【実施例1】
【0013】
実施例1に係る管接続装置につき、
図1から
図5を参照して説明する。以下、
図1から
図3、
図5の紙面左側を管接続装置の前方(正面)側として説明する。
図1に示すように、地中に埋設されたダクタイル鋳鉄製等の既設の流体管1の外周面に、管接続装置10が水密性を保持した状態で、且つ流体管1との所定限度量の相対移動を許容した状態で装着されている。管接続装置10は、径方向に2分割可能な筐体12と、別体の被覆部11とからなる。管接続装置10は、2分割に限らず3分割など複数に分割可能であってよい。また、本実施例では流体管内の流体は上水であるが、流体管1の内部を流れる流体は必ずしも上水に限らず、例えば工業用水であってもよいし、また気体や気液混合状態の流体が流れる流体管であっても構わない。
【0014】
筐体12は、管軸に対して略直角外方を向き流体管1側から順に、連通部13、開閉弁部14、そして接続部15が連続して一体に設けられて成る。尚、連通部13、開閉弁部14、そして接続部15のうち少なくとも1つが、他と別体に設けられていても構わない。連通部13及び接続部15は、開閉弁部14により連通可能であって、流体管1に形成される分岐口1aの軸方向に拡がる内空構造を有している。連通部13は、被覆部11側に向けて開口した開口縁13aを有しており、この開口縁13aの開口領域が開閉弁部14側の開放領域に連続している。連通部13、開閉弁部14、そして接続部15を構成する筐体12と、被覆部11とは、互いの対向面間に配置された止水部材31,32を介し、ボルト・ナット30により流体管1に互いに組みつけられている。
【0015】
このように、連通部13の開口縁13aと流体管1に後述のように形成される分岐口の開口縁とを容易に位置合わせした状態で、連通部13を構成する筐体12と被覆部11とを組付けるだけで流体管に接続できる。
【0016】
開閉弁部14は、弁軸14bの回動操作で上下する弁体14aによって、連通部13と接続部15との間を開閉可能に成っている。
【0017】
接続部15の内周面には、この接続部15に接続される分岐管40(
図5参照)と係合する本発明の係合部としてのロックリング22が設置される環状溝15aが形成されている。また、接続部15の内周面である外側端15cの内径側には、外側端15cから接続部15の内方である流体管1に向けて、漸次縮径する傾斜をなす本発明におけるテーパー部としてのテーパー面15gが形成されている。更に、テーパー面15gの内方には、連続して接続部15の管軸と略平行をなす平行面15hが、環状溝15aよりも接続部15の後部まで形成されている。また、接続部15の後端部である外側端15cは、接続部15の管軸に略直交する直交面に形成されるとともに、外側端15cには、接続部15の外径方向にむけて膨出したフランジ20が形成されている。
【0018】
次に、管接続装置10を用いた流体管1への分岐口1aの穿設について説明する。
【0019】
図1及び
図2に示すように、先ず分岐口1aの穿設時の構造について説明すると、接続部15内部に、略筒形状の筒状体17が嵌挿されている。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、筒状体17は、ダクタイル鋳鉄等の金属材から成る本体筒の先端周面に、ゴム等の弾性材から成る密着部材26が設けられ、後端に外径方向に突出した鍔部17aが形成されている。この鍔部17aが本発明における押圧部を構成する。鍔部17aの正面における内径側には、後述する止水パッキン23の後端部が挿通配置される凹部17fが形成されている。この凹部17fは、止水パッキン23の後端部が接続部の外側に膨出しないよう保持するための内壁17gを鍔部17aの外径側に備えている。また、筒状体17の前記した本体筒は、先端周面側の縮径筒部17dと、鍔部17a側の拡径筒部17eと、から成り、拡径筒部17eは、後述の分岐管よりも若干小径の外径を備える。更に、凹部17fの内底面及び凹部17fよりも外径側である端面17hは、筒状体17の管軸に略直交する直交面に形成されている。
【0020】
尚、筒状体17には、接続部15に嵌設される途上において、本発明における止水部材としての環状の止水パッキン23が挿通される。筒状体17は、この止水パッキン23が拡径筒部17eの外周面に当接するとともに、止水パッキン23の後端部が鍔部17aの正面に形成された凹部17f内に挿入配置した状態で接続部15に嵌設することで、鍔部17aによって止水パッキン23を接続部15の内方である流体管1に向けて押圧する。そして、鍔部17aによって押圧された止水パッキン23は、テーパー面15gによって接続部15の管軸に向けて押圧されて弾性変形し、接続部15と筒状体17との間を水密に止水する。弾性変形した止水パッキン23の一部は、筒状体17を接続部15内に嵌設させていくことによって平行面15hと筒状体17との間で更に弾性変形する。
【0021】
このとき、筒状体17には弾性変形した止水パッキン23から外周面の全周にかけて均一な力が作用することで、筒状体17が接続部15と略同一の管軸上に配置される。つまり、筒状体17を接続部15に嵌設することで、筒状体17の接続部15に対する位置合わせが自動的になされるようになっている。より詳しくは、接続部15の管軸に対し直交面である外側端15cに、筒状体17の管軸に対し直交面である端面17hがメタルタッチで当接し、且つこの筒状体17に弾性変形した止水パッキン23から全周にかけて均一な力が作用することで、この筒状体17が接続部15と略同一の管軸上に配置された状態を達成し、筒状体17の接続部15への嵌設が完了する。
【0022】
尚、止水パッキン23がテーパー面15gによって押圧されることで止水パッキン23の後端部には接続部の外側に向けて弾性変形する力がはたらくが、止水パッキン23の後端部が内壁17gに当接することで止水パッキン23の後端部の弾性変形が阻まれるように成っている。このため、弾性変形した止水パッキン23の後端部が外側端15cと端面17hとの間に介在することなく、外側端15cと端面17hとを当接させることができる。
【0023】
接続部15に嵌挿された筒状体17は、密着部材26が接続部15の開閉弁部14寄りの縮径内面15fに当接するとともに、鍔部17aが接続部15の外側端15cに当接することで、係合部の一部としての環状溝15aと、後述する穿孔機16との間に介設されている。
【0024】
図1に示すように、筒状体17は、このように分岐管との接続に用いるロックリング22、止水パッキン23が接続部15の内周面に予め組み付けられた状態で、接続部15に嵌挿されている。また、前記した形状の筒状体17によれば、縮径筒部17dにより接続部15内を嵌挿し易く、且つ拡径筒部17eの外周面を止水パッキン23に水密に当接させ易い。
【0025】
また、筒状体17の鍔部17aの背面側には、穿孔機16と一体となって構成された、穿孔機16の付属部品である止水蓋としてのボーラーヘッド18が取り付けられている。ボーラーヘッド18は、筒状体17の鍔部17a及び接続部15のフランジ20に対し、長ボルト・ナット25により固定され、鍔部17aの背面に配置されたパッキン27を押圧保持することで接続部15内を水密に維持している。
【0026】
ボーラーヘッド18には、その外径方向に延びボーラーヘッド18の内外を連通する連通路18aが形成され、更に連通路18aを開閉する排出バルブ19が設けられている。
【0027】
図2に示すように、続いて分岐口1aの穿設工程について説明すると、開閉弁部14の弁体14aを開放し、また排出バルブ19を開放し、穿孔機16を構成する略円筒状のカッタ21を流体管1側に送出して穿孔を行なう。この穿孔機16と環状溝15aとの間に、環状溝15aへの切り粉の進入を阻止する筒状体17が介設されていることで、流体管1から流出する流体に伴い管壁から発生する切り粉が、等環状溝15aに向けて進入することなく、筒状体17内部を流通し、更に連通路18aを介して接続部15外部に排出できる。この穿孔により管軸に直交方向に略円形の分岐口1aが穿設される。また、上述したように、筒状体17が接続部15と略同一の管軸上に配置されることで、筒状体17が、接続部15の内周面及びロックリング22から全周に亘り偏り無く均一に離間することに成るため、穿孔機16による流体管1の穿孔の際にも、筒状体17が接続部15の内周面若しくはロックリング22に接触する虞を回避できる。
【0028】
また、筒状体17を接続部15の開閉弁部14側に向けて押し込むだけで、先端周面に備えた密着部材26により係合部としての環状溝15aよりも開閉弁部14側の縮径内面15fに密着し、切り粉の進入を簡単に防ぐことができる。尚、筒状体は、必ずしも先端周面に密着部材26を備えていなくてもよく、単一の筒部材のみから成っていてもよい。更に尚、筒状体は、必ずしも水密性を有するものに限られず、例えば切り粉の進入を阻止できる程度の細かさの網目状体から成っていても構わない。
【0029】
分岐口1aの穿設後、穿孔機16のカッタ21を接続部15側まで引き戻し、開閉弁部14の弁体14aを閉塞して、接続部15からボーラーヘッド18、穿孔機16を取り外す。
【0030】
図3に示すように、鍔部17aに形成された雌ネジ孔17bに、ネジ28を接続部15の外側端15c側に向けて螺挿するだけで、外側端15cを反力として利用して筒状体17を接続部15から取外すことができる。
【0031】
図5に示すように、筒状体17の取り外し後、接続部15の内方に、先端が外径方向に膨出した膨出部40aを有する分岐管40を挿入する。接続部15に挿入された分岐管40は、膨出部40aがロックリング22に係止することで抜出しが阻止され、且つ外周面が止水パッキン23に当接することで水密性が維持される。また、分岐管40には、筒状体17と同様に、弾性変形した止水パッキン23から外周面の全周にかけて均一な力が作用することで、筒状体17が接続部15と略同一の管軸上に配置され分岐管40の接続部15に対する位置合わせが自動的になされるようになっている。尚、分岐管40の挿入の際に、必ずしも筒状体17と接続部15とに介設した同一の止水パッキン23を用いるものに限られず、例えば、分岐管40の挿入の前に筒状体17と接続部15とに介設した止水パッキン23を取り外し、別途準備した新たな止水パッキンを用いて分岐管40と接続部15とに介設するようにしても構わない。次いで、弁体14aを再び開放することで、流体管1と分岐管40とが分岐口1aを介して連通することになる。
【0032】
このように、穿孔機16と係合部としての環状溝15aの間に介設された筒状体17により、穿孔機16で分岐口1aを穿設する際の切り粉が係合部へ進入することを阻止できるため、分岐口1aの穿設後、環状溝15aが切り粉の進入により不具合を生じることなく分岐管40に係合し、分岐管40を接続部15に水密性を維持した状態で接続できる。また、筒状体17が、分岐管40との接続に用いるロックリング22が止水パッキン23が接続部15の内周面に予め組み付けられた状態で、接続部15に嵌挿できることで、筒状体17を取外した後に、別の組付工程を要することなく、分岐管40を直ぐに挿入できる。
【0033】
以上、本実施例における管接続装置1にあっては、筒状体17は、穿孔機16と環状溝15aとの間に介設される際に止水パッキン23を接続部15の内方に向けて押圧する環状の鍔部17aを備え、接続部15は、接続部15の外側端15cから内方に向けて、漸次縮径する傾斜をなす環状のテーパー面15gを備え、筒状体17は、鍔部17aによって押圧された止水パッキン23がテーパー面15gによって更に接続部15の管軸に向けて押圧されることで、接続部15と略同一の管軸上に配置されるので、穿孔機16と接続部15との間に筒状体17を介設させることで鍔部17aによって押圧された止水パッキン23が筒状体17を更に接続部15の管軸に向けて押圧することにより、筒状体が接続部と自動的に略同一管軸上に配置されるため、筒状体の先端周面を接続部の係合部15よりも開閉弁部14側に位置合わせの必要なく当接させて穿孔機16で分岐口1aを穿設する際の切り粉が環状溝15aへ進入することを阻止できるとともに、分岐口1aの穿設後、環状溝15aが切り粉の進入により不具合を生じることなく分岐管40に係合し、分岐管40を接続部15に水密性を維持した状態で接続できる。
【0034】
また、筒状体17は、接続部15のよりも開閉弁部14側に当接する先端周面に、密着部材26を備えているので、筒状体17を接続部15の開閉弁部14側に向けて押し込むだけで、先端周面に備えた密着部材26により環状溝15aよりも開閉弁部14側で密着し、切り粉の進入を簡単に防ぐことができる。
【0035】
また、接続部15の外側端15cに、穿孔機16の付属部品であるボーラーヘッド18が取り付けられ、ボーラーヘッド18に、接続部15の外部に連通可能な連通路18aが形成されているので、穿孔機16で分岐口1aを穿設する際に、ボーラーヘッド18に形成された連通路18aを開放することで、発生する切り粉を連通路18aを介して接続部15の外部に排出できる。
【実施例3】
【0040】
次に、実施例3に係る管接続装置につき、
図8を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0041】
図8に示すように、本実施例3における止水パッキン23’は、軟質ゴムで構成された軟質部23aと、軟質部23aを構成する軟質ゴムよりも硬質なゴムで構成された硬質部23bと、の一体構成と成っている。尚、止水パッキンを構成する軟質部及び硬質部は、各々別体として成型され互いに貼り合せたものであっても構わない。このうち軟質部23aは、筒状体17が接続部15に嵌設される際にテーパー面15gによって押圧され、実施例1に説明したように筒状体17が接続部15と略同一の管軸上に配置されるようになっている。
【0042】
一方硬質部23bは、筒状体17が接続部15に嵌設される際に凹部17f内に挿通配置されることによって、ほとんど弾性変形することなく鍔部17aの流体管1方向を向く力を軟質部23aに伝達するように成っている。このため、本実施例の管接続装置1は、筒状体17を環状溝15aと穿孔機16との間に介設するのに要する力を少ないロスによって筒状体17を接続部15と略同一の管軸上に配置するために使用することができる。
【0043】
以上、本実施例における管接続装置1にあっては、止水パッキン23’は、テーパー面15gによって接続部15の管軸方向に押圧される軟質部23aと、軟質部23aよりも硬質に構成されるとともに軟質部23a及び鍔部17aの間に設けられ、鍔部17aによって流体管1に向けて押圧される硬質部23bと、から構成されているので、筒状体17が穿孔機16と接続部15との間に介設される際に、接続部15と筒状体17との間で弾性変形する軟質部23aを硬質部23bによって接続部15の外側に膨出しないよう押さえ付けることができるので、より確実に接続部15と筒状体17との間を水密に止水することができるばかりか、硬質部23bが比較的弾性変形せずに形状維持したまま鍔部17aに押圧されるとともに、軟質部23aが接続部15と筒状体17との間で柔軟に弾性変形できるので、筒状体17が接続部15と略同一の管軸上に配置される精度を高めることができる。
【0044】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0045】
例えば、前記実施例1では、筒状体17は、本体筒の先端周面に弾性材から成る密着部材26を備えているが、例えば筒状体は、筒状体全体が弾性材若しくはプラスチック材等の樹脂材から成るものであってもよい。更に前記実施例の筒状体17は、鍔部17aに設けられたネジ28を螺挿することで、接続部15から取外されるように成っているが、例えば筒状体は、別段に設けた図示しない取外し手段等により取外されてもよいし、或いは前記実施例の筒状体は、止水パッキン23が接続部15の外側端15cに向けて拡開するテーパー面15gと接触しており比較的取り外し易いことから、取外し手段を用いずに使用者が手で取外しても構わない。
【0046】
また例えば、前記実施例1では、接続部15の外側端15cに取り付けられたボーラーヘッド18の連通路18aを開放することで、この連通路18aを介して切り粉を接続部15の外部に排出させながら分岐口1aを穿設しているが、例えば、切り粉を外部に排出するための連通路が筒状体に形成されていてもよいし、若しくは穿孔時に切り粉を一時集積するための集積箇所を別段に設けても構わない。