(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077089
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】トルクを磁気的に伝達するための改良された装置
(51)【国際特許分類】
H02K 49/10 20060101AFI20170130BHJP
F16D 7/02 20060101ALI20170130BHJP
F16H 49/00 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
H02K49/10 A
F16D7/02 C
F16H49/00 A
【請求項の数】2
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-229071(P2015-229071)
(22)【出願日】2015年11月24日
(62)【分割の表示】特願2013-511400(P2013-511400)の分割
【原出願日】2011年5月20日
(65)【公開番号】特開2016-119833(P2016-119833A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2015年12月23日
(31)【優先権主張番号】12/785,414
(32)【優先日】2010年5月21日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512299200
【氏名又は名称】フラックス ドライブ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】コービン,フィリップ,サード
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,リチャード,ピーター
【審査官】
安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−507002(JP,A)
【文献】
特開2006−105210(JP,A)
【文献】
特開2006−174552(JP,A)
【文献】
特表2008−545366(JP,A)
【文献】
特開2009−278783(JP,A)
【文献】
特開平05−199735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 49/10
F16D 7/02
F16H 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクを磁気的に伝達するための装置であって、
前記装置は、
2つのディスク形状をした第1のトルク駆動回転部材と、ディスク形状をした第2の駆動回転部材とを備え、
前記ディスク形状をした第2の駆動回転部材は前記2つのディスク形状をした第1のトルク駆動回転部材の間に配され、
前記2つのディスク形状をした第1のトルク駆動回転部材は、導電性要素と磁気透過性材料とを有し、前記2つのディスク形状をした第1のトルク駆動回転部材の磁気透過性材料は当該2つのディスク形状をした第1のトルク駆動回転部材の外周面に形成された複数の穴(104)を有し、当該複数の穴(104)には導電性材料が充填され、
前記複数の穴は導電性材料の外部リング(outer ring)によって、当該複数の穴の外部周囲に囲まれ、
前記複数の穴は導電性材料の内部リング(inner ring)によって、当該複数の穴の内部周囲に囲まれ、
前記複数の穴の導電性要素、前記導電性材料の外部リング、及び前記導電性材料の内部リングは、互いに一つの電気回路において電気的に接続され、
前記ディスク形状をした第2の駆動回転部材は、その上に備え付けられた永久磁石を有し、
前記2つのディスク形状をした第1のトルク駆動回転部材は、トルク生成装置によって接続されて駆動され、および、
前記ディスク形状をした第2の駆動回転部材は、トルク利用装置に接続され、それによって、2つのディスク形状をした第1のトルク駆動回転部材の回転は、前記2つのディスク形状をした第1のトルク駆動回転部材上の導電性材料を通過する前記ディスク形状をした第2の駆動回転部材の上に備え付けられた前記永久磁石から生じる磁束線の一部またはすべてによって、前記ディスク形状をした第2の駆動回転部材の回転を引き起こし、それによって、前記ディスク形状をした第2の駆動回転部材におけるトルクと回転を引き起こす、装置。
【請求項2】
互いに隣接して配された複数のディスク形状をした第1の駆動回転部材と、その間に配された複数のディスク形状をした第2の駆動回転部材を備え、前記ディスク形状をした第1のトルク駆動回転部材は一緒に回転するように機械的に接続され、前記ディスク形状をした第2の駆動回転部材クは一緒に回転するように機械的に接続される、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この出願は、2005年2月26日に出願されたPCT/US20O5/06179の米国への国内移行出願である、かつ、PCT/US20O5/06179の優先権を主張した、米国出願番号第10/591,366の一部継続出願であり、前記PCT出願は、2004年3月1日に出願された米国特許出願第10/790,571からの優先権をさらに主張する。
【0002】
本発明は、隣接する回転ディスクを用いる回転磁気トルク伝達装置に関し、前記隣接する回転ディスクは、交互に、その上に磁石を有するか、磁石を有していない。磁石を有していないディスクは、導電性材料を有する。
【背景技術】
【0003】
駆動用途において可変トルクを伝達するために、永久磁石励起型機構を考案することが望ましい。とりわけ、ポンプ羽根車、ファン、プロペラ、ホイールなどの可変の出力速度およびトルク装置に対して、モーターまたはエンジンのような低速装置を連結する必要がある。
【0004】
様々な渦電流クラッチを含む伝達装置が、様々な形状でしばらくの間使用されてきた。先行技術の調査により、これらの渦電流装置が3つの一般的なタイプに限定されることが分かる。
【0005】
現在の固定ギャップ永久磁石ディスククラッチ(fixed gap permanent magnet disk clutches)は、大量のトルクを伝達する能力が限られており、高速で不安定さを引き起こす方法で構築されている。これらの制限により、このような装置の実際的な用途は、低速度、低馬力の用途に限定されてしまう。
【0006】
渦電流クラッチは、固定ギャップ機構での流束密度を生成して変化させるために、DC電流を用いる。これらの装置は広範囲の馬力で利用可能であるが、高価で、複雑で、DC電流および制御部がトルクを引き起こすことを必要とする。DC電流が望ましくないか、電流を発生させるトルクを制御するための装置が信頼できない、応用例がある。
【0007】
現在の可変性のギャップ永久磁石ディスククラッチは、大量のトルクを伝達する能力が限られており、高速で不安定さを引き起こすような方法で構築されている。これらの制限により、こうした装置の実際的な用途は、低速度、低馬力の用途に制限されてしまう。
【0008】
記載された装置は、機械的に安定した操作のために設計された構造とあわせて、磁性材料技術での最新の進歩を利用している。これにより、高馬力の応用を含むあらゆる範囲の動力伝達応用で、装置を使用することができるようになる。装置の構造はさらに、装置を安定させるとともに、モーターやエンジンによってはもとから備わっている高入力速度での動作を可能にする。
【0009】
記載された装置は、出力伝達駆動部で磁束を生成するために最適なやり方で配された永久磁石および導体を使用する装置である。
【0010】
本発明の目的は、導電性の回転子設計の代替的な配向性を用いて、誘導磁気回路に改良を加えることであり、該導電性の回転子設計は、導電性材料の外部リングと内部リングが鋼によって囲まれ、(内部リングから外部リングへと)内部リングと外部リング(終端リング)を放射状に接続する回転子バーとともに組み立てられた、ディスク形状の(平らな)構築物を有する。バーは装置によって開発されたトルクプロファイルの調節に必要とされるように、それらを接続する様々な形状(すなわち、丸型、正方形など)から構築され得る。
【0011】
磁石回転子アセンブリは、回転子ディスクの内部から外部に配向した多くの磁石アレイを形成する同じ放射状のディスク形状も有するとともに、隣接する磁石で対向し、回転子板の厚みによって磁化される、磁気極性を有するであろう。1つの磁石回転子は、2つの誘導回転子アセンブリによって囲まれ(すなわち、磁石回転子の両側に1つ)、それによって、操作中に、より多くの流束/出力が伝達されることを可能にすることに注目する。
【0012】
我々の検査は、回転子バー構造を備えた我々の誘導式継ぎ手が、始動の間に固有の「滑らかな始動(soft start)」能力を有していることを明らかにした。このおかげで、高い完成荷重は、継ぎ手の定格トルクの150%程度で、静止トルクから最大トルクまで、モーター(または、他のトルク/出力源)によって加速され得る。この性能による利益は、任意の荷重条件のトルクを150%程度のトルクに限定するように、かつ、同じ限定によって、トルク脈動(すなわち、ねじり振動)を減じるようにも作用する。このことは、高始動トルクを有するか、あるいは、損害を引き起こしかねない高いスパイク荷重の可能性を有する、すべてのタイプの出力伝達装置の役に立つであろう。
【0013】
本発明の誘導磁気回路形状は、ブレーキを掛けたり、張力を掛けたりするために、動力計としても利用され得る。これは、誘導回転子をロックして、回転子の内部に追加の冷却配管を挿入して、ブレーキ熱または張力熱/スリップ熱を消すことによって、達成されるであろう。ブレーキシステムと張力システムの両方は、摩耗する部品(すなわち、ブレーキパットなど)がないという事実の恩恵を受けるであろう。
【0014】
張力をかける追加の能力は、バルブまたはそれ以外の上記のような装置の回転の間に、トルクを制限することである。この利益は、バルブステム/シャフトが、最終プロセスのあいだに破損し得る(すなわち、砕片が最終プロセスの間にバルブ本体で挟まれる場合)可能性を少なくするであろう。これを「誘導式制限トルク(Inductive Limit Torque)」とも呼ぶ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、2つの回転要素間に、可変のまたは固定されたトルクを伝達するために、永久磁石を利用する。本発明は、出願人の最初の特許発明米国第7,294,947号と他の技術で主張されるものを、幾何学的配置と磁気回路において改良したものである。本発明は、元々の円筒状の設計を、同じ磁気回路を用いる代替的なディスク−板/形状設計へと改良するものであり、これは、先行技術が、磁気同心円筒アレイの内部に導電性回転子をより正確に並べることを必要とし、磁石缶(magnet can)と回転子アセンブリとの間の空隙を維持するために機械の土台の補強を必要とするという点で、先行技術のいくつかの欠点/問題を克服する。この改良は、2つの外部の導電性回転子板の間で内部磁気回転子アセンブリを再構成することにより、これらの前述の欠点を克服し、それによって、組み立て中に発生する磁性引力の平衡を保つ。
【0016】
提案された発明は、磁石材料の新しい技術と新しい最適な配置とを利用することによって、前述の制限を克服するとともに、大型の外部電流制御部を必要とすることなく、大量の伝達トルクを機械的に伝達する安定した手段を提供する。
【0017】
本明細書でとりわけ詳細に記載される改良は、導電性材料の外部リング
(105)と内部リング
(106)とを含み、内部リングと外部リング(終端リング)を放射状に(すなわち、内部リング
(106)から外部リング
(105)に)接続する導電性の回転子バーの配向によって、ディスク−板形状の回転子アセンブリ内に含まれる誘導の磁気回路を含む。導電性材料は、回転子アセンブリを形成するために、鉄材料鋼によって囲まれる。バー
(104)は、装置によって発生するトルクプロファイルの調節に必要とされるような様々な幾何学的形状(すなわち、丸形、正方形など)から構成され得る。磁石回転子アセンブリは、同じ放射状のディスク形状と、回転子ディスクの内部から外部に配向した磁石アレイとを有し、および、隣接する磁石で対向し、回転子板の厚みによって磁化される、磁気極性を有する。1つの磁石回転子は、2つの誘導回転子アセンブリによって囲まれ(すなわち、磁石回転子の両側に1つ)、それによって、操作中に、平衡化された流束/出力が伝達されることを可能にすることに注目する。導電性の要素と磁気透過性材料とを含む回転部材において、前記回転部材の透過性材料は、強磁性でなくてもよく、永久磁石を有していなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図面は、この明細書の一部を構成し、様々な形態で具体化される、本発明の典型的な実施形態を含む。当然のことながら、いくつかの例において、本発明の種々の態様は、本発明の理解を促すために、誇張されて、または、詳細に示されることもある。本明細書に含まれる本発明の選択された実施形態の記載は、以下のように列挙される。
【0019】
【
図1】2つの平らな導電性磁気回路回転子板と磁気回転子板アセンブリとを用いる 、本発明の代替的なディスク−板の実施形態の斜視図である。
【
図2】導電性のダンベル型の回転子バー形状構造の代替的な形態の断面図である。
【
図3】代替的なダンベル型の回転子バー形状構造に関する、トルク対スリップの曲線を表すプロットである。
【
図4】導電性の台形型回転子バー形状構造の代替的な形態の断面図である。
【
図5】台形型回転子バー形状構造のための、トルク対スリップの曲線を表すプロットである。
【
図6】本発明の導電性の磁気回路の「滑らかな始動」能力(高い慣性荷重を開始する間に提供される)を表すプロットである。プロットは、「Flux Drive」と標準的な「剛性の」自在継ぎ手(flexible coupling))の両方に関する電流対時間の比較である。
【
図7】本発明の導電性磁気回路の高い慣性荷重を開始する間に提供される「滑らかな始動」能力を表すプロットである。プロットは、「Flux Drive」と標準的な「剛性の」自在継ぎ手の両方に関する出力対時間の比較である。
【
図9】張力装置の代替的な実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
好ましい実施形態の詳細な記載が本明細書で提供される。しかしながら、本発明は様々な形態で具体化されてもよいことを理解する。したがって、本明細書に開示された具体的な詳細は、限定的なものとしてとして解釈されるのではなく、むしろ特許請求の範囲の基礎として、および、事実上、任意の適切に詳細に記載されたシステム、構造、または、手法で、本発明を用いることを当業者に教える代表的な根拠として、解釈される。
【0021】
図の1−8で示される改善された本発明の実施形態には、中心のディスク(100)が外部の2つのディスク(101)の間に「挟まれる」、合計3つの環状の回転ディスクがある。2つの外部の周囲ディスクは、1つの回転子(102)に機械的に接続され、中心回転ディスクは別の機械的に独立した回転子(103)に機械的に接続される。1つの回転子(100)は、磁気回路の抵抗を弱めるために、磁気透過性材料から作られる。内部で導電性の回転子バー(104)を支持する2つの磁気透過性回転子板があり、磁気透過性材料で製造されており、回転磁石リング(100)から空隙を通って導電性のリング板に伸長する磁場回路を完成させる。この実施形態では、磁気透過性の回転子の磁気透過性材料は、内部の導電性の回転子板リング(101)中の開口を通って伸長する。これは、磁石回転子板リングと導電板リングの間の空隙を減らし、それによって、導電性の回転子板バー内の誘導電流が磁気透過性材料を囲むことを可能にする一方で、磁束を増加させる。この改善された配置は、回転子で、強力に誘発された電磁場を発生させるのに最適であり、それによって、伝達トルクを最大化し、装置のエネルギー伝達をより効率的にする。
【0022】
本発明は、好ましい実施形態に加えて2つの代替的な実施形態に関して記載されてきたが、本発明は、発明の範囲を、示された特定の形態に限定するものとは意図されておらず、それどころか、添付の請求項によって定義されるような本発明の精神と範囲内に含まれてもいいように、このような代替案、修正案、および、同等物を包含するように意図されている。