(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076980
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】粉末吸入器
(51)【国際特許分類】
A61M 15/00 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-525478(P2014-525478)
(86)(22)【出願日】2012年8月13日
(65)【公表番号】特表2014-524298(P2014-524298A)
(43)【公表日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】FR2012051883
(87)【国際公開番号】WO2013026976
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年7月13日
(31)【優先権主張番号】1157410
(32)【優先日】2011年8月19日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502343252
【氏名又は名称】アプター フランス エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100133950
【弁理士】
【氏名又は名称】向井 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100125438
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 公知
(72)【発明者】
【氏名】コロン アルノー
【審査官】
田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/049541(WO,A1)
【文献】
特表2008−509766(JP,A)
【文献】
特表2011−517609(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/040779(WO,A2)
【文献】
国際公開第2010/004229(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/136134(WO,A1)
【文献】
特開2009−101215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入口(15)を備えた本体(10)と、
投与対象の粉末を1回分の服用量ずつ格納している複数の被包(21)と、
を有する粉末吸入器であって、
前記複数の被包(21)は、細長くてしなやかなブリスター包装帯(20)の上に形成されており、
前記ブリスター包装帯(20)は、前記複数の被包(21)の空洞を備えた基層(22)と、前記空洞を覆い、前記基層(22)から剥離可能な封止層(23)とを有し、
前記基層(22)のうち、空になったブリスターを含む部分は第1の回転回収部材(40)に巻き取られ、
前記封止層(23)のうち、前記基層から剥離された部分は第2の回転回収部材(50)に巻き取られ、
前記第2の回転回収部材(50)は、剥離用歯車(51)を形成する第1の部分と、テンショナー(52)を形成する第2の部分とによって構成されており、
前記テンショナー(52)は、中心に円筒形の弾性変形可能な空洞を含み、当該空洞の中に前記剥離用歯車(51)の中心軸を受け入れて、当該中心軸の上端に位置するスナップ留め用の凸部(58)の下にスナップ留めされており、前記剥離用歯車(51)に対して第1の方向へのみ回転可能であり、
前記テンショナー(52)は、
前記封止層(23)の先端部を収める留め具(53)と、
柔らかい翼状部材(54)と、
柔らかい指状部材(55)と、
を含み、
前記テンショナー(52)は、前記粉末吸入器が作動するたびに、前記指状部材(55)を通して前記剥離用歯車(51)から力を受けて前記剥離用歯車(51)と共に前記第1の方向へ回転することで前記封止層(23)を前記翼状部材(54)の上に巻き取り、
前記ブリスター包装帯(20)が前記本体(10)の中に組み込まれた後、前記テンショナー(52)は前記剥離用歯車(51)に対して前記第1の方向へ回転することで前記封止層(23)に対して張力を与える機能を持つ、
ことを特徴とする粉末吸入器。
【請求項2】
前記剥離用歯車は、前記指状部材(55)と協働する内歯(56)を含み、前記指状部材(55)は前記内歯(56)に対する歯止めを形成して前記テンショナー(52)を、前記剥離用歯車(51)に対する前記第1の方向への回転は可能にする一方で、反対方向への回転は阻止する
ことを特徴とする請求項1に記載の粉末吸入器。
【請求項3】
作動する前と作動中との少なくとも一方において前記ブリスター包装帯(20)を前進させる割り出し歯車である移動手段(30)を含み、
前記第2の回転回収部材(50)の回転は前記割り出し歯車(30)の回転と相関している
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粉末吸入器。
【請求項4】
前記剥離用歯車(51)は、前記割り出し歯車(30)と回転可能にかみ合う外歯(57)を含む請求項3に記載の粉末吸入器。
【請求項5】
前記翼状部材(54)は、前記テンショナー(52)に前記封止層(23)が巻き取られる際に径方向に縮むように構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の粉末吸入器。
【請求項6】
前記基層(22)の先端部が前記第1の回転回収部材(40)に留められて、前記第1の回転回収部材(40)に備えられた渦巻バネが前記基層(22)に対して張力を与えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の粉末吸入器。
【請求項7】
入口及び出口の両方を含む拡散室(70)を含み、
前記入口は、吸入の間、開封された被包(21)に接続されて、前記開封された被包から納入路(60)を通して空気及び粉末の流れを受け入れ、
前記出口は、放出路(80)を通して前記吸入口(15)に接続されており、
前記拡散室(70)は、前記拡散室の中で移動可能な少なくとも1個の球(71)を含み、
前記拡散室(70)は、実質的に接線方向に延びている少なくとも1つの吸気口を有し、
前記納入路(60)及び前記放出路(80)は同一方向に延びており、前記同一方向は前記拡散室(70)の前記少なくとも1つの吸気口(72)に対して実質的に垂直であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の粉末吸入器。
【請求項8】
前記封止層(23)が巻き付く角部(18)である、前記基層(22)から前記封止層(23)を剥ぎ取るための手段を有する請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の粉末吸入器。
【請求項9】
前記拡散室(70)は複数の球(71)を含む請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の粉末吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉末吸入器に関し、特にドライパウダー吸入器に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術において吸入器は良く知られており、様々な種類のものが存在する。第1の種類の吸入器は、複数回分の服用量の粉末を収めた1つの容器を含み、作動するたびに1回分の服用量の粉末をユーザに投与する目的で、その容器から粉末を1回分の服用量ずつ取り出して排出口へ導入することが可能な計量手段を備えている。先行技術の中には、カプセルなどの個別の被包が使用の直前に1つずつ装填される吸入器も開示されている。これらのような吸入器の利点は、複数回分の服用量のすべてを器具の内部に格納しておく必要がないので、その器具を小型にできることである。しかし、その利点以上にこれらの吸入器は使いにくい。ユーザはこれらの吸入器を使用するたびに、前もってその吸入器にカプセルを1つずつ装填する作業を強いられるからである。別の種類の吸入器は、複数回分の服用量の粉末を1回分ずつ個別にブリスター包装の被包に予め梱包しておくことと、作動するたびにそれらの被包を1つずつ開封することとを特徴とする。これらの特徴が実装されることにより、各回分の服用量が放出されるときにしか開封されないので、粉末がより効果的に密封される。このような個別の被包を作る目的で、細長いブリスター包装帯(bande de blisters, blister strip)、回転円板上に配置された複数のブリスター包装体など、様々な技術がすでに提案されている。上述したものも含め、既存の種類の吸入器にはすべて、それらの構造と動作の種類とに関連した利点と欠点との両方がある。それ故、ある種の吸入器には各作動時における計量の正確性と再現性とに問題がある。加えて、投与の効率、すなわち、1回分の服用量のうち、ユーザの肺の中に有効に浸透して有益な治療効果を発揮する部分の割合もまた、いくつかの吸入器に存在する問題である。この特有の問題を解決するための対策としては、1回分の服用量の排出を患者の吸入動作に同期させることが行われている。
【0003】
しかし、これでは器具が複雑であるので、その製造及び組み立てにはコストがかかる。ブリスター包装帯を用いる器具ではそのブリスター包装帯の組み込み作業が複雑になり得る。特にそのブリスター包装帯が剥離可能な種類である場合、基層を回収するための回転回収部材と、封止層を回収するための回転回収部材とが備えられる。この場合、動作の信頼性を保証するには、ブリスター包装帯の基層及び封止層を常に張っておかなければならないので、まさにこれが組み込み作業を面倒にする。特許文献1、特許文献2、及び特許文献3には先行技術による吸入器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/018261号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/035509号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2004/067069号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記の欠点を持たない流体ディスペンサ、特にドライパウダー吸入器を提供することにある。
特に本発明の目的は、製造及び組み立てが単純かつ安価であり、信頼性が高く、作動のたびに正確な計量が再現される吸入器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、吸入口を備えた本体と、投与対象の粉末を1回分の服用量ずつ格納している複数の被包と、を有する粉末吸入器であって、複数の被包は、細長くてしなやかなブリスター包装帯の上に形成されており、そのブリスター包装帯は、複数の被包の空洞を備えた基層と、その空洞を覆い、基層から剥離可能な封止層とを有し、基層のうち、空になったブリスターを含む部分は第1の回転回収部材に巻き取られ、封止層のうち、基層から剥離された部分は第2の回転回収部材に巻き取られ、第2の回転回収部材は、剥離用歯車を形成する第1の部分と、テンショナーを形成する第2の部分とによって構成されており、テンショナーは剥離用歯車にスナップ留めされており、剥離用歯車に対して第1の方向へのみ回転可能であり、テンショナーは、封止層の先端部を収める留め具を含み、テンショナーは、粉末吸入器が作動するたびに剥離用歯車と共に第1の方向へ回転して封止層を巻き取り、ブリスター包装帯が本体の中に組み込まれた後、テンショナーは剥離用歯車に対して第1の方向へ回転することで封止層に対して張力を与える機能を持つ、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
好ましくは、剥離用歯車は、歯止めを形成するテンショナーの柔らかい指状部材と協働する内歯を含み、この歯止めはテンショナーを、剥離用歯車に対する第1の方向への回転は可能にする一方で、反対方向への回転は阻止する。
好ましくは、作動する前と作動中との少なくとも一方においてブリスター包装帯を前進させる割り出し歯車である移動手段を含み、第2の回転回収部材の回転は割り出し歯車の回転と相関している。
【0008】
好ましくは、剥離用歯車は、割り出し歯車と回転可能にかみ合う外歯を含む。
好ましくは、テンショナーは、封止層が巻き取られる際に径方向に縮むように構成された柔らかい翼状部材を含む。
好ましくは、基層の先端部が第1の回転回収部材に留められて、第1の回転回収部材に備えられた渦巻バネが基層に対して張力を与える。
【0009】
好ましくは、入口及び出口の両方を含む拡散室を含み、入口は、吸入の間、開封された被包に接続されて、開封された被包から納入路を通して空気及び粉末の流れを受け入れ、出口は、放出路を通して吸入口に接続されており、拡散室は、その拡散室の中で移動可能な少なくとも1個の球を含み、拡散室は、実質的に接線方向に延びている少なくとも1つの吸気口を有し、納入路及び放出路は同一方向に延びており、その同一方向は拡散室の少なくとも1つの吸気口に対して実質的に垂直である。
【0010】
好ましくは、封止層が巻き付く角部である、基層から封止層を剥ぎ取るための手段を有する。
好ましくは、拡散室は複数の球を含む。
本発明のこれらの特徴及び利点、並びにその他の特徴及び効果は、それらには限定されることのない例として以下に示す詳細な説明から、添付の図面を参照して更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の好ましい実施の形態における粉末吸入器の断面図であり、ブリスター包装帯が組み込まれた後であり、かつ、そのブリスター包装帯の基層及び封止層が張られる前の状態を示す断面図である。
【
図2】カバー部分が開いた状態を示す吸入器の斜視図である。
【
図3】封止層が張られる前における
図1の吸入器の一部の詳細な断面図である。
【
図4】封止層が張られた後における
図1の吸入器の一部の詳細な断面図である。
【
図5】
図1と同様な断面図であり、ブリスター包装帯が組み込まれた後であり、かつ、そのブリスター包装帯の基層及び封止層が張られた後の状態を示す断面図である。
【
図6】ブリスター包装帯の封止層を回収する回収部材の分解斜視図である。
【
図7】ブリスター包装帯の封止層を回収する回収部材の、組み立てられた状態における1つの断面図である。
【
図8】ブリスター包装帯の封止層を回収する回収部材の、組み立てられた状態における別の断面図である。
【
図9】封止層を回収する回収部材の一部の詳細な平面図である。
【
図10】封止層を回収する回収部材の別の一部の詳細な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1はドライパウダー吸入器の好ましい実施の形態を示す。この吸入器は本体10を含む。この本体10には、
図2に描かれているカバーを形成する2つの部分12、13が摺動し、又は回動するように取り付け可能である。これらの部分が開かれることでこの吸入器が開いて、粉末を放出する準備が整う。変形例として、カバー部分を単一にすることも可能である。本体10はほぼ円形にできるが、適宜、その他のどのような形状であってもよい。本体10は、吸入口15を形作るマウスピース11を含む。吸入器が作動する間、ユーザはこの吸入口15を通して粉末を吸入する。
【0013】
本体10の内部には被包21の帯が備えられている。これらの被包は「ブリスター(blisters:まめ、気泡)」という名称でも知られ、1回分の服用量が予め個別に分包されている。この帯は細長くてしなやかな帯として形作られており、その上に複数のブリスターが次から次へと並べられている。この配置の様態自体は公知である。ブリスター包装帯20は剥離可能なタイプである。すなわち、この帯は、ブリスターを形成する窪みを含む基層22と、剥離可能な層であって、吸入器が作動するたびに基層22から徐々に剥ぎ取られる封止層23とを含む。
【0014】
ブリスター包装帯20は、初回の使用前に本体10の内部、好ましくは1つの格納部の中に巻き取り可能であり、この帯を移動させるための移動手段30が、ブリスター包装帯20を徐々に展開して前進させる目的で設けられている。好ましくは、空になった窪みを含む基層の部分22は本体10の別の場所、すなわち第1の回収部に巻き取られ、剥ぎ取られた封止層の部分23は本体10の更に別の場所、すなわち第2の回収部に巻き取られるように構成されている。
【0015】
第1の回収部は好ましくは第1の回転回収部材40を含み、その周りに、空になった窪みを含む基層の部分22が巻き取られる。好ましくは、第1の回転回収部材40はバネ(図示せず)から回転力を受ける。このバネは特に、第1の回転部材の内側に配置された渦巻バネである。これによって、吸入器が作動するたびに巻き取りが確実に正しく行われる。
【0016】
第2の回収部は好ましくは第2の回転回収部材50を含み、その周りに、剥ぎ取られた封止層の部分23が巻き取られる。第2の回転回収部材50も回転力を受ける。この回転は特にブリスター包装帯20の移動手段30の回転と相関している。これによって、吸入器が作動するたびに巻き取りが確実に正しく行われる。
移動手段30は、吸入器の各作動の前に、及び/又は各作動の期間中にブリスター包装帯20を前進させるように構成されている。移動手段は好ましくは、ブリスターを収容して案内する割り出し歯車30を含む。割り出し歯車30の回転がブリスター包装帯20を前進させる。好ましくは割り出し歯車30は、キャップが開かれる等によって吸入器が粉末の放出準備を行うときに回転する。
【0017】
吸入器は好ましい特徴として、被包が1つ開かれるごとにその1回分の服用量の粉末を受け入れる拡散室70を含む。拡散室70は、粉末の納入路60によって開封後の被包に直に接続する入口と、粉末の放出路80によって吸入口15に直に接続する出口とを含む。拡散室70は好ましくは球71を少なくとも1個、更に好ましくは複数個、例えば3個含む。この球71は拡散室70の中でその球用の経路に沿って動く。この経路は実質的に環状であり、納入路60と放出路80との方向を実質的に横断する一平面内に拡がっている。拡散室70は、接線方向に延びる吸気口を少なくとも1つ、好ましくは2つ含む。これらの吸気口を通って入ってくる空気の流れは拡散室70の中で渦を巻いて球71を回転させる。ユーザの吸入動作によって生じる空気の流れは、開封された被包から納入路60を通って拡散室70まで進入してきた空気及び粉末の流れと混ざる。こうして、この空気及び粉末の流れも拡散室70の中を回転するので、球71が粉末を砕く。その後、粉末は拡散室70から放出路80を通って吸入口15へ送られる。必須ではないが、
図1に示すように納入路60が放出路80と同軸であり、かつ一直線上に配置されている場合には特に、納入路60が拡散室70の中へ開口する位置に偏向板100が設けられてもよい。これにより、開封された被包からやって来る空気及び粉末の流れの向きを変えて、その空気及び粉末の流れが直に放出路80の中へ流入することを避けることができる。当然のことながら、納入路及び放出路を他の形状及び配置にすることも可能である。
【0018】
吸入器が作動すると割り出し歯車30が回転して次のブリスター21を、納入路60に面する位置へ運ぶ。それと同時に、割り出し歯車30の回転と相関する第2の回転回収部材50の回転によって封止層23が剥がされてブリスター21から除去される。好ましくは封止層は、静止している角部18に巻き付く。この角部は、割り出し歯車30及び第2の回転回収部材50が同時に回転するのと協働して、封止層23をその角部18の所で基層22から剥がし、又は剥離させる。割り出し歯車30よりも下流に位置する基層22は第1の回転回収部材40に巻き取られる。この結果、開封されたブリスター21は、納入路60に面した状態になる。ユーザが吸入動作を行うと、ある送気路を通して最初の気流が生じる。この気流が、開封されたブリスターを通過するので、粉末が空気及び粉末の流れとなって納入路60へ入る。ユーザの吸入動作は同時に、拡散室70へその接線方向の吸気口を通して進入する2次的な気流を生じさせる。この2次的な気流が拡散室70の中で球71を回転させる。空気及び粉末の流れがこの2次的な気流、及び拡散室70の中で動く球に衝突すると渦が生じ、この渦が粉末を流動化させて更に砕く。こうして粉末は最終的には吸入口15へと逃れて行く。
【0019】
当然のことながら、様々な流路の寸法及び方向は吸入器の特徴に応じて、その性能が最大限に発揮されるように最適化されればよい。
吸入器の動作の信頼性を保証するには、第1の回転回収部材40と第2の回転回収部材50とのそれぞれに巻き取られる基層22と封止層23とは張っていなければならない。しかしその一方で、ブリスター包装帯を本体10へ組み込む作業の間は、ブリスター包装帯のそれらの部分に張力が加わるのは避けたい。よって、
図1、すなわち組み込まれた後のブリスター包装帯の様子からわかるとおり、封止層23及び基層は両方とも緩められて、組み立てが簡単化されている。
【0020】
基層22及び第1の回収部材40の位置に渦巻バネが設けられ、組み立て後、基層に対して張力が加えられてもよい。
封止層23については、それは第2の回収部材50に固定されている。この部材は2つの部分で形成されている。第1の部分51は「剥離用歯車(roue de pelage, peeling wheel)」と呼ばれ、第2の部分52は「テンショナー」と呼ばれている。第2の部分52は第1の部分の上に組み込まれている。以降の説明ではこれら2つの部分を「剥離用歯車」51と「テンショナー」52という用語で呼ぶことにする。
【0021】
剥離用歯車51は中心にスリーブを含む。このスリーブは一端に、外歯57を備えた円板を含む。これらの外歯57は割り出し歯車30の歯(図示せず)とかみ合わされる。それにより、割り出し歯車が1回転するごとに剥離用歯車51が第1の方向へ回転する。剥離用歯車の円板は更に内歯56を含む。その目的は後述する。剥離用歯車はスリーブの別の一端にスナップ留め用の形状部分58を含む。
【0022】
テンショナー52は中心に円筒形の空洞を含む。この空洞は剥離用歯車の中心のスリーブの周りに組み込まれ、その上端が、
図7、8に見られるように、剥離用歯車のスナップ留め用の形状部分58の下にスナップ留めされる。テンショナーは反対側の端部に2本の柔らかい指状部材55を含む。これらは好ましくは径方向で互いに反対側に位置し、剥離用歯車の内歯56と協働して歯止めを形成する。こうしてテンショナー52は剥離用歯車51のまわりを第1の方向へのみ回転する。テンショナーは更に、ブリスター包装帯の封止層23の先端を留めるための留め具53と、封止層23が巻き取られるにつれて径方向に縮むように変形可能な柔らかい翼状部材54とを含む。これらの柔らかい翼状部材54が徐々に変形することにより、剥離用歯車51が一定のサイズずつ回転を繰り返すうちに、巻き取られた封止層の外径が増大しても、封止層を張られた状態に保つことができる。
【0023】
組み立て作業の間、封止層は緩められているので、その組み立て作業は簡単化される。剥離用歯車51の回転を直に、または割り出し歯車30の回転を阻止することによって阻止する。そのとき、テンショナー52を剥離用歯車51に対して第1の方向へ回転させることにより、封止層23を張る。その張る作業を
図3、4に示す。その後、剥離用歯車51が第1の方向へ回転するごとにテンショナー52が回転するので、封止層23は第2の回転回収部材50に徐々に巻き取られる。
【0024】
当業者であれば、添付の特許請求の範囲において定義された本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を施すことが可能である。