特許第6077088号(P6077088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6077088ファンドのキャッシュフロー管理装置、キャッシュフロー管理プログラム及びキャッシュフローの管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6077088
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】ファンドのキャッシュフロー管理装置、キャッシュフロー管理プログラム及びキャッシュフローの管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/06 20120101AFI20170130BHJP
【FI】
   G06Q40/06
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-220974(P2015-220974)
(22)【出願日】2015年11月11日
【審査請求日】2015年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】503208736
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・ウィル・パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100117592
【弁理士】
【氏名又は名称】土生 哲也
(72)【発明者】
【氏名】門野 浩基
【審査官】 関 博文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−345979(JP,A)
【文献】 特開2003−196449(JP,A)
【文献】 特開2006−134293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の投資対象に投資するファンドのキャッシュフローを管理する装置であって、
ファンドの各々の投資対象について、投資対象におけるキャッシュフローを集計する基準となる第1の期間毎に、ファンドによる資金回収の回収額が反映された投資対象のキャッシュフローを計算する第1の計算手段と、
ファンドの全ての投資対象について、前記第1の計算手段によって計算された回収額を集計して、ファンド全体のキャッシュフローを集計する基準となる第2の期間毎のキャッシュフローを計算する第2の計算手段と、
前記第1の計算手段又は前記第2の計算手段の少なくともいずれかによって計算されたキャッシュフローを所定の形式で出力する出力手段と、を備えていて、
前記第1の計算手段は、前記第1の期間毎に計算するキャッシュフローにおいて、ファンドによる資金回収が発生しない期間については、ファンドの回収額がゼロとなるように投資対象にリザーブする資金の額を設定すること
を特徴とするキャッシュフロー管理装置。
【請求項2】
前記第1の計算手段は、前記第1の期間毎の資金収支により発生するキャッシュフローから、投資対象にリザーブすることが必要な必要リザーブ額を減ずることによって、ファンドによる資金回収の回収額を計算し、前記必要リザーブ額には前記資金収支から発生するキャッシュフロー以上の金額がデフォルト値に設定されていること
を特徴とする請求項1記載のキャッシュフロー管理装置。
【請求項3】
前記第1の計算手段は、操作者の操作画面に表示される前記第1の期間毎に設けられる所定の入力セルに投資対象にリザーブすることが必要な金額が入力されたことを検出すると、前記必要リザーブ額のデフォルト値に設定された金額を入力された金額に更新し、前記必要リザーブ額のデフォルト値には前記入力セルに入力が可能な最大値が設定されていること
を特徴とする請求項2記載のキャッシュフロー管理装置。
【請求項4】
前記第2の計算手段は、前記第2の期間毎に計算するキャッシュフローにおいて、ファンドから投資家に分配する分配金が発生しない期間については、投資家への分配金がゼロとなるようにファンドにリザーブする資金の額を設定すること
を特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のキャッシュフロー管理装置。
【請求項5】
前記第2の計算手段は、前記第2の期間毎の資金収支から発生するキャッシュフローから、ファンドにリザーブすることが必要な必要リザーブ額を減ずることによって投資家に分配する分配金の金額を計算し、前記必要リザーブ額には前記資金収支から発生するキャッシュフロー以上の金額がデフォルト値に設定されていること
を特徴とする請求項4記載のキャッシュフロー管理装置。
【請求項6】
前記第2の計算手段は、操作者の操作画面に表示される前記第2の期間毎に設けられる所定の入力セルに投資対象にリザーブすることが必要な金額が入力されたことを検出すると、前記必要リザーブ額のデフォルト値に設定された金額を入力された金額に更新し、前記必要リザーブ額のデフォルト値には前記入力セルに入力が可能な最大値が設定されていること
を特徴とする請求項5記載のキャッシュフロー管理装置。
【請求項7】
複数の投資対象に投資するファンドのキャッシュフローを管理するプログラムであって、ファンドのキャッシュフローを管理するコンピュータに、
ファンドの各々の投資対象について、投資対象におけるキャッシュフローを集計する基準となる第1の期間毎に、ファンドによる資金回収の回収額が反映された投資対象のキャッシュフローを計算する第1の計算ステップと、
ファンドの全ての投資対象について、前記第1の計算ステップにおいて計算された回収額を集計して、ファンド全体のキャッシュフローを集計する基準となる第2の期間毎のキャッシュフローを計算する第2の計算ステップと、
前記第1の計算ステップ又は前記第2の計算ステップの少なくともいずれかにおいて計算されたキャッシュフローを所定の形式で出力する出力ステップと、を実行させ、
前記第1の計算ステップでは、前記第1の期間毎に計算するキャッシュフローにおいて、ファンドによる資金回収が発生しない期間については、ファンドの回収額がゼロとなるように投資対象にリザーブする資金の額が設定されていること
を特徴とするキャッシュフロー管理プログラム。
【請求項8】
複数の投資対象に投資するファンドのキャッシュフローの管理方法であって、
ファンドのキャッシュフローを管理するコンピュータが、ファンドの各々の投資対象について、投資対象におけるキャッシュフローを集計する基準となる第1の期間毎に、ファンドによる資金回収の回収額が反映された投資対象のキャッシュフローを計算する第1の計算ステップと、
前記コンピュータが、ファンドの全ての投資対象について、前記第1の計算ステップにおいて計算された回収額を集計して、ファンド全体のキャッシュフローを集計する基準となる第2の期間毎のキャッシュフローを計算する第2の計算ステップと、
前記コンピュータが、前記第1の計算ステップ又は前記第2の計算ステップの少なくともいずれかにおいて計算されたキャッシュフローを所定の形式で出力する出力ステップと、を有していて、
前記第1の計算ステップでは、前記第1の期間毎に計算するキャッシュフローにおいて、ファンドによる資金回収が発生しない期間については、ファンドの回収額がゼロとなるように投資対象にリザーブする資金の額が設定されていること
を特徴とするキャッシュフローの管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SPC(特別目的会社)等の複数の投資対象に投資するファンドのキャッシュフローを管理する、キャッシュフロー管理装置、キャッシュフロー管理プログラム及びキャッシュフローの管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
投資家から集めた資金を企業が発行する株式や債券、不動産等の投資先に投資して、そのリターンを投資家に分配するファンド(投資ファンド)の運営では、1ヶ月毎、四半期毎、1年毎のように所定のタイミングで決算を行って、投資家に分配する分配金を算出することが必要になる。一般にこうしたファンドの分配金は、決算期毎に、投資先からの配当金や賃料などの収入から運営経費などの支出を差し引くことによって算出される(例えば、特許文献1の段落0028等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−345979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、1ヶ月毎や四半期毎に到来するファンドの収入と支出を集計する決算のタイミングと投資家への分配のタイミングが、特許文献1の例のように一致していれば特に問題は生じないが、キャッシュフロー管理上必要になる決算のタイミングと、投資家との取り決めによって決定される分配金のタイミングが、必ずしも一致することになるとは限らない。そのため、ファンドの管理者には、こうしたタイミングのずれを考慮して、適切なキャッシュフロー管理をどのように行うかが課題となる。
【0005】
特に、ファンドからの投資先の数や種類が多くなるようなケースでは、各々の投資先の損益状況の把握やキャッシュフロー管理が煩雑になりやすいため、管理の効率化等の目的で、ファンドから企業の株式や不動産等の各々の投資先に直接投資するのではなく、複数のSPCを設立し、SPCを介して各々の投資先に投資するスキームが採用されることがある。図1は、こうした複数のSPCを介して投資先に投資するファンドのスキームを例示したものである。
【0006】
この例では、実質的な投資対象である投資先11−13、投資先21−23、投資先31−33をグループ化して、それぞれのグループにおける投資先から配当等を受け取って、損益やキャッシュフローを管理するSPC1−3を設立している。ファンドはSPC1−3から回収した資金から投資家への分配を行うことになるが、こうしたスキームでは、SPC、ファンドそれぞれにおける効率的な資金運用を考慮して、ファンドがSPCから資金を回収するタイミングが設定される。
【0007】
ここで、投資先からSPCへの配当等を集計するタイミングとファンドがSPCから資金を回収するタイミング、あるいは、ファンドがSPCから資金を回収するタイミングとファンドから投資家への分配のタイミングにずれが生じると、決算のタイミングで生じた余裕資金の回収やリザーブが適切に行われるように、SPCやファンドのキャッシュフローを調整することが必要になる(図1の「CF調整(1)」と「CF調整(2)」)。これらのずれは、例えば、投資先からSPCへの配当を月次で集計し、ファンドによるSPCからの資金回収は四半期毎に実施、さらにファンドから投資家への分配は半期毎に実施するといったように、二段階で生じることもあるため、適切かつ効率的なキャッシュフロー調整が求められることになる。
【0008】
本発明は、このような課題に対応するためになされたものであり、SPC等の複数の投資対象に投資するファンドのキャッシュフローを管理する、キャッシュフロー管理装置、キャッシュフロー管理プログラム及びキャッシュフローの管理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決する本発明は、複数の投資対象に投資するファンドのキャッシュフローを管理する装置であって、ファンドの各々の投資対象について、投資対象におけるキャッシュフローを集計する基準となる第1の期間毎に、ファンドによる資金回収の回収額が反映された投資対象のキャッシュフローを計算する第1の計算手段と、ファンドの全ての投資対象について、前記第1の計算手段によって計算された回収額を集計して、ファンド全体のキャッシュフローを集計する基準となる第2の期間毎のキャッシュフローを計算する第2の計算手段と、前記第1の計算手段又は前記第2の計算手段の少なくともいずれかによって計算されたキャッシュフローを所定の形式で出力する出力手段と、を備えていて、前記第1の計算手段は、前記第1の期間毎に計算するキャッシュフローにおいて、ファンドによる資金回収が発生しない期間については、ファンドの回収額がゼロとなるように投資対象にリザーブする資金の額を設定することを特徴とするキャッシュフロー管理装置である。
【0010】
本発明では、SPC等の複数の投資対象を介して企業の株式や債券、不動産等に投資するファンドのスキームを前提にして、SPC等の投資対象の決算とファンドの決算を行う期間のずれに対応するためのキャッシュフローの調整、具体的には、SPC等の投資対象の決算時のキャッシュフローの計算において、ファンドによる資金回収が発生しない期間には、ファンドの回収額がゼロとなるように投資対象にリザーブする資金の額を設定することによって、ファンドの決算期に該当しないSPC等の投資対象の決算期には、ファンドによる資金回収を発生させないようにキャッシュフローを調整することを可能にしている。
【0011】
また、本発明は、前記第1の計算手段は、前記第1の期間毎の資金収支により発生するキャッシュフローから、投資対象にリザーブすることが必要な必要リザーブ額を減ずることによって、ファンドによる資金回収の回収額を計算し、前記必要リザーブ額には前記資金収支から発生するキャッシュフロー以上の金額がデフォルト値に設定されていることを特徴とすることもできる。
【0012】
さらに、前記第1の計算手段は、操作者の操作画面に表示される前記第1の期間毎に設けられる所定の入力セルに投資対象にリザーブすることが必要な金額が入力されたことを検出すると、前記必要リザーブ額のデフォルト値に設定された金額を入力された金額に更新し、前記必要リザーブ額のデフォルト値には前記入力セルに入力が可能な最大値が設定されていることを特徴としてもよい。
【0013】
SPC等の投資対象にリザーブする必要リザーブ額が、期間中の資金収支から発生するキャッシュフロー以上の金額となっていれば、その期間にはファンドによる資金回収を発生させないようにSPC等の投資対象のキャッシュフローが調整されるが、そうした値を必要リザーブ額のデフォルト値に設定しておくことによって、ファンドやSPC等の投資対象の管理者等は、ファンドによる資金回収が発生するSPC等の投資対象の決算期についてのみ、実際にリザーブが必要な金額を必要リザーブ額として入力することによって、適切にキャッシュフローを調整することが可能となる。必要リザーブ額にこのようなデフォルト値を設定するためには、例えば、必要リザーブ額の入力セルに入力可能な最大値を、デフォルト値に設定しておくこととすればよい。
【0014】
また、本発明は、前記第2の計算手段は、前記第2の期間毎に計算するキャッシュフローにおいて、ファンドから投資家に分配する分配金が発生しない期間については、投資家への分配金がゼロとなるようにファンドにリザーブする資金の額を設定することを特徴とすることもできる。
【0015】
さらに、前記第2の計算手段は、前記第2の期間毎の資金収支から発生するキャッシュフローから、ファンドにリザーブすることが必要な必要リザーブ額を減ずることによって投資家に分配する分配金の金額を計算し、前記必要リザーブ額には前記資金収支から発生するキャッシュフロー以上の金額がデフォルト値に設定されていることを特徴とすることもできる。
【0016】
さらに、前記第2の計算手段は、操作者の操作画面に表示される前記第2の期間毎に設けられる所定の入力セルに投資対象にリザーブすることが必要な金額が入力されたことを検出すると、前記必要リザーブ額のデフォルト値に設定された金額を入力された金額に更新し、前記必要リザーブ額のデフォルト値には前記入力セルに入力が可能な最大値が設定されていることを特徴としてもよい。
【0017】
このように、本発明のキャッシュフローを調整する仕組みは、SPC等の投資対象の決算とファンドの決算を行う期間のずれに対応するためのキャッシュフローの調整のみでなく、ファンドの決算と投資家への分配の期間のずれに対応するためのキャッシュフローの調整にも適用することが可能である。必要リザーブ額のデフォルト値の設定についても、SPC等の投資対象の場合と同様の仕組みを適用することができる。
【0018】
また、本発明は、本発明に係るキャッシュフロー管理装置において動作するキャッシュフロー管理プログラムとして特定することもできる。
【0019】
本発明に係るキャッシュフロー管理プログラムは、複数の投資対象に投資するファンドのキャッシュフローを管理するプログラムであって、ファンドのキャッシュフローを管理するコンピュータに、ファンドの各々の投資対象について、投資対象におけるキャッシュフローを集計する基準となる第1の期間毎に、ファンドによる資金回収の回収額が反映された投資対象のキャッシュフローを計算する第1の計算ステップと、ファンドの全ての投資対象について、前記第1の計算ステップにおいて計算された回収額を集計して、ファンド全体のキャッシュフローを集計する基準となる第2の期間毎のキャッシュフローを計算する第2の計算ステップと、前記第1の計算ステップ又は前記第2の計算ステップの少なくともいずれかにおいて計算されたキャッシュフローを所定の形式で出力する出力ステップと、を実行させ、前記第1の計算ステップでは、前記第1の期間毎に計算するキャッシュフローにおいて、ファンドによる資金回収が発生しない期間については、ファンドの回収額がゼロとなるように投資対象にリザーブする資金の額が設定されていることを特徴とするキャッシュフロー管理プログラムである。
【0020】
さらに、本発明に係るキャッシュフロー管理プログラムは、先に説明した本発明に係るキャッシュフロー管理装置の各々の構成に対応するキャッシュフロー管理プログラムとして特定することもできる。
【0021】
また、本発明は、本発明に係るキャッシュフロー管理装置によって実行されるキャッシュフローの管理方法として特定することもできる。
【0022】
本発明に係るキャッシュフローの管理方法は、複数の投資対象に投資するファンドのキャッシュフローの管理方法であって、ファンドのキャッシュフローを管理するコンピュータが、ファンドの各々の投資対象について、投資対象におけるキャッシュフローを集計する基準となる第1の期間毎に、ファンドによる資金回収の回収額が反映された投資対象のキャッシュフローを計算する第1の計算ステップと、前記コンピュータが、ファンドの全ての投資対象について、前記第1の計算ステップにおいて計算された回収額を集計して、ファンド全体のキャッシュフローを集計する基準となる第2の期間毎のキャッシュフローを計算する第2の計算ステップと、前記コンピュータが、前記第1の計算ステップ又は前記第2の計算ステップの少なくともいずれかにおいて計算されたキャッシュフローを所定の形式で出力する出力ステップと、を有していて、前記第1の計算ステップでは、前記第1の期間毎に計算するキャッシュフローにおいて、ファンドによる資金回収が発生しない期間については、ファンドの回収額がゼロとなるように投資対象にリザーブする資金の額が設定されていることを特徴とするキャッシュフローの管理方法である。
【0023】
さらに、本発明に係るキャッシュフローの管理方法は、先に説明した本発明に係るキャッシュフロー管理装置の各々の構成に対応するキャッシュフローの管理方法として特定することもできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、SPC等の複数の投資対象に投資するファンドのキャッシュフローを効率的に管理することができるので、ファンドの運営で発生する余裕資金の効率的な運用や、ファンドの管理業務における負担軽減に資することが期待できる。SPC等を介して多くの企業の株式等に投資するほど、本発明による効果が大きくなるので、様々な地域の企業や不動産に投資する地域再生ファンド等の運営に、特に好適となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施に好適なファンドのスキームの例を示す図である。
図2】本発明に係るファンドのキャッシュフロー管理装置の実施形態の概要を示す図である。
図3】本発明に係るファンドのキャッシュフロー管理装置の構成の一例を示すブロック図である。
図4】ファンドの投資対象となるSPCにおけるキャッシュフローの計算例を示す第1の図である。
図5】ファンドの投資対象となるSPCにおけるキャッシュフローの計算例を示す第2の図である。
図6】ファンドの投資対象となるSPCにおけるキャッシュフローの計算例を示す第3の図である。
図7】ファンドの投資対象となるSPCにおけるキャッシュフローの計算例を示す第4の図である。
図8】SPCから資金を回収するファンドにおけるキャッシュフローの計算例を示す第1の図である。
図9】SPCから資金を回収するファンドにおけるキャッシュフローの計算例を示す第2の図である。
図10】本発明に係るファンドのキャッシュフロー管理装置の操作画面の例を示す第1の図である。
図11】本発明に係るファンドのキャッシュフロー管理装置の操作画面の例を示す第2の図である。
図12】本発明に係るファンドのキャッシュフロー管理装置によるキャッシュフロー計算の処理フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を実施するための形態について、図面を用いて以下に詳細に説明する。尚、以下の説明では、企業の株式や不動産に投資して配当等を受け取る複数のSPCにファンドが投資するスキームに本発明を適用する例について説明するが、このスキームへの適用は本発明によるファンドのキャッシュフロー管理の一例を示したものであって、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0027】
図1は、以下の説明の前提となる、本発明の実施に好適なファンドのスキームの例を示したものである。先に発明が解決しようとする課題においても説明したとおり、ここに例示したのは、ファンドから企業の株式や不動産等の各々の投資先に直接投資するのではなく、複数のSPCを設立して、SPCを介して各々の投資先に投資するファンドのスキームである。
【0028】
このスキームでは、各々のSPCが投資先からの配当等を受け取り、ファンドはSPCから資金を回収して、投資家への分配を行うことになるが、投資先からSPCへの配当等を集計するタイミング、ファンドがSPCから資金を回収するタイミング、ファンドから投資家への分配のタイミングにずれが生じることがある。そのため、SPC及びファンドに発生する将来のキャッシュフローを予測するためには、SPCでは配当等と回収、ファンドでは回収と分配のキャッシュフローをそれぞれ調整することが必要になる(図1の「CF調整(1)」と「CF調整(2)」)。後に示す具体例では、投資先からSPCへの配当等は月次で集計し、ファンドによるSPCからの資金回収は四半期毎、ファンドから投資家への分配は半期毎に実施することとして説明する。
【0029】
図2は、本発明に係るファンドのキャッシュフロー管理装置の実施形態の概要を示したものである。本発明に係るファンドのキャッシュフロー管理装置には、複数のSPCを介して企業の株式や不動産等の投資先に投資するファンドにおける、ファンドとそれぞれのSPCの損益及びキャッシュフローを管理する機能を備えたコンピュータが用いられる。また、損益やキャッシュフローの計算に必要なデータや計算結果を格納するデータベースの機能を備えたものであることが好ましい。
【0030】
本発明に係るファンドのキャッシュフロー管理装置は、データの入出力機能を備えた単独のコンピュータによって構成されてもよいが、図2に示したように、データの入出力を行うためにファンドの管理者が操作するPC(パーソナルコンピュータ)等の端末と社内LAN等で接続されたコンピュータによって構成されるものであってもよい。また、例えば、SPCが遠隔地に設立されて各々の管理者が異なる場所にいる場合には、データの入出力を行うためにSPCの管理者が操作するネットワーク端末とインターネットを介して接続されたコンピュータによって構成されるものであってもよい。
【0031】
図3は、本発明に係るファンドのキャッシュフロー管理装置の構成の一例を示している。図3において、キャッシュフロー管理装置10が本発明に係るファンドのキャッシュフロー管理装置に該当する。前述のとおり、キャッシュフロー管理装置10には、スタンドアローンで利用されるコンピュータ、ネットワークに接続して利用されるコンピュータのいずれを用いることもできるが、CPU、メインメモリ、HDD等の補助記憶装置が備えられ、補助記憶装置に格納されたプログラムがメインメモリに読み出されて、CPUで演算処理を実行することによって、所定の機能が実現される。
【0032】
SPC情報管理部11とそれに含まれるPL計算部111とCF計算部112、ファンド情報管理部12とそれに含まれるPL計算部121とCF計算部122は、いずれも機能的に特定されるものであって、HDD等の補助記憶装置に格納されたプログラムがメインメモリに読み出され、CPUで演算処理を実行することによって、各部に対応する機能が実現される。データ格納部13には、HDD等の補助記憶装置の所定の記憶領域が割り当てられる。
【0033】
入出力端末(管理者端末)20には、キャッシュフロー管理装置10がスタンドアローンで利用される場合は、キーボードやマウス等の入力装置と液晶ディスプレイやプリンタなどの出力装置が、キャッシュフロー管理装置10がネットワークに接続して利用される場合は、PCやタブレット型コンピュータなどのネットワーク端末が用いられる。
【0034】
SPCの将来の損益とキャッシュフローを予測する計算を行う際には、管理者が入出力端末(管理者端末)20を操作してSPC情報管理部11を起動し、計算に必要なデータを入力する。SPC情報管理部11では、入力を受け付けたデータと、必要に応じてデータ格納部13から読み出したデータ(例えば、投資額等のあらかじめ入力して保存されたデータ)から、PL計算部111においてSPCの損益を、CF計算部112においてSPCのキャッシュフローをそれぞれ計算して、計算結果を入出力端末(管理者端末)20に出力する。入力を受け付けたデータや計算結果のうち保存が必要なデータは、SPC情報管理部11によってデータ格納部13に書き込まれる。
【0035】
ファンドの将来の損益とキャッシュフローを予測する計算を行う際には、管理者が入出力端末(管理者端末)20を操作してファンド情報管理部12を起動し、計算に必要なデータを入力する。ファンド情報管理部12では、入力を受け付けたデータと、必要に応じてデータ格納部13から読み出したデータ(例えば、各々のSPCについて計算して保存された回収額等のデータ)から、PL計算部121においてファンドの損益を、CF計算部122においてファンドのキャッシュフローをそれぞれ計算して、計算結果を入出力端末(管理者端末)20に出力する。入力を受け付けたデータや計算結果のうち保存が必要なデータは、ファンド情報管理部12によってデータ格納部13に書き込まれる。
【0036】
キャッシュフロー管理装置10は、CF計算部112において、ファンドによる資金回収のタイミングとの関係でSPCにリザーブすべきキャッシュフローの調整を、CF計算部122において、投資家への分配のタイミングとの関係でファンドにリザーブすべきキャッシュフローの調整を、それぞれ実行する機能を備えていることを特徴としているが、これらのキャッシュフロー調整の方法について、図4図9を用いて、以下に具体的に説明する。尚、図4図9は、入出力端末(管理者端末)20の操作画面を例示したものであるが、必要なデータの入力を受け付ける画面であるとともに、キャッシュフローの計算結果が出力された画面ともなるものである。
【0037】
図4は、ファンドの投資対象となる複数のSPCのうち、一のSPCについて予測されるキャッシュフローの計算例を示している。SPCの決算は月次で集計され、各月の「配当」のセルには投資先からの配当収入を、「支出1」のセルには資金の流出が生じるが損益には計上されない支出(借入金の返済等)を、「支出2」のセルには資金の流出は生じないが損益に計上される支出(減価償却費等)を、「支出3」のセルには資金の流出が生じて損益にも計上される支出(借入金の支払利息等)を、それぞれ入力すると、各月の損益(PL)は「配当−(支出2+支出3)」、キャッシュフロー(CF)は「配当−(支出1+支出3)」から自動計算される。SPCに発生する余剰資金はファンドが回収するのが原則であるため、「配当−(支出1+支出3)」から計算されるキャッシュフロー(CF)が回収に充てられ、原則をそのままモデル化すると、SPCのキャッシュフローは図4のように計算されることになる。
【0038】
ここで、SPCの運営に資金不足が生じないようにするためには、SPCに一定の資金をリザーブしておくことが必要であり、図4の例に示したモデルに対して、図5の例に示したように、SPCにリザーブが必要な「必要リザーブ」の金額を入力するセルを設けることが好ましい。このように「必要リザーブ」の金額を設定すると、前月末のリザーブ残高に当月のキャッシュフローを加算した金額から、「必要リザーブ」の金額を減じた金額がファンドの回収に充てられることになる。
【0039】
ところが、ここで問題が生じるのが、ファンドがSPCから資金を回収するタイミングが、SPCの決算を集計するタイミングと異なる場合である。この例では、SPCの決算を月次で集計するのに対して、ファンドによるSPCからの資金回収は四半期毎に行われるルールとなっているため、図5の例に示したモデルで計算すると、モデル上の月次の回収額と実際の回収額に差異が生じることになってしまい、SPCとファンドのそれぞれで実際に発生する余裕資金を把握することができず、余裕資金を効率的に運用することが困難になるという問題が生じてしまう。
【0040】
そこで、本発明では、月次で集計するSPCのキャッシュフローの計算において、ファンドによる資金回収が発生しない月には、ファンドの回収額がゼロとなるように、SPCにリザーブする「必要リザーブ」の金額を設定することによって、こうした問題を解決することとしている。ファンドによる資金回収が発生しない月のファンドの回収額をゼロにするための「必要リザーブ」の金額の設定方法は特に限定されるものではないが、例えば、図6の例に示したように、「必要リザーブ」の金額を入力するセルのデフォルト値に、セルに入力が可能な最大値(ここでは「999,999」)を設定しておくこととすればよい。
【0041】
このようにデフォルト値を設定しておけば、図7の例に示したように計算に必要な配当や支出のセルに数値を入力するとともに、ファンドによる資金回収が発生する月の「必要リザーブ」のセルにリザーブが必要な金額を管理者が入力することとすれば、デフォルト値として設定されていたセルに入力可能な最大値が、入力を受け付けた金額に更新される。
【0042】
ファンドによる資金回収が発生しない月は、キャッシュフローの計算結果がどのような値になっても、セルに入力可能な最大値である「必要リザーブ」のデフォルト値を超えることはないので、「回収」のセルの数値は必ず「0」になって、ファンドによる資金回収は発生しない計算となる。ここで計算されたキャッシュフローの値は、余裕資金としてリザーブ残高に積み増され、ファンドによる資金回収が発生する月にまとめて回収される計算となる。
【0043】
このように、「必要リザーブ」の金額を入力するセルのデフォルト値には、「回収」の金額が「0」となるように、「配当−(支出1+支出3)」から計算されるキャッシュフロー以上の金額が設定されていればよいので、図6及び図7を用いて説明した、セルに入力が可能な最大値を設定しておく方法の他に、例えば、キャッシュフロー(CF)が自動計算されるセルと同じ値が自動的に設定されることとしてもよい。
【0044】
以上に説明した、SPCについてCF計算部112で実行されるファンドによる資金回収のタイミングとの関係でSPCにリザーブすべきキャッシュフローの調整を、投資家への分配のタイミングとの関係でファンドにリザーブすべきキャッシュフローを対象に、CF計算部122において実行することもできる。
【0045】
図8及び図9はその一例を示したものであるが、ファンドによるSPCからの資金回収が四半期毎に行われるため、ファンドの決算の集計を四半期毎に行うこととすると、投資家への分配のタイミングとの関係でファンドにリザーブすべきキャッシュフローの調整を行わなければ、図8に例示したように、半期毎に実施すべきファンドから投資家への分配が、四半期毎に発生してしまう計算になる。これを、投資家への分配が半期毎に発生するようキャッシュフローを調整するためには、図9に例示したように、「必要リザーブ」の金額を入力するセルのデフォルト値としてセルに入力が可能な最大値(ここでは「999,999」)を設定しておき、投資家への分配が発生する四半期の「必要リザーブ」のセルにリザーブが必要な金額を管理者が入力することとすればよい。
【0046】
図10及び図11は、SPCの損益及びキャッシュフローのシミュレーションを行う際に、入出力端末(管理者端末)20に表示される操作画面の一例を示したものである。これらは同じ操作画面について、回収情報をスクロールして異なる部分が表示された状態であり、回収情報の白色のセルが数値を入力するセルに該当するが、図10の「元本返済」が資金の流出が生じるが損益には計上されない支出(図4等の「支出1」)に、図11の「減価償却」が資金の流出は生じないが損益に計上される支出(図4等の「支出2」)に、図11の「ローン利息返済」と「Other Cost」が資金の流出が生じて損益にも計上される支出(図4等の「支出3」)に該当する。図11の「必要リザーブ額」には、セルに入力可能な最大値である「999,999,999,999」がデフォルト値として設定され、実際にリザーブが必要な金額を上書きすることが可能となっている。
【0047】
図12のフローチャートは、本発明に係るファンドのキャッシュフロー管理装置であるキャッシュフロー管理装置10によって、ファンド全体のキャッシュフローのシミュレーション結果を出力する処理フローを示している。入出力端末(管理者端末)20から、シミュレーション結果を出力する処理要求を受け付けると、SPC情報管理部11が起動されて、データ格納部13に格納されたファンドに関する情報等を参照して、ファンドの投資対象となっているSPCを特定する(S1)。
【0048】
特定されたSPCから一のSPCを選択して、キャッシュフローの計算に必要なデータをデータ格納部13から読み出す(S2)。尚、こうしたシミュレーションを自動計算するためには、SPCのキャッシュフローの計算に必要なデータをあらかじめ入力して、データ格納部13に保存しておくことが必要である。CF計算部112では、読み出したデータを用いてSPCのキャッシュフローを計算する(S3)。
【0049】
S1において特定された全てのSPCについてのキャッシュフローの計算が終了すると(S2−S4)、CF計算部122では、各々のSPCのキャッシュフローから発生するファンドによる回収額を合算するとともに(S5)、ファンドのキャッシュフローの計算に必要なデータをデータ格納部13から読み出すか、あるいは入出力端末(管理者端末)20からの入力を受け付けて(S6)、ファンド全体のキャッシュフローを計算し、計算結果を入出力端末(管理者端末)20に出力する(S7)。
【0050】
キャッシュフローの計算結果の入出力端末(管理者端末)20への出力方法は特に限定されるものではなく、入出力端末(管理者端末)20のディスプレイに表示するものであってもよいし、プリンタを用いて紙媒体に印刷するものであってもよい。計算結果の表示方法も特に限定されるものではなく、図9に例示したような表形式で表示するものであってもよいし、ここから各期の分配金等の必要な項目のみを選択して表示するものであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 キャッシュフロー管理装置
11 SPC情報管理部
111 PL計算部
112 CF計算部
12 ファンド情報管理部
121 PL計算部
122 CF計算部
13 データ格納部
20 入出力端末(管理者端末)
【要約】
【課題】 SPC(特別目的会社)など複数の投資対象に投資するファンドのキャッシュフローを管理するキャッシュフロー管理装置を提供する。
【解決手段】 SPC等の複数の投資対象を介して企業の株式や債券、不動産等に投資するファンドのスキームを前提にして、SPC等の投資対象の決算時のキャッシュフローの計算において、資金回収が発生しない期間には、例えばSPCにリザーブが必要な金額をセルに入力可能な最大値をデフォルト値に設定しておくなどの方法によって、ファンドの回収額がゼロとなるように投資対象にリザーブする資金の額を設定する。これによって、ファンドの決算期に該当しないSPC等の投資対象の決算期には、ファンドによる資金回収を発生させないようにキャッシュフローを調整することを可能にしている。
【選択図】 図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12