(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下部ベースの上面に配置された滑り支承に構造物支持用の上部基礎が載置された状態で、前記下部ベースに対する前記上部基礎の位置を調整する上部基礎の位置調整方法であって、
前記滑り支承が配置されることで前記下部ベースと前記上部基礎との間に形成された隙間内に、前記上部基礎の位置を調整するための治具を、該治具の先端部が前記隙間内を通過可能な姿勢を保ちながら挿入する工程と、
前記治具の先端部が前記隙間を通過するまで前記治具が前記隙間内に挿入された後に、前記先端部の姿勢を切り替えて、前記先端部に設けられた係合部を、前記下部ベース及び前記上部基礎の双方中の一方に形成された被係合部に係合させる工程と、
前記治具において前記係合部とは前記隙間を挟んで反対側に位置している当接部を、前記双方中の他方に形成された被当接部に当接させる工程と、
前記係合部が前記被係合部に係合し、かつ前記当接部が前記被当接部に当接している間に、前記治具に設けられた被操作部を操作することで前記治具における前記係合部と前記当接部との間隔を短縮させることにより、前記他方からの反力を前記当接部にて受けながら、前記被係合部が前記被当接部に近付くように前記上部基礎を前記下部ベースに対して水平移動させる工程と、を有し、
前記隙間内に前記治具を挿入する工程では、互いに沿った状態で延出している二つの延出部と該二つの延出部の先端部分同士を連結する連結部とを前記先端部に有する前記治具を、前記二つの延出部が互いに水平方向に並んだ姿勢を保ちながら挿入し、
前記係合部を前記被係合部に係合させる工程では、底部と該底部から上方に向かって延出した上方部とを有する前記上部基礎のうち、前記上方部よりも幅広に形成された前記底部を前記被係合部とし、前記二つの延出部が互いに鉛直方向に並んだ姿勢に切り替えて、前記二つの延出部の間に前記底部を挟み込んだ状態で前記係合部を前記底部に係合させることを特徴とする上部基礎の位置調整方法。
前記隙間内に前記治具を挿入する工程では、互いに沿った状態で延出している二つの延出部と該二つの延出部の先端部分同士を連結する連結部とを前記先端部に有する前記治具を、前記二つの延出部が互いに水平方向に並んだ姿勢を保ちながら挿入し、
前記係合部を前記被係合部に係合させる工程では、底部と該底部から上方に向かって延出した上方部とを有する前記上部基礎のうち、前記上方部よりも幅広に形成された前記底部を前記被係合部とし、前記二つの延出部が互いに鉛直方向に並んだ姿勢に切り替えて、前記二つの延出部の間に前記底部を挟み込んだ状態で前記係合部を前記底部に係合させることを特徴とする請求項2に記載の上部基礎の位置調整方法。
前記当接部を前記被当接部に当接させる工程では、前記下部ベースにおいて鉛直方向に沿うように形成された壁面を前記被当接部とし、前記当接部をなすプレート体の上側部分が前記下部ベースの上面よりも上方に突出するように、前記プレート体の表面を前記壁面に当接させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の上部基礎の位置調整方法。
前記上部基礎を前記下部ベースに対して水平移動させる工程では、前記係合部に固定された先端を有し前記プレート体に形成された貫通穴を通っている棒状部材中、前記貫通穴を通過して前記係合部とは反対側に位置している部分に形成されたネジ形成部分に嵌合したナットを前記被操作部とし、前記ナットを回転させて前記棒状部材の延出方向に沿って前記ネジ形成部分上を移動させることで、前記間隔を短縮させることを特徴とする請求項4に記載の上部基礎の位置調整方法。
前記プレート体の表面が矩形形状となっており、前記貫通穴が前記プレート体の表面の長手方向における中央位置からずれた位置に形成されている場合において、前記上部基礎を前記下部ベースに対して水平移動させる工程では、前記長手方向が鉛直方向に沿い、かつ、前記貫通穴が前記中央位置よりも上方に位置した状態で前記プレート体が保持されていることを特徴とする請求項5に記載の上部基礎の位置調整方法。
下部ベースの上面に配置された滑り支承に構造物支持用の上部基礎が載置された状態で、該上部基礎を前記下部ベースに対して水平移動させて前記下部ベースに対する前記上部基礎の位置を調整するための治具であって、
該治具の先端部に設けられ、前記下部ベース及び前記上部基礎の双方中の一方に形成された被係合部に係合する係合部と、
前記双方中の他方に形成された被当接部に当接する当接部と、
前記治具における前記係合部と前記当接部との間隔を短縮するために操作される被操作部と、を有し、
前記係合部は、互いに沿った状態で延出している二つの延出部と該二つの延出部の先端部分同士を連結する連結部とを備え、底部と該底部から上方に向かって延出した上方部とを有する前記上部基礎のうち、前記上方部よりも幅広に形成された前記底部を前記被係合部として前記底部に係合し、
前記治具は、前記滑り支承が配置されることで前記下部ベースと前記上部基礎との間に形成された隙間内に、前記二つの延出部が互いに水平方向に並んで前記先端部が前記隙間内を通過可能な姿勢を保ちながら挿入され、
前記先端部が前記隙間を通過するまで前記治具が前記隙間内に挿入された後に、前記二つの延出部が互いに鉛直方向に並んだ姿勢へ前記先端部の姿勢が切り替えられることにより、前記底部を前記二つの延出部の間に挟み込んだ状態で前記係合部が前記底部に係合し、
前記当接部は、前記係合部とは前記隙間を挟んで反対側に位置した状態で、前記被当接部に当接し、
前記係合部が前記底部に係合し、かつ前記当接部が前記被当接部に当接している間に、前記被操作部が操作されて前記間隔が短縮することにより、前記当接部にて前記他方からの反力を受けながら、前記被係合部を前記被当接部に近付けることを特徴とする治具。
【背景技術】
【0002】
免震装置としての滑り支承は既に知られている。この滑り支承は、地震が発生した際、下方に配置されたベースに対して滑り支承上に載置された構造物が水平移動するのを許容することで、免震効果を発揮する。一方、地震が止んだ後には、ベースに対する構造物の位置を、地震発生前の位置に復帰させる必要がある。このように滑り支承による免震構造では原点復帰手段が必要となるが、従来は、例えばアクチュエータ等の原点復帰用の装置を構造物の下方に設置し、地震終了後に当該装置を起動して原点復帰を行うこととしていた。ただし、上記の装置を設置するとコストが嵩み、またメンテナンス等の手間も要する。
【0003】
これに対して、地震終了後に行う原点復帰作業において位置調整用の治具を利用することで、簡便かつ安価な原点復帰を実現することが可能である。原点復帰作業用の治具の例としては、特許文献1に記載の治具が挙げられる。
【0004】
特許文献1に記載された治具は、少なくとも一端部側にねじ部を有した長尺棒と、この長尺棒のねじ部に螺合する第一の係合ブロックと、長尺棒の他端部側にその軸心の周りで回転自在に装着される第二の係合ブロックと、第二の係合ブロックの長尺棒の他端からの抜け出しを阻止する阻止手段と、長尺棒をその軸心の周りで回転させるべく、長尺棒の他端に設けられた回転手段とを具備している。また、第一の係合ブロックは、基礎及び建物のうちのいずれか一方の角部に係合する段部を有し、第二の係合ブロックは、基礎及び建物のうちのもう一方の角部に係合する段部を有している。
【0005】
そして、各係合ブロックが対応する段差に係合した状態で、長尺棒をその軸心の周りで回転させることにより、両係合ブロック間の距離が縮まり、結果として、基礎に対する建物の位置ずれが修正されるようになる。このように特許文献1に記載の治具を用いることにより、基礎に対して建物の位置がずれたとしても、簡便かつ安価な方法で建物の位置を元の位置に復帰させることが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の治具は、利用に際して、上述した2つの係合ブロックを基礎及び建物に係合させてセットされ、かかる状態で両係合ブロック間の距離を縮めることにより原点復帰を行う。ただし、上記の方法では、係合ブロックとの係合箇所のうち、建物側に設けられた係合箇所に局所的な荷重が掛かり、建物を損傷させてしまう虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、建物等の構造物が損傷するのを抑えながら行われる原点復帰作業を、実現するための方法(位置調整方法)及び治具を提供することである。
【0009】
また、建物等の構造物が既に利用されている状況において原点復帰作業を行う場合には、当然ながら、当該構造物の利用に支障を来さないように原点復帰作業を行う必要がある。そこで、本発明の他の目的は、建物等の構造物が既に利用されている状況において原点復帰作業を行う場合に、当該構造物の利用に支障を来さないように原点復帰作業を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、本発明の上部基礎の位置調整方法によれば、下部ベースの上面に配置された滑り支承に構造物支持用の上部基礎が載置された状態で、前記下部ベースに対する前記上部基礎の位置を調整する上部基礎の位置調整方法であって、(A)前記滑り支承が配置されることで前記下部ベースと前記上部基礎との間に形成された隙間内に、前記上部基礎の位置を調整するための治具を、該治具の先端部が前記隙間内を通過可能な姿勢を保ちながら挿入する工程と、(B)前記治具の先端部が前記隙間を通過するまで前記治具が前記隙間内に挿入された後に、前記先端部の姿勢を切り替えて、前記先端部に設けられた係合部を、前記下部ベース及び前記上部基礎の双方中の一方に形成された被係合部に係合させる工程と、(C)前記治具において前記係合部とは前記隙間を挟んで反対側に位置している当接部を、前記双方中の他方に形成された被当接部に当接させる工程と、(D)前記係合部が前記被係合部に係合し、かつ前記当接部が前記被当接部に当接している間に、前記治具に設けられた被操作部を操作することで前記治具における前記係合部と前記当接部との間隔を短縮させることにより、前記他方からの反力を前記当接部にて受けながら、前記被係合部が前記被当接部に近付くように前記上部基礎を前記下部ベースに対して水平移動させる工程と、を有し、(E)前記隙間内に前記治具を挿入する工程では、互いに沿った状態で延出している二つの延出部と該二つの延出部の先端部分同士を連結する連結部とを前記先端部に有する前記治具を
、前記二つの延出部が互いに水平方向に並んだ姿勢を保ちながら挿入し、(F)前記係合部を前記被係合部に係合させる工程では、
底部と該底部から上方に向かって延出した上方部とを有する前記上部基礎の
うち、前記上方部よりも幅広に形成された前記底部を前記被係合部とし、
前記二つの延出部が互いに鉛直方向に並んだ姿勢に切り替えて、前記二つの延出部の間に前記底部を挟み込んだ状態で前記係合部を前記底部に係合させることにより解決される。
また、前記課題は、本発明の上部基礎の位置調整方法によれば、下部ベースの上面に配置された滑り支承に構造物支持用の上部基礎が載置された状態で、前記下部ベースに対する前記上部基礎の位置を調整する上部基礎の位置調整方法であって、(A)前記滑り支承が配置されることで前記下部ベースと前記上部基礎との間に形成された隙間内に、前記上部基礎の位置を調整するための治具を、該治具の先端部が前記隙間内を通過可能な姿勢を保ちながら挿入する工程と、(B)前記治具の先端部が前記隙間を通過するまで前記治具が前記隙間内に挿入された後に、前記先端部の姿勢を切り替えて、前記先端部に設けられた係合部を、前記下部ベース及び前記上部基礎の双方中の一方に形成された被係合部に係合させる工程と、(C)前記治具において前記係合部とは前記隙間を挟んで反対側に位置している当接部を、前記双方中の他方に形成された被当接部に当接させる工程と、(D)前記係合部が前記被係合部に係合し、かつ前記当接部が前記被当接部に当接している間に、前記治具に設けられた被操作部を操作することで前記治具における前記係合部と前記当接部との間隔を短縮させることにより、前記他方からの反力を前記当接部にて受けながら、前記被係合部が前記被当接部に近付くように前記上部基礎を前記下部ベースに対して水平移動させる工程と、を有し、(E)前記当接部を前記被当接部に当接させる工程では、前記当接部を前記下部ベースの上面よりも上方に突出した状態で前記被当接部に当接させ、(F)前記被操作部を操作することで前記間隔を短縮させることにより前記上部基礎を前記下部ベースに対して水平移動させる工程では、前記当接部のうち、前記下部ベースの上面よりも上方に突出した部分に前記上部基礎が当接する位置に至るまで前記上部基礎を水平移動させることにより解決される。
【0011】
上記の方法では、下部ベースと上部基礎との間に形成された隙間内に治具を挿入し、治具の先端部が隙間を通過すると、治具の先端部の姿勢を切り替えて、先端部に設けられた係合部を、下部ベース及び上部基礎のうちの一方に形成された被係合部に係合させる。その上で、治具において係合部とは隙間を挟んで反対側に位置している当接部を、下部ベース及び上部基礎のうちのもう一方に形成された被当接部に当接させる。そして、係合部が被係合部に係合し、かつ当接部が被当接部に当接している間に、治具に設けられた被操作部を操作することで、係合部と当接部との間隔を短縮させる。この結果、上部基礎が下部ベースに対して水平移動し、上部基礎の位置が元の位置に復帰するようになる。以上の方法によれば、簡便かつ安価な方法により、下部ベースに対する上部基礎の位置を元の位置に復帰することが可能となる。また、原点復帰作業中、治具は下部ベースや上部基礎に係合又は当接する一方で、構造物に直接当接することはない。したがって、上記の方法によれば、構造物が損傷するのを抑えながら原点復帰作業を行うことが可能となる。
【0012】
また、上述した上部基礎の位置の調整方法に関して、前記隙間内に前記治具を挿入する工程では、互いに沿った状態で延出している二つの延出部と該二つの延出部の先端部分同士を連結する連結部とを前記先端部に有する前記治具を、前記二つの延出部が互いに水平方向に並んだ姿勢を保ちながら挿入し、前記係合部を前記被係合部に係合させる工程では、底部と該底部から上方に向かって延出した上方部とを有する前記上部基礎のうち、前記上方部よりも幅広に形成された前記底部を前記被係合部とし、前記二つの延出部が互いに鉛直方向に並んだ姿勢に切り替えて、前記二つの延出部の間に前記底部を挟み込んだ状態で前記係合部を前記底部に係合させることとしてもよい。
上記の方法では、治具の先端部に設けられた二つの延出部の間に上部基礎の底部を挟み込んだ状態で、治具の係合部が上部基礎の底部に係合するので、その係合状態を好適に保持することが可能となる。
【0013】
また、上述した上部基礎の位置の調整方法に関して、前記当接部を前記被当接部に当接させる工程では、前記下部ベースにおいて鉛直方向に沿うように形成された壁面を前記被当接部とし、前記当接部をなすプレート体の上側部分が前記下部ベースの上面よりも上方に突出するように、前記プレート体の表面を前記壁面に当接させることとしてもよい。
上記の方法では、プレート体がその表面にて下部ベースからの反力を適切に受けることが可能となる。さらに、プレート体は、その上側部分が下部ベースの上面よりも上方に突出した状態で下部ベースの壁面に当接する。つまり、プレート体の表面のうち、下部ベースの上面よりも上方に突出した領域は、上部基礎の位置を調整する際の基準位置と規定するようになり、原点復帰作業をより正確に行うことが可能となる。
【0014】
また、上述した上部基礎の位置の調整方法に関して、前記上部基礎を前記下部ベースに対して水平移動させる工程では、前記係合部に固定された先端を有し前記プレート体に形成された貫通穴を通っている棒状部材中、前記貫通穴を通過して前記係合部とは反対側に位置している部分に形成されたネジ形成部分に嵌合したナットを前記被操作部とし、前記ナットを回転させて前記棒状部材の延出方向に沿って前記ネジ形成部
分上を移動させることで、前記間隔を短縮させることとしてもよい。
上記の方法では、棒状部材中、貫通穴を通過して係合部とは反対側に位置する部分に形成されたネジ形成部分、に嵌合したナットを回転させることにより、上部基礎を下部ベースに対して水平移動させる。このように原点復帰を行う上で上記のナットを回転させればよく、簡便に原点復帰作業を行うことが可能となる。
【0015】
また、上述した上部基礎の位置の調整方法に関して、前記プレート体の表面が矩形形状となっており、前記貫通穴が前記プレート体の表面の長手方向における中央位置からずれた位置に形成されている場合において、前記上部基礎を前記下部ベースに対して水平移動させる工程では、前記長手方向が鉛直方向に沿い、かつ、前記貫通穴が前記中央位置よりも上方に位置した状態で前記プレート体が保持されていることとしてもよい。
上記の方法では、ナットを回転させている際、棒状部材が通過している貫通穴よりも下方位置にプレート体の重心が位置していることになる。かかる構成により、ナットを回転させたとしても、これに連動する形でプレート体が回転してしまうのを抑制することが可能となる。
【0016】
また、上述した上部基礎の位置の調整方法に関して、前記構造物が建物である場合において、前記隙間内に前記治具を挿入する工程では、前記建物の屋外側から前記隙間内に前記治具を挿入し、前記上部基礎を前記下部ベースに対して水平移動させる工程では、前記屋外に位置している前記被操作部を前記屋外にて操作することとしてもよい。
上記の方法では、隙間内に治具を挿入する工程、及び、治具の被操作部を操作して上部基礎を下部ベースに対して移動させる工程の各々は、屋外側で行われることになる。したがって、構造物としての建物が既に利用されている状況において原点復帰作業を行う場合であっても、上記の方法を用いれば、屋内に立ち入ることなく、当該建物の利用に支障を来さずに原点復帰作業を行うことが可能となる。
【0017】
また、前述の課題は、本発明の治具によれば、下部ベースの上面に配置された滑り支承に構造物支持用の上部基礎が載置された状態で、該上部基礎を前記下部ベースに対して水平移動させて前記下部ベースに対する前記上部基礎の位置を調整するための治具であって、(A)該治具の先端部に設けられ、前記下部ベース及び前記上部基礎の双方中の一方に形成された被係合部に係合する係合部と、(B)前記双方中の他方に形成された被当接部に当接する当接部と、(C)前記治具における前記係合部と前記当接部との間隔を短縮するために操作される被操作部と、を有し、(D)前記係合部は、互いに沿った状態で延出している二つの延出部と該二つの延出部の先端部分同士を連結する連結部とを備え、
底部と該底部から上方に向かって延出した上方部とを有する前記上部基礎のうち、前記上方部よりも幅広に形成された前記底部を前記被係合部として前記底部に係合し、(E1)前記治具は、前記滑り支承が配置されることで前記下部ベースと前記上部基礎との間に形成された隙間内に、
前記二つの延出部が互いに水平方向に並んで前記先端部が前記隙間内を通過可能な姿勢を保ちながら挿入され、(E2)前記先端部が前記隙間を通過するまで前記治具が前記隙間内に挿入された後に、
前記二つの延出部が互いに鉛直方向に並んだ姿勢へ前記先端部の姿勢が切り替えられることにより、
前記底部を前記二つの延出部の間に挟み込んだ状態で前記係合部が前記底部に係合し、(E3)前記当接部は、前記係合部とは前記隙間を挟んで反対側に位置した状態で、前記被当接部に当接し、(E4)前記係合部が前記
底部に係合し、かつ前記当接部が前記被当接部に当接している間に、前記被操作部が操作されて前記間隔が短縮することにより、前記当接部にて前記他方からの反力を受けながら、前記被係合部を前記被当接部に近付けることにより解決される。
また、前述の課題は、本発明の治具によれば、下部ベースの上面に配置された滑り支承に構造物支持用の上部基礎が載置された状態で、該上部基礎を前記下部ベースに対して水平移動させて前記下部ベースに対する前記上部基礎の位置を調整するための治具であって、(A)該治具の先端部に設けられ、前記下部ベース及び前記上部基礎の双方中の一方に形成された被係合部に係合する係合部と、(B)前記双方中の他方に形成された被当接部に当接する当接部と、(C)前記治具における前記係合部と前記当接部との間隔を短縮するために操作される被操作部と、を有し、(D1)前記治具は、前記滑り支承が配置されることで前記下部ベースと前記上部基礎との間に形成された隙間内に、前記先端部が前記隙間内を通過可能な姿勢を保ちながら挿入され、(D2)前記先端部が前記隙間を通過するまで前記治具が前記隙間内に挿入された後に、前記先端部の姿勢が切り替えられることにより、前記係合部が前記被係合部に係合し、(D3)前記当接部は、前記係合部とは前記隙間を挟んで反対側に位置し、かつ、前記下部ベースの上面よりも上方に突出した状態で、前記被当接部に当接し、(D4)前記係合部が前記被係合部に係合し、かつ前記当接部が前記被当接部に当接している間に、前記被操作部が操作されて前記間隔が短縮することにより、前記当接部にて前記他方からの反力を受けながら、前記当接部のうち、前記下部ベースの上面よりも上方に突出した部分に前記上部基礎が当接する位置に至るまで前記被係合部を前記被当接部に近付けることにより解決される。
上記の治具であれば、簡便かつ安価な方法にて、さらに構造物が損傷するのを抑えながら、下部ベースに対する上部基礎の位置を元の位置に復帰することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上部基礎の位置の調整方法及び治具によれば、簡便かつ安価な方法にて、さらに構造物が損傷するのを抑えながら、下部ベースに対する上部基礎の位置を元の位置に復帰することが可能となる。また、構造物としての建物が既に利用されている状況において原点復帰作業を行う場合であっても、屋内に立ち入ることなく屋外側で作業を行うので、当該建物の利用に支障を来さずに原点復帰作業を行うことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)について図面を参照しながら説明する。なお、図面については、説明を分かりやすくするために幾分簡略化(模式化)して各部材を図示しており、図中に示す各部材のサイズや寸法についても実際のものと異なっている。
【0021】
また、以降の説明では、戸建住宅を構造物の一例として挙げることとする。ただし、あくまでも戸建住宅は構造物の一例に過ぎず、本発明は、他の建物、例えば工場内の建屋や商業施設、あるいは他の構造物(機器据付用の架台)においても適用可能である。
【0022】
本実施形態は、滑り支承からなる免震装置1が上部基礎2と下部ベース3との間に介在している免震構造(以下、基礎下免震構造)において、地震により上部基礎2が下部ベース3に対して水平方向に変位したときに上部基礎2の位置を元の位置に復帰するための方法(以下、原点復帰方法)に関する。
【0023】
より詳しく説明すると、本実施形態に係る原点復帰方法は、本発明の上部基礎の位置の調整方法に相当し、地震により、上部基礎2の位置が
図1の上図に示す位置(以下、変位前の位置)から同図の下図に示す位置(以下、変位後の位置)に変化したときに用いられる。なお、本実施形態に係る原点復帰方法は、基礎下免震構造を採用した戸建住宅が既に利用されている(分かり易く言うと、既に戸建住宅内でヒトが居住している)場合において、地震終了後に本発明の治具(具体的には後述の本治具4)を用いて行われる。
【0024】
先ず、基礎下免震構造について説明すると、免震装置1は、地震発生によって変位可能な積層板1aを備える公知の滑り支承によって構成されている。積層板1aは、フランジプレート1bを介して、上部基礎2と下部ベース3とにそれぞれ固定されている。なお、積層板1aの代わりに積層ゴムを採用した滑り支承であってもよい。
【0025】
上部基礎2は、戸建住宅を支持する基礎であり、底部としての基礎フーチング2aと、基礎フーチング2aの上面中央部から鉛直方向に立ち上がった基礎梁2bと、を有する。基礎フーチング2aは、矩形型の断面形状を有し、基礎梁2bよりも幅広となっており、その直下位置には免震装置1が配置されている。換言すると、上部基礎2中、基礎フーチング2aは、免震装置1の上面に載置されている。基礎梁2bは、基礎フーチング2aから上方に向かって延出した上方部に相当し、鉛直方向に長い矩形型の断面形状を有している。そして、基礎梁2bの上面には、住宅の躯体10(例えば、柱材)が支持されている。
【0026】
下部ベース3は、基礎スラブであり、その上面には免震装置1が配置されている。なお、本実施形態において下部ベース3の上面には、免震装置1が分散した状態で複数配置されている。また、下部ベース3は、その側端に、鉛直方向に沿った壁面3aを備えている。この壁面3aは、
図1の左図に示すように、上部基礎3が変位前の位置に位置している状態において、基礎フーチング2aの側端面と水平方向において揃った位置にある。換言すると、下部ベース3の壁面3aは、上部基礎2の正規位置を規定し、原点復帰を行う際の基準面として機能する。
【0027】
次に、本実施形態に係る原点復帰方法において用いられる治具(以下、本治具)4について
図2及び3を参照しながら説明する。本治具4は、免震装置1に載置された状態にある上部基礎2を、下部ベース3に対して水平移動させて下部ベース3に対する上部基礎2の位置を調整するための治具である。本治具4は、
図2に示すように複数の部品から構成されている。
【0028】
また、原点復帰作業において本治具4は、
図3に示すように、免震装置1が配置されることで下部ベース3と上部基礎2との間に形成された隙間S内に先端部が挿入された状態で利用される。そして、
図3に示す状態にある本治具4中、所定の部位(具体的には、後述する被操作部としてのナット9)を操作者が操作すると、上部基礎2が下部ベース3に対して水平移動し、これにより上部基礎2が変位後の位置から変位前の位置に復帰するようになる。
【0029】
以下、本治具4の構成について
図2を参照しながら説明する。本治具4は、
図2に示すように、コの字状の鉤状プレート5と、先端が鉤状プレート5に固定された棒状部材6と、棒状部材6を通す貫通穴7aを有する矩形プレート7と、棒状部材6に螺合するナット9、及び矩形プレート7とナット9との間に配置される座金8と、を有する。
【0030】
鉤状プレート5は、幾分肉厚の鋼板からなり、本治具4の先端部に設けられている。なお、本実施形態において、鉤状プレート5の厚みは、上部基礎2と下部ベース3との間の隙間Sの長さ(高さ)よりもやや小さくなっている。鉤状プレート5の構造について更に説明すると、互いに沿った状態で延出している二つの延出部5a,5bと、二つの延出部5a,5bの先端部分同士を連結する連結部5cと、が備えられている。ここで、二つの延出部5a,5bのうちの一方は、他方よりも長尺となっており、その末端には棒状部材6が溶接にて接合されている。二つの延出部5a,5bの間隔については、基礎フーチング2aの高さと略同じ長さ、あるいは当該高さより一回り大きい長さであるとよい。
【0031】
そして、原点復帰を行う際、鉤状プレート5は、下部ベース3及び上部基礎2の双方中の一方に形成された被係合部に係合される。より具体的に説明すると、本実施形態に係る原点復帰方法では、
図3に示すように、二つの延出部5a,5bの間に基礎フーチング2aの側端部、厳密には、戸建住宅の床下に位置する側の端部を挟み込む。かかる状態で、鉤状プレート5は、二つの延出部5a,5bの中でより上方にある延出部5aと連結部5cとがなす角にて、基礎フーチング2aの上方角部(厳密には、床下に位置する側の角部)に係合する。すなわち、鉤状プレート5は、より上方にある延出部5aと連結部5cとがなす角にて基礎フーチング2aと係合する係合部として機能する。また、基礎フーチング2aの上方角部は、被係合部に相当する。
【0032】
棒状部材6は、長尺の金属棒からなり、その外表面には棒状部材6の一端から他端に亘って螺旋状のネジ山が延出形成されている。換言すると、棒状部材6は、その外表面の一端から他端に亘って上記ネジ山が形成されたネジ形成部分6aとなっている。
【0033】
矩形プレート7は、金属製の厚板(プレート体に相当)からなり、その厚み方向に沿って貫通した貫通穴7aを備えている。この貫通穴7aは、矩形状をした矩形プレート7の表面7bの長手方向における中央位置から幾分ずれた位置に形成されている。厳密に説明すると、貫通穴7aは、上記表面7bの長手方向における中央位置からずれており、短手方向における中央位置とは略一致する位置に形成されている。
【0034】
また、矩形プレート7は、原点復帰を行う際、所定位置に形成された貫通穴7aに棒状部材6が挿入された状態で用いられる。より詳しく説明すると、原点復帰を行う際、矩形プレート7は、
図3に示すように、貫通穴7aに棒状部材6が挿入された状態にあり、さらに、矩形状の表面7bの長手方向が鉛直方向に沿った状態で当該表面7bを下部ベース3の壁面3aに当接させている。すなわち、矩形プレート7は、当接部として機能し、下部ベース3の壁面3aは、被当接部に相当する。
【0035】
ナット9は、矩形プレート7の貫通穴7aに棒状部材6が挿入された状態において、
図3に示すように、貫通穴7aを通過した部分(厳密には、矩形プレート7を挟んで鉤状プレート5とは反対側に位置する部分)に嵌合している。ここで、貫通穴7aを通過した部分は、その外表面にネジ山が形成されたネジ形成部分6aとなっている。このネジ形成部分6aにナット9が螺合し、回転自在に取り付けられている。そして、操作者がレンチ等によってナット9を回転させると、ナット9は、棒状部材6の延出方向に沿ってネジ形成部分6a上を移動するようになる。すなわち、ナット9は、本治具4において操作者の操作を受け付ける被操作部として機能する。
【0036】
また、ナット9が回転してネジ形成部分6a上を移動する際、ナット9の座面が矩形プレート7の裏面(下部ベース3の壁面3aと当接する表面7bとは反対側の面)に当接していると、ナット9が座金8を介して矩形プレート7を押圧するようになる。さらに、このとき、鉤状プレート5が基礎フーチング2aの上方角部に係合し、かつ矩形プレート7が下部ベース3の壁面3aに当接していると、ナット9の移動に伴って、本治具4における鉤状プレート5と矩形プレート7との間隔(
図3中、記号dにて示す)が短縮するようになる。
【0037】
すなわち、上記の状態にあるときにナット9を回転させることで、棒状部材6のうち、貫通穴7aを通過している部分が徐々に増加し、鉤状プレート5と矩形プレート7との間隔dが短縮する。このとき、矩形プレート7は下部ベース3の壁面3aに当接、厳密には押し当たっているので、矩形プレート7は、下部ベース3からの反力を受けるようになる。一方で、上記間隔dが短くなることで、矩形プレート7と係合している基礎フーチング2aの上方角部が下部ベース3の壁面3aに近付くように上部基礎2が下部ベース3に対して水平移動するようになる。
【0038】
そして、基礎フーチング2aの側端面と下部ベース3の壁面3aとが水平方向において揃うようになるまで、ナット9を回転させ続けて下部ベース3に対する上部基礎2の水平移動を継続する。以上のような手順にて原点復帰が行われ、最終的に基礎フーチング2aの側端面と下部ベース3の壁面3aとが水平方向において揃った段階で原点復帰作業が終了する。
【0039】
次に、上記のように構成された本治具4を用いて原点復帰を行うときの手順について
図4A乃至4Dを参照しながら説明する。先ず、原点復帰を開始するにあたり、本治具4を用意する。なお、原点復帰開始の時点では、
図4Aに示すように、棒状部材6から矩形プレート7、座金8及びナット9が外されている。すなわち、原点復帰開始の時点では、本治具4のうち、鉤状プレート5及び棒状部材6のみを用いる。
【0040】
具体的に説明すると、原点復帰を行うにあたり、鉤状プレート5及び棒状部材6のみとなった本治具4(以下、治具基体)を、隙間S内(厳密には、隙間S中、免震装置1が配置された領域から外れた領域内)に屋外側から挿入する。このとき、治具基体は、その先端部から隙間S内に挿入されることになっており、さらに、当該先端部は、隙間S内を通過可能な姿勢で保持される。
【0041】
より具体的に説明すると、
図4Aに示すように、鉤状プレート5が横倒しの姿勢、すなわち、鉤状プレート5が備える二つの延出部5a,5bが互いに水平方向に並んだ姿勢を保ちながら、治具基体を隙間S内に挿入することとしている。かかる姿勢であれば、鉤状プレート5の厚みが隙間Sの高さより小さくなっているので、治具基体が隙間S内を通過可能となる。
【0042】
そして、操作者は、治具基体の先端部が隙間Sを通過するまで、厳密には、鉤状プレート5中、より短い方の延出部5aが少なくとも隙間Sを通過するまで治具基体を隙間S内に挿入する。その後、操作者は、
図4Bに示すように棒状部材6をその軸心周りに回転させて、治具基体の先端部、すなわち、鉤状プレート5の姿勢を切り替える。かかる操作により、鉤状プレート5の姿勢は、横倒しの姿勢から起立姿勢、すなわち、鉤状プレート5が備える二つの延出部5a,5bが互いに鉛直方向に並んだ姿勢に切り替わるようになる。
【0043】
また、操作者は、鉤状プレート5の姿勢を起立姿勢とした後に治具基体を手前側(屋外側)に若干引く動作を行う。これにより、鉤状プレート5が、
図4Bに示すように基礎フーチング2aの上方角部に係合するようになる。このとき、鉤状プレート5は、二つの延出部5a,5bの間に基礎フーチング2aの側端部を挟み込んだ状態で当該基礎フーチング2aの上方角部に係合する。このように二つの延出部5a,5bの間に基礎フーチング2aの側端部を挟み込むことで、原点復帰作業中、鉤状プレート5と基礎フーチング2aとの係合状態を安定させることが可能となる。その上、二つの延出部5a,5bの間に基礎フーチング2aの側端部を挟み込んでおけば、その後にナット9を回転する際の反力を取ることが可能となり、当該ナット9の回転に伴って鉤状プレート9が連れ回りするのを抑えることが可能となる。
【0044】
その後、棒状部材6のうち、隙間S内に挿入されていない自由端部、すなわち、隙間Sよりも屋外側に突出している部分に矩形プレート7を取り付ける。具体的には、棒状部材6の自由端部を矩形プレート7の貫通穴7aに通すことで、矩形プレート7を取り付ける。これにより、本治具4が矩形プレート7を備えるようになり、当該矩形プレート7は、本治具4において鉤状プレート5とは隙間Sを挟んで反対側に位置するようになる。
【0045】
さらに、操作者は、矩形プレート7を棒状部材6に沿ってスライドさせ、矩形プレート7の表面7bが下部ベース3の壁面3aに押し当たる位置まで移動させる。これにより、
図4Cに示すように、矩形プレート7の表面7bが下部ベース3の壁面3aに当接するようになる。なお、本実施形態では、矩形プレート7の表面7bの長手方向が鉛直方向に沿うように、矩形プレート7を下部ベース3の壁面3aに当接させる。
【0046】
また、本実施形態では、
図4Cに示すように、矩形プレート7の上側部分が下部ベース3の上面よりも上方に突出するように、矩形プレート7を下部ベース3の壁面3aに当接させる。さらに、本実施形態では、貫通穴7aが矩形プレート7の表面7bの長手方向における中央位置(
図4C中、バツ印にて表記)よりも上方に位置するように、矩形プレート7を下部ベース3の壁面3aに当接させる。すなわち、本実施形態において、矩形プレート7は、その重心位置が貫通穴7aよりも下方に位置した状態で下部ベース3の壁面3aに当接するようになっている。
【0047】
鉤状プレート5が基礎フーチング2aの上方角部に係合し、かつ、矩形プレート7が表面7bにて下部ベース3の壁面3aに当接すると、かかる状態で、棒状部材6に対してその自由端側から座金8及びナット9が嵌め付けられる。そして、座金8は、その座面にて矩形プレート7の裏面に当接し、ナット9は、座金8中、矩形プレート7と接する座面とは反対側に位置する面に当接する。
【0048】
以上までの工程が終了した時点で、原点復帰の準備が完了する。そして、鉤状プレート5が基礎フーチング2aの上方角部に係合し、かつ、矩形プレート7が表面7bにて下部ベース3の壁面3aに当接している間に、操作者が
図4Dに示すようにレンチ等を用いてナット9を回転させる。これにより、ナット9は、棒状部材6の延出方向に沿って、棒状部材6の外表面に形成されたネジ形成部分6a上を移動するようになる。なお、ナット9に対する回転操作は、ナット9が屋外に位置していることから、屋外にて行われることになる。
【0049】
また、ナット9を回転させているとき、下部ベース3の壁面3aに当接している矩形プレート7は、その重心位置が貫通穴7aよりも下方に位置した状態にある。したがって、操作者がナット9を回転させたとしても、これに連動する形で矩形プレート7が回転(いわゆる連れ廻り)してしまうのを抑制することが可能となる。
【0050】
そして、ナット9を回転させてネジ形成部分6a上を移動させることによって、鉤状プレート5と矩形プレート7の表面7bとの間隔dが短縮するようになる。この結果、下部ベース3からの反力を矩形プレート7にて受けながら、基礎フーチング2aの上方角部が下部ベース3の壁面3aに近付くように上部基礎2を下部ベース3に対して水平移動させることが可能となる。なお、本実施形態では、上部基礎2を屋外側に引き出す向き(
図2中、矢印にて示す向き)に、上部基礎2を水平移動させることになっている。
【0051】
以上のように上部基礎2が下部ベース3に対して水平移動することによって、上部基礎2が元の位置(すなわち、変位前の位置)に向かうようになる。そして、上部基礎2は、基礎フーチング2aの側端面と下部ベース3の壁面3aとが水平方向において揃う位置に至るまで、水平移動を繰り返す。換言すると、操作者は、上部基礎2が元の位置に至るまで、ナット9に対する回転操作を繰り返す。
【0052】
なお、本実施形態では、矩形プレート7が、下部ベース3の上面よりも上方に幾分突出した状態で下部ベース3の壁面3aに当接している。したがって、矩形プレート7の表面7bのうち、下部ベース3の上面よりも上方に突出した部分は、上部基礎2の位置を調整する際の基準位置と規定している。つまり、上部基礎2を水平移動させて元の位置に復帰させるときには、基礎フーチング2aの側端面が矩形プレート7の表面7bのうちの上方突出部分に当接する位置に至るまで上部基礎2を移動させればよい。これにより、より正確な原点復帰を行うことが可能となる。
【0053】
以上までに説明したように、本実施形態では、原点復帰に係る一連の工程が戸建住宅の外側、すなわち、屋外側で行われることになっている。これにより、戸建住宅が既に利用されている状況において原点復帰作業を行う場合であっても、屋内に立ち入ることなく、当該戸建住宅の利用に支障を来さずに原点復帰作業を行うことが可能となる。
【0054】
<<その他の実施形態>>
上記の実施形態では、本発明の上部基礎の位置調整方法、及び、上部基礎の位置を調整するために用いられる治具について、一例を挙げて説明した。ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0055】
また、上記の実施形態で説明した治具各部の材質、形状、寸法及び配置位置は、あくまでも一例に過ぎず、これらは本発明の構成を満たす限りにおいて自由に設計することが可能である。例えば、治具の先端部に形成される係合部の形状やサイズは、被係合部と好適に係合し得る限り、自由に設計することが可能である。
【0056】
また、上記の実施形態では、下部ベース3の側端に位置する壁面3aに矩形プレート7を当接させ、上部基礎2を下部ベース3に対して水平移動させる際には、
図3に示すように下部ベース3の壁面3aからの反力を受けることとした。すなわち、上記の実施形態では、戸建住宅の外側(屋外側)で反力を取ることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、
図5に示すように、下部ベース3において住宅の床下に位置する部分に溝状ピット3bを設け、当該溝状ピット3bの側壁面3cに矩形プレート7を当接させることとしてもよい。すなわち、反力については、屋内側で取る構成であってもよい。
【0057】
なお、
図5に示すケースでは、下部ベース3において住宅の床下に位置する部分に設けられた溝状ピット3bの、側壁面3cに矩形プレート7を当接させる。一方、
図5に示すケースでは、基礎フーチング2aのうち、屋外側に位置する上方角部に鉤状プレート5を係合させることになる。そして、
図5に示すケースでは、上記溝状ピット3bの側壁面3cに矩形プレート7が当接し、基礎フーチング2aの屋外側の上方角部に鉤状プレート5が係合している状態においてナット9を回転させると、上部基礎2を屋内側に引き込む向き(
図5中、矢印にて示す向き)に、上部基礎2が下部ベース3に対して水平移動するようになる。なお、
図5中、
図2と同じ符号が付いている部材は、上記の実施形態(
図2に示すケース)と同様の部材である。
【0058】
また、上記の実施形態では、下部ベース3と上部基礎2との間の隙間S内に本治具4を挿入し、当該挿入箇所から最も近い位置にある上部基礎2の上方角部に鉤状プレート5を係合させることとしたが、これに限定するものではない。例えば、
図6に示すように、上記の実施形態に係る治具(本治具4)よりも長尺の治具104を用いるケースが考えられる。かかるケースでは、隙間S内に当該治具104を挿入する際、住宅の床下を横断し、挿入箇所とは反対に位置する取り出し箇所から鉤状プレート5を屋外へ取り出す。そして、
図6に示すケースでは、取り出し箇所から最も近い位置にある上部基礎2の上方角部に鉤状プレート5を係合することになっている。なお、
図6中、
図2と同じ符号が付いている部材は、上記の実施形態(
図2に示すケース)と同様の部材である。