特許第6076951号(P6076951)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6076951ヒータの配線用の電線に特徴を有する射出成形機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076951
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】ヒータの配線用の電線に特徴を有する射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/74 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   B29C45/74
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-233340(P2014-233340)
(22)【出願日】2014年11月18日
(65)【公開番号】特開2016-97501(P2016-97501A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2015年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】高松 俊輔
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−231675(JP,A)
【文献】 特開平05−146183(JP,A)
【文献】 特開昭53−103115(JP,A)
【文献】 特開平07−049364(JP,A)
【文献】 実開昭60−193480(JP,U)
【文献】 特開2008−160920(JP,A)
【文献】 特開2012−227981(JP,A)
【文献】 特開昭61−203824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
G01R 31/02
G01K 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電源として三相3線式と三相4線式が選択可能な射出成形機であって、前記射出成形機はR線、S線、T線からなる第1の電線群とr線、s線、t線からなる第2の電線群とを備え、
前記第1の電線群は、前記三相交流電源のR相、S相、T相のそれぞれに接続され、
前記第2の電線群は、所定の切換手段を介して前記三相交流電源に接続され、第1の切換を行うとr線、s線、t線はそれぞれ前記三相交流電源のR相、S相、T相に接続され、第2の切換を行うとr線、s線、t線は全てN相に接続されるようになっており、
加熱シリンダの複数枚の単相ヒータは、それぞれ一方の端子は前記第1の電線群のいずれかの電線に接続されると共に他方の端子は前記第2の電線群のいずれかの電線に接続されていることを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
請求項1に記載の射出成形機において、前記単相ヒータはそれぞれ、R線とs線、S線とt線、T線とr線、のいずれかの組み合わせから接続され、
第1〜3の電圧計がR線とs線間、S線とt線間、T線とr線間のそれぞれに設けられていると共に、第1〜3の電流計がR線、S線、T線のそれぞれに設けられていることを特徴とする射出成形機。
【請求項3】
請求項1に記載の射出成形機において、前記第2の電線群には、前記切換手段近傍においてr線、s線、t線の全ての線が貫通される1個の貫通型電流センサが設けられていることを特徴とする射出成形機。
【請求項4】
請求項3に記載の射出成形機において、前記貫通型電流センサで電流を監視し、複数枚の前記単相ヒータの中から1枚ずつ単独でONして、電流が適切か否かを判断し、それによって単相ヒータの劣化・断線を検出することを特徴とするヒータの劣化・断線検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱シリンダに設けられている複数枚のヒータに電力を供給する電線に特徴を有する射出成形機に関するものであり、さらには、そのような射出成形機においてヒータの断線や劣化状態を判定するヒータの断線・劣化判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機の加熱シリンダには、複数枚のヒータが巻かれて加熱シリンダを加熱できるようになっている。このようなヒータには三相交流電源から電力が供給されるようになっている。ところで三相交流電源は、入力電圧が200V、208V、220V、230V、240V等の、いわゆるAC200V系の場合には、R相、S相、T相の3相からなる三相3線式が採用され、各電線はΔ結線されている。また入力電源が380V、400V、415V等の、いわゆるAC400V系の場合には、R相、S相、T相、およびニュートラルのN相からなる三相4線式が採用され、各電線はY結線されている。加熱シリンダに設けられているヒータは一般的に単相ヒータが採用され、三相3線式の場合には各ヒータはR相、S相、T相の任意の2相の線に接続され、三相4線式の場合には各ヒータはR相、S相、T相のいずれか1相の線とN相とに接続されている。なお、三相3線式においても三相4線式においても、各ヒータは、各電線のそれぞれに接続されているヒータの枚数が実質的に均等になるように分散して接続され、負荷が特定の相に集中しないようになっている。
【0003】
このような各ヒータにはソリッドステートリレーあるいは電磁接触器からなるスイッチが対応して設けられ、コントローラからの指令によって独立してON/OFFされるようになっている。このON/OFFはPWM制御によって実施され、制御周期に対して電流を供給する通電時間の占める割合、すなわちデューティー比を調整することによってヒータへの電力供給を調整するようになっている。加熱シリンダに設けられている複数個の温度センサもコントローラに接続されており、コントローラは、温度センサで検出される温度に基づいて各ヒータをフィードバック制御し、加熱シリンダの各位置が所望の温度になるように制御している。
【0004】
ヒータは、長時間使用すると劣化し、やがて断線する。劣化したり断線したら交換する必要がある。ヒータの断線を検出する方法として、ヒータに電力を供給するヒータ回路のそれぞれに電流センサを設け、電流を常時監視する方法が周知である。電流が検出されなくなったらヒータが断線したと判断することができ、確実にヒータの断線を判断できるが、電流センサはヒータ毎に必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−202955号公報
【特許文献2】特開2014−100808号公報
【特許文献3】特許第3309493号公報
【0006】
ヒータの劣化・断線を検出する方法は他にもあり、例えば本出願人によって特許文献1によって提案されている。特許文献1に記載の方法によると、電流センサは共通の電流センサを1箇所にのみ設けて個々のヒータ回路には設けない。特許文献1に記載の方法においては、ヒータの劣化・断線の検出は1次検出と2次検出とからなる。1次検出は、通常の温度制御中において電流をONしている全てのヒータの理論上の合計電流を計算し、これと電流センサで検出される電流とを比較する。そして検出される電流が理論上の合計電流を所定量だけ下回っている場合だけ異常と判断して2次検出を行う。2次検出では、現在ONしているヒータのうちいずれかが断線しているものと判断し、これらのヒータを1枚ずつONにして電流を測定して断線しているヒータを特定する。特許文献1に記載の方法では、このように1次検出と2次検出とから構成されているので、ヒータが劣化・断線していない限り1次検出で異常が検出されないので、通常の温度制御に影響を与えずに済む。
【0007】
本願の請求項4に係る発明にも関係している方法であるが、本出願人は、特許文献2によって他のヒータの劣化・断線の検出方法も提案している。特許文献2においても説明されているように、射出成形機の各ヒータはPWM制御によってON/OFFされている。つまり繰り返しの制御周期のうち所定の時間幅だけONされるように制御されている。そうすると、ある瞬間に1枚のヒータだけがON状態になるタイミングが生じる。このタイミングを利用してヒータの劣化・断線を検出するようにする。具体的には、複数のヒータに対して電力を供給しているヒータ電源に電流センサを設ける。PWM制御の制御周期においてONになっているヒータが1枚だけのタイミングにおいて、電流センサによってこのヒータのヒータ電流を得る。そしてヒータ電流が、このヒータに予め設定されている電流しきい値よりも小さいときにヒータが断線している、あるいは劣化していると判定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の射出成形機においても、三相交流電源の給電方式が三相3線式であっても、あるいは三相4線式であってもヒータの接続を変更すればヒータに電力を供給することはできる。また従来の方法、あるいは特許文献1に記載の方法によって、さらには特許文献2に記載の方法によって、ヒータについて劣化・断線を検出することはできる。しかしながらいくつか解決すべき問題も見受けられる。
【0009】
まず第1の解決すべき問題として、三相交流電源の供給方式が変更されたときの対応が煩雑であるという点をあげることができる。すなわちヒータは、前記したように三相3線式の場合には各ヒータはR相、S相、T相の任意の2線に接続し、三相4線式の場合には各ヒータはR相、S相、T相のいずれか1線とN相とに接続するようにしなければならない。このように給電方式によってヒータの接続方法を変更しなければならないので、射出成形機の移設等によって工場内の給電方式が変わる度にヒータの接続を変更しなければならず煩雑である。この煩雑さを若干解消できるヒータ給電装置も、一応特許文献3において提案されてはいる。この文献のヒータ給電装置は、所定のリレーユニットを備えており、リレーユニットにはヒータを接続するための複数個のヒータ接続用端子と、電源供給側に接続するための複数個の電源接続用端子とが設けられ、それぞれのヒータ接続用端子とそれぞれの電源接続用端子は、リレーユニット内部で所定の端子同士がスイッチを介装して固定的に接続されている。そして各ヒータは複数個のヒータ接続用端子の選択された2個の端子に固定的に接続されている。このヒータ給電装置は、三相3線式と三相4線式とで給電方式を変更する場合には、電源供給側の所定の端子とリレーユニット側の電源接続用端子との間の配線を変更するだけで済むようになっている。つまりリレーユニットより先のヒータの接続については変更する必要がない。従って、三相交流電源の給電方式が変更されても、対応は若干容易ではある。しかしながら、特許文献3に記載のヒータ給電装置は、電源供給側の端子とリレーユニット側の電源接続用端子との接続が複雑で分かりにくいという問題が残る。その理由は、電源供給側の複数個の端子もリレーユニット側の複数個の電源接続用端子も、個々の端子の役割が明確になっていないからである。あるいは端子同士の接続のルールが明確になっていないからである。個々の端子の役割、あるいは接続のルールが明確でないので、電源供給側の端子とリレーユニット側の電源接続用端子とを接続するには、リレーユニットより先のヒータの接続状態を完全に理解していなければ接続できない。そうすると、給電方式が変更された場合においけるヒータの接続変更の煩雑さを、特許文献3に記載のヒータ給電装置が十分に解決しているとは言えない。また特許文献3に記載のヒータ給電装置においてはヒータを追加する場合にも問題が見受けられ、ヒータを追加する場合にどのヒータ接続用端子に接続すればいいのかが分かりにくい。このように分かりにくくなっている理由も、ヒータ接続用端子のそれぞれの役割が十分に明確になっていない、あるいは接続のルールが十分に明確になっていないからであると言える。
【0010】
第1の解決すべき問題と関連する問題として、ヒータの電力の測定に関する問題を第2の解決すべき問題としてあげることができる。給電方式が変更されると前記したようにヒータの接続を変更しなければならないが、これに伴ってヒータの電力を測定するための電流計、電圧計の接続位置等を変更しなければならない。またΔ結線とY結線との間で結線方法の変更によって、電力の計算方法を変更しなければならなくなる。
【0011】
ヒータの劣化・断線の検出方法に関して、第3の解決すべき問題があげられる。従来のヒータの劣化・断線の検出方法においてはヒータ毎に電流センサを設けなければならないのでコストが高い。特許文献1に記載のヒータの劣化・断線の検出方法においては、電流センサは共通のセンサを1カ所にのみ設ければいいので、コストは比較的小さいが、R相、S相、T相の少なくとも2相の電線に電流センサ設けなければならない。つまり最低でも2個の電流センサが必要になる。特許文献2に記載のヒータの劣化・断線の検出方法においては、電流センサは電源に設ければ済むので、この方法を利用すればコストを小さくする余地はありそうである。
【0012】
本発明は、上記したような問題点を解決した、射出成形機およびヒータの断線・劣化検出方法を提供することを目的としている。具体的には、三相交流電源の給電方式が変更されても、ヒータの接続を変更することなく容易に対応することができ、電力の計算も容易な射出成形機を提供することを目的としている。そしてこのような射出成形機において、小さなコストでヒータの劣化・断線を検出できる検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するために、三相交流電源として三相3線式と三相4線式が選択可能な射出成形機として構成する。射出成形機にはR線、S線、T線からなる第1の電線群とr線、s線、t線からなる第2の電線群とを設ける。そして第1の電線群は、三相交流電源のR相、S相、T相のそれぞれに常時接続する。一方、第2の電線群は、所定の切換手段を設け、これによって第1の切換を行うとr線、s線、t線はそれぞれ三相交流電源のR相、S相、T相に接続され、第2の切換を行うとr線、s線、t線は全てN相に接続されるようにする。加熱シリンダの複数枚の単相ヒータは、それぞれ一方の端子は第1の電線群のいずれかの電線に接続し他方の端子は第2の電線群のいずれかの電線に接続する。
【0014】
かくして、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、三相交流電源として三相3線式と三相4線式が選択可能な射出成形機であって、前記射出成形機はR線、S線、T線からなる第1の電線群とr線、s線、t線からなる第2の電線群とを備え、前記第1の電線群は、前記三相交流電源のR相、S相、T相のそれぞれに接続され、前記第2の電線群は、所定の切換手段を介して前記三相交流電源に接続され、第1の切換を行うとr線、s線、t線はそれぞれ前記三相交流電源のR相、S相、T相に接続され、第2の切換を行うとr線、s線、t線は全てN相に接続されるようになっており、加熱シリンダの複数枚の単相ヒータは、それぞれ一方の端子は前記第1の電線群のいずれかの電線に接続されると共に他方の端子は前記第2の電線群のいずれかの電線に接続されていることを特徴とする射出成形機として構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の射出成形機において、前記単相ヒータはそれぞれ、R線とs線、S線とt線、T線とr線、のいずれかの組み合わせから接続され、第1〜3の電圧計がR線とs線間、S線とt線間、T線とr線間のそれぞれに設けられていると共に、第1〜3の電流計がR線、S線、T線のそれぞれに設けられていることを特徴とする射出成形機として構成される。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の射出成形機において、前記第2の電線群には、前記切換手段近傍においてr線、s線、t線の全ての線が貫通される1個の貫通型電流センサが設けられていることを特徴とする射出成形機として構成される。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の射出成形機において、前記貫通型電流センサで電流を監視し、複数枚の前記単相ヒータの中から1枚ずつ単独でONして、電流が適切か否かを判断し、それによって単相ヒータの劣化・断線を検出することを特徴とするヒータの劣化・断線検出方法として構成される。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本願発明によると、三相交流電源として三相3線式と三相4線式が選択可能な射出成形機として構成される。そして射出成形機はR線、S線、T線からなる第1の電線群とr線、s線、t線からなる第2の電線群とを備え、第1の電線群は、三相交流電源のR相、S相、T相のそれぞれに接続され、第2の電線群は、所定の切換手段を介して三相交流電源に接続され、第1の切換を行うとr線、s線、t線はそれぞれ三相交流電源のR相、S相、T相に接続され、第2の切換を行うとr線、s線、t線は全てN相に接続されるようになっている。そして加熱シリンダの複数枚の単相ヒータは、それぞれ一方の端子は第1の電線群のいずれかの電線に接続されると共に他方の端子は第2の電線群のいずれかの電線に接続されるように構成されている。従って、切換手段によって第1の切換を行うと三相3線式に対応することができ、第2の切換を行うと三相4線式に対応することができる。つまり切換手段の操作のみによって容易に三相交流電源の給電方式の変更に対応することができる。そしてこのとき複数枚の単相ヒータについては接続状態を変更する必要がない。また本発明においては、単相ヒータを接続するときのルールは、一方の端子を第1の電線群に接続し他方の端子を第2の電線群に接続するだけで済む。そうすると単相ヒータが追加されても接続のルールが明確なので容易に接続することができる。
【0016】
他の発明によると、単相ヒータはそれぞれ、R線とs線、S線とt線、T線とr線、のいずれかの組み合わせから接続され、第1〜3の電圧計がR線とs線間、S線とt線間、T線とr線間のそれぞれに設けられていると共に、第1〜3の電流計がR線、S線、T線のそれぞれに設けられている。このように構成されているので、三相3線式に接続している場合には、単相ヒータの合計電力は、第1〜3の電圧計で検出される線間電圧と第1〜3の電流計で検出される線電流をそれぞれ乗じ、これらを加算して得ることができる。ところでこの電力の計算方法は三相4線式であっても同じになる。つまり三相4線式に接続する場合には、第1〜3の電圧計、第1〜3の電流計において測定されるのは相電圧と相電流になるので、同じ計算式でヒータの合計電力が計算できる。つまりこの発明によると、三相交流電源の方式を変更しても、電圧計、電力計の接続位置を変更することなく、そして電力計算の方法を変更することなくヒータの合計電力を計算することが可能になる。さらに他の発明によると、第2の電線群には、切換手段近傍においてr線、s線、t線の全ての線が貫通される1個の貫通型電流センサが設けられている。この発明に係る射出成形機においては、1個の貫通型電流センサのみによって、三相3線式に対しても三相4線式に対しても、簡単に単相ヒータの劣化・断線を検出することができる。すなわち、貫通型電流センサで電流を監視し、複数枚の前記単相ヒータの中から1枚ずつ単独でONして、電流が適切か否かを判断し、それによって単相ヒータの劣化・断線を検出するようにする。このようにして、ヒータの劣化・断線が検出できるので、検出に要する電流センサは1個の貫通型電流センサだけで済み、コストが小さい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る射出成形機のヒータ配線を示す配線図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る射出成形機の作用を模式的に説明する図で、その(ア)は三相3線式における本実施の形態に係るヒータ配線と等価な配線図、その(イ)は三相3線式における従来のヒータ配線の配線図、その(ウ)は三相4線式における本実施の形態に係るヒータ配線と等価な配線図、その(エ)は三相4線式における従来のヒータ配線の配線図である。
図3】本発明の第2の実施の形態に係る射出成形機のヒータ配線を示す配線図である。
図4】PWM制御される複数枚のヒータのON/OFF状態を示すグラフである。
図5】本発明の第3の実施の形態に係る射出成形機のヒータ配線を示す図で、その(ア)、(イ)はヒータ配線に介装されている切換手段である端子盤を模式的に示す図で、その(ウ)はヒータ配線を示す配線図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施の形態について説明する。本実施の形態に係る射出成形機も、従来の射出成形機と同様に加熱シリンダには複数枚のヒータが設けられている。これらのヒータは単相ヒータからなり、三相交流電源からの任意の2本の電線から電力が供給されるようになっている。三相交流電源にはR相、S相、T相がΔ結線されている三相3線式の給電方式の電源もあれば、Y結線されたR相、S相、Y相と中性点のN相からなる三相4線式の給電方式の電源もある。本実施の形態に係る射出成形機は、ヒータが接続される配線、あるいは電線に特徴があり、これによっていずれの方式の三相交流電源についても容易に対応できるようになっている。
【0019】
最初に第1の実施の形態について説明する。第1の実施の形態に係る射出成形機の、ヒータ2a、2b、…に電力を供給する複数の電線は、図1に示されているように第1、2の群に分けられている。すなわち第1の電線群3と第2の電線群4である。第1の電線群3は、R線、S線、T線の3本の電線からなり、これらは三相交流電源1のR相、S相、T相にそれぞれ直接接続されている。同様に第2の電線群4も、r線、s線、t線の3本の電線からなるが、これらは直接三相交流電源1に接続されてはいない。これらのr線、s線、t線の3本の電線は、第1の電磁スイッチ6を介して、それぞれ第1の電線群3のR線、S線、T線に接続されている。あるいは第2の電線群4のr線、s線、t線の3本の電線は、第1の電磁スイッチ6を介して三相交流電源1のR相、S相、T相にそれぞれ接続されているとも言える。さらに第2の電線群4の3本の電線は、第2の電磁スイッチ7を介して、1本のN線に接続されるようにもなっている。このN線は、三相交流電源1が三相4線式のときのN相に接続される線になっている。後で説明するが、三相交流電源1が三相3線式の場合には第1の電磁スイッチ6をONにすると共に第2の電磁スイッチ7をOFFにし、三相4線式の場合には第1の電磁スイッチ6をOFFにすると共に第2の電磁スイッチ7をONにして対応することになる。
【0020】
第1の実施の形態に係る射出成形機においては、ヒータ2a、2b、…における合計電力が計算できるように、第1〜3の電圧計9a、9b、9cと、第1〜3の電流計10a、10b、10cが三相交流電源1の近傍において所定のルールに従って設けられている。同様にヒータ2a、2b、…についても所定のルールに従って各電線に接続されている。まず、第1〜3の電圧計9aは、いずれも一方の端子が第1の電線群3に、そして他方の端子が第2の電線群4に接続されている。具体的には第1の電圧計9aはR線とs線に、第2の電圧計9bはS線とt線に、そして第3の電圧計9cはT線とr線に、それぞれ接続されている。従って、三相交流電源1が三相3線式の場合には、第1の電磁スイッチ6がONになるので各線間の線間電圧が測定されることになり、三相4線式の場合には第2の電磁スイッチ7がONになるので各線の相電圧が測定されることになる。次いで第1〜3の電流計10a、10b、10cは、第1の電線群3のR線、S線、T線のそれぞれに設けられている。これらによって、各相の相電流あるいは線電流が測定できることになる。
【0021】
複数枚のヒータ2a、2b、…は、いずれも一方の端子は第1の電線群3のいずれかの線に、そして他方の端子は第2の電線群4のいずれかの線に接続されているが、第1の実施の形態においてはさらに次のルールに従って接続されている。すなわち、一方の端子がR線に接続されている場合には他方の端子はs線に、S線に接続されている場合にはt線に、T線に接続されている場合にはr線にそれぞれ接続されるようになっている。つまり、どのヒータ2a、2b、…も、第1〜3の電圧計9a、9b、9cのそれぞれが接続されている線の組み合わせ、つまりR線とs線、S線とt線、T線とr線の組み合わせのいずれかと同じになるように接続されている。これによって、ヒータの合計電力が容易に計算できるようになっている。なお図1には、ヒータ2a、2b、…は3枚しか示されていないが、実際には4枚以上のヒータが設けられており、上記のルールに従って接続されている。それぞれのヒータ2a、2b、…は、スイッチ12a、12b、…が設けられ、図に示されていないコントローラからPWM制御によってON/OFFされるようになっている。
【0022】
第1の実施の形態について作用を説明する。本実施の形態に係る射出成形機は、三相交流電源1が三相3線式であっても三相4線式であっても容易に対応できる。三相3線式の場合には、第1の電磁スイッチ6をONすると共に第2の電磁スイッチ7をOFFする。そうすると、第2の電線群4のr線、s線、t線は、いずれも第1の電線群3のR線、S線、T線に接続されることになる。従来周知のようにPWM制御によってスイッチ12a、12b、…をON/OFFすると、各ヒータ2a、2b、…に電流が供給されることになる。各ヒータ2a、2b、…の接続状態を模式的に示すと、図2の(ア)のようになる。第1〜3の電圧計9a、9b、9cによって、R線−s線間、S線−t線間、T線−r線間の線間電圧Vrs、Vst、Vtrが測定され、そして第1〜3の電流計10a、10b、10cによってR線、S線、T線の線電流Ir、Is、Itが測定される。本実施の形態においては、線間電圧=相電圧、線電流=相電流、となるので、次式によってヒータ合計電力を計算することができる。
ヒータ合計電力W=Vrs×Ir+Vst×Is+Vtr×It (1式)
なお参考として、従来の三相3線式の電線、つまり3本の電線にヒータ2a、2b、…が接続された場合の接続状態を図2の(イ)に示す。従来のように接続する場合には、相電流の測定が困難であり、このような1式による電力の計算は難しい。
【0023】
第1の実施の形態において、三相4線式の三相交流電源1に接続する場合には、第1の電磁スイッチ6をOFFすると共に第2の電磁スイッチ7をONする。そうすると第2の電線群4のr線、s線、t線は、中立点つまりN相に接続されることになる。従来周知のようにPWM制御によってスイッチ12a、12b、…をON/OFFすると、各ヒータ2a、2b、…に電流が供給される。各ヒータ2a、2b、…の接続状態を模式的に示すと、図2の(ウ)のようになる。第1〜3の電圧計9a、9b、9cによって、R線、S線、T線の相電圧Vr、Vs、Vtが測定され、そして第1〜3の電流計10a、10b、10cによってR線、S線、T線の線電流Ir、Is、Itが測定される。本実施の形態によると、線電流=相電流となるので、これらより次式によってヒータ合計電力を計算することができる。
ヒータ合計電力W=Vr×Ir+Vs×Is+Vt×It (2式)
ところで相電圧Vr、Vs、Vtは、三相3線式における線間電圧Vrs、Vst、Vtrと同様に第1〜3の電圧計9a、9b、9cによって測定されるので、2式は実質的に1式と同じである。つまり、第1の実施の形態においては、三相3線式であっても三相4線式であってもヒータの合計電力を同じ計算方法で計算することができる。なお、参考として従来の三相4線式の電線、つまり4本の電線にヒータ2a、2b、…が接続された場合の接続状態を図2の(エ)に示す。
【0024】
次に図3によって本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態において、第1の実施の形態に係る射出成形機と同様の部材については同じ符号が付されている。図3から明らかなように、第2の実施の形態に係る射出成形機も、三相交流電源1のR相、S相、T相に接続されたR線、S線、T線からなる第1の電線群3が設けられ、そして三相交流電源1に対して第1の電磁スイッチ6を介して接続されたr線、s線、t線からなる第2の電線群4が設けられている。この第2の電線群4も、第2の電磁スイッチ7を介してN相に接続されるようになっている。第2の実施の形態においても各ヒータ2a、2b、…については、一方の端子は第1の電線群3のいずれかに接続され、他方の端子は第2の電線群4のいずれかに接続されている。しかしながら、この実施の形態においてはそれぞれのヒータが接続される線の組は、R線とs線、S線とt線、T線とr線の組み合わせに限定されなくてもよい。つまり所定のヒータがR線とs線に接続され、他のヒータがR線とt線に接続されていてもよい。この実施の形態においては、ヒータの合計電力を三相3線式と三相4線式とで同じ計算式で計算できるようにすることを目的としてないからである。第2の実施の形態においては、第2の電線群4には1個の貫通型電流センサ14が設けられている。貫通型電流センサは磁界の変化を検出する1個のコイルを備え、該コイル内を貫通している電線を流れる電流を検出するようになっている。貫通型電流センサ14は、三相交流電源1の近傍の第2の電線群4に設けられ、r線、s線、t線の全てがコイルを貫通している。
【0025】
第2の実施の形態について作用を説明する。第2の実施の形態に係る射出成形機は、1個の貫通型電流センサ14のみによって、全てのヒータ2a、2b、…について劣化・断線を検出することができる。三相交流電源1が三相3線式の場合には、第1の電磁スイッチ6をONすると共に第2の電磁スイッチ7をOFFする。このようにすると従来周知のようにPWM制御によってヒータ2a、2b、…をON/OFFできる。ところで第2の実施の形態において、ヒータの劣化・断線の検査は次のようにする。PWM制御を一時的に停止し、ヒータ2a、2b、…から1枚の検査対象のヒータを選択し、検査対象のヒータだけONして他のヒータはOFFする。貫通型電流センサ14では検査対象のヒータの電流が検出される。それぞれのヒータ2a、2b、…に対しては、正常な電流の範囲があり、この範囲は予め図に示されていないコントローラに定義されている。検査対象のヒータの電流が正常な範囲を逸脱していたらヒータは劣化している、あるいは断線していると判断する。1枚のヒータについて検査が完了したら、他の1枚のヒータを選択して検査対象とし、同様の検査を実施する。順次ヒータを選択して全てのヒータについて検査する。なお、PWM制御を実施中であってもヒータの劣化・断線を検査することができる。図4のグラフにはヒータ2a、2b、…、2fをPWM制御している状態が示されているが、PWMの制御周期においては、必ず1枚のヒータだけがONになるタイミングが存在する。この例では、ヒータ2cが符号16のタイミングにおいて単独でONになっている。このタイミングで貫通型電流センサ14で検出される電流はヒータ2cの電流のみになる。検出される電流が適正か否かを判断すればヒータ2cについて劣化・断線を検査できる。PWM制御を続けていると他のヒータについても単独でONされる状態が発生する。そのタイミングでそのヒータについて劣化・断線を検査すればよい。
【0026】
第2の実施の形態について、三相交流電源1が三相4線式の場合には、第1の電磁スイッチ6をOFFすると共に第2の電磁スイッチ7をONする。このときも従来周知のようにPWM制御によってヒータ2a、2b、…をON/OFFできる。また、各ヒータの劣化・断線の検査は三相3線式に接続しているときと同様に、1枚ずつ検査対象のヒータを選択し、そのヒータのみONして貫通型電流センサ14で電流を検出し、電流が正常な範囲にあるか否かによって判定することができる。
【0027】
本発明の実施の形態に係る射出成形機は、第1の電線群3と第2の電線群4が設けられ、各ヒータ2a、2b、…が第1の電線群3と第2の電線群4のそれぞれに接続されている点に特徴がある。そして第2の電線群4のr線、s線、t線が、所定の切換手段によって、三相交流電源1のR相、S相、T相に接続されたり、あるいはN相に接続されたり、選択的に接続状態が切換えられる点に特徴がある。前記した第1、2の実施の形態においては、切換手段は第1、2の電磁スイッチ6、7から構成されている。しかしながら、切換手段は他によっても実施できる。図5には、他の切換手段である端子盤18が示されている。この端子盤18は、三相交流電源1側に設けられている電源側端子盤19と、ヒータ側に設けられているヒータ側端子盤20とから構成されている。三相3線式に接続する場合には、図5の(ア)における点線のように端子間を接続する。そうするとs線、r線、t線は、三相交流電源1のR相、S相、T相に接続される。一方、三相4線式に接続する場合には、図5の(イ)における点線のように端子間を接続する。そうするとs線、r線、t線はいずれもN相に接続されることになる。端子盤18の切換えによって接続状態が変わる様子が、図5の(ウ)に示されている。
【符号の説明】
【0028】
1 三相交流電源
2a、2b、2c、… ヒータ
3 第1の電線群
4 第2の電線群
6 第1の電磁スイッチ
7 第2の電磁スイッチ
9a、9b、9c 第1〜3の電圧計
10a、10b、10c 第1〜3の電流計
14 貫通型電流センサ
18 端子盤
R、S、T R線、S線、T線
r、s、t r線、s線、t線
図1
図2
図3
図4
図5