(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)薬効成分を分散又は乳化して含有する、平均粒径100〜290μmであるハイドロゲル粒子 0.1〜15質量%、(B)粘結剤、及び(C)水 5〜40質量%を含有し、かつ成分(A)中に、
薬効成分として、成分(A)中の含有量が0.01〜10質量%である、アズレン、トコフェロール、グリチルレチン酸、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール、ジヒドロコレステロール、及びジヒドロアビエチン酸から選ばれる油溶性薬効成分と、
油溶性薬効成分の溶剤として、成分(A)中の含有量が0.5〜10質量%である、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、及びジカプリン酸ネオペンチルグリコールから選ばれる油剤を含有するとともに、
ゲル形成剤として、成分(A)中の含有量が0.5〜5質量%である寒天を含有する歯周病用練歯磨組成物の製造方法であって、
寒天と水を寒天の溶解温度以上に加熱混合し、さらに油溶性薬効成分の溶剤である油剤に溶解させた油溶性薬効成分を混合して寒天の溶解温度以上の混合液を得た後、得られた混合液を滴下法又は噴霧法により寒天の溶解温度より冷却して固化することによって成分(A)のハイドロゲル粒子を製造する工程を含む、歯周病用練歯磨組成物の製造方法。
粘結剤が、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキプロピルセルロース、ペクチン、トラガントガム、アラビアガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム及びメトキシエチレン無水マレイン酸共重合体から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の歯周病用練歯磨組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[ハイドロゲル粒子]
本発明の歯磨組成物に含まれるハイドロゲル粒子は、薬効成分を分散状態又は乳化状態で含有するものである。薬効成分としては、歯周病に対して予防又は改善効果を有するものであればよく、抗炎症剤、血行促進剤、抗菌剤、殺菌剤、止血剤、抗酸化剤などが挙げられる。これらの薬効成分は、油溶性でも水溶性でもよく、油溶性薬効成分であれば溶剤(油剤)に溶解させて、また水溶性薬効成分であれば、例えば、ポリマーと混合することで水に不溶性の複合体を形成させて、ハイドロゲル粒子中に分散させることができる。
【0012】
本明細書において、「ハイドロゲル」とは、水を溶媒としてゲル化形成剤を配合して形成された含水膨潤体であって、水に不溶なものをいい、ゲル形成剤としては高分子が好ましく、天然系高分子化合物が好ましい。また、ハイドロゲル粒子は、好ましくはハイロドゲルを覆う皮膜のないものであって、ハイドロゲル中に、油剤に溶解した油溶性薬効成分、又は水溶性薬効成分と水溶性ポリマーとが複合体を形成したものが分散した状態にあるものが好ましい。
【0013】
油溶性薬効成分としては、特に限定されないが、歯周病への予防や改善効果が知られているアズレン類、トコフェロール類、グリチルレチン酸類、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール、ジヒドロコレステロール、ジヒドロアビエチン酸等が好ましく、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。本発明に用いられるアズレン類としては、アズレン、グアイアズレン等が挙げられ、トコフェロール類としては、酢酸dl-α-トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール等が挙げられ、グリチルレチン酸類としては、例えばα-グリチルレチン酸、β-グリチルレチン酸、グリチルリチン酸等が挙げられ、β-グリチルレチン酸が好ましい。
【0014】
本発明に用いるハイドロゲル粒子中の、油溶性薬効成分の含有量は、油溶性薬効成分が歯肉に対して十分に作用し、かつハイドロゲル粒子の安定性の観点から、ハイドロゲル粒子の全重量を基準として、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。
【0015】
これらの油溶性薬効成分の溶剤としては、常温(25℃)で液体である油剤であれば限定されず、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピルなどの脂肪酸エステル油、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、脂肪酸(C
8,C
10)トリグリセライドなどの液状トリグリセライドが挙げられる。
【0016】
本発明に用いるハイドロゲル粒子中の、油溶性薬効成分の溶剤としての油剤の含有量は、油溶性薬効成分を溶解し、かつハイドロゲル粒子の安定性の観点から、ハイドロゲル粒子の全重量を基準として、0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0017】
薬効成分として油溶性薬効成分を用いた場合、ハイドロゲル粒子は、油溶性薬効成分と溶剤(油剤)が、分散又は乳化した状態で安定に存在しうるように、分散剤又は乳化剤を含有することが好ましい。
分散剤又は乳化剤としては、高分子乳化分散剤、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
分散剤及び乳化剤の濃度は、油溶性薬効成分を均一に分散させる観点からハイドロゲル粒子全重量を基準として、0.001〜10質量%、更に0.005〜5質量%、特に0.01〜2質量%が好ましい。
【0018】
高分子乳化分散剤としては、例えば、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(ノベオン社製 商品名:ペムレンTR−2等:)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリアクリルアミド、アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物の酸化エチレン付加物等の合成高分子化合物、レシチン誘導体、澱粉誘導体、カゼイン、アラビアゴム等の天然高分子化合物などが挙げられる。このうち、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共合体が好ましい。
陰イオン界面活性剤としては、例えばアシルグルタミン酸ナトリウム、アシルサルコシンナトリウム等のアシルアミノ酸塩、アルキルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、高級脂肪酸スルホン化モノグリセリド塩、イセチオン酸の脂肪酸エステル塩、N−メチル長鎖アシルタウリンナトリウム塩、ポリオキシエチレンモノアルキルリン酸塩等が挙げられる。
【0019】
非イオン性界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0020】
水溶性薬効成分の場合は、特に限定されないが、水を分散媒とする歯磨組成物の中のハイドロゲル粒子内に安定に保持するために、他の成分としては、水溶性薬効成分と水に不溶性の複合体を形成するポリマー(以下「ポリマーA」という)が好ましい。ここでポリマーAとしては、ポリビニルポリピロリドン等の水不溶性ポリマー、ポリビニルピロリドン等の水溶性ポリマーが挙げられるが、好ましく水溶性のポリマーAが好ましい。
具体的には、水溶性薬効成分としてはポリフェノール類が好ましい。当該ポリフェノール類はポリマーAにより水不溶性の複合体を形成させて、ハイドロゲル粒子に含有させることができる。
【0021】
本発明に用いられるポリフェノール類としては、縮合型タンニン等のモノマーやオリゴマーや加水分解型タンニンが挙げられ、カテキン類、フラバノール類、フラボン類、アントシアニジン類、ロイコアントシアニジン類等の縮合型タンニンモノマーのほか、プロアントシアニジン類等の縮合型タンニンオリゴマー、ガロイルグルコース類等の加水分解型タンニンが挙げられる。
カテキン類としては、例えばカテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類;エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類などが挙げられる。フラバノール類としては、ケンフェロール、ケルセチン、ミリセチン等が挙げられる。フラボン類としては、アビゲニン、ステオリン、ジオスメチン等が挙げられる。ロイコアントシアニジン類としては、フラバン−3−オール、フラバン−3,4−ジオール等が挙げられ、アントシアニジン類としては、シアニジン、デルフィニジン等が挙げられる。プロアントシアニジン類は縮合型タンニンのオリゴマーの総称であり、代表的なものとしてウーロン茶ポリフェノール、紅茶ポリフェノール、ブドウ種子ポリフェノール、松樹皮ポリフェノール、ホップポリフェノール、リンゴポリフェノール、クランベリーポリフェノール、ブルーベリーポリフェノール、落花生渋皮ポリフェノール、黒豆ポリフェノール、カカオポリフェノール、柿タンニン等が挙げられる。
【0022】
本発明に用いられるポリフェノール類としては、カテキン類やプロアントシアニジン類がより好ましい。
カテキン類は、茶葉から熱水もしくは水溶性有機溶媒により抽出された緑茶抽出物を濃縮、精製等を行うことによって得ることができる。また、市販の三井農林(株)「ポリフェノン」、伊藤園(株)「テアフラン」、太陽化学(株)「サンフェノン」などの緑茶抽出物の濃縮物を用い、成分調整を行うことにより、本発明の目的に適うカテキン類を得ることができる。
プロアントシアニジン類は、様々な植物や果実に含まれ、例えば、発酵茶葉、ブドウ種子、松樹皮、ホップ、リンゴ、クランベリー、ブルーベリー、落花生渋皮、黒豆、カカオ、柿などを水もしくは水溶性有機溶媒により抽出された植物抽出物を濃縮、精製等を行うことによって得ることができる。また、市販の丸善製薬「ウーロン茶エキス」、研光通商(株)「松樹皮エキス」、「ブドウ種子エキス」、「クランベリーパウダー」、アサヒビール(株)「アップルフェノン」、リリース科学工業(株)「パンシル」などの植物抽出物の濃縮物を用い、成分調整を行うことにより、本発明の目的に適うプロアントシアニジン類を得ることができる。
【0023】
本発明に用いられるポリマーAとしては、水溶性薬効成分と水不溶性の複合体を形成するポリマーであれば特に限定されない。水不溶性の複合体とは、水溶性薬効成分の水溶液とポリマーA、又はポリマーAの水溶液を混合した際に不溶物として水中から析出する物質のことである。水不溶性の複合体の析出は、混合液の濁り、あるいは、混合液をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置で測定した際に水不溶性複合体由来のピークが存在することによって確認することができる。なお、水不溶性の複合体は、例えば、口腔内に適用された際に、徐々に溶解するものも含まれる。
【0024】
水不溶性のポリマーAとしては、ポリビニルポリピロリドン(架橋ポリビニルピロリドン、クロスポビドン)等が挙げられる。水溶性ポリマーAとしては、ポリビニルピロリドン系重合体、ポリビニルアルコール、水溶性セルロースエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。ポリビニルドン系重合体としては、ポリビニルピロリドン(以下PVPと略記する場合もある)が好ましい。また、水溶性セルロースエーテルとしては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース等が挙げられるが、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースがより好ましい。
ポリマーAの重量平均分子量は、水溶性薬効成分、例えばポリフェノール類の変色を効果的に抑制する観点から、6,000以上が好ましく、60,000以上がより好ましく、400,000以上が更に好ましく、1,200,000以上が特に好ましい。また、水不溶性の複合体が塊状の凝集物となることを抑制し微細な水不溶性の複合体を得る観点から、3,000,000以下が好ましく、2,000,000以下がより好ましい。
本発明において、ポリマーAの重量平均分子量は、一般的な重量平均分子量測定法である粘度法によって測定された値である。尚、重量平均分子量は光散乱法等によって測定することもできる。本発明において、ポリマーAがポリビニルピロリドンである場合は、粘度の測定値からFikentscherの公式に基づいて計算されたK−値によって重量平均分子量を決定する。
【0025】
本発明に用いるハイドロゲル粒子中の、水溶性薬効成分の含有量は、水溶性薬効成分が歯肉溝に対して十分に作用し、かつハイドロゲル粒子の安定性の観点から、ハイドロゲル粒子の全重量を基準として、0.001〜10質量%が好ましく、0.001〜6質量%がより好ましく、0.01〜3質量%が更に好ましい。また、ポリマーAの含有量は、水溶性薬効成分、例えばポリフェノール類の変色を効果的に抑制する観点から、水溶性薬効成分に対して1〜10質量倍が好ましく、1〜8質量倍がより好ましく、1〜4質量倍がさらに好ましい。
【0026】
また、ハイドロゲル粒子中の水不溶性の複合体の含有量は、複合体が塊状の凝集物となることを抑制し微細な複合体を得る観点から、0.01質量%以上、更に0.05質量%以上、特に0.1質量%以上が好ましく、その上限は、12質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、6質量%以下が更に好ましい。
【0027】
本発明において、ハイドロゲル粒子に用いられるゲル形成剤としては、例えば、寒天、κ−カラギーナン、ι−カラギーナン、λ−カラギーナン、ファーセレラン、アルギン酸塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の海藻抽出物;グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンド種子多糖類、タラガム、カシアガム等の植物種子粘質物質;ペクチン、アラビノガラクタン等の植物果実粘質物;キサンタンガム、スクレログルカン、プルラン、デキストラン、ジュランガム、カードラン等の微生物産生粘質物;ゼラチン、アルブミン、カゼイン等の動物蛋白質;大豆蛋白質、小麦蛋白質等の植物蛋白質;微結晶セルロース等のセルロース及びその誘導体;澱粉、澱粉リン酸エステル、澱粉グリコール酸エステル等の澱粉及びその誘導体が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。物理的に破壊されやすい脆いゲル粒子を形成する高分子として、κ−カラギーナン、寒天、ジュランガムが好ましい。
本発明のハイドロゲル粒子中のゲル形成剤の含有量は、ハイドロゲル粒子を歯磨組成物へ配合する時の壊れを防止する観点から、0.25〜5質量%が好ましく、0.5〜4質量%がより好ましく、1〜4質量%が更に好ましい。
【0028】
本発明におけるハイドロゲル粒子は、水溶性薬効成分とポリマーA、油溶性薬効成分と溶剤、ゲル形成剤及び水以外に、糖類、多価アルコール等の水溶性有機化合物や、着色剤、防腐剤、水溶性香料等の成分を含有していてもよい。
糖類としては、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、マンニトール、サッカロース、マルトース、ラクトース等が挙げられる。
多価アルコールとしては、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、オリゴサッカライド等が挙げられる。
【0029】
本発明におけるハイドロゲル粒子の製造法は特に限定されないが、例えば、寒天等のゲル形成剤をイオン交換水と混合し、ゲル形成剤の溶解温度以上の温度に加熱して十分に溶解させる。油溶性薬効成分を用いる場合は、ここに、油溶性薬効成分と溶剤を混合し、好ましくは分散剤又は/及び乳化剤を含め、例えばホモミキサー等で混合した後、一般的な滴下法、噴霧法、或いは攪拌法等により、ゲル形成剤の溶解温度より冷却して固化させたハイドロゲル粒子を得る。一方、水溶性薬効成分を含有するハイドロゲル粒子は、ポリマーAを寒天等のゲル形成剤とともにイオン交換水と混合し、この混合液をゲル形成剤の溶解温度以上の温度に加熱して十分に溶解させる。ここに水溶性薬効成分の水溶液を添加混合した後、一般的な滴下法、噴霧法、或いは、攪拌法等によりハイドロゲル粒子を得ることができる。
【0030】
滴下法は、孔から混合液を吐出させ、吐出された混合液がその表面張力又は界面張力によって液滴になる性質を利用し、その液滴を空気等の気相中又は液相中で冷却固化させてハイドロゲル粒子を製造する方法である。なお、粒径の均一なハイドロゲル粒子を製造する観点から、孔から吐出される混合液に振動を与えることが好ましい。
【0031】
噴霧法は、噴霧ノズルを用い、噴霧ノズルから混合液を気相に噴霧させると共に、その表面張力によって液滴を形成させ、その液滴を気相で冷却固化させてハイドロゲル粒子を製造する方法である。
【0032】
攪拌法は、混合液と実質的に混じり合わない性状を有し且つゲル化温度以上の温度に調整した液に混合液を投入し、攪拌による剪断力により混合液を微粒化し、界面張力によって液滴になる性質を利用し、その液滴を混合液と実質的に混じり合わない液中で冷却固化させてハイドロゲル粒子を製造する方法である。
【0033】
滴下法、噴霧法、及び攪拌法のいずれの場合も、吐出時、噴霧時、又は投入時の混合液の温度を、ゲル形成剤のゲル化温度以上で且つ100℃以下の温度とすることが好ましい。また、美観に優れた球状の粒子を容易に製造することができるという観点から、この混合液の温度を、ゲル形成剤のゲル化温度+10℃以上とすることが好ましく、ゲル化温度+20℃以上とすることがより好ましい。なお、この温度の上限は、水の沸点である100℃である。ここで、ゲル形成剤としてよく用いられる寒天の水への溶解温度は、一般に75℃以上、その主なものについては75〜90℃であり、寒天を水に溶解させた後、冷却したときのゲル化温度は30〜45℃である。
【0034】
このようにして得られたハイドロゲル粒子は、皮膜を有さず、ハイドロゲル粒子中に油溶性薬効成分を含有する油滴、及び/又は水溶性薬効成分と水溶性ポリマーの複合体を、ゲル形成剤及び水を含む連続相中に分散又は乳化して含有している。
【0035】
本発明におけるハイドロゲル粒子の平均粒径は、歯肉溝に送達させる観点から、50〜500μmが好ましく、100〜500μmがより好ましく、140〜290μmが特に好ましい。ハイドロゲル粒子の平均粒径は、各種目開きのふるいを用い、粒子100gを水中で湿式分級し、余分な水分を濾紙で除去した後に重量を測定して重量平均粒径で表す(フルイ法)。
【0036】
また、本発明におけるハイドロゲル粒子の形状は、特に限定されないが、曲面で構成された回転体の形状を有することが好ましい。ここで、「曲面で構成された回転体」とは、仮想軸及び連続的な曲線で構成された閉じた図を仮想軸で回転させたものをいい、三角錐や円柱等の平面を有する形状は含まない。ハイドロゲル粒子の形状は、美観の観点から、球状又は楕円状であることがより好ましい。
【0037】
更に、本発明で用いるハイドロゲル粒子は、1個当たりの破壊強度が0.1〜10g/個が好ましく、特に1〜7g/個であることが、歯磨組成物の製造時において破壊されにくく、ブラッシングにより歯肉溝に送達されて破壊されやすいため好ましい。この破壊強度は、ハイドロゲル粒子1個に対し上方より荷重をかけ続け、ハイドロゲル粒子が破壊された時の荷重量で示されるものである。
【0038】
[歯磨組成物]
本発明の歯磨組成物は、上記のようなハイドロゲル粒子、粘結剤及び水を含有する。
本発明に用いられる粘結剤としては、例えば、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキプロピルセルロース、ペクチン、トラガントガム、アラビアガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム及びメトキシエチレン無水マレイン酸共重合体等が挙げられ、特にカルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン及びキサンタンガムが好ましい。
【0039】
粘結剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよく、歯磨組成物中の粘結剤の含有量は、保存安定性、組成物の粘性、より高い清涼感を得る観点から、0.1〜3質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましく、0.2〜1.2質量%が更に好ましい。
【0040】
本発明の歯磨組成物中、ハイドロゲル粒子の含有量は、歯磨組成物の安定性の観点から、0.01〜15質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%が更に好ましい。
【0041】
本発明の歯磨組成物中の水分量は、保存安定性、より高い清涼感を得る観点から、1〜50質量%が好ましく、3〜40質量%がより好ましく、5〜30質量%が更に好ましい。
【0042】
本発明の歯磨組成物は、清涼感、冷涼感及び味の観点から、更に粒子径が355μm未満の粉末もしくは粒子状のエリスリトールを配合することができる。エリスリトールの構造としては、L−エリスリトール、D−エリスリトール、meso−エリスリトールの3種の異性体が存在するが、本発明はこれらいずれの構造も使用できる。エリスリトールとしては、通常入手可能なものを使用でき、例えばブドウ糖を発酵させた後、再結晶して得られる結晶状のエリスリトール等が挙げられる。結晶状のエリスリトールは、市販品としては、日研化学(株)、三菱化学フーズ(株)、セレスター社製等のものが入手可能である。また、粒径の大きなものは、粉砕して粒子径を調整したものを使用することもできる。エリスリトールの粉砕には、ローラミル、ハンマーミル、高速度粉砕機、パルベライザーなどを使用するのが一般的であるが、粒度の調整が簡便で、かつ、生産効率にも優れる高速度粉砕機、ハンマーミルによる粉砕が好ましい。
エリスリトールの粒子径は、口腔内で冷涼感が長く続くという観点から45μm以上355μm未満が好ましく、53μm以上300μm未満がより好ましく、75μm以上250μm未満が更に好ましい。エリスリトールの粒子径が45μm以上のものは、口の中で瞬時に溶けることがなく、冷涼感が長く続き好ましい。また355μm未満のものは、口腔内で溶けやすく冷涼感を発揮することができる。
【0043】
なお、エリスリトールの粒子径は以下のように測定される。
篩:JIS標準篩 φ75mm
目開き:上段より、それぞれ500μm、355μm、250μm、180μm、125μm、90μm及び45μmの目開きを有する篩の下に受器を有する。
振盪機:ミクロ型電磁振動機M−2型(筒井理化学器機(株))方法:試料15gを500μm篩上に載せ、電磁振動機にて5分間分級する。250μm、180μm、125μm、90μm及び45μmの目開きを有する篩上に存在するエリスリトールの合計量を粒子径45μm以上355μm未満のエリスリトールとする。
【0044】
本発明の歯磨組成物中、エリスリトールの配合量は、清涼感及び冷涼感の観点から、15〜60質量%が好ましく、20〜55質量%がより好ましく、25〜50質量%が特に好ましい。
【0045】
エリスリトールは、粉末の状態で歯磨組成物中に分散しているのが望ましい。そのためには、エリスリトールは製造の最終工程に、粉体のままで投入することが好ましい。このような方法を用いることで、エリスリトールは水にほとんど溶解せずに、歯磨組成物中に粉末の状態で存在させることが可能となる。
【0046】
本発明の歯磨組成物は、歯磨組成物に使用可能なその他の配合成分、例えば、発泡剤、研磨剤、抗酸化剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、PH調整剤、保存剤などを、本発明の目的が阻害されない範囲で適宜配合しても良い。
【0047】
発泡剤としては、陰イオン、非イオン、陽イオン、及び両性界面活性剤が挙げられる。陰イオン界面活性剤としては、例えばアシルグルタミン酸ナトリウム、アシルサルコシンナトリウム等のアシルアミノ酸塩、アルキルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、高級脂肪酸スルホン化モノグリセリド塩、イセチオン酸の脂肪酸エステル塩、N−メチル長鎖アシルタウリンナトリウム塩、ポリオキシエチレンモノアルキルリン酸塩等が挙げられる。これらの陰イオン界面活性剤における疎水基のアルキル基、アシル基は炭素数6〜18、特に10〜14のものが好ましい。また、その塩としてはナトリウム塩が好ましい。陰イオン界面活性剤としては、発泡性が良く、また、安価に入手可能な点からアルキル硫酸エステル塩が特に好ましい。陰イオン界面活性剤は、本発明の歯磨き剤組成物中に0〜5質量%含有することが好ましく、更に好ましくは0〜2質量%である。
【0048】
研磨剤としては、沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、シルコノシリケート、グルコノシリケート等のシリカのほか、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム等が挙げられる。研磨剤の含有量は、本発明の歯磨組成物中、0〜15質量%が好ましく、特に0〜12質量%が好ましい。
【0049】
抗酸化剤としては、抗酸化力又は還元力を有し、口腔内組成物に使用可能な成分、例えばL−アスコルビン酸及びその塩、エリソルビン酸及びその塩、ローズマリー抽出物、ステビア抽出物、ヒマワリ種子抽出物、没食子酸プロピル、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、L−システイン塩酸塩、フィチン酸、ハイドロキノン及びその配糖体、ノルジヒドログアヤレチン酸、アスコルビン酸高級脂肪酸エステル(ラウリン酸エステル、ステアリン酸エステル、イソステアリン酸エステル、パルミチン酸エステルなど)、グアヤク脂等が挙げられる。L−アスコルビン酸又はエリソルビン酸の塩としては、ナトリウム塩、カルシウム塩、第一鉄の塩、パルミチン酸エステルの塩等が挙げられる。これら抗酸化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を選択して用いてもよい。抗酸化剤の含有量は、外観色の変化抑制効果の点から、本発明の歯磨組成物中、0.0005〜50質量%、更に0.001〜20質量%、特に0.01〜5質量%が好ましい。
【0050】
湿潤剤としては、例えばグリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、トレハロースやポリマーAの成分でもあるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられ、その1種又は2種以上を組み合わせて配合することができる。これら湿潤剤の含有量は、透明性の確保の点から、本発明の歯磨組成物中、40〜95質量%、更に60〜80質量%が好ましい。
【0051】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ソーマチン、アセスルファムカリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキリシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン等が挙げられる。
【0052】
香味剤としては、例えば、l−メントール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、ペパーミント油、スペアミント油、オシメン、n−アミルアルコール、シトロネロール、α−テルピネオール、サリチル酸メチル、メチルアセテート、シトロネオールアセテート、シネオール、リナロール、エチルリナロール、ワニリン、チモール、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、桂皮油、ピメント油、シソ油、丁子油、ユーカリ油、ハツカ油、アニス油、冬緑油等が挙げられる。
【0053】
pH調整剤としては、例えば、クエン酸及びその塩、リン酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩、グルコン酸及びその塩、マレイン酸及びその塩、アスパラギン酸及びその塩、コハク酸及びその塩、グルクロン酸及びその塩、フマル酸及びその塩、グルタミン酸及びその塩、アジピン酸及びその塩、塩酸、アルカリ金属水酸化物等が挙げられる。
【0054】
保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、安息香酸Na、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等が挙げられる。
【0055】
また、その他の各種有効成分として、本願発明の目的を阻害しない範囲で、例えば、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物;アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、水溶性のグリチルレチン酸及びその塩、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、エピジヒドロコレステリン、α−ビサボロール及びその塩類等の抗炎症剤;トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸等の抗プラスミン剤;銅クロロフィリンナトリウム、グルコン酸銅等の銅化合物;塩化ナトリウム、硝酸カリウム等の塩類;塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム等の第四級アンモニウム化合物、クロルヘキシジン塩類、トリクロロカルバニリド等の殺菌剤;デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼ、塩化リゾチーム等の酵素;トウキ、オウバク、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物;乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、ベルベリン、ヒドロキサム酸及びその誘導体、トリポリリン酸ナトリウム、ゼオライト、ポリビニルピロリドン、クエン酸亜鉛等が挙げられる。
【0056】
本発明の歯磨組成物は、その用途に応じて、常法に従って練歯磨組成物、液状歯磨組成物、ゲル状歯磨組成物などとすることができる。
【0057】
本発明の歯磨組成物は、通常の歯磨き操作、すなわちブラッシングにより、歯磨組成物中のハイドロゲル粒子が歯肉溝に送達され、歯肉溝において破壊される結果、ハイドロゲル粒子中の薬効成分が歯肉溝内に効率よく送達される。従って、本発明の歯磨組成物は、歯周病の予防又は改善用の歯磨組成物として有用である。
【実施例】
【0058】
例中の%は、特記しない限り質量%である。
【0059】
製造例1
イオン交換水319gに寒天(伊那食品工業(株)、UP−37)を15g、ポリビニルピロリドン(ISP社、PVP K−90、重量平均分子量1300000)を16g溶解させて調整した水溶液(85℃)と、イオン交換水140gに茶エキス(太陽化学(株)、サンフェノン100S、カテキン類含有量60〜70%)10g、L−アスコルビン酸(第一製薬(株)、アスコルビン酸)、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(ノベオン社、ペムレンTR−2)を溶解させて調製した水溶液(20℃)と、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(日清オイリオ(株)、エステモールN−01)及びトリクロサン(チバ・ジャパン(株)、イルガケアMP)とを、ホモミキサーによって混合(8000r/min、1分)して、カテキンとポリビニルピロリドンの複合体の水分散液を得て、これを気相中に噴霧することによって表1に示す組成のハイドロゲル粒子aを得た。ハイドロゲル粒子aの平均粒径は200μmであった。
【0060】
実施例1
表1に示すトリクロサンを含有するハイドロゲル粒子を配合した歯磨組成物A(本発明品)と、ハイドロゲル粒子を含有せず、歯磨組成物中に直接トリクロサンを配合した歯磨組成物B(比較例)とを調製した(表2)。得られた歯磨組成物A及びBについて下記方法で歯肉溝モデル14に付着したトリクロサンの量を比較した。なお、ハイドロゲル粒子aは、歯肉溝モデル14への送達性を確認するために着色料を配合している。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
[歯肉溝への送達性評価]
歯肉溝へのハイドロゲル粒子、及び薬効成分の送達性を以下のような歯モデル1を用いて評価を行った。
図1に示すように、歯モデル1は、透明なアクリル板を歯のモデル12として用い、歯肉の硬度に類似するウレタンゴム(半透明)を歯肉モデル13として用いた。
歯肉モデル13のウレタンゴムは、厚みが2mm、硬さがAの30度(西東京精密株式会社のゴム硬度計A WR104Aで測定 JIS K 6253準拠のタイプAデュロメーター)のものを使用し、ウレタンゴムの上端角部はR6mmのアールを形成している。ウレタンゴムの上端のアールを形成した部分と、ウレタンゴムとアクリル板とが密着した部分の境界Pよりもアクリル板とウレタンゴムが密着した下方側を歯肉溝モデル14として送達性を評価した。歯肉モデル13に用いたウレタンゴムは、ヒトの歯肉と同様にブラッシングによってわずかに動き、アクリル板と密着した部分に数ミクロンの隙間を形成しうる。
【0064】
歯モデル1に1.0gの歯磨組成物A、Bをのせ、約1分間ブラッシング後、歯肉溝モデル14を綿棒で擦過して付着成分を、後述のクロマトグラフ法に用いる移動層5mLが入った遠心管に投入して10分間超音波注出をかけ、濾過したものを回収液とした。この回収液を下記に示す条件で液体クロマトグラフ法を用い、標準品を用いた検量線との比較により、回収液中のトリクロサン濃度を算出した。
尚、回収液中のトリクロサンの歯肉溝への送達割合は、ブラッシングに用いた歯磨組成物中に含まれる量と同量のハイドロゲル粒子を移動層で10分間超音波抽出をかけ、濾過した液中のトリクロサン濃度を100%とし、本ブラッシングを行う前の歯肉溝モデル14内部を綿棒で擦過したものの回収液中のトリクロサン濃度を0%として、歯肉溝モデル14へのトリクロサン送達割合を算出した。
【0065】
[液体クロマトグラフ法の条件]
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を適用した。HPLCのカラムは内径4〜10mm、長さ10〜30cmのステンレス管を用い、液体クロマトグラフ用オクタデシルシリル化シリカゲル(平均粒径4〜10μm)を用い、溶離液はメタノール及び水の混液(70:30)に0.1w/v%になるようにリン酸を加えたものを1.0mL/分の溶出速度で用いた。トリクロサンの検出は紫外吸光光度計で254nmの吸光度測定により行った。調整した試験溶液、及びトリクロサン標準溶液20μLを各々正確にとり、上記の液体クロマトグラフ法の試験を行い、それぞれの液のトリクロサンのピーク面積をトリクロサンの理論段数を4000段以上、テーリング係数を0.8〜1.5として求め、トリクロサン標準溶液のピーク面積を検量線として比較し、次式により本品中のトリクロサン含量を算出した。
本品中のトリクロサン含量=(Y×Z)/X
X:トリクロサン標準溶液の試験により得られたトリクロサンのピーク面積
Y:試験溶液の試験により得られたトリクロサンのピーク面積
Z:トリクロサン標準溶液の濃度
【0066】
<送達性>
その結果を
図2に示す。
図2のグラフには、歯磨組成物A、Bのそれぞれについて5回評価を行ったトリクロサンの送達の割合の平均値を示す。
図2に示すように、トリクロサンをハイドロゲル粒子に含有しない歯磨組成物Bに比べてハイドロゲル粒子にトリクロサンを配合した歯磨組成物Aは、歯肉溝モデル14内部への薬効成分(トリクロサン)の送達量が約4倍である結果が得られた。
【0067】
<視覚による確認>
次に、
図3(a)〜(b)に透明なアクリル板を用いた歯モデル12の側から、ハイドロゲル粒子が歯肉溝モデル14に入りこむ状態を歯磨組成物Aを用いてブラッシング等を行った状態の写真により示す。
図3(a)は、歯磨組成物Aをのせてブラッシングを行った状態である。
図3(a)から理解できるように、ハイドロゲル粒子が境界Pよりも下方、約2mmまで殆ど破壊されないで送達している。これは、ブラッシングによって歯肉モデル13がわずか動き、歯のモデル12との間にできた数ミクロンの隙間にハイドロゲル粒子が押し込まれ、押し込まれたハイドロゲル粒子が歯肉モデル13と歯のモデル12との間に挟まれて保持されたためと考えられる。
図3(b)は、ブラッシング後にマッサージを2回行い、水洗いをした状態である。
図3(b)に示す歯肉溝モデル14は透明又は半透明であるため、歯肉溝モデル14に白く移った領域Qを観察することができた。領域Qは、マッサージによりハイドロゲル粒子が破壊されて歯肉溝モデル14に油剤が付着された状態を示している。
【0068】
以上のように、本発明のハイドロゲル粒子は、ブラッシングによっては破壊されにくく、破壊されていない状態のハイドロゲル粒子が、ブラッシングにより歯と歯肉の間にできるわずかな隙間に入りこみ、歯と歯肉の間に挟まれて保持されることで歯肉溝に送達すると考えられる。更に、送達したハイドロゲル粒子が歯肉の表面側(歯と反対側)からのブラッシングや、マッサージ、食事等によって潰れるように破壊されて、ハイドロゲル粒子に含まれていた薬効成分が歯肉に付着する。
【0069】
実施例2
製造例1と同様な方法で、表3〜表8に示すハイドロゲル粒子c〜ハイドロゲル粒子hを製造した。ハイドロゲル粒子c〜hについても、歯肉溝モデル14への送達性を確認するため着色料を配合した。こららのハイドロゲル粒子はいずれも平均粒径は140〜240μmの範囲であった。更に表9、10に示す歯磨組成物C〜歯磨組成物Hを製造し、実施例1と同様に
図1に示した歯モデル1を用いてブラッシングを行った。その結果、歯磨組成物C〜歯磨組成物Hのいずれを用いた場合でも、境界Pよりも下方、約2mmまでハイドロゲル粒子が送達されることを観察することができた。
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
【表6】
【0074】
【表7】
【0075】
【表8】
【0076】
【表9】
【0077】
【表10】