物1を、可溶性FKNによる刺激後に、CX
3CR1による下流細胞内経路の活性化を阻害するその能力について評価した。これらの実験において、CX
3CR1を過剰発現するよう改変されたMDA-MB 436ヒト乳癌細胞を、化合物1と共に30分間インキュベートした後、50nM FKNで5分間処理した。
図8は、化合物1がFKNによって誘導されるERKのリン酸化を阻止することにより、MAPK経路の活性化を阻害しえたことを示している。
【0260】
化合物1は、合理的なファルマコフォアに基づくアプローチを基に見いだされた、効力は弱いが初めての小分子CX
3CR1アンタゴニストであり、このアプローチは特異的CX
3CR1アンタゴニストへの最適化のための他の新しいリード化合物発見のために見込みがある。
【0261】
非ペプチドUS28逆アゴニスト、1、およびCCR1アンタゴニスト、2は、CX
3CR1アンタゴニストとしての出発点を提供する。化合物1および2の様々な類縁体を合成し、親和性、選択性、および機能的有効性について評価した。得られた構造活性相関は、効力ならびに薬物様性質および選択性の改善を導くことになろう。化学合成は、CCR1、US28、およびCCR2アンタゴニストまたは逆アゴニストに基づき、3つの異なる化学物質系列をリード化合物最適化のために提供する。ほとんどの小分子ケモカインアンタゴニストに共通で、CX
3CR1に対するFKNの親和性において重要であることが示された、鍵となる塩基性アミンを保持する。FKNにおいて重要であり、小分子ケモカインアンタゴニストの共通の特徴であることが示された芳香族モティーフも、設計の中に組み込む。新しい類縁体の構築は、右側の塩基性アミンを含むアリールピペリジン中核、アルキル、シクロアルキル、またはアミド結合リンカーからなる中心の中核、および右側の典型的にはハロゲンまたはトリフルオロメチル基で置換された芳香族モティーフのミックスアンドマッチ戦略を可能にするモジュラーアプローチに基づいている。
【0262】
文献中には小分子CCR1受容体アンタゴニストの多くの例があり、これらも芳香族部分および塩基性アミンの共通のファルマコフォア特性を有する。US28逆アゴニストの化合物1は、弱いCX
3CR1拮抗作用を示し、したがって、
図9に強調した一般的戦略に続くさらなる最適化の焦点である。
【0263】
一連の類縁体は、芳香環への置換などの分子の左側への様々な変更、中心の中核に対する鎖長および配座拘束を探るためのリンカーの改変、ならびに分子の右側のアリールピペリジン環への芳香族置換および環サイズの改変を含む。
【0264】
図10は、化合物2を改変するための戦略を強調している。類縁体には、9-キサンテニル芳香族モティーフが、電子供与、電子吸引、H-結合供与体および受容体、ならびに公知の薬物およびGPCRリガンドで見られるフェニルインダン様およびフルトロリン様の特別なビアリール構造での置き換えによって改変されている化合物が含まれる。中心の中核は、逆アミドおよびエーテル置換によりアミドリンカーを変動させることによって改変し、中心のピペリジン環の環サイズを変動させて5、6および7員環を得る。
【0265】
ベンジル基を改変して、最適なアルキル連結鎖の長さ、芳香族置換、およびフェニル環の複素環置換を調べる。これらの類縁体を、標準の頑強な化学的方法、および適宜、効率的な並行合成法を用いて合成する。このモジュラーアプローチは、異なる化学系列の全体にわたって様々な最適化したモティーフを効率的な様式でミックスアンドマッチして、抗力および選択性を速やかに最適化する能力を促進する。
【0266】
第三の化学系列も、CCR2アンタゴニストを改変する戦略を用いて調べる(
図11)。様々な類縁体を作成して、右側のピペリジン環の環サイズ、電子吸引基および供与器による芳香族置換、H-結合供与および受容体改変の親和性および機能的活性に対する影響を探る。中心中核類縁体を作成して、連結鎖の鎖長を評価し、環の配座拘束を誘導し、芳香族部分の置換を変動させる。右側を変動させてアミド連結を調べ、芳香環への様々な変化を評価する。一連の新規リード化合物を発見するために、このCCR2アンタゴニストの周辺で簡潔で有益な類縁体群を合成する。文献中で利用可能な現行の情報は、小分子非ペプチドケモカインアンタゴニストは非特異的である傾向があり、特異性はリード化合物最適化を通じて組み込まれることを示している。複数の化学系列の最初のものはすでに弱い活性を示しているが、これらの探索によりいくつかのリード化合物系列を発見する優れた機会が得られる。次いで、リード化合物最適化により、CCR2またはCCR1などのケモカインを最適化することに焦点を合わせたプログラムから、強力な文献上の先例に基づき、強力、特異的、かつ薬物様のCX
3CR1アンタゴニストが得られる。
【0267】
実施例3:
結合アッセイ
前述の異なる戦略に従い、各化学系列のために合成した化合物を、リード化合物系列を最適化する前に、まずCX
3CR1へのそれらの結合親和性についてスクリーニングする。
【0268】
MDA-436は最近、非常に低いレベルのCX
3CR1を発現すると報告されている。外因性にCX
3CR1を発現するよう改変されたMDA-436細胞および受容体を外因性に発現するSKBR3細胞を用いる。細胞を96穴プレートに播種し、これをMultiscreen HTS真空マニホルド装置(Millipore)に固定する。放射性FKN(
125I-FKN、25μCi、925kBq、Perkin Elmer)を50pMの濃度で用い、それぞれの新しく合成した化合物を10
-10Mから出発して10
-6Mまでの5つの異なる濃度で4つ組で試験する。ケモカインの非放射性型も、評価する化合物に対して用いるのと同じ濃度で各アッセイに含める。非特異的結合は0.1μMの非標識FKN存在下でもとめた結合と考える。各競合結合アッセイを4℃で3時間行う。IC
50値を非線形回帰によりもとめ、K
DおよびBmax値を以下の式:
K
D=IC
50-Lおよび=B
0(1+(K
D/L)
を用いて計算する。
【0269】
次いで、CX
3CR1に対してK
i<100nMの親和性を示す化合物をCCR1、CCR2およびUS28と比べてのそれらの選択性について、以前に報告されたとおり(Liang et al., 2000, J. Biol. Chem. 275:19000)、各受容体を外因性に過剰発現するよう改変されたCOS-7細胞を含む結合実験で試験する。各受容体型に対してK
i>10μMの化合物を次の段階に移すことになる。
【0270】
最適化試験により、良好な薬物様特性を備えた強力かつ選択的なリード化合物系列を生成するための、3つの異なる化学系列の構造活性相関が得られる。水溶性および親油性などの、リード化合物の物理化学的性質の評価を実施する。したがって、リピンスキーの法則によって指示されるパラメーターを超えないようにする一方で、水素結合の増加および非極性基の追加が考慮される。
【0271】
次の段階は、好ましいADME特性(吸収、分布、代謝および排出)および毒性の側面を有する化合物の同定で、最終ゴールは不適切な薬物候補の除外である。非特異的ケモカイン受容体アンタゴニストから出発してのファルマコフォアアプローチを用いるため、これらの化合物のいくつかのADME特性はすでに確立されているか、または容易に外挿することができる。したがって、異なるライブラリの高処理量スクリーニングと比べた場合、本明細書に記載のアプローチはリード化合物としての見込みから薬物としての見込みに移動するための最適化を有意に促進する(
図5)。
【0272】
(a)溶解性
化合物の溶解性を、LC-UVまたはLC-MS/MS分析を用いて、可溶性溶媒に比べて水中でのその溶解を評価する。より低い濃度範囲で水溶性を判定するためのいくつかの方法があるが、必要があれば、試験化合物の正確な溶解性限度を、より困難なHPLCまたはLC/MS/MS法を用いて、飽和量の固体試験化合物で判定する。
【0273】
(b)血漿およびミクロソーム安定性
代表的類縁体の肝ミクロソーム存在下での安定性を、試験化合物を0.5mg/mlのミクロソーム濃度で30分間インキュベートし、補助因子としてNADPHを用いて評価する。この分析により、バイオアベイラビリティを最適化し、チトクロムP450の阻害を測定することによって試験することになる、試験化合物の肝毒性の可能性を理解するために必要な、重大な情報が得られる。ヒトおよび動物モデルの前臨床種における最適化のための重大な特性である、固有のクリアランス(Cl
int)を、マウス、ラット、イヌ、およびヒトの4種に対して、非線形回帰による一次排出定数に基づいて判定する。ラット、イヌ、サル、およびヒト血漿中の試験化合物安定性もLC-MS/MS分析によりもとめる。
【0274】
(c)透過性
このアッセイは、薬物候補の経口投与についての可能性を評価する判断基準である。Caco-2ヒト結腸細胞を、固体支持体フィルター上で増殖させた局在単層として用いる。試験する化合物を単層の一方の側に加え、他の側で検出される化合物の濃度を、LC-MS/MS分析を用いて測定し、その透過性の指標として用いる。
【0275】
(d)hERG
このアッセイは、薬物候補の心毒性の可能性を評価し、これを心イオンチャネルの公知の遮断薬(hERGチャネルに対するシサプリドまたはテルフェナジン)と比較し、ヒト心筋細胞を用いて実施するパッチクランプによってスクリーニングする。
【0276】
実施例4:
インビトロでのヒト乳癌細胞のCX3CR1依存性接着、遊走およびシグナル伝達に対する化合物の阻害活性
良好な薬物様特性を有する化合物を、CX
3CR1の機能的活性を妨害するそれらの能力について試験する。まず、CX
3CR1に強力に結合することに加えて、FKNとのその相互作用を阻害することもできる化合物を同定する。このプロセスは、ケモカインの膜結合型との強力かつ安定な結合の確立を通じて、速やかに行う。CX
3CR1によって仲介される接着はGタンパク質活性化および下流のシグナル伝達を必要としないが、細胞遊走の促進は細胞内シグナルを伝達する能力に依存する。したがって、CX
3CR1発現癌細胞の、可溶性FKNの濃度勾配に向かっての走化性を、新しく合成した化合物存在下で評価する。最後に、PI3K/AktおよびMAPKなどの2つの下流シグナル伝達経路の活性化を、選択した薬物候補と共に、または薬物候補なしで、可溶性FKNに曝露したCX
3CR1発現癌細胞を用いて直接評価する。
【0277】
(a)接着
これらの実験を、骨髄洞様血管において記録されたものを再現するせん断力を生じる、動的流動条件下で実施する。したがって、ヒト骨髄内皮細胞(HBME)に緑色蛍光プローブ(CellTracker, Invitrogen)を添加し、コラーゲンおよびフィブロネクチンをコーティングした24×50mmカバーガラスに播種し、単層として増殖させる(
図12)。
【0278】
カバーガラスを平行平板フローチャンバー(RC-27N, Warner)に固定する。1%ウシ血清アルブミンを含む流動接着食塩水緩衝液(320mOsm)を用いて、細胞単層を10分間インキュベートする。懸濁液中(2×10
5/ml)の、赤色蛍光プローブで標識したMDA-231乳癌細胞を、回転速度計で制御したマイクロポンプ(Biotechs)を用いてチャンバーを通して灌流する。用いる流速は、インビボでの骨髄微小血管における記録(Mazo et al., 10998, J. Exp. Med. 188:465)と類似のせん断力を生じ、記載のとおり(Kerfoot et al., 2003, Eur. J. Immunlol. 33:729)に計算して0.1から10dyne/cm
2の間を含んでいた。
【0279】
細胞をチャンバー中で5分間流動させた後、灌流速度を上げてせん断力を10dyne/cm
2とし、したがって接着がゆるい細胞および非接着細胞を洗浄する。画像を、Olympus IX-70顕微鏡に接続し、Metamorph/Metafluorソフトウェア(Molecular Devices)を備えたコンピューターで管理する、CCD MicroMax 1300YHSデジタルカメラ(Roper Scientific)を用いて、2秒ごとにストリーム取得する。試験する各推定CX
3CR1アンタゴニストを、チャンバー中で細胞を灌流する前にHBMEと共に30分間インキュベートし、その存在下、または非存在下のいずれかで、接着細胞の数を10の別々の顕微鏡視野を調べることにより測定する(Shulby et al., 2004, Cancer Res. 64:4693)。
【0280】
(b)遊走および走化性
蛍光MDA-231乳癌細胞をFluoroBlockインサート(孔径8μm、BD Biosciences)の上面にインサートごとに8×10
4の濃度で播種する。次いで、インサートを24穴プレートに移す。各ウェルはFKN(50nM)領域と共に、またはなしで、無血清培地を含む(Shulby et al., 2004, Cancer Res. 64:4693)。次いで、細胞を24穴プレートに移した後24時間遊走させる。膜を通過して遊走する細胞だけを検出するために、底の照明を用いるようセットした、Wallac Victor2マイクロプレート読み取り器(Perkin Elmer)を用いて、インサートを検査する。
【0281】
(c)細胞内シグナル伝達
MDA-231およびSKBR3ヒト乳癌細胞を50nM FKNに異なる時点で、試験するために選択した化合物非存在下または存在下で曝露する。全細胞溶解物を得、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびウェスタンブロット分析を以前に記載のとおり(Russell et al., 2009, Oncogene 28:412;Dolloff et al., 2005, Oncogene 24:6848)に実施する。膜をphospho-p44/42 MAPK(Thr202/Tyr204)、全p44/42 MAPK、phospho-Akt(Ser-473)および全Akt(すべてCell Signalingから)を標的とする抗体をプローブに用いて調べる。すべての一次抗体インキュベーションは4℃で終夜実施する。一次抗体結合を、セイヨウワサビペルオキシダーゼ結合抗ウサギ二次抗体(Pierce)を用いて検出する。化学発光シグナルをSuperSignal West Femto試薬(Pierce)を用いて得、Fluorochem 8900撮像システムおよび関連するソフトウェア(Alpha Innotech)で検出する。
【0282】
CX
3CR1機能活性の阻止において試験した、それぞれ新しく合成した化合物の効力を、用量反応曲線として作成することによるそのIC
50を計算することで測定する。受容体結合親和性(K
i<100nM)および選択性(K
i>10μM)について以前に採用されたスクリーニング基準に従い、IC
50<1μMを示す化合物だけを次の相に移す。
【0283】
実施例5:
動物モデルにおける乳癌細胞の転移能力に対する潜在的CX3CR1アンタゴニストの阻害活性
35の異なるGPCR群を用いて、化合物の選択性をスクリーニングする。各化合物のバイオアベイラビリティを確立し、脳組織に対するその潜在毒性を調べる。薬物動態(PK)試験により、その後の動物試験で用いる初回量および投与間の血漿濃度を特定する。転移性播種の2つの異なる動物モデルを用い、免疫不全または免疫応答性いずれかのマウスを用いる。
【0284】
(a)選択性
特別に構築したプラットフォームは、非ペプチド受容体(アデノシン、ドーパミン、カンナビノイドなど)およびペプチド受容体(アンギオテンシン-II、ブラジキニン、エンドセリンなど)の中で選択される、35の異なるGPCRを含む。前述の複数のスクリーニング相を通過した、新しく合成したCX
3CR1のアンタゴニストを分析し、特別の試験プラットフォームに含まれる35のGPCRのどれよりも、CX
3CR1に対して1000×の選択性を示す場合にのみ次の相に移す。
【0285】
(b)薬物動態
十分に有望と考えられる新しい化合物をマウス薬物動態アッセイでスクリーニングして、バイオアベイラビリティ、血漿濃度、および脳/血漿曝露を判定する。この分析は、各マウスにおけるインライフ(in-life)での知見、アッセイの各時点での血漿濃度、各試験化合物のAUC(IV対PO曲線下面積)に基づく相対バイオアベイラビリティ(%F)および時間に対する濃度のグラフを提供する。IV投与後の半減期、クリアランス、および分布の量に加えて、各化合物のC
maxおよびT
maxを含む、適切な薬物動態パラメーターが得られる。
【0286】
この試験のために、体重20〜35グラムの間の、意識があり、絶食状態の、雌CD-1マウスを用いる。時点のために3匹のマウスを用い、IV投与経路のために21匹のマウス、およびPO投与経路のために18匹のマウスを用いる。血液試料を心穿刺により採取する。
【0287】
新しく合成したCX
3CR1のアンタゴニストの薬物様特性をさらに確立することに加えて、この試験は転移性播種の動物モデルにおける実験を実行するための非常に重要な情報を提供する。例えば、各化合物について以下のパラメーターを特定することになる:血漿濃度を次の段階で用いることになる定常状態にするための、初回量;および次の段階で用いることになる維持用量を外挿するための、投与間の平均血漿濃度。
【0288】
(c)脳毒性
CX
3CR1受容体は、中枢神経系(CNS)の常在炎症細胞である小膠細胞によって発現される。CX
3CR1発現および/または機能を変えると、小膠細胞反応を調節不全にし、神経毒性を誘導することが判明している(Cardona et al., 2006, Nat. Neurosci. 9:917)。したがって、CX
3CR1アンタゴニストによるCNSの透過は、重篤な毒性効果を生じうる。これらの問題は、新しく合成したCX
3CR1アンタゴニストの構造をイミプラミンおよびバクロフェンなどの血液脳関門(BBB)に対する周知の高透過性と比較することによって、部分的に対処することができよう。加えて、発明者らのインビボ転移モデルに用いたものに年齢および体重をマッチさせたマウスに、試験する化合物を投与し、CNS組織および脳脊髄液中で得られる濃度をLC-MS/MS分析により測定する。脳/血漿曝露率<0.1を、インビボ試験に進めるための各CX
3CR1アンタゴニストの最低要件と考える。
【0289】
最後に、原発腫瘍の成長および/または転移疾患の存在がBBB透過性を変えうる全身状態を誘導し、CX
3CR1アンタゴニストをCNSに接近させる可能性を排除するために、マウスを脳の形態の肉眼的変化、神経細胞の欠損およびびまん性炎症の徴候について検査する。
【0290】
(d)血行性経路を通じての癌細胞の播種
eGFPを安定に発現しているMDA-231ヒト乳癌細胞を、免疫不全SCIDマウス(CB17-SCRF、6週齡、雌、体重約35g)の左心室に接種する。5×10
4蛍光細胞/100μlの懸濁液を、100mg/kgケタミンおよび20mg/kgキシラジンであらかじめ麻酔した動物に27ゲージ針を用いて送達する(Russell et al., 2010, Cancer Res. 70:4195;Dolloff et al., 2007, Cancer Res. 67:555)。異なる器官を回収し、凍結切片作成用に処理し、厚さ80μmの連続切片を蛍光立体顕微鏡で検査する。接種後24時間または72時間のいずれかで安楽死させた動物の>80%で、大腿骨下部および脛骨上部の、多くの場合に両側で、単一癌細胞が一貫して検出されうる(
図13)。動物を試験の全期間を通して進行させると、これらの細胞は4週間以内に肉眼的骨転移を生じる。接種直後の肺および副腎でも単一細胞が特定され得るが;しかし、これらの細胞は最終的には消失して、腫瘍を生成することはできず、これらの器官に接着し、溢出するそれらの能力は生存し、増殖する能力と等しくはないことを示している。したがって、試験のこの部分は主として、乳癌細胞の骨格への接着および溢出に対するCX
3CR1アンタゴニストの阻害効果に焦点を合わせている。接種の72時間後に、骨髄洞様血管に到達した細胞のほとんどは周囲の間質中に溢出していたため(Muller et al., 2001, Nature 410:50)、この時点をその後の実験のために用いる。各アンタゴニストをマウスに、癌細胞接種の直前に、本明細書に記載のPK実験によって外挿した初回量で投与する。
【0291】
(e)統計学的検定力および試料計算
CX
3CR1アンタゴニストによる骨転移能力低下の評価には、試料サイズ計算が必要である。骨格(およびおそらくは他の部位)に播種した細胞数の少なくとも50%以上の減少を、骨転移能力の有意な損傷と考える。
【0292】
所望の検定力0.80、有意性レベル(α)0.05、集団平均における差(δ)50および標準偏差(σ)50を考慮して、これらの実験のために計算した試料サイズはマウス15匹であって、これは実験あたりマウス5匹で、全細胞接種実験を3回行うことに対応する。最大9つまでの新しく合成したアンタゴニストを試験する場合、これらの実験は15×9=135匹のマウスを必要とする。対照実験も15匹のマウスを必要とし、したがってこの下位目的(sub-aim)は合計で150匹のマウスを必要とする。
【0293】
(f)乳腺脂肪織からの乳癌細胞の播種および転移
ヒト癌細胞の腫瘍化および転移能力を、免疫不全動物モデルで調査しなければならない(Welch, 1997, Clin. Exp. Metastasis 15:272)。しかし、このアプローチは、試験において、癌細胞を接種された動物の免疫系がCX
3CR1アンタゴニストの投与によって影響を受ける可能性への取り組みに失敗するかもしれない。この受容体は白血球およびリンパ球の輸送に関与しているとの証拠に基づき、免疫不全および免疫応答性マウスの両方において新しく合成した各アンタゴニストの抗転移効果を確立することが適切である。
【0294】
i. 免疫不全動物
蛍光MDA-231乳癌細胞を、8週齢の雌SCIDマウスの第4乳頭領域内に、100μl無血清DMEM中の1×10
4細胞の懸濁液として移植する。動物を、接種の5日後から出発して、触知可能な腫瘍について検査し、秤量する。接種したマウスに、細胞接種の日から出発し、上で実施したPK分析から外挿した投与間血漿濃度に対する情報に基づいて、実験の全期間、アンタゴニストを投与する。4週間後、動物を安楽死させ、大腿骨、脛骨、肺、副腎および脳を回収する。組織を凍結切片作成用に処理し、単一癌細胞、小病巣および肉眼的二次腫瘍について検査する(
図14)。
【0295】
ii. 免疫応答性動物
蛍光4T-1マウス乳癌細胞を、8週齢の雌Balb/Cマウスの第4乳頭に、100μl無血清DMEM中の7×10
3細胞の懸濁液として接種する。CX
3CR1アンタゴニストの投与および4週間の実験終了時の異なる組織の処理を、SCIDマウスについて前述したとおりに行う。
【0296】
第二の実験組において、乳腺脂肪織における4T-1細胞の接種によって生じた原発腫瘍を切除する。このアプローチは、腫瘍量に達する前に4T-1細胞が転移しうる時間を延長するために、慣例的に用いられる。この手順は、少なくとも部分的には、原発乳癌の外科的切除後に診療所で通常観察されるシナリオも模倣している。
【0297】
同様に、これらの実験において、動物をCX
3CR1アンタゴニストで実験の全期間処置し、これらの実験は終点として全生存を用いる。したがって、動物の乳腺脂肪織に癌細胞を接種し、3週間後、腫瘍を外科的に除去する。再発原発乳腺腫瘍が直径1.5cmを超えれば、またはびまん性転移疾患のために瀕死になれば、マウスを安楽死させる。異なる器官を回収し、前述のとおりに二次腫瘍について検査する。
【0298】
(g)転移腫瘍の測定
組織凍結切片の明視野および蛍光画像を、Olympus DT70 CCDカラーカメラに接続したSZX12 Olympus立体顕微鏡を用いて取得する。次いで、デジタル画像を(http colon double forward slash.rsb.info.nih.gov forward slash ij forward slash)のImageJソフトウェアで分析し、ミリメートルに対するピクセルの比を得ることにより較正する。各転移の最大断面を特定し;その相対的長さおよび幅(互いに相対的な垂直および中心)を測定し、楕円式:l×w×3.14を用いて全面積を計算する。
【0299】
(h)統計学的分析、検定力および試料計算
前述の同じ検定力および試料計算を、本明細書に含まれる実験のために用いる。3つの実験組それぞれのために、150匹のマウスを用い(15匹×9アンタゴニストに加えて15匹の対照マウス)、合計数450匹のマウスを用いる。群間の骨格転移の数およびサイズを、両側スチューデンツt検定を用いて分析する。複数の群間の統計学的有意性を、一元配置のANOVAと、続いてチューキーの多重比較検定を用いて確立する。P≦0.05の値を統計学的有意と考える。カプラン-マイヤーグラフは全生存に関するデータを表す。
【0300】
単一癌細胞を、二次器官、特に骨格へのそれらの停止直後に検出してもよい。この試験にはこの強力なアプローチが非常に有益である。しかし、播種した癌細胞がないのは誤注入のせいではないことを確認するために、各心内接種を確認するのは必須である。このために、癌細胞を青色蛍光ポリスチレンビーズ(直径10μm、Invitrogen)と同時注入する(
図15)。これらのビーズはすべての器官の毛細血管床中の血流によって運ばれるため、検査した組織にそれらがなければ、その特定の動物を試験から除去することになる。
【0301】
実施例6:
CX3CR1受容体の機能突然変異体
実験を、CX
3CR1の野生型またはこの受容体の以下の2つの機能突然変異体の1つのいずれかを安定に発現するMDA-436細胞で実施した。第一の突然変異体は、CX
3CR1の第一の細胞外ドメインのアミノ酸14位でチロシンからフェニルアラニンへの変異を誘導することによって生成した(Y14F)(Fong et al., 2002, J. Biol. Chem 277:19418-23)。この突然変異体は以前、おそらくはこのケモカインへの結合を増強する改変である、フェニルアラニンの硫酸化ができないため、FKNにしっかりと結合できないことで特徴付けられた。捕捉および接着において不完全ではあるが、CX
3CR1(Y14F)はシグナル伝達においては適格であり、しかしながら固定化FKNに対する親和性は100分の1に低下している(Fong et al., 2002, J. Biol. Chem 277:19418-23)。CX
3CR1の溢出における具体的関与を、CX
3CR1の第二の細胞内ループおよびGタンパク質共役受容体の高度に保存されたアスパラギン酸-アルギニン-チロシン(DRY)配列内に位置する、アミノ酸128位におけるアルギニンからアスパラギンへの変異を含む第二の機能突然変異体を用いて評価した。ケモカイン受容体の化学誘引物質特性は、Gタンパク質活性化と、その後の適切なリガンドによる刺激に続く下流シグナルを伝達する能力に依存している。DRY配列はGタンパク質活性化に必要とされるため、RからNへの変異は受容体を細胞内シグナル伝達には不適格とし、CX
3CR1(R128N)変異体を発現する細胞はFKNに向かって遊走しないが、このケモカインに対する正常な結合/接着は示す(Haskell et al., 1999, J. Biol. Chem. 274:10053-58)。MDA-436細胞によるCX
3CR1の野生型および変異型の発現を、全細胞溶解物で実施したウェスタンブロッティングによって検証した(
図16A)。加えて、形質移入細胞の原形質膜における受容体の各型の挿入を、ビオチン化によって得た細胞表面タンパク質の単離により確認した(
図16B)。
【0302】
実施例7:
血行性循環を介しての癌細胞の骨格および軟部組織器官へのホーミングに対するCX3CR1アンタゴニストの評価
ヒト乳癌細胞を免疫不全SCIDマウス(CB17-SCRF、6週齢、雌、体重約25g)の左心室に接種する。顕微鏡検査による播種細胞の特定を可能にするために、America Pharma Source(Bethesda, MD)からのレンチウイルスベクターを用いて、細胞を高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)を安定に発現するよう改変する。次いで、インビボ実験に用いる前に、フローサイトメトリーおよび選別によって、形質導入した細胞のEGFP発現を強化する。
【0303】
25×10
4蛍光細胞/100mlの懸濁液を、100mg/kgケタミンおよび20mg/kgキシラジンであらかじめ麻酔した動物に30ゲージ針を用いて送達する。心内接種の正しい実施を、皮下針のルアーロックフィッティング内に新鮮動脈血が現れることによって確立し、これは心室壁をうまく貫通したことを示す。加えて、青色蛍光ポリスチレンビーズ(直径10mm、Invitrogen-Molecular Probes)を癌細胞といつもどおりに同時投与する。剖検時の異なる器官において蛍光顕微鏡によるこれらの検出を用いて、血液循環中の接種がうまくいったことを確認する。
【0304】
異なる器官を回収し、以下のとおりに凍結切片作成用に処理する:組織を4%ホルマリン中で48時間固定し、必要があれば0.5M EDTA中で脱灰し、O.C.T.包埋剤(Electron Microscopy Sciences, Hatfield, PA)中で凍結する。厚さ80μmの連続組織切片を、Microm HM550クリオスタット(Mikron, San Marcos, CA)を用いて得る。各後脚および軟部組織器官の切片をスライドガラス上に移し、-20℃で保存し、Nuance分光顕微鏡システム(CRT)に接続したOlympus IX50蛍光顕微鏡を用いて、播種した癌細胞の存在を調べる。
【0305】
このアプローチを用いて、接種後24時間または72時間のいずれかで安楽死させた動物の>90%で、骨および軟部組織器官中に単一癌細胞が一貫して検出される。
【0306】
対照群:心内経路(IC)で癌細胞を接種する20〜30分前に、マウスに腹腔内経路(IP)で食塩水100mlを投与する。
【0307】
アンタゴニスト群:癌細胞を接種する20〜30分前に、DMSOに溶解した各化合物を含む食塩水100mlをマウスにIP投与する。化合物の最終用量は50mg/kgで、DMSOの最終濃度は5%である。
【0308】
実施例8:
癌細胞の走化性遊走に対するCX3CR1アンタゴニストの評価
EGFPを安定に発現している蛍光ヒト癌細胞をBD Falcon Fluoroblock Systemのインサート(上のチャンバー)上に播種する。このシステムはプレート読み取り器を用いて蛍光細胞の遊走をモニターするためのプラットフォームを提供する。
【0309】
各インサートの底は、490〜700nmの範囲内で蛍光を吸収する光不透過性のPET細孔膜でできている。プレート読み取り器を用いての底からのこの膜の照明により、膜を通過してFluoroblockシステムの下のチャンバーに位置する所与の化学誘引物質に向かって遊走した蛍光細胞だけを検出することが可能となる。
【0310】
ヒト癌(1×10
5)を各インサートに播種し、下のチャンバーで膜に終夜、対照または化学誘引物質溶液非存在下で接着させる。
【0311】
遊走実験を、対照としての無血清培地またはケモカインのフラクタルカイン(1〜50nM)を含む同じ培地のいずれかを、遊走システムの下のチャンバーに加えることにより開始する。スクリーニングする各CX
3CR1アンタゴニストの潜在的阻害効果を、化合物(1nM〜1mM)を上のチャンバー内の細胞に加えることによって試験する。
【0312】
プレート読み取り器を励起波長485nmおよび発光波長510nmに設定する。発光した蛍光を時間0ならびに1、3および6時間で測定し、上のチャンバー内の細胞および下のチャンバー内の溶液非存在下で発光した蛍光を測定することにより得たバックグラウンドシグナルを差し引く。
【0313】
実施例9:
5-(3-(4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)プロピル)ピロロ[1,2-a]キノキサリン-4(5H)-オン−化合物3
5-(3-クロロプロピル)ピロロ[1,2-a]キノキサリン-4(5H)-オン:
25mL丸底フラスコ中、ピロロ[1,2-a]キノキサリン-4(5H)-オン(500mg;2.71mmol)を無水DMF(10mL)に溶解した。NaH(68.6mg;2.71mmol;95%)をフラスコに窒素ブランケット下で注意深く加えた。反応混合物を室温で2時間反応させ、その後1-ブロモ-3-クロロプロパン(511.99mg、3.25mg)を加え、混合物を80℃で終夜加熱した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、H
2O、食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、次いでろ過して濃縮した。粗製混合物をフラッシュクロマトグラフィで精製して、所望の5-(3-クロロプロピル)ピロロ[1,2-a]キノキサリン-4(5H)-オンおよび5-(3-ブロモプロピル)ピロロ[1,2-a]キノキサリン-4(5H)-オンを約60:40の比率で得た。混合物をそれ以上精製せずに次の段階で用いた。[M+1]
+ = 261塩化物;[M+1]
+ = 305臭化物。
。
【0314】
5-(3-(4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)プロピル)ピロロ[1,2-a]キノキサリン-4(5H)-オン
5-(3-クロロプロピル)ピロロ[1,2-a]キノキサリン-4(5H)-オン(100mg;0.38mmol)を、磁気撹拌子を含む5mLマイクロウェーブ容器に加えた。4-(4-クロロフェニル)ピペリジン-4-オール(89.3mg;0.42mmol)、炭酸カリウム(78.77mg;0.57mmol)、および2mLのアセトニトリルを容器に加えた。容器を密封し、140℃で1時間加熱し、その後溶媒を蒸発させ、反応混合物をフラッシュクロマトグラフィで精製して、5-(3-(4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)プロピル)ピロロ[1,2-a]キノキサリン-4(5H)-オン(48.5mg;0.11mmol;29%)。[M+1]
+ = 436。
【0315】
実施例10:
5-(3-(4-(4-クロロフェニル)ピペリジン-1-イル)プロピル)ピロロ[1,2-a]キノキサリン-4(5H)-オン−化合物4
5-(3-クロロプロピル)ピロロ[1,2-a]キノキサリン-4(5H)-オン(100mg;0.38mmol)を、磁気撹拌子を含む5mLマイクロウェーブ容器に加えた。4-(4-クロロフェニル)ピペリジン(82.8mg;0.42mmol)、炭酸カリウム(78.77mg;0.57mmol)、および2mLのアセトニトリルを容器に加えた。容器を密封し、140℃で1時間加熱し、その後溶媒を蒸発させ、反応混合物をフラッシュクロマトグラフィで精製して、5-(3-(4-(4-クロロフェニル)ピペリジン-1-イル)プロピル)ピロロ[1,2-a]キノキサリン-4(5H)-オン(110mg;0.26mmol;70%)[M+1]
+ = 420。
【0316】
実施例11:
カルシウム動員(Ca2+)アッセイを用いてのヒトCX3CR1受容体に対するアゴニストおよびアンタゴニスト活性
材料
細胞:ヒトCX3CR1を安定に発現している哺乳動物HEK293T細胞(Multispan, Hayward, CA)−宿主細胞: HEK293T;トランスフェクチン:N末端にFLAGタグ配列を有する全長ヒトCX3CR1 cDNA(GenBankアクセッション番号NM_001337)を含む発現ベクター;増殖培地: DMEM、10%FBS、1μg/mLピューロマイシン。
【0317】
化合物をDMSO中、10mMで再構成した。対照アゴニストCX3CL1はPeprotech(カタログ番号300-31)からであった。カルシウムアッセイキットはScreen Quest(商標) Fluo-8 No Washキット(AAT Bioquest、カタログ番号36315)で、計器はFlexStation III(Molecular Devices)であった。
【0318】
方法
カルシウムアッセイ:CX3CR1受容体を発現している細胞にキメラGタンパク質Gαqi5を一過性に形質移入し、384穴プレートに適切な密度で播種し、終夜培養した。カルシウムアッセイを、製造者のプロトコルに従って実施した。カルシウム色素添加緩衝液を細胞に加え、37℃で1時間インキュベートした。カルシウムフラックスを90秒間モニターし、化合物を20秒の時点でウェルに注入した。アンタゴニストモードでは、担体または化合物を細胞と共に30分間予備インキュベートした後、カルシウムフラックスを測定し、対照アゴニストはEC
80濃度(0.04μM)であった。
【0319】
データ解析:カルシウムアッセイ結果を「RFU」および「RFUの増加(%)」で表した(
図17)。データは平均±SEMで表した。用量反応曲線は、拘束のないPrism 4で「シグモイド用量反応(変数傾斜)」関数を用いてあてはめた。EC
50、EC
80およびIC
50値を「RFUの増加(%)」から誘導した。
【0320】
考察
対照化合物CX3CL1は、CX3CR1発現細胞におけるカルシウムフラックスの用量依存的刺激を、予想されるEC
50で示した(
図18A)。化合物3(JMS-16と標識)は2つの最も高い濃度でアゴニスト活性を示したが、化合物4(JMS-17と標識)はアゴニスト活性を有していなかった(
図18B)。化合物3および4はCX3CL1が誘発するカルシウムフラックスを阻害し、IC
50値はそれぞれ21μMおよび11μMであった(
図18C)。化合物3はアゴニスト活性を有していたため、そのアンタゴニスト活性は、予備インキュベーション中の受容体の感受性低下によると考えられた。
【0321】
化合物3は、ウェスタンブロット分析により、約10nMのp-ERK1/2阻害EC
50を有することが判明した。化合物5は、ウェスタンブロット分析により、約5nMのp-ERK1/2阻害EC
50を有することが判明した。
【0322】
以下の表は実験の生データをまとめている。
対照アゴニスト
アゴニストモード
アンタゴニストモード
【0323】
本明細書において引用するそれぞれ、およびすべての特許、特許出願、および出版物の開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0324】
本発明を具体的態様に関して開示してきたが、当業者であれば、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の他の態様および変形を考案しうることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、すべてのそのような態様および等価の変形を含むと解釈されることが意図される。