特許第6077156号(P6077156)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077156
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】水硬性組成物用分散剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/22 20060101AFI20170130BHJP
   C04B 24/02 20060101ALI20170130BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20170130BHJP
   C04B 24/32 20060101ALI20170130BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20170130BHJP
   B01F 17/12 20060101ALI20170130BHJP
   B01F 17/42 20060101ALI20170130BHJP
   B01F 17/52 20060101ALI20170130BHJP
   B01D 19/04 20060101ALI20170130BHJP
   C04B 103/40 20060101ALN20170130BHJP
【FI】
   C04B24/22 C
   C04B24/02
   C04B24/06 A
   C04B24/32 A
   C04B28/02
   B01F17/12
   B01F17/42
   B01F17/52
   B01D19/04 B
   C04B103:40
【請求項の数】17
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2016-54309(P2016-54309)
(22)【出願日】2016年3月17日
(65)【公開番号】特開2016-172687(P2016-172687A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2016年11月14日
(31)【優先権主張番号】特願2015-53367(P2015-53367)
(32)【優先日】2015年3月17日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】齊田 和哉
(72)【発明者】
【氏名】小柳 幸司
(72)【発明者】
【氏名】下田 政朗
(72)【発明者】
【氏名】田中 駿也
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−11255(JP,A)
【文献】 特開昭55−23047(JP,A)
【文献】 特開昭54−153829(JP,A)
【文献】 特開2006−169078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00−28/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物と、(B)下記一般式(B1)で表される化合物の1種以上とを含有する水硬性組成物用分散剤組成物であって、
(A)中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)の総量のモル比が、3%以上16%以下である、
水硬性組成物用分散剤組成物。
R−X−(AO)−Y (B1)
〔式中、
Rは、炭素数10以上22以下のアルキル基、炭素数10以上22以下のアルケニル基、炭素数13以上27以下のベンジルフェニル基、又は炭素数14以上30以下のスチレン化フェニル基、
Xは、O又はCOO、
AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基、
nは、AOの平均付加モル数であり、1以上200以下の数、
Yは、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
を表す。〕
【請求項2】
更に、(C)消泡剤を含有する、請求項1記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【請求項3】
(C)消泡剤が脂肪酸エステル系消泡剤である、請求項2記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【請求項4】
(A)が、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩である、請求項1〜3のいずれか1項記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【請求項5】
水硬性粉体と、水と、(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物と、(B)下記一般式(B1)で表される化合物の1種以上とを含有する水硬性組成物であって、
(A)中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)の総量のモル比が、3モル%以上16モル%以下である、
水硬性組成物。
R−X−(AO)−Y (B1)
〔式中、
Rは、炭素数10以上22以下のアルキル基、炭素数10以上22以下のアルケニル基、炭素数13以上27以下のベンジルフェニル基、又は炭素数14以上30以下のスチレン化フェニル基、
Xは、O又はCOO、
AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基、
nは、AOの平均付加モル数であり、1以上200以下の数、
Yは、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
を表す。〕
【請求項6】
更に、(C)消泡剤を含有する、請求項5記載の水硬性組成物。
【請求項7】
(C)消泡剤が脂肪酸エステル系消泡剤である、請求項6記載の水硬性組成物。
【請求項8】
(A)が、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩である、請求項5〜7のいずれか1項記載の水硬性組成物。
【請求項9】
水硬性粉体100質量部に対して、(A)を0.01質量部以上2質量部以下含有する、請求項5〜8のいずれか1項記載の水硬性組成物。
【請求項10】
水硬性粉体100質量部に対して、(B)を0.001質量部以上2.0質量部以下含有する、請求項5〜9のいずれか1項記載の水硬性組成物。
【請求項11】
(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物と、(B)下記一般式(B1)で表される化合物の1種以上とを含有する水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法であって、
(A)中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)の総量のモル比が、3%以上16%以下となるように、(A)と(B)とを混合する、
水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法。
R−X−(AO)−Y (B1)
〔式中、
Rは、炭素数10以上22以下のアルキル基、炭素数10以上22以下のアルケニル基、炭素数13以上27以下のベンジルフェニル基、又は炭素数14以上30以下のスチレン化フェニル基、
Xは、O又はCOO、
AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基、
nは、AOの平均付加モル数であり、1以上200以下の数、
Yは、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
を表す。〕
【請求項12】
水硬性粉体と、水と、(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物と、(B)下記一般式(B1)で表される化合物の1種以上とを混合する水硬性組成物の製造方法であって、
(B)を、(A)中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)の総量のモル比が、3%以上16%以下となるように混合する、
水硬性組成物の製造方法。
R−X−(AO)−Y (B1)
〔式中、
Rは、炭素数10以上22以下のアルキル基、炭素数10以上22以下のアルケニル基、炭素数13以上27以下のベンジルフェニル基、又は炭素数14以上30以下のスチレン化フェニル基、
Xは、O又はCOO、
AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基、
nは、AOの平均付加モル数であり、1以上200以下の数、
Yは、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
を表す。〕
【請求項13】
水硬性粉体と、水と、(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物とを混合して水硬性組成物を調製する際に、
(B)下記一般式(B1)で表される化合物の1種以上を、(A)中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)の総量のモル比が、3%以上16%以下となるように添加する、
(A)の水硬性粉体に対する分散性能の向上方法。
R−X−(AO)−Y (B1)
〔式中、
Rは、炭素数10以上22以下のアルキル基、炭素数10以上22以下のアルケニル基、炭素数13以上27以下のベンジルフェニル基、又は炭素数14以上30以下のスチレン化フェニル基、
Xは、O又はCOO、
AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基、
nは、AOの平均付加モル数であり、1以上200以下の数、
Yは、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
を表す。〕
【請求項14】
(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物と、(B)下記一般式(B1)で表される化合物の1種以上とを含有する無機粉体用分散剤組成物であって、
(A)中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)の総量のモル比が、3%以上16%以下である、
無機粉体用分散剤組成物。
R−X−(AO)−Y (B1)
〔式中、
Rは、炭素数10以上22以下のアルキル基、炭素数10以上22以下のアルケニル基、炭素数13以上27以下のベンジルフェニル基、又は炭素数14以上30以下のスチレン化フェニル基、
Xは、O又はCOO、
AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基、
nは、AOの平均付加モル数であり、1以上200以下の数、
Yは、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
を表す。〕
【請求項15】
更に、(C)消泡剤を含有する、請求項14記載の無機粉体用分散剤組成物。
【請求項16】
(C)消泡剤が脂肪酸エステル系消泡剤である、請求項15記載の無機粉体用分散剤組成物。
【請求項17】
(A)が、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩である、請求項14〜16のいずれか1項記載の無機粉体用分散剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用分散剤組成物、無機粉体用分散剤組成物、水硬性組成物、水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法、水硬性組成物の製造方法、及び分散性能の向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水硬性組成物用の分散剤は、セメント粒子を分散させることにより、所要のスランプを得るのに必要な単位水量を減少させ、水硬性組成物の作業性等を向上させるために用いる化学混和剤である。分散剤としては、従来、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のナフタレン系分散剤、カルボン酸を有する単量体とアルキレングリコール鎖を有する単量体との共重合体等のポリカルボン酸系分散剤、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミン系分散剤等が知られている。
【0003】
ナフタレン系分散剤は、ポリカルボン酸系分散剤やメラミン系分散剤と比較して、材料や温度の変化に対する流動性発現の効果の変動が少なく、また得られる水硬性組成物の粘性が比較的低く、水硬性組成物の製造に際して使い易いという特徴がある。
【0004】
特許文献1には、セメント分散剤と特定の非イオン界面活性剤とを所定の重量比で含有するコンクリート混和剤が記載されている。
特許文献2には、特定のポリアルキレンオキシド誘導体及び/又は特定の炭化水素誘導体を含有するセメント組成物のワーカビリティーを改良するためのワーカビリティー改良剤が記載されている。特許文献2には、前記ワーカビリティー改良剤と減水剤とを含有するセメント減水剤もまた記載されている。
特許文献3には、βナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物とオキシエチレン鎖を有するノニオン系界面活性剤を含む水硬性組成物と水からなるスラリーが記載されている。
特許文献4には、ナフタレンスルホン酸金属塩のホルマリン縮合物およびポリオキシエチレン系化合物からなるセメント添加剤が記載されている。
特許文献5には、アニオン系界面活性剤を加えたコンクリートによって所望のコンクリート製品を成形し、該成形品を常圧蒸気養生する、コンクリート製品の製造方法が記載されている。
【0005】
一方、界面活性剤をセメント混和剤として用いることも従来提案されている。特許文献6には、硫酸エステル型の陰イオン界面活性剤とポリオキシアルキレン系又は多価アルコール系の非イオン界面活性剤とを含有してなるセメント混和剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−281054号公報
【特許文献2】特開2003−165755号公報
【特許文献3】特開昭55−023047号公報
【特許文献4】特開昭60−011255号公報
【特許文献5】特開昭48−028525号公報
【特許文献6】特開昭50−150724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、流動性に優れた水硬性組成物が得られる水硬性組成物用分散剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物と、(B)下記一般式(B1)で表される化合物の1種以上とを含有する水硬性組成物用分散剤組成物であって、
(A)中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)の総量のモル比が、3%以上16%以下である、
水硬性組成物用分散剤組成物に関する。
R−X−(AO)−Y (B1)
〔式中、
Rは、炭素数10以上22以下のアルキル基、炭素数10以上22以下のアルケニル基、炭素数13以上27以下のベンジルフェニル基、又は炭素数14以上30以下のスチレン化フェニル基、
Xは、O又はCOO、
AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基、
nは、AOの平均付加モル数であり、1以上200以下の数、
Yは、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
を表す。〕
【0009】
また、本発明は、水硬性粉体と、水と、(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物と、(B)下記一般式(B1)で表される化合物の1種以上とを含有する水硬性組成物であって、
(A)中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)の総量のモル比が、3モ%以上16%以下である、
水硬性組成物に関する。
R−X−(AO)−Y (B1)
〔式中、
Rは、炭素数10以上22以下のアルキル基、炭素数10以上22以下のアルケニル基、炭素数13以上27以下のベンジルフェニル基、又は炭素数14以上30以下のスチレン化フェニル基、
Xは、O又はCOO、
AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基、
nは、AOの平均付加モル数であり、1以上200以下の数、
Yは、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
を表す。〕
【0010】
また、本発明は、(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物と、(B)下記一般式(B1)で表される化合物の1種以上とを含有する水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法であって、
(A)中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)の総量のモル比が、3%以上16%以下となるように、(A)と(B)とを混合する、
水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法に関する。
R−X−(AO)−Y (B1)
〔式中、
Rは、炭素数10以上22以下のアルキル基、炭素数10以上22以下のアルケニル基、炭素数13以上27以下のベンジルフェニル基、又は炭素数14以上30以下のスチレン化フェニル基、
Xは、O又はCOO、
AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基、
nは、AOの平均付加モル数であり、1以上200以下の数、
Yは、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
を表す。〕
【0011】
また、本発明は、水硬性粉体と、水と、(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物と、(B)下記一般式(B1)で表される化合物の1種以上とを混合する水硬性組成物の製造方法であって、
(B)を、(A)中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)の総量のモル比が、3%以上16%以下となるように混合する、
水硬性組成物の製造方法に関する。
R−X−(AO)−Y (B1)
〔式中、
Rは、炭素数10以上22以下のアルキル基、炭素数10以上22以下のアルケニル基、炭素数13以上27以下のベンジルフェニル基、又は炭素数14以上30以下のスチレン化フェニル基、
Xは、O又はCOO、
AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基、
nは、AOの平均付加モル数であり、1以上200以下の数、
Yは、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
を表す。〕
【0012】
また、本発明は、水硬性粉体と、水と、(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物とを混合して水硬性組成物を調製する際に、
(B)下記一般式(B1)で表される化合物の1種以上を、(A)中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)の総量のモル比が、3%以上16%以下となるように添加する、
(A)の水硬性粉体に対する分散性能の向上方法に関する。
R−X−(AO)−Y (B1)
〔式中、
Rは、炭素数10以上22以下のアルキル基、炭素数10以上22以下のアルケニル基、炭素数13以上27以下のベンジルフェニル基、又は炭素数14以上30以下のスチレン化フェニル基、
Xは、O又はCOO、
AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基、
nは、AOの平均付加モル数であり、1以上200以下の数、
Yは、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
を表す。〕
【0013】
また、本発明は、(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物と、(B)下記一般式(B1)で表される化合物の1種以上とを含有する無機粉体用分散剤組成物であって、
(A)中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)の総量のモル比が、3モ%以上16%以下である、
無機粉体用分散剤組成物に関する。
R−X−(AO)−Y (B1)
〔式中、
Rは、炭素数10以上22以下のアルキル基、炭素数10以上22以下のアルケニル基、炭素数13以上27以下のベンジルフェニル基、又は炭素数14以上30以下のスチレン化フェニル基、
Xは、O又はCOO、
AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基、
nは、AOの平均付加モル数であり、1以上200以下の数、
Yは、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
を表す。〕
【0014】
以下、(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物を(A)成分、(B)前記一般式(B1)で表される化合物を(B)成分として説明する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、流動性に優れた水硬性組成物が得られる水硬性組成物用分散剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔水硬性組成物用分散剤組成物〕
本発明の効果発現機構の詳細は不明であるが、以下のように推定される。
(A)成分に含まれるナフタレン環及び(B)成分に含まれるアルキル基若しくはアルケニル基、ベンジルフェニル基、又はスチレン化フェニル基は、疎水性が高い分子構造であると考えられる。そして、(A)成分に含まれるナフタレン環と、(B)成分に含まれるアルキル基若しくはアルケニル基、ベンジルフェニル基、又はスチレン化フェニル基が、疎水性相互作用によって会合することで、(A)成分と(B)成分は疑似的な会合体を形成すると考えられる。(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)成分の総量のモル比が、3%以上16%以下であることで、(A)成分のみでは得られなかった立体斥力及び(B)成分のみでは得られなかった水硬性粉体への吸着力がバランス良く発現するため、水硬性組成物の流動性を向上させるものと推察される。
【0017】
<(A)成分>
(A)成分は、ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物である。(A)成分は、例えば、セメントや石膏などの水硬性粉体を含有する水硬性組成物用の分散剤として用いることができる。
【0018】
(A)成分としては、好ましくはナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩が挙げられる。ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物又はその塩である。ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は、性能を損なわない限り、単量体として、例えばメチルナフタレン、エチルナフタレン、ブチルナフタレン、ヒドロキシナフタレン、ナフタレンカルボン酸、アントラセン、フェノール、クレゾール、クレオソート油、タール、メラミン、尿素、スルファニル酸及び/又はこれらの誘導体などのような、ナフタレンスルホン酸と共縮合可能な芳香族化合物と共縮合させても良い。
【0019】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、例えば、マイテイ150、デモール N、デモール RN、デモール MS、デモールSN−B、デモール SS−L(いずれも花王株式会社製)、セルフロー 120、ラベリン FD−40、ラベリン FM−45(いずれも第一工業株式会社製)などのような市販品を用いることができる。
【0020】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、水硬性組成物の流動性向上の観点から、重量平均分子量が、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下が、更に好ましくは80,000以下、より更に好ましくは50,000以下、より更に好ましくは30,000以下である。そして、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、水硬性組成物の流動性向上の観点から、重量平均分子量が、好ましくは1,000以上、より好ましくは3,000以上、更に好ましくは4,000以上、より更に好ましくは5,000以上である。ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は酸の状態あるいは中和物であってもよい。
【0021】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩の分子量は下記条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いて測定することができる。
[GPC条件]
カラム:G4000SWXL+G2000SWXL(東ソー株式会社)
溶離液:30mM CHCOONa/CHCN=6/4
流量:0.7ml/min
検出:UV280nm
サンプルサイズ:0.2mg/ml
標準物質:西尾工業(株)製 ポリスチレンスルホン酸ソーダ換算(単分散ポリスチレンスルホン酸ナトリウム:分子量、206、1,800、4,000、8,000、18,000、35,000、88,000、780,000)
検出器:東ソー株式会社 UV−8020
【0022】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩の製造方法は、例えば、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとを縮合反応により縮合物を得る方法が挙げられる。前記縮合物の中和を行ってもよい。また、中和で副生する水不溶解物を除去してもよい。具体的には、ナフタレンスルホン酸を得るために、ナフタレン1モルに対して、硫酸1.2〜1.4モルを用い、150〜165℃で2〜5時間反応させてスルホン化物を得る。次いで、該スルホン化物1モルに対して、ホルムアルデヒドとして0.95〜0.99モルとなるようにホルマリンを85〜95℃で、3〜6時間かけて滴下し、滴下後95〜105℃で縮合反応を行う。更に、得られる縮合物の水溶液は酸性度が高いので貯槽等の金属腐食を抑制する観点から、得られた縮合物に、水と中和剤を加え、80〜95℃で中和工程を行うことができる。中和剤は、ナフタレンスルホン酸と未反応硫酸に対してそれぞれ1.0〜1.1モル当量添加することが好ましい。また、中和により生じる水不溶解物を除去することができ、その方法として好ましくは濾過による分離が挙げられる。これらの工程によって、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物水溶性塩の水溶液が得られる。この水溶液は、そのまま(A)成分の水溶液として使用することができる。更に必要に応じて該水溶液を乾燥、粉末化して粉末状のナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩を得ることができ、これを粉末状の(A)成分として使用することができる。乾燥、粉末化は、噴霧乾燥、ドラム乾燥、凍結乾燥等により行うことができる。
【0023】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、(A)成分を、固形分中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは95質量%以下、より更に好ましくは80質量%以下含有する。
なお、水硬性組成物用分散剤組成物について、固形分とは、水以外の成分をいう。
【0024】
<(B)成分>
(B)成分は、前記一般式(B1)で表される化合物である。前記一般式(B1)で表される化合物は、1種以上の化合物が用いられる。
【0025】
Rは、所定の炭素数を有する、アルキル基、アルケニル基、ベンジルフェニル基、又はスチレン化フェニル基である。
【0026】
一般式(B1)中、Rの炭素数は、アルキル基又はアルケニル基について、それぞれ、10以上22以下であり、流動性向上の観点から、それぞれ、好ましくは10以上、より好ましくは12以上であり、そして、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である。
一般式(B1)中、Rの炭素数は、ベンジルフェニル基について、13以上27以下であり、流動性向上の観点から、好ましくは20以上である。
一般式(B1)中、Rの炭素数は、スチレン化フェニル基について、14以上30以下であり、流動性向上の観点から、好ましくは22以上である。
一般式(B1)中、Rの炭素数は、混合物の場合は、平均炭素数がこの範囲である。ベンジル基の平均付加数は一般的な分析装置を用いて導出することができる。例えば、加水分解後にガスクロマトグラフィーにて測定してもよいし、核磁気共鳴スペクトル分析から求めてもよい。
【0027】
Rのうち、アルキル又はアルケニル基は、流動性向上の観点から、好ましくは脂肪族アルキル基又は脂肪族アルケニル基、より好ましくは直鎖脂肪族アルキル基又は直鎖脂肪族アルケニル基、更に好ましくは直鎖第1級脂肪族アルキル基又は直鎖第1級脂肪族アルケニル基である。ここで、アルキル基やアルケニル基についての第1級とは、Rの炭素原子のうち、Xと結合する炭素原子が第1級炭素原子であることを意味する。
Rのうち、アルキル又はアルケニル基としては、具体的には、例えば、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、ベヘニル基、イソステアリル基、オレイル基が挙げられ、流動性向上の観点から、好ましくはラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、ベヘニル基、イソステアリル基、オレイル基、より好ましくは、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基である。
【0028】
また、一般式(B1)中のRとしては、ベンジルフェニル基、又はスチレン化フェニル基が用いられる。ベンジルフェニル基は、1つ以上のベンジル基で置換されたフェニル基である。スチレン化フェニル基は、1つ以上のスチレンが付加されたフェニル基である。スチレンはα位、β位のどちらがフェニル基に付加してもよい。
Rのベンジルフェニル基としては、具体的には、モノベンジルフェニル基、ジベンジルフェニル基、及びトリベンジルフェニル基から選ばれる基が挙げられる。Rのベンジルフェニル基は、好ましくはトリベンジルフェニル基である。
Rのスチレン化フェニル基としては、具体的には、モノスチレン化フェニル基、ジスチレン化フェニル基、及びトリスチレン化フェニル基から選ばれる基が挙げられる。Rのスチレン化フェニル基は、好ましくはジスチレン化フェニル基である。
【0029】
Rは、経済的な観点から、好ましくはアルキル基、スチレン化フェニル基である。
Rは、水への溶解し易さの観点から、好ましくはアルケニル基、ベンジルフェニル基、又はスチレン化フェニル基である。
Rは、低泡性の観点から、好ましくは、ベンジルフェニル基、又はスチレン化フェニル基である。
【0030】
一般式(B1)中、Xは、O又はCOOであり、好ましくはOである。
一般式(B1)中、AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基であり、好ましくは炭素数2又は3のアルキレンオキシ基である。AOが炭素数2のアルキレンオキシ基を含むことが好ましい。
一般式(B1)中、nは、AOの平均付加モル数であり、セメント分散性の観点から1以上200以下である。nは、流動性向上の観点から、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上、より更に好ましくは30以上、より更に好ましくは40以上、より更に好ましくは50以上であり、そして(A)成分との相互作用しやすさ及び経済的な観点から、好ましくは150以下、より好ましくは100以下の数である。
一般式(B1)中、Yは、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基であり、好ましくは水素原子である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基及びn−ブチル基が挙げられる。
【0031】
(B)成分において、一般式(B1)で表される化合物を2種以上含む場合、nは、それぞれの化合物について、当該化合物の(B)成分中のモル分率と当該化合物のAOの付加モル数との積を求め、全ての化合物の前記積の値を合計することにより求めることができる。
【0032】
(B)成分は、一般式(B1)中、Rの炭素数が18以上である化合物の割合が多いことが、流動性向上の観点から好ましい。
(B)成分において、一般式(B1)中、Rの炭素数が18以上である化合物の割合は、流動性向上の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
(B)成分において、一般式(B1)中、Rの炭素数が18以上である化合物の割合は、流動性向上の観点から、100質量%であってもよい。
【0033】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、(B)成分を、固形分中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは50質量%以下含有する。
【0034】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、流動性に優れた水硬性組成物が得られる観点で、(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)成分の総量のモル比が、3%以上16%以下である。同様の観点で、前記モル比は、好ましくは4%以上、より好ましくは5%以上、更に好ましくは6%以上、そして、好ましくは16%未満、より好ましくは15%以下、更に好ましくは14%以下、より更に好ましくは13%以下、更に好ましくは11%以下である。このモル比は、(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位の総量と(B)成分の総量に基づいて算出される。具体的には、以下の式により算出される。
モル比(%)=[〔(B)成分の総量(モル)〕/〔(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位の総量(モル)〕]×100
また、(A)成分及び(B)成分が2種以上の場合は、そのモルの合計値を用いて計算できる。
【0035】
(A)成分が、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩の場合、ナフタレン環を含むモノマー単位は、ナフタレンスルホン酸又はその塩とホルムアルデヒドとが脱水縮合反応して形成されたモノマー単位である。(A)成分がナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物のナトリウム塩の場合、当該化合物中のナフタレン環を含むモノマー単位の総量(モル)は、以下の式により算出される。式中、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物のナトリウム塩をNSFと表記する。
NSF中のナフタレン環を含むモノマー単位の総量(モル)=〔NSF中のナフタレン環を含むモノマー単位の質量の総量〕/〔NSF中のナフタレン環を含むモノマー単位の分子量〕
【0036】
(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位の質量の総量は、(A)成分がナフタレンスルホン酸又はその塩とホルムアルデヒドとの縮合物の場合、当該化合物の全質量である。
また、(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位の質量の総量は、(A)成分がナフタレンスルホン酸又はその塩と、ホルムアルデヒドと、ナフタレン環を含まない他のモノマーとの縮合物の場合、当該化合物の全質量から、前記ナフタレン環を含まない他のモノマー及びホルムアルデヒドに由来するモノマー単位の質量を除いた質量である。
前記ナフタレン環を含まない他のモノマーに由来するモノマー単位の質量は、合成時の仕込み量から算出しても良いし、核磁気共鳴スペクトル装置などの共重合質量比を求めることができる一般的な解析装置を用いて算出しても良い。
【0037】
また、(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位の分子量は、(A)成分がナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物のナトリウム塩の場合、ナフタレンスルホン酸ナトリウムの分子量(230.2)とホルムアルデヒド(30.0)の和から縮合反応の副生成物である水(18.0)を引いた数値、すなわち242.2のように決定できる。
また、(B)成分の分子量は、分子を構成する原子量の総和から求めてもよいし、例えばChemBioDraw(PerkinElmer社製)のようなソフトウェアを用いて算出してもよい。
【0038】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物では、例えば(A)成分がナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物のナトリウム塩、(B)成分がポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム塩の場合、(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)成分の総量のモル比は、再沈殿法や分液法などの一般的な方法で(A)成分と(B)成分を分離し、その質量比を測定して計算により求めることができる。
また、水硬性組成物用分散剤組成物中の(A)成分及び(B)成分の構造は、再沈殿法や分液法などの一般的な方法で(A)成分及び(B)成分を分離し、核磁気共鳴スペクトル測定装置や液体クロマトグラフィーなどの一般的な解析装置を用いて解析することができる。
【0039】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、本質的には、(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位と(B)成分のモル比によって組成物中での割合が決定されることが好ましいが、例えば、以下のような質量比を規定することもできる。
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、流動性向上の観点から、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)で、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは17以下、より好ましくは8.0以下、更に好ましくは6.0以下、より更に好ましくは4.0以下、より更に好ましくは2.0以下である。
【0040】
<その他の成分>
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、更に、(C)消泡剤〔以下、(C)成分という〕を含有することができる。
【0041】
(C)成分としては、シリコーン系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、エーテル系消泡剤、ポリアルキレンオキシド系消泡剤、アルキルリン酸エステル系消泡剤、及びアセチレングリコール系消泡剤から選ばれる1種以上の消泡剤が挙げられる。
(C)成分としては、シリコーン系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、及びエーテル系消泡剤から選ばれる1種以上の消泡剤が好ましい。
シリコーン系消泡剤は、ジメチルポリシロキサンが好ましい。
脂肪酸エステル系消泡剤は、非水溶性のポリアルキレングリコール脂肪酸エステルが好ましい。
エーテル系消泡剤は、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルが好ましい。
ポリアルキレンオキシド系消泡剤は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体が好ましい。
アルキルリン酸系消泡剤では、リン酸トリブチル、リン酸イソトリブチル、ナトリウムオクチルホスフェートが好ましい。
アセチレングリコール系消泡剤では2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール又はそのアルキレンオキシド付加物が好ましい。
【0042】
(C)成分としては、強度低下を抑制できる観点から、脂肪酸エステル系消泡剤が好ましい。
【0043】
シリコーン系消泡剤は、水と相溶性のある乳化タイプが好ましい。水と相溶性のある乳化タイプのシリコーン系消泡剤の市販品としては、KM−70、KM−73A〔いずれも信越シリコーン(株)〕、TSAシリーズ(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)、FSアンチフォームシリーズ〔東レ・ダウコーニング(株)〕、アンチフォームE−20〔花王(株)〕等が挙げられる。
【0044】
脂肪酸エステル系消泡剤であるポリアルキレングリコール脂肪酸エステルの市販品としては、レオドールTW−L120〔花王(株)〕、ニコフィックス、フォームレックス〔いずれも日華化学(株)〕等が挙げられる。
【0045】
エーテル系消泡剤であるポリアルキレングリコールアルキルエーテルの市販品としては、消泡剤No.1、消泡剤No.5、消泡剤No.8〔いずれも花王(株)〕や、SNデフォーマー15−P、フォーマスターPC〔いずれもサンノプコ(株)〕等が挙げられる。
【0046】
ポリアルキレンオキシド系消泡剤のうちポリエチレンオキシドポリプロピレンオキシドのブロック共重合体の市販品としては、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのブロックコポリマー、例えばPLURONIC(商標)製品〔BASF社〕等が挙げられる。
【0047】
アセチレングリコール系消泡剤の市販品としては、SURFYNOL(商標)400シリーズ〔エアープロダクツアンドケミカルズ社〕等が挙げられる。
【0048】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、(C)成分を、固形分中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下含有する。
【0049】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、起泡抑制及び破泡の観点から、(B)成分と(C)成分の質量比が、(C)/(B)で、好ましくは0.00001以上、より好ましくは0.00005以上、更に好ましくは0.0001以上、そして、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.1以下、更に好ましくは0.05以下である。
【0050】
一般に、起泡性の高い化合物は、コンクリートなどの水硬性組成物に添加することで、系内に泡が連行されて、JIS A−6204に記載のAE減水剤のように流動性が向上することがある。一方で、一般に、消泡剤は、コンクリートなどの水硬性組成物中に巻き込まれた泡を消すことができるため、水硬性組成物の硬化体の空隙が減少し、強度の低下を防ぐことができる。そのため、(B)成分のような起泡性の高い化合物と消泡剤を併用することは、強度低下を抑制する観点からは好ましいが、流動性を向上する観点からは好ましくないと考えられていた。しかし、本発明では、消泡剤を用いても、水硬性組成物の流動性を維持したまま、且つ硬化強度を向上させることができるため、泡による流動性の向上とは異なる効果が得られる。
【0051】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、従来のセメント分散剤、水溶性高分子化合物、空気連行剤、セメント湿潤剤、膨張材、防水剤、遅延剤、急結剤、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、硬化促進剤、防腐剤などの成分〔(A)〜(C)成分に該当するものを除く〕を含有することができる。
【0052】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、形態が、液体、固体のいずれでもよい。本発明の水硬性組成物用分散剤組成物が液体の場合は、水を含有することが好ましい。
【0053】
水硬性組成物用分散剤組成物が水を含有する液体である場合の水の含有量は、水硬性組成物を調製する際の作業性の観点から、該組成物中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、水硬性組成物の流動性を向上する観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
【0054】
水硬性組成物用分散剤組成物が水を含有する液体である場合の(A)成分の含有量は、水硬性組成物の流動性を向上する観点から、該組成物中、好ましくは13質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは17質量%であり、そして、好ましくは84質量%以下、より好ましくは79質量%以下、更に好ましくは74質量%以下である。
【0055】
水硬性組成物用分散剤組成物が水を含有する液体である場合の(B)成分の含有量は、水硬性組成物の流動性を向上する観点から、該組成物中、好ましくは6質量%以上、より好ましくは11質量%以上、更に好ましくは16質量%以上であり、そして、好ましくは77質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは73質量%以下である。
【0056】
水硬性組成物用分散剤組成物が水を含有する液体である場合の(A)成分と(B)成分の合計の含有量は、水硬性組成物の流動性を向上する観点から、該組成物中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
【0057】
〔無機粉体用分散剤組成物〕
本発明の無機粉体用分散剤組成物に用いられる(A)成分と(B)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。
また、本発明の無機粉体用分散剤組成物では、(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)成分の総量のモル比が、3%以上16%以下である。このモル比の好ましい範囲は、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物と同じである。
本発明の無機粉体用分散剤組成物は、前記(C)成分を含有することができる。(C)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。
【0058】
無機粉体としては、特に限定されないが、以下のものが挙げられる。無機粉体のうち、水硬性粉体に対して用いるものが、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物である。
(1)セメント、石膏などの水硬性粉体
(2)フライアッシュ、シリカフューム、火山灰、けい酸白土などのポソラン作用を持つ粉体
(3)石炭灰、高炉スラグ、けい藻土などの潜在水硬性粉体
(4)カオリン、ケイ酸アルミニウム、クレー、タルク、マイカ、ケイ酸カルシウム、セリサイト、ベントナイトなどのケイ酸塩
(5)炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸鉛などの炭酸塩
(6)硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩
(7)ストロンチウムクロメート、ピグメントイエローなどのクロム酸塩
(8)モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム亜鉛、モリブデン酸マグネシウムなどのモリブデン酸塩
(9)アルミナ、酸化アンチモン、酸化チタニウム、酸化コバルト、四酸化三鉄、三酸化ニ鉄、四酸化三鉛、一酸化鉛、酸化クロムグリーン、三酸化タングステン、酸化イットリウムなどの金属酸化物
(10)水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化鉄、メタチタン酸などの金属水酸化物
(11)炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化ホウ素、炭化チタンなどの金属炭化物
(12)窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、チタン酸バリウム、サチンホワイト、カーボンブラック、グラファイト、クロムイエロー、硫化水銀、ウルトラマリン、パリスブルー、チタニウムイエロー、クロムバーミリオン、リトポン、アセト亜ヒ酸銅、ニッケル、銀、パラジウム、チタン酸ジルコン酸鉛などの、上記に(1)〜(11)に分類されない他の無機粉体
【0059】
本発明の無機粉体用分散剤組成物は、無機粉体スラリーに用いることができる。無機粉体スラリーは、無機粉体と、水と、(A)成分と、(B)成分とを含有するスラリーであって、(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)成分の総量のモル比は、3%以上16%以下である。無機粉体が水硬性粉体である場合、スラリーは、本発明の水硬性組成物である。
本発明の無機粉体スラリーに用いられる(A)成分と(B)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。また、本発明の無機粉体スラリーでは、(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)成分の総量のモル比が、3%以上16%以下である。このモル比の好ましい範囲は、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物と同じである。
【0060】
無機粉体スラリーとしては、例えば無機粉体として高炉スラグを使用したスラリー(以下、高炉スラグスラリーという)が挙げられる。高炉スラグスラリーは、高炉スラグ100質量部に対して、本発明の無機粉体用分散剤組成物を、固形分で0.01質量部以上5.0質量部含有することが好ましい。高炉スラグスラリーは、高炉スラグ100質量部に対して、水を、好ましくは40質量部以上、より好ましくは45質量部以上、そして、好ましくは250質量部、より好ましく230質量部以下含有する。また、高炉スラグスラリーは、(C)成分を含有することが好ましい。高炉スラグスラリーは、(B)成分と(C)成分の質量比が、(C)/(B)で、好ましくは0.00001以上、より好ましくは0.00005以上、更に好ましくは0.0001以上、そして、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.1以下、更に好ましくは0.05以下である。
【0061】
〔水硬性組成物〕
本発明は、水硬性粉体と、水と、(A)成分と、(B)成分の1種以上とを含有する水硬性組成物であって、(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)成分の総量のモル比が、3%以上16%以下である、水硬性組成物を提供する。
【0062】
本発明の水硬性組成物に使用される水硬性粉体とは、水和反応により硬化する物性を有する粉体のことであり、セメント、石膏等が挙げられる。好ましくは普通ポルトランドセメント、ビーライトセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、耐硫酸塩セメント等のセメントであり、またこれらに高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフュームなどのポソラン作用及び/又は潜在水硬性を有する粉体や、石粉(炭酸カルシウム粉末)等が添加された高炉スラグセメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等でもよい。
【0063】
本発明の水硬性組成物は、水/水硬性粉体比〔スラリー中の水と水硬性粉体の質量百分率(質量%)、通常W/Pと略記されるが、粉体がセメントの場合、W/Cと略記される。〕が、水が少ない配合でも流動性を発現できる点から、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。
【0064】
本発明の水硬性組成物に用いられる(A)成分と(B)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。
また、本発明の水硬性組成物では、(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)成分の総量のモル比が、3%以上16%以下である。このモル比の好ましい範囲は、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物と同じである。
【0065】
本発明の水硬性組成物は、水硬性粉体100質量部に対して、(A)成分を、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、より更に好ましくは0.15質量部以上、より更に好ましくは0.22質量部以上、そして、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下、更に好ましくは1.0質量部以下、より更に好ましくは0.50質量部以下、より更に好ましくは0.40質量部以下、より更に好ましくは0.30質量部以下含有する。
【0066】
本発明の水硬性組成物は、水硬性粉体100質量部に対して、(B)成分を、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上、より更に好ましくは0.04質量部以上、より更に好ましくは0.10質量部以上、より更に好ましくは0.20質量部以上、そして、好ましくは2.0質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下、更に好ましくは1.0質量部以下、より更に好ましくは0.40質量部以下、より更に好ましくは0.35質量部以下、より更に好ましくは0.28質量部以下含有する。
【0067】
本発明の水硬性組成物は、水硬性粉体100質量部に対して、(A)成分と(B)成分とを合計で、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、より更に好ましくは0.2質量部以上、そして、好ましくは4質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下、更に好ましくは2.0質量部以下、より更に好ましくは0.9質量部以下含有する。
【0068】
本発明の水硬性組成物は、更に、(C)成分として、消泡剤を含有することができる。消泡剤の具体例及び好ましい態様は、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。(C)成分を用いる場合、本発明の水硬性組成物は、水硬性粉体100質量部に対して、(C)成分を、好ましくは0.00005質量部以上、より好ましくは0.00025質量部以上、更に好ましくは0.0005質量部以上であり、そして、好ましくは0.1質量部以下、より好ましくは0.075質量部以下、更に好ましくは0.05質量部以下含有する。
【0069】
本発明の水硬性組成物は、起泡抑制及び破泡の観点から、(B)成分と(C)成分の質量比が、(C)/(B)で、好ましくは0.00001以上、より好ましくは0.00005以上、更に好ましくは0.0001以上、そして、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.1以下、更に好ましくは0.05以下である。
【0070】
本発明の水硬性組成物は、骨材を含有することが好ましい。骨材としては、細骨材及び粗骨材から選ばれる骨材が挙げられる。細骨材として、JIS A0203−2014中の番号2311で規定されるものが挙げられる。細骨材としては、川砂、陸砂、山砂、海砂、石灰砂、珪砂及びこれらの砕砂、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、軽量細骨材(人工及び天然)及び再生細骨材等が挙げられる。また、粗骨材として、JIS A0203−2014中の番号2312で規定されるものが挙げられる。例えば粗骨材としては、川砂利、陸砂利、山砂利、海砂利、石灰砂利、これらの砕石、高炉スラグ粗骨材、フェロニッケルスラグ粗骨材、軽量粗骨材(人工及び天然)及び再生粗骨材等が挙げられる。細骨材、粗骨材は種類の違うものを混合して使用しても良く、単一の種類のものを使用しても良い。
【0071】
水硬性組成物がコンクリートの場合、粗骨材の使用量は、水硬性組成物の強度の発現とセメント等の水硬性粉体の使用量を低減し、型枠等への充填性を向上する観点から、嵩容積は好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上であり、そして、好ましくは100%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは80%以下である。嵩容積は、コンクリート1m中の粗骨材の容積(空隙を含む)の割合である。
また、水硬性組成物がコンクリートの場合、細骨材の使用量は、型枠等への充填性を向上する観点から、好ましくは500kg/m以上、より好ましくは600kg/m以上、更に好ましくは700kg/m以上であり、そして、好ましくは1000kg/m以下、より好ましくは900kg/m以下である。
水硬性組成物がモルタルの場合、細骨材の使用量は、好ましくは800kg/m以上、より好ましくは900kg/m以上、更に好ましくは1000kg/m以上であり、そして、好ましくは2000kg/m以下、より好ましくは1800kg/m以下、更に好ましくは1700kg/m以下である。
【0072】
水硬性組成物としては、コンクリート等が挙げられる。なかでもセメントを用いたコンクリートが好ましい。本発明の水硬性組成物は、セルフレベリング用、耐火物用、プラスター用、軽量又は重量コンクリート用、AE用、補修用、プレパックド用、トレーミー用、地盤改良用、グラウト用、寒中用等のいずれの分野においても有用である。
【0073】
本発明の水硬性組成物は、更にその他の成分を含有することもできる。例えば、AE剤、遅延剤、起泡剤、増粘剤、発泡剤、防水剤、流動化剤、等が挙げられる。
【0074】
〔水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法〕
本発明は、(A)成分と、(B)成分の1種以上とを含有する水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法であって、(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)成分の総量のモル比が、3%以上16%以下となるように、(A)成分と(B)と成分を混合する、水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法を提供する。
【0075】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法に用いられる(A)成分と(B)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。更に、(A)成分と(B)成分の1種以上と(C)成分とを混合して、(A)成分と(B)成分と(C)成分とを含有する水硬性組成物用分散剤組成物を製造することもできる。(C)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。
また、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物で述べた事項は、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法に適宜適用することができる。
また、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法では、(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)成分の総量のモル比が、3%以上16%以下となるように、(A)成分と(B)成分とを混合する。このモル比の好ましい範囲は、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物と同じである。
【0076】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法は、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物を製造する方法として好適である。
【0077】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法としては、(A)成分と(B)成分の1種以上と水とを含有する水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法が挙げられる。この場合、(A)成分と(B)成分と水との混合は、性能を低下させない範囲で任意の方法で行うことができる。例えば、(B)成分の凝固点以上に加熱した(A)成分の水溶液及び(B)成分を攪拌機で混合する方法や、(A)成分及び(B)成分をそれぞれ水に溶解させ、(A)成分の水溶液と(B)成分の水溶液とを混合する方法を用いることができる。
【0078】
〔水硬性組成物の製造方法〕
本発明は、水硬性粉体と、水と、(A)成分と、(B)成分の1種以上とを混合する水硬性組成物の製造方法であって、(B)成分を、(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)成分の総量のモル比が、3%以上16%以下となるように混合する、水硬性組成物の製造方法を提供する。
【0079】
本発明の水硬性組成物の製造方法に用いられる(A)成分と(B)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。
また、本発明の水硬性組成物の製造方法に用いられる水硬性粉体の具体例及び好ましい態様は、本発明の水硬性組成物で述べたものと同じである。
更に、水硬性粉体と、水と、(A)成分と、(B)成分の1種以上と、(C)成分とを混合して、水硬性粉体と、水と、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分とを含有する水硬性組成物を製造することもできる。(C)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。
また、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物、及び水硬性組成物で述べた事項は、本発明の水硬性組成物の製造方法に適宜適用することができる。
また、本発明の水硬性組成物の製造方法では、(B)成分を、(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)成分の総量のモル比が、3%以上16%以下となるように混合する。このモル比の好ましい範囲は、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物と同じである。
【0080】
本発明の水硬性組成物の製造方法では、水硬性粉体100質量部に対して、(A)成分を、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、より更に好ましくは0.15質量部以上、より更に好ましくは0.22質量部以上、そして、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、より更に好ましくは0.50質量部以下、より更に好ましくは0.40質量部以下、より更に好ましくは0.30質量部以下混合する。
【0081】
本発明の水硬性組成物の製造方法では、水硬性粉体100質量部に対して、(B)成分を、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上、より更に好ましくは0.04質量部以上、より更に好ましくは0.10質量部以上、より更に好ましくは0.20質量部以上、そして、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、より更に好ましくは0.40質量部以下、より更に好ましくは0.35質量部以下、より更に好ましくは0.28質量部以下混合する。
【0082】
本発明の水硬性組成物の製造方法では、水硬性粉体100質量部に対して、(A)成分と(B)成分とを合計で、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、より更に好ましくは0.2質量部以上、そして、好ましくは4質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下、より更に好ましくは0.9質量部以下混合する。
【0083】
本発明の水硬性組成物の製造方法では、更に、(C)成分として、消泡剤を混合しても良い。消泡剤の具体例及び好ましい態様は、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。(C)成分を用いる場合、本発明の水硬性組成物の製造方法では、水硬性粉体100質量部に対して、(C)成分を、好ましくは0.00005質量部以上、より好ましくは0.00025質量部以上、更に好ましくは0.0005質量部以上、そして、好ましくは0.1質量部以下、より好ましくは0.075質量部以下、更に好ましくは0.05質量部以下混合する。
【0084】
本発明の水硬性組成物の製造方法では、(A)成分及び(B)成分とセメント等の水硬性粉体とを円滑に混合する観点から、(A)成分、(B)成分と水とを予め混合し、水硬性粉体と混合することが好ましい。水を含有する本発明の水硬性組成物用分散剤組成物を用いることができる。
【0085】
また、本発明の水硬性組成物の製造方法では、セメント等の水硬性粉体と、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物とを混合する方法が好ましい。本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、粉末であっても液体であってもよい。本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、水硬性粉体に対して、(A)成分、(B)成分、更には(C)成分が、前述の添加量となるように添加されることが好ましい。具体的には、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物を固形分の質量部として、水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上、より更に好ましくは0.05質量部以上、そして、好ましくは4質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下、より更に好ましくは0.9質量部以下混合する。
【0086】
水硬性粉体と、水と、(A)成分と、(B)成分との混合は、モルタルミキサー、強制二軸ミキサー等のミキサーを用いて行うことができる。また、好ましくは1分間以上、より好ましくは2分間以上、そして、好ましくは5分間以下、より好ましくは3分間以下混合する。水硬性組成物の調製にあたっては、水硬性組成物で説明した材料や薬剤及びそれらの量を用いることができる。
【0087】
得られた水硬性組成物は、更に、水硬性組成物を型枠に充填し養生し硬化させる。型枠として、建築物の型枠、コンクリート製品用の型枠等が挙げられる。型枠への充填方法として、ミキサーから直接投入する方法、水硬性組成物をポンプで圧送して型枠に導入する方法等が挙げられる。
【0088】
水硬性組成物の養生の際、硬化を促進するために加熱養生し、硬化を促進させても良い。ここで、加熱養生は、40℃以上、80℃以下の温度で水硬性組成物を保持して硬化を促進することができる。
【0089】
本発明により、
水硬性粉体と、水と、(A)成分と、(B)成分の1種以上とを混合して水硬性組成物を調製する工程であって、(B)成分を、(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)成分の総量のモル比が、3%以上16%以下となるように混合する工程、
調製された前記水硬性組成物を型枠に充填し、養生し、硬化させる工程、及び、
硬化した前記水硬性組成物を脱型する工程、
を有する硬化体の製造方法が提供される。本発明の水硬性組成物用分散剤組成物、水硬性組成物、水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法、及び水硬性組成物の製造方法で述べた事項は、この硬化体の製造方法にも適用することができる。
【0090】
コンクリート製品である型枠を用いる水硬性組成物の硬化体としては、土木用製品では、護岸用の各種ブロック製品、ボックスカルバート製品、トンネル工事等に使用されるセグメント製品、橋脚の桁製品等が挙げられ、建築用製品では、カーテンウォール製品、柱、梁、床板に使用される建築部材製品等が挙げられる。
【0091】
〔分散性能の向上方法〕
本発明は、水硬性粉体と、水と、(A)成分とを混合して水硬性組成物を調製する際に、(B)成分の1種以上を、(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)成分の総量のモル比が、3%以上16%以下となるように添加する、(A)成分の水硬性粉体に対する分散性能の向上方法を提供する。(A)成分は水硬性粉体用の分散剤として知られ、その分散性能によって水硬性組成物の流動性が向上する。そして、(B)成分を前記モル比で併用することにより、(A)成分を単独で用いた場合よりも、水硬性組成物の流動性が向上する。すなわち、(B)成分を前記モル比で添加することで、(A)成分の水硬性粉体に対する分散性能を向上させるといえる。
【0092】
本発明の分散性能の向上方法に用いられる(A)成分と(B)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。
また、本発明の分散性能の向上方法に用いられる水硬性粉体の具体例及び好ましい態様は、本発明の水硬性組成物で述べたものと同じである。
また、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物、水硬性組成物、水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法、及び水硬性組成物の製造方法で述べた事項は、本発明の分散性能の向上方法に適宜適用することができる。
また、本発明の分散性能の向上方法では、(B)成分を、(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)成分の総量のモル比が、3%以上16%以下となるように添加する。このモル比の好ましい範囲は、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物と同じである。
【0093】
<本発明の態様>
以下に、本発明の態様を例示する。これらの態様には、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物、水硬性組成物、水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法、水硬性組成物の製造方法、及び分散性能の向上方法で述べた事項を適宜適用することができる。以下の態様においても、(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物が(A)成分、(B)一般式(B1)で表される化合物が(B)成分、(C)消泡剤が(C)成分である。
【0094】
<1>(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物と、(B)下記一般式(B1)で表される化合物の1種以上とを含有する水硬性組成物用分散剤組成物であって、(A)中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)の総量のモル比が、3%以上16%以下である、水硬性組成物用分散剤組成物。
R−X−(AO)−Y (B1)
〔式中、
Rは、炭素数10以上22以下のアルキル基、炭素数10以上22以下のアルケニル基、炭素数13以上27以下のベンジルフェニル基、又は炭素数14以上30以下のスチレン化フェニル基、
Xは、O又はCOO、
AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基、
nは、AOの平均付加モル数であり、1以上200以下の数、
Yは、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
を表す。〕
【0095】
<2>(A)成分が、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩である、前記<1>記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【0096】
<3>(A)成分の重量平均分子量が、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下が、更に好ましくは80,000以下、より更に好ましくは50,000以下、より更に好ましくは30,000以下である、前記<2>に記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【0097】
<4>(A)成分の重量平均分子量が、好ましくは1,000以上、より好ましくは3,000以上、更に好ましくは4,000以上、より更に好ましくは5,000以上である、前記<2>又は<3>に記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【0098】
<5>(A)成分を、固形分中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは95質量%以下含有する、前記<1>〜<4>のいずれかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【0099】
<6>(B)成分の一般式(B1)中のRが、炭素数10以上、好ましくは12以上、そして、22以下、好ましくは20以下、より好ましくは18以下のアルキル基、炭素数10以上、好ましくは12以上、そして、22以下、好ましくは20以下、より好ましくは18以下のアルケニル基、炭素数13以上、好ましくは20以上そして、27以下のベンジルフェニル基、又は炭素数14以上、好ましくは22以上そして、30以下のスチレン化フェニル基である、前記<1>〜<5>のいずれかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【0100】
<7>(B)成分の一般式(B1)中のRが、アルキル基又はアルケニル基、好ましくは脂肪族アルキル基又は脂肪族アルケニル基、より好ましくは直鎖脂肪族アルキル基又は直鎖脂肪族アルケニル基、更に好ましくは直鎖第1級脂肪族アルキル基又は直鎖第1級脂肪族アルケニル基である、前記<1>〜<6>のいずれかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【0101】
<8>(B)成分の一般式(B1)中のRが、ベンジルフェニル基又はスチレン化フェニル基、好ましくはモノスチレン化フェニル基、ジスチレン化フェニル基、トリスチレン化フェニル基、モノベンジルフェニル基、ジベンジルフェニル基、及びトリベンジルフェニル基から選ばれる基、より好ましくはジスチレン化フェニル基、及びトリベンジルフェニル基から選ばれる基、更に好ましくはジスチレン化フェニル基、及びトリベンジルフェニル基から選ばれる基である、前記<1>〜<6>のいずれかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【0102】
<9>(B)成分の一般式(B1)中のRが、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、ベヘニル基、イソステアリル基、オレイル基、モノスチレン化フェニル基、ジスチレン化フェニル基、トリスチレン化フェニル基、モノベンジルフェニル基、ジベンジルフェニル基、及びトリベンジルフェニル基から選ばれる基である、好ましくはラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、ベヘニル基、イソステアリル基、オレイル基、ジスチレン化フェニル基、及びトリベンジルフェニル基から選ばれる基である、より好ましくは、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基、ジスチレン化フェニル基及びトリベンジルフェニル基から選ばれる基である、前記<1>〜<6>のいずれかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【0103】
<10>(B)成分が、一般式(B1)中のXがOの化合物である、前記<1>〜<9>のいずれかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【0104】
<11>(B)成分が、一般式(B1)中のAOが炭素数2又は3のアルキレンオキシ基の化合物又は一般式(B1)中のAOが炭素数2のアルキレンオキシ基を含む化合物である、前記<1>〜<10>のいずれかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【0105】
<12>(B)成分が、一般式(B1)中のnが1以上、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上、より更に好ましくは30以上、より更に好ましくは40以上、より更に好ましくは50以上、そして200以下、好ましくは150以下、より好ましくは100以下の数の化合物である、前記<1>〜<11>のいずれかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【0106】
<13>(B)成分が、一般式(B1)中のYが水素原子の化合物である、前記<1>〜<12>のいずれかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【0107】
<14>(B)成分を、固形分中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下含有する、前記<1>〜<13>のいずれかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【0108】
<15>(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)で、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上、更に好ましくは1.0以上、そして、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは10以下である、前記<1>〜<14>のいずれかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【0109】
<16>(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)で、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.9以上、そして、好ましくは15以下、より好ましくは8.0以下、更に好ましくは6.0以下、より更に好ましくは4.0以下、より更に好ましくは2.0以下である、前記<1>〜<14>のいずれかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【0110】
<17>(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)成分の総量のモル比が、3%以上、好ましくは4%以上、より好ましくは5%以上、更に好ましくは6%以上、そして、16%以下、好ましくは16%未満、より好ましくは15%以下、更に好ましくは14%以下、より更に好ましくは13%以下、より更に好ましくは11%以下である、前記<1>〜<16>のいずれかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【0111】
<18>更に、(C)消泡剤、好ましくは脂肪酸エステル系消泡剤を含有する、前記<1>〜<17>のいずれかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【0112】
<19>(C)成分を、固形分中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下含有する、前記<18>に記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【0113】
<20>(B)成分と(C)成分の質量比が、(C)/(B)で、好ましくは0.000001以上、より好ましくは0.00005以上、更に好ましくは0.0001以上、そして、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.1以下、更に好ましくは0.05以下である、前記<18>又は<19>に記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【0114】
<21>水硬性組成物用分散剤組成物が水を含有し、水の含有量が、該組成物中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下である、前記<1>〜<20>のいずれかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【0115】
<22>水硬性組成物用分散剤組成物が水を含有し、(A)成分の含有量が、該組成物中、好ましくは13質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは17質量%であり、そして、好ましくは84質量%以下、より好ましくは79質量%以下、更に好ましくは74質量%以下である、前記<1>〜<21>のいずれかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【0116】
<23>水硬性組成物用分散剤組成物が水を含有し、(B)成分の含有量が、該組成物中、好ましくは6質量%以上、より好ましくは11質量%以上、更に好ましくは16質量%以上であり、そして、好ましくは77質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは73質量%以下である、前記<1>〜<22>のいずれかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【0117】
<24>水硬性組成物用分散剤組成物が水を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の含有量が、該組成物中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である、前記<1>〜<23>のいずれかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【0118】
<25>遠心成型用水硬性組成物用及び蒸気養生用水硬性組成物用を除く、前記<1>〜<24>のいずれかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
【0119】
<26>
水硬性粉体と、水と、(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物と、(B)下記一般式(B1)で表される化合物の1種以上とを含有する水硬性組成物であって、
(A)中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)の総量のモル比が、3%以上16%以下である、水硬性組成物。
R−X−(AO)−Y (B1)
〔式中、
Rは、炭素数10以上22以下のアルキル基、炭素数10以上22以下のアルケニル基、炭素数13以上27以下のベンジルフェニル基、又は炭素数14以上30以下のスチレン化フェニル基、
Xは、O又はCOO、
AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基、
nは、AOの平均付加モル数であり、1以上200以下の数、
Yは、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
を表す。〕
【0120】
<27>(A)成分が、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩である、前記<26>に記載の水硬性組成物。
【0121】
<28>(A)成分の重量平均分子量が、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下が、更に好ましくは80,000以下、より更に好ましくは50,000以下、より更に好ましくは20,000以下である、前記<27>に記載の水硬性組成物。
【0122】
<29>(A)成分の重量平均分子量が、好ましくは1,000以上、より好ましくは3,000以上、更に好ましくは4,000以上、より更に好ましくは5,000以上である、前記<27>又は<28>に記載の水硬性組成物。
【0123】
<30>(B)成分の一般式(B1)中のRが、炭素数10以上、好ましくは12以上、そして、22以下、好ましくは20以下、より好ましくは18以下のアルキル基、炭素数10以上、好ましくは12以上、そして、22以下、好ましくは20以下、より好ましくは18以下のアルケニル基、炭素数13以上、好ましくは15以上、より好ましくは19以上、そして、27以下のベンジルフェニル基、又は炭素数14以上、好ましくは16以上、より好ましくは20以上、そして、30以下、好ましくは28以下、より好ましくは26以下のスチレン化フェニル基である、前記<26>〜<29>のいずれかに記載の水硬性組成物。
【0124】
<31>(B)成分の一般式(B1)中のRが、アルキル基又はアルケニル基、好ましくは脂肪族アルキル基又は脂肪族アルケニル基、より好ましくは直鎖脂肪族アルキル基又は直鎖脂肪族アルケニル基、更に好ましくは直鎖第1級脂肪族アルキル基又は直鎖第1級脂肪族アルケニル基である、前記<26>〜<30>のいずれかに記載の水硬性組成物。
【0125】
<32>(B)成分の一般式(B1)中のRが、ベンジルフェニル基又はスチレン化フェニル基、好ましくはモノスチレン化フェニル基、ジスチレン化フェニル基、トリスチレン化フェニル基、モノベンジルフェニル基、ジベンジルフェニル基、及びトリベンジルフェニル基から選ばれる基、より好ましくはジスチレン化フェニル基、及びトリベンジルフェニル基から選ばれる基、更に好ましくはジスチレン化フェニル基、及びトリベンジルフェニル基から選ばれる基である、前記<26>〜<30>のいずれかに記載の水硬性組成物。
【0126】
<33>(B)成分の一般式(B1)中のRが、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、ベヘニル基、イソステアリル基、オレイル基、モノスチレン化フェニル基、ジスチレン化フェニル基、トリスチレン化フェニル基、モノベンジルフェニル基、ジベンジルフェニル基、及びトリベンジルフェニル基から選ばれる基である、好ましくはラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、ベヘニル基、イソステアリル基、オレイル基、ジスチレン化フェニル基、及びトリベンジルフェニル基から選ばれる基である、より好ましくは、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基、ジスチレン化フェニル基及びトリベンジルフェニル基から選ばれる基である、前記<26>〜<30>のいずれかに記載の水硬性組成物。
【0127】
<34>(B)成分が、一般式(B1)中のXがOの化合物である、前記<26>〜<33>のいずれかに記載の水硬性組成物。
【0128】
<35>(B)成分が、一般式(B1)中のAOが炭素数2又は3のアルキレンオキシ基の化合物又は一般式(B1)中のAOが炭素数2のアルキレンオキシ基を含む化合物である、前記<26>〜<34>のいずれかに記載の水硬性組成物。
【0129】
<36>(B)成分が、一般式(B1)中のnが1以上、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上、より更に好ましくは30以上、より更に好ましくは40以上、より更に好ましくは50以上、そして200以下、好ましくは150以下、より好ましくは100以下の数の化合物である、前記<26>〜<35>のいずれかに記載の水硬性組成物。
【0130】
<37>(B)成分が、一般式(B1)中のYが水素原子の化合物である、前記<26>〜<36>のいずれかに記載の水硬性組成物。
【0131】
<38>(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)で、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上、更に好ましくは1.0以上、そして、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは10以下である、前記<26>〜<37>のいずれかに記載の水硬性組成物。
【0132】
<39>(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)で、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは9.0以上、そして、好ましくは15以下、より好ましくは8.0以下、更に好ましくは6.0以下、より更に好ましくは4.0以下、より更に好ましくは2.0以下である、前記<26>〜<38>のいずれかに記載の水硬性組成物。
【0133】
<40>(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)成分の総量のモル比が、3%以上、好ましくは4%以上、より好ましくは5%以上、更に好ましくは6%以上、そして、16%以下、好ましくは16%未満、より好ましくは15%以下、更に好ましくは14%以下、より更に好ましくは13%以下、より更に好ましくは11%以下である、前記<26>〜<39>のいずれかに記載の水硬性組成物。
【0134】
<41>水硬性粉体が、セメント又は石膏である、前記<26>〜<40>のいずれかに記載の水硬性組成物。
【0135】
<42>水/水硬性粉体比が、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である、前記<26>〜<41>のいずれかに記載の水硬性組成物。
【0136】
<43>水硬性粉体100質量部に対して、(A)成分を、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、より更に好ましくは0.15質量部以上、より更に好ましくは0.22質量部以上、そして、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下、更に好ましくは1.0質量部以下、より更に好ましくは0.50質量部以下、より更に好ましくは0.40質量部以下、より更に好ましくは0.30質量部以下含有する、前記<26>〜<42>のいずれかに記載の水硬性組成物。
【0137】
<44>水硬性粉体100質量部に対して、(B)成分を、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上、より更に好ましくは0.04質量部以上、より更に好ましくは0.10質量部以上、より更に好ましくは0.20質量部以上、そして、好ましくは2.0質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下、更に好ましくは1.0質量部以下、より更に好ましくは0.40質量部以下、より更に好ましくは0.35質量部以下、より更に好ましくは0.28質量部以下含有する、前記<26>〜<43>のいずれかに記載の水硬性組成物。
【0138】
<45>水硬性粉体100質量部に対して、(A)成分と(B)成分とを合計で、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、より更に好ましくは0.2質量部以上、そして、好ましくは4質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下、更に好ましくは2.0質量部以下、より更に好ましくは0.9質量部以下含有する、前記<26>〜<44>のいずれかに記載の水硬性組成物。
【0139】
<46>更に、(C)消泡剤、好ましくは脂肪酸エステル系消泡剤を含有する、前記<26>〜<45>のいずれかに記載の水硬性組成物。
【0140】
<47>水硬性粉体100質量部に対して、(C)成分を、好ましくは0.00005質量部以上、より好ましくは0.00025質量部以上、更に好ましくは0.0005質量部以上であり、そして、好ましくは0.1質量部以下、より好ましくは0.075質量部以下、更に好ましくは0.05質量部以下含有する、前記<46>に記載の水硬性組成物。
【0141】
<48>(B)成分と(C)成分の質量比が、(C)/(B)で、好ましくは0.000001以上、より好ましくは0.00005以上、更に好ましくは0.0001以上、そして、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.1以下、更に好ましくは0.05以下である、前記<46>又は<47>に記載の水硬性組成物。
【0142】
<49>遠心成型用及び蒸気養生用を除く、前記<26>〜<48>のいずれかに記載の水硬性組成物。
【0143】
<50>
(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物と、(B)下記一般式(B1)で表される化合物の1種以上とを含有する水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法であって、
(A)中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)の総量のモル比が、3%以上16%以下となるように、(A)と(B)とを混合する、
水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法。
R−X−(AO)−Y (B1)
〔式中、
Rは、炭素数10以上22以下のアルキル基、炭素数10以上22以下のアルケニル基、炭素数13以上27以下のベンジルフェニル基、又は炭素数14以上30以下のスチレン化フェニル基、
Xは、O又はCOO、
AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基、
nは、AOの平均付加モル数であり、1以上200以下の数、
Yは、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
を表す。〕
【0144】
<51>遠心成型用水硬性組成物用分散剤組成物及び蒸気養生用水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法を除く、前記<50>に記載の水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法。
【0145】
<52>
水硬性粉体と、水と、(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物と、(B)下記一般式(B1)で表される化合物の1種以上とを混合する水硬性組成物の製造方法であって、
(B)を、(A)中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)の総量のモル比が、3%以上16%以下となるように混合する、
水硬性組成物の製造方法。
R−X−(AO)−Y (B1)
〔式中、
Rは、炭素数10以上22以下のアルキル基、炭素数10以上22以下のアルケニル基、炭素数13以上27以下のベンジルフェニル基、又は炭素数14以上30以下のスチレン化フェニル基、
Xは、O又はCOO、
AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基、
nは、AOの平均付加モル数であり、1以上200以下の数、
Yは、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
を表す。〕
【0146】
<53>遠心成型用水硬性組成物及び蒸気養生用水硬性組成物の製造方法を除く、前記<52>に記載の水硬性組成物の製造方法。
【0147】
<54>
水硬性粉体と、水と、(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物とを混合して水硬性組成物を調製する際に、
(B)下記一般式(B1)で表される化合物の1種以上を、(A)中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)の1種以上総量のモル比が、3%以上16%以下となるように添加する、
(A)の水硬性粉体に対する分散性能の向上方法。
R−X−(AO)−Y (B1)
〔式中、
Rは、炭素数10以上22以下のアルキル基、炭素数10以上22以下のアルケニル基、炭素数13以上27以下のベンジルフェニル基、又は炭素数14以上30以下のスチレン化フェニル基、
Xは、O又はCOO、
AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基、
nは、AOの平均付加モル数であり、1以上200以下の数、
Yは、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
を表す。〕
【0148】
<55>水硬性組成物から遠心成型用水硬性組成物及び蒸気養生用水硬性組成物が除かれる、前記<54>に記載の分散性能の向上方法。
【0149】
<56>前記<1>〜<25>のいずれかに記載の水硬性組成物用分散剤組成物の、水硬性粉体と水とを含む水硬性組成物の分散剤としての使用。
【0150】
<57>遠心成型用水硬性組成物分散剤及び蒸気養生用水硬性組成物分散剤としての使用を除く、前記<56>に記載の使用。
【0151】
<58>
(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物と、(B)下記一般式(B1)で表される化合物の1種以上とを含有する無機粉体用分散剤組成物であって、
(A)中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)の総量のモル比が、3%以上16%以下である、
無機粉体用分散剤組成物。
R−X−(AO)−Y (B1)
〔式中、
Rは、炭素数10以上22以下のアルキル基、炭素数10以上22以下のアルケニル基、炭素数13以上27以下のベンジルフェニル基、又は炭素数14以上30以下のスチレン化フェニル基、
Xは、O又はCOO、
AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基、
nは、AOの平均付加モル数であり、1以上200以下の数、
Yは、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
を表す。〕
【0152】
<59>更に、(C)消泡剤を含有する、前記<58>に記載の無機粉体用分散剤組成物。
【0153】
<60>(C)消泡剤が脂肪酸エステル系消泡剤である、前記<59>に記載の無機粉体用分散剤組成物。
【0154】
<61>(A)が、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩である、前記<58>〜<60>のいずれかに記載の無機粉体用分散剤組成物。
【実施例】
【0155】
<実施例1及び比較例1>
(1)モルタルの調製
モルタルミキサー(株式会社ダルトン製 万能混合撹拌機 型式:5DM−03−γ)を用いて、セメント(C)、細骨材(S)を投入し空練りをモルタルミキサーの低速回転(63rpm)にて10秒行い、(A)成分、(B)成分、及び消泡剤を含む練り水(W)を加えた。そして、モルタルミキサーの低速回転(63rpm)にて120秒間本混練りしてモルタルを調製した。
モルタルの配合条件は、セメント400g、細骨材700g、水/セメント比(W/C)は45質量%とした。
【0156】
用いた成分は以下のものである。
・水(W):上水道水(水温22℃)
・セメント(C):普通ポルトランドセメント(二種混合:太平洋セメント/住友大阪セメント=1/1、質量比) 密度3.16g/cm
・細骨材(S):城陽産山砂 密度2.55g/cm
・(A)成分:ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物のナトリウム塩、重量平均分子量15,000(表1では分散剤Aと記載した。)
・(B)成分:表1の通り、表1のかっこ内の数字は、エチレンオキサイド平均付加モル数であり、一般式(B1)中のnを示す。なお、表1では、(B)成分に該当しない化合物も便宜的に(B)成分の欄に示した。
(B)成分の分子量は、化合物の分子式からChemBioDraw(PerkinElmer社製)ソフトウェアから算出した(以下の実施例、比較例でも同様)。
・消泡剤:フォームレックス797(脂肪酸エステル系)、日華化学株式会社製、上記モルタル配合に0.05g添加した。
【0157】
(2)流動性の評価
JIS R 5201の試験方法に従って、調製したモルタルのフローを測定した。ただし、落下運動を与える操作は行っていない。結果を表1に示した。
【0158】
【表1】
【0159】
*1 添加量:セメント100質量部に対する(A)成分又は(B)成分の添加量(質量部)
*2 Rの炭素数:一般式(B1)中のRに相当する基の炭素数
*3 合計添加量:セメント100質量部に対する(A)成分と(B)成分の合計の添加量(質量部)
*4 モル比:(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)成分の比(%)
【0160】
(A)成分と(B)成分を用いる実施例には、(A)成分のみを用いる比較例1−1及び(B)成分のみを用いる比較例1−2よりも、同じ添加量でモルタルフローが大きいものがあることがわかる。また、(B)成分のRに対応する基の炭素数が8である化合物を用いた比較例1−3及び1−4は、nの値が近い実施例1−1、1−2や、nの値が同じ実施例1−6よりも、モルタルフローが劣ることがわかる。
【0161】
<実施例2及び比較例2>
実施例1と同様にモルタルを調製し、流動性を評価した。ただし、モルタルの配合条件の水/セメント比(W/C)は水の量を変更して35質量%とし、セメント100質量部に対する(A)成分と(B)成分の合計の添加量は0.500質量部とした。結果を表2に示す。
【0162】
【表2】
【0163】
*1 添加量:セメント100質量部に対する(A)成分又は(B)成分の添加量(質量部)
*2 Rの炭素数:一般式(B1)中のRに相当する基の炭素数
*3 合計添加量:セメント100質量部に対する(A)成分と(B)成分の合計の添加量(質量部)
*4 モル比:(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)成分の比(%)
【0164】
(A)成分及び(B)成分が同じ化合物で、合計添加量を一定にした場合の実施例2−1〜2−3、比較例2−2及び2−3を比較すると、(A)成分と(B)成分のモル比が3%〜16%の範囲でモルタルフローが大きいことがわかる。同様に、実施例2−4〜2−5、比較例2−4及び2−5の比較でも(A)成分と(B)成分のモル比が3%〜16%の範囲でモルタルフローが大きいことがわかる。
【0165】
<実施例3及び比較例3>
表3に示す水硬性組成物用分散剤組成物を調製した。水硬性組成物用分散剤組成物をモルタル調製用の水に予め混合したものを練り水(W)として用い、実施例1と同様にモルタルを調製し、流動性を評価した。セメント100質量部に対する(A)成分の添加量と(B)の添加量は表3に示す通りであった。結果を表3に示す。
【0166】
【表3】
【0167】
*1 含有量:水硬性組成物用分散剤組成物中の含有量(質量%)
*2 添加量:セメント100質量部に対する水硬性組成物用分散剤組成物、(A)成分又は(B)成分の添加量(質量部)
*3 Rの炭素数:一般式(B1)中のRに相当する基の炭素数
*4 合計添加量:セメント100質量部に対する(A)成分と(B)成分の合計の添加量(質量部)
*5 モル比:(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)成分の比(%)
【0168】
(A)成分、(B)成分及び水を混合し、水硬性組成物用分散剤組成物を調製して、同じ量を水硬性組成物に添加した際に、(A)成分と(B)成分を用いる実施例3−1〜3−10は、(A)成分のみを用いる比較例3−1及び(B)成分のみを用いる比較例3−2よりも、同じ添加量でモルタルフローが大きいことがわかる。また、(B)成分のRに対応する基の炭素数が8である化合物を用いた比較例3−3及び3−4は、モルタルフローが実施例3−1〜3−10よりも劣ることがわかる。
【0169】
<実施例4及び比較例4>
実施例2と同様にモルタルを調製し、流動性を評価した。ただし、セメント100質量部に対する(A)成分と(B)成分の添加量は表4の通りとした。結果を表4に示す。
【0170】
【表4】
【0171】
*1 添加量:セメント100質量部に対する(A)成分又は(B)成分の添加量(質量部)
*2 Rの炭素数:一般式(B1)中のRに相当する基の炭素数
*3 合計添加量:セメント100質量部に対する(A)成分と(B)成分の合計の添加量(質量部)
*4 モル比:(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)成分の比(%)
【0172】
(A)成分及び(B)成分が同じ化合物で、(A)成分の添加量を一定にした場合の実施例4−1〜4−3、比較例4−2及び4−3を比較すると、(A)成分と(B)成分のモル比が3〜16の範囲でモルタルフローが大きいことがわかる。同様に、実施例4−4〜4−6、比較例4−4及び4−5でも(A)成分と(B)成分のモル比が3%〜16%の範囲でモルタルフローが大きいことがわかる。
【0173】
<実施例5及び比較例5>
実施例1と同様にモルタルを調製し、複数の(B)成分を配合した場合の流動性を評価した。ただし、モルタルの配合条件の水/セメント比(W/C)は水の量を変更して37.5質量%とし、セメント100質量部に対する(A)成分と(B)成分の合計の添加量は0.450質量部とした。結果を表5に示す。
【0174】
【表5】
【0175】
*1 添加量:セメント100質量部に対する(A)成分、(B−1)成分、又は(B2)成分の添加量(質量部)
*2 Rの炭素数:一般式(B1)中のRに相当する基の炭素数
*3 合計添加量:セメント100質量部に対する(A)成分と(B)成分の合計の添加量(質量部)
*4 モル比:(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B−1)成分又は(B−2)成分の比(%)
【0176】
(A)成分と2種の(B)成分を用い、2種の(B)成分のモル比を変え、合計添加量を合わせた実施例5−1〜5−5から、(B)成分中、(B)成分のRの炭素数が12である化合物よりも18である化合物の割合が多い方が、モルタルフローが大きいことがわかる。同様に、実施例5−6〜5−10から、(B)成分中、(B)成分のAOの平均付加モル数が13である化合物よりも47である化合物の割合が多い方が、モルタルフローが大きいことがわかる。
【0177】
<実施例6及び比較例6>
実施例1と同様にモルタルを調製し、流動性を評価した。ただし、モルタルの配合条件の水/セメント比(W/C)、セメント100質量部に対する(A)成分と(B)成分の添加量は、表6a、表6b、表6c又は表6dの通りとした。また、一部の例では、(C)成分としてフォームレックス797(日華化学株式会社製)を用いた。
また、モルタル硬化体の強度を、コンクリート全自動圧縮試験機「CONCRETO 2000」(株式会社島津製作所製)により測定した。
結果を表6a、表6b、表6c又は表6dに示す。
【0178】
【表6】
【0179】
*1 添加量:セメント100質量部に対する(A)成分、(B)成分又は(C)成分の添加量(質量部)
*2 Rの炭素数:一般式(B1)中のRに相当する基の炭素数
*3 合計添加量:セメント100質量部に対する(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計の添加量(質量部)
*4 モル比:(A)成分中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)成分の比(%)
*5 ポリオキシエチレン(13)ジスチレン化フェニルエーテル:一般式(B1)中のRが、モノスチレン化フェニル基、ジスチレン化フェニル基及びトリスチレン化フェニル基である化合物の混合物であり、該混合物におけるRの平均炭素数は22(ジスチレン化フェニル基に相当)である。
【0180】
表6aと表6bより(A)成分と(B)成分に加えて、(C)成分を用いることで硬化後のセメント強度が格段に上がることがわかる。この傾向は水/セメント比(W/C)を変えた場合にも確認できる。