(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記半芳香族、半結晶性熱可塑性ポリイミドが、モノマー(a)及び(b)から得られる少なくとも1種のカルボン酸アンモニウム塩の重合によって得られることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド。
2つの無水物官能基を含む前記芳香族化合物が、以下:無水ピロメリト酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物及び2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンテトラカルボン酸二無水物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリイミド。
前記2つの無水物官能基から誘導されるカルボン酸官能基を含む前記芳香族化合物が、以下:ピロメリト酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸、2,2’−ビス(3,4−ビカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンテトラカルボン酸からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリイミド。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第一の実施形態によれば、本発明は、モノマー(a)及び(b)から得られる少なくとも1種のカルボン酸アンモニウム塩の重合によって得られる半芳香族半結晶性熱可塑性ポリイミドに関し、ここで、(a)は、芳香族テトラカルボン酸化合物であり、また(b)は、式(I)NH
2−R−NH
2(式中、Rは、飽和若しくは不飽和二価脂肪族炭化水素基であり、任意選択でヘテロ原子を含む)のジアミンであって、2つのアミン官能基が、少なくとも13個の炭素原子で隔てられ、基R中の炭素原子の総数が13〜22である、ジアミンである。特に、重合は、1種又は2種のカルボン酸アンモニウム塩、あるいは1種のみのカルボン酸アンモニウム塩を含み、これは、任意選択で不均衡化されている、及び/又は鎖制限剤を含有する。
【0011】
本発明はまた、前述した重合によって得られる半芳香族半結晶性熱可塑性ポリイミドの製造方法にも関する。本発明はさらに、前述の方法によって得ることができるポリイミドにも関する。
【0012】
また、本発明は、少なくともモノマー(a)及び(b)から得られるカルボン酸アンモニウム塩、特に、モノマー(a)及び(b)と、少なくとも1種の鎖制限剤を含む、あるいは、これらから構成されるカルボン酸アンモニウム混合塩にも関する。
【0013】
さらに、本発明は、重量基準の吸水率が低い組成物又は製品の製造を目的とする、本明細書に記載されているか、又は本発明に従う半芳香族半結晶性熱可塑性ポリイミドの使用にも関する。
【0014】
定義
用語「半結晶性」は、非晶相と結晶相を有し、例えば、1%〜85%の結晶度を有するポリイミドを指す。
【0015】
用語「熱可塑性ポリイミド」は、それを超えると、材料が軟化して、融解し、それを下回ると、硬化する温度を有するポリイミドを意味する。
【0016】
ポリイミドの融点の決定は、好ましくは、Perkin−Elmer Pyris 1装置を用いて、示差走査熱量測定(DSC)により測定した融解吸熱のピークで温度を測定することによって実施するが、その際、コポリイミドは、20℃から、10℃/分の速度で加熱する。
【0017】
1種のみのジアミンと、2つの無水物官能基又は誘導体を含む芳香族化合物から得られるポリイミドは、一般にホモポリイミドとして知られるポリイミドである。少なくとも3種の異なるモノマー同士の反応によって、コポリイミドが生成される。(コ)ポリイミドは、各構成モノマーのモル組成によって定義されうる。
【0018】
本発明の目的のために、「23℃での含浸時の重量基準での低い吸水率」という用語は、23℃で1日、7日及び15日の含浸後、それぞれ、0.2、0.5及び0.75%以下の吸水率を意味する。
【0019】
モノマー
化合物(a)は、好ましくは、一般に、脱水反応によって、同一の分子上に2つの酸無水物官能基を形成することができるように、複数の位置にカルボン酸官能基を担持する。本発明の化合物は、一般に、2対のカルボン酸官能基を担持しており、各々の官能基対は、隣接する炭素原子、すなわちα及びβに結合している。テトラカルボン酸官能基は、無水物官能基の加水分解によって、酸二無水物から得ることができる。二無水物から得られる酸二無水物及びテトラカルボン酸の例は、米国特許第7,932,012号明細書に記載されている。
【0020】
また、本発明の化合物(a)は、官能基、特に、例えば、基−SO
3X(X=H又は陽イオン、例えば、Na、Li、Zn、Ag、Ca、Al、K又はMgなど)を担持してもよい。
【0021】
本発明の化合物(a)は、特に、テトラカルボン酸である。特に、これらは、カルボン酸以外の官能基を含まない。
【0022】
本発明の化合物(a)は、ただ1つの芳香環を含んでもよい。
【0023】
2つの無水物官能基を含む芳香族化合物は、好ましくは、以下:無水ピロメリト酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物及び2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンテトラカルボン酸二無水物からなる群から選択される。
【0024】
2つの無水物官能基から誘導されるカルボン酸官能基を含む芳香族化合物は、好ましくは、以下:ピロメリト酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸、2,2’−ビス(3,4−ビカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンテトラカルボン酸からなる群から選択される。
【0025】
有利には、化合物(a)は、テトラカルボン酸であり、その酸官能基は、脱水反応によって、2つの無水物官能基を形成することができるような官能基である。
【0026】
従って、本発明の式(I)NH
2−R−NH
2のジアミン(b)は、2つのアミン官能基を隔てる主鎖、及び任意選択で1つ又は複数のペンダント鎖(pendent chain)、すなわち側鎖を担持し;主鎖は少なくとも13個の炭素原子を含み、基R中の炭素原子の総数は、13〜22である。ジアミンの基Rは、飽和若しくは不飽和、線状若しくは分枝状、脂肪族若しくは脂環式のいずれであってもよく、任意選択でヘテロ原子を含む。基Rは、任意選択で、1個又は複数個のヘテロ原子、例えば、O、N、P若しくはS、及び/又はヒドロキシ、スルホン、ケトン、エーテル若しくはその他の官能基などの1個又は複数個の官能基を含んでもよい。
【0027】
本発明のジアミン(b)は、2つの1級アミン官能基を担持するのが好ましい。
【0028】
ジアミン(b)は、好ましくは、以下:1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクトデカン、1,19−ジアミノノナデカン及び1,20−ジアミノエイコサンからなる群から選択する。
【0029】
特に、ジアミンは、14〜16個の炭素原子を含み、特に、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン及び1,16−ジアミノヘキサデカンから選択する。これにより、特に、10℃/分で測定して、Tgが85℃以下、あるいは80℃以下のポリイミドを取得することが可能になる。これは、高い柔軟性、ガラス状態及びゴム状領域(rubbery plateau)での低い弾性率、高い耐薬品性並びに可能な限り低い融点が有用であるか、又は必要である用途、例えば、押出方法によるフレキシブルチューブの製造において、特に有利である。第1及び第2の実施形態を組み合わせてもよい。
【0030】
特定の実施形態によれば、ポリアミドは、以下:無水ピロメリト酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリト酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、及び2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸から選択されるモノマー(a)(特に、モノマー(a)は、ピロメリト酸である)と、炭素数14〜16のジアミンであるモノマー(b)から得られる。最も具体的には、ピロメリト酸の塩と、炭素数14〜16のアミンの塩を用いる。
【0031】
これによって、特に、融点が200〜280℃の半結晶性ポリイミドを得ることが可能になる。
【0032】
挙げることができるヘテロ原子を含むジアミンの例としては、例えば、Huntsmanから販売されているJeffamine(登録商標)及びElastamine(登録商標)などのポリエーテルジアミンがある。エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はテトラメチレンオキシド単位から構成される様々なポリエーテルがある。
【0033】
様々なタイプのモノマー(a)及び/又は(b)を用いることにより、コポリイミドを取得することができ;あるいはまた、イミド官能基を取得するのに好適な他のタイプのモノマーを追加することも可能である。
【0034】
前述した2つのモノマー(a)及び(b)同士の反応によって形成されるカルボン酸アンモニウム塩を調製することも勿論可能である。このような塩は、当分野では公知の様々な方法で合成することができる。
【0035】
本発明の目的のために、「カルボン酸アンモニウム塩」という用語は、ジアミン及び四酸種が、共有結合ではなく、特に−COO
−H
3+N−タイプの極性相互作用だけによって結合された塩を意味する。さらに具体的には、塩は、共有結合によって結合していないジアミン及び四酸を含む。特に、塩は、以下の構造を有していてもよく、式中、Arは芳香族基を表す:
【0036】
例えば、化合物(a)を含む溶液に、ジアミン(b)を添加することが可能である。また、アルコール、例えば、エタノール又はメタノールなどの溶剤に化合物(a)を溶解させること、及びジアミン(b)に同様のことをすることも可能である。次に、これら2つの溶液を撹拌しながら一緒に混合する。形成されるカルボン酸アンモニウム塩は、使用する溶媒に不溶性であってもよく、従って沈殿しうる。その後、塩を濾過により回収し、洗浄及び乾燥させ、任意選択で粉砕してもよい。
【0037】
また、カルボン酸アンモニウム塩の溶液を調製し、高温の間に濃縮した後、冷却することも可能である。続いて、塩が結晶化した後、結晶を回収し、乾燥させる。水若しくはアルコールなどの溶媒を蒸発させるか、又は別の方法に従い、化合物(a)及び/又はジアミン(b)を添加することによって、溶液の濃縮物を取得してもよい。また、溶液の飽和を実施する、すなわち、溶液中の塩の濃度を、その結晶化と適合可能な値に変更するための方法を実施することも可能である。一般に、この濃度は、該当する温度での塩の飽和濃度と少なくとも同じであり、より好ましくはこれより高い。さらに詳細には、この濃度は、塩溶液の過飽和に一致する。また、水若しくはアルコールなどの溶媒を蒸発させて、溶液を飽和させ、結晶化をもたらすことができるような圧力で実施することも可能である。さらに、塩溶液に、化合物(a)及びジアミン(b)の蒸気を順次又は同時に添加することによって溶液を飽和させることも可能である。
【0038】
例えば、第1媒質中のアルコール、例えば、エタノールに化合物(a)を溶解させる。別の媒質中のアルコールにジアミン(b)を溶解させた後、2つの媒質を撹拌しながら混合する。形成された塩は沈殿する。
【0039】
この合成の終了時に、塩は、乾燥粉末状、溶媒中に分散した粉末状、又は溶液に溶解した状態のいずれであってもよい。沈殿物の場合には塩を濾過によって回収し、必要であれば、濾過ケークを粉砕してもよい。塩を溶液に溶解させる場合、濃縮若しくは過飽和によって、又はこれを非溶媒の添加により沈殿させることによって、回収してもよい。次に、結晶性塩を濾過により回収し、必要であれば、濾過ケークを粉砕してもよい。乾燥塩の分散粒子を回収するための別の方法は、溶液の噴霧、すなわち、特に、微細な液滴の形態で噴霧される溶媒の急速蒸発の実施によって、分散した塩粒子を回収するものである。
【0040】
最後に、例えば、篩い分け又はミル粉砕によって塩の粒度をスクリーニングすることができる。
【0041】
当業者には公知の標準的方法に従い、重合方法を実施してもよい。
【0042】
任意選択で1つ又は複数の特定の実施形態と組み合わせた有利な変形形態によれば、塩を固相で重合することが可能である。これらの方法の基本原理は、空気又は不活性雰囲気又は真空下で、出発塩を、その融点より低いが、重合反応を可能にするのに十分な温度(一般に、ポリイミドのガラス転移温度より高い)にすることにある。従って、このような重合方法は、手短には、以下:
a)伝導性拡散若しくは対流拡散又は照射により生成物を加熱するステップ、
b)真空の適用、窒素、CO
2若しくは過熱蒸気などの中性ガスでのフラッシング、又は正圧の適用によって、不活性にするステップ、
c)蒸発により濃縮副産物を除去した後、キャリアガスでフラッシングするか、又は気相を濃縮するステップ、
d)固相を機械的に撹拌するか、又はキャリアガスで流体化させるステップ
を含み、あるいは、熱及び質量移動を改善すると共に、微粉化した固体の凝集の一切の危険性を防止するために、振動が望ましい場合もある。
【0043】
重合中の絶対圧力は、0.005MPa〜0.2MPであるのが好ましい。重合中の温度は、50℃〜250℃であるのが好ましい。
【0044】
好ましくは、重合中に、ポリイミド塩の粒子の凝集を防止する目的で、これらの粒子を運動状態で維持するための手段を用いる。このために、撹拌器などの機械的撹拌、反応器の回転、又は振動による撹拌、又はキャリアガスを用いた流体化を利用してもよい。
【0045】
特定の実施形態によれば、ポリイミドは、モノマー(a)及び(b)から得られるカルボン酸アンモニウム塩、特に、乾燥塩を含む重合によって得られる。本発明の目的のために、「乾燥塩」という用語は、重合が、溶液状若しくは溶媒中の懸濁状、又は溶融状のいずれでも実施されないことを意味する。特に、重合は、反応器中に導入した粉末への溶媒の添加を含まない。
【0046】
ポリイミドの数平均モル質量Mnは、500g/モル〜50,000g/モルの範囲であってよい。
【0047】
数平均モル質量の制御は、以下:
− 鎖制限剤、すなわち、モノアミン、一無水物、一酸若しくはα,β位置の二酸から選択された分子を用いて、これらが、脱水反応により無水物官能基を形成することができるようにすることによって;鎖制限剤としては、無水フタル酸、1,2−ベンゼンジカルボン酸若しくはオルト−フタル酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ステアリン酸、ベンジルアミン、1−アミノペンタン、1−アミノヘキサン、1−アミノヘプタン、1−アミノオクタン、1−アミノノナン、1−アミノデカン、1−アミノウンデカン及び1−アミノドデカン、ベンジルアミン、並びにこれらの混合物が挙げられ、
− 化学量論的不均衡r=[化合物(a)]/[ジアミン(b)]により、
− 分岐剤、すなわち、3を超える官能価を有する分子の使用により、
− 滞留時間、温度、湿度若しくは圧力など、合成操作条件の調節により、
− これらの様々な手段の組合せにより、
達成することができる。
【0048】
特に、化学量論的不均衡rは、1.01〜1.2の範囲であってよい。すなわち、不均衡は、モノマー(a)、より具体的にはテトラカルボン酸の過剰量に関連する。
【0049】
特定の実施形態によれば、モノマー、より具体的には、塩に:
− 少なくとも1種の鎖制限剤を添加する、及び/又は
− 化学量論的不均衡を形成する、すなわち、rが1ではないようにするために、モノマーの1つを過剰量で添加する。
【0050】
変形形態によれば、既に形成されたステップ(a)の塩に、鎖制限剤及び/又は化学量論的過剰量を添加する。
【0051】
別の変形形態によれば、鎖制限剤及び/又は化学量論的過剰量のモノマーの1つも塩の形態であり、特に、これは、脂肪族ジアミン及び/又はテトラカルボン酸と塩を形成する。従って、これは、化学量論的不均衡を有する塩及び/又は脂肪族ジアミン、テトラカルボン酸及び鎖制限剤の共塩(co−salt)若しくは混合塩である。特に、鎖制限剤及び/又は化学量論的過剰量は、ステップ(a)の塩の形成中に存在し、それに対応する種と同時に、例えば、酸タイプの制限剤はテトラカルボン酸と、また、アミンタイプの制限剤は脂肪族ジアミンと同時に、混合物に添加する。
【0052】
この第2の態様では、鎖制限剤は、塩の形成を可能にし、特に、無水物を除く前述のリストから選択することができる。
【0053】
鎖制限剤の含有率は、モノマー(a)、(b)及び(c)並びに鎖制限剤、又はより具体的には、テトラカルボン酸、ジアミン及び鎖制限剤の総モル数に対して、0.1%〜10%のモル数、特に、1%〜5%のモル数であってよい。
【0054】
鎖制限剤を用いる場合、アミンと酸の量を均衡化することができる。すなわち、アミン官能基の合計が、これらが反応することができる酸官能基の合計の半分と実質的に等しくなるようにする。「実質的に等しい」という用語は、1%の最大差を意味する。
【0055】
鎖制限剤を用いる場合、アミンと酸の量を不均衡化してもよい。すなわち、アミン官能基の合計が、これらが反応することができる酸官能基の合計の半分とは実質的に異なるようにする。「実質的に異なる」という用語は、少なくとも1%の差を意味する。
【0056】
従って、本発明の主題は、さらに、テトラカルボン酸及びジアミンの塩であって:
− 鎖制限剤も存在し、及び/又は
− 化学量論的不均衡、特に、過剰量のテトラカルボン酸を有する
塩、並びにまた、(コ)ポリイミドを形成するためのこのような塩の使用、及びこうした塩を用いて(コ)ポリイミドを製造する方法である。
【0057】
化学量の制御は、製造工程のどの時点で実施してもよい。
【0058】
触媒を用いてもよく、これは、例えば、化合物(a)、及び/若しくはジアミン(b)との混合物として、形成される塩との混合物として、溶液として、又は固相含浸のいずれかによって、工程のどの時点で添加してもよい。
【0059】
さらに、例えば、米国特許第2710853号明細書に記載されているように、溶融重合を形成することにより、ポリイミドを得ることも可能である。また、特に、二段階で、溶媒中でポリイミドを合成するための従来の方法により、例えば、ポリアミック酸を介して進行させることにより、溶媒重合を実施してもよい。
【0060】
組成物
一般に、様々な化合物、充填材及び/又は添加剤を混合することによって一般に得られる組成物を製造するのに、本発明のポリイミドを用いてもよい。この方法は、様々な化合物の性質に応じて、幾分高温かつ幾分高いせん断力で実施する。化合物は、同時又は順次導入することができる。一般に、押出装置を用い、その中で材料を加熱して、溶融させ、所定のせん断力に付した後、運搬する。特定の実施形態によれば、最終組成物の調製前に、任意選択により溶融状態で、プレブレンドすることが可能である。例えば、樹脂中の、例えば、ポリイミドのプレブレンドを調製することによって、マスターバッチを製造することができる。
【0061】
従って、本発明はまた、ポリイミドを補強材若しくは増量剤及び/又は衝撃改質剤及び/又は添加剤と一緒に、任意選択により溶融状態で、混合することによって組成物を製造する方法にも関する。さらに本発明は、少なくともポリイミド、補強材若しくは増量剤及び/又は衝撃改質剤及び/又は添加剤を含む組成物にも関する。
【0062】
本発明の組成物は、1種又は複数種の他のポリマーを含んでもよい。
【0063】
本発明の組成物は、組成物の全重量に対して、20〜90重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは35〜65重量%の本発明のポリイミドを含みうる。
【0064】
本組成物は、さらに補強材又は増量剤を含みうる。補強材又は増量剤は、熱可塑性組成物、特に、ポリアミドを基材とする熱可塑性組成物の生産に通常用いられる充填材である。特に、以下のものが挙げられる:ガラス繊維、炭素繊維若しくは有機繊維などの繊維補強材、粒状若しくは層状充填材及び/又は剥離性若しくは非剥離性ナノ充填材などの非繊維補強材、例えば、アルミナ、カーボンブラック、粘土、リン酸ジルコニウム、カオリン、炭酸カルシウム、銅、珪藻土、グラファイト、雲母、シリカ、二酸化チタン、ゼオライト、タルク、珪灰石など、例えば、ジメタクリレート粒子、ガラスビーズ若しくはガラス粉末などのポリマー充填材。特に、ガラス繊維などの強化繊維を用いるのが好ましい。
【0065】
本発明の組成物は、組成物の全重量に対して、5〜60重量%、好ましくは10〜40重量%の補強材又は増量剤を含んでよい。
【0066】
上に定義したポリイミドを含む本発明の組成物は、少なくとも1種の衝撃改質剤、すなわち、ポリイミド組成物の衝撃強さを改変することができる化合物を含んでもよい。これらの衝撃改質剤は、好ましくは、ポリイミドと反応性の官能基を含む。「ポリイミドと反応性の官能基」という用語は、本発明によれば、特に、共有結合、イオン若しくは水素結合相互作用、又はファンデルワールス結合によって、ポリイミドの無水物、酸若しくはアミン残留官能基と反応することができるか、又は化学的に相互作用することができる基を意味する。このような反応性の基によって、ポリイミドマトリックス中の衝撃改質剤の優れた分散を確実にすることが可能になる。例として、無水物、エポキシド、エステル、アミン及びカルボン酸官能基、並びにカルボン酸又はスルホン酸誘導体を挙げることができる。
【0067】
本発明の組成物は、さらに、ポリイミド又はポリアミド組成物の製造に通常用いられる添加剤を含んでもよい。このようなものとして、潤滑剤、難燃剤、可塑剤、核形成剤、紫外線抑制剤、触媒、抗酸化剤、帯電防止剤、染料、不透明化剤、成形補助剤又はその他の常用の添加剤を挙げることができる。
【0068】
これらの充填材、耐衝撃強化剤及び添加剤は、例えば、造塩中、造塩後、重合中、又は溶融混合物として、プラスチック工学の分野で公知の好適な常用の手段により、ポリイミドに添加することができる。
【0069】
ポリイミド組成物は、一般に、組成物に含有させる様々な化合物を加熱なしでブレンドするか、又は溶融状態でブレンドすることによって得られる。この方法は、様々な化合物の性質に応じて、幾分高温かつ幾分高いせん断力で実施する。化合物は、同時又は順次導入することができる。一般に、押出装置を用い、その中で材料を加熱し、次に融解させて、所定のせん断力に付した後、運搬する。
【0070】
単一操作、例えば、押出操作中に、すべての化合物を溶融相でブレンドすることが可能である。例えば、ポリマー材料の顆粒をブレンドし、押出装置に導入することにより、これらを融解させて、幾分高いせん断に付すことが可能である。特定の実施形態によれば、最終組成物の調製前に、溶融又は非溶融状態で、化合物のいくつかのプレブレンドを実施することが可能である。
【0071】
適用
本発明のポリイミド又は様々な組成物は、プラスチック製品の製造を目的とするあらゆる造形方法に用いることができる。特に、射出又は溶融押出成形のように優れた流動性が望ましい場合には、(コ)ポリイミドは不均衡化していてもよく、及び/又は鎖制限剤を含んでもよい。
【0072】
従って、本発明は、本発明のポリイミドを用いた、プラスチック製品の製造方法にも関する。このために、特に、例えば、自動車両又は電子工学及び電気分野での、成形方法、特に、射出成形、押出成形、押出−吹込み成形、あるいはまた、回転成形などの様々な方法を挙げることができる。押出成形方法は、特に、紡糸方法又はフィルムの製造方法であってよい。
【0073】
本発明は、例えば、含浸布タイプの製品又は連続繊維を含む複合材製品の製造に関する。これらの製品は、特に、布と、固体若しくは溶融状態の本発明のポリイミドを接触させることによって、製造することができる。布は、例えば、特に、接着剤結合、フェルト製造、組紐、織込み又は編込みなどのいずれかの方法によって、一体化されたヤーン若しくは繊維をアセンブリングすることによって得られる織物面である。これらの布は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維などを基材とする繊維又はフィラメントネットワークとも呼ばれる。これらの構造は、ランダム、一方向性(1D)又は多方向性(2D、2.5D、3Dなど)であってもよい。
【0074】
本発明の原理の理解を容易にするために、本明細書では、専門用語を用いる。しかし、こうした専門用語の使用により、本発明の範囲の限定が意図されるわけではないことは理解すべきである。特に、関連する技術分野に精通した者によって、その一般的知識に基づき、変更形態、改善形態及び改良形態が考慮されうる。
【0075】
用語「及び/又は」は、「及び」、「又は」の意味、並びにこの用語に関連する要素の考えられるあらゆる他の組合せを包含する。
【0076】
本発明のその他の詳細又は利点は、純粋に説明のために以下に記載する実施例に照らして、さらにはっきりと明らかになるであろう。
【実施例】
【0077】
測定基準:
10℃/分の速度でPerkin Elmer Pyris 1装置を用いて、示差走査熱量測定(DSC)により、ポリイミドの融点(Tf)及び冷却時の結晶化温度(Tc)を決定する。ポリイミドのTf及びTcは、融解及び結晶ピークの頂点で決定する。ガラス転移温度(Tg)を40℃/分の速度で同じ装置により決定する(可能であれば、10℃/分で決定し、実施例に記載する)。測定は、T>(ポリイミドのTf+20℃)で、形成したポリイミドを融解させた後に実施する。
【0078】
塩の融点の決定の場合には、塩を10℃/分で加熱することにより測定される吸熱の終了温度を考慮する。
【0079】
比重測定法分析(TGA:thermogravimetric analysis)を、Perkin−Elmer TGA7装置により、約10mgのサンプルについて実施する。使用の詳細な条件(温度、時間、加熱速度)は、実施例に明記する。
【0080】
比重測定法分析によって、ポリイミドの熱安定性を決定することが可能になるが、ここでは、以下の方法で、ポリイミドへの塩の変換反応の収率を計算するために用いる:
− 本発明の方法によって重合した塩のサンプルを30℃から300℃まで10℃/分で加熱する。観察される質量減少の測定値をy%と表示する。
− η=(1+x)/(1+y)−1(xは、反復単位PIのモル質量に対する「PI塩」(g/モル)のモル質量の比である)を計算することによる反応度ηの決定。例えば、ピロメリト酸(PMA)及び1,13−ジアミノトリデカンから得られるPI 13PMAの場合、x=15.38%。
【0081】
形成されたポリイミドの粉末について、Brueker Vector22装置(反射型、ATR Diamant)でフーリエ変換赤外分光(FTIR)分析を実施する。
【0082】
乾燥方式のSympatec Helos H1302装置で、窒素2バールの分散圧を用いて、粒度分析を実施する。
【0083】
実施例1:純粋エタノール中に合成される塩13PMAからのポリイミドPI13PMAの調製
99%1,13−トリデカンジカルボン酸(Zibo Guangtong Chem)のニトリル化、続く水素化によって、1,13−ジアミノトリデカンを合成する。C13ジアミンの純度は93%である。
【0084】
40g(0.15モル)の94.9%ピロメリト酸と2リットルの純粋エタノールを5L反応器に導入する。窒素で穏やかにフラッシングしながら、反応媒質を撹拌し、70℃に加熱する。34.5g(0.15モル)の93%1,13−ジアミノトリデカンを1L丸底フラスコ中の500mLの純粋エタノールに室温で溶解させる。次に、この溶液を、5L反応器に接続させた滴下漏斗に導入し、ピロメリト酸のエタノール溶液に1時間かけて滴下しながら添加する。ジアミンとピロメリト酸の接触によって、塩が形成されて、沈殿するが、これを直ちに撹拌する。反応媒質を激しく撹拌しながら、窒素下、70℃で3時間30分維持する。
【0085】
塩粉末を、Buechner漏斗を通した濾過により回収し、エタノールで洗浄し、粉砕した後、真空下、50℃で一晩乾燥させる。反応器を空にする際の損失のために、質量収率は85%である。粉末は微粒で白色である。塩の融点は230℃である。
【0086】
重合
蒸発器(rotavapor)に取り付けた管状フラスコに13PMA塩粉末を導入し、窒素の穏やかなフラッシュ下に置く。圧力は、大気圧と同じである。フラスコを200℃の油浴に浸し、8時間回転させる。得られたPI13PMA粉末は、白色で、完全に乾燥している。粒子は、179μmの中央粒径D50を呈示する。40℃から300℃まで10℃/分で加熱することにより、最終生成物についてTGA分析を実施する。検出可能な質量減少は見られず、これは、13PMA塩粉末がPI13PMA粉末に量的に変換されたことを示している。
【0087】
PI13PMA粉末のFTIR分析は、1700及び1767cm
−1でイミド官能基の特徴的吸収バンドを有し、アミン官能基の特徴的吸収バンドの非存在がみとめられる。
【0088】
PI13PMA粉末は、融点271℃(融解熱ΔHf=36J/g)、結晶化温度238℃及びTg=93℃を有する。
【0089】
押出成形
こうして調製したPI13PMA10gを、スクリュー速度が100rpmで、300℃に予熱したDSM MIDI2000二軸マイクロ押出機(マイクロコンパウンダ(micro−compounder))(容積15cm
3)に配置することによって、PI13PMA粉末をロッド状に押出成形する。
【0090】
粉末から押し出したPI13PMAロッドの融点は、270℃、すなわち、押出前のPI13PMA粉末の融点と同じである。融点303℃及びTc274℃を有し、より高い温度で使用しなければならない従来技術で公知のPI12PMAと比較して、PI13PMAを用いた方が、押出の実施が容易であることがわかるであろう。
【0091】
射出
「マイクロコンパウンダ」と組み合わせた精密射出成形機を用いて、PI13PMA粉末を以下のように射出する:PI13PMAを温度300℃で融解させ、200℃に設定した型に射出することによって、寸法80x12x2mm
3のバーを形成する。バーは硬質であるが、ある程度の柔軟性を有する。
【0092】
吸水率
質量m0のバーを室温の脱塩水に浸漬することにより、浸漬時の重量基準の吸水率を実施する。所与の時間tの後、バーを取り出し、拭いてから、計量することによって、その質量mtを決定する:重量基準の吸水率を計算(mt−m0)/m0により決定する。質量mtがそれ以上変化しない時点で、平衡状態の吸水率が得られる。このようにして、PI13PMAの吸水率は、1、7及び15日の浸漬後にそれぞれ、0.12%、0.30%及び0.32%に達する。
【0093】
実施例2:純粋エタノール中で合成したPI14PMA、15PMA及び16PMAの塩からのポリイミドPI14PMA(実施例2A)、PI15PMA(実施例2B)及びPI16PMA(実施例2C)の調製
ジアミン:1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン及び1,16−ジアミノヘキサデカンを、それぞれ純度99%の1,14−テトラデカンジカルボン酸、純度96.8%の1,15−ペンタデカンジカルボン酸及び純度98.8%の1,16−ヘキサデカンジカルボン酸(Cathay Biotech,China)のニトリル化、及びこれに続く水素化により合成する。
【0094】
実施例1のプロトコルに従い、PI14PMA、15PMA及び16PMAの塩を調製する。蒸発器(rotavapor)に取り付けた管状の丸底フラスコに導入した塩を、撹拌及び窒素でフラッシングしながら、200℃で5時間加熱することによって、ポリイミドPI14PMA(実施例2A)、PI15PMA(実施例2B)及びPI16PMA(実施例2C)を取得する。
【0095】
PI14PMA、PI15PMA及びPI16PMA粉末は、それぞれ263℃、244℃、249℃に等しい融点、並びにそれぞれ245℃、228℃、230℃に等しい結晶化温度を有する。これらポリマーのTg値は、それぞれ、74℃(10℃/分で測定)、78℃/73℃(それぞれ、40℃/分及び10℃/分で測定)、並びに75℃/71℃(それぞれ、40℃/分及び10℃/分で測定)に等しい。高い柔軟性、ガラス状態及びゴム状領域での低い弾性率、高い耐薬品性、さらに可能な限り低い融点が要求される用途、例えば、押出成形法によるフレキシブルチューブの製造には、低いTgを有することが好ましい。従って、これは、長い炭素鎖を担持するこれらのジアミンの重要性及び利点を証明するものである。