特許第6077013号(P6077013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077013
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】アルカリ土類金属複合金属ビスアミド
(51)【国際特許分類】
   C07F 3/06 20060101AFI20170130BHJP
   C07D 211/10 20060101ALI20170130BHJP
   C07C 67/343 20060101ALN20170130BHJP
   C07C 69/65 20060101ALN20170130BHJP
   C07C 201/12 20060101ALN20170130BHJP
   C07C 205/12 20060101ALN20170130BHJP
   C07D 213/61 20060101ALN20170130BHJP
   C07D 239/30 20060101ALN20170130BHJP
   C07D 277/32 20060101ALN20170130BHJP
   C07D 333/56 20060101ALN20170130BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170130BHJP
【FI】
   C07F3/06CSP
   C07D211/10
   !C07C67/343
   !C07C69/65
   !C07C201/12
   !C07C205/12
   !C07D213/61
   !C07D239/30
   !C07D277/32
   !C07D333/56
   !C07B61/00 300
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-557025(P2014-557025)
(86)(22)【出願日】2013年2月13日
(65)【公表番号】特表2015-509937(P2015-509937A)
(43)【公表日】2015年4月2日
(86)【国際出願番号】EP2013052902
(87)【国際公開番号】WO2013120911
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2015年8月17日
(31)【優先権主張番号】12155977.7
(32)【優先日】2012年2月17日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】12171862.1
(32)【優先日】2012年6月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512137348
【氏名又は名称】バイエル・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Bayer Intellectual Property GmbH
(73)【特許権者】
【識別番号】507203353
【氏名又は名称】バイエル・クロップサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】230105223
【弁護士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】フオード,マーク・ジエイムズ
(72)【発明者】
【氏名】モスラン,マルク
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−526853(JP,A)
【文献】 特表2012−517972(JP,A)
【文献】 特表2015−506998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 1/00−19/00
C07D 211/00−211/98
C07C 67/00−69/96
C07C 201/00−207/04
C07D 213/00−213/90
C07D 239/00−239/96
C07D 277/00−277/84
C07D 333/00−333/80
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のアルカリ土類金属複合金属ビスアミドまたはその互変異性体を調製するため
の方法であって
【化1】

〔式中、
AEは、カルシウムおよびマグネシウムから選択されるアルカリ土類金属であり;
Mは、Znであり;
Xは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択されるハロゲン原子であり

およびRは、各々独立に、1〜2個のRラジカルにより置換されていてもよい
(C−C)アルキルからなる群から選択され;
は、独立に、ハロゲン、(C−C)アルコキシ、(C−C)ハロアルコキ
シおよび(C−C)ジアルキルアミノから選択され;
あるいは
およびRは、一緒に、−(CH−、−(CH−または−(CH
O(CH−基を形成し、ここで、これらの基の各々は、1〜4個のRラジカル
により置換されていてもよく;
は、ハロゲン、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C
)ハロアルコキシおよび(C−C)ジアルキルアミノまたは(C−C)アルコ
キシカルボニルから選択される〕、
式(II)のクロロアミン
【化2】

〔式中、RおよびRラジカルは、各々上に定義される通りである〕と、
(i)金属性マグネシウムおよび/またはカルシウムおよび/または
(ii)ハロゲン化マグネシウムおよび/またはカルシウムならびに
(iii)一定量の金属ハロゲン化物(Mn+)ならびに/または
(iv)一定量の金属(M)
(ここで、MおよびXは上に定義される通りである)との反応による前記方法。
【請求項2】
AEが、カルシウムおよびマグネシウムから選択されるアルカリ土類金属であり;
Mが、Znであり;
Xが、塩素および臭素から選択されるハロゲン原子であり;
およびRが、一緒に、−(CH−、−(CH−または−(CH
O(CH−基を形成し、ここで、これらの基の各々は、1〜4個のRラジカル
により置換されていてもよく;
が、メチル、エチル、n−プロピルおよびi−プロピルから選択される、請求項1
に記載の方法。
【請求項3】
AEが、カルシウムおよびマグネシウムから選択されるアルカリ土類金属であり;
Mが、Znであり;
Xが、塩素であり;
およびRが、一緒に、4個のメチル基で置換されている−(CH−基を形
成している、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
AEが、カルシウムまたはマグネシウムであり;
Mが、亜鉛であり;
Xが、塩素であり;かつ
およびRが、一緒に、−C(CH(CH−C(CH−基を形
成している、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
+20〜−20℃の温度範囲内で実行されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれ
かに記載の方法。
【請求項6】
前記反応が、THF、2−メチルテトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、1
,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテルおよびメチルシク
ロペンチルエーテル、またはその混合物から選択される配位性溶媒中で実施されることを
特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記反応が、THF、2−メチルテトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、1
,2−ジメトキシエタン、ジ−n−ブチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテルおよ
び/またはジエチルエーテルから選択される配位性溶媒と、芳香族化合物およびアルキル
置換芳香族化合物、およびアルカン、シクロアルカンおよび/またはアルキル置換シクロ
アルカンから選択される1以上の非配位性溶媒との混合物中で実施されることを特徴とす
る、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記芳香族化合物およびアルキル置換芳香族化合物が、ベンゼン、トルエン、キシレン
および/またはエチルベンゼンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アルカン、シクロアルカンおよび/またはアルキル置換シクロアルカンが、シクロ
ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタンおよび/またはメチルシクロヘキサンである、請
求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記方法がリチウム塩の存在下で実施されることを特徴とする、前記式(I)のAE複
合金属アミドの調製のための請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
式(I)のアルカリ土類金属複合金属ビスアミドおよび/またはその互変異性体、オリ
ゴマーおよび/またはポリマー
【化3】

〔式中、R、R、M、AEおよびXラジカルは、各々請求項1から4のいずれかに定義される通りである〕。
【請求項12】
式(I−iii)のアルカリ土類金属複合金属ビスアミドおよび/またはその互変異性
体、オリゴマーおよび/またはポリマー
【化4】

〔式中、AEは、カルシウムまたはマグネシウムであり、
Mは、Znであり;
Xは、塩素および臭素から選択されるハロゲン原子である〕。
【請求項13】
式(I−iv)のMg複合亜鉛ビスアミド。
【化5】
【請求項14】
式(I−v)のCa複合亜鉛ビスアミド。
【化6】
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか一項に記載の式(I)、(I−iii)、(I−iv)ま
たは(I−v)のアルカリ土類金属複合金属ビスアミドの、芳香族化合物、ヘテロ芳香族
化合物、アルケン、アルキンおよびその他の活性化C−H結合を有する有機化合物の金属
化のための塩基としての使用。
【請求項16】
リチウム塩の存在下での、請求項15に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)のアルカリ土類金属複合金属ビスアミド、その調製のための方法、ならびに、芳香族化合物、ヘテロ芳香族化合物、アルケン、アルキンおよびその他の活性化C−H結合を有する有機化合物の金属化のためのその使用に関する。
【化1】
【背景技術】
【0002】
芳香族および複素芳香族分子の調製は、その高い生物学的効力のために非常に重要である。結果的に、これらの構成要素は、多くの活性医薬および農薬材料の構成成分である。直接金属化は、芳香族化合物、ヘテロ芳香族化合物およびその他の活性化C−H結合を有する有機化合物の官能基化のための優れたツールとして確立されてきた。
【0003】
この目的のため、主にリチウムアルキルまたはリチウムアミドがこれまで塩基として使用されてきた。
【0004】
代替形態として、芳香族化合物およびヘテロ芳香族化合物のマグネシウム化および亜鉛化のための効率的な塩基が開発されている。亜鉛アミドまたはマグネシウムアミド塩基、例えば、Mg−TMPおよびZn−TMP(TMP=2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)の、塩化リチウムと複合体を形成したもの、例えば、TMPMgCl・LiCl、TMPZnCl・LiCl、TMPZn・2MgCl・2LiClは、国際公開第2010/092096号および同第2008/138946号において汎用金属化試薬として記載されている。それらは、非常に優れた化学選択性および位置選択性と相まって、非常に高い動力学的塩基性を有する。その上、亜鉛アミド塩基は、活性を失うことなく、保護ガス下でTHF中の溶液として数週間貯蔵することができる。
【0005】
これらの塩基の合成には、一般にアミン、例えばTMPが等モル量のブチルリチウムでリチウム化される。高コストのブチルリチウムのおかげで、その塩基は、多くの工業的合成には高価すぎる。そのため、高価なブチルリチウムを使用せずに済む、これらの塩基への好ましい経路に対する切迫した必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2010/092096号公報
【特許文献2】国際公開第2008/138946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この目的は、式(I)のアルカリ土類金属複合金属ビスアミドまたはその互変異性体を調製するための、
【化2】
【0008】
〔式中、
AEは、カルシウムおよびマグネシウムから選択されるアルカリ土類金属であり;
Mは、元素周期律表の第3族、第4族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族およびランタノイド族の金属から選択される金属であり;
Xは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択されるハロゲン原子であり;
およびRは、各々独立に、1〜2個のRラジカルにより置換されていてもよい(C−C)アルキルからなる群から選択され;
あるいは
およびRは、一緒に、−(CH−、−(CH−または−(CHO(CH−基を形成し、ここで、これらの基の各々は、1〜4個のRラジカルにより置換されていてもよく;
は、独立に、ハロゲン、(C−C)アルコキシ、(C−C)ハロアルコキシから選択され;
は、独立に、ハロゲン、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)ハロアルコキシおよび(C−C)ジアルキルアミノから選択される〕
式(II)のクロロアミン
【化3】
【0009】
〔式中、RおよびRラジカルは、各々上に定義される通りである〕と、
(i)金属性マグネシウムおよび/またはカルシウムならびに/あるいは
(ii)ハロゲン化マグネシウムおよび/またはカルシウムならびに
(iii)一定量(所望により式(II)のクロロアミンに基づく化学量論量以下)の金属(M)(すなわち、元素の形態)ならびに/または
(iv)一定量(所望により化学量論量以下)の金属ハロゲン化物(Mn+
(ここで、MおよびXは上に定義される通りである)
との反応による方法によって、本発明に従って達成された。
【0010】
アルカリ土類金属(AE)、好ましくはマグネシウムまたはカルシウム、および/または金属(M)、例えば亜鉛またはマンガンの酸化による挿入が、費用のかかるブチルリチウムを使用せずに済む本発明による方法を可能にする。
【0011】
ここで、指数nが、本発明による方法で使用されるどの金属ハロゲン化物(Mn+)においても、金属(M)の金属イオンの原子価に対応する整数であることは理解される。好ましくは、n=2、3または4、特に好ましくはn=2である。
【0012】
さらに、本発明による方法によって得られるマグネシウム複合−およびカルシウム複合金属ビスアミドは、穏和条件下での金属化に特に適している。したがって、それらは感受性のある(ヘテロ)芳香族化合物の変換に特に適し、感受性のある官能基、例えばニトロ、アルデヒドまたはFによって許容される(これは、対応するリチウム塩基またはマグネシウム塩基にはそうでないことが多い)。
【0013】
2−クロロ−3−ニトロピリジンと(TMP)Zn・2MgCl・2LiClの反応は、文献に記載されている(Angew.Chem.Int.Ed.2007,46,7685−7688参照)。金属化は、その中で−40℃で1.5時間実施され、その後に求電子物質との反応が続く。しかし、社内研究において、(TMP)Zn・2MgCl・2LiClをより高い温度で、特に10℃を上回る温度、例えば25℃で用いる2−クロロ−3−ニトロピリジンの金属化が、2−クロロ−3−ニトロピリジンの破壊につながることが示された。
対照的に、2−クロロ−3−ニトロピリジンの反応が、本発明の式(I)のアルカリ土類金属複合金属ビスアミドと同じ条件下で実施されるならば、所望の金属化は、10℃を上回る温度で非常に短時間で(具体例では:25℃で1分で)進行し、その後の求電子物質「E」との反応も同様である。そのような反応を、本発明の(TMP)Zn.MgClの例を用いて下に示す。
【化4】
【0014】
対応する金属化およびその後の4−ヨード安息香酸エチル(求電子物質「E」として)によるネギシカップリングにより、所望の化合物を収率58%で得た(下の例を参照されたい)。
【0015】
用語「ハロゲン」または「ハロゲン原子」は、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。この用語がラジカルに使用される場合、「ハロゲン」または「ハロゲン原子」は、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を意味する。
【0016】
アルキルは、直鎖、分枝状または環状のヒドロカルビルラジカルを意味する。「(C−C)アルキル」という表現は、例えば、炭素原子について述べられた範囲に従う、1〜4個の炭素原子を有するアルキルの簡潔な表記であり、例えば、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、2−メチルプロピル、tert−ブチル、シクロプロピルおよびシクロブチルラジカルを包含する。指定された炭素原子の範囲がそれよりも大きい一般的なアルキルラジカル、例えば、「(C−C)アルキル」は、相応してそれより多くの数の炭素原子をもつ直鎖、分枝状または環状のアルキルラジカルも包含する、すなわち、前記例によれば、5および6個の炭素原子を有するアルキルラジカルも包含する。
【0017】
具体的に述べられていない限り、複合ラジカル中を含む、アルキルラジカルなどのヒドロカルビルラジカルに関して、低級炭素骨格、例えば1〜6個の炭素原子を有する、または不飽和基の場合には2〜6個の炭素原子を有するものが好ましい。アルコキシ、ハロアルキルなどの複合ラジカル中を含むアルキルラジカルとは、例えば、メチル、エチル、シクロ−、n−もしくはi−プロピル、シクロ−、n−、i−、t−もしくは2−ブチル、ペンチル、ヘキシル、例えばシクロヘキシル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、および1,3−ジメチルブチルなど、ヘプチル、例えばシクロヘプチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシルおよび1,4−ジメチルペンチルなどを意味する。
【0018】
好ましい環状アルキルラジカルは、好ましくは3〜8個の環炭素原子を有する、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルである。置換されていてもよい環状アルキルラジカルの場合、置換基をもつ環系が含まれ、同様に、環状アルキルラジカルに二重結合を有する置換基、例えばメチリデンなどのアルキリデン基も含まれる。
【0019】
置換されていてもよい環状アルキルラジカルの場合、多環式脂肪族系、例えば、ビシクロ[1.1.0]ブタン−1−イル、ビシクロ[1.1.0]ブタン−2−イル、ビシクロ[2.1.0]ペンタン−1−イル、ビシクロ[2.1.0]ペンタン−2−イル、ビシクロ[2.1.0]ペンタン−5−イル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル(ノルボルニル)、アダマンタン−1−イルおよびアダマンタン−2−イルなども含まれる。
【0020】
置換されていてもよい環状アルキルラジカルの場合、スピロ環式脂肪族系、例えば、スピロ[2.2]ペンタ−1−イル、スピロ[2.3]ヘキス−1−イル、スピロ[2.3]ヘキス−4−イル、3−スピロ[2.3]ヘキス−5−イルも含まれる。
【0021】
アリールは、好ましくは6〜14個、特に6〜10個の環炭素原子を有する、単環式、二環式もしくは多環式芳香族系、例えば、フェニル、インダニル、ナフチル、アントリル、フェナントレニルおよび同類のものであり、好ましくはフェニルである。
【0022】
2以上のラジカルが1以上の環を形成する場合、これらは、炭素環式、複素環式、飽和、部分飽和、不飽和の、例えばまた芳香族化合物であってもよく、所望によりさらに置換されていてもよい。縮合環は、好ましくは5員もしくは6員環であり、特に好ましいのは、ベンゾ縮合環である。
【0023】
例として述べた置換基(「第1置換基レベル」)は、それらが炭化水素系部分を含有する場合、所望によりその中で、例えば第1置換基レベルについて定義されるような置換基の1つによってさらに置換されていてもよい(「第2置換基レベル」)。対応するさらなる置換基レベルが可能である。用語「置換ラジカル」は、1つだけ、または2つの置換基レベルを包含することが好ましい。
【0024】
置換基レベルに好ましい置換基は、例えば、ハロゲン、ニトロ、シアノアルキル、ジアルキルアミノ、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、ヘテロシクリルおよびトリアルキルシリルである。
【0025】
2以上の置換基レベルからなる置換基は、好ましくは、例えば、モノアルコキシアルキルまたはジアルコキシアルキルなどのアルコキシアルキル、モノアルコキシアルコキシまたはジアルコキシアルコキシなどのアルコキシアルコキシ、ベンジル、フェネチル、ベンジルオキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ハロアルコキシアルコキシ、ハロアルコキシアルキルである。
【0026】
炭素原子を有するラジカルの場合、1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子、特に1または2個の炭素原子を有するものが好ましい。一般に、ハロゲン、例えばフッ素および塩素、(C−C)アルキル、好ましくはメチルもしくはエチル、(C−C)ハロアルキル、好ましくはトリフルオロメチル、(C−C)アルコキシ、好ましくはメトキシもしくはエトキシ、(C−C)ハロアルコキシ、ニトロおよびシアノからなる群からの置換基が好ましい。特に、ここでは置換基メチル、メトキシ、フッ素および塩素が好ましい。
【0027】
一置換もしくは二置換アミノなどの置換アミノは、例えば、アルキル、アルコキシおよびアリールの群からの1個または2個の同一または異なるラジカルによってN−置換されている置換アミノラジカルの群からのラジカルであり;好ましくはジアルキルアミノおよびジアリールアミノ、例えば置換されていてもよいN−アルキル−N−アリールアミノ、および飽和N−複素環であり;1〜4個の炭素原子を有するアルキルラジカルが好ましい;アリールは、好ましくはフェニルまたは置換フェニルである。
【0028】
置換されていてもよいフェニルは、好ましくは、非置換であるか、あるいは、ハロゲン、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)アルコキシ−(C−C)アルコキシ、(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル、(C−C)ハロアルキル、(C−C)ハロアルコキシ、シアノおよびニトロ、例えば、o−、m−およびp−トリル、ジメチルフェニル、2−、3−および4−クロロフェニル、2−、3−および4−フルオロフェニル、2−、3−および4−トリフルオロメチル−ならびに−トリクロロメチルフェニル、2,4−、3,5−、2,5−および2,3−ジクロロフェニル、o−、m−およびp−メトキシフェニルの群からの同一または異なるラジカルによって一置換もしくは多置換されている、好ましくは三置換までのフェニルである。
【0029】
置換されていてもよいヘテロシクリルは、好ましくは、非置換であるか、あるいは、ハロゲン、シアノ、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)アルコキシ−(C−C)アルコキシ、(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル、(C−C)ハロアルキル、(C−C)ハロアルコキシ、ニトロおよびオキソの群からの同一または異なるラジカルによって一置換もしくは多置換されている、好ましくは三置換までのヘテロシクリルであり、特に、ハロゲン、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)ハロアルキルおよびオキソの群からのラジカルによって、非常に特に、1または2個の(C−C)アルキルラジカルによって、一置換もしくは多置換されている。
【0030】
ハロアルキルは、同一または異なるハロゲン原子、例えばモノハロアルキル、例えばCHCHCl、CHCHF、CHClCH、CHFCH、CHCl、CHFなど;ペルハロアルキル、例えばCClまたはCFまたはCFCFなど;ポリハロアルキル、例えばCHF、CHCHFCl、CHCl、CFCFH、CHCFなどによって部分的にまたは完全に置換されたアルキルである;ハロアルコキシは、例えば、OCF、OCHF、OCHF、OCFCF、OCHCFおよびOCHCHClである。
【0031】
式(I)のアルカリ土類金属複合金属ビスアミドの互変異性体は、個々の原子または原子群の移動によって急速に相互変換される異性体である、つまり、いくつかの異性体が相互と急速な化学平衡にある。急速な平衡のために、個々の互変異性体は孤立することができない場合が多い;相互に対する互変異性体の比は、一般に一定である。
【0032】
活性化C−H結合を有する有機化合物は、炭素原子に結合した水素原子をプロトンとして放出する、そのため、形式的な意味で、酸として機能する傾向の強い分子である。これは、例えば、炭素原子が、電子吸引性基、例えばカルボニル(エステル、ケトンまたはアルデヒド中)、スルホン、ニトリル、トリフルオロメチル基またはニトロ基などに強く結合する場合の例である。例えば、マロン酸(pKa=約13)またはアセチルアセトン(pKa=約9)の誘導体は、活性化C−H結合を有する。C−C多重結合は、炭素原子に近接する結果として、同様により強い分極化を確実にし、そのためα−アルケニルおよび−アルキニル基は、例えば、ビニルおよびプロパルギル基中で、CH活性化を導く。その上、芳香族系の形成もCHの酸度を増強することができる。
【0033】
式(I)の金属ビスアミドについて、例えば、下のスキーム1に示される互変異性体平衡を仮定することができる:
スキーム1:
【化5】
【0034】
そのため、式(I)はまた、形成される構造に配位性溶媒が含まれていてもよい、平衡に存在するすべての互変異性体(I−i、IおよびI−ii)および/またはそれらのオリゴマー複合体もしくはポリマー複合体を包含する。結合は、ハロゲン化物Xを介するか、または、窒素原子を介して形成されてよい。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明による方法は、下のスキーム2に示される、(TMP)Zn.MgClの調製の例によって説明される。
【0036】
スキーム2:
【化6】
【0037】
式(II)のクロロアミンは、先行技術、例えばBodor et al.Jour.Pharm.Sci.1974,63,1387;Kovacic et al.,Chemical Reviews 1970,70,6,639;Zakrzewski et al,Synthetic Communications 1988,18(16&17),2135;J.Org.Chem.1997,62,16,5631に記載される方法により得ることができる。JACS,1973,6400またはToshimasa et al.によるBull.Chem.Soc.Jap.,1972,45,1802およびDeno et al.JACS 1971,93,2065に記載されるように、対応する第二級アミンと次亜塩素酸塩を反応させることにより合成をもたらすことが好ましい。
【0038】
本発明の好ましい実施形態は、式(I)のカルシウム−もしくはマグネシウム複合金属ビスアミドおよびその互変異性体、ならびにその調製のための方法に関し、ここで、
AEは、カルシウムまたはマグネシウムであり、
Mは、Sc、Ti、Mn、Fe、CO、Ni、Cu、ZnおよびAlから選択される金属であり;
Xは、塩素および臭素から選択されるハロゲン原子であり;
およびRは、一緒に、これらの基の各々が1、2、3または4個のRラジカルにより置換されていてもよい、−(CH−、−(CH−または−(CHO(CH−基を形成し;その中で、
は、メチル、エチル、n−プロピルおよびi−プロピルから選択される。
【0039】
本発明の特に好ましい実施形態は、式(I)のカルシウム−もしくはマグネシウム複合金属ビスアミドおよびその互変異性体、ならびにその調製のための方法に関し、ここで、
AEは、カルシウムまたはマグネシウムであり、
Mは、Ti、Mn、Fe、ZnおよびAlから選択される金属であり;
Xは、塩素および臭素から選択されるハロゲン原子であり、好ましくは塩素であり;
およびRは、一緒に、4個のメチル基によって置換されている−(CH−基を形成する。
【0040】
非常に特に好ましいのは、式(II)のクロロアミンとして1−クロロ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを使用することである。
【0041】
本発明による方法は、好ましくは+20〜20℃の温度範囲内で実行される。反応は、好ましくは、10〜−10℃、より好ましくは5〜−5℃の範囲内の温度で実施される。
【0042】
反応は、好ましくは保護ガス雰囲気下、好ましくはエーテルおよび芳香族化合物、あるいは、そうでなければ、その混合物からなる群から選択される非プロトン性無水溶媒中で実施される。特に好ましいのは、配位性溶媒、例えば、THF、2−メチルテトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタンまたはジエチルエーテル、あるいは、そうでなければ、芳香族化合物、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンまたはキシレンとのその混合物、および/あるいは、そうでなければ、アルカンまたはシクロアルカンまたはアルキル−置換シクロアルカン、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、イソオクタンまたはメチルシクロヘキサンとのその混合物を用いることである。
【0043】
反応混合物の希釈は、好ましくは、AE複合金属ビスアミドの得られる溶液をその後の反応においてさらに濃縮することなく使用することができるように調節される。この場合、過剰なカルシウムもしくはマグネシウム粉末またはハロゲン化カルシウムもしくはマグネシウムおよび金属(M)または金属ハロゲン化物(Mn+)は、濾過またはデカントすることにより除去することが好ましい。
【0044】
式(II)のクロロアミンに基づいて、金属性アルカリ土類金属(AE)(i)および/または所望によりそのハロゲン化物(AEX)(ii)は、好ましくは(好ましくはわずかに)過剰に使用され、金属(M)(iv)および/または所望によりその金属ハロゲン化物(Mn+)(iii)は不足して使用される。
【0045】
本発明によれば、各等量(eq.)の式(II)のクロロアミンに対して、0.2〜5当量、好ましくは0.25〜2当量、より好ましくは0.5〜2当量、特に好ましくは0.5〜1.5当量の金属性マグネシウムおよび/またはカルシウム(i)ならびに/あるいはそのハロゲン化物(ii)を使用することが好ましい。
金属性マグネシウムおよび/またはカルシウムならびに/あるいはそのハロゲン化物(ii)の前述の同等物の代わりとして、またはそれに加えて、化学量論量以下の0.5〜0.9等量、好ましくは0.5〜0.7等量、より好ましくは0.5〜0.6等量の金属ハロゲン化物(Mn+)(iii)を使用することが好ましい。
【0046】
金属性マグネシウムおよび/またはカルシウムならびに/あるいはそのハロゲン化物(ii)の前述の同等物の代わりとして、またはそれに加えて、化学量論量以下の0.5〜0.9等量、好ましくは0.5〜0.7等量、より好ましくは0.5〜0.6等量の元素の形態の金属(M)(iv)を使用することが好ましい。
【0047】
本発明によれば、好ましい構成において、各等量の式(II)のクロロアミンに対して、0.25〜5当量、好ましくは0.4〜2当量、より好ましくは0.5〜1.5当量の金属性マグネシウムおよび/またはカルシウム(i)ならびに/あるいはそのハロゲン化物(ii)、さらにまた、各等量の式(II)のクロロアミンに対して、0.4〜6当量、好ましくは0.5〜5当量、より好ましくは1〜4当量の元素の形態の金属(M)(iv)を使用することが好ましい。
【0048】
本発明によれば、さらなる好ましい構成において、各等量の式(II)のクロロアミンに対して、1〜8当量、好ましくは2〜6当量、より好ましくは3〜5当量の元素の形態の金属(M)(iv)を使用することが好ましく、各等量の式(II)のクロロアミンに対して、0.2〜2当量、好ましくは0.25〜1.5当量、より好ましくは0.3〜0.9等量、特に好ましくは0.4〜0.7等量の金属性マグネシウムおよび/またはカルシウムを使用することが好ましい。
【0049】
アルカリ土類金属はまた、カルシウムおよびマグネシウム(i)またはそのハロゲン化物(ii)の混合物の形態で使用することもできる。マグネシウムおよびカルシウムおよび/またはそれらのハロゲン化物を組み合わせて使用することは、式(I)の化合物の混合物を得ることを可能にし、それは相乗作用のために、利点、例えば高い溶解度を有し得る。
【0050】
同様に、金属(M)(iv)またはそのハロゲン化物(Mn+)(iii)の混合物を使用することも可能である。
【0051】
金属マグネシウムは、反応において削りくず、ビーズまたは粉末の形態で使用することができる。高い活性表面積のために、マグネシウム粉末が好ましい。
【0052】
金属カルシウムは、一般に、反応においてカルシウム粉末の形態で使用される。本発明の状況において、フッ化カルシウム、塩化カルシウムまたは臭化カルシウムを使用することが好ましく、塩化カルシウムを使用することが特に好ましい。
【0053】
ハロゲン化マグネシウムは、フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウムおよびヨウ化マグネシウムから選択される。塩化マグネシウムまたは臭化マグネシウムを使用することが好ましく、塩化マグネシウムを使用することが特に好ましい。
【0054】
さらなる活性化のために、所望により活性化試薬を、単独で、あるいは、例えばi−BuAlH(DIBAL−H)、ジブロモエタンまたはヨウ素と組み合わせて加えることが可能である。
【0055】
本発明の状況において使用される金属(M)は、元素周期律表の第3族、第4族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族(IUPAC命名法)またはそのハロゲン化物、好ましくは塩化物、およびランタノイド族またはそのハロゲン化物、好ましくは塩化物の金属から選択される;この金属(M)は、好ましくは、Sc、Ti、Mn、Fe、CO、Ni、Cu、ZnおよびAlまたはそのハロゲン化物、好ましくは塩化物から選択される;この金属(M)は、より好ましくは、Ti、Mn、Fe、ZnおよびAlまたはそのハロゲン化物、好ましくは塩化物から選択される。本発明の状況において、亜鉛および塩化亜鉛(ZnCl)が特に重要である。その上、本発明の状況において、マンガン(Mn)およびハロゲン化マンガン、好ましくはMnClが特に重要である。
【0056】
好ましくは、本発明による方法は、式(II)のクロロアミン(上に定義される通り)と、
(i)金属性マグネシウムおよび/またはカルシウム、ならびに
(iv)一定量(好ましくは式(II)のクロロアミンに基づく化学量論量以下)の金属(M)(すなわち、元素の形態)との反応により、
(ii)ハロゲン化マグネシウムおよび/またはカルシウム
ならびに/あるいは
(iii)一定量(所望により式(II)のクロロアミンに基づく化学量論量以下)の金属ハロゲン化物(Mn+)、
(ここで、MおよびXは上に定義される通りであり、上述の好ましい実施形態において定義されるようなMおよびXが好ましい)
の随意のさらなる使用によって実施される。
【0057】
それらの特に有益であり、かつ、多くの場合優れた特性に起因して、本発明はまた、次式(I−iii)のアルカリ土類金属複合金属ビスアミドおよび/またはその互変異性体、オリゴマーおよび/またはポリマーにも関する。
【化7】
【0058】
〔式中、
AEは、カルシウムまたはマグネシウムであり、
Mは、Sc、Ti、Mn、Fe、CO、Ni、Cu、ZnおよびAlから選択される金属であり;
Xは、塩素および臭素から選択されるハロゲン原子、より好ましくは塩素である〕。
より特に、本発明はまた、式(I−iv)のMg複合亜鉛ビスアミドおよび式(I−v)のCa複合亜鉛ビスアミドにも関する:
【化8】
【0059】
本発明は、式(I)の本発明のアルカリ土類金属複合金属ビスアミドの、芳香族化合物およびその他の活性化C−H結合を有する有機化合物の金属化のための塩基としての使用をさらに提供する。その塩基度、選択性または活性は、調製または使用の過程の間に、リチウム塩、例えば塩化リチウム、クラウンエーテルまたはその他の配位性試薬の添加により、促進されるか、あるいは有利に影響を受け得る。
【0060】
本発明は、以下の実施例により詳細に説明される。
【0061】
[実施例]
0.5当量のMgによる(TMP)Zn.MgClの調製
マグネチックスターラーバーおよび隔壁を備えた、乾燥した、アルゴンを充填したシュレンク管の中に、マグネシウム粉末(325メッシュ−243mg、10mmol)および亜鉛粉末(5231mg、80mmol)を、無水THF(15ml)中で最初に装入し、DIBAL−H(0.1ml、THF中1M)の添加によって活性化させた。5分間撹拌した後、混合物を0℃に冷却し、撹拌を停止した。ヨウ素(65mg、0.25mmol)の添加の後、混合物を再び撹拌し、無水THF(15ml)中の1−クロロ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(TMPCl;3.51g、20mmol)を、注入ポンプ(速度:15ml/時)によって−5℃で滴下した。その後、反応混合物を25℃で30分間撹拌した。続いて、金属残渣をデカントして除去し、指示薬として安息香酸およびN−フェニル−4−(フェニルアゾ)アニリンで黄色の溶液を滴定した。濃度は0.48Mであった(収率=理論値の84%)。
0.5当量のCaによる(TMP)Zn.CaClの調製
マグネチックスターラーバーおよび隔壁を備えた、乾燥した、アルゴンを充填したシュレンク管の中に、カルシウム粉末(16メッシュ−401mg、10mmol)および亜鉛粉末(5231mg、80mmol)を無水THF(15ml)中で最初に装入し、DIBAL−H(0.1ml、THF中1M)の添加によって活性化させた。5分間撹拌した後、混合物を0℃に冷却し、撹拌を停止した。ヨウ素(65mg、0.25mmol)の添加の後、混合物を再び撹拌し、無水THF(15ml)中の1−クロロ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(TMPCl;3.51g、20mmol)を、注入ポンプ(速度:15ml/時)によって−5℃で滴下した。その後、反応混合物を25℃で30分間撹拌した。続いて、金属残渣をデカントして除去し、指示薬として安息香酸およびN−フェニル−4−(フェニルアゾ)アニリンで黄色の溶液を滴定した。濃度は0.50Mであった(収率=理論値の87%)。
【0062】
様々なヘテロ芳香族化合物の亜鉛化の例
5−ヨード−2,4,6−トリクロロピリミジンの調製
マグネチックスターラーバーおよび隔壁を備えた、乾燥した、アルゴンを充填したシュレンク管に、最初に無水THF(1ml)中の2,4,6−トリクロロピリミジン(184mg、1mmol)を装入する。(TMP)Zn・MgCl(3.16ml、1.2mmol)を25℃で添加した後、混合物を1時間撹拌する。次に、無水THF(2ml)に溶解したヨウ素の溶液(355mg、1.4mmol)を滴下し、反応混合物を25℃で1時間撹拌する。飽和NHCl水溶液(30ml)で希釈し、酢酸エチル(3×30ml)で抽出した後、合した有機相をNaSOで乾燥させ、溶媒の蒸留除去およびシリカゲル(ヘプタン:酢酸エチル)でのカラムクロマトグラフィーによる精製により、所望の化合物(240mg、理論値の78%)を無色の結晶生成物として得た。
13C NMR(100MHz、CDCl):δ=167.6、159.3、96.5ppm
2−(3−フルオロフェニル)−ベンゾチオフェン−3−カルボキサルデヒドの調製
マグネチックスターラーバーおよび隔壁を備えた、乾燥した、アルゴンを充填したシュレンク管に、最初に無水THF(1ml)中の1−ベンゾチオフェン−3−カルバルデヒド(163mg、1mmol)を装入する。(TMP)Zn.MgCl(3.16ml、1.2mmol)を25℃で添加した後、混合物を1時間撹拌し、次に1−フルオロ−3−ヨードベンゼン(311mg、1.4mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(17mg、3mol%)およびトリ−2−フリルホスフィン(14mg、6mol%)の無水THF(2ml)中の溶液を滴下し、混合物を25℃で一晩撹拌する。後処理のために、混合物を飽和NHCl水溶液(30ml)で希釈し、酢酸エチル(3×30ml)で抽出する。合した有機相をNaSOで乾燥させた後、溶媒を留去し、シリカゲル(ヘプタン:酢酸エチル)でのカラムクロマトグラフィーにより精製を達成し、所望の化合物(195mg、理論値の76%)を無色の結晶生成物として得た。
H NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=10.08(s,1H)、8.78(d,1H)、7.86(d,1H)、7.53(m,3H)、7.38(m,1H)、7.32(m,1H)、7.25(m,1H)
2−ブロモ−5−(4−クロロフェニル)−1,3−チアゾールの調製
マグネチックスターラーバーおよび隔壁を備えた、乾燥した、アルゴンを充填したシュレンク管に、最初に無水THF(2ml)中の1−ベンゾチオフェン−3−カルバルデヒド(163mg、1mmol)を装入する。(TMP)Zn.MgCl(3.16ml、1.2mmol)を25℃で添加した後、混合物を20分間撹拌し、次に1−クロロ−4−ヨードベンゼン(358mg、1.5mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(17mg、3mol%)およびトリ−2−フリルホスフィン(14mg、6mol%)の無水THF(4ml)中の溶液を滴下し、混合物を25℃で一晩撹拌する。後処理のために、混合物を飽和NHCl水溶液(30ml)で希釈し、酢酸エチル(3×30ml)で抽出する。合した有機相をNaSOで乾燥させた後、溶媒を留去し、シリカゲル(ヘプタン:酢酸エチル)でのカラムクロマトグラフィーにより精製を達成し、所望の化合物(195mg、理論値の71%)を無色の結晶生成物として得た。
H NMR(400MHz、DMSO−d):δ(ppm)=8.17(s,1H)、7.69(d,2H)、7.53(d,2H)
1,3−ジフルオロ−2−ヨード−4−ニトロベンゼンの調製
マグネチックスターラーバーおよび隔壁を備えた、乾燥した、アルゴンを充填したシュレンク管に、最初に無水THF(2ml)中の2,4−ジフルオロ−1−ニトロベンゼン(159mg、1mmol)を装入する。(TMP)Zn.MgCl(3.00ml、1.2mmol)を25℃で添加した後、混合物を30分間撹拌し、次に、ヨウ素(381mg、1.5mmol)の無水THF(2ml)中の溶液を滴下し、混合物を25℃で一晩撹拌する。後処理のために、混合物を飽和NHCl水溶液(30ml)で希釈し、飽和Na水溶液(30ml)および酢酸エチル(3×30ml)で抽出する。合した有機相をNaSOで乾燥させた後、溶媒を留去し、シリカゲル(ヘプタン:酢酸エチル)でのカラムクロマトグラフィーにより精製を達成し、所望の化合物(210mg、理論値の74%)を無色の結晶生成物として得た。
H NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=8.15(m,1H)、7.06(m,1H)
tert−ブチル3−(3−フルオロフェニル)プロプ−2−イノアートの調製
マグネチックスターラーバーおよび隔壁を備えた、乾燥した、アルゴンを充填したシュレンク管に、最初に無水THF(2ml)中のtert−ブチルプロプ−2−イノアート(70mg、0.56mmol)を装入する。(TMP)Zn.MgCl(2.2ml、1.2mmol)を25℃で添加した後、混合物を30分間撹拌し、次に、1−フルオロ−3−ヨードベンゼン(160mg、0.72mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(33mg、5mol%)の無水THF(2ml)中の溶液を滴下し、混合物を25℃で一晩撹拌する。後処理のために、混合物を飽和NHCl水溶液(30ml)で希釈し、酢酸エチル(3×30ml)で抽出する。合した有機相をNaSOで乾燥させた後、溶媒を留去し、シリカゲル(ヘプタン:酢酸エチル)でのカラムクロマトグラフィーにより精製を達成し、所望の化合物(91mg、理論値の75%)を無色の油状物質として得た。
H NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=7.34(m,2H)、7.26(m,1H)、7.13(m,1H)、1.53(s,9H)
エチル4−(2−クロロ−3−ニトロピリジン−4−イル)ベンゾエートの調製
マグネチックスターラーバーおよび隔壁を備えた、乾燥した、アルゴンを充填したシュレンク管に、最初に(TMP)Zn.MgCl(3.16ml、1.2mmol)を装入する。無水THF(2ml)中の2−クロロ−3−ニトロピリジン(159mg、1mmol)を25℃で添加した後、混合物を1分間撹拌し、次に4−ヨード安息香酸エチル(387mg、1.4mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(17mg、3mol%)およびトリ−2−フリルホスフィン(14mg、6mol%)の無水THF(2ml)中の溶液を滴下し、混合物を25℃で1時間撹拌する。後処理のために、混合物を飽和NHCl水溶液(30ml)で希釈し、酢酸エチル(3×30ml)で抽出する。合した有機相をNaSOで乾燥させた後、溶媒を留去し、シリカゲル(ヘプタン:酢酸エチル)でのカラムクロマトグラフィーにより精製を達成し、所望の化合物(177mg、理論値の58%)を黄色がかった油状物質として得た。
H NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=7.80(d,1H)、7.79(d,1H)、7.76(d,1H)、7.74(d,1H)、4.37(q,2H)、1.39(t,3H)。