(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076976
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】波形スプリングライナーを有するホースクランプ
(51)【国際特許分類】
F16L 33/08 20060101AFI20170130BHJP
F16B 2/08 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
F16L33/08
F16B2/08 J
【請求項の数】20
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-521825(P2014-521825)
(86)(22)【出願日】2012年7月20日
(65)【公表番号】特表2014-526021(P2014-526021A)
(43)【公表日】2014年10月2日
(86)【国際出願番号】US2012047600
(87)【国際公開番号】WO2013013152
(87)【国際公開日】20130124
【審査請求日】2015年6月17日
(31)【優先権主張番号】13/188,103
(32)【優先日】2011年7月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514017725
【氏名又は名称】アイディール クランプ プロダクツ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】IDEAL CLAMP PRODUCTS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ボウォーター,ブルース,ディー
【審査官】
黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−528904(JP,A)
【文献】
特開平11−315981(JP,A)
【文献】
特表平9−502788(JP,A)
【文献】
実開昭57−191(JP,U)
【文献】
特表昭61−500804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 33/02 − 33/14
F16B 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面を有するホースクランプ用の環状スプリングライナーであって、
前記ライナーの縁部近傍にある円周肩部と、
前記肩部よりも小さい円周の、中央にある円筒形の波形接触部と
を備え、
(1)前記肩部は、前記内面に当接するようになされており、
(2)前記波形接触部は、鋸歯形状の波形を備える、
スプリングライナー。
【請求項2】
前記ライナーの両縁部近傍に円周肩部をさらに備え、前記肩部は両方とも前記内面に当接する、請求項1に記載のスプリングライナー。
【請求項3】
前記波形接触部は、クランプの緊張力がない状態では前記内面に当接しない、請求項2に記載のスプリングライナー。
【請求項4】
前記波形接触部は、前記内面よりも狭い、請求項3に記載のスプリングライナー。
【請求項5】
前記波形接触部の幅は、前記内面の幅の40%から70%の範囲である、請求項4に記載のスプリングライナー。
【請求項6】
少なくとも一つの縁部に、径方向外側を向くフレア状フランジをさらに備える、請求項4に記載のスプリングライナー。
【請求項7】
それぞれの円周縁部に、前記内面の幅を超えて延在する径方向外側を向くフレア状フランジをさらに備える、請求項3に記載のスプリングライナー。
【請求項8】
前記ライナーは、重なり合う端部を有する略円形である、請求項1に記載のスプリングライナー。
【請求項9】
内面及び環状スプリングライナーを有するホースクランプであって、前記ライナーは、
前記ライナーの縁部近傍にある円周肩部と、
前記肩部よりも小さい円周の、中央にある円筒形の波形接触部と
を備え、
(1)前記肩部は、前記内面に当接するようになされており、
(2)前記波形接触部は、鋸歯形状の波形を備える、
ホースクランプ。
【請求項10】
前記ライナーの両縁部近傍に円周肩部をさらに備え、前記肩部は両方とも前記内面に当接する、請求項9に記載のホースクランプ。
【請求項11】
前記波形接触部は、クランプの緊張力がない状態では前記内面に当接せず、ギャップは、前記波形接触部と前記内面との間に画定される、請求項10に記載のホースクランプ。
【請求項12】
前記波形接触部は、前記内面よりも狭い、請求項11に記載のホースクランプ。
【請求項13】
前記波形接触部の幅は、前記内面の幅の40%から70%の範囲である、請求項12に記載のホースクランプ。
【請求項14】
少なくとも一つの縁部に、径方向外側を向くフレア状フランジをさらに備える、請求項12に記載のホースクランプ。
【請求項15】
それぞれの円周縁部に、前記内面の幅を超えて延在する径方向外側を向くフレア状フランジをさらに備える、請求項11に記載のホースクランプ。
【請求項16】
前記ライナーは、重なり合う端部を有する略円形である、請求項9に記載のホースクランプ。
【請求項17】
テンショナーをさらに備える、請求項11に記載のホースクランプ。
【請求項18】
前記テンショナーは、ウォーム駆動を備える、請求項17に記載のホースクランプ。
【請求項19】
それぞれの波形は、第1の部分と、前記第1の部分に対して斜めに伸びている第2の部分と、を含み、
第1の角度は、前記第1の部分と垂直に伸びた仮想線との間で定義され、第2の角度は、前記第2の部分と垂直に伸びた仮想線との間で定義され、
それぞれの波形の前記第2の角度は、それぞれの波形の前記第1の角度よりも大きい、請求項1記載のスプリングライナー。
【請求項20】
それぞれの波形は、第1の部分と、前記第1の部分に対して斜めに伸びている第2の部分と、を含み、
第1の角度は、前記第1の部分と垂直に伸びた仮想線との間で定義され、第2の角度は、前記第2の部分と垂直に伸びた仮想線との間で定義され、
それぞれの波形の前記第2の角度は、それぞれの波形の前記第1の角度よりも大きい、請求項9記載のホースクランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ホースクランプアセンブリの分野に関し、より具体的には、ホースクランプアセンブリと関連するスプリングライナーに関し、特に、中央に波形のホース接触部分を有するスプリングライナーに関する。
【背景技術】
【0002】
通常ホースクランプは、例えば自動車産業において、ホースと取り付け具又はコネクタ(以下、「取り付け具」とする)とを繋ぎ合わせるために使用される。ホースクランプ、ホース、及び取り付け具は、周辺温度や前述した各部品の熱的特性に基づくシステム温度の変化に対応する。これらの部品の熱膨張率の違いは、熱的に誘起されたクランプ力の低下を招くおそれがあり、それに伴って流体やガス漏れの可能性を引き起こす。加えて、クリープ、圧縮歪み、又は劣化に起因する時間経過によるホース材料の弾性変化もまた、クランプ力を低下させるおそれがあり、流体漏れの可能性を引き起こす。
【0003】
ホースクランプとの連結に使用されるさまざまなタイプのスプリングライナーが知られている。特許文献1及び特許文献2は、内側に突出する二つのリッジと、その二つのリッジの間に外側に突出するリッジを有するスプリングライナーを開示する当該技術の代表例である。中央のリッジ領域が相対的に低い圧縮ゾーンを形成する一方で、内側を向く二つのリッジは、ホースに二つの非常に高い圧縮ゾーンを形成する。
【0004】
2011年7月21日に出願された、同出願人の同時係属出願である米国特許出願番号第13/188,093号において、名称「フラットスプリングライナーを有するホースクランプ」(Hose Clamp With Flat Spring Liner)についても言及されており、その内容を参照により本願明細書に援用する。
<関連する出願への相互参照>
本出願は、米国特許法第119条に基づき、2011年7月21日に出願された"HOSE CLAMP WITH RIPPLED SPRING LINER"と題する米国特許出願第13/188,103号に対する優先権を主張し、その全ての内容を参照により本願明細書に援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,178,204号明細書
【特許文献2】米国特許第7,302,741号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、下に置かれるホースや取り付け具の弾性特性の変化や対立的な変化に対して、ホースクランプが自己補償できるようにする改良されたスプリングライナーを提供することにある。本発明は、ライナーの両縁部近傍にある円周肩部と、二つの肩部の間に波形接触部を有する中央の内周円筒状リッジとを有するホースクランプ用の環状スプリングライナーを対象とする。ホースクランプは、緊張するとライナーの肩部に着座する。従って、少なくとも組み立てられた後、かつホースクランプが緊張する前には、波形の中央のリッジは、かなり均一の厚さのギャップによってホースクランプの緊張バンドの内面から離れている。波形接触部の幅は、緊張バンドの内面の幅よりも狭い。波形接触部の幅は、緊張バンドの内面の幅の40%から75%の範囲でもよい。
【0007】
本発明の別の実施形態において、スプリングライナーは、一方もしくは両方の円周縁部の少なくとも一部分に、径方向外側を向くフレア状フランジをさらに有している。
【0008】
本発明の別の態様は、上記のように、内面を有する環状バンドと、バンドの締め付けを容易にさせるテンショナーと、環状スプリングライナーとを有する改良されたホースクランプアセンブリを提供することである。
【0009】
前述の事項は、後述の本発明の詳細な説明をより理解できるように、本発明の特徴や技術的な利点をむしろ広く概説したものである。本発明の更なる特徴及び利点は以下に説明され、それらは、本発明の各請求項の対象を形成する。開示された概念及び特定の実施形態は、本発明の同様の目的を実行するために他の構造を修正又は設計する根拠として、容易に利用できることが当業者によって理解されるべきである。当業者は、そのような同等な構造物が、添付の請求項に記載の本発明の趣旨及び範囲から逸脱しないことをさらに理解すべきである。本発明の特徴であると考えられる新規の特性は、さらなる目的や利点と共にその構成及び操作方法に関して、添付の各図面に関連して考慮される場合、以下の説明からより理解されるであろう。しかしながら、各図面は、それぞれ例示目的及び記載のみのために提供されるのであって、本発明の制限の定義として意図するものではないことが明確に理解されるであろう。
【0010】
明細書内に組み込まれ、明細書の一部を形成する添付の図面は、類似の番号が同様の部品を示し、説明とともに本発明の各実施形態を図示し、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に従って構成されたクランプ及びスプリングライナーを含むホースクランプアセンブリの分解斜視図である。
【
図2】
図1のスプリングライナーの断面線2−2に沿って切り取った部分断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に従って構成されたスプリングライナー、ホース、及び取り付け具を含むホースクランプアセンブリの部分断片図である。
【
図4】本発明の別の実施形態によるスプリングライナーの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、下に置かれるホース上のホースクランプの把持力を高めながら、ホースクランプアセンブリが下に置かれるホース又は基材に与える単位荷重を増加させるために、従来のウォームギヤホースクランプの内径(ID)の接触面領域を削減させる手段を提供する。接触面領域の削減は、ホースクランプ又は緊張バンド1の内径(ID)に挿入される円形ライナーを使用することによって達成される。ライナーの断面には、外径(OD)上に接触面を有する肩部5があり、当該外径は、軸方向の範囲内(幅)でそれぞれホースクランプ又は緊張バンドの内面の幅とほぼ等しい。各肩部の縁部は、ホースクランプ又は緊張バンドの内径(ID)内にライナーを係留する角度でホースクランプ又は緊張バンドに向かって上方に突出していてもよい。ライナーの外形は、波形か、そうでなければ平坦の円筒接触部7をさらに有し、該接触部7は、各肩部5よりも内側又は下側に位置付けられる。該接触部の接触は、フラットライナーと比較して、波形部7が、下に置かれるホース又は基材に接触し、クランプをホースから外させるのに必要な力を増加させようとすることを意味する。この波形の接触面は、ホースクランプ又は緊張バンド1の幅よりも狭く、ホースクランプ又は緊張バンドの幅の40%から75%の範囲内であってもよい。二つの脚部6は、ライナーの二つの肩部と下側の接触部7との間の橋渡しをする。これらの脚部は対称的でもよく、下側の接触面の両側に設置され、クランプの中心線に対して鋭角を成して外側に突出し、これにより上方の肩部に到達して付随する。
【0013】
単位負荷の増加は、クランプが、下に置かれるホース又は基材にかける径方向の圧力の増加としても説明できる。ホースクランプ又は緊張状態にあるバンドがかける径方向の圧力(pr)は、バンドテンション(T)、バンドの幅(w)及び締め付け直径(d)の相関関係である。「T」及び「d」の任意の固定値に対して、「w」の増加は、径方向の圧力を減少させ、「w」の減少は、径方向の圧力を増加させる。簡易化したフープ応力の公式の操作(2T=pr・w・dをpr=2T/(w・d)に移項する)は、この挙動を実証できる。
【0014】
ライナーの接触幅をより狭くする結果としてホースクランプ又は緊張バンドの径方向の圧力を増加させることに加えて、ライナーは、ばねとして作用することもでき、これによりクランプに対して熱補償特性を提供する。ばね効果については、より詳細に後述する。先ず、各図面について詳細に論じる。
【0015】
図1を参照すると、外側の環状バンド1、典型的な緊張手段3、4とを備えるホースクランプが示される。
図1はさらに分解図として、本発明による波形スプリングライナー9を示す。他の実施形態では、スプリングライナー19が
図2から
図3に断面図で示され、スプリングライナー 29が
図4に示される。スプリングライナー19及びスプリングライナー29と同様に、スプリングライナー9も重なり合う端部10を有する環状リングである。スプリングライナー9、19及び29は、ライナーの両縁部近傍にある二つの平坦な環状円周肩部5と、二つの肩部5の間に位置し、肩部よりも小さい円周である波形の中央環状円周接触部7と、それらの間に、肩部5の各縁部を波形接触部7の各縁部に結合させる二つの環状円周脚部6とを備えている。
図2及び
図4は、二つの肩部5と波形接触部7との間の径方向の高さの違いAを示す。ライナー9、19、又は29がクランプバンド1に挿入されると、バンド1の内面は肩部5に当接し、又は着座し、クランプの緊張力がない場合、ギャップAは接触部7の外面とバンド1の内面との間を表すことになる。したがって、波形接触部7は、クランプの緊張力がない場合、バンド1の内面に当節しない。ギャップAは、波形がなければかなり均一である。言い換えれば、ライナーの中央部分はほぼ平坦であるが、小さい波形を伴っている。この波形は、振幅がギャップAよりも小さく、また、波長がバンド又は接触部7の幅よりも小さい一連のコルゲーション(corrugations)或いは小波である。波形部分においては、少なくとも三つの波形、もしくは四つ以上の波形があることが好ましい。波形は、ライナーの断面に現れ、すなわち、クランプの中心軸と平行な面及び通過する面の径方向の断面に現れる。
【0016】
「外側を向く」及び「内側を向く」といった用語は、略円形のライナーの中心軸に対する方向を示す。「内側を向く」、或いは「内側の」は、通常ライナーの中心軸に向けられることを意味する。「外側を向く」、或いは「外側の」は、通常ライナーの中心軸から離れるように向けられることを意味する。
【0017】
クランプに緊張力を加えると、すなわち、バンドを締め付け又は緊張させると、ライナーの重なり合う部分10の長さが増し、その結果、ライナーの円周が減少する。バンドが締め付けられると、それによりライナーは、連結するホースに圧縮係合するように引き入れられる。
図3は、ホース11及びホース取り付け具12と共に使用するホースクランプアセンブリを示す。ホースクランプのバンド1は、二つの肩部5に着座する。ライナーの内向き波形接触部7は、ホース内で相対的に均一な圧縮ゾーン14を形成する。
図2の実施形態における波形17は、略正弦波形状である。波形は、ホース表面内に押し込まれ、クランプをホースから引き抜くのに必要な力を増加させる。三角形、台形、或いは略曲線形などの他の対称的な波形の外形も有利に用いられ得る。
【0018】
また、波形は、漏れを低減させ及び/又はクランプの下に漏れを引き起こすのに必要な圧力を増加させると考えられている。この効果は、波形の領域内に拡散又は充満しようとする任意の気体又は液体分子の屈曲度が増加した結果であってもよい。
【0019】
図4は、波形27が非対称形状、すなわち鋸歯形状又は三角形である別の実施形態を示す。非対称である鋸歯波形の利点は、引き抜き力が方向依存性であり、そのためライナーは、所望の方向に引き抜かれることに対する抵抗力を最大にするように配向できることである。
図4における鋸歯波形27は、二つの歯の角度α及びβを特徴としうる。
図4では、α及びβは、垂直線に対して定義されている。この角度αは、例えば、ゼロから50
°、又は5
°から40
°の範囲で、或いは5°から約25°又は約10°など、所望により設定できる。角度βは、例えば、20°から90°、又は30°から80°、或いは35°から約60°、又は約40°などの範囲で所望により設定できる。
【0020】
ライナーの外形は、二つの脚部6が圧縮力を受けて撓むことができるように設計され、それによりばね効果を形成する。バンドが緊張すると、脚部の撓みは、ギャップAをA’(A’<A)に減少させ、或いは恐らく完全に無くさせる。バンドが緊張すると、撓みは、波形の接触面をわずかに変形させることもできる。ギャップの減少は、環状スプリングライナーに蓄積されたばねエネルギーの量の表れである。これら径方向、軸方向の撓み及びその結果として生じるホースに作用する圧縮力の実質的な効果は、従来技術のホースクランプライナー設計によって得られるものに比べると、はるかに良好な初期及び長期間のシール効果である。
【0021】
ホース及びクランプアセンブリが熱変動に曝露されると、スプリングライナーは、さらなる撓み或いは緩和によって対応することができ、それによりホースアセンブリに対する優れたシール力の維持に役立つ。典型的な加硫ゴムであるホース材料が、経時による弾性特性の劣化によって圧縮永久歪み又は非弾性変形を呈するとき、ゴムによってもたらされる力は緩和され或いは減退し、スプリングライナーは、蓄積されたばねエネルギーのいくらかを再び緩和或いは放出し、それによりホースにかかる優れたシール力を維持する。非常に高い圧縮ゾーンを形成する細いリッジを有する従来のライナー設計と比較すると、本発明は、より均一な適度の圧縮ゾーンを形成し、ホースに対して高度な機械的把持をさらに提供しながら、締め付けられているゴムホースの圧縮永久歪みの極度の変形や極端な効果を有利に避けることができる。
【0022】
ギャップA’が無くなり、接触部7の外面がバンド1の内面に接触する程度にホースクランプが緊張する場合、スプリングライナーのさらなる撓みには、ばね定数の劇的な増加に比例したはるかに高い力が必要とされる。この条件下では、ホースの熱膨張に応じたスプリングライナーの撓みは非常に制限される。しかしながら、この条件下では、スプリングライナーの緩和能力或いはホースの熱収縮に対応する能力は、最大化される。従って、クランプ及びスプリングライナーは、クランプの緊張力があるときに使用される場合でもギャップA’が維持されるように設計されてもよい。代替的に、クランプ及びスプリングライナーは、クランプの緊張力があるときに使用される場合に、波形接触部7の外面がホースクランプの内面に当接するように設計されてもよい。
【0023】
図2から
図4に示すように、スプリングライナー19は、バンド1内でライナー19の位置合わせに役立つ、一つ又は二つの径方向外側を向くフレア状のフランジ8を有してもよい。図示されるフランジは、約45°の角度で外側に広がる。いかなる好適なフレア角やフレア形状が使用されてもよい。脚部6と同様、各フランジ8は、鋭く曲がっていてもよく、或いはより曲線的で、隣接する肩部5又は接触部7から段階的な移行をしてもよい。フランジ8は、ライナーの全周にわたってもよく、或いはライナーの重なり合う部分10に対する干渉を低減するように、又はライナーと緊張手段3、4との間の干渉を低減するように、適当な位置で切断されてもよい。代替的に又はフランジに付加的に、スプリングライナーは、熱溶着、化学的溶着、化学接着、かしめ(staking)、メカニカルファスナー、又はこれらの二つ以上の組み合わせなどの十分な接着を提供する任意の手段によってバンド1にほぼ永久的に取り付けられてもよいが、これらに限定されるわけではない。
【0024】
ライナーによってもたらされるばね力は、それを構成する材料の厚さや係数(modulus)に依存する。ばね力は、厳密な外形、すなわち、脚部、接触部、及び肩部の形状や大きさにも依存する。
図2に示す外形は、約0.012インチ(0.3mm)の厚さの金属シートによって形成されると、典型的な自動車用のホースクランプ用途に好適となる。当業者は、材料、材料特性、肩部及び波形表面の寸法、フランジ角度、重なり合う距離、及び/又はスプリングライナーの厚さを変更して、特定の用途用に波形スプリングライナーを最適化できるであろう。外形は、完全に対称であることを必要としない。二つの肩部、脚部、及び中央の波形表面は、全て違うサイズであってもよい。中央の波形表面は、環状ライナーのきっちりと中心にある必要はない。二つの脚部の角度は、異なっていてもよい。ライナーの厚さは、軸方向において変化していてもよい。肩部の一つ以上及び/又は脚部の一つ以上が波形であってもよい。
【0025】
各肩部は、広く平坦な構造である必要は無い。一つの肩部又は複数の肩部は、ホースクランプのバンドの内面に当接するようになされた接触円周線であってもよい。そのような肩部は、ライナーの縁部近傍に形成された外側を向く凸状のリッジである可能性もあり、或いは、単純にライナーの縁部である可能性もある。肩部の重要な特徴は、ホースクランプのバンドの内面に接触或いは当接するように構成されていることである。従って、
図3の断面で示されるように、バンド1の内面と肩部5との接触は、点であることも、或いは線であることも可能である。そのため、三次元の状態では、肩部の形状に応じて、バンド1の内面と肩部5との接触は、円形線又は円筒領域であってもよい。
【0026】
スプリングライナーの重なり合う端部の間における摩擦は、組み立て中に得られるクランプ力に影響を及ぼすこともあり得る。摩擦力を低減するためには、重なり合う端部をワックスや他の適切な潤滑油でコーティングしてもよい。摩擦力を増加させるためには、重なり合う部分を洗浄、粗面化、溝付け、刻み付け等してもよい。これにより、当業者は、必要又は要望に応じて摩擦を最適化できる。
【0027】
当該技術で知られているさまざまなホースクランプ締め付け手段或いは緊張手段、すなわち「テンショナー」は、いずれも使用することができる。実例として、緊張機構は、
図1に示すようにウォーム駆動3、4でもよい。代替的に、テンショナーは、T−ボルト、ラテェット機構、ボルト・バレル機構、ナット・ボルトアセンブリ、パーマネントクリンプ等、又はこれらの組み合わせであってもよい。代替的に、クランプは、歪みを開放させてバンドをスプリングライナー、ホース及び取り付け具に対して収縮させることによって緊張させる、熱的凍結歪みを伴う無端バンドであってもよい。さらに、緊張バンド又はホースクランプの幅は、変更可能である。ライナーの幅及びライナーの接触幅に対する緊張バンドの幅の割合も変更可能である。
【0028】
所望により、本発明から逸脱しない範囲で他の公知のホースクランプの特徴を組み合わせてもよい。例えば、接着剤、加硫パッチ、位置決めタブ、位置決めクリップなどのようなホースに対してアセンブリを取り付けるさまざまな手段は組み合わされてもよい。スプリングの強度を調整するための切り欠き又は開口、或いはそのようなものが組み合わされてもよい。
【0029】
実際に実施するときには、環状スプリングライナーを有するホースクランプは、結合されるホースと取り付け具の上を覆って設置される。クランプの直径は、緊張機構を用いることによって減少する。スプリングライナーの直径は、ライナーの円周の重ね合わせの長さを増加させることにより、クランプの直径の減少に比例して減少する。組み合わされたホースクランプ及び環状スプリングライナーの直径の減少に伴って、下に置かれるホースと取り付け具に作用する径方向の圧力は増加する。ライナーの形状により、ライナーの下のホース領域を相対的に均一にしたまま、ホースにかかる径方向の圧力は、クランプ単体によって生じる圧力から増大する。
【0030】
外側のバンドのテンションが増加した結果としてスプリングライナーに作用する径方向の力が増加すると、肩部5がホース11に向けて下方に撓むように、スプリングライナーが撓む。この動作は、所望の緊張が得られるまで継続できる。しかしながら、この動作は、中心波形部7がクランプバンド1の内面に接触する部分においては(もし接触することがあるならば)、限定的になる。撓みは、弾性的でばねのような挙動である。それゆえ、ライナーは、ばねとしてバンド緊張及び/又は径方向の圧力の変化に対応できる。このばねの挙動は、中央の波形部7が、クランプ取り付け期間全体を通して、ホースに十分な径方向の圧力を付与することを保証する。
【0031】
可能な修正例として、本発明の一実施形態において、ホースクランプの内面は、組み立てられるときに、最初のうちはスプリングライナーの一つの肩部に接触してもよく、その際、クランプの内面とライナーの第二の肩部との間にギャップがあることが想定される。この実施形態のホースクランプが緊張すると、クランプが恐らく最終的には第二の肩部に着座すると共に、変形エネルギーがスプリングライナーに蓄積されると、内面と第二の肩部との間のギャップは閉じるであろう。
【0032】
本発明の一実施形態を使用することは、利点がある。先に述べたように、クランプを引き抜くのに必要な力を増加させることができ、結果的により高い作動圧やよりよい密封性をもたらす。また、クランプ圧力は、所定の張力で、ライナーなしにバンドに対して増幅される。比較的小さな波形のみを有するライナーの略平坦な中心部分は、結果として、米国特許番号第7,302,741号による二つの内側を向くリッジを有する従来技術のスプリングライナーよりも、ホースの周り及びホース伝いの双方に、より均一な圧力分布をもたらす。これは、ある特定の用途又は実施形態に対して有用となるであろう。
【0033】
縁部の効果及びゴム内における緩和或いは圧縮歪み効果による結果又は利点は、締め付けられるホースの構造及び材料の詳細に依存する場合がある。従って、本発明の利益及び従来技術のライナーと比較して優位な点は、ホースの種類や用途の種類に依存しうる。二つのより大きいリッジを有する従来技術のライナーの方が、未だに、各リッジ下に直ちにより高いピーク圧力をかけられるかもしれない。しかしながら、一部の種類のホース又は用途においては、より低いピーク圧力ではあるが、より高い平均圧力でより好適に締め付けが可能である。
【0034】
本発明およびその利益を詳細に説明してきたが、添付の請求項によって定義されるように、本発明の趣旨及び範囲から逸脱しないで、さまざまな変化、代替、変更がここでは可能であることが理解されるべきである。さらに、本出願の範囲は、明細書に記載された工程、機械、製造、組成物、手段、方法、及び手順の特定の実施形態に制限されるものではない。当業者が本発明の開示を容易に理解するであろうことから、本明細書に記載された対応する実施形態とほぼ同様の機能を実行する、或いはほぼ同様の結果を達成する、現存の又は後に開発される工程、機械、製造、組成物、手段、方法、又は手順は、本発明により使用され得る。従って、添付の請求項は、そのような工程、機械、製造、組成物、手段、方法、又は手順の範囲内に含まれることを意図している。本明細書に開示された発明は、本明細書に特に開示されていない要素がない場合でも適切に実施され得る。