(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077058
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
B66B 23/02 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
B66B23/02 C
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-128603(P2015-128603)
(22)【出願日】2015年6月26日
(65)【公開番号】特開2017-7857(P2017-7857A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2015年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】砂田 哲哉
【審査官】
井上 信
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−93627(JP,A)
【文献】
特開昭62−27291(JP,A)
【文献】
特表2006−513947(JP,A)
【文献】
国際公開第2002/002452(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋に支持アングルによって支持されるトラスと、
前記トラスの一端部に設けられた機械室と、
前記トラス内の長手方向に沿って配され、かつ、無端状に連結された複数の踏段と、
前記トラスから立設された左右一対の欄干と、
左右一対の前記欄干の上部をそれぞれ走行する左右一対の無端状の手摺りベルトと、
前記機械室内に配され、前記踏段を駆動させるための左右一対の主駆動スプロケットと、
前記機械室内の左右一対の前記主駆動スプロケットより他端側に設けられ、前記踏段と同期させて前記手摺りベルトを駆動する左右一対の手摺り駆動スプロケットと、
前記機械室内の左右一対の前記主駆動スプロケットより前記他端側に設けられ、モータ軸が水平に配されたモータと、
左右一対の前記主駆動スプロケットの回転軸と前記モータの前記モータ軸とを連結するギアボックスと、
を有し、
前記ギアボックスが、第1ギアボックスと第2ギアボックスとから構成され、
前記モータの前記モータ軸と前記第1ギアボックスとが連結され、
前記主駆動スプロケットの前記回転軸と前記第2ギアボックスとが連結され、
前記第1ギアボックスと前記第2ギアボックスとが水平な連結軸で連結され、
前記第2ギアボックスが、前記トラス内における左側の前記主駆動スプロケットの外側に設けられ、前記モータと前記第1ギアボックスが、前記トラス内における前記第2ギアボックスが設けられている左側に片寄って設けられているか、又は、前記第2ギアボックスが、前記トラス内における右側の前記主駆動スプロケットの外側に設けられ、前記モータと前記第1ギアボックスが、前記トラス内における前記第2ギアボックスが設けられている右側に片寄って設けられている、
乗客コンベア。
【請求項2】
前記第1ギアボックスが、第1ヘリカルギアと第2ヘリカルギアから構成され、
前記第1ヘリカルギアに前記モータ軸が連結され、
前記第2ヘリカルギアに前記連結軸が連結されている、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記第2ギアボックスが、第1ベベルギアと第2ベベルギアから構成され、
前記第1ベベルギアに前記連結軸が連結され、
前記第2ベベルギアに前記回転軸が連結されている、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記第2ギアボックスが、第1ハイポイドギアと第2ハイポイドギアから構成され、
前記第1ハイポイドギアに前記連結軸が連結され、
前記第2ハイポイドギアに前記回転軸が連結されている、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記主駆動スプロケットの前記回転軸と左右一対の前記手摺り駆動スプロケットの回転軸とが連結ベルトで連結されている、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項6】
前記モータが、左右一対の前記主駆動スプロケットによって反転する上下の前記踏段の間に設けられている、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項7】
前記第1ギアボックスと前記第2ギアボックスによって、前記モータの前記モータ軸の減速を行う、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、エスカレータ、動く歩道などの乗客コンベアにおいて、踏段と手摺りベルトを駆動させる駆動装置は、トラスの一端部に設けられている機械室内に設置し、この駆動装置により主駆動スプロケットと手摺り駆動スプロケットを回転させて、踏段と手摺りベルトを同期して走行させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−259161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近、地震に対する乗客コンベアの安全性を高めるため、乗客コンベアの設置に関する法律(建築基準法施行令)が改正される。この改正のポイントは、建屋にトラスを設置する場合に、トラスと建屋との隙間を従来より大きくして、地震などによって揺れがあっても、その揺れによる動きをこの隙間で吸収するためである。
【0005】
ところが、従来の乗客コンベアは、建屋とトラスの隙間が少ししかなく、この法律を遵守するためには、機械室を小さくする必要があるという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明の実施形態は上記問題点に鑑み、機械室を小さくできる乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、建屋に支持アングルによって支持されるトラスと、前記トラスの一端部に設けられた機械室と、前記トラス内の長手方向に沿って配され、かつ、無端状に連結された複数の踏段と、前記トラスから立設された左右一対の欄干と、左右一対の前記欄干の上部をそれぞれ走行する左右一対の無端状の手摺りベルトと、前記機械室内に配され、前記踏段を駆動させるための左右一対の主駆動スプロケットと、前記機械室内の左右一対の前記主駆動スプロケットより他端側に設けられ、前記踏段と同期させて前記手摺りベルトを駆動する左右一対の手摺り駆動スプロケットと、前記機械室内の左右一対の前記主駆動スプロケットより前記他端側に設けられ、モータ軸が水平に配されたモータと、左右一対の前記主駆動スプロケットの回転軸と前記モータの前記モータ軸とを連結するギアボックスと、を有
し、前記ギアボックスが、第1ギアボックスと第2ギアボックスとから構成され、前記モータの前記モータ軸と前記第1ギアボックスとが連結され、前記主駆動スプロケットの前記回転軸と前記第2ギアボックスとが連結され、前記第1ギアボックスと前記第2ギアボックスとが水平な連結軸で連結され、前記第2ギアボックスが、前記トラス内における左側の前記主駆動スプロケットの外側に設けられ、前記モータと前記第1ギアボックスが、前記トラス内における前記第2ギアボックスが設けられている左側に片寄って設けられているか、又は、前記第2ギアボックスが、前記トラス内における右側の前記主駆動スプロケットの外側に設けられ、前記モータと前記第1ギアボックスが、前記トラス内における前記第2ギアボックスが設けられている右側に片寄って設けられている、乗客コンベアである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態のエスカレータ10を
図1〜
図3に基づいて説明する。
【0010】
(1)エスカレータ10
エスカレータ10の構造について、
図1と
図2に基づいて説明する。
【0011】
エスカレータ10の枠組みであるトラス12が、建屋1の上階と下階に跨がって支持アングル2,3を用いて支持されている。
【0012】
トラス12の上端部にある上階側の機械室14内には、踏段30を走行させるモータ20を含む駆動装置18が設けられている。この駆動装置18については、後から説明する。この駆動装置18により左右一対の主駆動スプロケット24,24と左右一対の手摺りベルトスプロケット22,22が回転する。また、上階側の機械室14内の一端部には、モータ20を制御する制御装置50が設けられている。
【0013】
トラス12の下端部にある下階側の機械室16内には、左右一対の従動スプロケット26,26が設けられている。上階側の左右一対の主駆動スプロケット24,24と下階側の左右一対の従動スプロケット26,26との間には、左右一対の無端の踏段チェーン28,28が掛け渡されている。左右一対の無端状の踏段チェーン28,28には、複数の踏段30が等間隔で無端状で連結されている。モータ20が回転すると踏段30の前輪301は、トラス12に固定された案内レール23を走行し、後輪302はトラス12に固定された案内レール25を走行する。
【0014】
トラス12の左右両側には、左右一対の欄干36,36が立設されている。この欄干36の上部に手摺りレール39が設けられ、この手摺りレール39に沿って無端状の手摺りベルト38が移動する。欄干36の上階側の正面下部には上階側の正面スカートガード40が設けられ、下階側の正面下部には下階側の正面スカートガード42が設けられ、正面スカートガード40,42から手摺りベルト38の出入口であるインレット部46,48がそれぞれ突出している。
【0015】
欄干36の側面下部には、スカートガード44が設けられ、左右一対のスカートガード44,44の間を踏段30が走行する。上下階のスカートガード44の内側面には、操作盤52,56、スピーカ54,58がそれぞれ設けられている。
【0016】
手摺りベルト38は、上階側のインレット部46から正面スカートガード40内に侵入し、案内ローラ64を介して手摺りベルトスプロケット22に掛け渡され、その後、案内ローラ66を介してスカートガード44内を移動し、下階側のインレット部46から正面スカートガード42外に表れる。そして、手摺りベルト38は、手摺りベルトスプロケット22が主駆動スプロケット24と共に回転することにより踏段30と同期して移動する。
【0017】
上階側の左右一対のスカートガード44,44の乗降口であって、機械室14の天井面には、上階側の乗降板32が水平に設けられている。下階側の左右一対のスカートガード44,44の乗降口であって、機械室16の天井面には、下階側の乗降板34が水平に設けられている。上階側の乗降板32の先端には櫛歯状のコム60が設けられ、このコム60に踏段30が侵入する。また、下階側の乗降板34の先端にも櫛歯状のコム62が設けられている。
【0018】
(2)駆動装置18
次に、駆動装置18について
図2と
図3に基づいて説明する。
【0019】
左右一対の主駆動スプロケット24,24は、上階側の機械室14の左右方向で、かつ、水平に配された回転軸68によって同軸に連結されている。回転軸68の両端部にはそれぞれ回転自在に支持するための軸受け70,70が設けられ、左右一対の軸受け70,70はトラス12の左右の枠材に固定されている。左右一対の主駆動スプロケット24,24の外周に設けられた凹部には
図2に示すように踏段30の前輪301が係合し、主駆動スプロケット24が回転することにより、踏段30が上下に反転しながら移動する。また、左側の主駆動スプロケット24の外側にラチェットホイール98が設けられている。
【0020】
プーリ72が、回転軸68のほぼ中央部には設けられ、手摺りベルトスプロケット22の回転軸74には不図示のプーリが設けられ、プーリ72とこの不図示のプーリとの間に連結ベルト76が架け渡されている。これらプーリ72とプーリにより、主駆動スプロケット24が回転すると、連結ベルト76によって手摺りベルトスプロケット22が同速で回転する。
【0021】
モータ20が、主駆動スプロケット24よりも下階側で、かつ、主駆動スプロケット24によって反転する上下の踏段30,30の間に設けられ、また、
図3に示すようにトラス12の機械室14内の右側に片寄ってトラス12の枠材に固定されている。
【0022】
モータ20のモータ軸78は、右側の主駆動スプロケット24に向かって前後方向で、かつ、水平に設けられ、第1ギアボックス80の入力軸82とカップリング96を介して同軸上に連結されている。
【0023】
第1ギアボックス80は、機械室14内のモータ20が配置された位置、すなわち機械室14内の右側に片寄った位置に設けられ、かつ、トラス12の枠材に固定されている。第1ギアボックス80は、第1ヘリカルギア88と第2ヘリカルギア90とより構成され、第1ヘリカルギア88と第2ヘリカルギア90とは螺合し、第1ヘリカルギア88の中心には入力軸82が設けられ、第2ヘリカルギア90の中心には連結軸86が設けられている。第1ギアボックス80を配する場合には、第1ヘリカルギア88が、第2ヘリカルギア90よりも内側になるように配置し、第1ヘリカルギア88に連結されるモータ20が機械室14内の、より内側になるように配されている。
【0024】
第2ギアボックス84が、右側の主駆動スプロケット24の外側であって、かつ、機械室14内に設けられている。第2ギアボックス84の入力側は前後方向の連結軸86を用いて第1ギアボックス80の出力側と連結され、第2ギアボックス84の出力側は、主駆動スプロケット24の回転軸68と連結されている。第2ギアボックス84は、第1ベベルギア92と第2ベベルギア94とより構成され、第1ベベルギア92と第2ベベルギア94とが螺合している。第1ベベルギア92の中心には連結軸86が固定され、第2ベベルギア94の中心には回転軸68が固定されている。第1ギアボックス80と第2ギアボックス84とにより、モータ20のモータ軸78が回転すると、左右一対の主駆動スプロケット24,24の回転軸68が減速しながら回転する。
【0025】
(3)効果
本実施形態であると、モータ20が、上下に反転する踏段30,30の間に配されているため、機械室14の長手方向の寸法を小さくでき、建屋1とトラス12の隙間Lを大きくでき、法律を遵守できる。すなわち、
図1に示すように従来必要であったモータ20の配置をするための空間がなくなり、機械室14を小さくでき、建屋1とトラス12の隙間Lに広げることができる。
【0026】
また、第1ギアボックス80を第1ヘリカルギア88と第2ヘリカルギア90により構成することにより、第1ギアボックス80を機械室14内に配置できる。そして、第1ギアボックス80を機械室14内の右側に配置することにより、モータ20を機械室14内の右側に配置できる。
【0027】
また、第2ギアボックス84を第1ベベルギア92と第2ベベルギア94により構成することにより、右側の主駆動スプロケット24の外側で、かつ、機械室14内に配置できる。
【0028】
また、モータ20は、反転する上下の踏段30,30の間に配置するため、踏段30の移動を妨げない。
【0029】
また、モータ20を回転させると、第1ギアボックス80と第2ギアボックス84によって動力が減速されつつ伝達され、回転軸68が回転し主駆動スプロケット24が回転して踏段30が移動し、また、連結ベルト76によって連結された手摺りベルトスプロケット22も同期して回転し、手摺りベルト38が移動する。
【0030】
(4)変更例
上記実施形態では、トラス12の機械室14内において、モータ20と第1ギアボックス80と第2ギアボックス84を右側に設けたが、これに代えて左側に設けてもよい。
【0031】
また、上記実施形態では、第2ギアボックス84内のギアを第1ベベルギア92と第2ベベルギア94で構成したが、これに代えて第1ハイポイドギアと第2ハイポイドギアから構成し、第1ハイポイドギアに連結軸86を固定し、第2ハイポイドギアに回転軸74を固定してもよい。なお、「ハイポイド」は登録商標であり、この明細書中のハイポイドの記載も同様である。
【0032】
また、上記実施形態では、エスカレータ10の踏段30に適応して説明したが、これに代えて動く歩道のステップ(踏段)に適応してもよい。
【0033】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
10・・・エスカレータ、12・・・トラス、14・・・機械室、18・・・駆動装置、20・・・モータ、22・・・手摺りベルトスプロケット、24・・・主駆動スプロケット、28・・・踏段チェーン、30・・・踏段、78・・・モータ軸、80・・・第1ギアボックス、84・・・第2ギアボックス、86・・・連結軸、88・・・第1ヘリカルギア、90・・・第2ヘリカルギア、92・・・第1ベベルギア、94・・・第2ベベルギア