【実施例】
【0351】
以下の実施例の多くは、多能性ヒト細胞の使用を記載する。多能性ヒト細胞を産生する方法は、当該技術分野で既知であり、多数の科学出版物、例えば米国特許第5,453,357号、第5,670,372号、第5,690,926号、第6,090,622号、第6,200,806号及び第6,251,671号、並びに米国特許出願公開第2004/0229350号(その開示は参照により本明細書に完全に援用される)に記載されている。
【0352】
〔実施例1〕
ヒトES細胞
内胚葉発達についての研究のために、本発明者等は、多能性であり、そして正常核型を保持しながら培養中に外見上無限に分裂し得るヒト胚性幹細胞を用いた。単離のために免疫学的又は機械的方法を用いて、5日齢胚内部細胞塊からES細胞を得た。特にヒト胚性幹
細胞株hESCyt−25を、患者によるインフォームドコンセント後に、体外受精周期からの過剰凍結胚から得た。解凍の直後に、ES培地(DMEM、20%FBS、非必須アミノ酸、β−メルカプトエタノール、ITSサプリメント)中のマウス胚線維芽細胞(MEF)上に孵化胚盤胞を平板培養した。胚が培養皿に接着し、そして約2週間後、未分化hESCの領域を、MEFとともに新たな皿に移した。機械的に切断し、ディスパーゼで手短に消化し、その後、細胞クラスターを機械的に取り出して、洗浄し、再度平板培養することにより移動を成し遂げた。誘導以来、hESCyt−25を、100回にわたって逐次継代した。胚体内胚葉の産生のための出発物質として、hESCyt−25ヒト胚性幹細胞株を用いた。
【0353】
幹細胞又は他の多能性細胞は本明細書中に記載される分化手法のための出発物質としても用いられ得ると当業者により理解される。例えば当該技術分野で既知の方法により単離され得る胚性生殖腺隆起から得られる細胞は、多能性細胞出発物質として用いられ得る。
【0354】
〔実施例2〕
hESCyt−25特性化
ヒト胚性幹細胞株hESCyt−25は、培養中に18ヶ月にわたって、正常な形態特性、核型特性、増殖特性及び自己再生特性を保持した。この細胞株は、OCT4、SSEA−4及びTRA−1−60抗原(これらはすべて、未分化hESCに特有である)に対する強免疫反応性を示し、そしてアルカリ性ホスファターゼ活性、並びに他の確立されたhESC株と同一の形態を示す。さらにヒト幹細胞株hESCyt−25は、懸濁液中で培養される場合、胚様体(EB)も容易に形成する。その多能性の実証として、hESCyT−25は、3つの主要胚葉を表わす種々の細胞型に分化する。ZIC1に関するQ−PCR、並びにネスチン及びより成熟したニューロンマーカーに関する免疫細胞化学(ICC)により、外胚葉産生を実証した。β−IIIチューブリンに関する免疫細胞化学染色を、初期ニューロンに特徴的な伸長細胞のクラスター中で観察した。予め、レチノイン酸で懸濁液中のEBを処理して、臓側内胚葉(VE)、胚体外系統への多能性幹細胞の分化を誘導した。処理された細胞は、高レベルのα−フェトプロテイン(AFP)及びSOX7(VEの2つのマーカー)を54時間の処理により発現した。単層中で分化された細胞は、免疫細胞化学染色により実証されるように、散在性パッチ中でAFPを発現した。以下で記載するように、hESCyT−25細胞株は、AFP発現の非存在下でのSOX17に関する実時間定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q−PCR)及び免疫細胞化学により立証されるように、胚体内胚葉も形成し得た。中胚葉への分化を実証するために、分化中のEBを、いくつかの時点でのブラキュリ遺伝子発現に関して分析した。ブラキュリ発現は、実験経過中に漸進的に増大した。上記に鑑みて、三胚葉を表わす細胞を形成する能力により示されるように、hESCyT−25株は多能性である。
【0355】
〔実施例3〕
SOX17抗体の産生
hESC培養物における胚体内胚葉の同定に対する主要な妨害は、適切なツールの欠如である。したがって、本発明者等は、ヒトSOX17タンパク質に対する抗体の産生に着手した。
【0356】
マーカーSOX17は、それが原腸形成中に形成する際に胚体内胚葉全体にわたって発現され、その発現は、器官形成の開始頃まで腸管で維持される(しかし、発現のレベルは、A−P軸に沿って様々である)。SOX17はまた、胚体外内胚葉細胞のサブセットでも発現される。このタンパク質の発現はまた、中胚葉又は外胚葉では観察されていない。SOX17は、胚体外系統を排除するためのマーカーと併用される場合、胚体内胚葉系統に適切なマーカーであることが現在発見されている。
【0357】
本明細書中で詳述するように、SOX17抗体は、SOX17陽性胚体内胚葉細胞の産生を目的とした様々な処理手順及び分化手順の影響を具体的に検査するのに利用された。AFP、SPARC及びトロンボモジュリンに対して反応性がある他の抗体もまた、臓側内胚葉及び壁側内胚葉(胚体外内胚葉)の産生を除外するのに使用された。
【0358】
SOX17に対する抗体を産生するために、SOX17タンパク質のカルボキシ末端におけるアミノ酸172〜414(配列番号2)に相当するヒトSOX17 cDNA(配列
番号1)の一部(
図2)は、抗体産生会社GENOVAC(Freiberg, Germany)にて、そこで開発された手順に従って、ラットにおける遺伝子免疫化に使用した。遺伝子免疫化に関する手段は、米国特許第5,830,876号、同第5,817,637号、同第6,165,993号及び同第6,261,281号、並びに国際特許出願公開第WO00/29442号及び同第WO99/13915号(その開示は参照により本明細書に完全に援用される)に見出すことができる。
【0359】
遺伝子免疫化に関する他の適切な方法はまた、非特許文献にも記載されている。例えば、Barry他は、Biotechniques 16: 616-620, 1994(その開示は参照により本明細書に完全に援用される)において遺伝子免疫化によるモノクローナル抗体の産生について記載している。特異的タンパク質に対する抗体を産生するための遺伝子免疫化方法の具体例は、例えば、Costaglia他(1998) ヒト甲状腺刺激ホルモン受容体に対する遺伝子免疫化は、甲状腺炎を引き起こし、且つ自然受容体を認識するモノクローナル抗体の産生を可能にする(Genetic immunization against the human thyrotropin receptor causes thyroiditis and allows production of monoclonal antibodies recognizing the native receptor), J. Immunol. 160: 1458-1465、Kilpatrick他(1998) 遺伝子銃送達されるDNAベースの免疫化は、Flt−3受容体に対するマウスモノクローナル抗体の迅速な産生を媒介する(Gene gun delivered DNA-based immunizations mediate rapid production of murine monoclonal antibodies to the Flt-3 receptor), Hybridoma 17: 569-576、Schmolke他(1998)
DNA免疫化により産生されるE2特異的モノクローナル抗体によるヒト血清における
G型肝炎ウイルス粒子の同定(Identification of hepatitis G virus particles in human serum by E2-specific monoclonal antibodides generated by DNA immunization), J.
Virol. 72: 4541-4545、Krasemann他(1999) 異例の核酸ベースの免疫化戦略を用いたタ
ンパク質に対するモノクローナル抗体の生成(Generation of monoclonal antibodides against proteins with an unconventional nucleic acid-based immunization strategy),
J. Biotechnol. 73: 119-129、及びUlivieri他(1996) DNA免疫化によるヘリコバクター・ピロリ細胞空胞化毒素の規定部分に対するモノクローナル抗体の生成(Generation of
a monoclonal antibody to a defined portion of the Heliobacter pylori vacuolating cytotoxin by DNA immunization), J. Biotechnol. 51: 191-194(その開示は参照により本明細書に完全に援用される)に見出すことができる。
【0360】
SOX7及びSOX18は、
図3に示される相関系統樹に表されるようにSOX17に対する最も密接なSoxファミリー類縁体である。本発明者等は、遺伝子免疫化により産生されるSOX17抗体がSOX17に特異的であり、またその最も密接なファミリー成員と反応しないことを実証するために、陰性対照としてヒトSOX7ポリペプチドを用いた。特に、SOX7及び他のタンパク質は、ヒト線維芽細胞において発現させ、続いてウェスタンブロット及びICCによりSOX17抗体との交差反応性に関して分析した。例えば、SOX17、SOX7及びEGFP発現ベクターの産生、ヒト線維芽細胞へのそれらのトランスフェクション、並びにウェスタンブロットによる分析に関して以下の方法を利用した。SOX17、SOX7及びEGFPの産生に用いられる発現ベクターは、それぞれpCMV6(OriGene Technologies, Inc., Rockville, MD)、pCMV−SPORT6(Invitrogen, Carlsbad, CA)及びpEGFP−N1(Clonetech, Palo Alto, CA)であった
。タンパク質産生に関して、テロメラーゼ不死化MDXヒト線維芽細胞を、リポフェクタ
ミン2000(Invitrogen, Carlsbad, CA)の存在下で、スーパーコイルDNAで一過的にトランスフェクトした。総細胞溶解産物は、トランスフェクションの36時間後に、プロテアーゼ阻害剤のカクテル(Roche Diagnostics Corporation, Indianapolis, IN)を含有
する50mM TRIS−HCl(pH8)、150mM NaCl、0.1% SDS、
0.5%デオキシコール酸中で回収した。NuPAGE(4〜12%グラジエントポリアクリルアミド、Invitrogen, Carlsbad, CA)上でのSDS−PAGEにより分離され、且
つPDVF膜(Hercules, CA)上へのエレクトロブロッティングにより移入された細胞タンパク質100μgのウェスタンブロット分析は、10mM TRIS−HCl(pH8)
、150mM NaCl、10%BSA、0.05%Tween−20(Sigma, St. Louis, MO)中のラットSOX17抗血清の1000倍希釈で、続いてアルカリホスファターゼ
結合抗ラットIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA)でプロー
ビングして、ベクターブラックアルカリホスファターゼ染色(Vector Laboratories, Burlingame, CA)により明らかにした。使用されるタンパク質サイズ標準物質は、広範囲の色
彩マーカー(Sigma, St. Louis, MO)であった。
【0361】
図4では、SOX17、SOX7又はEGFP cDNAで一過的にトランスフェクトさ
れたヒト線維芽細胞から作製されるタンパク質抽出物を、SOX17抗体によりウェスタンブロットでプロービングした。hSOX17トランスフェクト細胞からのタンパク質抽出物のみが、ヒトSOX17タンパク質の予測46Kda分子量に近い〜51Kdaのバンドを生じた。ヒトSOX7又はEGFPトランスフェクト細胞のいずれかから作製される抽出物に対してもSOX17抗体の反応性は見られなかった。さらに、SOX17抗体は、hSOX17発現構築物でトランスフェクトしたヒト線維芽細胞の核を明らかに標識したが、EGFPのみでトランスフェクトした細胞は標識しなかった。したがって、SOX17抗体は、ICCによる特異性を示す。
【0362】
〔実施例4〕
胚体内胚葉のマーカーとしてのSOX17抗体の確証
部分的に分化させたhESCをSOX17及びAFP抗体で同時標識して、SOX17抗体がヒトSOX17タンパク質に特異的であり、さらに胚体内胚葉をマークすることを実証した。SOX17、SOX7(これは、SOX遺伝子ファミリーサブグループFの密接に関連する成員である(
図3))及びAFPはそれぞれ、臓側内胚葉で発現されることが実証されている。しかしながら、AFP及びSOX7は、ICCにより検出可能なレベルでは、胚体内胚葉細胞では発現されず、したがってそれらは、真正(bonifide)の胚体内胚葉細胞に関する陰性マーカーとして用いることができる。SOX17抗体は、細胞の別個の分類として存在するか、或いはAFP陽性細胞と混合される細胞の集団を標識することが示された。特に、
図5Aは、少数のSOX17細胞がAFPで同時標識されることを示すが、SOX17+細胞の区域においてAFP+細胞がほとんど存在しないか、或いは全く存在しない領域も見られた(
図5B)。同様に、壁側内胚葉は、SOX17を発現することが報告されているため、壁側マーカーSPARC及び/又はトロンボモジュリン(TM)と共にSOX17による抗体の同時標識を使用して、壁側内胚葉であるSOX17+
細胞を同定することができる。
図6A〜
図6Cに示されるように、トロンボモジュリン及びSOX17同時標識された壁側内胚葉細胞は、hES細胞の無作為分化により産生された。
【0363】
上記細胞標識実験を考慮して、胚体内胚葉細胞の独自性は、マーカープロファイルSOX17hi/AFPlo/[TMlo又はSPARClo]により樹立され得る。換言すると、SOX17マーカーの発現は、臓側内胚葉の特徴であるAFPマーカー、及び壁側内胚葉の特徴であるTM又はSPARCマーカーの発現よりも大きい。したがって、SOX17に関して陽性であるが、AFPに対して陰性であり、且つTM又はSPARCに対して陰性である細胞は、胚体内胚葉である。
【0364】
胚体内胚葉の予測となるようなSOX17hi/AFPlo/TMlo/SPARCloマーカープロファイルの特異性のさらなる徴候として、SOX17及びAFP遺伝子発現が、抗体標識細胞の相対数と定量的に比較された。
図7Aに示されるように、レチノイン酸(臓側内胚葉誘導物質)又はアクチビンA(胚体内胚葉誘導物質)で処理したhESCは、SOX17 mRNA発現のレベルにおいて10倍の差をもたらした。この結果は、SOX1
7抗体標識細胞数における10倍の差に反映している(
図7B)。さらに、
図8Aに示されるように、hESCのアクチビンA処理は、処理無しと比較して6.8倍AFP遺伝子発現を抑制した。これは、
図8B及び
図8Cに示されるように、これらの培養物におけるAFP標識細胞の数の劇的な減少により可視的に反映された。これをさらに定量化するために、AFP遺伝子発現におけるこのおよそ7倍の減少は、フローサイトメトリーにより測定される場合のAFP抗体標識細胞数における同様の7倍の減少の結果であることが実証された(
図9A及び
図9B)。この結果は、Q−PCRにより観察されるような遺伝子発現の定量的変化は、抗体染色により観察されるような細胞型特定化における変化を反映することを示すという点で極めて有意である。
【0365】
ノーダルファミリー成員(ノーダル、アクチビンA及びアクチビンB−NAA)の存在下でのhESCのインキュベーションは、経時的にSOX17抗体標識細胞の有意な増加をもたらした。連続的なアクチビン処理の5日目までには、50%を超える細胞がSOX17で標識された(
図10A〜
図10F)。アクチビン処理の5日後にはAFPで標識された細胞はほとんど存在しなかったか、或いは全く存在しなかった。
【0366】
要約すると、ヒトSOX17タンパク質のカルボキシ末端の242個のアミノ酸に対して産生される抗体は、ウェスタンブロットでヒトSOX17タンパク質を同定したが、その最も密接なSoxファミリー類縁体であるSOX7を認識しなかった。SOX17抗体は、主としてSOX17+/AFPlo/-である分化hESC培養物における細胞のサブセッ
ト(95%を超える標識細胞)並びにSOX17及びAFP(臓側内胚葉)に関して同時標識する少量パーセント(5%未満)の細胞を認識した。アクチビンによるhESC培養物の処理は、SOX17遺伝子発現並びにSOX17標識細胞の顕著な増大をもたらし、AFP mRNAの発現及びAFP抗体で標識した細胞の数を劇的に抑制した。
【0367】
〔実施例5〕
Q−PCR遺伝子発現アッセイ
以下の実験では、リアルタイム定量的RT−PCR(Q−PCR)が、hESC分化に対する様々な処理の影響をスクリーニングするのに使用される主要なアッセイであった。特に、遺伝子発現のリアルタイム測定は、Q−PCRにより多数の時点で多数のマーカー遺伝子に関して分析した。細胞集団の全体的な動態のより良好な理解を得るために、所望の細胞型並びに望ましくない細胞型のマーカー遺伝子の特徴を評価した。Q−PCR分析の長所として、ゲノム配列が容易に入手可能である場合、その極度の感度及び必要なマーカーを開発することが比較的容易であることが挙げられる。さらに、Q−PCRの極めて高い感度により、相当大きな集団内での比較的少数の細胞からの遺伝子発現の検出が可能となる。さらに、非常に低レベルの遺伝子発現を検出する能力は、集団内の「分化の偏り」に関する指標を提供する。これらの細胞の表現型の顕在的な分化に先立つ特定の分化経路に対する偏りは、免疫細胞化学的技法を使用して認知することはできない。このため、Q−PCRは、分化処理の成功をスクリーニングするための少なくとも補完的であり且つ免疫組織化学的技法よりも潜在的に相当優れている分析の方法を提供する。さらに、Q−PCRは、半ハイスループットスケール(semi-high throughput scale)の分析にて定量的方式で分化プロトコルの成功を評価するメカニズムを提供する。
【0368】
本実施例で採用するアプローチは、Rotor Gene 3000機器(Corbett Researc
h)でのSYBR Green化学及び2段階RT−PCR方式を使用して相対定量を実施
することであった。このようなアプローチにより、今後のさらなるマーカー遺伝子の分析用のcDNAサンプルの積上げが可能となり、したがって、サンプル間の逆転写効率における可変性を回避した。
【0369】
プライマーは、これが混入ゲノムDNAからの増幅を排除すると実験的に確定されているため、エクソン間境界にわたって存在するか、又は可能であれば少なくとも800bpのイントロンにまたがるように設計された。イントロンを含有しないマーカー遺伝子を使用したか、又はマーカー遺伝子が偽遺伝子を保有した場合、RNAサンプルのDNアーゼI処理が実施された。
【0370】
本発明者等は、細胞サンプルにおける遺伝子発現の広範囲のプロファイル描写を提供するために、日常的にQ−PCRを使用して、標的細胞型及び非標的細胞型の多数のマーカーの遺伝子発現を測定した。初期のhESC分化(具体的には、外胚葉、中胚葉、胚体内胚葉及び胚体外内胚葉)に関連し、且つ確証されたプライマー組が利用可能であるマーカーを以下の表1に提供する。これらのプライマー組のヒト特異性もまた実証されている。hESCが多くの場合マウスフィーダー層上で増殖するため、このことは重要な事実である。最も典型的には、三重反復サンプルが各条件に関して採取され、各定量的確定に関連した生物学的可変性を評価するために二重反復で個別に分析された。
【0371】
PCR鋳型を生成するために、総RNAは、RNeasy(Qiagen)を使用して単離されて、RiboGreen(Molecular Probes)を用いて定量化された。総RNA 350〜5
00ngからの逆転写は、オリゴdTプライマー及び無作為なプライマーのミックスを含有するiScript逆転写酵素キット(BioRad)を使用して実施した。続いて、反応物それぞれ20μLを総容量100μLにまで希釈して、3μLをそれぞれ400nM順方向プライマー及び逆方向プライマーを含有するQ−PCR反応物10μL並びに2×SYBR Greenマスターミックス(Qiagen)5μLにおいて使用した。2段階サイクリング
パラメータは、85〜94℃(具体的には各プライマー組に関するアンプリコンの融点に従って選択される)で5秒の変性、続く60℃での45秒のアニール/伸長を用いて使用された。各伸長段階の最後の15秒の間に、蛍光データを回収した。3点の10倍希釈シリーズを使用して、各実施に関する標準曲線を作成して、サイクル閾値(Ct)をこの標準曲線に基づいて定量値へ変換した。各サンプルに関する定量値は、ハウスキーピング遺伝子性能に対して正規化され、続いて平均値及び標準偏差は、三重反復サンプルに関して算出された。PCRサイクリングの終わりには、融解曲線分析を実施して、反応物の特異性を確かめた。単一の特異的産物は、そのPCRアンプリコンに適したTmでの単一ピー
クにより示された。さらに、逆転写酵素無しで実施される反応は、陰性対照として役立ち、増幅しない。
【0372】
Q−PCR方法論を確立する際の第1の工程は、実験系における適切なハウスキーピング遺伝子(HG)の検証であった。HGは、RNAインプット、RNA完全性及びRT効率に関してサンプルにわたって正規化するのに使用されるため、正規化が意味のあるものであるためには、HGがすべてのサンプル型において経時的に一定レベルの発現を示すことに価値があった。本発明者等は、分化hESCにおけるサイクロフィリンG、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1(HPRT)、β−2−ミクログロブリン、ヒドロキシメチルビランシンターゼ(HMBS)、TATA結合タンパク質(TBP)及びグルクロニダーゼβ(GUS)の発現レベルを測定した。本発明者等の結果により、β−2−ミクログロブリン発現レベルが、分化の間に増大されることが示され、したがって本発明者等は、正規化に関してこの遺伝子の使用を排除した。他の遺伝子は、経時的に、並びに複数の処理にわたって一貫した発現レベルを示した。本発明者等は規定通りに、サイクロフィリンG及びGUSの両方を使用して、すべてのサンプルに関して正規化因子を算
出した。多数のHGの使用は、同時に正規化プロセスに固有の可変性を低減し、相対遺伝子発現値の信頼性を増大させる。
【0373】
正規化において使用するための遺伝子を獲得した後、続いてQ−PCRを利用して、種々の実験処理を施したサンプルにわたる多くのマーカー遺伝子の相対遺伝子発現レベルを確定した。用いたマーカー遺伝子は、それらが初期胚葉の代表的な特異的集団において富化を示すことから選択されており、特に胚体内胚葉及び胚体外内胚葉で差次的に発現される遺伝子の組に焦点を当てている。これらの遺伝子並びにそれらの関連富化プロファイルを表1に示している。
【0374】
【表1】
【0375】
多くの遺伝子が、2つ以上の胚葉で発現されるため、同じ実験内で多くの遺伝子の発現レベルを定量的に比較することが有用である。SOX17は、胚体内胚葉で、またより程度は低いが、臓側内胚葉及び壁側内胚葉で発現される。SOX7及びAFPは、この初期発達時点で、臓側内胚葉で発現される。SPARC及びTMは、壁側内胚葉で発現され、ブラキュリは、初期中胚葉で発現される。
【0376】
胚体内胚葉細胞は、高レベルのSOX17 mRNA並びに低レベルのAFP及びSOX
7(臓側内胚葉)、SPARC(壁側内胚葉)及びブラキュリ(中胚葉)を発現すると予測された。さらに、ZIC1は、初期外胚葉の誘導をさらに除外するのに本明細書で使用された。最後に、GATA4及びHNF3bは、胚体内胚葉及び胚体外内胚葉の両方で発現され、したがって、胚体内胚葉におけるSOX17発現と相関する(表1)。表1に記載するマーカー遺伝子が、様々なサンプル間でどのように互いに相関するかを実証し、したがって、胚体内胚葉及び胚体外内胚葉への、並びに中胚葉及び神経細胞型への分化の特異的パターンを示す代表的な実験を
図11〜
図14に示している。
【0377】
上記データを考慮すると、増大用量のアクチビンが、SOX17遺伝子発現の増大をもたらしたことが明らかである。さらに、このSOX17発現は、胚体外内胚葉とは対照的に主として胚体内胚葉を表した。この結論は、SOX17遺伝子発現が、AFP、SOX7及びSPARC遺伝子発現と逆相関したという観察から生じる。
【0378】
〔実施例6〕
胚体内胚葉へのヒトES細胞の定方向分化
ヒトES細胞培養物は、それらの未分化状態を能動的に維持しない条件下で培養される場合に、無作為に分化する。この不均一分化は、壁側内胚葉及び臓側内胚葉の両方から構成される胚体外内胚葉細胞(AFP、SPARC及びSOX7発現)並びにZIC1及びネ
スチン(外胚葉)及びブラキュリ(中胚葉)発現によりマークされるような初期外胚葉誘導体及び中胚葉誘導体の産生をもたらす。胚体内胚葉細胞出現は、ES細胞培養物における特異的抗体マーカーの欠如に関して検査又は特定されていない。それ自体で、また初期状態で、ES細胞培養物における初期胚体内胚葉産生は、十分研究されていない。胚体内胚葉細胞に関する満足のいく抗体試薬が入手不可能であったため、特性化の大部分が、外胚葉及び胚体外内胚葉に焦点を当ててきた。概して、無作為に分化されたES細胞培養物においてSOX17hi胚体内胚葉細胞と比較して、有意により多数の胚体外細胞型及び神経外胚葉細胞型が存在する。
【0379】
未分化hESCコロニーは線維芽細胞フィーダーの床上に広がるため、コロニーの縁にある細胞は、コロニーの内部に存在する細胞とは異なった別の形態を呈する。これらの外側の縁細胞の多くが、それらのあまり一様ではない、より大きな細胞体の形態により、またより高いレベルのOCT4の発現により識別され得る。ES細胞が分化し始めると、ES細胞は、未分化ES細胞に対して、OCT4発現のレベルを上方又は下方へ変更させることが記載されている。未分化閾値を上回るか、又は下回るOCT4レベルの変更は、多能性状態から離れた分化の初期状態の表れであり得る。
【0380】
未分化コロニーがSOX17免疫細胞化学により検査される場合、時折SOX17陽性細胞の小さな10〜15個の細胞クラスターが、外縁上の無作為な位置で、また未分化hESCコロニー間の接合部で検出された。上述したように、外側コロニー縁のこれらの散在ポケットは、コロニーのサイズが拡大し、且つより混雑してくるため、古典的なES細胞形態から離れて分化する第1の細胞のいくつかであるようであった。より若くてより小さな完全未分化コロニー(1mm未満、4〜5日齢)は、コロニー内で又はコロニーの縁でSOX17陽性細胞を示さなかったのに対して、より老齢のより大きなコロニー(直径1〜2mm、5日齢超)は、いくつかのコロニーの外縁で、或いは上述の古典的なhESC形態を示さない縁の内部の領域で、SOX17陽性AFP陰性細胞の散発的な単離パッチを有していた。これが有効なSOX17抗体の第1の発達であった場合、このような初期「未分化」ES細胞培養物で発達する胚体内胚葉細胞は、これまでに実証されていない。
【0381】
Q−PCRによるSOX17及びSPARC遺伝子発現レベルの逆相関に基づくと、これらのSOX17陽性AFP陰性細胞の大部分が、抗体同時標識による壁側内胚葉マーカーに関して陰性であろう。これは、
図15A及び
図15Bに示されるように、TM発現壁側内胚葉細胞に関して具体的に実証された。ノーダル因子であるアクチビンA及びアクチビンBへの暴露は、TM発現の強度及びTM陽性細胞の数の劇的な減少をもたらした。アクチビン処理培養物に関するSOX17、AFP及びTM抗体を使用した三重標識により、AFP及びTMに関しても陰性であるSOX17陽性細胞のクラスターが観察された(
図16A〜
図16D)。これらは、分化hESC培養物におけるSOX17陽性胚体内胚葉細胞の第1の細胞標示である(
図16A〜
図16D及び
図17)。
【0382】
上述のSOX17抗体及びQ−PCRツールを用いて、本発明者等は、SOX17hi/AFPlo/SPARC/TMlo胚体内胚葉細胞となるようにhESCを効率的にプログラミングすることが可能な多数の手順を探究してきた。本発明者等は、SOX17遺伝子発現に関してQ−PCRにより集団レベルで、及びSOX17タンパク質の抗体標識により個々の細胞のレベルで測定される場合、これらの細胞の数及び増殖能力を増大させることを目的とした様々な分化プロトコルを適用した。
【0383】
本発明者等はまず、in vitro細胞培養物において胚性幹細胞から胚体内胚葉細胞
を創出するのに使用するためのノーダル/アクチビン/BMPのようなTGFβファミリー増殖因子の影響を分析及び記載した。通常の実験では、アクチビンA、アクチビンB、BMP又はこれらの増殖因子の組合せを未分化ヒト幹細胞系hES Cyt−25の培養
物へ添加して、分化プロセスを開始させた。
【0384】
図19に示されるように、100ng/mlでのアクチビンAの添加は、分化の4日目までに、未分化hESCに対して、SOX17遺伝子発現の19倍の誘導をもたらした。アクチビンAと共に、アクチビンファミリーの第2の成員であるアクチビンBを添加することにより、併用アクチビン処理の4日目までに、未分化hESCを上回る37倍の誘導がもたらされた。最後に、アクチビンA及びアクチビンBと共に、ノーダル/アクチビン由来のTGFβファミリーの第3の成員、並びにBMPサブグループであるBMP4を添加することにより、未分化hESCの誘導の57倍に誘導を増大させた(
図19)。アクチビン及びBMPによるSOX17誘導を、因子無しの培地対照と比較した場合、5倍、10倍及び15倍の誘導が4日目の時点で生じた。アクチビンA、アクチビンB及びBMPによる三重処理の5日目までに、SOX17は、hESCの70倍より高く誘導された。これらのデータは、ノーダル/アクチビン TGFβファミリー成員のより高い用量及び
より長い処理時間がSOX17の増大された発現をもたらすことを示している。
【0385】
ノーダル並びに関連分子アクチビンA、アクチビンB及びBMPは、in vivo又は
in vitroでSOX17の発現及び胚体内胚葉形成を促進する。さらに、BMPの
添加は、おそらくノーダル補助受容体であるCriptoのさらなる誘導により、改善されたSOX17の誘導をもたらす。
【0386】
本発明者等は、BMP4と一緒のアクチビンA及びアクチビンBの組合せが、SOX17誘導、したがって胚体内胚葉形成の相加的増大をもたらすことを実証している。アクチビンA及びアクチビンBと組み合わせた長期間(4日を超える)のBMP4添加は、壁側内胚葉及び臓側内胚葉並びに胚体内胚葉においてSOX17を誘導し得る。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、添加の4日以内に処理からBMP4を除去することは有益である。
【0387】
個々の細胞レベルでのTGFβ因子処理の影響を確定するために、経時的なTGFβ因子添加を、SOX17抗体標識を使用して検査した。すでに
図10A〜
図10Fで示したように、経時的にSOX17標識細胞の相対数が劇的に増大した。相対定量化(
図20)は、SOX17標識細胞の20倍を超える増大を示す。この結果は、細胞の数並びにSOX17遺伝子発現レベルの両方が、TGFβ因子暴露の時間とともに増大していることを示す。
図21に示されるように、ノーダル、アクチビンA、アクチビンB及びBMP4への暴露の4日後に、SOX17誘導のレベルは、未分化hESCに対して168倍に到達した。
図22は、SOX17陽性細胞の相対数もまた、用量応答性であったことを示す。100ng/ml以上のアクチビンA用量は、SOX17遺伝子発現及び細胞数を強く誘導することが可能であった。
【0388】
TGFβファミリー成員のほかに、Wntファミリーの分子が、胚体内胚葉の特定化及び/又は維持において役割を果たし得る。Wnt分子の使用もまた、アクチビン単独を上回るアクチビン+Wnt3aで処理したサンプルにおける増大したSOX17遺伝子発現により示されるように、胚体内胚葉へのhESCの分化に有益であった(
図23)。
【0389】
上述の実験はすべて、添加因子を伴って10%血清を含有する組織培養培地を使用して実施した。驚くべきことに、
図24A〜
図24Cに示されるように、血清の濃度が、添加アクチビンの存在下でSOX17発現のレベルに対して影響することを本発明者等は発見した。血清レベルが10%から2%へ低減すると、SOX17発現は、アクチビンA及びアクチビンBの存在下で3倍になった。
【0390】
最後に、本発明者等は、アクチビン誘導SOX17+細胞が、
図25A〜
図25Dに表さ
れるように培養物中で分裂することを実証した。矢印は、PCNA/DAPI標識有糸分裂プレートパターン及び位相差有糸分裂プロファイルにより明らかなように有糸分裂中であるSOX17/PCNA/DAPIで標識された細胞を示す。
【0391】
〔実施例7〕
ケモカイン受容体4(CXCR4)発現は、胚体内胚葉に関するマーカーと相関し、中胚葉、外胚葉又は臓側内胚葉に関するマーカーとは相関しない
上述したように、hESCは、TGFβファミリー、より具体的にはアクチビン/ノーダルサブファミリーのサイトカインの適用により、胚体内胚葉の胚葉へ分化するように誘導することができる。さらに、本発明者等は、分化培養培地におけるウシ胎児血清(FBS)の比率が、hESCからの胚体内胚葉分化の効率に影響を及ぼすことを示している。この影響は、培地においてアクチビンAの所定濃度で、より高いレベルのFBSが胚体内胚葉への最大限の分化を阻害するようなものである。外因性アクチビンAの非存在下では、胚体内胚葉系統へのhESCの分化は、非常に非効率であり、FBS濃度は、hESCの分化プロセスに対して相当穏やかに影響する。
【0392】
これらの実験では、0.5%、2.0%又は10%FBSを補充し、且つ100ng/mlのアクチビンAを伴うか、又は伴わないRPMI培地(Invitrogen, Carlsbad, CA、カタログ番号61870−036)中で6日間増殖させることにより、hESCを分化させた。さらに、分化の最初の3日間にわたる0.5%〜2.0%に及ぶFBSのグラジエントもまた、100ng/mlのアクチビンAと併用した。6日後に、反復サンプルを各培養条件から回収して、リアルタイム定量的PCRにより相対遺伝子発現に関して分析した。残存細胞は、SOX17タンパク質の免疫蛍光検出用に固定した。
【0393】
CXCR4の発現レベルは、使用した7つの培養条件にわたって劇的に変化した(
図26)。概して、CXCR4発現は、アクチビンA処理培養物(A100)では高く、外因性アクチビンAを施さない培養物(NF)では低かった。さらに、A100処理培養物の中でも、CXCR4発現は、FBS濃度が最も低かった場合に最も高かった。相対発現が、アクチビンAを施さない条件(NF)により一致するように、10%FBS条件におけるCXCR4レベルが顕著に低減した。
【0394】
上述したように、SOX17、GSC、MIXL1及びHNF3β遺伝子の発現は、胚体内胚葉としての細胞の特性化と一致する。7つの分化条件に関するこれらの4つの遺伝子の相対発現は、CXCR4の相対発現を反映する(
図27A〜
図27D)。このことは、CXCR4もまた胚体内胚葉のマーカーであることを実証する。
【0395】
外胚葉系統及び中胚葉系統は、各種マーカーのそれらの発現により胚体内胚葉と識別することができる。初期中胚葉は、遺伝子ブラキュリ及びMOX1を発現する一方で、新生神経外胚葉は、SOX1及びZIC1を発現する。
図28A〜
図28Dは、外因性アクチビンAを施さない培養物が、中胚葉及び外胚葉の遺伝子発現に関して優先的に富化されたこと、及びアクチビンA処理培養物の中でも、10%FBS条件がまた、中胚葉及び外胚葉のマーカー発現の増大レベルを有したことを実証している。発現のこれらのパターンはCXCR4のパターンと反比例し、CXCR4が、この発達期間でhESCに由来する中胚葉又は外胚葉中ではそれほど高度に発現されないことを示した。
【0396】
哺乳類発達中の初期に、胚体外系統への分化もまた起こる。ここでは、SOX17を包含する胚体内胚葉と共通して多くの遺伝子の発現を共有する臓側内胚葉の分化が特に関連している。胚体内胚葉を胚体外臓側内胚葉と識別するためには、これらの2つの間を識別できるマーカーを検査するべきである。SOX7は、臓側内胚葉では発現されるが、胚体内胚葉系統では発現されないマーカーを表す。したがって、SOX7発現の非存在下での強
固なSOX17遺伝子発現を示す培養条件は、胚体内胚葉を含有し、臓側内胚葉を含有しない可能性が高い。SOX7が、アクチビンAを施さない培養物において高度に発現され、SOX7はまた、FBSが10%で包含される場合に、アクチビンAの存在下でさえ増大された発現を示したことが
図28Eに示されている。このパターンは、CXCR4発現パターンの逆であり、CXCR4が、臓側内胚葉ではあまり高度に発現されないことを示唆する。
【0397】
上述の分化条件それぞれに存在するSOX17免疫反応性(SOX17+)細胞の相対数
もまた確定した。hESCは、高用量アクチビンA及び低FBS濃度(0.5%〜2.0%)の存在下で分化させた場合、SOX17+細胞は、培養物全体にわたって遍在的に分
布した。高用量アクチビンAを使用したが、FBSは10%(v/v)で包含された場合、SOX17+細胞は、相当低い頻度で出現し、培養物全体にわたって均一に分布される
のではなく、常に単離クラスターに出現した(
図29A及び
図29C、並びに
図29B及び
図29E)。外因性アクチビンAが使用されなかった場合に、SOX17+細胞のさら
なる減少が観察された。これらの条件下では、SOX17+細胞はまたクラスターに出現
し、これらのクラスターは、高アクチビンA低FBS処理で見出されるものよりも小さく、且つ相当稀であった(
図29C及び
図29F)。これらの結果は、CXCR4発現パターンが、各条件下で胚体内胚葉遺伝子発現に対応するだけでなく、胚体内胚葉細胞の数にも対応することを実証している。
【0398】
〔実施例8〕
胚体内胚葉に関して富化する分化条件は、CXCR4陽性細胞の比率を増大させる
アクチビンAの用量はまた、胚体内胚葉をhESCから得ることができる効率に影響を及ぼす。本実施例は、アクチビンAの用量を増大させることにより培養物におけるCXCR4+細胞の比率が増大することを実証する。
【0399】
hESCは、0.5%〜2%FBS(分化の最初の3日にわたって0.5%から1.0%、そして2.0%へ増大される)及び0、10又は100ng/mlのアクチビンAを補充したRPMI培地中で分化させた。分化の7日後に、2%FBS及び2mM(EDTA)を含有するCa2+/Mg2+を伴わないPBS中で、室温で5分間、細胞を解離させた。細胞は、35μmナイロンフィルタに通して濾過して、計数して、ペレット化した。ペレットは、少量の50%ヒト血清/50%正常ロバ血清中に再懸濁させて、氷上で2分間インキュベートして、非特異的抗体結合部位をブロックした。これに、50μl(およそ105個の細胞を含有する)当たり1μlのマウス抗CXCR4抗体(Abcam、カタログ番号ab10403−100)を添加して、標識を氷上で45分間進めた。細胞は、2%ヒト血清を含有するPBS(緩衝液)5mlを添加することにより洗浄して、ペレット化した。緩衝液5mlによる2回目の洗浄を完了させた後、細胞は、105個の細胞当たり緩衝
液50μl中に再懸濁させた。二次抗体(FITC結合ロバ抗マウス、Jackson ImmunoResearch、カタログ番号715−096−151)を最終濃度5μg/mlで添加して、30分間標識させた後、上述のように緩衝液中で2回洗浄を行った。細胞は、緩衝液中に5×106個の細胞/mlで再懸濁させて、フローサイトメトリーの中心的な施設(The Scripps Research Institute)にてスタッフによりFACS Vantage(Beckton Dickenson)を使用して分析及び選別した。細胞は、これに続くリアルタイム定量的PCRによる
遺伝子発現分析用の総RNAの単離のために、RLT溶解緩衝液(Qiagen)に直接回収した。
【0400】
フローサイトメトリーにより確定される場合のCXCR4+細胞の数は、アクチビンAの
用量が分化培養培地中で増大されると、劇的に増加することが観察された(
図30A〜
図30C)。CXCR4+細胞は、R4ゲート内に納まるものであり、このゲートは、事象
の0.2%がR4ゲートに位置される二次抗体のみの対照を使用して設定された。CXC
R4+細胞数の劇的な増大は、アクチビンA用量が増大される場合に、胚体内胚葉遺伝子
発現における強固な増大と相関する(
図31A〜
図31D)。
【0401】
〔実施例9〕
CXCR4陽性細胞の単離は、胚体内胚葉遺伝子発現に関して富化し、また中胚葉、外胚葉及び臓側内胚葉のマーカーを発現する細胞を激減させる
上記実施例8で同定されるCXCR4+細胞及びCXCR4-細胞を回収して、相対遺伝子発現に関して分析し、母集団の遺伝子発現を同時に確定した。
【0402】
CXCR4遺伝子発現の相対レベルは、アクチビンAの用量の増大に伴って劇的に増大した(
図32)。これは、CXCR4+細胞のアクチビンA用量依存的増大と極めて強く相
関した(
図30A〜
図30C)。また、各集団からのCXCR4+細胞の単離は、この集
団中のほぼすべてのCXCR4遺伝子発現を占めたことも明らかである。これは、これらの細胞を回収するためのFACS方法の効率を実証している。
【0403】
遺伝子発現分析により、CXCR4+細胞は、CXCR4遺伝子発現の大部分を含有する
だけでなく、CXCR4+細胞はまた、胚体内胚葉の他のマーカーに関する遺伝子発現も
含有することが明らかとなった。
図31A〜
図31Dに示されるように、CXCR4+細
胞はさらに、SOX17、GSC、HNF3B及びMIXL1に関してA100母集団を上回って富化した。さらに、CXCR4-分画は、これらの胚体内胚葉マーカーに関して
非常に少ない遺伝子発現を含有した。さらに、CXCR4+及びCXCR4-集団は、中胚葉、外胚葉及び胚体外内胚葉のマーカーに関して逆パターンの遺伝子発現を示した。
図33A〜
図33Dは、CXCR4+細胞が、A100母集団に対してブラキュリ、MOX1
、ZIC1及びSOX7の遺伝子発現に関して激減したことを示す。このA100母集団は、低用量条件又はアクチビンA無しの条件に対して、これらのマーカーの発現がすでに低かった。これらの結果は、高アクチビンAの存在下で分化されるhESCからのCXCR4+細胞の単離は、胚体内胚葉に関して高度に富化され、且つ実質的に純粋な胚体内胚
葉である集団を生じることを示す。
【0404】
〔実施例10〕
CXCR4を使用した細胞集団中の胚体内胚葉細胞の定量
本明細書中ですでに確定されるような、及び2003年12月23日に出願された「胚体内胚葉(DEFINITIVE ENDODERM)」と題する米国仮特許出願第60/532,004号で確
定されるような細胞培養物又は細胞集団中に存在する胚体内胚葉細胞の比率の定量を確認するために、CXCR4及び胚体内胚葉の他のマーカーを発現する細胞をFACSにより分析した。
【0405】
上記実施例に記載されるような方法を使用して、hESCを分化させて、胚体内胚葉を産生した。特に、分化細胞培養物における収率及び純度を増大させるために、培地の血清濃度を以下の通りに制御した:1日目には0.2%FBS、2日目には1.0%FBS及び3〜6日目には2.0%FBS。分化培養物は、3つの細胞表面エピトープであるE−カドヘリン、CXCR4及びトロンボモジュリンを使用して、FACSにより選別した。続いて、選別した細胞集団をQ−PCRにより分析して、胚体内胚葉及び胚体外内胚葉並びに他の細胞型に関するマーカーの相対発現レベルを確定した。最適に分化させた培地から採取されるCXCR4選別細胞は、98%を超える純度の胚体内胚葉細胞の単離をもたらした。
【0406】
表2は、本明細書中に記載する方法を使用してhESCから分化させた胚体内胚葉培養物に関するマーカー分析の結果を示す。
【0407】
【表2】
【0408】
特に、表2は、CXCR4及びSOX17陽性細胞(内胚葉)が細胞培養物における細胞の70%〜80%を構成したことを示す。これらのSOX17発現細胞のうち、少なくとも2%がTM(壁側内胚葉)を発現し、1%未満がAFP(臓側内胚葉)を発現した。TM陽性細胞とAFP陽性細胞との比率(組み合わせた壁側内胚葉及び臓側内胚葉、総計3%)をSOX17/CXCR4陽性細胞の比率から差し引きした後、細胞培養物の約67%〜約77%が胚体内胚葉であったことが観察され得る。およそ10%の細胞が、hESCに関するマーカーであるE−カドヘリン(ECAD)に関して陽性であり、細胞の約10〜20%が他の細胞型であった。
【0409】
FACS分離前に得られる分化細胞培養物における胚体内胚葉の純度は、5〜6日の分化手順全体にわたって0.5%以下にFBS濃度を維持することにより、上述の低血清手順と比較して改善させることができることを本発明者等は発見している。しかしながら、5〜6日の分化手順全体にわたって0.5%以下に細胞培養物を維持することはまた、産生される胚体内胚葉細胞の総数の低減をもたらす。
【0410】
本明細書中に記載する方法により産生される胚体内胚葉細胞は、それほどの分化を伴わずに50日よりも長い間、アクチビンの存在下で培養において維持及び拡大されている。このような場合では、SOX17、CXCR4、MIXL1、GATA4、HNF3β発現は、培養期間にわたって維持される。さらに、TM、SPARC、OCT4、AFP、SOX7、ZIC1及びBRACHは、これらの培養物では検出されなかった。このような細胞は、それほどの分化を伴わずに50日よりも実質的に長い間、培養において維持及び拡大させることができる可能性が高い。
【0411】
〔実施例11〕
胚体内胚葉細胞のさらなるマーカー
以下の実験では、精製胚体内胚葉及びヒト胚性幹細胞集団からRNAを単離した。続いて、遺伝子発現は、各精製集団由来のRNAの遺伝子チップ分析により分析した。Q−PCRも実施して、胚体内胚葉に関するマーカーとして、胚体内胚葉では発現されるが、胚性幹細胞では発現されない遺伝子の潜在性をさらに研究した。
【0412】
ヒト胚性幹細胞(hESC)は、20%ノックアウト血清代替物、4ng/mlの組換えヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、0.1mM 2−メルカプトエタノール、
L−グルタミン、非必須アミノ酸及びペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDMEM/F12培地中で維持された。hESCは、100ng/mlの組換えヒトアクチビンA、ウシ胎児血清(FBS)及びペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI培地中で5日間培養することにより胚体内胚葉へ分化させた。FBSの濃度は、各日以下の通りに変化させた:0.1%(1日目)、0.2%(2日目)、2%(3〜5日目)。
【0413】
遺伝子発現分析用のhESC及び胚体内胚葉の精製集団を得るために、細胞を蛍光活性化
細胞選別器(FACS)により単離した。免疫精製は、hESCに関してはSSEA4抗原(R&D Systems、カタログ番号FAB1435P)を使用して、また胚体内胚葉に関し
てはCXCR4(R&D Systems、カタログ番号FAB170P)を使用して達成された。
細胞は、トリプシン/EDTA(Invitrogen、カタログ番号25300−054)を使用して解離させて、2%ヒト血清を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄して、氷上で10分間100%ヒト血清中に再懸濁させて、非特異的結合をブロックした。染色は、ヒト血清800μl中で5×106個の細胞にフィコエリトリン結合抗体200μ
lを添加することにより氷上で30分間実施した。細胞をPBS緩衝液8mlで2度洗浄して、同1ml中に再懸濁させた。FACS単離は、FACS Vantage(BD Biosciences)を使用して、The Scripps Research Instituteの中心的な施設により実施された
。細胞は、RLT溶解緩衝液に直接回収して、RNAは、製造業者の指示書に従ってRNeasy(Qiagen)により単離した。
【0414】
精製RNAは、Affymetrixプラットフォーム及びU133プラス2.0高密度オリゴヌクレオチドアレイを使用して、発現プロファイルデータの作成のためにExpression Analysis(Durham, NC)に複製して提出した。提示されたデータは、2つの集団、すな
わちhESCと胚体内胚葉との間で差次的に発現する遺伝子を同定する群の比較である。hESCに見出される発現レベルを上回る強固な上方変化を示す遺伝子は、胚体内胚葉の高度に特性化される新たな候補マーカーとして選択された。選択遺伝子は、上述のようにQ−PCRによりアッセイして、遺伝子チップ上に見られる遺伝子発現変化を確証し、また経時的なhESC分化のこれらの遺伝子の発現パターンを研究した。
【0415】
図34A〜
図34Mは、或る特定のマーカーに関する遺伝子発現の結果を示す。結果は、100ng/mlアクチビンAの添加の1日後、3日後及び5日後に分析した細胞培養物、5日目の分化手順の終わりに精製されたCXCR4発現性胚体内胚葉細胞(CXDE)に関して、及び精製hESCにおいて表示される。
図34C及び
図34G〜
図34Mの比較により、6つのマーカー遺伝子、すなわちFGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1が、互いにほぼ同一であり、且つまたCXCR4の発現のパターン及びSOX17/SOX7の比と同一である発現パターンを示す。上述したように、SOX17は、胚体内胚葉並びにSOX7発現胚体外内胚葉の両方において発現される。SOX7は胚体内胚葉で発現されないため、SOX17/SOX7の比は、全体として集団において証明されるSOX17発現への胚体内胚葉の寄与の信頼性高い推定を提供する。パネルCに対するパネルG〜L及びMの類似性は、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1が、胚体内胚葉のマーカーである可能性が高いこと、及びそれらが胚体外内胚葉細胞で有意に発現されないことを示す。
【0416】
本明細書中に記載されるQ−PCRの結果は、ICCによりさらに確認することができることが理解されよう。
【0417】
〔実施例12〕
レチノイン酸及びFGF−10は、胚体内胚葉培養物において特異的にPDX1を誘導する
以下の実験は、RA及びFGF−10が胚体内胚葉細胞においてPDX1の発現を誘導することを実証する。
【0418】
ヒト胚性幹細胞をアクチビン有り又は無しで4日間培養した。4日目に、1μM RA及
び50ng/ml FGF−10を細胞培養物へ添加した。RA/FGF−10添加の4
8時間後に、PDX1マーカー遺伝子及び前腸内胚葉に特異的でない他のマーカー遺伝子の発現をQ−PCRにより定量した。
【0419】
胚体内胚葉細胞へのRAの適用は、臓側内胚葉(SOX7、AFP)、神経(SOX1、ZIC1)又はニューロン(NFM)遺伝子発現マーカーの発現を増大させずに(
図36A〜
図36Fを参照)、PDX1遺伝子発現の強固な増大を引き起こした(
図35を参照)。PDX1遺伝子発現は、1μM RA及び50ng/ml FGF−10への暴露の48時間後に、胚体内胚葉において観察されるものよりもおよそ500倍高いレベルまで誘導された。さらに、これらの結果は、実質的なPDX1誘導が、RA適用に先立ってアクチビンを施さない培養物に比べてアクチビン処理細胞培養物に見出される160倍高いPDX1発現により示されるように、胚体内胚葉(SOX17)に予め分化させた細胞培養物においてのみ起こったことを示す。
【0420】
〔実施例13〕
FGF−10は、RA単独を上回るPDX1発現のさらなる増大を提供する
本実施例は、RA及びFGF−10の組合せが、RA単独よりも大いにPDX1発現を誘導することを示す。
【0421】
これまでの実施例と同様に、hESCは、アクチビン有り又は無しで4日間培養した。4日目に、細胞を以下のうちの1つで処理した:1μM RA単独、FGF−4又はFGF
−10のいずれかと併用した1μM RA、或いはFGF−4及びFGF−10の両方と
併用した1μM RA。PDX1、SOX7及びNFMの発現は、RA又はRA/FGF
の96時間後に、Q−PCRにより定量された。
【0422】
アクチビン、これに続くレチノイン酸によるhESC培養物の処理は、PDX1遺伝子発現の60倍の増大を誘導した。RA処理物へのFGF−4の添加は、わずかに多いPDX1を誘導した(RA単独に対しておよそ3倍)。しかしながら、FGF−10及びレチノイン酸を共に添加することにより、PDX1の誘導はさらに、RA単独に対して60倍増強された(
図37Aを参照)。この非常に強固なPDX1誘導は、アクチビン無し又はRA/FGF処理を用いた場合よりも1400倍超高かった。興味深いことに、FGF−4及びFGF−10の添加は、FGF−10の有益な効果を同時に根絶させて、FGF−4添加に起因してわずかなPDX1の増大のみをもたらした。
【0423】
RA/FGF−4又はRA/FGF−10の組合せの添加は、RA/FGFの組合せに暴露させない細胞と比較した場合、前腸内胚葉に関連しないマーカー遺伝子の発現を増大させなかった(
図37B及び
図37Cを参照)。
【0424】
〔実施例14〕
レチノイン酸用量は、in vitroで前方−後方(A−P)位置に影響を及ぼす
RAの用量がin vitro細胞培養物のA−P位置に影響を及ぼすかどうかを判定す
るために、以下の実験を実施した。
【0425】
ヒト胚性幹細胞は、アクチビン有り又は無しで4日間培養した。4日目に、50ng/mlのFGF−10は、0.04μM、0.2μM又は1.0μMで、RAを併用して培養物に添加された。PDX1マーカー遺伝子の発現並びに前腸内胚葉に特異的でない他のマーカーの発現をQ−PCRにより定量化した。
【0426】
50ng/mlでのFGF−10と併用した様々な用量でのレチノイン酸の添加は、特異的な前方−後方位置パターンと相関する差次的遺伝子発現パターンを誘導した。RAの最大用量(1μM)は、前方の内胚葉マーカー(HOXA3)の発現を優先的に誘導し、またPDX1の最も強固な増大をもたらした(
図38A及び
図38B)。RAの中間用量(0.2μM)は、中腸内胚葉マーカー(CDX1、HOXC6)を誘導した(
図38C及び
図41Eを参照)のに対して、RAの最小用量(0.04μM)は、後腸内胚葉マーカ
ー(HOXA13)を優先的に誘導した(
図38Dを参照)。RA用量は、神経(SOX1)又はニューロン(NFM)マーカーのいずれかの相対発現に対して実質的に影響しなかった(
図38F及び
図38Gを参照)。本実施例は、in vitroでモルフォゲン
としての、特に分化hESCの内胚葉誘導体のモルフォゲンとしてのRAの使用を示す。
【0427】
〔実施例15〕
B27サプリメントの使用は、PDX1の発現を増強する
胚体内胚葉におけるPDX1発現は、多数の因子の使用及び細胞増殖/分化状態により影響を与え得る。以下の実験では、本発明者等はB27サプリメントの使用が胚体内胚葉細胞においてPDX1の発現を増強することを示す。
【0428】
ヒト胚性幹細胞は、マウス胚線維芽細胞フィーダー上で増殖させた未分化hES細胞を高用量のアクチビンA(0.5〜2%FBS/DMEM/F12中100〜200ng/ml)で4日間処理することにより胚体内胚葉へ分化するように誘導された。アクチビンA無しの対照に、アクチビンAを添加せずに0.5〜2%FBS/DMEM/F12を施した。4日目に、培養物に、2%FBS中のアクチビンA無し(無し)及び2%血清代替物中のアクチビンA無し(SR)、又は2%FBS/DMEM/F12中の2μM RA及
び50ng/ml FGF−10と共に50ng/mlのアクチビンA(無し、+FBS
、+B27)、並びに同様に2%血清代替物(SR)の2μM RA及び50ng/ml FGF−10と共に50ng/mlのアクチビンAのいずれかを施した。B27サプリメント(Gibco/BRL)は、2%FBS/DMEM/F12へ直接50倍希釈として添加した(
+B27)。二重反復細胞サンプルを各点に関して採取して、総RNAを単離して、上述のようにQ−PCRへ付した。
【0429】
図39A〜
図39Eは、無血清サプリメントB27が、血清無しで増殖させた細胞におけるこのようなマーカー遺伝子発現と比較した場合、前腸内胚葉に特異的でないマーカー遺伝子の発現の増大を誘導することなく、PDX1遺伝子発現の誘導にさらなる有益性を提供することを示す。
【0430】
〔実施例16〕
PDX1の誘導を増強するためのアクチビンBの使用
本実施例は、アクチビンBの使用が、in vitro細胞培養物においてPDX1陽性
細胞へのPDX1陰性細胞の分化を増強することを示す。
【0431】
ヒト胚性幹細胞は、マウス胚線維芽細胞フィーダー上で増殖させた未分化hESC細胞を低血清/RPMI中の高用量のアクチビンA(50ng/ml)で6日間処理することにより胚体内胚葉へ分化するように誘導された。FBS用量は、1日目に0%、2日目に0.2%、及び3〜6日目に2%であった。胚体内胚葉産生に関する陰性対照(NF)には、アクチビンAを添加せずに2%FBS/RPMIを施した。PDX1発現を誘導するために、培養物それぞれに、6日目に2%FBS/RPMI中で2μMにてレチノイン酸を施した。1日目〜5日目にアクチビンAで処置した培養物に、種々の用量で組み合せたアクチビンA及びアクチビンBを供給したか、或いは50ng/mlのアクチビンA単独状態を維持した。アクチビンA無しの対照培養物(NF)にはアクチビンAもアクチビンBも供給しなかった。このRA/アクチビン処理は3日間実施して、3日目にPDX1遺伝子発現を二重反復細胞サンプルからのQ−PCRにより測定した。
【0432】
図40Aは、25ng/ml(A25)又は50ng/ml(A50)のアクチビンAの存在下での10〜50ng/ml(a10、a25及びa50)の範囲の用量でのアクチビンBの添加が、50ng/mlでアクチビンAのみを施した培養物を少なくとも2倍PDX1発現を増大させたことを示す。アクチビンBの添加の結果としてのPDX1の増大
は、発達におけるこの時点で肝臓並びに膵臓に関するマーカーであるHNF6発現の増大を伴わなかった(
図40Bを参照)。この結果は、膵臓へ分化している細胞の比率が肝臓に比べて増大していることを示唆する。
【0433】
〔実施例17〕
PDX1の誘導を増強するための血清用量の使用
胚体内胚葉細胞におけるPDX1の発現は、分化プロセス全体にわたって細胞培養物中に存在する血清の量により影響を受ける。以下の実験は、PDX1陰性胚体内胚葉へのhESCの分化中の培養物における血清のレベルが、PDX1陽性内胚葉へのこれらの細胞のさらなる分化中のPDX1の発現に影響することを示す。
【0434】
ヒト胚性幹細胞は、マウス胚線維芽細胞フィーダー上で増殖させた未分化hESCを、低血清/RPMI中の高用量のアクチビンA(100ng/ml)で5日間処理することにより胚体内胚葉へ分化するように誘導された。FBS用量は、1日目に0.1%、2日目に0.5%、及び3〜5日目に0.5%、2%又は10%のいずれかであった。アクチビンA無しの対照(NF)には、毎日同じFBS/RPMI投与を施したが、アクチビンAは添加しなかった。PDX1発現は、RAの添加により6日目に誘導を開始した。6〜7日目中に、培養物に、0.5%FBS/RPMI中で2μMにて、8日目に1μMにて、及び9〜11日目に0.2μMにてレチノイン酸を施した。アクチビンAは、レチノイン酸処理中50ng/mlへ低減させて、アクチビンA無しの対照(NF)から取り去った。
【0435】
図41Aは、3日間の胚体内胚葉誘導(3日目、4日目及び5日目)中のFBS投与は、レチノイン酸処理中にPDX1遺伝子発現の誘導を変化させる持続的な能力を有したことを示す。これは、ZIC1(
図41B)又はSOX7(
図41C)遺伝子発現の発現パターンの有意な変更を伴わなかった。
【0436】
〔実施例18〕
PDX1の誘導を増強するための条件培地の使用
また、胚体内胚葉細胞におけるPDX1の発現に影響を与える他の因子及び成長条件を研究した。以下の実験は、PDX1陽性内胚葉細胞へのPDX1陰性胚体内胚葉細胞の分化に対する条件培地の影響を示す。
【0437】
ヒト胚性幹細胞は、マウス胚線維芽細胞フィーダー上で増殖させた未分化hESC細胞を、低血清/RPMI中の高用量のアクチビンA(100ng/ml)で5日間処理することにより胚体内胚葉へ分化するように誘導された。FBS用量は、1日目に0.2%、2日目に0.5%、及び3〜5日目に2%であった。
【0438】
続いて、5日間のアクチビンA処理により生成された胚体内胚葉培養物は、25ng/mlでアクチビンAを含有する2%FBS/RPMI中でのRAの添加により、PDX1発現内胚葉へ分化するように4日間誘導させた。RAは、添加の最初の2日間に関しては2μM、3日目には1μM、及び4日目には0.5μMであった。PDX1誘導に関するこの基本培地は、新鮮な状態で(2A25R)或いは4つの異なる細胞集団のうちの1つにより24時間条件付けした後に供給された。条件培地(CM)は、マウス胚線維芽細胞(MEFCM)から、或いは3つの条件、i)3%FBS/RPMI(CM2)又はii)アクチビンA(CM3)又はiii)骨形態形成タンパク質4(BMP4)(CM4)のうちの1つによりまず5日間分化させたhESCから生成した。アクチビンA又はBMP4因子は、上述したものと同じFBS投与レジメン(0.2%、0.5%、2%)下で100ng/mlで供給された。これらの3つの異なる分化パラダイムは、PDX1誘導培地が条件付けられ得るヒト細胞の3つの非常に異なる集団を生じる。増殖因子を添加しな
い3%FBS(NF)は、大部分が胚体外内胚葉細胞、外胚葉細胞及び中胚葉細胞で構成される不均一集団を生じる。アクチビンA処理培養物(A100)は、大部分の胚体内胚葉をもたらし、BMP4処理培養物(B100)は、主として栄養外胚葉及び幾らかの胚体外内胚葉をもたらす。
【0439】
図42Aは、PDX1がRA処理の最初の2日間にわたって新鮮な培地及び条件培地において同等に誘導されたことを示す。しかしながら、3日目までには、PDX1発現は、新鮮な培地及びMEF条件培地処理において減少し始めた。分化されたhESCは、維持、或いは新鮮な培地よりも3〜4倍高いレベルでPDX1遺伝子発現のさらなる増大をもたらす条件培地を生じた。hESC条件培地において高PDX1発現を維持する効果はさらに、RA処理の4日目に増幅されて、新鮮な培地よりも6〜7倍高いレベルを達成した。
図42Bは、条件培地処理が、CDX1遺伝子発現の相当低いレベルをもたらし、遺伝子は、PDX1発現内胚葉の領域では発現されなかったことを示す。これは、PDX1発現内胚葉の全体的な純度が、分化されたhESC培養物から生成される条件培地で胚体内胚葉を処理することによりかなり増強されたことを示している。
【0440】
図43は、PDX1遺伝子発現が、胚体内胚葉細胞へ適用させる条件培地の量に対する陽性の用量応答を示したことを示す。各プレートへ添加される培地の総容量は5mlであり、条件培地の指示容量(
図43を参照)は、新鮮な培地(A25R)へ希釈した。新鮮な培地4mlへ添加される条件培地ちょうど1mlは、依然として新鮮な培地単独5mlよりも高いPDX1発現レベルを誘導及び維持することが可能であったことに留意されたい。これは、PDX1発現内胚葉の誘導に関する条件培地の有益な効果が、細胞から条件培地への幾らかの物質(単数又は複数)の放出に依存的であること、及びこの物質(単数又は複数)が、PDX1発現内胚葉の産生を用量依存的に増強することを示唆する。
【0441】
〔実施例19〕
PDX1へ結合する抗体の確証
PDX1へ結合する抗体は、細胞集団中のPDX1発現の誘導をモニタリングするための有用なツールである。本実施例は、PDX1に対するウサギポリクローナル抗体及びIgY抗体を使用して、このタンパク質の存在を検出することができることを示す。
【0442】
第1の実験では、細胞溶解産物におけるPDX1と結合するIgY抗PDX1(IgYα−PDX1)抗体をウェスタンブロット分析により確証した。この分析で、MDX12ヒト線維芽細胞又はPDX1発現ベクターで予め24時間トランスフェクトしたMDX12細胞由来の総細胞溶解産物50μgへのIgY α−PDX1抗体の結合を比較した。細
胞溶解産物は、SDS−PAGEにより分離して、エレクトロブロッティングにより膜へ転写して、その後IgY α−PDX1一次抗血清で、それに続いてアルカリホスファタ
ーゼ結合ウサギ抗IgY(Rb α−IgY)二次抗体でプロービングした。一次抗体及
び二次抗体の種々の希釈は、細長い膜(strips of the membrane)を分離するために以下の組合せで適用した:A(500倍一次希釈、10,000倍二次希釈)、B(2,000倍、10,000倍)、C(500倍、40,000倍)、D(2,000倍、40,000倍)、E(8,000倍、40,000倍)。
【0443】
結合は、試験した抗体の組合せすべてにてPDX1発現ベクター(PDX1陽性)でトランスフェクトした細胞中で検出された。最大濃度の一次抗体及び二次抗体の両方を共に使用する場合(組合せA)で、結合は、トランスフェクトしていない(PDX1陰性)線維芽細胞において観察されるのみであった。このような非特異的結合は、トランスフェクトした線維芽細胞及びトランスフェクトしていない線維芽細胞の両方においてPDX1よりもわずかに高い分子量でのさらなるバンドの検出を特徴とした。
【0444】
第2の実験では、PDX1へのポリクローナルウサギ抗PDX1(Rb α−PDX1)
抗体の結合を免疫組織化学により試験した。このような実験用のPDX1発現細胞を産生するために、MS1−V細胞(ATCC#CRL−2460)をPDX1EGFPの発現ベクター(pEGFP−N1(Clontech)を用いて構築した)で一過的にトランスフェクトした。続いて、トランスフェクト細胞をRb α−PDX1及びα−EGFP抗血清で標
識した。トランスフェクト細胞は、Cy5結合二次抗体の使用によるEGFP蛍光並びにα−EGFP免疫組織化学の両方により可視化した。PDX1免疫蛍光は、α−Rb C
y3結合二次抗体の使用により可視化した。
【0445】
Rb α−PDX1及びα−EGPF抗体の結合は、GPF発現と共局在化した。
【0446】
〔実施例20〕
ヒト膵臓組織の免疫組織化学
本実施例は、PDX1に対する特異性を有する抗体を使用して、免疫組織化学によりヒトPDX1陽性細胞を同定することができることを示す。
【0447】
第1の実験では、ヒト膵臓のパラフィン包埋切片を、200倍希釈でのモルモット抗インスリン(Gp α−Ins)一次抗体で、これに続いて100倍希釈でのCy2へ結合さ
れたイヌ抗モルモット(D α−GP)二次抗体でインスリンに関して染色した。第2の
実験では、ヒト膵臓の同じパラフィン包埋切片を、4000倍希釈でのIgY α−PD
X1一次抗体で、これに続いて300倍希釈でのAF555へ結合されたRb α−Ig
Y二次抗体でPDX1に関して染色した。第1の実験及び第2の実験から回収した画像を併せた。第3の実験では、IgY α−PDX1抗体で染色した細胞をDAPIでも染色
した。
【0448】
ヒト膵臓切片の分析により、ランゲルハンス島の強力な染色の存在が明らかとなった。最強のPDX1シグナルは島(インスリン陽性)に出現したが、弱い染色は腺房組織(インスリン陰性)でも観察された。DAPI及びPDX1同時染色は、PDX1が、大部分(しかし、排他的ではない)核へ局在化したことを示す。
【0449】
〔実施例21〕
レチノイン酸処理細胞からのPDX1の免疫沈降
RAの存在下で分化させた胚体内胚葉細胞におけるPDX1発現、及びRAを用いて分化させなかった胚体内胚葉細胞におけるPDX1の欠如をさらに確認するために、ウサギ抗PDX1(Rb α−PDX1)抗体を使用して、RA分化させた胚体内胚葉細胞及び未
分化の胚体内胚葉細胞の両方からPDX1を免疫沈降させた。免疫沈降させたRAは、IgY α−PDX1抗体を使用してウェスタンブロット分析により検出した。
【0450】
免疫沈降用の未分化の胚体内胚葉細胞溶解産物及び分化した胚体内胚葉細胞溶解産物を得るために、hESCを低血清中で100ng/mlでのアクチビンAで5日間処理した(胚体内胚葉)後、50ng/mlでのアクチビンA及び2μMのオールトランスRAで2日間(1μMで1日間、及び0.2μMで1日間)処理した(PDX1陽性前腸内胚葉)。陽性対照として、細胞溶解産物はまた、PDX1発現ベクターでトランスフェクトしたMS1−V細胞(ATCC#CRL−2460)からも調製した。PDX1は、Rb α
−PDX1及びウサギ特異的二次抗体を各溶解産物へ添加することにより免疫沈降させた。沈降物を遠心分離により回収した。免疫沈降物をSDS含有緩衝液中に溶解させた後、ポリアクリルアミドゲル上へ充填した。分離後、タンパク質をエレクトロブロッティングにより膜へ転写し、その後IgY α−PDX1一次抗体、これに続いて標識Rb α−IgY二次抗体でプロービングした。
【0451】
MS1−V陽性対照細胞から回収した免疫沈降物並びに8日目(レーンd8、RA処理の開始の3日後)及び9日目(レーンd9、RAの開始の4日後)の細胞からの免疫沈降物は、PDX1タンパク質に関して陽性であった(
図44)。未分化の胚体内胚葉細胞(すなわち、アクチビンAで処理した5日目の細胞−
図44において(A)で示す)及び未分化のhESC(すなわち、未処理の5日目の細胞−
図44において(NF)で示す)から得られた沈降物はPDX1に関して陰性であった。
【0452】
〔実施例22〕
PDX1プロモーター−EGFPトランスジェニックhESC系の生成
細胞単離に関してPDX1マーカーを使用するために、本発明者等は、PDX1陽性前腸内胚葉細胞を発現可能なレポーター遺伝子で遺伝的にタグ付けした。本実施例は、PDX1調節領域の制御下でレポーター遺伝子を含有するレポーターカセットを含むベクターの構築について記載する。本実施例はまた、このベクターでトランスフェクトした細胞(例えば、ヒト胚性幹細胞)、並びにそのゲノムに組み込まれたこのレポーターカセットを有する細胞の調製について記載する。
【0453】
レポーター遺伝子で遺伝的にタグ付けしたPDX1発現胚体内胚葉細胞系は、PDX1遺伝子の調節領域(プロモーター)の制御下にGFPレポーター遺伝子を配置させることにより構築された。まず、EGFP発現がヒトPDX1遺伝子プロモーターにより誘導されるプラスミド構築物は、ベクターpEGFP−N1(Clontech)のCMVプロモーターをPDX1転写開始部位の上流約4.4キロ塩基対(kb)から下流約85塩基対(bp)に及ぶヌクレオチド配列を含むヒトPDX1制御領域(Genbankアクセッション番号AF192496)で置き換えることにより生成された。この領域は、PDX1遺伝子の特徴とされる調節要素を含有し、トランスジェニックマウスにおいて正常なPDX1発現パターンを付与するのに十分である。得られたベクターにおいて、EFGPの発現は、PDX1プロモーターにより誘導される。いくつかの実験では、このベクターは、hESCへトランスフェクトすることができる。
【0454】
PDX1プロモーター/EGFPカセットを上記ベクターから切除して、続いてホスホグリセリン酸キナーゼ1プロモーターの制御下でネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子を含有する選択ベクターへサブクローニングした。選択カセットは、カセットの除去を可能にするためにflpリコンビナーゼ認識部位に隣接された。この選択ベクターを線状化した後、標準的なリポフェクション方法を使用してhESCへ導入した。G418における選択の10〜14日後に、未分化のトランスジェニックhESCクローンを単離及び拡大させた。
【0455】
〔実施例23〕
PDX1陽性前腸内胚葉の単離
以下の実施例は、PDX1プロモーター/EGFPカセットを含むhESCがPDX1陽性内胚葉細胞へ分化され、これに続いて蛍光活性化細胞選別器(FACS)により単離され得ることを実証する。
【0456】
PDX1プロモーター/EGFPトランスジェニックhESCは、アクチビンA含有培地中で5日間、これに続いてアクチビンA及びRAを含む培地中で2日間分化させた。続いて、分化細胞は、トリプシン消化により回収して、Becton Dickinson FACS Diva上でRNA溶解緩衝液又はPBSへ直接選別した。単一の生細胞のサン
プルが、EGFPに関してゲーティングすることなく採取され(Live)、単一の生細胞は、EGFP陽性(GFP)及びGFP陰性(Neg)集団へゲーティングされた。一実験では、EGFP陽性分画は、蛍光強度に従って2つの同様のサイズの集団に分離された(Hi及びLo)。
【0457】
選別後、細胞集団は、Q−PCR及び免疫組織化学の両方により分析した。Q−PCRに関して、RNAは、Qiagen RNeasyカラムを使用して調製されて、その後c
DNAへ変換された。Q−PCRは、上述したように実施した。免疫組織化学分析に関して、細胞をPBS中に選別して、4%パラホルムアルデヒド中で10分間固定して、Cytospin遠心分離機を使用してスライドガラス上へ接着させた。サイトケラチン19(KRT19)に対する一次抗体はChemicon製であり、肝細胞核因子3β(HNF3β)に対する一次抗体はSanta Cruz製であり、グルコーストランスポーター2(GLUT2)に対する一次抗体はR&D systems製であった。FITC(緑色)又はローダミン(赤色)に結合させた適切な二次抗体を使用して、一次抗体の結合を検出した。
【0458】
分化細胞の典型的なFACS選別を
図45に示す。本実施例における単離PDX1陽性細胞のパーセントはおよそ7%であり、約1%〜約20%まで分化効率に応じて変化した。
【0459】
選別した細胞はさらに、Q−PCR分析に付した。分化細胞は、EGFP蛍光と内因性PDX1遺伝子発現との相関を示した。非蛍光性細胞と比較して、EGFP陽性細胞は、PDX1発現レベルの20倍を超える増大を示した(
図46)。高及び低EGFP強度の細胞の分離は、EGFP発現レベルがPDX1発現レベルと相関することを示した(
図47)。PDX1マーカー分析に加えて、選別した細胞は、膵臓内胚葉において発現されるいくつかの遺伝子のQ−PCR分析に付した。これらのマーカー遺伝子(NKX2.2、GLUT2、KRT19、HNF4α及びHNF3β)のそれぞれの産物はすべて、EGFP陽性分画で富化された(
図48A〜
図48E)。対照的に、神経マーカーZIC1及びGFAPは、選別されたEGFP発現細胞において富化されなかった(
図49A及び
図49B)。
【0460】
免疫組織化学により、事実上すべての単離PDX1陽性細胞が、KRT19及びGLUT2を発現するとみなされた。この結果は、膵臓内胚葉系統の細胞に関して予測される。これらの細胞の多くはまた、抗体染色によりHNF3β陽性であった。
【0461】
〔実施例24〕
PDX1陽性背側前腸内胚葉及びPDX1陽性腹側前腸内胚葉の産生
本実施例は、PDX1陽性背側偏向前腸内胚葉の産生、並びにPDX1陽性腹側偏向前腸内胚葉の産生を記載する。
【0462】
各日、100ng/mlの濃度でアクチビンAを培地に供給する3日又は5日プロトコールを用いて、未分化hESCから、胚体内胚葉を産生した。背側分化及び腹側分化の両方に関して、最初の5日間の培地組成は以下の通りであった:1日目 − RPMI+0%ウシ胎児血清(FBS)、2日目 − RPMI+0.2%FBS、3日目 − RPMI+2.0%FBS、4日目 − RPMI+2.0%FBS、及び5日目 − RPMI+2.0%FBS。腹側分化に関して、100ng/mlでのアクチビンA中で3日間、胚体内胚葉を産生し、次に3ng/mlのBMP4及び50ng/mlのFGF10に曝露した。最初の2日間はRPMI+2%FBS中で、次いでその後、B27サプリメント(1部のB27対200部の培地(容積で) − (1:200))(Invitrogen, Carlsbad, CA)を含有するConnaught Medical Research Labs(CMRL
)培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)(Parker R.C.他, 1957. N.Y. Academy of Sciences 5: 303参照(この記載内容は参照により本明細書中で完全に援用される))中で、BMP4/FGF10添加を実行した。背側分化手法に関して、100ng/mlのアクチビンA中で5日間、胚体内胚葉を産生し、次に、B27サプリメントを含有するCMRL培地(1:200)中の2μMのレチノイン酸(RA)及び25ng/mlのアクチビンAに曝露した。
【0463】
RAベースの背側分化手法では、PDX1の強力な誘導、並びにHHEX又はアルブミン(これらは腹側肝臓マーカーである)の発現誘導を伴わないHB9発現の保持が存在する(
図50A〜
図50D)。RAを用いないが、代わりにFGF10及びBMPを用いる腹側分化プロトコールでは、PDX1遺伝子発現も強く誘導された。RA処理に対比して、HB9(背側内胚葉マーカー)発現は保持されず、そして腹側肝臓マーカー、例えばアルブミン及びHHEXはPDX1とともに強く誘導された(
図50A〜
図50D)。これらのデータは、RAの存在下で、前腸PDX1発現内胚葉は肝臓(腹側器官)マーカーを欠き、そしてHB9のような背側マーカーを発現するということを示した。RAの非存在下では、PDX1発現は高HB9発現レベルを伴わなかった。さらに古典的肝臓マーカー、例えばアルブミン及びHHEXの発現は、肝臓が専ら腹側内胚葉に由来するため、胚体内胚葉が腹側分化プログラムを選択的に遂行するということを示した。
【0464】
〔実施例25〕
PDX1陽性腹側前腸内胚葉細胞の産生は胚体内胚葉形成によっている
本実施例は、種々の量の胚体内胚葉細胞を含む培養物からのPDX1陽性腹側偏向前腸内胚葉の産生を記載する。胚体内胚葉を有しない培養物は、PDX1陽性腹側偏向前腸内胚葉の極めて少ない産生を示す。胚体内胚葉細胞の初期量が増大するように、腹側偏向前腸内胚葉の産生も増大する。
【0465】
4つの別個の条件を用いて、胚体内胚葉への種々の割合の分化を生じるhESCを処理した。4つの条件はすべて、1日目に0%FBSを、2日目に0.2%FBSを、そして3日目及び4日目に2%FBSを補充するRPMIを利用した。4つの条件を以下に示す:(a)5μMのSU5402を伴う100ng/mLのBMP4、(b)外因性増殖因子なし、(c)15ng/mLのアクチビンA、並びに(d)100ng/mlのアクチビンA。最初の4日間の分化の後、産生される胚体内胚葉の相対レベルはサーベラス(CER)及びSOX17発現レベルにより示され、それにより胚体内胚葉は条件(a)下では本質的に存在せず、条件(b)下では最小限であり、条件(c)下では存在し、そして条件(d)下では高度に存在した。次にすべての培養物を、RPMI中の2%FBSの基本培地中の3ng/mLのBMP4、50ng/mlのFGF10及び0.5μMのKAAD−シクロパミンとともに2日間、その後、B27抽出物の200倍希釈液を伴うCMRLから成る基本培地中の3ng/mLのBMP4、50ng/mlでのFGF10及び0.5μMのKAAD−シクロパミンとともに6日間、インキュベートした。
【0466】
SU5402及びBMP4の存在下で、その条件下ではCER及びSOX17遺伝子発現の欠如により実証されるように胚体内胚葉が産生されず(
図51A及び51B)、BMP4/FGF10による処理(腹側内胚葉条件)後、PDX1又はアルブミン遺伝子発現の誘導は認められなかった(
図51C及び
図51D)。これは、無増殖因子条件(条件(b))に関しても同様にいえたが、この場合、低レベルのCER及びSOX17により示されるように、極最小レベルの胚体内胚葉が形成された(
図51A及び
図51B)。PDX1及びアルブミン遺伝子発現は無増殖因子条件下では非常に低かった(
図51C及び
図51D)が、遺伝子発現の量は、条件(a)から産生されるものより有意に大きかった。中間(15ng/ml)及び高(100ng/ml)用量のアクチビンAで処理されたhESCは、高SOX17遺伝子発現レベルにより示される強固な胚体内胚葉分化を生じた(
図51B)。高用量アクチビン処理は、非常に高いCER発現レベルにより示されるような、主に前内胚葉形質を有する胚体内胚葉を産生した。条件(c)及び条件(d)の処理はともに、高レベルのPDX1及びアルブミン遺伝子発現により示されるような強固な腹側内胚葉分化を示した(
図51C及び
図51D)。前内胚葉はより後の内胚葉に分化する能力を依然として有するが、一方、後内胚葉細胞はより前方性の運命(anterior fates)を獲得する能力を失っているため、PDX1及びアルブミン発現のレベルはほとんどの前
内胚葉において最大であった。これらのデータは、腹側PDX1発現前腸内胚葉及び肝臓の産生が胚体内胚葉の効率的産生によっているということを強く示した。
【0467】
〔実施例26〕
BMP4はPDX1陽性腹側前腸内胚葉に必要でない
本実施例は、BMP4の非存在下でのPDX1陽性腹側偏向前腸内胚葉の産生を記載する。
【0468】
それぞれ1日目〜3日目に、0%、0.2%及び2%FBSを補充したRPMI基本培地中の100ng/mLのアクチビンに未分化hESCを曝露することにより、胚体内胚葉を産生した。アクチビンA処理の3日後、2%FBSを含有するRPMIから成る基本培地に培養物を切り替えて、以下の条件のうちの1つの下で保持した:(a)50ng/mlのFGF10及び0.5μMのKAAD−シクロパミンを伴う3ng/mLのBMP4、(b)50ng/mlのFGF10及び0.5μMのKAAD−シクロパミン、或いは(c〜e)外因性因子なし。2日後、上記の条件(a〜c)に従って、基本培地をCMRL+B27サプリメント(1:200)に取り替えて、細胞を保持した。代替的には、B27サプリメント(1:200)を有するRPMI(条件(d))又は2%FBSを有するRPMI(条件(e))中に外因性因子を伴わずに、細胞を保持した。同一の因子処理条件を、8日より長い分化の間、保持した。
【0469】
BMP4は、BMP4の非存在下でのPDX1及びアルブミンの発現の強固な誘導により示されるように、PDX1陽性腹側前腸内胚葉細胞又は肝臓内胚葉細胞のいずれかを産生するために必要でなかった(
図52A及び
図52B)。BMP4添加はPDX1陽性腹側前腸内胚葉の産生のためにあまり好ましくないと思われたが、FGF10及びKAAD−シクロパミン処理へのBMP4の添加は腹側前腸肝臓内胚葉遺伝子発現を低減しない(
図52A及び
図52B)。B27サプリメントを伴うCMRLの使用は、添加因子の非存在下(条件(c))でPDX1発現を誘導する何らかの能力を有したが、一方、B27を伴うRPMI(条件(d))及び2%FBSを伴うRPMI(条件(e))はPDX1発現の如何なる誘導も示さなかった(
図52A)。肝臓遺伝子発現の誘導に及ぼす基本培地の有意の作用が存在するとは思われなかった。要するに、FGF10及びKAAD−シクロパミンは、PDX1陽性腹側前腸内胚葉を産生するのに十分である。
〔実施例27〕
PDX1陽性背側前腸内胚葉及びPDX1陽性腹側前腸内胚葉の同定のためのマーカー
【0470】
本実施例は、特に、PDX1陽性背側前腸内胚葉及びPDX1陽性腹側前腸内胚葉の同定、検出、富化、単離、精製、標的化及び/又は検証のために有用なマーカーを記載する。
【0471】
実施例24に記載されたように分化される細胞培養物を遺伝子チップ分析に付して、胚体内胚葉への、そしてさらにより成熟した背側内胚葉表現型及び腹側内胚葉表現型へのhESCの分化中に起こる遺伝子発現動態を包括的にモニタリングした。実施例24で示された時点で、二重反復サンプルを単離した。その内部標準操作手順に従って、Expression Analysis(Durham, NC)によるAffymetrixのU133プラス2.0高密度オリゴヌクレオ
チドアレイを用いて、遺伝子発現プロファイルを確定した。手動検査による、並びに階層的クラスター分析によるこれら7つの条件/時点全体の遺伝子発現のパターンを評価した。腹側分化パラダイム及び背側分化パラダイムの両方で発現される新規の遺伝子を見出すためにPDX1発現(背側及び腹側)の一過性パターンを整合させる遺伝子発現のパターンを調べた。
【0472】
PDX1との発現パターンにおける有意の類似性を有し、したがってPDX1発現前腸内胚葉細胞中で同時発現され得る遺伝子が提供される。表3に列挙した遺伝子は、背側及び
腹側のPDX1分化の両方で発現される。表4中の遺伝子は、背側偏向され、そして背側PDX1パターンで選択的に発現される。
【0473】
表3は、背側及び腹側のPDX1陽性前腸内胚葉の両方で発現される39のマーカーを列挙する。列1は、各マーカーに関して一般的に既知の遺伝子記号を提示する。列2〜列4は、それぞれUnigene、LocusLink及びOMIMアクセッション番号を提示する。列5は、列1に記載したマーカーを含む核酸配列に関するGenebankアクセッション番号を記載した。最後に列6は、列挙遺伝子マーカーによりコードされるポリペプチドマーカーの機能的活性の説明を提示する。
【0474】
表3に列挙したアクセッション番号は、これらのマーカーの各々の主要な核酸配列及びポリペプチド配列の両方を含めて表に記載した各配列についての特定情報を検索するために当業者に用いられ得ると理解される。
【0475】
【表3A】
【表3B】
【0476】
図53A〜
図53Eはさらに、PDX1と表3から選択されるマーカーとの間の発現プロファイルの共通点を例証する。特に
図53A〜
図Eは、この実験でモニタリングされる7つの条件/時点全体のPDX1の発現とほぼ同一の遺伝子発現パターンを表示した遺伝子の例を提示する。類似性のこの程度のパターン認識はほとんど、PDX1を発現し、したがってこれらのマーカーを、背側及び/又は腹側の内胚葉起源の両方からのPDX1陽性前腸内胚葉に関する優れた新規の候補マーカーにする同一細胞中でのこれらの遺伝子の同時発現を反映する。
【0477】
表4は、背側PDX1陽性前腸内胚葉中で特異的及び/又は選択的に発現される50個のマーカーを列挙する。列1は、各マーカーに関して一般的に既知の遺伝子記号を提示する。列2〜列4は、それぞれUnigene、LocusLink及びOMIMアクセッション番号を提示する。列5は、列1に記載したマーカーを含む核酸配列に関するGenebankアクセッション番号を記載した。最後に列6は、列挙遺伝子マーカーによりコードされるポリペプチドマーカーの機能的活性の説明を提示する。
【0478】
表4に列挙したアクセッション番号は、これらのマーカーの各々の主要な核酸配列及びポリペプチド配列の両方を含めて表に記載した各配列についての特定情報を検索するために当業者に用いられ得ると理解される。
【0479】
【表4A】
【表4B】
【表4C】
【0480】
図54A〜
図54Dは、背側内胚葉条件(RA処理)における特異的(HOXA1及びPDE11A)又は選択的(FAM49A及びWNT5A)発現を示す遺伝子発現のパターンを表示する遺伝子の例を提示する。これらのマーカーは、PDX1陽性背側偏向前腸内胚葉の同定のための新規の候補遺伝子である。
【0481】
〔実施例28〕
PDX1陰性前腸内胚葉の産生
本実施例は、PDX1陰性前腸内胚葉の産生を記載する。
【0482】
ヒト胚性幹細胞を2段階プロトコールにより7日間分化させて、PDX1細胞を得た。第一段階は、DEを強固に産生するためのアクチビンA中での5日間の分化から成る(D'Amour, K.他, Nature Biotechnology 23, 1534-1541, (2005))。段階2は、FGF10(
50ng/ml)及びKAAD-シクロパミン(0.5μM)を含有する2%FBSを伴
う新鮮なRPMI中での2日分化から成る。
【0483】
FGF10(5〜500ng/ml)の添加は、KAAD−シクロパミン(0.1〜2μM、ソニックヘッジホッグ阻害剤)の添加とともに有益であり、これらは胚体内胚葉細胞を前腸内胚葉ドメインにさらに特殊化した。
【0484】
本明細書中に記載される方法、組成物及び装置は、目下、好ましい実施形態を代表するものであり、例示であって、本発明の範囲を限定するものではない。その変更及びその他の使用は当業者に行われ、これらは本発明の精神に包含され、そして開示の範囲により限定される。したがって本発明の範囲及び精神を逸脱することなく、本明細書に開示される発明に種々の置換及び修正がなされ得るということは、当業者には明らかである。
【0485】
添付の特許請求の範囲及び本開示全体を通して用いられる場合、「本質的に〜から成る」という語句は、当該語句の後ろに列挙される任意の要素を含むことを意味し、列挙した要素に関する開示において特定される活性又は作用を妨害しないか又は関与しない他の要素に限定される。したがって「本質的に〜から成る」という語句は、列挙した要素が必要とされるか又は必須であるが、他の要素は任意であり、それらが列挙した要素の活性又は作用に影響を及ぼすかにかかわらず存在してもしなくてもよいということを示す。
【0486】
本明細書中には多くの文献及び特許文献が引用されている。本特許文書中に引用される個々、及び全ての引用はその全体が引用として組み入れられる。
【0487】
いくつかの参考文献については完全な引用を本文中に示した。その他の引用文献については、本文中の引用は著者と発行年によるものであり、完全な引用を以下に示す。
【0488】
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