特許第6077158号(P6077158)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6077158
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】把持装置
(51)【国際特許分類】
   F16G 11/04 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   F16G11/04 B
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-63630(P2016-63630)
(22)【出願日】2016年3月28日
【審査請求日】2016年11月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000192626
【氏名又は名称】神鋼鋼線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 実
(72)【発明者】
【氏名】堀井 智紀
【審査官】 岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2−273128(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/125220(WO,A1)
【文献】 特開平8−82347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状体を把持する把持装置であって、
第1レール部と、第1楔部と、前記第1レール部及び前記第1楔部を連結する第1連結部と、を有する第1部材と、
第2レール部と、第2楔部と、前記第2レール部及び前記第2楔部を連結する第2連結部と、を有し、前記第1部材とは別体に構成された第2部材と、を備え、
前記第1連結部は、前記第1楔部との間に前記線状体を挟んだ状態の前記第2楔部を前記第1レール部で案内できるように、前記第1楔部と前記第1レール部との間に間隙を形成しており、
前記第2連結部は、前記第2楔部との間に前記線状体を挟んだ状態の前記第1楔部を前記第2レール部で案内できるように、前記第2楔部と前記第2レール部との間に間隙を形成している、把持装置。
【請求項2】
前記第1レール部は、前記第2楔部を案内する案内面を有し、
前記第2レール部は、前記第1楔部を案内する案内面を有し、
前記第1楔部は、前記線状体から受ける反力によって前記第2レール部の前記案内面を押圧する押圧面を有し、
前記第2楔部は、前記線状体から受ける反力によって前記第1レール部の前記案内面を押圧する押圧面を有する、請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記第1レール部の前記案内面と前記第1楔部の前記押圧面とは、平行であり、
前記第2レール部の前記案内面と前記第2楔部の前記押圧面とは、平行である、請求項2に記載の把持装置。
【請求項4】
前記第1楔部は、前記線状体を把持するための把持面を有し、
前記第2楔部は、前記線状体を把持するための把持面を有し、
前記第1楔部の前記把持面は、前記第1レール部の前記案内面に対して傾斜した方向に延びており、
前記第2楔部の前記把持面は、前記第2レール部の前記案内面に対して傾斜した方向に延びている、請求項2又は3に記載の把持装置。
【請求項5】
スライド方向に延び、前記第1レール部及び前記第2楔部を互いに係合させる第1係合部と、
スライド方向に延び、前記第2レール部及び前記第1楔部を互いに係合させる第2係合部と、が設けられている、請求項1から4の何れか1項に記載の把持装置。
【請求項6】
線状体を把持する把持装置であって、
第1レール部と第1楔部とを有する第1部材と、
第2レール部と第2楔部とを有する第2部材と、を備え、
前記第1レール部は、前記第2楔部を案内可能に構成され、
前記第2レール部は、前記第1楔部を案内可能に構成され、
前記第1楔部が前記第2レール部に沿ってスライドするとともに前記第2楔部が前記第1レール部に沿ってスライドするように前記第1部材及び前記第2部材を互いに相対移動させることにより、前記第1楔部と前記第2楔部とが互いに近づいて前記線状体を把持するように構成されている把持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状体を把持するための把持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているように、線状体を把持するための把持装置が知られている。特許文献1に開示された把持装置は、図6に示すように、線状体Lを挿通させることができる貫通路81aが形成された筐体81と、貫通路81aに繋がる第1空間81bに配置された第1楔体82と、貫通路81aに繋がる第2空間81cに配置された第2楔体83と、第1楔体82を付勢するコイルばね84と、第2楔体83を移動させるためのボルト85と、を備えている。ボルト85を一方向に回転させることによって、第2楔体83を奥に向かってスライドさせることができる。これにより、第1楔体82と第2楔体83とによって線状体Lを挟持することができる。一方、ボルト85を逆方向に回転させることによって、第2楔体83を線状体Lから引き離すことができ、これにより、線状体Lの把持を解除することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3220162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された把持装置では、第1楔体82及び第2楔体83が筐体81に内蔵された構成となっているため、第2楔体83をスライドさせるためには、ボルト85を用いる必要がある。そして、第2楔体83をスライドさせるためには、ボルト85を回転させる作業が必要となる。特に、手元が見難い作業空間で線状体Lを把持するための作業を行う場合もあるため、特許文献1に開示された把持装置では、線状体Lを把持するための作業が煩雑であるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、線状体を把持するための作業を軽減できる把持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明は、線状体を把持する把持装置であって、第1レール部と、第1楔部と、前記第1レール部及び前記第1楔部を連結する第1連結部と、を有する第1部材と、第2レール部と、第2楔部と、前記第2レール部及び前記第2楔部を連結する第2連結部と、を有し、前記第1部材とは別体に構成された第2部材と、を備え、前記第1連結部は、前記第1楔部との間に前記線状体を挟んだ状態の前記第2楔部を前記第1レール部で案内できるように、前記第1楔部と前記第1レール部との間に間隙を形成しており、前記第2連結部は、前記第2楔部との間に前記線状体を挟んだ状態の前記第1楔部を前記第2レール部で案内できるように、前記第2楔部と前記第2レール部との間に間隙を形成している、把持装置である。
【0007】
本発明では、第1部材の第1レール部と第2部材の第2レール部との間の間隙に第1楔部及び第2楔部が挿入され得る。そして、第1楔部が第2レール部によって案内され、第2楔部が第1レール部によって案内される。これにより、第1楔部及び第2楔部によって線状体を挟むことにより把持することができる。すなわち、第1レール部及び第1楔部を有する第1部材と、第2レール部及び第2楔部を有する第2部材とが互いに別体に構成されているため、第1部材及び第2部材を相対的に移動させることができる。そして、第1部材においては、第1楔部と第1レール部との間に、第2楔部を案内できる間隙が形成され、また第2部材においては、第2楔部と第2レール部との間に、第1楔部を案内できる間隙が形成されており、これら第1楔部及び第2楔部間に線状体を挟み込むことができるようになっているため、第1部材及び第2部材を相対的に移動させることにより、第1楔部及び第2楔部を線状体に噛むように移動させることができる。これにより、第1楔部及び第2楔部の間に線状体を挟持することができる。したがって、従来のようにボルトを回転させる作業等、筐体に対して楔部を移動させるような作業は不要であり、第1部材及び第2部材を相対的に移動させるだけでよい。したがって、線状体を把持する作業の負担を軽減することができる。
【0008】
前記第1レール部は、前記第2楔部を案内する案内面を有し、前記第2レール部は、前記第1楔部を案内する案内面を有していてもよい。この場合において、前記第1楔部は、前記線状体から受ける反力によって前記第2レール部の前記案内面を押圧する押圧面を有してもよく、前記第2楔部は、前記線状体から受ける反力によって前記第1レール部の前記案内面を押圧する押圧面を有してもよい。
【0009】
この態様では、第1レール部の案内面は、線状体を把持するための力の反力を第2楔部の押圧面から受ける。また、第2レール部の案内面は、線状体を把持するための力の反力を第1楔部の押圧面から受ける。このとき、第1レール部と第1楔部とが第1連結部によって連結されていて、第1レール部と第1楔部との間に第2楔部が挿入されており、また第2レール部と第2楔部とが第2連結部によって連結されていて、第2レール部と第2楔部との間に第1楔部が挿入されているため、各案内面は、線状体を把持するときに楔部材から受ける力をしっかりと受け止めることができる。したがって、線状体をしっかりと把持することができる。
【0010】
前記第1レール部の前記案内面と前記第1楔部の前記押圧面とは、平行であってもよく、前記第2レール部の前記案内面と前記第2楔部の前記押圧面とは、平行であってもよい。
【0011】
この態様では、第1部材及び第2部材を互いに平行にスライドさせることができる。このため、楔部を打ち込むための第1部材及び第2部材の相対移動操作を楽に行うことができる。
【0012】
前記第1楔部は、前記線状体を把持するための把持面を有し、前記第2楔部は、前記線状体を把持するための把持面を有してもよい。この場合、前記第1楔部の前記把持面は、前記第1レール部の前記案内面に対して傾斜した方向に延びていてもよく、前記第2楔部の前記把持面は、前記第2レール部の前記案内面に対して傾斜した方向に延びていてもよい。
【0013】
この態様では、第1部材及び第2部材を互いに相対的にスライドさせるだけで第1楔部の把持面と第2楔部の把持面を互いに近づけることができる。
【0014】
前記把持装置には、スライド方向に延び、前記第1レール部及び前記第2楔部を互いに係合させる第1係合部と、スライド方向に延び、前記第2レール部及び前記第1楔部を互いに係合させる第2係合部と、が設けられていてもよい。
【0015】
この態様では、第1部材に対して第2部材が傾くことを防止することができるとともに、第2部材に対して第1部材が傾くことを防止することができる。このため、第1部材及び第2部材に線状体を挿通させる際に、両部材をしっかりと保持しなくても、両部材の姿勢を安定させることができる。したがって、第1部材及び第2部材に線状体を挿通させる作業を行い易くすることができる。また、第1レール部に対して第2楔部をスライド方向に楽に移動させることができ、また、第2レール部に対して第1楔部をスライド方向に楽に移動させることができる。すなわち、第2楔部が第1レール部から離れたり、第1楔部が第2レール部から離れることを防止できるため、第1部材及び第2部材を相対的な移動を安定して行うことができる。
【0016】
本発明は、線状体を把持する把持装置であって、第1レール部と第1楔部とを有する第1部材と、第2レール部と第2楔部とを有する第2部材と、を備え、前記第1レール部は、前記第2楔部を案内可能に構成され、前記第2レール部は、前記第1楔部を案内可能に構成され、前記第1楔部が前記第2レール部に沿ってスライドするとともに前記第2楔部が前記第1レール部に沿ってスライドするように前記第1部材及び前記第2部材を互いに相対移動させることにより、前記第1楔部と前記第2楔部とが互いに近づいて前記線状体を把持するように構成されている把持装置である。
【0017】
本発明では、第1部材及び第2部材を相対的に移動させると、第1楔部が第2レール部によって案内され、第2楔部が第1レール部によって案内される。これにより、第1楔部及び第2楔部によって線状体を挟むことにより把持することができる。そして、第1部材には第1楔部が設けられ、第2部材には第2楔部が設けられているため、第1部材及び第2部材を相対的に移動させることにより、第1楔部及び第2楔部を線状体に噛むように移動させることができる。これにより、第1楔部及び第2楔部の間に線状体を挟持することができる。したがって、従来のようにボルトを回転させる作業等、筐体に対して楔部を移動させるような作業は不要であり、第1部材及び第2部材を相対的に移動させるだけでよい。したがって、線状体を把持する作業の負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、線状体を把持するための作業を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る把持装置によって線状体を把持する様子を示す図である。
図2】前記把持装置の第1部材の斜視図である。
図3】(a)前記第1部材の正面図であり、(b)前記第1部材の上面図であり、(c)前記第1部材の左側面図であり、(d)前記第1部材の右側面図であり、(e)前記第1部材の底面図である。
図4】前記把持装置の第2部材の斜視図である。
図5】(a)〜(e)第1部材と第2部材によって線状体を把持する手順を説明するための図である。
図6】従来の把持装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る把持装置10は、2つの部材11,12を互いに係止させることによって線状体Lを把持するものである。線状体Lは、ワイヤーロープ、ケーブル等を例示することができる。図1は、ループを形成した状態に線状体Lを保持するために利用する把持装置10を示している。したがって、2本の線状体Lをまとめて把持するときの様子を示している。しかしながら、把持装置10の利用方法はこれに限られるものではない。例えば、把持装置10は、1本の線状体Lを把持するものであってもよい。この場合、図示省略した固定体の貫通孔に挿通された線状体Lが貫通孔から抜けないように、把持装置10が線状体Lを把持するものであってもよい。
【0022】
図1に示すように、把持装置10は、第1部材11と第2部材12とを備えている。第1部材11と第2部材12とは互いに別体として構成されたものである。本実施形態では、第1部材11と第2部材12は全く同じ形状を有しているが、第1部材11と第2部材12とが異なる形状を有していてもよい。
【0023】
第1部材11は、金属製又は樹脂製であり、第1レール部15と、第1楔部16と、第1連結部17とを一体的に有する。第1連結部17は、第1レール部15と第1楔部16との間に間隙を形成するように、第1レール部15と第1楔部16とを連結している。
【0024】
図2図3(a)〜(e)にも示すように、第1レール部15は、一方向に長い形状を有している。第1レール部15は、一方向に延びる底部15aと、底部15aの幅方向一端部(左端部)に繋がる左側部15bと、底部15aの幅方向他端部(右端部)に繋がる右側部15cと、を有する。底部15aの内側面は、第1楔部16に対向する案内面15dとして機能し、底部15aにおいて内側面(案内面15d)と反対側を向く外側面は、第1部材11の外面を構成している。左側部15b及び右側部15cは、底部15aに対して直交する方向に底部15aに接続されている。左側部15bの内面は、案内面15dの幅方向の一端部に繋がる左側面15eとして機能する。右側部15cの内面は、案内面15dの幅方向の他端部に繋がる右側面15fとして機能する。左側面15eと右側面15fとは互いに向かい合っている。案内面15d、左側面15e及び右側面15fによって区画される空間に、第2楔部26が挿入される。
【0025】
第1楔部16も一方向に長い形状を有している。第1楔部16は、第1レール部15の案内面15dに対向する把持面16aと、把持面16aと反対側を向いた押圧面16bと、把持面16aの幅方向一端部と押圧面16bの幅方向一端部とを接続する左被案内面16cと、把持面16aの幅方向他端部と押圧面16bの幅方向他端部とを接続する右被案内面16dと、を有している。
【0026】
押圧面16bは、第1レール部15の外側面と反対側を向いた第1部材11の外面を構成している。第1レール部15の案内面15dと第1楔部16の押圧面16bとは平行である。把持面16aは、線状体Lを挿入できるように断面凹状に形成されている。したがって、把持面16aは、第1楔部16の長手方向に延びる溝状に形成されている。なお、把持面16aは溝状に限られるものではなく、平坦であってもよい。
【0027】
第1連結部17は、左連結部17aと右連結部17bとを有している。左連結部17aは、第1レール部15において左側面15eを含む左側部15bと、第1楔部16において左被案内面16cを含む左側部とを連結する。右連結部17bは、第1レール部15において右側面15fを含む右側部15cと、第1楔部16において右被案内面16dを含む右側部とを連結する。左連結部17aの一端部は、第1レール部15の左側部15bにおける突出端面(底部との接続面とは反対側の面)に結合され、左連結部17aの他端部は、第1楔部16の左被案内面16cに結合されている。
【0028】
第1レール部15の案内面15dと、第1楔部16の把持面16aと間には、間隙19が形成されている。この間隙19は、第1レール部15の長手方向に沿って次第に狭くなっている。具体的には、第1レール部15の基端部15gから先端部15hに向かうに従って、把持面16aと案内面15dとの間の間隔が次第に広がるように、把持面16aは案内面15dに対して傾斜している。つまり、第1楔部16の把持面16aは、第1レール部15の案内面15dに対して傾斜した方向に延びている。そして、案内面15dと把持面16aとの間隔が最も狭くなっている第1レール部15の長手方向の一端部(基端部)15gに第1連結部17が配置されており、この一端部15gにおいては、案内面15d、左連結部17a、把持面16a及び右連結部17bによって開口20が区画されている。案内面15dと把持面16aとの間の間隔(間隙19の幅)は、第1連結部17が結合されている側の端部から離れるにしたがって、次第に広くなっている。このため、第1レール部15は、長手方向の他端部(先端部)15hにおいて、第1楔部16から最も遠く離れている。
【0029】
第1レール部15の外面における長手方向の一端部(基端部15g)には、補強部22が設けられている。補強部22が設けられることにより、長手方向の一端部における第1レール部15の肉厚を厚くすることができる。なお、補強部22は省略してもよい。
【0030】
第2部材12も第1部材11と同様に金属製又は樹脂製であり、第1部材11と同じ形状及び大きさに形成されている。図4に示すように、第2部材12は、第2レール部25と、第2楔部26と、第2連結部27とを一体的に有する。第2連結部27は、第2レール部25と第2楔部26との間に間隙を形成するように、第2レール部25と第2楔部26とを連結している。
【0031】
第2レール部25は、一方向に長い形状を有している。第2レール部25は、一方向に延びる底部25aと、底部25aの幅方向一端部(左端部)に繋がる左側部25bと、底部25aの幅方向他端部(右端部)に繋がる右側部25cと、を有する。底部25aの内側面は、第2楔部26に対向する案内面25dとして機能し、底部25aにおいて内側面と反対側を向く外側面は、第2部材12の外面を構成している。左側部25b及び右側部25cは、底部25aに対して直交する方向に底部25aに接続されている。左側部25bの内面は、案内面25dの幅方向の一端部に繋がる左側面25eとして機能する。右側部25cの内面は、案内面の幅方向の他端部に繋がる右側面25fとして機能する。左側面25eと右側面25fとは互いに向かい合っている。案内面25d、左側面25e及び右側面25fによって区画される空間に、第1楔部16が挿入される。
【0032】
第2楔部26も一方向に長い形状を有している。第2楔部26は、第2レール部25の案内面に対向する把持面26aと、把持面26aと反対側を向いた押圧面26bと、把持面26aの幅方向一端部と押圧面26bの幅方向一端部とを接続する左被案内面26cと、把持面26aの幅方向他端部と押圧面26bの幅方向他端部とを接続する右被案内面26dと、を有している。押圧面26bは、第2レール部25の外面と反対側を向いた第2部材12の外面を構成している。第2レール部25の案内面25dと第2楔部26の押圧面26bとは平行である。把持面26aは、線状体Lを挿入できるように断面凹状に形成されている。したがって、把持面26aは、第2楔部26の長手方向に延びる溝状に形成されている。なお、把持面26aは溝状に限られるものではなく、平坦であってもよい。
【0033】
第2連結部27は、左連結部27aと右連結部27bとを有している。左連結部27aは、第2レール部25において左側面25eを含む左側部25bと、第2楔部26において左被案内面26cを含む左側部とを連結する。右連結部27bは、第2レール部25において右側面25fを含む右側部25cと、第2楔部26において右被案内面26dを含む右側部とを連結する。左連結部27aの一端部は、第2レール部25の左側部における突出端面(底部との接続面とは反対側の面)に結合され、左連結部27aの他端部は、第2楔部26の左被案内面26cに結合されている。第2連結部27の左連結部27aと右連結部27bとの間隔は、第1連結部17における左連結部17aと右連結部17bとの間隔と同じ間隔に設定されている。
【0034】
第2レール部25の案内面25dと、第2楔部26の把持面26aと間には、間隙29が形成されている。この間隙29は、第2レール部25の長手方向に沿って次第に狭くなっている。具体的には、第2レール部25の基端部25gから先端部25hに向かうに従って、把持面26aと案内面25dとの間の間隔が次第に広がるように、把持面26aは案内面25dに対して傾斜している。つまり、第2楔部26の把持面26aは、第2レール部25の案内面25dに対して傾斜した方向に延びている。そして、案内面25dと把持面26aとの間隔が最も狭くなっている第2レール部25の長手方向の一端部(基端部)25gに第2連結部27が配置されており、この一端部25gにおいては、案内面25d、左連結部27a、把持面26a及び右連結部27bによって開口30が区画されている。案内面25dと把持面26aとの間の間隔は、第2連結部27が結合されている側の端部から離れるにしたがって、次第に広くなっている。このため、第2レール部25は、長手方向の他端部(先端部)25hにおいて、第2楔部26から最も遠く離れている。
【0035】
なお、第1連結部17及び第2連結部27は、第1部材11及び第2部材12が互いに近づく方向に移動させたときに、第1楔部16及び第2楔部26が線状体Lに噛み込むまで、互いに衝突しないような寸法に設定されている。
【0036】
第2レール部25の外面における長手方向の一端部(基端部25g)には、補強部32が設けられている。補強部32が設けられることにより、長手方向の一端部における第2レール部25の肉厚を厚くすることができる。なお、補強部32は省略してもよい。
【0037】
第2楔部26の幅(左被案内面26cと右被案内面26dとの間の幅)は、第1レール部15の左側面15e及び右側面15f間の間隔に応じた寸法に設定されている。また、第1楔部16の幅(左被案内面16cと右被案内面16dとの間の幅)は、第2レール部25の左側面25e及び右側面25f間の間隔に応じた寸法に設定されている。本実施形態では、第2楔部26の幅と第1楔部16の幅は同じ寸法に設定されている。
【0038】
把持装置10には、第1レール部15及び第2楔部26を互いに係合させる第1係合部35と、第2レール部25及び第1楔部16を互いに係合させる第2係合部36とが設けられている。第1係合部35は、第1レール部15に形成された係合突条35aと、第2楔部26に形成され且つ係合突条35aの断面形状に対応した断面形状の係合溝35bとによって構成されている。第2係合部36は、第2レール部25に形成された係合突条36aと、第1楔部16に形成され且つ係合突条36aの断面形状に対応した断面形状の係合溝36bとによって構成されている。なお、代替的に、第1係合部35の係合突条35aは、第2楔部26に形成され、係合溝35bは第1レール部15に形成されていてもよい。また、第2係合部36の係合突条36aは、第1楔部16に形成され、係合溝36bは第2レール部25に形成されていてもよい。
【0039】
第1部材11及び第2部材12には、それぞれ、抜け止めのためのピン(図示省略)を係合可能な抜け止め溝11a,12aが形成されている。抜け止め溝11a,12aにピンを係止させることにより、第1部材11及び第2部材12が互いに離れる方向に動くことを阻止することができる。なお、ピンの抜け止め溝は省略することが可能である。
【0040】
なお、第1部材11と第2部材12とをつなぐ接続部材(図示省略)が設けられていてもよい。接続部材は、例えば紐状の部材で構成することができる。こうすれば、作業中に第1部材11及び第2部材12の何れかを落としてしまうという心配がなくなる。
【0041】
ここで、本実施形態に係る把持装置10よって線状体Lを把持する方法について、図5(a)〜(e)を参照しつつ説明する。
【0042】
まず、図5(a)に示すように、第1部材11と第2部材12と対向させた状態で保持する。すなわち、第1レール部15の先端部15hと第2レール部25の先端部25hが互いに向かい合う姿勢で第1部材11と第2部材12とを保持する。そして、第1部材11の開口20に外側から線状体Lの先端L1を挿通し、この線状体Lの先端L1を第2部材12の開口30に内側から挿通させる。なお、第1部材11と第2部材12を現場で組み合わせるのに先立ち、線状体Lを第1部材11に挿通しておき、現場で第2部材12に挿通するようにしてもよい。そうすれば、現場での作業負担を軽減することができる。
【0043】
続いて、図5(b)に示すように、第2部材12を通過させた線状体Lの先端L1を折り返し、今度は第2部材12、第1部材11の順番に線状体Lの先端L1を通過させる。すなわち、折り返された線状体Lの先端L1を第2部材12の開口30に外側から挿通し、第2部材12を通過した線状体Lの先端L1を第1部材11の開口20に内側から挿通させる。
【0044】
次に、図5(c)に示すように、第1部材11と第2部材12を互いに近づける。そして、第1部材11の第1楔部16を、第2部材12の第2レール部25の案内面25d、左側面25e及び右側面25fによって区画される空間に挿入し、第2部材12の第2楔部26を、第1部材11の第1レール部15の案内面15d、左側面15e及び右側面15fによって区画される空間に挿入する。このとき、第1楔部16の係合溝36bに第2レール部25の係合突条36aを挿入するとともに、第2楔部26の係合溝35bに第1レール部15の係合突条35aを挿入する。これにより、第1部材11に対して第2部材12が傾くことを防止することができるとともに、第2部材12に対して第1部材11が傾くことを防止することができる。このため、第1部材11及び第2部材12の姿勢が安定する。このため、線状体Lの挿通作業を容易に行うことができる。また、第1部材11と第2部材12との相対移動をスムーズに行うことができる。この状態で、線状体Lによって形成するループを所定の大きさに設定する。
【0045】
次に、図5(d)に示すように、第1部材11と第2部材12をレール部15,25の長手方向に更に移動させる。これにより、第1楔部16の把持面16aと第2楔部26の把持面16aとが次第に近づき、第1楔部16の把持面16aと第2楔部26の把持面16aとの間に線状体Lが食い込むことによって、線状体Lが把持装置10によってしっかり把持されたところで、第1部材11及び第2部材12の相対移動を止める。これにより、線状体Lは、ループを形成した状態で固定される。第1楔部16及び第2楔部26によって線状体Lを把持するときには、第1レール部15の案内面15dは、線状体Lを把持するための力の反力を第2楔部26の押圧面26bから受ける。また、第2レール部25の案内面25dは、線状体Lを把持するための力の反力を第1楔部16の押圧面16bから受ける。第1レール部15と第1楔部16が第1連結部17によって連結されており、また第2レール部25と第2楔部26が第2連結部27によって連結されている。したがって、各案内面15d,25dは、線状体Lを把持するときに楔部26,16から受ける力をしっかりと受け止めることができる。またこのとき、線状体Lの先端L1が引っ張られる方向に線状体Lが固定されるため、把持装置10が弛むこともない。なお、このとき、第1連結部17と第2連結部27とが互いに離れているため、線状体Lを引っ張る力が作用した場合には、第1部材11の第1連結部17と第2部材12の第2連結部27とが互いに近づく方向に移動することが許容されている。
【0046】
そして、図5(d)の状態のときに、例えば、線状体Lの先端L1が引っ張られる方向に、線状体Lに力が作用したときには、力の程度にもよるが、図5(e)に示すように、第1部材11の第1連結部17と第2部材12の第2連結部27が互いに近づくように動くこともある。
【0047】
以上説明したように、本実施形態では、第1部材11の第1レール部15と、第2部材12の第2レール部25との間の間隙に第1楔部16及び第2楔部26が挿入され得る。そして、第1楔部16が第2レール部25によって案内され、第2楔部26が第1レール部15によって案内される。これにより、第1楔部16及び第2楔部26によって線状体Lを挟むことにより把持することができる。すなわち、第1レール部15及び第1楔部16を有する第1部材11と、第2レール部25及び第2楔部26を有する第2部材12とが互いに別体に構成されているため、第1部材11及び第2部材12を相対的に移動させることができる。そして、第1部材11においては、第1楔部16と第1レール部15との間に、第2楔部26を案内できる間隙19が形成され、また第2部材12においては、第2楔部26と第2レール部25との間に、第1楔部16を案内できる間隙29が形成されており、これら第1楔部16及び第2楔部26間に線状体Lを挟み込むことができるようになっている。このため、第1部材11及び第2部材12を相対的に移動させることにより、第1楔部16及び第2楔部26を線状体Lに噛むように移動させることができる。これにより、第1楔部16及び第2楔部26の間に線状体Lを挟持することができる。したがって、従来のようにボルトを回転させる作業等、筐体に対して楔部を移動させるような作業は不要であり、第1部材11及び第2部材12を相対的に移動させるだけでよい。したがって、線状体Lを把持する作業の負担を軽減することができる。
【0048】
また本実施形態では、第1レール部15の案内面15dは、線状体Lを把持するための力の反力を第2楔部26の押圧面26bから受ける。また、第2レール部25の案内面25dは、線状体Lを把持するための力の反力を第1楔部16の押圧面16bから受ける。このとき、第1レール部15と第1楔部16とが第1連結部17によって連結されていて、第1レール部15と第1楔部16との間に第2楔部26が挿入されており、また第2レール部25と第2楔部26とが第2連結部27によって連結されていて、第2レール部25と第2楔部26との間に第1楔部16が挿入されているため、各案内面15d,25dは、線状体Lを把持するときに楔部26,16から受ける力をしっかりと受け止めることができる。したがって、線状体Lをしっかりと把持することができる。
【0049】
また本実施形態では、第1レール部15の案内面15dと第1楔部16の押圧面16bとが平行であり、第2レール部25の案内面25dと第2楔部26の押圧面26bとが平行である。このため、第1部材11及び第2部材12を互いに平行にスライドさせることができる。したがって、楔部16,26を打ち込むための第1部材11及び第2部材12の相対移動操作を楽に行うことができる。
【0050】
また本実施形態では、第1楔部16の把持面16aが第1レール部15の案内面15dに対して傾斜した方向に延びており、第2楔部26の把持面26aが第2レール部25の案内面25dに対して傾斜した方向に延びている。このため、第1部材11及び第2部材12を互いに相対的にスライドさせるだけで第1楔部16の把持面16aと第2楔部26の把持面26aを互いに近づけることができる。
【0051】
また本実施形態では、第1係合部35及び第2係合部36が設けられているため、第1部材11に対して第2部材12が傾くことを防止することができるとともに、第2部材12に対して第1部材11が傾くことを防止することができる。このため、第1部材11及び第2部材12に線状体Lを挿通させる際に、両部材11,12をしっかりと保持しなくても、両部材11,12の姿勢を安定させることができる。したがって、第1部材11及び第2部材12に線状体Lを挿通させる作業を行い易くすることができる。また、第1レール部15に対して第2楔部26をスライド方向に楽に移動させることができ、また、第2レール部25に対して第1楔部16をスライド方向に楽に移動させることができる。すなわち、第2楔部26が第1レール部15から離れたり、第1楔部16が第2レール部25から離れることを防止できるため、第1部材11及び第2部材12を相対的な移動を安定して行うことができる。
【0052】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、第1レール部15の案内面15dと第1楔部16の押圧面16bとが平行であるが、これに限られない。例えば、第1レール部15の案内面15dと第1楔部16の押圧面16bとは、第1レール部15の基端部15gに近づくほど案内面15dと押圧面16bとの間隔が少し狭くなるように、傾斜していてもよい。この場合、第1楔部16が第2部材12の奥側に進入するのに伴って、線状体Lの把持力を上昇させることができる。
【0053】
また、前記実施形態では、第2レール部25の案内面25dと第2楔部26の押圧面26bとが平行であるが、これに限られない。例えば、第2レール部25の案内面25dと第2楔部26の押圧面26bとは、第2レール部25の基端部25gに近づくほど案内面25dと押圧面26bとの間隔が少し狭くなるように、傾斜していてもよい。この場合、第2楔部26が第1部材11の奥側に進入するのに伴って、線状体Lの把持力を上昇させることができる。
【0054】
前記実施形態では、第1係合部35及び第2係合部36が設けられているが、これに限られない。第1係合部35は省略されていてもよい。また、第2係合部36は省略されていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 把持装置
11 第1部材
12 第2部材
15 第1レール部
15d 案内面
15g 基端部
15h 先端部
16 第1楔部
16a 把持面
16b 押圧面
16c 左被案内面
16d 右被案内面
17 第1連結部
25 第2レール部
25d 案内面
25g 基端部
25h 先端部
26 第2楔部
26a 把持面
26b 押圧面
26c 左被案内面
26d 右被案内面
27 第2連結部
35 第1係合部
36 第2係合部
【要約】
【課題】線状体を把持するための作業を軽減できる把持装置を提供する。
【解決手段】把持装置10は、第1レール部15と、第1楔部16と、第1レール部15及び第1楔部16を連結する第1連結部17と、を有する第1部材11と、第2レール部25と、第2楔部26と、第2レール部25及び第2楔部26を連結する第2連結部27と、を有する第2部材12と、を備える。第1連結部17は、第1楔部16との間に線状体Lを挟んだ状態の第2楔部26を第1レール部15で案内できるように、第1楔部16と第1レール部15との間に間隙を形成している。第2連結部27は、第2楔部26との間に線状体Lを挟んだ状態の第1楔部16を第2レール部25で案内できるように、第2楔部26と第2レール部25との間に間隙を形成している、
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6