(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う福島第一原子力発電所の破損事故に起因する放射性物質の大気中への飛散及び広大な地域への拡散により、日本国内の広範な地域に於いて建築物や道路などの工作物、土壌、草木、森林並びに河川などで高い放射線量が検出されるに至っている。
現在、そのような高い放射線量が検出された地域では、そこに堆積している放射性物質を含む土壌などを取り除くいわゆる除染作業が実行されている。
当該除染作業によって大量に取り除かれる土壌を適切な地域に設けられた保管施設に適宜の素材からなるシートを被せたり、適宜の素材からなるコンテナバッグなどの所定の容器に収容された状態で、保管されているが、当該除去された土壌などから放射される放射線を遮蔽し作業者や近隣住民への放射線の影響を低減するための放射線遮蔽手段が十分講じることが前提となる。
【0003】
その為、現今においては、当該放射能汚染物質から発生する放射線を有効に遮蔽する為の遮弊手段の開発・検討が盛ん行われている。
一方、破損した原発から今でも大量に放射されている人体に有害な放射線を含めて、将来に亘り、放射線発生源から発生する各種の放射線を完全に遮弊する技術の開発が急務となっている。
【0004】
従来から知られている一般的な放射線遮蔽方法としては、鉛を使用する技術がしられており、例えば、鉛を含有する合成樹脂、ゴム製品或いはコンクリートなどを用いて当該放射線発生源を覆う方法が採用されてきている。
【0005】
しかし、鉛は、人体や環境に有害であり自然界に溶出しやすく、製造ならびに建設コストがかかる問題があり、且つ重量が重たく、使用に不便であり、適切な形状に加工する事も難しいことから、汎用性に乏しく、また劣化によって長期間、放射線発生源などを被覆・遮蔽することが困難であるという欠点もあり、例えば、病院のレントゲン室の遮蔽壁材として使用されている程度である事が現実であって、汎用性のある放射線遮蔽材としては適さないものであった。
【0006】
処で、通常の放射性物質からは、α線、β線、γ線、X線、及び中性子線等が放射される事が知られている。
そして、α線は、その透過能力が比較的に低く、紙等でその透過を遮蔽する事が可能であり、又、β線も透過能力が低く、アルミ二ウム等の薄い金属を使用する事で、その透過を遮蔽する事が可能である。
一方、γ線やX線は、その透過能力は高く、鉛等の重金属や、厚い鉄板或いは厚いコンクリートの遮蔽物質を用いることにより放射線を遮蔽する必要がある。
更に、中性子線という放射線は、かなり高い透過性を有しているので、上記した重金属や、コンクリートでは効果的にその透過を遮蔽する事が不可能であり、原子核に吸収・捕獲されやすいように中性子線の速度を十分に減速して低速度の中性子線にすることが必要で、その為に、水或いはパラフィンを使用することによって、当該中性子線の透過を遮蔽する事が可能である事が知られている。
【0007】
上記した様な、従来からの技術的背景を勘案して、鉛を使用しないか、或いは鉛の使用量を削減させるという前提で種々の放射線遮蔽材料を開発する検討が行われてきている。
例えば、特開2014−35225号公報(特許文献1)には、適宜の繊維性布帛の一表面に、硫酸バリウムを主体とする放射線遮蔽層を形成した放射線遮蔽シートに関して記載されており、又、特開2013−181793号公報(特許文献2)には、硫酸バリウムを適宜の熱可塑性合成樹脂内に分散させて構成された放射線遮蔽材からなる線状体で構成された織物が記載されている。
更に、特開2014−153068号公報(特許文献3)には、硫黄、高炉スラグ、焼却灰、タングステン及び硫酸バリウム等をコンクリート成分内に混在させた放射性廃棄物収納用容器に関して記載されている。
【0008】
然しながら、係る公知技術は、鉛を使用しない放射線遮蔽材としては、有効と言えるものではあるが、使用される物質が硫酸バリウムであるので、たかだか、γ線の透過を遮蔽出来るに留まるものに過ぎず、各種の放射線の遮蔽には不向きであると言う欠点がある。
一方、特開2014−130050号公報(特許文献4)には、黒鉛(カーボンナノホーン)を不織布に含浸させて得られた放射線遮蔽材が開示されているが、製造コストが高い事と、γ線とX線は遮蔽できるが、その他の放射線は遮蔽する事が出来ないと言う問題を含んでおり、又、特開2014−044197号公報(特許文献5)には、ホウ素(ホウ酸)を合成樹脂内に内蔵させた放射線遮蔽材が開示されているが、当該ホウ素(ホウ酸)は、中性子線の遮蔽に効果を有するものの、その他の放射線は遮蔽する事が出来ないと言う問題を含んでいる。
【0009】
その他では、特開2013−184853号公報(特許文献6)には、石膏成分内に鉛或いは硫酸バリウムを混在させた放射線遮蔽ボードが記載されており、又、特開2014−89127号公報(特許文献7)には、石膏成分にホウ素(ホウ酸)や鉛或いはタングステンなどを混在させて形成された放射線遮蔽用ブロック材に関して記載されているが、何れも、γ線とX線および中性子線は遮蔽できるが、その他の放射線は遮蔽する事が出来ないと言う問題を含んでおり、且つ製造コストが高く、ブロック状であるため、使用用途面での汎用性が乏しいと言う問題を内蔵している。
【0010】
又、特開2013−257164号公報(特許文献8)には、高吸水性繊維で構成された不織布からなる放射線遮蔽材が開示されており、係る放射線遮蔽材では、中性子線を遮蔽できるが、当該高吸水性繊維を製造する為のコストが高く、然も、耐候性及び耐久性に乏しく、従って、特定の分野でのみしか使用出来ないと言う問題点を含んでいる。
【0011】
一方、特開2014−145032号公報(特許文献9)には、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂にポリ硼酸塩を混在させて発泡処理した放射線遮蔽性発泡樹脂成型品が開示されており、鉛を使用せず、且つ鉛製品の様に、重量が大きい放射線遮蔽材ではなく、軽量で放射線遮蔽性を持った放射線遮蔽材ではあるものの、製造コストが高く、用途の汎用性に乏しいと言う欠点が見られる。
【0012】
つまり、上記した従来に於ける当該放射線遮蔽材料、或いはそれら用の素材は、何れも、製造コストを含めて高コスト体質を有し、鉛を使用しないものであっても、重量が大きく、フレキシブル性に乏しい事から、その用途に汎用性がなく、又、それぞれの当該放射線遮蔽体は、個々に特定の放射線のみしか遮蔽する事が不可能であるので、複数の放射線を完全に遮蔽する為には、個々の放射線を個別に遮蔽する事が可能な個別の放射能遮蔽体を個別の方法で格別に製造し、その複数の個別の放射能遮蔽体を組み合わせて使用すると言う方法しか存在しない為、完全な放射線遮蔽構造体を構成するには、かなりの時間とコストを掛ける必要があり、不便であった。
【0013】
処で、放射線の遮蔽は、現在に於いては、質量の大きい物資が遮蔽効果が有ると言うのが常識であるが、必ずしも質量と放射線の遮蔽は比例していない。
一方、放射線の中には色々な放射線があり、万能的な遮蔽材は存在していない。
放射線の種類によっては、アメリカのNASAでは、ポリエチレン樹脂で宇宙空間の放射線を遮蔽する研究が進んでいる。また、放射線の中性子においては、水の遮蔽効果が大きいことも分かっている。
又、一方では、病院のX線の遮蔽に使われている遮蔽材は鉛と石膏ボードで構成されている。これは、鉛は質量があり、放射線の遮蔽に有効であるが、石膏ボードは遮蔽に有効な質量は、鉛ほどは無いが、石膏ボードに使用されている石膏ボードは21%の結晶水を保有しており、この水分が放射線の遮蔽に大きく影響していると考えられている。
【0014】
石膏ボードに使用されている石膏は二水石膏で、結晶水として石膏内に介在する水分は、常温では飛散品状態であり、安定的に水分を保っている。遮蔽効果を上げる為に、水を含水させた場合、一時的な遮蔽効果は上がっても水分が蒸発すれば、遮蔽効果は水分と共に減少する。
それでは、結晶水の様に蒸発しない状態で、当該水を石膏内に閉じ込めれば良いとなるが、実際には困難な状況にある。
【0015】
そこで、水分を保水する物質等と石膏を混合すれば、水分量は向上して水分が最も得意とする放射線の中性子の遮蔽に効果が出るとの予測はある。
又、原発事故で、懸念される放射線は、立ち入りが制限されている個所以外では、病院のX線のようなレベルの放射線では、短時間で被曝の影響が出るものではない。
然し、長時間の被曝に関しては、健康被害が懸念される。従って、様々な種類の放射線を有効に遮蔽するには、複合的な遮蔽材を使用しなければならないと言う不便さが存在している。
【0016】
此処で、従来までに個々の放射線に対してその遮蔽効果があると言われている種々の物資に付いて、その遮蔽効果を以下に概略的に説明する。
(1) 硫酸バリウム
安全性があり、比較的安価である。 比重は約4.3g/cm
3で、特に、X線、γ線の遮蔽に優れている。
(2)硫酸カルシウム
安全性があり、安価である。 比重は約2.5g/cm
3で、比重は小さいが二水石膏の結晶水により、中性子の遮蔽に有効である。
(3)水吸収性高分子ポリマー
カルボキシル基を多数持つアクリル酸の重合体であって、自重の200倍の 水分を吸収でき、保湿力がある。
含水させた場合、水分と水素原子を持ったポリマーが中性子及びγ線の遮蔽に有効。
(4)黒鉛
炭素原子が並んだ板状のものが、何層にも重なったもので、比重は約2.5g/cm
3。
安全性があり、安価である。中性子及びγ線の遮蔽に有効である。
(5)水
水素原子を多く含む水は、中性子の遮蔽に有効である。
(6)ポリエチレン
エチレンの重合体であり、比重は約2.5g/cm
3。
γ線及び中性子線に対してどちらも有効な遮蔽材である。
(7)ホウ酸(ホウ素)
ホウ素は、中性子を吸収し易い性質があり、ホウ素−10は中性子を吸収してホウ素−11になっても放射性を持たない。
【0017】
実際の放射線遮蔽材配合を考えると、放射線にはその発生機構や物理的性質によって様々なものが存在する。放射線は、その物理的性質から大まかに、電磁放射線と粒子放射線に分ける事が出来る。
電磁放射線は、γ線とX線があり、当該電磁放射線は波長が非常に短い電磁波である。
一方、公衆被曝で問題となるのは、この波長が極めて短い事で高い透過性を持って電磁放射線で有る事にある。
粒子放射線に関しては、主な粒子放射線としては、α線、β線、中性子線、重粒子線等がある。
α線、β線は、数ミリの紙やアルミ板で遮蔽が可能であるが、中性子線は最も透過力が高く、水やコンクリートの厚い壁に含まれる水素原子によって、初めて遮蔽できる。
【0018】
処で、放射線の遮蔽材の配合は先にも述べた通り、遮蔽する放射線の線量によって異なるが、例えば、病院のX線診療室の放射線遮蔽材としては、電磁波放射線のX線の遮蔽が主な遮蔽目的となる。
鉛当量1.5mmに対して、無鉛遮蔽材の配合は、硫酸バリウムと高分子水吸収ポリマーと酢酸ビニールの3種類の配合である。配合比率は、7:1:2である。
この配合での鉛当量は1.8mmで、実際の厚みは18mmと10倍の厚みが必要となる。
然し、X線診療室の放射線遮蔽に使用される鉛板は石膏ボード等の裏打ちとしてパネル施行される為に使用される石膏ボードの厚みが12.5mm有る為、合計14mmとなり、実際の厚み差は4mmとなり大きな厚みの変化はない。
この場合は遮蔽材そのものが壁となる為に、所定配合された物は、910mm×1820mm×18mmに成形される。
【0019】
一方、原発事故で警戒区域外でも依然、放射線量が問題となっている地域があり、その環境下で生活を余儀なくされている。
国が定めた指針では、年間の被曝量を1mSvとした場合、1時間当たり0.19μSvとなる。
この時間当たりの基準被曝量を上回っている地域は警戒区域外でも多くある。
例えば、福島県の某所にある空間線量は2015年1月現在で、1.8μSvである。
同時期に付近の線量を調べるとやはり、国の定める基準を上回っている地域がある。
しかし、多くは基準より50%を超えるデータは少ない。
この様な現状を踏まえた場合、上記した通り、放射線の遮蔽材は、放射線の種類及びレベルにより構成成分の相互間の配合を変えられる様に構成されていれば最も効果的に遮蔽が出来る事になる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明に係る当該放射線遮蔽組成物、或いはそれを使用した当該放射線遮蔽材料或いは、それを使用した放射線遮蔽用建材の一具体例の構成を、図面を参照しながら詳細に説明する。
即ち、
図7は、本発明に於ける第1乃至第4の態様である当該放射線遮蔽組成物を、所望の密閉性容器300内に密封して構成された本発明に於ける第5の態様の一具体例を示す斜視図であって、図中、例えば、ポリエチレン系合成樹脂等からなる放射線の遮蔽効果を有するフィルム、シート等で構成された膜状体からなる密閉容器300内に、吸水性高分子ポリマー若しくは当該吸水性高分子ポリマーに二水石膏(硫酸カルシウム)を混在させた混合体に、要すれば、更に硫酸バリウム、黒鉛或いはホウ素(ホウ酸)等から選択された少なくとも一種の放射線遮蔽材が含まれた混合体に水分の存在下でゲル状の形状された当該放射線遮蔽組成物200が密封状態で挿入されている放射線遮蔽材料100が示されている。
尚、同図(A)の150は、当該放射線遮蔽材料100の上部面を示し、160はその底面部を示す。
【0031】
つまり、本発明に於いては、上記した通り、多種の放射線の何れにも遮蔽効果を発揮出来る汎用性を持たせる事が主たる目的で有る事を考慮し、放射線遮蔽材として、従来技術に於いて最も需要の大きい、鉛及びコンクリートを主体とする放射線遮蔽材料を代替させると言う必須の技術思想を実現させる為、主たる当該放射線遮蔽組成物の主成分として吸水性高分子ポリマーを採用したものある。
そして、本発明に於ける他の具体例としては、当該放射線遮蔽組成物の組成として、当該吸水性高分子ポリマーに、他の種類の放射線を遮蔽する機能を持った他の放射線遮蔽材を少なくとも一種類、好ましくは複数種類を混合させた当該放射線遮蔽組成物を使用する様に構成したものである。
【0032】
本発明に於いて使用される当該吸水性高分子ポリマーとしては、その種類が特に限定されるものではなく、従来一般的に使用されている吸水性高分子ポリマーを使用する事が出来る。
当該吸水性高分子ポリマーは、通常は、粉状或いはい粒状で存在しているが、水を容易に吸収して、その体積が数倍から数10倍若しくそれ以上に膨張し、ゲル状の物体となる。
当該吸水性高分子ポリマーは以下のような吸水時間を有する。
つまり、当該吸水性高分子ポリマー1g当たりの吸水時間は、一般的には、20秒で水50mlを吸収し、1分で、水100ml、3分で、水300ml、10分で、水500mlをそれぞれ吸収し、10分以上経過しても当該吸水量は変わらない。
従って、本発明においては、後述するそれぞれの当該吸水性高分子ポリマーの吸水処理時間は最大で10分を設定しておくことにより、十分な吸水処理が実行される事になる。
【0033】
本発明に於ける他の具体例に於いては、当該吸水性高分子ポリマーに対して、二水石膏(硫酸カルシウム)を混合させたり、当該吸水性高分子ポリマーに対して、二水石膏(硫酸カルシウム)と硫酸バリウムを混合させたり、更には、それに加えて黒鉛やホウ素(ホウ酸)の少なくとも一方を混在させるものであるが、それぞれの混合量或いは混合比率は特に特定させるものではなく、個々の用途に応じて適宜当該混合量或いは混合比率を変える事が出来る。
【0034】
一般的には、当該放射線遮蔽材料の汎用性を考慮して、それぞれの放射線遮蔽材の混合比率は同じ値に設定する事が望ましい。
そして、当該各放射線遮蔽材の混合は、各放射線遮蔽材の粒状体或いは粉状体の形態で、所定の混合槽内に投入し、適宜に撹拌して混合させた後、当該混合体を水と接触させて更に混合操作を行う方法が一般的には採用される。
然しながら、上記した通常の一般的な混合方法では、当該混合処理が確実に実行出来ない場合、には、一部の当該放射線遮蔽材を別途、個別に水と混合処理を行わせ、その後、他の放射線遮蔽材とを一体化して混合処理を行う方法を採用しても良い。
【0035】
更に、本発明に於いて使用される混合装置も特に特定されるものではないが、当該混合装置としては、スラリーが高粘度のためコンパウンドミキサーを使用する事が望ましい事が判明したと共に、当該混合処理に際し、1バッチが100キロ以上の混合には、混合タンクの内部容積が200L以上で、モーター出力が10KW以上の混合機である事が必要であることを知得した。
【0036】
又、
図6に示す様に、当該混合処理槽30の内部には、せん断力の高い構造を有する撹拌羽根31が設けられている事が望ましく、特に当該撹拌羽根31は、
図6の(B)乃至(D)に示されているような形状を有した3枚の撹拌羽根31を有している事が望ましく、当該各撹拌羽根31は、適宜の回転装置31により特定の方向に任意の回転数で回転する様に構成されている事が好ましい。
同様に、本発明に於ける当該混合処理槽30もそれ自身、適宜の回転装置31により、適宜の回転方向に適宜の回転数で回転せしめられる様に構成されている事も望ましい具体例である。
更に、本発明に於いては、
図6(E)に示されている様に、当該混合処理槽30は、その回転中心軸線が、垂直軸線に対して1乃至10度の範囲でずれながら旋回する様に構成されている事も高精度な混合効果を得る為には好ましい具体例である。
【0037】
処で、本発明に於いては、上記した様に、吸水性高分子ポリマーを主たる構成成分として使用するか、当該吸水性高分子ポリマーにその他の当該放射線遮蔽材の幾つかを適宜の混合比率の下に混合し、当該放射線遮蔽組成物200となし、これを当該水の存在下に、適宜の密閉状容器100内に密閉保持させて、当該放射線遮蔽材料1を構成するものである。
本発明に於ける当該密閉状容器100の形状や容量は特に限定されるものではないが、強靭でフレキシブル性を有し、放射線を遮蔽する機能を有する材質で構成されている事が望ましい。
【0038】
例えば、ポリエチレン系合成樹脂材料を主体とするシート或いはフィルムの様な膜体300で構成された物を使用する事が望ましい。
そして、当該膜体で外部が構成され、その内面部には内部空間領域部が形成されており、適宜の密封可能な開口部を有する袋状の容器100を構成するものが好ましくは使用されるものである。
即ち、本発明に於ける当該放射線遮蔽材料100は、上記した様な1種若しくは複数種の放射線遮蔽組成物200が、粒状体若しくは水分の存在下に、相互に混在された状態で、ポリエチレン系合成樹脂材料を主体とする膜体300で構成された密閉空間部内に内蔵されている構成を有しているものである。
【0039】
かかる容器300の適宜の開口部(図示せず)から、上記した当該放射線遮蔽組成物200を当該容器300の内部に、所望の量を注入し、当該開口部を密閉処理する事により、本発明に係る当該放射線遮蔽材料100が完成する事になる。
本発明に於ける当該放射線遮蔽材料100の形状や、各種の寸法は、特に限定されるものではなく、当該放射線遮蔽材料100の使用目的、使用場所に応じて適宜設計する事が可能である。
例えば、
図7(A)に示す当該放射線遮蔽材料100は、その断面形状が円形、楕円形、矩形、多角形等の形状を有する筒状或いは柱状の外形を有しており、当該断面形状の径は、10cmから50cm程度が好ましく、又、その長尺方向の長さは、50cmから2m程度が好ましい。
【0040】
一方、
図7(B)に示す当該放射線遮蔽材料100は、平板状であって、縦、横及び高さのそれぞれの寸法も適宜の値に設定する事が可能である。
但し、例えば、
図7(B)に示す当該放射線遮蔽材料の縦、横の寸法が20cmを超える場合で、特に当該放射線遮蔽材料100を垂直或いはそれに近い状態で施工配置する場合には、内部のゲル状の当該放射線遮蔽組成物200の位置ずれを防止する為に、適宜の寸法で遮蔽壁部350を配置する事が望ましい。
上記した本発明に係る当該放射線遮蔽材料100は、従来、主に鉛が使用されていた分野及びコンクリートが主に使用されていた分野に専ら使用される事が可能であり、従来に比べて安価であり、軽量であり、フレキシブルであるので、経済的であるほか、施工コストの低減と施工の簡素化も実現出来るので、効率的である。
【0041】
本発明に係る当該放射線遮蔽材料100は、それが要求される場所にブロック材の様に、間隔を置かずに相互に密接する様な状態で配置、積層、積み上げすることによって、使用されるものである。
又、本発明に係る当該放射線遮蔽材料100に含まれる当該放射線遮蔽組成物200は殆どが水で構成されているので、廃棄する場合でも、有害物質が発生する心配もない。
【0042】
更に、本発明に係る当該放射線遮蔽材料100を広い分野で使用する場合には、
図1(A)に示されている様に、例えば、ポリエチレン系合成樹脂材料を主体とする膜体で構成された適宜の大きさ、適宜の面積を有するシート状物2に、適宜の大きさ、例えば、100mm×100mm程度の大きさに設定された密閉可能な袋状空間領域部3を複数個を、所望のシート状面2に沿って、所定の間隔を介して、相互に近接して、二次元方向に整列状態或いは千鳥状態若しくは市松状態に配列形成し、当該それぞれの袋状空間領域部3内に、当該放射線遮蔽組成物200を密封させて構成した放射線遮蔽材料1(100)を使用する事も可能である。
本発明に於ける当該放射線遮蔽材料1(100)は、
図1(B)及び(C)に示されている通り、その使用に際しては、放射線が漏れない様に、当該複数枚の放射線遮蔽材料1を相互にずらせた状態で重ね合わせる様に配置・施工する事が望ましい。
【0043】
更に、本発明に於いては、上記した当該放射線遮蔽材料1或いは100をそのまま、或いはそれらを複数枚積層した状態で、従来、一般的に使用されている壁材、天井材、或いは床材、その他の遮蔽板部の少なくとも一方の表面に、適宜の接着剤或いは固定手段を使用して、貼着させることにより、新規な放射線遮蔽機能を有する建材が提供される事になる。
或いは、当該放射遮蔽材料が従来公知である一般的な一対の建築材料基材の内面或いは内層部に挟持される状態で配置されている構成を採用するものであっても良い。
【0044】
次に、本発明於ける当該放射線遮蔽組成物200の製造方法の具体例を以下に詳細に説明する。
即ち、本発明に於ける当該放射線遮蔽組成物200の製造方法の基本的な技術思想としては、吸水性ポリマーからなる粒状体、若しくは、吸水性ポリマーからなる粒状体に対して、粒状体の硫酸カルシウム(二水石膏)を混在させるか、或いは吸水性ポリマーからなる粒状体に粒状体の硫酸カルシウム(二水石膏)と硫酸バリウムとを混在させた混合体を撹拌槽内に投入すると共に、少なくとも当該吸水性ポリマーからなる粒状体の重量に対して、少なくとも数倍、好ましくは、少なくとも数10倍、好ましくは、少なくとも数100倍の重量に相当する水を当該撹拌槽内に投入した後、所定の時間撹拌処理することによって、ゲル状の混合物を形成する事を特徴とする放射線遮蔽組成物の製造方法である。
尚、本具体例に於いて、当該硫酸カルシウム(二水石膏)を使用する場合には、放射線の遮蔽に、当該硫酸カルシウム(二水石膏)に含まれる21%にも及ぶ内部残留水を12分に活用する事が望ましいことから、当該硫酸カルシウム(二水石膏)は、焼成していない当該硫酸カルシウム(二水石膏)を使用する事が望ましい。
【0045】
更に、本発明に於ける当該放射線遮蔽組成物200の製造方法の他の具体例としては、当該吸水性ポリマーに対して、更に、粒状の黒鉛、ホウ素(ホウ酸)の少なくとも一種の粒状体を追加混在させる事を特徴とする放射線遮蔽組成物の製造方法である。
本発明に於ける当該放射線遮蔽組成物200の製造方法に於いて、当該吸水性高分子ポリマーのみを使用する場合には、具体的には、例えば、当該吸水性高分子ポリマーの粒状体を100と水50Lとを、例えば、300Lの内部容量を有し、
図6に示されている様な構造からなる混合装置内に投入し、37KWの出力の下で、例えば、
図6に示されている様な当該羽根体若しくは当該円筒体を一分間で575回転(RPM)の回転数で、約10分間混合処理することにより、当該放射線遮蔽組成物200が製造される。
【0046】
又、本発明に係る当該吸水性ポリマーと水との混合に関する他の具体例としては、
内部容量が300Lドラム内に回転刃体を有する混合機中に、高分子吸水ポリマー100gと50Lの水を入れ、回転数575RPMで37KWの出力で10分間混合した。
この混合処理により十分に水を吸収した高分子吸水ポリマーはゼリー状となり、その総重量は合計で50.1Kgとなった。
この様にして得られた高分子吸水ポリマーを
図1に示される様な、複数個の空間領域部3が千鳥状に形成されたポリエチレン系合成樹脂膜状体2の当該個々の空間領域部3内に注入し、その後、当該各空間領域部3の開口部を密閉処理して、放射線遮蔽材を形成した。
【0047】
一方、本発明に於いて、当該吸水性高分子ポリマーと、上記したその他の放射線遮蔽材と混合して当該放射線遮蔽組成物200を製造する場合には、各組成成分の均一的な混合を図る為に、新たな技術思想を導入する必要性が有る事が判明した。
本発明者は、上記の具体例に於いて、係る均一な混合結果を得る為に、多数の実験と検討を繰り返した結果、以下の様な新規な技術思想を導入する事が好ましい事を知得したものである。
即ち、例えば、硫酸バリウム及び硫酸カルシウムと吸水性高分子ポリマーとを混合する場合に於いては、含水量を多量に保持させるために、あらかじめ硫酸バリウム及び硫酸カルシウムを水と混合しスラリー状にしたものと、吸水性高分子ポリマーに含水させたものとを後工程で混合すると言う技術思想を採用する事が望ましいとの結論に到達したものである。
【0048】
その理由は、硫酸バリウム及び硫酸カルシウムは、カルシウムイオンの作用で吸水性高分子ポリマーの吸水力が低下せしめられる事があげられる。
そのため、本発明の当該具体例では、硫酸バリウム及び硫酸カルシウムを、あらかじめ吸水したものを混合する事が好ましい具体例となる。
即ち、硫酸バリウムと硫酸カルシウムとは、それぞれの比重が大きく異なる為、通常の混合処理操作では、均一な混合スラリーをえる事は困難であるが、高分子吸水ポリマーと水とを介在させて混合処理する事により両者の均一な粒子混合が達成出来るのである。
本発明に於ける上記具体例に於いて、更に、当該混合準備が行なわれた硫酸バリウム及び硫酸カルシウムと高分子吸水ポリマーを混合する際、界面活性剤を、混合物重量に対して0.5%から5%の間で添加すると混合性能が増し、分離がなくなると言う好結果が得られたものである。
【0049】
係る新規な技術思想は、硫酸バリウム及び硫酸カルシウムのみでなく、黒鉛、ホウ素(ホウ酸)を混合処理する具体例に於いても適用可能である事は言うまでも無い。
上記した本発明に於ける具体例の詳細な例を以下に説明するならば、当該具体例に於ける混合方法は、300Lの混合機を使用し、当該混合機を575RPMの回転数と、37KWの出力に設定し、約100KGの混合体の製造は、高分子吸水ポリマー100gと50Lの水を入れて10分間混合する。次に硫酸バリウムを20Kg、硫酸カルシウムを20Kgを水10KGにて含水させておき水と混合された高分子吸水ポリマーに投入して575RPMの回転数と、37KWの出力とで4分間混合処理した。
4分経過した時点で界面活性剤を0.5%入れて1分混合した。
尚、上記した工程の順番が望ましい結果を発揮するものであるが、当該順番が変るとスラリーの分離及びスラリーの泡立が現れると言う別の問題が発生するので好ましくない。
【0050】
此処で、上記した技術思想を纏めると、本発明に係る当該放射線遮蔽組成物200の製造方法の一態様としては、吸水性ポリマーからなる粒状体と粒状体の硫酸カルシウム(二水石膏)及び硫酸バリウムの少なくとも一方の粒状体とを混在させる場合に於いて、予め硫酸バリウム及び硫酸カルシウム(二水石膏)とを第1の混合槽内で水と混合処理し、スラリー状の第1の混合物を形成する第1の工程と、当該吸水性ポリマーからなる粒状体と当該吸水性ポリマーからなる粒状体の重量に対して、少なくとも数倍、好ましくは数十倍の重量に相当する水とを第2の混合槽内にて混合し、当該粒状体の吸水性ポリマーに多量の水を含水させた第2の混合物を形成する第2の工程と、適宜の混合槽内に於いて、当該第1の工程で形成された当該第1の混合物と、当該第2の工程で形成された当該第2の混合物とを混合し、界面活性剤の存在下に、混合処理操作を行う第3の工程とが実行される事を特徴とする放射線遮蔽組成物の製造方法である。
【0051】
本発明では、安全で安価で、遮蔽効果の高い、硫酸バリウムを主体に各放射線の遮蔽効果が高い物の組み合わせ、又、使用用途別により混合を変化させる放射線遮蔽材である。
各粒状体の混合比率は特定されるものではないが、それぞれ略同程度の重量割合を持たせて製造する事が望ましい。
その他に、本発明に於ける他の具体的な態様としては、当該混合処理槽内に、せん断力の高い構造を有する撹拌羽根が設ける事を特徴とする放射線遮蔽組成物の製造方法が開示されており、又、当該混合処理槽の当該混合槽を、その回転中心軸線が、垂直軸線に対して1乃至10度の範囲で旋回する様に構成して当該放射線遮蔽組成物を製造する放射線遮蔽組成物の製造方法が開示されている。
【0052】
更に、他の具体的な態様としては、上記した方法により製造された放射線遮蔽組成物200を、合成樹脂材料を主体とする空間領域部3内に投入し、その後、当該空間領域部を密閉する事を特徴とする放射線遮蔽材料1の製造方法が開示されており、又、一枚の合成樹脂材料を主体とするシート状構成物の少なくとも一方の面に、二次元的に並列状或いは千鳥状或いは市松状に相互に近接して配置・形成された複数個の空間領域部3内のそれぞれに、当該放射線遮蔽組成物200を個々に投入し、その後、当該各空間領域部を密閉する事を特徴とする放射線遮蔽材料1の製造方法が開示されている。
【0053】
更に、本発明に於ける別の具体的な態様としては、上記した方法により製造された当該放射線遮蔽材料1を適宜の建築材料の少なくとも一方の面に、積層若しくは貼着させて構成する事を特徴とする放射線遮蔽用建材の製造方法が開示されている。
【0054】
次に、本発明により得られた当該放射線遮蔽材料1(100)の放射線遮蔽効果についての検討を行った結果を、以下に示す表1を参照しながら詳細に説明する。
下記表1は、放射線遮蔽効果の測定に当たり、先ず、主たる組成成分である吸水性高分子ポリマー10gを、5Lの水と混合させゲル状にし、それを5mmの厚さ板状に成形加工して、当該作成された放射線遮蔽組成物200の各種の放射線に対する遮蔽率を測定したものである。
その後、当該吸水性高分子ポリマー10gを5Lの水と混合させたものに対して、二水石膏(硫酸カルシウム)、硫酸バリウム、黒鉛並びにホウ素(ホウ酸)を個別に、それぞれ10wt%混入して、5mmの厚さの当該放射線遮蔽組成物200を形成し、それぞれ個別に当該放射線遮蔽組成物200の各種の放射線に対する遮蔽率を測定したものである。
【0055】
尚、同表1中、X線遮蔽率は、ブランクの透過線量率(100kv)を基準値として算出したものであり、又、バックグランドの線量率は、0.05+/−0.01μS v/hであった。
【表1】
当該表1から明らかな通り、当該吸水性高分子ポリマーのみからなる当該放射線遮蔽組成物200に於いては、α線とβ線に対しては100%の遮蔽効果をはっきするものの、X線に対する遮蔽効果は、若干不満足であり、γ線、及び中性子線に対しては、理想的な遮蔽効果としては、不十分な特性を示している。
【0056】
これに対し、当該吸水性高分子ポリマーに二水石膏(硫酸カルシウム)或いは硫酸バリウムを混入させた当該放射線遮蔽組成物200に於いては、γ線に対する遮蔽効果が大幅に改善されると同時に、X線及び中性子線に対する遮蔽効果は、幾分改善されている事が分かる。
同様に、当該吸水性高分子ポリマーに黒鉛或いはホウ素(ホウ酸)を混入させた当該放射線遮蔽組成物200に於いては、γ線、X線及び中性子線に対する遮蔽効果が、幾分改善されている事が分かる。
【0057】
係る実験と測定結果から判断する限り、当該吸水性高分子ポリマーに二水石膏(硫酸カルシウム)、硫酸バリウム、黒鉛或いはホウ素(ホウ酸)の一つ或いは複数種を組み合わせて混入させることにより、当該吸水性高分子ポリマー単独の場合に比べてそれなりの相乗効果が発揮されていると考えられるので、本発明に於ける混合処理操作が有効である事が理解される。
【0058】
次に、本発明に於ける当該放射線遮蔽組成物及び当該放射線遮蔽材料及び当該放射線遮蔽建材の発明とそれらの製造方法に関する別の態様の構成について以下に説明する。
即ち、本発明に於ける当該別の具体的態様に於ける基本的技術構成は、上記具体例で製造された当該放射線遮蔽組成物200の発泡体から構成されている事を特徴とする放射線遮蔽材料400であり、またそれを活用した放射線遮蔽用建材であり、
図8に示されている通り、前記した当該放射線遮蔽組成物200が発泡部401を多数内包している発泡状の放射線遮蔽材料400である。
尚、同図中、符号402は、当該吸水性高分子ポリマーに混合されている他の放射線遮蔽材の一部である。
【0059】
本具体例では、従来に於ける当該放射線遮蔽材料が鉛やコンクリートを主体に構成されている為、重量が重かったり、移動に不便で有ったり、施工に時間が掛ると言う問題から、製造コストが高いばかりでなく、資材の移動や、施工に時間と労力が必要とされることから、施工コストも大幅に高騰していたと言う問題があった。
そこで、係る問題を解決する為に、上記した本発明の具体的な態様に於いて、製造される放射線遮蔽組成物200を、特定の方法によって、発泡処理し、当該放射線遮蔽組成物200に含まれる硫酸カルシウムが発泡して最終的に得られる当該放射線遮蔽材料1(100)を発泡状の構成体400とすることにより、重量の軽減化と資材の移動並びに施工期間の短縮化によって、必要経費を大幅に減少させる事が可能となるのである。
【0060】
本発明に於ける当該別の具体例に係る当該発泡状の放射線遮蔽材料400は、空気層を含む事で、断熱性、防音性、難燃性に優れた軽量化された放射線遮蔽用の建材となる。
処で、本具体例に於ける当該発泡状の放射線遮蔽材料400は、硫酸カルシウムが発泡することにより、当然質量が下がり、放射線に対する遮蔽能力は低下するが断熱材はある程度の厚みが確保出来る事と、当該発泡状の放射線遮蔽材料400に使用された当該吸水性高分子ポリマーは、殆ど残存していないが、当該吸水性高分子ポリマーと混合されている当該硫酸カルシウムが十分残存しているので、当該硫酸カルシウムの二水石膏が内部に含んでいる結晶水が、発泡処理後でも存在し、放射線の遮蔽効果を発揮していると考えられる。
従って、当該放射線遮蔽組成物200を発泡して使用する場合には、当該二水石膏(硫酸カルシウム)を予め多量に混入させておく事が望ましい具体例である。
【0061】
更に、別の実験の結果によれば、原発事故による放射線の影響レベルでは、発泡体の遮蔽材で十分回避出来る事が分かった。
更に、無機物と有機物との混合により、混合物を発泡させることにより、別の機能が付加された機能的な放射線遮蔽材を一般的な建材として展開する事が可能となる。
【0062】
次に、本具体例に於ける発泡性放射線遮蔽組成物の製造方法について、その基本的な技術構成を説明する。
即ち、本具体例に於ける発泡性放射線遮蔽組成物の製造方法の基本的な技術構成は、前記した具体例に於ける当該放射線遮蔽組成物200の製造方法に於いて、吸水性ポリマーに対して、硫酸カルシウムとアルミ発泡剤を混入させる様に構成する事を特徴とする発泡性放射線遮蔽材料400の製造方法である。
更に、本具体例に於ける更なる技術構成としては、前記した具体例に於ける当該放射線遮蔽組成物の製造方法に於いて、当該第3の工程に於いて、アルミ発泡剤の存在下に、混合処理操作を行う事を特徴とする発泡性放射線遮蔽材料400の製造方法である。
【0063】
一方、本具体例に於ける別の技術構成としては、上記した具体例に於ける当該発泡性放射線遮蔽材料400の製造方法に於いて、吸水性ポリマーと硫酸カルシウムとの混合体に対して、界面活性剤とアルミ発泡剤を混入させる様に構成する事を特徴とする発泡性放射線遮蔽材料の製造方法であり、更には、上記した具体例に於ける当該放射線遮蔽組成物の製造方法に於いて、当該第3の工程に於いて、界面活性剤とアルミ発泡剤の存在下に、混合処理操作を行う事を特徴とする発泡性放射線遮蔽材料10の製造方法である。
【0064】
以下に、本発明に於ける当該別の態様に於ける当該発泡性放射線遮蔽材料400の製造方法の一具体例を、当該吸水性高分子ポリマーに、当該二水石膏(硫酸カルシウム)及び当該硫酸バリウムを混在させて発泡性放射線遮蔽材料を製造する場合を例に採って説明する。
【0065】
具体例1
即ち、当該発泡性放射線遮蔽材料方法は、300Lの混合機を使用し、回転数575RPMで、37KWの出力を設定し、約100Kgの混合体を製造するに際し、例えば、
図6に示された様な回転式混合槽30を使用して、高分子吸水ポリマー100gと50Lの水を入れて10分間混合した。
次に、混合された高分子吸水ポリマーにアルミ発泡剤を最終混合重量の0.05%〜0.5%と界面活性剤を0.5%投入し、回転数575RPMで、37KWの出力とで3分間混合処理を行った。
当該3分間の混合処理が経過した時点で、硫酸バリウムを20Kg、硫酸カルシウム20Kgを水10Kgにて含水させたものを回転数575RPMで、37KWの出力とで5分混合処理を行った。
【0066】
上記混合体を乾燥させれば100Kgに対して水分量が約60%であるため乾燥後の含水率が10%としても重量の50%の質量が失われ2倍発泡が実現する。
上記具体的に於いては、配合成分中の硫酸バリウムと硫酸カルシウムを、従来のセメント系発泡剤を使用して発泡させるものである。
当該発泡現象は、常温近辺の温度下で開始される。一方、当該吸水性高分子ポリマーは、発泡剤の発泡をサポートする機能を有するものである。
当該具体例で使用した発泡剤は金属アルミニウム粉末を使用したが、モルタル発泡剤であるため、モルタルのアルカリ成分に反応して発泡させる為、中性を示す硫酸カルシウムでは、反応が起きにくい。
そこで、アルカリ石鹸を添加することにより、PH調整をおこない、更に、界面活性効果により発泡させることで、発泡しない硫酸バリウムと硫酸カルシウムの混合スラリーを発泡させる事が可能となった。
【0067】
具体例2
吸水性高分子ポリマーに硫酸カルシウム(二水石膏)を混入させたものを発泡処理する他の具体例としては、
吸水ポリマーと水の重量比は1;500に設定して混合すると同時に、硫酸カルシウム(二水石膏)を15重量部〜50重量部混合する。
当該混合物を、内部容量が300Lドラム内に回転刃体を有する混合機中に、高分子吸水ポリマー100gと50Lの水を入れ、回転数575RPMで37KWの出力で10分間混合した。
吸水ポリマーと水の重量比は1;500に設定して混合すると同時に、硫酸カルシウム(二水石膏)を15重量部〜50重量部混合する。
【0068】
当該混合物を、内部容量が300Lドラム内に回転刃体を有する混合機中に、高分子吸水ポリマー100gと50Lの水を入れ、回転数575RPMで37KWの出力で10分間混合した。
その後、当該混合された高分子吸水ポリマーに、アルミ発泡剤を0.05wt%〜0.5wt%と界面活性剤を0.5wt%を追加投入し、回転数575RPMで37KWの出力で13分混合処理した。
当該混合処理の間に、混合機内でゼリー状の吸水ポリマーが混合漕内で回転され摩擦熱が出て、約35℃ほどの温度にまで上昇するので、そこで発泡処理が行われる。
【0069】
即ち、本具体例に於いては、当該発泡処理は、別の行程、つまり別個の加熱工程で加熱処理するのではなく、同一の混合機内で、当該ゼリー状の吸水ポリマーが発生する摩擦熱を利用して当該混合体の温度が上昇する。しかし、ほとんどが水のため合計約13分の混合処理では35℃ほどしか温度上昇はしないが、発泡するには望ましい温度となる。
此処で、例えば、吸水ポリマーと水の重量比は1;500の配合比で50Kgのゼリー状吸水ポリマーを作った中に硫酸カルシウム(リサイクル二水石膏)をゼリー状吸水ポリマーに50重量部(25Kg)混合したとする。
この時点で合計75Kgの混合体が出来る。
この75Kgの混合体にアルミ発泡剤を混合したとする。
仮に二水石膏分を二倍発泡させるようにコントロールすれば体積は二倍になり、水分は乾燥され水分の約50Kgは無くなり、発泡した25Kgの二水石膏の発泡体が得られる。
【0070】
つまり、高分子吸水ポリマーの基本配合は吸水ポリマーと水の重量比は1;500であり、これに(1)硫酸カルシウム、(2)硫酸バリウム、(3)黒鉛、(4)ホウ素を適宜の比率で加えたものを、乾燥を防ぐ、波型ポリエチレン容器に入れて放射線を遮蔽する製品したものと、この製品に、アルミ発泡剤を入れて発泡させたのちに乾燥させたものとに大別する事が出来る。
しかし発泡体は(1)〜(4)の中で(1)の硫酸カルシウムしか発泡体は製造できないので、おのずから硫酸カルシウムの発泡体となる。この発泡体は密度が低くし遮蔽能力は激減するが、低レベルの放射線の遮蔽が出来る事と、建材としては別の機能の断熱性や防音性に優れる。
【0071】
具体例3
高分子吸水ポリマーに硫酸カルシウム(二水石膏)を混入させて発泡処理を行う場合の別の具体例
更に、別の具体例として、吸水ポリマーと水の重量比は1;500に対して硫酸カルシウム(リサイクル二水石膏)を50重量部を混合し、アルミ発泡剤を0.2wt%と界面活性剤を0.5wt%を追加投入した場合、強制乾燥では80℃で15時間、自然乾燥であれば外気温20℃前後で約75時間で二水石膏の2倍発砲体が得られる。
この場合の乾燥後の含水率は4〜8%となる。
ここで、本発明に於ける本具体例により得られた高分子吸水ポリマーを主体とする当該発泡性放射線遮蔽材料の構成例を
図9に示す。
即ち、
図9は、本発明に係る吸水性高分子ポリマー10gと水5Lとを混合したものに、硫酸カルシウム(二水石膏)10%と発泡剤を2%混合させ発泡処理した後の当該発泡性放射線遮蔽材料の構成例を3000倍にして撮影した電子顕微鏡写真である。
係る
図9の電子顕微鏡写真から、硫酸カルシウム(二水石膏)が吸水性高分子ポリマーと結合して、膨れている発泡状態を呈している事が判明する。
一方、
図10は、吸水性高分子ポリマー10gと水5Lとを混合したものに、硫酸カルシウム(二水石膏)10%のみを混合して構成された合成樹脂構成体を3000倍にして撮影した電子顕微鏡写真である。
係る
図10の電子顕微鏡写真の内、白い部分は硫酸カルシウム(二水石膏)で、黒い部分が吸水性高分子ポリマーを示すもので有って、発泡構造は存在していない。
【0072】
具体例4
高分子吸水ポリマーに硫酸カルシウム(二水石膏)を混入させて発泡処理を行う場合の更に別の具体例
吸水ポリマーと水の重量比は1;500の配合比で50Kgのゼリー状に硫酸バリウム20Kg、硫酸カルシウム20Kg、水10Kgの配合の場合、乾燥後に残る成分は硫酸バリウムの20Kgと硫酸カルシウムの20Kgとあえて言うなら高分子吸水ポリマーの100gである。発泡剤は硫酸バリウムが入る事で、発泡がしにくくなるため発泡剤を増やさなくてはならない。上記具体例での説明では、硫酸カルシウムは、アルミ発泡剤を混合重量の0.2%で2倍発泡が可能であるが、硫酸バリウムが入る事で0.5%まで上げないと2倍発泡が出来ない。
また、この単純な高分子吸水ポリマーのゼリー状に二水石膏と発泡剤を入れて乾燥させると、目的は変わるが断熱及び防音の効果がある建材ができる。
この際の吸水ポリマーの働きは二水石膏間にゼリー状の吸水ポリマーが介在し、アルミの発泡を助ける。
【0073】
処で、本発明に関連して、住宅に於いては、寒暖の地域差はあるものの、断熱材を施行しない住宅は無い為、特に原発事故発生地域に於いては、断熱効果がある放射線遮蔽材を、有効な建材20となりえる。
即ち、本発明に於ける当該別の態様に於ける更なる発明の基本的技術構成は、当該発泡性の放射線遮蔽材料400からなり、板状体若しくは所望の断面形状、例えば、円形、楕円形、多角形、矩形等の断面形状を有する柱状体或いは筒状で構成されている本体部を有する事を特徴とする発泡性放射線遮蔽建材であり、当該別の態様に於ける別の発明の基本的技術構成としては、上記した方法で製造された発泡剤を含む当該放射線遮蔽組成物200を発泡処理すると同時に、適宜の型部内に注入して、板状体若しくは所望の断面形状、例えば、円形、楕円形、多角形、矩形等の断面形状を有する柱状体或いは筒状に成形加工する事を特徴とする発泡性放射線遮蔽建材の製造方法である。
【0074】
当該発泡性放射線遮蔽建材の使用方法としては、
図2に示す様に、壁部の内壁面に形成されている木製若しくは金属製の枠体部5乃至7で形成された空間部内に当該発泡性放射線遮蔽建材20をはめ込み、その上から別の内壁面被覆ボード4を被覆する様にして使用する事が可能であり、又、
図3に示す様に、2枚の相互に対向する表裏壁面材の間に設けられている木製若しくは金属製の枠体部5乃至7で形成された空間部内に、上方から或いはその側面部から当該発泡性放射線遮蔽建材20を挿入するように施工する事も可能である。
【0075】
又、天井部に於いても
図4に示す様に、天井部の内壁面に形成されている木製若しくは金属製の枠体部8,9及び11で形成された空間部内に当該発泡性放射線遮蔽建材20をはめ込み、その上から別の天井面被覆ボード12を被覆する様にして使用する事が可能であり、又、
図5に示す様に、2枚の相互に対向する表裏天井面材の間に設けられている木製若しくは金属製の枠体部8,9及び11で形成された空間部内に、上方から或いはその側面部から当該発泡性放射線遮蔽建材20を挿入するように施工する事も可能である。
【0076】
上記した説明から明らかな通り、本発明に於いては 、今まである放射線の遮蔽材で効果があるとされてきた物質、つまり、鉛及び近年では硫酸バリウム等があるが、水分を積極的に使った遮蔽材は、硫酸バリウムでは無く、従来では、使用実績がない硫酸カルシウム(リサイクル二水石膏、廃石膏ボードから得られたもの)を使い、水分と石膏の質量と石膏の結晶水で遮蔽するものである。
つまり、本発明に於いては、水分を閉じ込めるに当たり、保水力や水の流動性を調整する事、寒冷地での水分凍結を防ぐ等の目的で、特に、高分子吸水ポリマーを使用するものであるから、単純で安全性がある放射線遮蔽材である。
また、本発明に於いては、かかる単純なゼリー状高分子吸水ポリマーに二水石膏と発泡剤を入れて乾燥させると、目的は変わるが断熱及び防音の効果がある建材ができる。