【実施例1】
【0021】
次に、本発明の電子部品組立体の第一の実施形態を説明する。
図1Aは、本発明の一実施例に係る電子部品を保持した第1の容器の斜視図である。
図1Bは、
図1Aの電子部品の回路図の一例である。第1の容器100の内部には、内部回路としての電子部品102が保持され、この電子部品から第1の容器100のタグ取り付け補助シート103の穴104を介して外部へ複数の電気信号線(導電ピン)P1,P2,Pnが引き出されている。本発明の電子部品組立体は、例えば、少なくとも2本の導電ピンを有するLSIパッケージである。第1の容器100は、金属材料、非金属材料の何れで構成されていても良い。タグ取り付け補助シート103の表面でかつ、各導電ピンP1,P2,Pnの近傍には、各々、ICタグ105(105−1,105−2,105−n)が固定されている。
【0022】
図1Bに示した電子部品102は、PNPトランジスタとNPNトランジスタのエミッタ側を共通にして接続したプッシュプル増幅回路であり、このプッシュプル増幅回路の端子である導電ピンP1と導電ピンP5が電源に接続され、導電ピンP3に接続された負荷抵抗(図示略)には、導電ピンP2、導電ピンP4からの入力信号に応じて増幅された出力電圧が出力される。
【0023】
このような電子部品102が半導体LSIチップとして第1の容器100内に収容され、絶縁性の樹脂等で封止され、外部へ引き出された各導電ピンは、各々、所定の電気的な回路を構成するように、コネクタに接続される。
【0024】
図2は、本発明の一実施例に係る電子部品組立体の斜視図であり、
図3は、
図2の電子部品組立体の縦断面図である。
【0025】
金属製の第2の容器200内には、電子部品102を収容した第1の容器100が収納され、絶縁性の樹脂300で封止されている。金属製の第2の容器200の上部の開口204の周囲のフランジ202には一対の穴203が設けられている。この一対の穴203は、複数の導電ピンの中心を通る軸線に沿った位置に設けられている。この穴203は、後で述べるICタグ通信用リーダ・ライタに対する位置決め部となるものである。この位置決め部は、各導電ピンの位置を特定するために使用されるので、例えば一対の穴203の径の大きさを左右で異ならせるなど、検知時には、ICタグ通信用リーダ・ライタに対して電子部品組立体が必ず所定の位置関係で両者が固定されるようにする。なお、置合わせ部は、穴に限定されるものでは無く、例えば位置決め用の凹凸構造等、複数の導電ピンとICタグ通信用リーダ・ライタとの相対的な位置関係を固定できるものであればどのような構造であっても良い。
【0026】
本発明では、金属製の第2の容器200と電子部品102を収容した第1の容器100の一体化されたものを、電子部品組立体と定義する。
【0027】
電子部品組立体において、複数の導電ピンの周囲は、筒状の保護リング201で囲まれたコネクタの差し込み空間となっている。
【0028】
電子部品組立体は、第1の容器100を、導電ピンの根元部分と共に金属製の第2の容器200内に差し込み、絶縁樹脂等の絶縁層300で封止することによって、一体化される。そのため、第1の容器100を第2の容器200内に封止した後は、複数の導電ピンのみが外側に伸び、電子部品102やICタグ105は見えない。もし、電子部品102の導電ピンが左右逆になった状態で第2の容器200内に差し込まれ(逆差し)、樹脂で封止された電子部品組立体が製造されたとしても、外観ではわからない。
図3は、説明の都合上、電子部品組立体の導電ピンP1,P2,Pnが、正規に差し込まれた状態を表現している。
【0029】
図4により、電子部品の各導電ピンとICタグの関係を説明する。まず、絶縁性のタグ取り付け補助シート103には、各導電ピンを通す穴104に対応した位置の凹部等に、ICタグ105(105−1,105−2,105−n)が樹脂等により封止され、固定される。各ICタグ105は、各導電ピンに対して非対象の位置となるように配置される。例えば、各導電ピン(穴104)が補助シート103の面の中心を通る直線に沿って等間隔に配置されていると仮定した場合、導電ピンP1に対応するICタグ105−1を導電ピンP1の手前、導電ピンP2に対応するICタグ105−2を導電ピンP2の後側、導電ピンP3に対応するICタグ105−3を導電ピンP3の手前、のように、交互に位置をずらしながら配置する。これにより、隣接する導電ピンに対応するICタグ相互の距離を確保し、混信を避けることができる。
【0030】
なお、誤差し検知を目的とする限りにおいて、ICタグ105の数は、1個の電子部品102に対して、1個でも良い。
図1Aの電子部の例では、複数の導電ピンの中の特定の導電ピン、例えば導電ピンP1、の近傍にのみ1個のICタグ105−1を固定しても良い。但し、補助シート103の面の中心、換言するとコネクタの差し込み空間の中心にある導電ピンでは、その逆差しを検知できない。そのため、この特定の1個の導電ピンや対応するICタグは、補助シート103の面の中心、換言するとコネクタの差し込み空間の中心よりも半径方向外側にずれた位置に存在するものでなければならない。逆差しの場合、コネクタの差し込み空間の中心からずれた位置の1個のICタグが、ICタグ通信用リーダ・ライタに対して「応答なし」になり、逆差しを検知できる。また、1個のICタグの設置を前提として、ICタグ通信用リーダ・ライタにより、ICタグの未設置、ICタグの故障を検知することができる。
【0031】
このようなタグ取り付け補助シート103を、第1の容器100に固定することにより、各導電ピンと各ICタグ105とは所定の位置関係を有することになる。ICタグ105は平板状であり、ICタグの配置は導電ピンと直角、若しくはそれに近い角度に設置する。すなわち、電子部品102から外部に向かって出る各導電ピンに直角、若しくはそれに近い角度となるようにして、ICタグ105を設置する。
【0032】
次に、電子部品組立体に埋設されるICタグについて説明する。
図5AはICタグの正面図、
図5Bは、ICタグの側断面図である。ICタグ105は、平板状の基板の表面側に設けられたICタグ本体部1051と、基板の裏面に形成されたICタグ絶縁基板1054とを有している。ICタグ本体部1051は、ICチップ1052と、このICチップ1052の周囲に螺旋条に複数回巻かれた面状のコイルアンテナ1053、及び、保護材等で構成されている。コイルアンテナはその内端がICチップ1052に接続され、その外端も裏面の絶縁層を介してICチップ1052に接続されている。
【0033】
なお、UHFやマイクロ波帯のICタグには、大別すると、(1)波長依存性が顕著な半波長共振ダイポール基調のアンテナを内蔵する1辺が10cm程度のICタグと、(2)波長依存性がないコイルやコンデンサを用いた共振回路を内蔵した1辺が10mm以下の超小型サイズのICタグ、とがある。
【0034】
本発明では、取付け相手の電子部品102の近傍にICタグを組み込むために、超小型サイズのICタグを用いる。このような小型化の用途に適したものとして、例えば、外形寸法が、2.5mm×2.5mm、厚みが0.4mmのUHF帯の超小型タグ((株)日立化成(登録商標)IM5−PK2525型タグ)が有る。このタグは、一例として、ICタグ通信用リーダ・ライタの所定の検出電波出力で、数mm程度の飛距離が得られる。
【0035】
次に、電子部品102の導電ピンが正常の状態で第2の容器200内に差し込まれ、樹脂で封止された電子部品組立体が製造されているかを検知する手段について、説明する。
図6は、本実施例における、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500の説明図である。
図7は、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置の検出部530の正面図である。
【0036】
ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500は、高周波アンテナ回路(図示略)を有する本体510と、この本体に一対の信号伝送部(ケーブル)520で接続された検知コイル(微小ループ)533を有する検出部530と、データベース540とを備えている。本体510は、ネットワーク550を介してバックアップデータベース560に接続されている。
【0037】
本体510には、制御回路部511、表示画面512、及び、ポート切り替え部513が設けられている。検出部530は、ベースプレート531と、係合部(凹部あるいは凸部)532と、ケーブル520の軸に直角な方向において弧状に伸びた複数の検知コイル533と、位置決め用の穴535と、検出用空間536、導電ピン534に対応する穴537とを備えている。ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500の係合部532を電子部品組立体の位置合わせ勘合部と機械的に嵌合させることにより、その検出部530の検知コイル533が電子部品組立体の筒状のコネクタ差し込み空間内の所定の位置、すなわち、電子部品組立体の特定の導電ピンPnに対応した特定のICタグを検出可能な位置及び所定の深さに固定されるようになっている。なお、導電ピンが複数であってもICタグを1個組み込む場合は、検知コイル533も1個で構成することで十分である。
【0038】
図8は、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置の検出部530を電子部品組立体の所定の位置にセットし、複数の検知コイル533の差し込み状態を、非接触で検出する構成を説明する、縦断面図である。
図9は、
図8のA部の拡大図である。
【0039】
ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500の係合部532を電子部品組立体のフランジと係合させ、検出部533を機械的にコネクタ差し込み空間内の所定の回転位置と所定の深さにセットする。すなわち、逆差しを検知する為に、検知コイル533をコネクタ差し込み空間内に差し込んで、ICタグの直近まで接近させた状態である。この状態において、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500の検出部530の微小ループすなわち検知コイル533とICタグのコイルとが電磁結合することで、特定の導電ピン534の根本に組み込まれた超小型のICタグの有無を非接触で検出する。
【0040】
係合部532は、例えば係合部532側の直近に第1導電ピンP1、遠い側に第n導電ピンPnが配置される時を「正」、この逆差しを「誤」として区別する目印の役割がある。さらに、例えば第1導電ピンP1の根本に組み込まれる超小型のICタグ100を検出するために検知コイル533を筒に差し込んだ状態で、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500を機械的に所定の回転位置と所定の深さを決定する役割を有する。
【0041】
図9に示すように、検出部530の検知コイル(微小ループ)533のコイル面と絶縁層300を介して対向するICタグ105のコイル面とが平行になり、磁束Φにより電磁結合する。Φは電磁誘導の磁力線を示している。このICタグ通信用リーダ/ライタ装置500は、電子部品組立体の位置合わせ勘合部と1対1に対応する。ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500の高周波アンテナ回路から信号伝送部520までを一連の検出装置とする。係合部の深さが所定であって、ここにICタグ通信用リーダ/ライタ装置500が勘合したときのみ、その微小ループがICタグ100のコイルの面と平行になり、かつ、微小ループとICタグが所定の距離内に固定され、この状態で、微小ループとICタグは磁束Φにより電磁結合する。
【0042】
図10は、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置の検出部530の作用を説明する図である。導電ピンPnの近傍のICタグ105のコイル面と検知コイル533のコイル面とが平行であり、磁束Φ1〜磁束Φ3により電磁結合している。
【0043】
図11Aは、電子部品の複数の導電ピンの差し込みが正常な状態における磁束を示す図であり、
図11Bは、
図11Aの状態の磁束を示す斜視図である。600は検出部530の検知コイル(微小ループ)533から出る磁力線の範囲の断面を示しており、各導電ピン534とその近傍のICタグ105に跨って、磁力線が生じている。但し、各磁力線の範囲600は、隣合う導電ピンPnやその近傍のICタグ105には及んでおらず、通信の混信を生じないようになっている。
【0044】
図11Aは、第1導電ピンP1に近接した側の磁力線の範囲600−1にICタグ105−1、第n導電ピンPnに近接した側の磁力線の範囲600−nにICタグ105−nが埋設されており、電子部品組立体の第1導電ピンP1、第n導電ピンPn等の差し込みが正常な状態である。微小ループとICタグとが所定の距離内に固定され、検知コイル533とICタグは磁力線の範囲600で磁束Φにより電磁結合し、正常な状態であることを検知する。
【0045】
すなわち、正規差しの場合、微小ループ533がICタグ105のループ面と電磁結合することで、リーダ/ライタ装置500と通信可能となる。ICタグと微小ループ533はトランスの1次コイル、2次コイルの関係が成り立つ。微小ループ533の高周波電流を1次電流とすると、この1次電流によって誘起した磁力線がICタグのコイルアンテナ1053に2次電流を発生させる(図示略)。この2次電流で動作したICタグ105は、そのIDなどの信号を微小ループ533からケーブル520を逆に辿ってリーダ/ライタ装置500へ返す。ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500から見たときの感度は、微小ループ533、すなわち検知コイルとタグ105が接近しているほど高い感度になる。そのため、微小ループ533の位置合わせ嵌合部532が電子部品組立体の位置決め構造と一致したとき、検知コイルである微小ループ533の直下直近においてICタグ105を検出し、その結果が、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500の表示部512に表示される。
【0046】
このような磁力線の有無をICタグ通信用リーダ/ライタ装置500の検出部530により検知することで、各導電ピンPnに対応するICタグ105を検知することにより、電子部品組立体の各導電ピンPnが正規の状態で一体化されているか、否かを容易に判別することができる。
【0047】
もし誤って第1導電ピンP1、第2導電ピンP2等が電子部品組立体内に差し込まれたとき、ICタグは所定の位置からずれる。
図12Aは、電子部品の複数の導電ピンの差し込みが逆の状態の、電子部品組立体の斜視図である。
図12Bは、
図12Aの、導電ピンの差し込みが逆の状態における磁束の断面(600)を示す図である。
【0048】
図12Aでは、
図3とは逆に、金属製の第2の容器200の左側に第n導電ピンPn、金属製の第2の容器200の右側に第1導電ピンP1が埋設されており、第1導電ピンP1、第2導電ピンP2の差し込みが逆の場合である。このとき、第n導電ピンPnに対応するICタグ105−nは、検知コイル533の磁束Φ‘により検出可能な範囲600−1の外に有り、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500はICタグ105−nを検出できない。同様に、第1導電ピンPnに対応するICタグ105−1は、検知コイル533の磁束Φ‘により検出可能な範囲600−nの外に有り、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500はICタグ105−1を検出できない。その結果、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500の表示部512は何も表示されないので、
図12Aの状態は、誤差しであると判定される。
【0049】
このように、電子部品組立体の複数の導電ピンと少なくとも1個のICタグとタグとを一体化し、これらが電子部品組立体内に逆向きに誤差しされるとICタグ105の位置が、係合部532に対し、反対側にずれる。
図12Bの状態は、このずれ巾が検知コイル533によって検出できない電磁的距離となる様に調整されている。
【0050】
本実施例によれば、電子部品組立体の所定の位置にICタグを埋設することで、電子部品組立体の電気部品の特性に影響を及ぼさず外部から効率よく、電子部品の導電ピンの逆刺し検出を行うことができる。
【0051】
本実施例の判別方法を採用すれば、電子部品組立体が有する複数の導電ピンを容易にかつ従来法により低コストで判別することができる。このため、電子部品の組立においても、複数の導電ピンを取り違えることなく、各導電ピンに対応する電子部品の接続端子に適切に接続されるように組み立てることができ、これらの装置に対する信頼性も向上される。
【0052】
なお、ICタグ通信用リーダ/ライタ装置500は、全体として、第1の実施例で述べたような一体的な構造で無くても良く、例えばポート切替部513等、リーダ/ライタ装置の各部分を個別に分離して構成し、これらがケーブルや電磁的にワイヤレスで相互に接続されるようにしても良い。