【文献】
SZOFIA S BULLAIN,GENETICALLY ENGINEERED T CELLS TO TARGET EGFRVIII EXPRESSING GLIOBLASTOMA,JOURNAL OF NEURO-ONCOLOGY,2009年 9月,V94 N3,P373-382
【文献】
夏目敦至、他,EGFRvIIIに対するT細胞免疫療法,Biotherapy,2010年,V24 N6,P474-481
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜11のいずれか1項に記載のCAR、請求項12又は13に記載の核酸、請求項14に記載の組換え発現ベクター、請求項15に記載の宿主細胞、又は請求項16に記載の細胞集団と、医薬上許容される担体とを含む、医薬組成物。
癌の治療用又は予防用医薬組成物であって、請求項1〜11のいずれか1項に記載のCAR、請求項12又は13に記載の核酸、請求項14に記載の組換え発現ベクター、請求項15に記載の宿主細胞、請求項16に記載の細胞集団、又は請求項18に記載の医薬組成物を含む、医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の詳細な説明
本発明の1実施形態は、ヒト抗体139(h139Ab)の抗原結合ドメイン、細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0009】
キメラ抗原受容体(CAR)は、T細胞シグナル伝達ドメインに連結された抗体の抗原結合ドメイン(例、scFv)を含む、人工的に構築されたハイブリッドタンパク質又はポリペプチドである。CARの特徴には、モノクローナル抗体の抗原結合特性を利用して、非MHC拘束的様式でT細胞の特異性及び反応性を、選択された標的に対して転換する能力が挙げられる。非MHC拘束的抗原認識は、CARを発現するT細胞に、抗原プロセシングと無関係に抗原を認識する能力を与え、それにより、腫瘍エスケープの主要な機構を迂回する。さらに、T細胞中で発現されると、CARは、有利なことに、内在性T細胞受容体(TCR)α鎖及びβ鎖と二量体化しない。
【0010】
本明細書中で使用する場合、語句「抗原特異性を有する」及び「抗原特異的応答を惹起する」とは、CARが、抗原に特異的に結合でき且つ抗原を免疫特異的に認識でき、その結果抗原へのCARの結合が免疫応答を惹起することを意味する。
【0011】
本発明のCARは、上皮成長因子受容体変異体III(EGFRvIII)に対する抗原特異性を有する。EGFRvIIIはプロテインキナーゼスーパーファミリーのメンバーである上皮成長因子受容体(EGFR)の変異体であり、膜貫通糖タンパク質である。EGFRvIIIは、ヒト神経膠腫において見出されるいくつかのEGFR変異のうち最も頻度が高く、多形性膠芽腫(GBM)(「膠芽細胞腫」としても知られる)の約30%〜約50%で発現している。EGFRvIIIの発現は、EGFRのエクソン2−7を除去し、コード配列のエクソン1と8の連結を引き起こす、遺伝子内の欠失・再構成に起因する。EGFRvIIIは、種々の癌、例えば膠芽細胞腫(膠芽細胞腫幹細胞を含む);乳癌、卵巣癌、及び非小細胞肺癌;頭頸部扁平上皮癌;髄芽細胞腫、結腸直腸癌、前立腺癌、及び膀胱癌等の腫瘍細胞で発現している。特定の理論又はメカニズムに束縛されないが、EGFRvIIIに対する抗原特異的応答を惹起することによって、本発明のCARは、以下:EGFRvIIIを発現する腫瘍細胞の標的化及び破壊、腫瘍の退縮又は除去、免疫細胞の腫瘍部位への浸潤促進、及び抗腫瘍応答の亢進/延長、の1以上を提供する。EGFRvIIIは正常(即ち、非癌性の)組織では発現していないので、本発明のCARは、正常な組織及び細胞の標的化/破壊を、好都合にも実質的に回避すると期待される。
【0012】
本発明は、ヒト抗体139の抗原結合ドメインを含むCARを提供する。抗体139は、ヒトの抗EGFRvIII抗体である。抗体139は、EGFRvIIIに特異的に結合する。適切なヒト抗体139配列は、例えば、米国特許第7,628,986号(これは、本明細書中に参照により組み込まれる)に開示されている。これに関して、本発明の好ましい実施形態は、ヒト抗体139の単鎖可変断片(scFv)を含むか、これからなるか又は本質的にこれからなる抗原結合ドメインを含むCARを提供する。
【0013】
ヒト抗体139は、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含む。軽鎖可変領域は、配列番号1を含み得るか、配列番号1から成り得るか、又は実質的に配列番号1から成り得る。重鎖可変領域は、配列番号2を含み得るか、配列番号2から成り得るか、又は実質的に配列番号2から成り得る。従って、本発明の1実施形態においては、抗原結合ドメインは、配列番号1を含む軽鎖可変領域及び/又は配列番号2を含む重鎖可変領域を含む。
【0014】
1実施形態においては、抗原結合ドメインはリンカーペプチドを含む。リンカーペプチドは軽鎖可変領域及び重鎖可変領域の間に位置し得る。この関係で、抗原結合ドメインは、配列番号3を含むか、配列番号3から成るか、又は実質的に配列番号3から成る、リンカーペプチドを含み得る。
【0015】
1実施形態においては、抗原結合ドメインはリーダー配列を含む。リーダー配列は、軽鎖可変領域のアミノ末端に位置し得る。この関係で、抗原結合ドメインは、配列番号4を含むか、配列番号4から成るか、又は実質的に配列番号4から成る、リーダー配列を含み得る。
【0016】
1実施形態においては、抗原結合ドメインはリーダー配列、軽鎖可変領域、リンカーペプチド、及び重鎖可変領域を含み得る。この関係で、リーダー配列、軽鎖可変領域、リンカーペプチド、及び重鎖可変領域を含む抗原結合ドメインは、配列番号5(scFv ヒト抗体139)を含むか、配列番号5から成るか、又は実質的に配列番号5から成る。
【0017】
本発明の1実施形態において、CARは、細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、並びに任意選択で、CD8を含む細胞内ヒンジドメイン並びにCD28、4−1BB及びCD3ζを含む細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む。CD28は、T細胞補助刺激(co−stimulation)に重要なT細胞マーカーである。CD8もT細胞マーカーである。4−1BBは、T細胞に強い補助刺激シグナルを伝達し、Tリンパ球の分化を促進し、長期生存を増強する。CD3ζは、TCRと会合してシグナルを生じ、免疫受容体活性化チロシンモチーフ(immunoreceptor tyrosine−based activation motif;ITAM)を含む。これに関して、本発明の好ましい実施形態は、細胞外ヒンジドメイン及び膜貫通ドメインであって、配列番号6(ヒトCD8の細胞外ヒンジドメイン及び膜貫通ドメイン)を含むか、本質的にこれからなるか、これからなるものを提供する。細胞内T細胞シグナル伝達ドメインは、配列番号7(ヒトCD28、4−1BB及びCD3ζの細胞内T細胞シグナル伝達配列ドメイン)を含むか、本質的にこれからなるか、又はこれからなる。
【0018】
本発明の別の実施形態において、CARは、細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、並びにCD28及びCD3ζを含む細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む。これに関して、本発明の好ましい実施形態は、細胞外ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞シグナル伝達ドメインであって、配列番号8(ヒトCD28の細胞外ヒンジ、膜貫通ドメイン及び細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン)及び配列番号9(ヒトCD3ζの細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン)を含むか、本質的にこれらからなるか、又はこれらからなるものを提供する。
【0019】
本発明の更なる実施形態は、表1に示されるアミノ酸配列のいずれかを含むか、それからなるか、又は本質的にそれからなる、CARを提供する。
【0021】
本発明はまた、本発明のCARに関する、関連する核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体又はその抗原結合部分、及び医薬組成物を提供する。
【0022】
本明細書中に記載の、本発明のCARの機能的部分は、本発明の範囲に含まれる。本明細書中で使用する場合、CARに関して用語「機能的部分」とは、本発明のCARの任意の一部又は断片をいい、この一部又は断片は、CAR(この一部又は断片はこれの一部である)(親CAR)の生物活性を保持する。機能的部分は、例えば、標的細胞を認識する能力又は疾患を検出、治療若しくは予防する能力を、親CARと類似の程度まで、同程度まで、又はより高い程度まで保持する、CARの一部を包含する。親CARに対して、機能的部分は、親CARの例えば約10%、25%、30%、50%、68%、80%、90%、95%又はそれより多くを含み得る。
【0023】
機能的部分は、当該部分のアミノ末端若しくはカルボキシ末端又は両端に更なるアミノ酸を含み得、この更なるアミノ酸は、親CARのアミノ酸配列中には見出されないものである。望ましくは、更なるアミノ酸は、機能的部分の生物機能(例えば、標的細胞の認識、癌の検出、癌の治療若しくは予防など)を妨害しない。より望ましくは、更なるアミノ酸は、親CARの生物活性と比較して、生物活性を増強する。
【0024】
本発明の範囲内には、本明細書中に記載される本発明のCARの機能的変異体が含まれる。本明細書中で使用する場合、用語「機能的変異体」とは、親CARに対して、実質的又は顕著な配列同一性又は類似性を有するCAR、ポリペプチド又はタンパク質をいい、この機能的変異体は、CAR(これの変異体である)の生物活性を保持する。機能的変異体は、例えば、親CARと類似の程度まで、同程度まで、又はより高い程度まで、標的細胞を認識する能力を保持した、本明細書中に記載されるCAR(親CAR)の変異体を包含する。親CARに対して、機能的変異体は、親CARに対して、例えば、少なくとも約30%、50%、75%、80%、90%、98%又はそれ以上、アミノ酸配列が同一であり得る。
【0025】
機能的変異体は、例えば、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を有する、親CARのアミノ酸配列を含み得る。或いは又はさらに、機能的変異体は、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を有する、親CARのアミノ酸配列を含み得る。この場合、非保存的アミノ酸置換は、機能的変異体の生物活性を妨害も阻害もしないことが好ましい。非保存的アミノ酸置換は、機能的変異体の生物活性を増強し得、その結果、親CARと比較して機能的変異体の生物活性が増加する。
【0026】
本発明のCARのアミノ酸置換は、好ましくは保存的アミノ酸置換である。保存的アミノ酸置換は当該分野で公知であり、特定の物理的及び/又は化学的特性を有する1つのアミノ酸が、同じ又は類似の化学的又は物理的特性を有する別のアミノ酸と交換されるアミノ酸置換が含まれる。例えば、保存的アミノ酸置換は、酸性アミノ酸/負に帯電した極性アミノ酸の別の酸性アミノ酸/負に帯電した極性アミノ酸での置換(例、Asp又はGlu)、非極性側鎖を有するアミノ酸の、非極性側鎖を有する別のアミノ酸での置換(例、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Cys、Valなど)、塩基性アミノ酸/正に帯電した極性アミノ酸の別の塩基性アミノ酸/正に帯電した極性アミノ酸での置換(例、Lys、His、Argなど)、極性側鎖を有する非荷電アミノ酸の、極性側鎖を有する別の非荷電アミノ酸での置換(例、Asn、Gln、Ser、Thr、Tyrなど)、ベータ分枝した側鎖を伴うアミノ酸の、ベータ分枝した側鎖を伴う別のアミノ酸での置換(例、Ile、Thr、及びVal)、芳香族の側鎖を伴うアミノ酸の、芳香族の側鎖を伴う別のアミノ酸での置換(例、His、Phe、Trp、及びTyr)などであり得る。
【0027】
CARは、特定のアミノ酸配列又は本明細書中に記載される配列から本質的になり得、その結果、他の成分(例えば他のアミノ酸)は、機能的変異体の生物活性を物質的に変化させない。
【0028】
本発明の実施形態のCAR(機能的部分及び機能的変異体を含む)は、CAR(又はその機能的部分及び機能的変異体)がその生物活性(例えば、抗原に特異的に結合する能力、宿主中の罹患細胞を検出する能力、又は宿主中の疾患を治療若しくは予防する能力など)を保持することを条件として、任意の長さのものであり得る、即ち、任意の数のアミノ酸を含み得る。例えば、CARは、約50〜約5000アミノ酸長、例えば、50、70、75、100、125、150、175、200、300、400、500、600、700、800、900、1000又はそれより大きいアミノ酸長であり得る。
【0029】
本発明の実施形態のCAR(本発明の機能的部分及び機能的変異体を含む)は、1つ以上の天然に存在するアミノ酸の代わりに合成アミノ酸を含み得る。かかる合成アミノ酸は当該分野で公知であり、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、α−アミノn−デカン酸、ホモセリン、S−アセチルアミノメチル−システイン、トランス−3−及びトランス−4−ヒドロキシプロリン、4−アミノフェニルアラニン、4−ニトロフェニルアラニン、4−クロロフェニルアラニン、4−カルボキシフェニルアラニン、β−フェニルセリン β−ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α−ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン−2−カルボン酸、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’−ベンジル−N’−メチル−リジン、N’,N’−ジベンジル−リジン、6−ヒドロキシリジン、オルニチン、α−アミノシクロペンタンカルボン酸、α−アミノシクロヘキサンカルボン酸、α−アミノシクロヘプタンカルボン酸、α−(2−アミノ−2−ノルボルナン)−カルボン酸、α,γ−ジアミノ酪酸、α,β−ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン及びα−tert−ブチルグリシンが挙げられる。
【0030】
本発明の実施形態のCAR(機能的部分及び機能的変異体を含む)は、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N−アクリル化、環化(例えばジスルフィド結合を介して)され得るか、又は酸付加塩に変換され、且つ/或いは任意選択で二量体化若しくは重合化、又はコンジュゲート化され得る。
【0031】
本発明の実施形態のCAR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、当該分野で公知の方法で得ることができる。CARは、ポリペプチド又はタンパク質を作製する、任意の好適な方法によって作製し得る。ポリペプチド及びタンパク質を新規合成する適切な方法は、例えば以下の参考文献に記載されている:Chanら,Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis,Oxford University Press,Oxford,United Kingdom,2000;Peptide and Protein Drug Analysis,Reid,R.編,Marcel Dekker,Inc.,2000;Epitope Mapping,Westwoodら編,Oxford University Press,Oxford,United Kingdom,2001;及び米国特許第5,449,752号。また、ポリペプチド及びタンパク質は、標準的な組換え法を使用して、本明細書中に記載される核酸を使用して組換え産生され得る。例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY 2001;及びAusubelら,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and John Wiley&Sons,NY,1994を参照。さらに、本発明のCAR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)のあるものは、植物、細菌、昆虫、哺乳動物(例えば、ラット、ヒトなど)などの供給源から、単離及び/又は精製され得る。単離及び精製の方法は当該分野で周知である。或いは、本明細書中に記載されるCAR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、Synpep(Dublin,CA)、Peptide Technologies Corp.(Gaithersburg,MD)及びMultiple Peptide Systems(San Diego,CA)などの企業によって商業的に合成され得る。これに関して、本発明のCARは、合成、組換え、単離及び/又は精製され得る。
【0032】
本発明の1実施形態はさらに、本発明のCARのエピトープに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合部分を提供する。抗体は、当該分野で公知の任意の型の免疫グロブリンであり得る。例えば、抗体は、任意のアイソタイプ(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMなど)のものであり得る。抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであり得る。抗体は、天然に存在する抗体、例えば、哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ、ニワトリ、ハムスター、ヒトなど)から単離及び/又は精製された抗体であり得る。或いは、抗体は、遺伝子改変された抗体、例えば、ヒト化抗体又はキメラ抗体であり得る。抗体は、モノマー形態でもポリマー形態でもあり得る。また、抗体は、本発明のCARの機能的部分に対し、任意のレベルの親和性又は結合活性を有し得る。
【0033】
本発明のCARの任意の機能的部分に結合する能力について抗体を試験する方法は、当該分野で公知であり、以下:任意の抗体−抗原結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA、ウエスタンブロット、免疫沈降及び競合阻害アッセイ(例えば、Janewayら(下記)及び米国特許出願公開2002/0197266A1を参照)、が挙げられる。
【0034】
抗体の製造に適した方法は、当該分野で公知である。例えば、標準的なハイブリドーマ法は、例えば、Koehler及びMilstein,Eur.J.Immunol.,5,511−519(1976)、Harlow及びLane(編),Antibodies:A Laboratory Manual,CSH Press(1988)、並びにC.A.Janewayら(編),Immunobiology,第5版,Garland Publishing,New York,NY(2001))に記載されている。或いは、他の方法が当該分野で公知である(例えば、EBV−ハイブリドーマ法(Haskard及びArcher,J.Immunol.Methods,74(2),361−67(1984)、並びにRoderら,Methods Enzymol.,121,140−67(1986))、及びバクテリオファージベクター発現系(例えば、Huseら,Science,246,1275−81(1989)を参照))。さらに、非ヒト動物において抗体を産生する方法が、例えば、米国特許第5,545,806号,同第5,569,825号及び同第5,714,352号、並びに米国特許出願公開2002/0197266A1に記載されている。
【0035】
さらにファージディスプレイが、抗体を産生するために使用され得る。これに関して、抗体の抗原結合可変(V)ドメインをコードするファージライブラリーが、標準的な分子生物学技術及び組換えDNA技術を使用して生成され得る(例えば、Sambrookら(上記)及びAusubelら(上記)を参照)。所望の特異性を有する可変領域をコードするファージが、所望の抗原への特異的結合について選択され、選択された可変ドメインを含む完全又は部分抗体が再構成される。再構成された抗体をコードする核酸配列は、適切な細胞株(例えば、ハイブリドーマ産生に使用される骨髄腫細胞)中に導入され、その結果、モノクローナル抗体の特徴を有する抗体がこの細胞によって分泌される(例えば、Janewayら(上記)、Huseら(上記)及び米国特許第6,265,150号を参照)。
【0036】
抗体は、特定の重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックであるトランスジェニックマウスにより産生され得る。かかる方法は当該分野で公知であり、例えば、米国特許第5,545,806号及び同第5,569,825号、並びにJanewayら(上記)に記載されている。
【0037】
ヒト化抗体を産生する方法は当該分野で周知であり、例えば、Janewayら(上記)、米国特許第5,225,539号、同第5,585,089号及び同第5,693,761号、欧州特許0239400B1、並びに英国特許第2188638号に詳細に記載されている。ヒト化抗体はまた、米国特許第5,639,641号及びPedersenら,J.Mol.Biol.,235,959−973(1994)に記載された抗体リサーフェシング(resurfacing)技術を使用して生成され得る。
【0038】
本発明の1実施形態はまた、本明細書中に記載される抗体のいずれかの抗原結合部分を提供する。抗原結合部分は、少なくとも1つの抗原結合部位を有する任意の部分(例えば、Fab、F(ab’)
2、dsFv、sFv、ダイアボディ(diabody)及びトリアボディ(triabody))であり得る。
【0039】
単鎖可変領域断片(sFv)抗体断片(これは、合成ペプチドを介して抗体軽鎖の可変(V)ドメインに連結された抗体重鎖のVドメインを含む、切断型Fab断片である)は、慣用的な組換えDNA技術の技術を使用して生成され得る(例えば、Janewayら(上記)を参照)。同様に、ジスルフィド安定化可変領域断片(dsFv)は、組換えDNA技術によって調製され得る(例えば、Reiterら,Protein Engineering,7,697−704(1994)を参照)。しかし、本発明の抗体断片は、これらの例示的な抗体断片の型に限定されない。
【0040】
また、抗体又はその抗原結合部分は、検出可能な標識(例えば、放射性同位体、フルオロフォア(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ)及び元素粒子(例えば、金粒子)など)を含むように改変され得る。
【0041】
本発明の1実施形態はさらに、本明細書中に記載されるCAR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。本発明の1実施形態は、(リーダー配列、ヒト抗体139の軽鎖可変領域、リンカーペプチド、及びヒト抗体139の重鎖可変領域をコードする)配列番号12を含むヒト抗体139の抗原結合ドメインをコードする核酸配列を含む核酸を提供する。これに関して、本発明の1実施形態は、表2のヌクレオチド配列を含むか、これからなるか又は本質的にこれからなる核酸を提供する。
【0043】
本明細書中で使用する場合、「核酸」とは、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」及び「核酸分子」を含み、一般にDNA又はRNAのポリマーを意味し、これは、一本鎖又は二本鎖であり得、合成されても天然供給源から得てもよく(例えば、単離及び/又は精製)、天然、非天然若しくは変更されたヌクレオチドを含み得、未修飾のオリゴヌクレオチドのヌクレオチド間に見出されるホスホジエステル結合の代わりに、天然、非天然若しくは変更されたヌクレオチド間結合(例えば、ホスホロアミダート(phosphoroamidate)結合又はホスホロチオエート結合)を含み得る。いくつかの実施形態において、核酸は、挿入、欠失、逆位及び/又は置換を何れも含まない。しかし、本明細書で議論するように、ある場合には、核酸が1以上の挿入、欠失、逆位及び/又は置換を含むことが適切であり得る。
【0044】
本発明の1実施形態の核酸は組換えであり得る。本明細書中で使用する場合、用語「組換え」とは、(i)天然又は合成の核酸セグメントを、生きた細胞中で複製できる核酸分子に連結することによって、生きた細胞の外側で構築された分子、或いは(ii)上記(i)に記載した分子の複製から生じる分子、をいう。本明細書の目的のために、複製は、in vitro複製又はin vivo複製であり得る。
【0045】
組換え核酸は、天然に存在しない配列を有するものであっても、配列の、分離していたであろう2つのセグメントの人工的な組み合わせによって製造された配列を有するものであってもよい。この人工的な組合わせは、化学合成によって達成される場合が多く、又はより一般的には、例えば、Sambrookら(上記)に記載されたような遺伝子改変技術による、核酸の単離されたセグメントの人工的な改変によって達成される。核酸は、当業者に公知の手順を使用して、化学合成及び/又は酵素ライゲーション反応に基づいて構築され得る。例えば、Sambrookら(上記)及びAusubelら(上記)を参照。例えば、核酸は、天然に存在するヌクレオチド或いは分子の生物学的安定性を増加させるように、又はハイブリダイゼーションの際に形成される二重鎖の物理的安定性を増加させるように設計された多様な修飾ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチド)を使用して、化学的に合成され得る。核酸を生成するために使用され得る修飾ヌクレオチドの例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキューオシン(β−D−galactosylqueosine)、イノシン、N
6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N
6−置換アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン(β−D−mannosylqueosine)、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N
6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル(pseudouracil)、キューオシン(queosine)、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル及び2,6−ジアミノプリン。或いは、本発明の核酸の1以上は、Macromolecular Resources(Fort Collins,CO)及びSynthegen(Houston,TX)などの企業から購入できる。
【0046】
核酸は、CAR又はそれらの機能的部分若しくは機能的変異体のいずれかをコードする、任意の単離又は精製されたヌクレオチド配列を含み得る。或いは、ヌクレオチド配列は、任意の配列へと縮重したヌクレオチド配列、又は縮重配列の組み合わせを含み得る。
【0047】
本発明の1実施形態は、本明細書中に記載される核酸のいずれかのヌクレオチド配列に対して相補的なヌクレオチド配列、又は本明細書中に記載される核酸のいずれかのヌクレオチド配列に対し、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む、単離又は精製された核酸も提供する。
【0048】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列は、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズし得る。「高ストリンジェンシー条件」とは、ヌクレオチド配列が、非特異的ハイブリダイゼーションよりも検出可能に強い量で標的配列(本明細書中に記載される核酸のいずれかのヌクレオチド配列)に特異的にハイブリダイズすることを意味する。高ストリンジェンシー条件には、正確に相補的な配列を有するポリヌクレオチド、又は数個の散らばったミスマッチのみを含むポリヌクレオチドを、ヌクレオチド配列にマッチした数塩基の小領域(例えば3〜10塩基)を偶然有するランダム配列から識別する条件が含まれる。かかる相補的な小領域は、14〜17又はそれより多い塩基の全長相補体よりも容易に融解され、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションにより、それらを容易に識別できる。比較的高ストリンジェンシーの条件には、例えば、低塩及び/又は高温条件(例えば、約0.02〜0.1MのNaCl又は等価物、約50〜70℃の温度により提供される)が含まれる。かかる高ストリンジェンシー条件は、存在したとしても、ヌクレオチド配列とテンプレート鎖若しくは標的鎖との間のミスマッチをほとんど許容せず、本発明のCARのいずれかの発現を検出するのに特に適している。条件は、漸増量のホルムアミドの添加によって、よりストリンジェントになり得ることが一般に理解される。
【0049】
本発明は、また、本明細書中に記載された核酸のいずれかに対して同一性が少なくとも約70%以上(例、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%)であるヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0050】
1実施形態において、本発明の核酸は、組換え発現ベクター中に組み込まれ得る。これに関して、本発明の1実施形態は、本発明の核酸のいずれかを含む組換え発現ベクターを提供する。本明細書中の目的のために、用語「組換え発現ベクター」とは、宿主細胞によるmRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドの発現を可能にする遺伝子改変オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドコンストラクトを意味し、ここで、コンストラクトは、mRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ベクターは、細胞内でmRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドを発現させるのに十分な条件下で細胞と接触させられる。本発明のベクターは、全体としては天然に存在するものではない。しかし、ベクターの一部は天然に存在するものであり得る。本発明の組換え発現ベクターは、DNA及びRNA(一本鎖又は二本鎖であり得、合成されても一部を天然供給源から得てもよく、天然、非天然若しくは変更されたヌクレオチドを含み得る)が挙げられるがそれらに限定されない任意の型のヌクレオチドを含み得る。組換え発現ベクターは、天然に存在するヌクレオチド間結合若しくは天然に存在しないヌクレオチド間結合、又は両方の型の結合を含み得る。好ましくは、天然に存在しない又は変更されたヌクレオチド又はヌクレオチド間結合は、ベクターの転写も複製も妨害しない。
【0051】
1実施形態において、本発明の組換え発現ベクターは、任意の適切な組換え発現ベクターであり得、任意の適切な宿主を形質転換又はトランスフェクトするために使用され得る。適切なベクターとしては、増殖(propagation)及び増大(expansion)のため、発現のため、又はそれら両方のために設計されたベクター(例えば、プラスミド及びウイルス)が挙げられる。ベクターは、以下からなる群より選択され得る:pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences,Glen Burnie,MD)、pBluescriptシリーズ(Stratagene,LaJolla,CA)、pETシリーズ(Novagen,Madison,WI)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech,Uppsala,Sweden)及びpEXシリーズ(Clontech,Palo Alto,CA)。バクテリオファージベクター(例えば、λGT10、λGT11、λZapII(Stratagene)、λEMBL4及びλNM1149)もまた使用され得る。植物発現ベクターの例としては、pBI01、pBI101.2、pBI101.3、pBI121及びpBIN19(Clontech)が挙げられる。動物発現ベクターの例としては、pEUK−Cl、pMAM及びpMAMneo(Clontech)が挙げられる。組換え発現ベクターは、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター)であり得る。
【0052】
多くのトランスフェクションの技法が当該技術分野において一般に公知である(例、Grahamら,Virology,52:456−467(1973);Sambrookら,上記;Davisら,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier(1986);及びChuら,Gene,13:97(1981)を参照)。トランスフェクションの方法としては、リン酸カルシウム共沈殿法(例、Grahamら,上記を参照)、培養細胞への直接のマイクロインジェクション(例、Capecchi,Cell,22:479−488(1980)を参照)、エレクトロポーレーション(例、Shigekawaら,BioTechniques,6:742−751(1988)を参照)、リポソームを介した遺伝子導入(例、Manninoら,BioTechniques,6:682−690(1988)を参照)、脂質を介した形質導入(例、Felgnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:7413−7417(1987)を参照)、及び高速ミクロ射出粒子を用いる核酸送達(例、Kleinら,Nature,327:70−73(1987)を参照)が挙げられる。
【0053】
1実施形態において、本発明の組換え発現ベクターは、例えばSambrookら(上記)及びAusubelら(上記)に記載された、標準的な組換えDNA技術を使用して調製できる。環状又は線状の発現ベクターのコンストラクトは、原核生物又は真核生物の宿主細胞において機能的な複製系を含むように調製され得る。複製系は、例えば、ColEl、2μプラスミド、λ、SV40、ウシパピローマウイルスなどに由来し得る。
【0054】
組換え発現ベクターは、必要に応じて、そのベクターがDNAベースであるかRNAベースであるかを考慮して、ベクターが導入される宿主の型(例えば、細菌、真菌、植物又は動物)に特異的な調節配列(例えば、転写及び翻訳の開始及び終止コドン)を含み得る。
【0055】
組換え発現ベクターは、形質転換又はトランスフェクトされた宿主の選択を可能にする、1以上のマーカー遺伝子を含み得る。マーカー遺伝子には、殺生物剤耐性(例えば、抗生物質、重金属などに対する耐性)、原栄養性を提供するための栄養要求性宿主における補完などが挙げられる。本発明の発現ベクターに適したマーカー遺伝子には、例えば、ネオマイシン/G418耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子及びアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
【0056】
組換え発現ベクターは、CAR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)をコードするヌクレオチド配列或いはCARをコードするヌクレオチド配列と相補的であるか又はそれにハイブリダイズするヌクレオチド配列に作動可能に連結された、天然又は非天然のプロモーターを含み得る。プロモーター(例えば、強い、弱い、誘導性、組織特異的及び発生特異的)の選択は、当業者の技術範囲内である。同様に、ヌクレオチド配列とプロモーターとの組み合わせもまた、当業者の技術範囲内である。プロモーターは、非ウイルスプロモーター若しくはウイルスプロモーター(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター、又はマウス幹細胞ウイルスの末端反復配列中に見出されるプロモーター)であり得る。
【0057】
本発明の組換え発現ベクターは、一過性の発現のため、安定な発現のため、又はその両方のために設計され得る。また、組換え発現ベクターは、構成的発現又は誘導性発現のために製造され得る。
【0058】
さらに、組換え発現ベクターは、自殺遺伝子を含むように製造され得る。本明細書中で使用する場合、用語「自殺遺伝子」とは、その自殺遺伝子を発現する細胞を死に至らしめる遺伝子をいう。自殺遺伝子は、その遺伝子が発現される細胞に対し薬剤(例えば薬物)に対する感受性を付与し、細胞がその薬剤と接触したとき又はその薬剤に曝露されたときに細胞を死に至らしめる遺伝子であり得る。自殺遺伝子は当該分野で公知であり(例えば、Suicide Gene Therapy:Methods and Reviews,Springer,Caroline J.(Cancer Research UK Centre for Cancer Therapeutics at the Institute of Cancer Research,Sutton,Surrey,UK),Humana Press,2004を参照)、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ及びニトロレダクターゼが挙げられる。
【0059】
本発明の範囲内には、本発明のCAR(その機能的部分又は変異体のいずれかを含む)、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、宿主細胞集団、又は抗体若しくはその抗原結合部分のいずれかを含む、コンジュゲート(例えば、バイオコンジュゲート)が含まれる。コンジュゲート並びにコンジュゲートの合成方法は一般に、当該分野で公知である(例えば、Hudecz,F.,Methods Mol.Biol.298:209−223(2005)及びKirinら,Inorg Chem.44(15):5405−5415(2005)を参照)。
【0060】
本発明の1実施形態はさらに、本明細書中に記載される組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を提供する。本明細書中で使用する場合、用語「宿主細胞」とは、本発明の組換え発現ベクターを含み得る任意の型の細胞をいう。宿主細胞は、真核生物細胞(例えば、植物、動物、真菌又は藻類)であってもよく、原核生物細胞(例えば、細菌又は原生生物)であってもよい。宿主細胞は、培養細胞又は初代細胞(即ち、ヒトなどの生物から直接単離された)であり得る。宿主細胞は、接着細胞又は浮遊細胞(即ち、懸濁物中で増殖する細胞)であり得る。適切な宿主細胞は当該分野で公知であり、例えば、DH5α E.coli細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、サルVERO細胞、COS細胞、HEK293細胞などが挙げられる。組換え発現ベクターを増幅又は複製する目的のために、宿主細胞は、DH5α細胞などの原核生物細胞であり得る。組換えCARを産生する目的のために、宿主細胞は哺乳動物細胞であり得る。宿主細胞はヒト細胞であり得る。宿主細胞は任意の細胞型のものであり得、任意の組織型に由来し得、任意の発生段階のものであり得るが、宿主細胞は、末梢血リンパ球(PBL)又は末梢血単核球(PMBC)であり得る。宿主細胞はT細胞であり得る。
【0061】
本明細書中の目的のために、T細胞は、任意のT細胞(例えば培養T細胞(例えば初代T細胞)、又は培養T細胞株(例えば、Jurkat、SupT1など)由来のT細胞、又は哺乳動物から得られたT細胞)であり得る。哺乳動物から得られる場合、T細胞は、多数の供給源(血液、骨髄、リンパ節、胸腺又は他の組織若しくは体液が挙げられるが、これらに限定されない)から得ることができる。T細胞はまた、富化又は精製され得る。T細胞はヒトT細胞であり得る。T細胞は、ヒトから単離されたT細胞であり得る。T細胞は、任意の型のT細胞であり得、任意の発生段階のものであり得る(CD4
+/CD8
+二重ポジティブT細胞、CD4
+ヘルパーT細胞(例えば、Th
1及びTh
2細胞)、CD8
+T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、腫瘍浸潤細胞、メモリーT細胞、ナイーブT細胞などが含まれるが、これらに限定されない)。T細胞は、CD8
+T細胞又はCD4
+T細胞であり得る。
【0062】
本発明の1実施形態は、本明細書中に記載される少なくとも1つの宿主細胞を含む細胞集団も提供する。細胞集団は、少なくとも1つの他の細胞(例えば、記載された組換え発現ベクターをいずれも含まない宿主細胞(例えばT細胞)又はT細胞以外の細胞(例えば、B細胞、マクロファージ、好中球、赤血球、肝細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋細胞、脳細胞など))に加えて、この組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を含む、不均質な集団であり得る。或いは、細胞集団は、実質的に均質な集団であり得、このとき、集団は、組換え発現ベクターを含む宿主細胞を主に含む(例えば、組換え発現ベクターを含む宿主細胞から本質的になる)。集団は細胞のクローン集団でもあり得、このとき、集団の全ての細胞は、組換え発現ベクターを含む単一の宿主細胞のクローンであり、その結果、集団の全ての細胞が組換え発現ベクターを含む。本発明の1実施形態において、細胞集団は、本明細書中に記載される組換え発現ベクターを含む宿主細胞を含むクローン集団である。
【0063】
CAR(その機能的部分及び変異体を含む)、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞(その集団を含む)及び抗体(その抗原結合部分を含む)(これらは全て、本明細書中以下、集合的に「本発明のCAR材料」と呼ぶ)は、単離及び/又は精製され得る。本明細書中で使用する場合、用語「単離された」は、その天然の環境から取り出されたことを意味する。用語「精製された」又は「単離された」は、絶対的な純度又は単離を必要としない。むしろ、相対的な用語として意図される。従って、例えば、精製された(又は単離された)宿主細胞調製物は、宿主細胞が、身体内のその天然の環境中の細胞よりも純粋である調製物である。かかる宿主細胞は、例えば、標準的な精製技術によって生成され得る。いくつかの実施形態において、宿主細胞の調製物は、その調製物の総細胞含量の少なくとも約50%、例えば少なくとも約70%を宿主細胞が占めるように、精製される。例えば、純度は、少なくとも約50%であり得、約60%、約70%又は約80%より高くてもよく、或いは約100%であり得る。
【0064】
本発明のCAR材料は、医薬組成物などの組成物へと製剤化され得る。これに関して、本発明の1実施形態は、CAR、機能的部分、機能的変異体、核酸、発現ベクター、宿主細胞(その集団を含む)及び抗体(その抗原結合部分を含む)のいずれかと、医薬上許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。本発明のCAR材料のいずれかを含む本発明の医薬組成物は、1種より多い本発明のCAR材料(例えば、CAR及び核酸)又は2種以上の異なるCARを含み得る。或いは、医薬組成物は、他の医薬上活性な薬剤又は薬物(例えば、化学療法剤、例:アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチンなど)と組合わせて、本発明のCAR材料を含み得る。好ましい実施形態において、医薬組成物は、本発明の宿主細胞又はその集団を含む。
【0065】
本発明のCAR材料は、塩(例えば、医薬上許容される塩)の形態で提供され得る。適切な医薬上許容される酸付加塩には、鉱酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸及び硫酸)由来の塩、及び有機酸(例えば、酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、コハク酸、及びp−トルエンスルホン酸などのアリールスルホン酸)由来の塩が含まれる。
【0066】
医薬組成物に関して、医薬上許容される担体は、従来使用されるいずれの担体であってもよく、化学−物理的考慮事項(例えば、溶解度、及び活性薬剤に対する反応性の欠如)及び投与経路のみによって限定される。本明細書中に記載される医薬上許容される担体(例えば、ビヒクル、アジュバント、賦形剤及び希釈剤)は、当業者に周知であり、公に容易に入手可能である。医薬上許容される担体は、活性薬剤に対し化学的に不活性な担体及び使用条件下で有害な副作用も毒性もない担体であることが好ましい。
【0067】
担体の選択は、本発明の特定のCAR材料によって、並びに本発明のCAR材料を投与するために使用される特定の方法によって、一部決定されよう。従って、本発明の医薬組成物の適切な製剤は多様である。保存剤が使用され得る。適切な保存剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム及び塩化ベンザルコニウムが挙げられ得る。2種以上の保存剤の混合物が、任意選択で使用され得る。保存剤又はその混合物は、典型的には、総組成物の約0.0001重量%〜約2重量%の量で存在する。
【0068】
適切な緩衝剤としては、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム並びに種々の他の酸及び塩が挙げられ得る。2種以上の緩衝剤の混合物が、任意選択で使用され得る。緩衝剤又はその混合物は、典型的には、総組成物の約0.001重量%〜約4重量%の量で存在する。
【0069】
医薬製剤中の本発明のCAR材料の濃度は、例えば、約1重量%未満、通常約10重量%又は少なくとも約10重量%から、約20重量%〜約50重量%以上まで変動し得、選択される特定の投与様式に従って、流体の体積及び粘度によって主に選択され得る。
【0070】
投与可能な(例えば、非経口投与可能な)組成物を調製するための方法は、当業者に公知又は明らかであり、例えば以下においてより詳細に記載されている:Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott Williams&Wilkins;第21版(2005年5月1日)。
【0071】
経口、エアロゾル、非経口(例えば、皮下、静脈内、動脈内、筋内、皮内、腹腔内(interperitoneal)及び髄腔内)及び局所投与のための以下の製剤は、単なる例示であり、何ら限定ではない。本発明のCAR材料を投与するために1より多い経路が使用され得、ある場合には、特定の経路が、別の経路よりも迅速且つ有効な応答を提供し得る。
【0072】
経口投与に適した製剤は、以下を含むか又は以下からなり得る:(a)希釈剤(例えば、水、生理食塩水又はオレンジジュース)中に溶解させた有効量の本発明のCAR材料などの、液体溶液;(b)カプセル、サシェ剤(sachet)、錠剤、ロゼンジ及びトローチ(それぞれ、固体又は顆粒として所定量の活性成分を含む);(c)粉末;(d)適切な液体中の懸濁物;及び(e)適切な乳濁物。液体製剤は、医薬上許容される界面活性剤の添加あり又はなしのいずれかの、水及びアルコール(例えば、エタノール、ベンジルアルコール及びポリエチレンアルコール)などの希釈剤を含み得る。カプセル形態は、例えば、界面活性剤、滑沢剤及び不活性フィラー(例えば、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム及びコーンスターチ)を含む、通常の硬ゼラチン型及び軟ゼラチン型のものであり得る。錠剤形態は、以下の1以上を含み得る:ラクトース、スクロース、マンニトール、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸、結晶セルロース、アラビアゴム、ゼラチン、グアーガム、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、並びに他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、加湿剤、保存剤、香味料及び他の薬理学的に適合性の賦形剤。ロゼンジ形態は、香料(通常、スクロース及びアラビアゴム又はトラガント)中に本発明のCAR材料を含み得、アメ(pastille)は、当該分野で公知のかかる賦形剤に加えて、不活性基剤(例えば、ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアラビアゴム)、乳濁物、ゲルなどを含む中に、本発明のCAR材料を含む。
【0073】
非経口投与に適した製剤には、水性又は非水性の等張無菌注射溶液(抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、及び製剤を意図したレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る)並びに水性及び非水性の無菌懸濁物(懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤及び保存剤を含み得る)が挙げられる。本発明のCAR材料は、医薬上許容される界面活性剤(例えば、石鹸又は洗剤)、懸濁剤(例えば、ペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はカルボキシメチルセルロース)又は乳化剤及び他の医薬的アジュバントの添加あり又はなしの、医薬的担体(例えば、無菌の液体又は液体混合物(水、生理食塩水、水性デキストロース及び関連の等溶液、アルコール(例えば、エタノール又はヘキサデシルアルコール)、グリコール(例えば、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール)、ジメチルスルホキシド、グリセロール、ケタール(例えば、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール)、エーテル、ポリ(エチレングリコール)400、油、脂肪酸、脂肪酸エステル若しくはグリセリド、又はアセチル化脂肪酸グリセリドを含む))中の生理学的に許容される希釈剤中で投与され得る。
【0074】
非経口製剤で使用され得る油には、石油、動物油、植物油又は合成油が挙げられる。油の具体的例としては、落花生油、大豆油、ゴマ油、綿実油、コーン油、オリーブ油、ペトロラタム及び鉱油が挙げられる。非経口製剤での使用に適切な脂肪酸には、オレイン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルが、適切な脂肪酸エステルの例である。
【0075】
非経口製剤での使用に適した石鹸には、脂肪酸のアルカリ金属、アンモニウム及びトリエタノールアミン塩が挙げられ、適切な洗剤には以下が挙げられる:(a)カチオン性洗剤(例えば、ジメチルジアルキルアンモニウムハライド及びアルキルピリジニウムハライド)、(b)アニオン性洗剤(例えば、アルキル、アリール及びオレフィンスルホン酸塩、アルキル、オレフィン、エーテル及びモノグリセリド硫酸塩及びスルホコハク酸塩)、(c)非イオン性洗剤(例えば、脂肪アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド及びポリオキシエチレンポリプロピレンコポリマー)、(d)両性洗剤(例えば、アルキル−β−アミノプロピオン酸塩及び2−アルキル−イミダゾリン第4級アンモニウム塩)、並びに(e)それらの混合物。
【0076】
非経口製剤は典型的に、例えば、溶液中に約0.5重量%〜約25重量%の本発明のCAR材料を含むであろう。保存剤及び緩衝液が使用され得る。注射部位での刺激を最小化又は排除するために、かかる組成物は、例えば、約12〜約17の親水性−親油性バランス(HLB)を有する1種以上の非イオン性界面活性剤を含み得る。かかる製剤中の界面活性剤の量は、典型的には、例えば、約5重量%〜約15重量%の範囲であろう。適切な界面活性剤としては、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノオレエート)、及びプロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合によって形成される、疎水性塩基とエチレンオキシドとの高分子量付加物が挙げられる。非経口製剤は、単一用量又は複数用量の密封容器(例えば、アンプル及びバイアル)中に提示され得、使用直前の無菌液体賦形剤(例えば注射用水)の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存され得る。即時注射溶液及び懸濁物は、以前に記載された種類の無菌の粉末、顆粒及び錠剤から調製できる。
【0077】
注射可能な製剤は、本発明の1実施形態に従う。注射可能な組成物のための有効な医薬的担体の要件は、当業者に周知である(例えば、Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B.Lippincott Company,Philadelphia,PA,Banker及びChalmers編,238−250頁(1982)、及びASHP Handbook on Injectable Drugs,Toissel,第4版,622−630頁(1986)を参照)。
【0078】
局所製剤(経皮薬物放出に有用なものを含む)は、当業者に周知であり、本発明の実施形態の皮膚への適用に関して適切である。本発明のCAR材料は、単独で又は他の適切な成分と組み合わせて、吸入を介して投与されるエアロゾル製剤にされ得る。これらのエアロゾル製剤は、加圧された許容可能な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素など)中に入れられ得る。これらはまた、例えばネブライザー又はアトマイザー中の非加圧製剤のための医薬として製剤化され得る。かかるスプレー製剤は、粘膜にスプレーするためにも使用され得る。
【0079】
「有効量」又は「治療に有効な量」とは、個体における癌を予防又は治療するのに適切な用量をいう。治療的使用又は予防的使用に有効な量は、例えば、治療される疾患又は障害の病期及び重篤度、患者の年齢、体重及び全般的健康状態、並びに処方医師の判断に依存するであろう。用量のサイズもまた、選択された活性剤、投与方法、投与のタイミング及び頻度、特定の活性剤の投与に伴い得る任意の有害な副作用の存在、性質及び程度、並びに所望の生理学的効果によって決定されよう。種々の疾患又は障害が、おそらく各投与経路又は種々の投与経路で本発明のCAR材料を使用する、複数の投与を含む長期治療を必要とし得ることが、当業者に理解されよう。本発明の限定を意図しない例として、本発明のCAR材料の用量は、約0.001〜約1000mg/治療される対象の体重kg/日、約0.01〜約10mg/kg体重/日、約0.01mg〜約1mg/kg体重/日であり得る。本発明のCAR材料が宿主細胞である場合、宿主細胞の例示的投与量は最低で約百万細胞(1mg細胞/投与量)であり得る。本発明のCAR材料がウイルス中にパッケージングされた核酸である場合、ウイルスの例示的投与量は約1ng細胞/投与量)であり得る。
【0080】
本発明の目的のために、投与される本発明のCAR材料の量又は用量は、合理的な時間枠にわたって対象又は動物において治療応答又は予防応答をもたらすのに十分でなければならない。例えば、本発明のCAR材料の用量は、投与時点から約2時間以上の期間(例えば、約12時間〜約24時間又はそれ以上)において、抗原に結合するため、又は疾患を検出、治療若しくは予防するために、十分でなければならない。特定の実施形態において、この期間はさらに長くてもよい。用量は、本発明の特定のCAR材料の効力及び動物(例えば、ヒト)の状態、並びに治療する動物(例えば、ヒト)の体重によって決定されるであろう。
【0081】
本発明の目的のために、例えば、本発明のCARを発現するT細胞の所与の用量を哺乳動物に投与した際に、かかるT細胞によって標的細胞が溶解される及び/又はIFN−γが分泌される程度を、種々の用量のT細胞をそれぞれ与えた哺乳動物のセット間で比較することを含むアッセイが、哺乳動物に投与される出発用量を決定するために使用され得る。特定の用量の投与の際に標的細胞が溶解される及び/又はIFN−γが分泌される程度は、当該分野で公知の方法によってアッセイできる。
【0082】
上記医薬組成物に加えて、本発明のCAR材料は、包接錯体(例えば、シクロデキストリン包接錯体)又はリポソームとして製剤化され得る。リポソームは、特定の組織に本発明のCAR材料を標的化するために機能し得る。リポソームは、本発明のCAR材料の半減期を増加させるためにも使用され得る。例えば、Szokaら,Ann.Rev.Biophys.Bioeng.,9,467(1980)並びに米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号及び同第5,019,369号に記載されるように、リポソームを調製するための多くの方法が利用可能である。
【0083】
本発明の実施形態に関連して有用な送達系には、本発明の組成物の送達が、治療される部位の感作の前に、及び感作を引き起こすのに十分な時間で生じるような、時限放出(time−released)、遅延放出(delayed release)及び徐放(sustained release)送達系が挙げられ得る。本発明の組成物は、他の治療剤又は療法と合わせて使用され得る。かかる系は、本発明の組成物の反復投与を回避することにより、対象及び医師の利便性を向上させることができ、本発明の特定の組成物実施形態に特に適したものであり得る。
【0084】
多くの型の放出送達系が利用可能であり、当業者に公知である。これらには、ポリ(ラクチド−グリコリド)、コポリオキサラート(copolyoxalate)、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸及びポリ無水物などの、ポリマーベースの系が挙げられる。上記ポリマーの薬物含有マイクロカプセルは、例えば米国特許第5,075,109号に記載されている。送達系には、ステロール(例えば、コレステロール、コレステロールエステル)及び脂肪酸又は中性脂肪(例えば、モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリド)を含む脂質;ヒドロゲル放出系;シラスティック(sylastic)系;ペプチドベースの系;ワックスコーティング;従来の結合剤及び賦形剤を使用した圧縮錠剤;部分融合移植物(partially fused implant)などの、非ポリマー系も含まれる。具体例としては以下が挙げられるがこれらに限定されない:(a)米国特許第4,452,775号、同第4,667,014号、同第4,748,034号及び同第5,239,660号に記載されるような、活性組成物がマトリックス内にある形態で含まれる、侵食性(erosional)の系、及び(b)米国特許第3,832,253号及び同第3,854,480号に記載されるような、活性成分が制御された速度でポリマーから浸透する拡散系。さらに、ポンプベースのハードウェア送達系も使用され得、そのうちいくつかは、移植のために適合している。
【0085】
当業者は、本発明の本発明のCAR材料が、本発明のCAR材料の治療効力又は予防効力を改変によって増加させるために、多数の方法で改変され得ることを容易に理解するであろう。例えば、本発明のCAR材料は、直接的又はリンカーを介して間接的に、標的化部分にコンジュゲート化され得る。化合物(例えば、本発明のCAR材料)を標的化部分にンジュゲート化する実務は、当該分野で公知である。例えば、Wadwaら,J.Drug Targeting 3:111(1995)及び米国特許第5,087,616号を参照。
【0086】
或いは、本発明のCAR材料は、デポー(depot)形態に改変され得、その結果、投与される身体中に本発明のCAR材料が放出される様式は、時間及び身体内の位置に関して制御される(例えば、米国特許第4,450,150号を参照)。本発明のCAR材料のデポー形態は、例えば、本発明のCAR材料及び多孔性又は非多孔性の材料(例えばポリマー)を含む移植可能な組成物であり得、ここで本発明のCAR材料は、材料に封入されるか又は材料を通して拡散され、及び/又は非多孔性材料の分解によって拡散される。次いでデポーは、身体内の所望の位置に移植され、本発明のCAR材料は、所定の速度で移植物から放出される。
【0087】
本発明のCAR材料を1種以上の更なる治療剤と共に投与する場合、1種以上の更なる治療剤は、哺乳動物に共投与され得る。「共投与(coadministering)」とは、本発明のCAR材料が1種以上の更なる治療剤の効果を増強でき、また1種以上の更なる治療剤が本発明のCAR材料の効果を増強できるように十分に近接した時間で、1種以上の更なる治療剤及び本発明のCAR材料を投与することを意味する。これに関して、本発明のCAR材料が最初に投与され且つ1種以上の更なる治療剤が2番目に投与され得、1種以上の更なる治療剤が最初に投与され且つ本発明のCAR材料が2番目に投与され得る。或いは、本発明のCAR材料及び1種以上の更なる治療剤は、同時に投与され得る。CAR材料と共投与され得る例示的な治療剤は、IL−2である。IL−2は、本発明のCAR材料の治療効果を増強すると考えられる。宿主細胞又は細胞集団が宿主に投与される本発明の方法の目的のために、細胞は、宿主に対して同種又は自己の細胞であり得る。
【0088】
本発明の医薬組成物、CAR、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞又は細胞集団は、宿主における疾患を治療又は予防する方法で使用され得ることが企図される。特定の理論又はメカニズムに束縛されないが、細胞によって発現された場合に、CARが、CARが特異的な抗原(例えばEGFRvIII)を発現する細胞に対する免疫応答を媒介できるように、本発明のCARは、生物活性(例えば、抗原(例えばEGFRvIII)を認識する能力)を有する。これに関して、本発明の1実施形態は、宿主における癌を治療又は予防するのに有効な量で、本発明のCAR、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体及び/又はその抗原結合部分、及び/又は医薬組成物を宿主に投与することを含む、宿主における癌の治療又は予防方法を提供する。
【0089】
本発明の1実施形態は、本発明のCAR材料を投与する前に宿主をリンパ枯渇させる(lymphodeplete)ことをさらに含む。リンパ枯渇法(lymphodepletion)の例としては、骨髄非破壊的なリンパ枯渇化学療法(nonmyeloablative lymphodepleting chemotherapy)、骨髄破壊的なリンパ枯渇化学療法(myeloablative lymphodepleting chemotherapy)、全身照射法等が挙げられるが、これらに限定されなくてもよい。
【0090】
宿主細胞又は細胞集団が投与される本発明の方法の目的のために、細胞は、宿主に対して同種又は自己の細胞であり得る。好ましくは、細胞は、宿主に対して自己性である。
【0091】
本明細書中で言及する宿主は任意の宿主であり得る。宿主は哺乳動物であり得る。本明細書中で使用する場合、用語「哺乳動物」とは、任意の哺乳動物をいい、Rodentia目の哺乳動物(例えば、マウス及びハムスター)並びにLogomorpha目の哺乳動物(例えばウサギ)が挙げられるが、これらに限定されない。哺乳動物は、Carnivora目(Felines(ネコ)及びCanines(イヌ)を含む)由来であり得る。哺乳動物は、Artiodactyla目(Bovines(ウシ)及びSwines(ブタ)を含む)由来又はPerssodactyla目(Equines(ウマ)を含む)由来であり得る。哺乳動物は、Primates目、Ceboids目若しくはSimoids目(サル)又はAnthropoids目(ヒト及び類人猿)のものであり得る。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0092】
本発明の方法に関して、癌は、以下のいずれかを含む任意の癌であり得る:急性リンパ球性癌、急性骨髄性白血病、胞巣状横紋筋肉腫、膀胱癌(bladder cancer)(例、膀胱癌(bladder carcinoma))、骨癌、脳癌(例、髄芽細胞腫)、乳癌、肛門、肛門管若しくは肛門直腸(anorectum)の癌、眼の癌、肝内胆管の癌、関節の癌、頸部、胆嚢若しくは胸膜の癌、鼻、鼻腔若しくは中耳の癌、口腔の癌、外陰部の癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性癌、結腸癌、食道癌、子宮頸癌、線維肉腫、消化管カルチノイド腫瘍、頭頸部癌(例、頭頸部扁平上皮癌)、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、腎臓癌、喉頭癌、白血病、液性腫瘍、肝臓癌、肺癌(例、非小細胞肺癌)、リンパ腫、悪性中皮腫、肥満細胞腫、黒色腫、多発性骨髄腫、上咽頭癌、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、腹膜、網及び腸間膜の癌、咽頭癌、前立腺癌、直腸癌、腎癌、皮膚癌、小腸癌、軟組織癌、固形腫瘍、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、並びに尿管癌。好ましくは、癌は、神経膠腫(例、上衣細胞腫、星状細胞腫、乏突起膠腫、及び乏突起星細胞腫)であり、より好ましくは、多形性膠芽腫(GBM)(膠芽細胞腫、星状細胞腫グレード4、及びグレード4の星状細胞腫としても知られる)である。好ましくは、癌は、EGFRvIIIの発現によって特徴付けられる癌である。
【0093】
用語「治療」及び「予防」並びにそれらの派生語は、本明細書中で使用する場合、100%又は完全な治療又は予防を必ずしも意味しない。むしろ、当業者が潜在的な有益効果又は治療効果を有すると認識する、変動する程度の治療又は予防が存在する。これに関して、本発明の方法は、哺乳動物中の癌の任意のレベルの治療又は予防の任意の量を提供し得る。さらに、本発明の方法が提供する治療又は予防は、治療又は予防される疾患(例えば癌)の1以上の状態又は症状の治療又は予防を含み得る。また、本明細書の目的のために、「予防」は、疾患又はその症状若しくは状態の発症を遅延させることを包含し得る。
【0094】
本発明の別の実施形態は、本発明のCAR、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体又はその抗原結合部分、又は医薬組成物の、宿主における癌の治療又は予防のための使用を提供する。
【0095】
本発明の別の実施形態は、宿主における癌の存在を検出する方法を提供し、この方法は以下を含む:(a)宿主由来の1以上の細胞を含むサンプルを、本発明のCAR、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体及び/又はその抗原結合部分と接触させることによって、複合体を形成する工程、及び(b)複合体を検出する工程であって、該複合体の検出が宿主における癌の存在を示す、工程。
【0096】
サンプルは、任意の好適な方法(例、生検又は剖検)によって得られ得る。生検は、個体からの組織及び/又は細胞の取り出しである。かかる取り出しは、取り出された組織及び/又は細胞に対して実験法を行なうために、個体から組織及び/又は細胞を収集するためのものであり得る。この実験法は、個体が特定の状態又は疾患状態(disease−state)を有する及び/又はそれらに罹患しているか否かを決定するための実験を含み得る。状態又は疾患は、例えば癌であり得る。
【0097】
宿主における癌の存在を検出する本発明の方法の1実施形態に関して、宿主の細胞を含有するサンプルは、全細胞、その溶解物、又は全細胞溶解物の画分(例えば、核画分若しくは細胞質画分、全タンパク質画分、又は核酸画分)を含むサンプルであり得る。サンプルが全細胞を含む場合、細胞は、宿主の任意の細胞、例えば、任意の臓器又は組織の細胞(血球又は内皮細胞を含む)であり得る。
【0098】
本発明の検出方法の目的のために、接触は、宿主に関してin vitro又はin vivoで行うことができる。好ましくは、接触はin vitroである。
【0099】
また、複合体の検出は当該技術分野で公知の、任意の数の方法を通して起こり得る。例えば、本明細書中に記載の、本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、或いは抗体、又はその抗原結合部分は、例えば、放射性同位体、蛍光色素(例、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例、アルカリホスファターゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ)、及び元素粒子(例、金粒子)等の検出可能な標識で標識され得る。
【0100】
標的細胞を認識する能力及び抗原特異性についてCARを試験する方法は、当該分野で公知である。例えば、Clayら,J.Immunol.,163:507−513(1999)は、サイトカイン(例えば、インターフェロン−γ、顆粒球/単球コロニー刺激因子(GM−CSF)、腫瘍壊死因子a(TNF−α)又はインターロイキン2(IL−2))の放出を測定する方法を教示している。さらに、CAR機能は、Zhaoら,J.Immunol.,174:4415−4423(2005)に記載されるように、細胞毒性(cellular cytoxicity)の測定によって評価できる。
【0101】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、その範囲を限定するものであると決して解釈すべきではないことは当然である。
【実施例】
【0102】
実施例1
この実施例により、EGFRvIIIで改変された標的細胞株との共培養後に、配列番号10(h139Ab−hCD828BBZ)又は配列番号11(h139Ab−hCD28Z)を含むCARにより、IFNガンマが産生されることが証明される。
【0103】
CD28及びCD3ゼータのT細胞シグナル伝達ドメインに対する、7つの異なった抗EGFRvIII抗体由来の単鎖抗体配列を組み合わせることにより、EGFRvIIIを標的とするキメラ抗原受容体を製造した。γ−レトロウイルスベクターMSGV1に挿入された、マウス抗体3C10、MR−1、Y10、L8A4及びヒト抗体131、139、及び13.1.2をベースに、合計9つの異なるコンストラクトを構築した(2つのコンストラクトにおいて、VLとVHの順番を交換した)。末梢血リンパ球(PBL)に形質導入し、抗Fab特異的試薬(又は後の実験においてはプロテインL)を用いる蛍光活性化細胞選別(FACS)解析することにより、各コンストラクトの発現を試験した。構築した9つのベクターのうちの3つで、形質導入したPBLにおいて、CAR発現の再現性が証明され、特に、抗体3C10、L8A4、及び139(配列番号11)に基づくCARで、形質導入したPBLにおける細胞表面染色が示された。
【0104】
これら3つの抗EGFRvIII CARコンストラクトの生物学的活性を試験するため、γ−レトロウイルスベクターの上清を製造してPBLへの形質導入に用い、該PBLをEGFRvIIIを発現する標的細胞株と共培養した。EGFRvIIIを発現する公知の神経膠芽腫細胞株はないので、EGFRvIII標的化ベクターの有効性を評価するin vitro系を開発するため、適切な標的細胞株を樹立した。市販の野生型EGFR遺伝子を入手し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりvIII型を構築してNeoR遺伝子を共発現するレトロウイルスベクターに挿入した。いくつかの細胞株(NIH−3T3、BHK、HEK−293GP、U87及びU251)に形質導入してセレクションし、vIII特異的抗体によりEGFRvIII発現を測定した。
【0105】
EGFRvIIIで改変した樹立細胞株との共培養により、3つのコンストラクト全てについて、特異的なIFN−ガンマ産生が証明された(
図3A、3B、及び3C、NIH−3T3、BHK、及び293GP由来の株との共培養についての代表的データ)。BHK細胞(BHK)、EGFRで形質導入したBHK(BHK−EGFRwt)、EGFRvIIIで形質導入したBHK(BHK−EGFRvIII)、3T3細胞(3T3UT)、EGFRで形質導入した3T3(3T3−EGFRwt)、EGFRvIIIで形質導入した3T3(3T3−EGFRvIII)、293GP細胞(293GPUT)、又はEGFRvIIIで形質導入した293GP(293GP−EGFRvIII)を、表示した、CARで形質導入したPBL(又はコントロールとしての非形質導入(UT)PBL)と共培養し、IFN−ガンマレベルを測定した(値は、一晩共培養した後のIFN−ガンマ(pg/ml)である)。これらの共培養アッセイにおいて、EGFRvIIIを発現する標的細胞に曝露したとき、3C10、L8A4及び139の3つのCARすべてで、特異的IFN−γ産生がもたらされた。野生型EGFR遺伝子を過剰発現するよう改変された細胞に曝露したときは、そうならなかった。139 CARは若干、より反応性に富むとの観察、ヒト起源であること、よって患者においてより免疫原性が低いと思われることに基づき、以降のアッセイはすべて139 scFvベースのCARコンストラクト(配列番号11)で行った。ドナー二人に由来の、139−CARで形質導入したT細胞をCD8とCD4のT細胞集団に選別し、反応性について独立に試験した(
図4A(ドナー2)及び4B(ドナー3))。CD4T細胞及びCD8T細胞の両方が、EGFRvIII標的細胞との共培養においてIFN−γを特異的に産生した。
【0106】
41BB共刺激分子由来のT細胞シグナル伝達因子を加えることにより、CARで改変したT細胞の生存が亢進され得る。CD28−41BB−CD3ゼータ(配列番号13)由来のシグナル伝達ドメインを用いて新たなコンストラクトを構築し、もとのCD28−CD3ゼータコンストラクト(配列番号14)と比較した。FACSにより検出された28BBZ CARベクターコンストラクト(construction)は28Zコンストラクトよりも少なかったが、形質導入されたT細胞は、EGFRvIIIを発現する標的に対する反応性が同等だった。これらのベクター及びコントロールベクター(GFP又はHer2/neu CAR)でT細胞に形質導入し、改変された神経膠芽腫細胞株及び多形性膠芽腫腫瘍幹細胞(GBM−TSC)株と共培養した(表3A及び3B)。樹立された神経膠芽腫株U87及びU251は、コントロールのGFP遺伝子、野生型EGFR遺伝子(EGFRwt)、又はEGFRvIII遺伝子(EGFRvIII)を発現するよう改変された。これらの標的細胞又はGBM−TSC株308、822、及び1228を、CD28−CD3ゼータ(139−28Z)(配列番号14)又はCD28−41BB−CD3ゼータ(139−BBZ;h139Ab−hCD828BBZ)(配列番号13)のシグナル伝達ドメインを含有するEGFRvIII−CARベクターで形質導入したT細胞と共培養した。IFN−γレベルを測定した(数値は、EGFRvIIIを発現するよう改変された神経膠芽腫細胞株と一晩共培養した後の、IFN−γ(pg/ml)である)。UT−非形質導入PBL、GFP−GFPベクターで形質導入したPBL、及びHer2/neu特異的CARを更なるT細胞のコントロールに含めた。IFN−γ放出(表3A及び3B)で測定された生物学的活性により、異なる2つのベクターで形質導入されたT細胞は、EGFRvIIIを発現する神経膠腫細胞株U87及びU251への反応性が同等であることが証明された。
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
実施例2
この実施例により、配列番号10(h139Ab−hCD828BBZ)又は配列番号11(h139Ab−hCD28Z)を含むCARによって、変異型EGFRvIIIを発現するよう改変された細胞株が、特異的に溶解されることが証明される。
【0109】
次に、標準的な
51Cr放出アッセイにおいて、EGFRvIII CARで改変されたT細胞が標的細胞を溶解する能力を測定した(
図1A−D及び2A−D)。
【0110】
非形質導入(UnTd)PBL或いはコントロールのGFPベクター(GFP)、(配列番号11をコードする)139−28Z CAR(vIII−28Z)、又は(配列番号10をコードする)139−28BBZ(vIII−BBZ)で形質導入されたPBLを、
51Crでラベルされた標的腫瘍細胞株と4時間共培養した(
図1A−1D:親のU87、GFP、野生型EGFR、又はEGFRvIIIで改変されたもの)。
【0111】
非形質導入(UnTd)PBL或いはコントロールのGFPベクター(GFP)、抗ERBB2 CAR(ERBB2)(配列番号11をコードする)139−28Z CAR(vIII−28Z)、又は(配列番号10をコードする)139−28BBZ(vIII−BBZ)で形質導入されたPBLを、
51Crでラベルされた標的腫瘍細胞株と4時間共培養した(
図2A−2D:親のU251、GFP、野生型EGFR、又はEGFRvIIIで改変されたもの)。
【0112】
図1A−1D及び2A−2Dの実験においては、式[(特異的放出−自発的放出)/(放出全体−自発的放出)]を用いて、所定のE:T比で腫瘍細胞の特異的溶解を測定した。
図1A−1D及び2A−Dに示すとおり、両方のベクターで、変異型EGFRvIIIを発現するよう改変された細胞株のみが特異的に溶解し、コントロール又は野生型EGFRで改変された細胞株は溶解しなかった。
【0113】
実施例3
この実施例により、腫瘍幹細胞(TSC)株との共培養後に、抗EGFRvIII CAR(配列番号10(h139Ab−hCD828BBZ))により、IFN−ガンマが産生されることが証明される。
【0114】
多くの異なったクラスの癌細胞株の、細目にわたる分子解析により、樹立された癌細胞株は、ヒトの原発性癌の分子的特徴をしばしば反映せず、これは、神経膠腫の株についてもそうであることが今や証明されている。樹立された神経膠腫細胞株の使用に代えて、腫瘍幹細胞(TSC)株が解析される。TSCの例により、癌中には、分化型腫瘍における全ての細胞を生じさせる、細胞亜集団が存在することが提示される。in situの神経膠腫細胞は神経膠腫細胞株に見出されない特性を共有しており、腫瘍幹細胞と一致する特徴を有していることが証明されている。更に、ヒト原発性腫瘍由来TSCとそれに対応する神経膠腫細胞株の間には、表現型及び遺伝子型の顕著な相違が存在することが証明された。原発性膠芽細胞腫から直接得られたTSCは正常神経幹細胞に広範な類似性を有し、ヒト膠芽細胞腫の遺伝子型、遺伝子発現パターン、及びin vivoの生物学を再現している。これらの知見により、ヒト原発性腫瘍の生物学を理解するためには、一般的に利用されている多くの神経膠腫細胞株よりも、神経膠腫由来のTSCがより信頼性があるモデルであり得ることが示唆される。
【0115】
従って、EGFRvIIIの存在について3つのTSC株を解析し、RT−PCRにより、これらの株でEGFRvIIIが発現していることを証明した。次いで、2人のドナー由来のPBL(エフェクターI及びエフェクターII)を、抗EGFRvIII CARのベクター(配列番号10(h139Ab−hCD828BBZ)を発現)で改変し、神経膠腫TSC株及びコントロールの、EGFRvIIIを発現する細胞株と共培養した。5つの、形質導入後のPBLを、神経膠腫TSC株或いは野生型EGFR又はEGFRvIIIを発現するよう改変されていた細胞株U251と共培養した。全ての共培養において、非形質導入(UT)細胞及びGFPで形質導入した細胞はネガティブコントロールとして供され、また抗ERBB2 CARはポジティブコントロールとして供された。
図5A及び5Bに示すとおり、野生型EGFR遺伝子で改変されたU251細胞と比較すると、EGFRvIII CARで改変したT細胞によるU251 EGFRvIIIの特異的な認識が証明された。また、試験した3つの神経膠腫TSC株(308、822、及び1228)がすべて認識された。これらの結果により、EGFRvIII CARで改変したT細胞を神経膠腫患者のための免疫療法に用いることができる可能性があることが更に裏付けられる。
【0116】
実施例4
この実施例により、CARで改変されたT細胞がT細胞数の増大後に反応性を保持することが証明される。
【0117】
2人の膠芽細胞腫患者及び健常なドナー由来のPBLに、139−28BBZ(h139Ab−hCD828BBZ)ベクターを用いて形質導入し、増殖及び反応性を試験した。形質導入した細胞を、EGFRvIIIで改変したU87細胞と共培養し、次いで細胞内サイトカイン染色によりアッセイした。患者及び健常なドナー由来の、改変されたT細胞により、CD8+及びCD8−の両方の(恐らくCD4+の)CD3+T細胞における特異的IFN−γ産生が証明された(7.8%−16.2% IFN−γ+、比べて、コントロールのU87株に対しては0.36%超)。形質導入効率も、膠芽細胞腫患者と健常なドナーのT細胞間で同様であった。将来の臨床応用のために多数(1X10
9超)のT細胞が必要な場合は、それらは例えば、14日間の急速T細胞培養法(REP)(Riddell et al.,J.Immunol.Methods,128:189−201(1990))により入手できる。139−28BBZ(h139Ab−hCD828BBZ)CARで形質導入したT細胞が患者の治療に十分な数に増殖でき、依然反応性を維持できることを確認するため、これらのT細胞をREPに供して試験した。表4に示すとおり、139−CARで形質導入したT細胞は、特異的にIFN−γを産生するその能力を保持した。
【0118】
【表5】
【0119】
実施例5
この実施例により、細胞に形質導入するためのウイルスベクター上清を製造するために有用な産生細胞クローンの生成が証明される。
【0120】
139−28BBZ(h139Ab−hCD828BBZ)EGFRvIII CARコンストラクトを用い、PG13γ−レトロウイルスベクター産生細胞クローンを、ヒトの遺伝子治療の臨床試験についての米国食品医薬品局(FDA)ガイドラインを満たす条件の下で作製した。一つの細胞クローン(クローンF10)を用い、4日間にわたる6回の回収でウイルスベクター上清18Lを製造した。各回収物を用い、ドナーPBLに形質導入し、遺伝子導入効率及び生物学的活性を測定した。CARを発現し、EGFRvIIIを発現する細胞株を特異的に認識する、形質導入T細胞の能力を基準にした生物学的活性のある上清が、すべての回収物から製造された。このアッセイでは、回収物1は反応性が回収物2〜6よりもやや低かった。正常ヒト組織に対する潜在毒性の試験をするために、回収物3及び4のプールを用い、異なるドナーに形質導入し、これらの形質導入T細胞を上皮細胞、内皮細胞、及び線維芽細胞起源の7つの異なる初代ヒト成人及び新生児の細胞培養物と共培養した。IFN−γ産生によって決定されたとおり、EGFRvIII CARで形質導入されたT細胞には、試験したあらゆるヒト初代細胞培養物との反応性がなかった。
【0121】
実施例6
この実施例により、患者に配列番号10(h139Ab−hCD828BBZ)を含むCARを投与することを含む、ヒト患者における癌を治療又は予防する方法が実証される。
【0122】
適格性
適格患者は、免疫組織化学(IHC)によって決定された、EGFRvIIIを発現する、組織学的に証明された膠芽細胞腫;化学療法を伴うか、又は伴わない放射線療法による標準的な前治療の失敗;60%を超えるか、又はそれに等しいカルノフスキースコア;許容限度内の心臓、肺、及び実験のパラメータを有する。
【0123】
研究計画:
研究は第I/II相のデザインを用いて行う。患者は、臨床試験における2群:1)治療の開始時にステロイドの使用を必要とする再発悪性神経膠腫の患者又は2)治療開始時にステロイドの使用を必要としない再発悪性神経膠腫の患者、の第I相部及び第II相部の両方に登録されている。試験の第I相部において、個々の各群について最大耐量が決定されると、研究が第II相部へと進む。再び、患者を同じ2つのグループに登録する。評価した二群のそれぞれについて、単一段階第II相のデザインを用いて研究を行う。
【0124】
患者は、非骨髄破壊的であるがリンパ球を枯渇させる、シクロホスファミド及びフルダラビンを含む前処置療法、それに続く、ex vivoで腫瘍に反応性の、EGFRvIII CAR遺伝子で形質導入されたPBMCの静脈内注入に加え、アルデスロイキン静脈内(IV)投与(最大15回分の用量に関して720,000 IU/kg q8h)を受ける。治療終了後に、患者は、理学的及び神経学的検査を伴う腫瘍の完全な評価、ガドリニウムを伴うか、又は伴わない脳のMRI、及び4週間(+/−7日)の臨床検査の評価を受ける。患者の病変が安定している場合又は腫瘍が縮小している場合、完全な評価を1ヶ月(+/−7日)ごとに反復して行う。第一年の後に、継続して返答のある患者を、継続して2ヶ月(+/−7日)ごとに、この評価で適切に追跡する。
【0125】
細胞調製:
白血球分離(約1X10
10細胞)によってPBMCを得る。PBMC全体を、T細胞増殖を刺激するために、抗CD3(OKT3)及びアルデスロイキンの存在下で培養する。形質導入は、抗EGFRvIII CARレトロウイルスベクターを含有する上清に約1×10
7〜5×10
8細胞を曝露することよって開始する。これらの形質導入細胞を増殖させ、その抗腫瘍活性について試験する。CAR遺伝子導入の成功はCARタンパク質についてのFACS分析によって決定し、抗腫瘍反応性はEGFRvIIIを発現する細胞に対するサイトカイン放出の測定によって試験する。それぞれの形質導入PBL集団についてのCAR遺伝子導入の成功は、10%超のCAR陽性細胞として定義するが、生物活性については、ガンマ−インターフェロンの分泌が少なくとも200pg/mlで、且つバックグラウンドの2倍のレベルでなければならない。
【0126】
抗EGVRvIII CARで形質導入したPBL:
PBLは、キメラの抗EGFRvIII CARを含有するレトロウイルス上清で形質導入される。抗原EGFRvIIIに対するキメラ抗原受容体(CAR)をコードするレトロウイルスベクターの上清(PG13−139−F10)を、現行の品質管理規則(cGMP)の条件に従って調製し、保存する。レトロウイルスベクターは、MSGV1レトロウイルスベクターの主鎖を利用しており、マウス幹細胞ウイルス由来の5’LTR(プロモーター)、スプライシングドナー(SD)及びスプライシングアクセプター部位を含むパッケージングシグナル、シグナルペプチドシグナル(ヒトGM−CSFR)、139軽鎖可変領域、リンカーペプチド、139重鎖可変領域、CD8(ヒンジ、膜貫通)、CD28(細胞質領域)、4−1BB(細胞質領域)、及びTCRゼータ(細胞質領域)を含有するヒト抗EGFRvIIIのscFv(mAb139)をベースにしたCARタンパク質、続いてマウス幹細胞ウイルス3’LTRを含む4,032bpを含む。ベクターは、配列番号10のアミノ酸配列をコードする、配列番号13のヌクレオチド配列を含む。物理的な力価は、提供者の証明書に従ってRNAドットブロットにより測定する。24時間体制での温度モニタリングを伴う、−80℃での製造が完了した際に、上清をSBVPFに保存する。求められれば、上清はドライアイスに置いて配送し、in vitro形質導入において用いられる。別の患者のために、同一ユニットの上清を再利用することはない。レトロウイルスの力価は、即時解凍及び即時投与(予めレトロネクチンでコーティングされた組織培養ウェルのコーティング)の後で安定であることが示されている。ベクターの取り扱いはバイオセーフティレベル2(BSL−2)のガイドラインに従う。
【0127】
第I相-用量漸増:
プロトコルは、8コホート及び2つの異なる群(治療時にステロイドを受容している患者のためのものと、ステロイドを受容してしない患者のためのもの)による、第1相の用量漸増デザインから始まる。各グループは、完全に独立した用量漸増試験として扱われる。
【0128】
当初のプロトコルでは、最初の3用量のコホートのそれぞれに登録する患者は、その患者が用量制限毒性(DLT)を経験しない限り、1人である。コホート3の後、第I相の用量漸増デザインにおいて後続のすべてのコホート(n=3の5コホート)が進行する。
【0129】
各コホートに導入される、EGFRvIIIで改変された細胞の総数は、表5のとおりである:
【0130】
【表6】
【0131】
患者は順次登録する。従って、より高いレベルの用量への登録へは、患者が前のコホートで処置されるまで、進めない。しかし、他の階層で起こっていることとは独立に、患者の用量を所定グループ内の次のコホートへと漸増する。十分な細胞を、割り当てられたコホートの基準を満たすように増殖させることができない場合、患者を、注入された細胞数に適したコホートに登録する。
【0132】
患者がDLTを経験する場合、コホート1〜3において、さらに5人の患者をその用量で治療し、6人のうちの1人を超えない患者が、次の高レベルへと進む前にDLTとならないことを確認する。3〜6人の患者において、2件以上のDLTを認めるレベルの場合は、第II相部を開始する前に最大耐量の安全性を更に分析するために、更に5人の患者を、最低用量に次ぐ低用量において登録する。第1コホートにおいてDLTが1件以下である場合、研究を第2コホートに進める。用量制限毒性が第一コホートで生じた場合、そのコホートの患者をn=6人に増加させる。最初のコホートでDLTが2件発生した場合、研究を終了する。
【0133】
コホート4〜8において、一人の患者が特定の用量レベルでの細胞注入に起因する用量制限毒性を経験すれば、もう3人の患者をその用量で治療して、6人のうちの1人を超えない患者が、次の高レベルへと進む前にDLTとならないことを確認する。あるレベルで、3〜6人の患者において2件以上のDLTを認める場合、第II相部を開始する前に最大耐量の安全性を更に特性分析するために、さらに3人の患者を、最低用量に次ぐ低用量において登録する。
【0134】
細胞の最大耐量は、6人の患者のうちDLTを経験するのが1人以下のときの最高用量であるか、又は3つの用量レベルのいずれかでDLTが観察されていない場合は、試験した最高用量である。
【0135】
改変されたPBL細胞を受容する前に、すべての患者が、非骨髄破壊的であるがリンパ球を枯渇させる、シクロホスファミド及びフルダラビンを含む前処置療法を受け、続く1〜4日で、in vitroで腫瘍に反応性の、EGFRvIII CAR遺伝子で形質導入されたPBMC静脈内注入に加え、アルデスロイキン IV投与(最大15回分の用量に関して720,000 IU/kg q8h)を受ける。
【0136】
細胞の最大耐量は、6人の患者のうちDLTを経験するのが1人未満のときの最高用量であるか、又は3つの用量レベルのいずれかでDLTが観察されていない場合は、試験した最高用量である。
【0137】
用量制限毒性は、以下:グレード2以上のアレルギー反応或いは気管支痙攣又は一般的な蕁麻疹を伴う反応;リンパ球減少症、好中球減少症及び血小板減少症として定義される骨髄抑制を除くすべてのグレード3及び4の毒性;IL−2によって予想される毒性;アセトアミノフェン(650mg)の2用量又はジフェンヒドラミン(25mg)の2用量により、8時間以内でグレード2以下に戻せる、細胞注入後24時間以内で発生する(細胞注入に関連した)毒性、と定義されている。
【0138】
治療日程
治療日程を表6に記載する:
【0139】
【表7】
【0140】
免疫学的試験:
治療に先立って、また治療の4〜6週間後に、アフェレシス療法を行う。別の時点で、フィコールクッションによる遠心分離を用いて精製することにより患者の末梢血リンパ球(PBL)を全血から得る。これらのPBMCのアリコートを、1)細胞機能の免疫学的モニタリングのために凍結保存し、2)CARのPCR分析及びベクターコピー数推定のためにDNA及びRNAの抽出に供し、そして3)リンパ球を直接、及びインビトロ培養後に試験する。直接の免疫学的モニタリングとしては、CAR特異的染色を用いたFACS分析によって、EGFRvIIIに反応性のあるT細胞を定量することが挙げられる。十分な細胞が利用可能であれば、ex vivoでの免疫学的アッセイとしては、バルクPBL(+/−抗原刺激)によるサイトカイン放出及び細胞溶解等の他の実験的研究によるサイトカイン放出が挙げられる。細胞数が限られている場合、好ましくは、免疫学的活性を直接分析することが好ましい。免疫学的アッセイは、1)PBMCの前注入、及び2)注入時に凍結保存された、改変されたPBLのアリコート、を含めることによって標準化される。一般に、これらのアッセイでの2〜3倍の違いが真の生物学的相違を示す。
【0141】
遺伝子治療の臨床試験のモニタリング:持続性と複製能を有するレトロウイルス(RCR):
改変された細胞の生存:PBMC試料におけるCAR及びベクターの存在を、確立されたPCR技術を用いて定量する。CAR特異的染色を用いた免疫学的モニタリングを、PCRベースの解析を増補するために使用する。これにより、注入された細胞に由来するリンパ球のin vivoでの生存率を推定するためのデータが提供される。更に、CD4T細胞及びCD8T細胞の測定を行い、血流中のこれらのT細胞サブセットを、それぞれのレトロウイルスベクターで改変されたT細胞についてのユニークなDNA配列を検出することができる特異的PCRアッセイを用いて測定し調査する。
【0142】
細胞注入の前に、患者の血液サンプルを得て、PCRによるRCR検出のための解析を行う。RCR PCRは細胞投与後3ヶ月目、6ヶ月目、そして1年目に行う。以前のすべての試験が陰性となった場合、簡単な病歴とともに、その後毎年血液サンプルをアーカイブに保管する。この試験中に患者が死ぬか、腫瘍を発症する場合、RCR用の生検サンプルをアッセイする取り組みがなされる。治療後のいずれかのサンプルが陽性の場合、FDAと協議して、更なるRCRの解析及びより広範な、患者の経過観察に着手する。RCR PCRアッセイは、GaLVエンベロープ遺伝子を検出するが、インディアナ大学の国立遺伝子ベクター研究所の契約の下で行われる。これらの試験の結果は、RCR試験を行う契約者及び国立癌研究所(NCI)手術部門の研究チームによって保存される。
【0143】
これらの研究の特性により、特定のT細胞クローンの増殖が、腫瘍抗原に反応する、腫瘍反応性T細胞の増殖として観察され得る。従って、T細胞の、免疫学的及び分子的の両方の持続性を追跡するよう注意が払われる。CARで形質導入された細胞の持続性についての血液サンプル(5−10mL)を、細胞注入後1ヶ月後、次いで3、6、12ヶ月後、次いでその後毎年入手する。いずれかの患者で、6ヶ月目における、CAR遺伝子による形質導入細胞(ベクター配列に特異的なプライマーを用いる半定量的DNA−PCRによる)が高レベルな持続性を示す場合、以前にアーカイブに保管されたサンプルを、CAR遺伝子で形質導入された、持続している細胞のクローンの同定を可能にする技法に供する。当該技法としては、T細胞クローニング又はLAM−PCR30が挙げられ得る。経過観察の間にCAR遺伝子で形質導入された細胞に由来する、支配的な、又はモノクローナルなT細胞クローンを同定した場合、組込みの部位及び配列を同定し、続いて配列をヒトゲノムデータベースで解析し、任意の既知のヒトの癌に関連するかどうかを判断する。高頻度な組込み部位が認められる場合、クローンが持続性か、一過性かどうかを見るための最初の観察後に、3ヶ月以下の間隔で、T細胞のクローニング又はLAM−PCR検査を用いる。単クローンが持続的な全ての場合において、特に配列がヒトの既知の癌に関連することが知られているか否かにかかわらずクローンが増殖する場合において、可能であれば、治療を早期に開始し得るように、被験者の、悪性腫瘍の兆候を注意深くモニタリングしなければならない。
【0144】
治療後評価(経過観察)
日常的経過観察:患者は初期治療法後4週間(+/−7日)(最後のアルデスロイキン投与の終了時と定義される)に評価される。患者にSD又は腫瘍の縮小がある場合、完全な評価を12ヶ月間、毎月(+/−7日間)繰り返し行い、次いで1−2ヶ月(+/−7日)ごとに適宜行う。
【0145】
以下の評価:I)神経学的検査とカルノフスキースコアを含む理学的検査;II)Chem20:(ナトリウム(Na)、カリウム(K)、塩化物(Cl)、総CO2(炭酸)、クレアチニン、グルコース、尿素窒素(BUN)、アルブミン、総カルシウム、総マグネシウム(MG)、無機リン、アルカリホスファターゼ、ALT/GPT、AST/GOT、総ビリルビン、直接ビリルビン、LD、総蛋白、総CK、尿酸)、完全な血球数と甲状腺パネル;III)CBC;IV)毒性評価、V)ガドリニウムを伴うか、又は伴わない、脳のMRI;及びVI)RCRの検出及びCAR遺伝子で形質導入された細胞の持続性(上記したとおり)
を各評価で行う。
【0146】
5リットルのアフェレシス療法を、最初の経過観察の訪問時に限って行う。その後、経過観察の訪問時(ほぼ毎月)に、少なくとも3ヶ月間、血液60mlを得る。免疫学的検査を行い得るように、末梢血単核細胞を凍結保存する。
【0147】
遺伝子導入を受けた患者の長期的な経過観察:
細胞注入後5年間、毎年理学的検査を行い、文書化して長期的な安全性を評価する。5年後、健康状態のデータを、電話連絡又は郵送のアンケートを通して生存患者から得る。レトロウイルスベクターの長期の経過観察期間は15年である。
【0148】
寛解基準:
この試験の一環としてだけでなく、腫瘍の進行の判定に役立てるために、患者の腫瘍における画像的変化を経時的に観察するよう全力で取り組む。
【0149】
測定可能病変:2以上の体軸断面で見ることのできる、2つの、少なくとも10mmの垂直直径と、MRIスキャンによって明確に規定された周縁を伴う、2次元的にコントラストを増強した病変。嚢胞腔又は外科的空洞付近の腫瘍の測定は、特に困難な課題に該当する。直径10mm以上の結節成分が存在しない限り、一般的に、このような病変は測定不能とみなされるべきである。寛解の判定においては、嚢胞腔又は外科的空洞は測定されるべきではない。
【0150】
測定不可能であるが評価可能な病変:一次元的に測定可能な病変、周縁が明確に規定されていない集塊か、又は複数の嚢胞成分を伴う病変。
【0151】
評価不能な病変:
明確な、測定可能な、又は評価可能な腫瘍がない。
【0152】
測定可能病変:
完全寛解(CR):完全寛解には以下:少なくとも4週間持続する、測定可能及び測定不可能なすべての増強病変の完全な消失;新たな病変がないこと;非増強(T2/FLAIR)病変の安定又は改善;のすべてが必要であり、患者はコルチコステロイドを受容していないか、又は生理的補充用量のみ受容していて、且つ臨床的に安定であるか、又は改善されていなければならない。4週間後にスキャンを確認しないときは、この寛解は安定病変に過ぎないとみなす。
【0153】
部分寛解(PR):部分寛解には以下:少なくとも4週間持続した、測定可能なすべての増強病変の垂直直径の積の和において、ベースラインと比較して50%以上の減少;測定不能病変が進行しないこと;新たな病変がないこと;ベースラインスキャンと比較して同用量以下のコルチコステロイドを受容している状態での、非増強(T2/FLAIR)病変の安定又は改善;のすべてが必要であり、且つ患者はベースラインスキャン時の用量以下の用量のコルチコステロイドを受容しており、且つ臨床的に安定か、又は改善されていなければならない。4週間後にスキャンを確認しないときは、この寛解は安定病変に過ぎないとみなす。
【0154】
安定:患者に完全寛解、部分寛解、又は進行がみられない場合には、安定病変となり、以下:ベースラインスキャン及び臨床的な安定状態と比較して同用量以下のコルチコステロイドを受容している状態での、非増強(T2/FLAIR)病変の安定、が必要である。万一、新たな症候及び病徴に対するコルチコステロイド投与量が、神経画像検査で病変進行を確認することなく増加され、且つそれ以降の経過観察画像により、このコルチコステロイド増加が病変進行を理由にして必要となったことが示される場合、安定病変を示すと考えられる最後のスキャンは、コルチコステロイド投与量がベースライン量に相当したときに得られたスキャンである。
【0155】
進行:進行は以下:安定的用量又は漸増用量のコルチコステロイドを受容している状態で、増強病変の垂直直径の積の和において(最良効果又は減少がない場合ベースラインと比較して)25%以上の増加;治療開始後に安定用量又は漸増用量でのコルチコステロイドを受容している状態での、ベースラインスキャン又は最良効果と比較して、合併症に起因しない、T2/FLAIR非増強病変の大幅な増大;任意の新たな病変の出現;測定不能病変の明確な進行;或いは腫瘍以外の他の原因又はコルチコステロイド投与量が減少したことに起因しない、明確な臨床的悪化、のいずれかによって定義される。死亡又は状態悪化の結果として、評価に帰着しないことも、進行とみなされるべきである。測定不能な増強病変を有する患者であって、その病変の大きさが大幅に増加して測定可能(少なくとも2例の体軸断面で見ることができる、最小の二方向の直径が10mm以上)となっている患者も、進行を経験したとみなされる。進行へとつながる、測定不能病変から測定可能な病変への遷移は、理論的には腫瘍の大きさの比較的小さい増加(例、9×9mm病変[測定不能]が10×11mm病変[測定可能]に増加)で生じる可能性がある。理想的には、著しい変化(最大径の5mm超の増加又は増強病変の垂直直径の積の和で25%以上増加)である必要がある。一般的には、病変が進行したのか否かについて疑問がある場合は、継続治療及び入念な経過観察による評価が、真の進行なのか否かを明確にするのに役立つ。
【0156】
評価可能病変:
評価可能病変を各評価で記録する。FLAIR像又はT2強調像も、適宜評価可能病変と判断すべきである。
【0157】
以下の尺度:
+3=腫瘍の消失(CR)
+2=明確に好転(PR)
+1=好転の可能性あり
0 =不変
−1=悪化の可能性あり
−2=明確に悪化(PD)
−3=新たな病変の発生(PD)
をMRIスキャンの相対変化を指定するために用いる。
【0158】
評価可能な病変についての寛解の定義
完全寛解(CR)は、MRIスキャンが+3にランク付けされ、神経画像で腫瘍がもはや見られない状況、及び腫瘍で惹起される脳浮腫抑制のためのステロイドを患者がもはや必要としない状況と定義する。
【0159】
部分寛解(PR)は、患者が前回の評価時期以来、自身のステロイド用量を増大させていないことを条件として、MRIスキャンが+2にランク付けされることと定義する。
【0160】
進行(P)はMRIスキャンが−2又は−3にランク付けされる状況か、又は新たな病変が存在することと定義する。
【0161】
安定病変(SD)は、MRIスキャンが変化を示さないか、変化し得ること(−1又は+1)を示す状況と定義する。患者は、安定した用量のステロイドを受容するか、受容するステロイドの用量を減らさなくてはならない。
【0162】
刊行物、特許出願及び特許を含む、本明細書中に引用した全ての参考文献は、それぞれの参考文献が参照によって組み込まれることが個々に且つ具体的に示されているのと同程度又はその全体が本明細書中に記載されているのと同程度まで、参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0163】
本発明の説明に関して(特に、以下の特許請求の範囲に関して)、用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書中に特記しないか文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈すべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」は、特記しない限り、オープンエンドの用語(即ち、「〜を含むがそれらに限定されない」を意味する)と解釈すべきである。本明細書中の値の範囲の記述は、本明細書中に特記しない限り、その範囲内に入る各個別の値に個々に言及する省略方法として働くことのみを意図しており、各個別の値は、それが本明細書中に個々に記述されているかのように本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中に特記しない又は文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施できる。本明細書中に提供される任意の及び全ての例又は例示的語句(例えば、「など(such as)」)の使用は、本発明をよりよく説明することのみを意図しており、特段特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書中の全ての語句は、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施に必須のものとして示していると解釈すべきではない。
【0164】
発明を実施するための発明者が知る最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書中に記載されている。これらの好ましい実施形態のバリエーションは、上述の説明を読めば当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がかかるバリエーションを適宜使用することを予期しており、本発明者らは、本明細書中に具体的に記載されたのとは異なる方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法によって許容されるとおり、本明細書中に添付した特許請求の範囲に記載される対象の全ての改変及び等価物を含む。さらに、その全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組合わせが、本明細書中に特記しない又は文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。