(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
<スタック構造体の構成>
ここでは、本発明に係るスタック構造体の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
スタック構造体1は、固体酸化物形燃料電池(SOFC;Solid Oxide Fuel Cell)に用いられる構造体である。なお、本実施形態では、
図1に示すように、座標系が設定されている。
【0024】
図1に示すように、スタック構造体1は、複数のセル100と、マニホールド200とを、備えている。
【0025】
以下では、
図1に示すように、x軸方向、y軸方向、及びz軸方向が、定義されている。例えば、各セル100(後述する支持基板10)では、x軸方向、y軸方向、及びz軸方向が、長手方向、短手方向(幅方向)、及び厚み方向に、各別に対応している。
【0026】
また、マニホールド200では、x軸方向、y軸方向、及びz軸方向が、高さ方向(上方)、短手方向(幅方向)、及び長手方向に、各別に対応している。ここで、マニホールド200の短手方向(幅方向)は、セル100における支持基板10の幅方向に対応している。
【0027】
なお、「x軸方向、y軸方向、及びz軸方向」という文言は、各軸方向の正方向及び/又は負方向を含んだ意味で用いられることがある。
【0028】
<セル>
各セル100は、燃料電池セルである。各セル100は、集電部材(図示省略)を介して互いに電気的に接続されている。集電部材は、導電性を有する材料から形成されている。例えば、集電部材は、酸化物セラミックスの焼成体又は金属などによって形成されている。
【0029】
図1に示すように、各セル100は、マニホールド200に設けられる。詳細には、各セル100は、マニホールド200の蓋部220(後述する)に設けられる。
【0030】
図2に示すように、各セル100は、複数の発電素子部Aと、支持基板10とを、有する。各発電素子部Aは、燃料極、固体電解質膜、反応防止膜、及び空気極を、有する。各発電素子部Aは、燃料極、固体電解質膜、反応防止膜、及び空気極の順に積層された積層焼成体である。
【0031】
燃料極は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。燃料極は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ;イットリア安定化ジルコニア)とから、構成される。固体電解質膜は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料からなる焼成体である。固体電解質膜は、例えば、YSZ(8YSZ;イットリア安定化ジルコニア)から、構成される。
【0032】
反応防止膜は、緻密な材料からなる焼成体である。反応防止膜は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O
2(ガドリニウムドープセリア)から、構成される。空気極は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。空気極は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から、構成される。
【0033】
複数の発電素子部Aは、支持基板10に設けられる。詳細には、複数(例えば4個)の発電素子部Aが、電気的に直列に接続された状態で、支持基板10の両側面それぞれにおいて、支持基板10の長手方向に所定の間隔を隔てて配置される。
【0034】
支持基板10(後述する緻密層を除く)は、電子伝導性を有さない多孔質の材料から構成された焼成体である。支持基板10は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)で構成される。
【0035】
図2に示すように、支持基板10は、実質的に平板状に形成されている。例えば、支持基板10は、x軸方向の長さ(長手方向の長さ)がy軸方向の長さ(短手方向の長さ・幅方向の長さ)より長くなるように、形成されている。
【0036】
支持基板10は、発電素子部Aを支持する。具体的には、支持基板10の両側面、すなわち支持基板10においてz方向に互いに対向する1対の平面(主面)それぞれには、複数(例えば4個)の発電素子部Aが、x軸方向(長手方向)に所定の間隔を隔てて設けられている。
【0037】
支持基板10の内部には、複数の燃料ガス流路11(貫通孔)が、形成されている。具体的には、複数の燃料ガス流路11が、y軸方向(幅方向)に所定の間隔を隔てて形成されている。また、各燃料ガス流路11は、x軸方向(長手方向)に延びている。各燃料ガス流路11は、各セル100の長手方向の両端部において開口している。
また、支持基板10には、緻密層例えば上述した固体電解質膜が、含まれる。ここでは、緻密層は、例えば上述した固体電解質膜から、構成されている。より具体的には、緻密層(固体電解質膜)は、発電素子部Aの内部から、発電素子部Aの外部に延び、支持基板10の外周部(外周面)を構成している。
【0038】
また、
図3に示すように、y軸方向(幅方向)において、各支持基板10の外寸W2が、開口側の1対の壁部212(後述する1対の第1壁部222)の外寸W1より大きくなるように、各支持基板10は形成されている。
【0039】
各支持基板10は、マニホールド200に配置される。詳細には、各支持基板10は、マニホールド200の蓋部220に配置される。より詳細には、各支持基板10は、接合材300(後述する)を介して、蓋部220のセル挿入孔221(後述する)に、配置される。これにより、各支持基板10は、セル挿入孔221に挿入され、接合材300によって蓋部220に接合される。
【0040】
このように、各支持基板10が、蓋部220に設けられた状態において、各セル100の両端部100aすなわち各支持基板10の両端部は、鍔部213例えば支持部213a(後述する)に、接触する。
【0041】
上記のような構成を有する各支持基板10は、
図1に示すように、z軸方向に互いに間隔を隔てて並べて配置される。各支持基板10のx軸方向(長手方向)において燃料ガスが流入する側の各支持基板10の端部(流入側端部)は、固定端となっている。また、各支持基板10のx軸方向(長手方向)において燃料ガスが排出される側の端部(排出側端部)は、自由端となっている。各支持基板10の流入側端部は、接合材300(後述する)によって、マニホールド200に接合される。
【0042】
<マニホールド>
マニホールド200は、複数のセル100それぞれに燃料ガスを供給するためのものである。
図1及び
図3に示すように、マニホールド200は、本体部210と、蓋部220とを、有している。
【0043】
本体部210は、金属例えばステンレス鋼等から、構成されている。本体部210は、1枚の板部材から形成される。具体的には、本体部210は、プレス加工によって、1枚の板部材から成型される。
【0044】
図4に示すように、本体部210は、底部211と、壁部212と、鍔部213とを、有している。底部211と壁部212と鍔部213(後述する第2湾曲部213b)とによって、x軸方向(上方)に向けて開口する開口部が、形成される。底部211は、実質的に矩形板状に形成されている。底部211の外周部には、壁部212が一体に形成されている。言い換えると、底部211の外周部には、壁部212が連続的に形成されている。
【0045】
図4及び
図6に示すように、壁部212は、底部211の外周部を取り囲むように、底部211の外周部に一体に形成されている。壁部212は、壁本体部212aと、第1湾曲部212bとを、有している。壁本体部212aは、蓋部220と底部211との間に、配置される。壁本体部212aは、底部211の外周部に沿い且つx軸方向に延びるように、構成されている。すなわち、壁本体部212aは、底部211の外周部に沿った周方向P(
図6を参照)に、連続的に形成されている。
【0046】
図4及び
図6に示すように、壁本体部212aの内周面212cは、連続的に構成されている。内周面212cは、底部211の外周部に沿った周方向Pにおいて、壁本体部212aの内面を連続的に形成する。例えば、
図6に示すように、壁本体部212aの4個の隅角部は、曲線によって形成される。これにより、連続面は、周方向に閉じる面から、構成される。
【0047】
図4に示すように、第1湾曲部212bは、湾曲しており、壁本体部212aと底部211とを、連結する。詳細には、第1湾曲部212bは、底部211の外周部から湾曲しながら壁本体部212aに向けて延び、壁本体部212aに接続されている。第1湾曲部212bの内側面及び外側面はR形状である。なお、第1湾曲部212bの内側面とは、マニホールド200の内部空間を臨む面であり、第1湾曲部212bの外側面とは、マニホールド200の外部を臨む面である。ここでは、第1湾曲部212bの内面の第1曲率半径R1が、例えば1.0以上且つ10mm以下の範囲になるように、第1湾曲部212bは形成されている。
【0048】
第1湾曲部212bは、壁本体部212aと底部211とに、一体に形成されている。詳細には、第1湾曲部212bは、底部211側の壁本体部212aに一体に形成され、且つ底部211の外周部に一体に形成されている。すなわち、
図6に示すように、第1湾曲部212bは、底部211側の壁本体部212aにおいて周方向Pに沿い且つ底部211の外周部を取り囲むように、壁本体部212aと底部211とに連続的に形成されている。
【0049】
図4及び
図6に示すように、第1湾曲部212bの内面には、第1連続面212dが形成される。第1連続面212dは、底部211の外周部に沿った周方向Pにおいて、第1湾曲部212bの内面を連続的に形成する。例えば、xy断面(又はxz断面)において上記の第1曲率半径R1を有する曲線を、周方向に連続的に形成することによって、第1連続面212dが形成される。これにより、第1連続面212dは、周方向に閉じる面から、構成される。
【0050】
図4及び
図6に示すように、上述した壁部212(壁本体部212a及び第1湾曲部212b)は、1対の第1壁部222(1対の壁部の一例)と、1対の第2壁部223(
図6を参照)とから、構成されている。ここで、1対の第1壁部222は、壁本体部212a及び第1湾曲部212bに含まれる。また、1対の第2壁部223は、壁本体部212a及び第1湾曲部212bに含まれる。
【0051】
図4に示すように、1対の第1壁部222は、底部211の外周部からx軸方向(高さ方向)に延び、且つy軸方向(幅方向)において互いに対向している。また、開口側の第1壁部222、例えば第1壁部222の開口端222aは、各セル100と底部211との間に、配置される。
【0052】
詳細には、第1壁部222の開口端222aは、x軸方向において、各セル100の両端部100aと底部211との間に、配置される。また、スタック構造体1をx軸方向に見た場合に、第1壁部222の開口端222aの少なくとも一部が、各セル100における両端部100a側の燃料ガス流路11の内部に配置される。例えば、スタック構造体1をx軸方向に見た場合に、第1壁部222の開口端222aの内面が、各セル100における端部100a側の燃料ガス流路11の内部に、配置される。
【0053】
ここでは、
図3及び
図4に示すように、y軸方向(マニホールド200の幅方向・セル100の幅方向)において、1対の第1壁部222の開口端222aにおける外寸W1が、セル100の外寸W2(支持基板10の外寸)より小さくなるように、1対の第1壁部222は形成されている。これにより、1対の第1壁部222の開口端222aの外面は、セル100の1対の側面100bの間に、配置される。なお、第1壁部222の開口端222aは、鍔部213が湾曲を開始する部分に対応している。
【0054】
また、
図3に示すように、1対の第1壁部222それぞれの外面を含む平面Hが、各セル100に交わるように、第1壁部222は構成されている。詳細には、この平面Hが、y軸方向における各セル100(各支持基板10)の両端部100aに交わるように、1対の第1壁部222が形成されている。
【0055】
図1及び
図6に示すように、1対の第2壁部223は、底部211の外周部からx軸方向(高さ方向)に延び、且つz軸方向(長手方向)において互いに対向している。第2壁部223は、底部211の外周部に沿った周方向P(
図6を参照)において、第1壁部222と一体に形成されている。すなわち、第1壁部222及び第2壁部223は、周方向に連続的に形成されている。
【0056】
なお、開口側の1対の第2壁部223は、鍔部213が湾曲を開始する部分に対応している。以下では、開口側の1対の第2壁部223それぞれを、第2壁部223の開口端と記す。
【0057】
第1壁部222と第2壁部223との境界部224の内側面及び外側面は、R形状である。この境界部224の内側面及び外側面の曲率半径は、3〜30mm程度とすることができる。なお、境界部224の内側面とは、マニホールド200の内部空間を臨む面であり、境界部224の外側面とは、マニホールド200の外側を臨む面である。
【0058】
図4に示すように、鍔部213は、壁部212に設けられる。鍔部213は、壁部212から外方に延びている。鍔部213は、蓋部220を支持可能に構成されている。また、鍔部213は、各セル100を支持可能に構成されている。
【0059】
具体的には、
図4及び
図6に示すように、鍔部213は、支持部213aと、第2湾曲部213bとを、有している。支持部213aは、蓋部220及び各セル100(支持基板10)を支持する。支持部213aは、第2湾曲部213bに一体に形成される。詳細には、支持部213aは、第2湾曲部213bを取り囲むように、第2湾曲部213bと連続的に形成されている。支持部213aは、第2湾曲部213bから外方に延び、実質的に板状に形成されている。
【0060】
図4に示すように、第2湾曲部213bは、湾曲しており、支持部213aと壁部212とを連結する。詳細には、第2湾曲部213bは、壁部212の開口端212e(第1壁部222の開口端222a及び第2壁部223の開口端)から湾曲しながら外方に延び、支持部213aに接続されている。例えば、第2湾曲部213bは、壁部212の開口端212eから湾曲しながら、各セル100の両端部100aに向けて延び、支持部213aに接続されている。ここでは、第2湾曲部213bの内面の第2曲率半径R2が、例えば1.0mm以上且つ8.0mm以下の範囲になるように、第2湾曲部213bは形成されている。
【0061】
図4及び
図6に示すように、第2湾曲部213bは、支持部213aと壁部212とに、一体に形成されている。詳細には、第2湾曲部213bは、支持部213aの内周部に一体に形成され、且つ壁部212の開口端212eに一体に形成されている。より詳細には、第2湾曲部213bは、支持部213aの内周部において周方向Pに沿い且つ壁部212の開口端212eを取り囲むように、支持部213a及び壁部212に連続的に形成されている。
【0062】
図4及び
図6に示すように、第2湾曲部213bの内面には、第2連続面213cが形成される。第2連続面213cは、壁部212の開口端212eに沿った周方向(又は底部211の外周部に沿った周方向P)において、第2湾曲部213bの内面を連続的に形成する。例えば、xy断面(又はxz断面)において上記の第2曲率半径R2を有する曲線を、周方向に連続的に形成することによって、第2連続面213cが形成される。これにより、第2連続面は、周方向に閉じる面から、構成される。
【0063】
蓋部220は、本体部210と同じ材質から、構成されている。例えば、蓋部220は、金属例えばステンレス鋼等から、構成されている。
図3及び
図4に示すように、蓋部220は、本体部210に配置される。具体的には、蓋部220は、本体部210の鍔部213に配置される。より具体的には、蓋部220は、鍔部213の支持部213aに配置される。そして、蓋部220が、固定手段例えば溶接により、鍔部213の支持部213aに接合される。
【0064】
詳細には、
図4及び
図5に示すように、蓋部220は、接合部320と、空間形成部321と、少なくとも1つの連結部322とを、有している。
【0065】
接合部320は、本体部210の鍔部213に接合される部分である。接合部320は、蓋部220の外周部に設けられている。
【0066】
具体的には、接合部320は、鍔部213の外周部、例えば支持部213aに、接触可能に構成されている。より具体的には、接合部320は、実質的に鍔状に形成されている。接合部320は、複数のセル100の外方において、鍔部213の外周部例えば支持部213aに、配置される。そして、接合部320は、上述した固定手段例えば溶接により、鍔部213の外周縁例えば支持部213aの外周縁に、接合される。
【0067】
これにより、本体部210の開口部が、蓋部220によって塞がれ、本体部210に蓋部220が固定される。この状態において、
図4に示すように、蓋部220及び鍔部213の間には、温度の伝達を緩和するための緩和空間S2(後述する)が、設けられる。
【0068】
図4及び
図5に示すように、空間形成部321は、接合部320から各セル100に向けて延びる部分である。空間形成部321及び鍔部213の間には、緩和空間S2が形成される。詳細には、空間形成部321及び鍔部213の支持部213aの間には、緩和空間S2が形成される。ここでは、緩和空間S2は、空間形成部321、鍔部213の支持部213a、及び複数のセル100によって囲まれた空間である。この緩和空間S2によって、蓋部220から本体部210への温度の伝達が、緩和される。なお、隣接するセル100の間には連結部322が配置されており(
図5を参照)、隣接するセル100の流入側端部及び連結部322の間の空間を、緩和空間S2に含んでもよい。
【0069】
図4及び
図5に示すように、空間形成部321は、接合部320に設けられている。空間形成部321は、鍔部213から離れた状態で、接合部320から各セル100に向けて延びるように、接合部320に一体に形成されている。具体的には、x軸方向(高さ方向)において、セル100側の空間形成部321及び鍔部213の間の距離LMが、接合部320側の空間形成部321及び鍔部213の間の距離LSより大きくなるように、空間形成部321は接合部320に一体に形成されている。
【0070】
ここでは、例えば、空間形成部321が接合部320に接続する部分すなわち空間形成部321の基端部321aでは、x軸方向において、空間形成部321及び鍔部213の支持部213aの間の距離は、実質的にゼロである。そして、空間形成部321の基端部321aからセル100に向かうにつれて、空間形成部321及び鍔部213の支持部213aの間の距離LSは、徐々に大きくなる。そして、空間形成部321がセルに接合される部分すなわち空間形成部321の先端部321bでは、x軸方向において、空間形成部321及び鍔部213の支持部213aの間の距離LMは、最大である。ここでは、距離LMは、例えば0.1mm以上に設定されている。
【0071】
また、
図4及び
図5に示すように、空間形成部321は、鍔部213から離れた状態で、複数のセル100を取り囲むように、接合部320に一体に形成されている。具体的には、空間形成部321は、鍔部213から離れた状態で、接合部320の内周部に沿った周方向(又は底部211の外周部に沿った周方向P;
図6を参照)において、複数のセル100を取り囲むように、連続的に形成されている。なお、空間形成部321の先端部321bは、複数のセル100に近接し、接合材300(後述する)によって、各セル100に接合される。
【0072】
このように構成することによって、接合部320及び複数のセル100の間、且つ空間形成部321及び鍔部213の支持部213aの間には、上記の緩和空間S2が形成される。
【0073】
図5に示すように、少なくとも1つの連結部322、例えば複数の連結部322は、空間形成部321において複数のセル100を取り囲む部分、すなわち空間形成部321の先端部321b(内周部)に、一体に形成される。
【0074】
具体的には、複数の連結部322それぞれは、y軸方向(マニホールド200の幅方向・セル100の幅方向)において、空間形成部321の先端部321b(内周部)を連結する。また、複数の連結部322それぞれは、z軸方向(長手方向)において互いに間隔を隔てて配置される。このように複数の連結部322を空間形成部321の先端部321b(内周部)に形成することによって、セル挿入孔221(後述する)が形成される。
【0075】
上記のように蓋部220が構成され、この蓋部220が本体部210の開口部を塞ぐことによって、マニホールド200には、内部空間S1が形成される(
図4を参照)。すなわち、内部空間S1は、本体部210(底部211、壁部212、及び鍔部213)と蓋部220とによって、構成される。内部空間S1には、燃料ガスが導入される。
【0076】
燃料ガスは、導入管230(
図1を参照)を介して、外部から内部空間S1に導入される。導入管230は、金属例えばステンレス鋼等から、構成されている。導入管230は、マニホールド200の本体部210に、接合・固定されている。
【0077】
上記の構成を有するマニホールド200は、複数のセル100(支持基板10)を支持する。
図3に示すように、マニホールド200の蓋部220には、上述したように、複数のセル挿入孔221が、形成されている。各セル挿入孔221は、マニホールド200の外側(外部空間)と内部空間S1とを連通するように、蓋部220をx軸方向(高さ方向)に貫通している。また、各セル挿入孔221は、z軸方向(長手方向)に所定の間隔を隔てて形成されている。
【0078】
各セル挿入孔221をマニホールド200の外側(外部空間側)から見た場合(x軸に沿って見た場合)、各セル挿入孔221は、一方向に長く形成され、且つ両端部が円弧状に形成されている。
【0079】
ここでは、y軸方向(各セルの挿入孔221の長手方向)における各セル挿入孔221の内寸A1が、1対の第1壁部222の開口端222aにおける外寸W1より大きくなるように、各セル挿入孔221が形成されている。また、各セル挿入孔221の内寸A1が、各セル100の外寸W2(各支持基板10の外寸)より大きくなるように、各セル挿入孔221が形成されている。
【0080】
各セル挿入孔221には、各セル100(支持基板10)が配置される。詳細には、各セル100の燃料ガス流路11が内部空間S1に連通するように、各セル挿入孔221には、各セル100の支持基板10の流入側端部が、挿入される。ここで、各セル100の両端部100aすなわち各支持基板10の両端部は、マニホールド200における本体部210の鍔部213(支持部213a)に、接触させる。そして、各セル100及びセル挿入孔221の間には、接合材300が充填される(
図3及び
図4を参照)。これにより、各セル100の両端部100aすなわち各支持基板10の両端部は、マニホールド200における本体部210の鍔部213(支持部213a)に、接触し支持される。
なお、
図3及び
図4では、接合材300が、本体部210の鍔部213に接触するように表現されているが、接合材300と鍔部213との間には、隙間が形成されていてもよい。
【0081】
接合材300は、例えば、結晶化ガラスで構成される。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO
2−B
2O
3系、SiO
2−CaO系、MgO−B
2O
3系、又はSiO
2−MgO系のものが、用いられる。なお、結晶化ガラスとしては、SiO
2−MgO系のものが最も好ましい。
【0082】
ここで用いられる結晶化ガラスは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、且つ全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスである。なお、接合材300の材料として、非晶質ガラス、ろう材、セラミックス等が採用されてもよい。
【0083】
接合材300は、マニホールド200の内部空間S1の燃料ガスと、マニホールド200及び複数のセル100の外側の外部空間の空気との混合を、防止する。具体的には、接合材300は、マニホールド200と各セル100との間の隙間に配置され、マニホールド200と各セル100とを接合する。これにより、接合材300は、内部空間S1(燃料ガスに曝される空間)と外部空間(空気に曝される空間)とを区画する。すなわち、接合材300は、シール材として機能する。
【0084】
<スタック構造体の動作>
上記のスタック構造体1は、例えば、次のように動作する。スタック構造体1では、高温(例えば、600〜800℃)の燃料ガス(水素ガス等)が、導入管230からマニホールド200の内部空間S1へと導入される。すると、この燃料ガスが、各セル100の燃料ガス流路11に導入される。そして、燃料ガスが燃料ガス流路11を通過すると、燃料ガス流路11の排出側端部の排出口から外部へと排出される。一方で、空気(酸素を含むガス等)が、隣接するセル100間の空間において、セル100のy軸方向(支持基板10のy軸方向(幅方向)に、通過する。
【0085】
このように燃料ガス及び空気を移動させることによって、各発電素子部Aでは、酸素分圧差すなわち電位差が、固体電解質膜の表裏面間に生じる。この状態で、セル100が外部の負荷に電気的に接続されると、下記(1)、(2)式に示す化学反応が起こる。これにより、セル100内にて電流が流れ、発電状態となる。この発電状態において、セル100から電力が取り出される。
【0086】
(1/2)・O
2+2e
−→O
2− (於:空気極) …(1)
H
2+O
2−→H
2O+2e
− (於:燃料極) …(2)
【0087】
<まとめ>
上記実施形態は、下記のように表現可能である。
【0088】
(1)マニホールド200は、セル100に燃料ガスを供給するためのものである。マニホールド200は、本体部210と、蓋部220とを、備える。本体部210は、底部211と、壁部212と、鍔部213とを、有する。壁部212は、底部211の外周部から延びる。鍔部213は、開口側の壁部212に設けられる。蓋部220には、セル100が配置される。蓋部220は、鍔部213に接合される。ここで、蓋部220及び鍔部213の間には、緩和空間S2が設けられている。
【0089】
マニホールド200では、セル100まわり(蓋部220の上方)の高温領域の温度が、蓋部220及び本体部210の鍔部213の間の緩和空間S2によって、鍔部213から本体部210へと直接的に伝達されにくい。このため、マニホールド200では、本体部210が高温になりにくく、本体部210にクリープ変形が生じにくい。すなわち、マニホールド200では、クリープ変形を抑制することができる。
【0090】
(2)マニホールド200では、蓋部220の外周部が、鍔部213に接合されることが好ましい。この場合、蓋部220の外周部及びセル100の間、且つ蓋部220及び鍔部213の間には、緩和空間S2が設けられる。このように構成することによって、クリープ変形を効果的に抑制することができる。
【0091】
(3)マニホールド200では、蓋部220が、接合部320と、空間形成部321とを、有することが好ましい。蓋部220の接合部320は、鍔部213に接合される。蓋部220の空間形成部321は、蓋部220の接合部320からセル100に向けて延びる。蓋部220の空間形成部321及び鍔部213の間には、緩和空間S2が形成される。このように構成することによって、クリープ変形を効果的に抑制することができる。
【0092】
(4)マニホールド200では、セル100側における蓋部220の空間形成部321及び鍔部213の間の距離LMが、蓋部220の接合部320側における蓋部220の空間形成部321及び鍔部213の間の距離LSより、大きいことが好ましい。この場合、上記の緩和空間S2を拡大することができるので、クリープ変形をより効果的に抑制することができる。
【0093】
(5)マニホールド200では、蓋部220の空間形成部321及び鍔部213の間の距離が、実質的に一定であることが好ましい。この場合、蓋部220をシンプルに構成でき、且つクリープ変形を抑制することができる。
【0094】
(6)マニホールド200では、セル100が、蓋部220に挿通され、鍔部213に支持されることが好ましい。これにより、セル100を安定的に支持することができる。
【0095】
(7)マニホールド200では、セル100が、蓋部220に配置され、蓋部220に支持されることが好ましい。このように構成しても、クリープ変形を抑制することができる。
【0096】
(8)燃料電池のスタック構造体は、上記の(1)から(7)のいずれかのマニホールド200と、マニホールド200から燃料ガスが供給されるセル100とを、備える。スタック構造体は、上記の(1)から(7)のいずれかのマニホールド200を、備えているので、上記と同様の効果を得ることができる。また、スタック構造体を、安定的に動作させることができる。
【0097】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0098】
(A)前記実施形態では、セル100側の空間形成部321及び鍔部213の間の距離LMが、接合部320側の空間形成部321及び鍔部213の間の距離LSより大きい場合の例を、示した。
【0099】
これに代えて、
図7に示すように、空間形成部321及び鍔部213の間の距離LMが、実質的に一定であってもよい。この場合、蓋部220は、例えば、実質的に板状に形成される。また、蓋部220の空間形成部321が鍔部213の支持部213aから離れた状態で、蓋部220の外周部例えば蓋部220の外周縁(接合部320)が、固定手段例えば溶接により、鍔部213の支持部213aの外周縁に、接合される。このように構成しても、上記の効果と同様の効果を得ることができる。
【0100】
(B)前記実施形態では、各セル100が鍔部213の支持部213aに支持される場合の例を示した。これに代えて、各セル100が蓋部220に支持されるようにしてもよい。また、他の実施形態(A)の構成において、各セル100が蓋部220に支持されるようにしてもよい。このように構成しても、上記の効果と同様の効果を得ることができる。
【0101】
(C)前記実施形態では、緩和空間S2が、空間形成部321及び鍔部213(支持部213a)の間において、全体的に形成される場合の例を示した。これに代えて、
図8A及び
図8Bに示すように、緩和空間S2を、空間形成部321及び鍔部213(支持部213a)の間において、部分的に形成されるようにしてもよい。この場合、空間形成部321において緩和空間S2が形成される部分は、例えば、プレス加工又は切削加工によって形成される。この部分は、接合部320の内周部に沿った周方向(又は底部211の外周部に沿った周方向P;
図6を参照)において、連続的に形成されていてもよいし断続的に形成されていてもよい。このように構成しても、上記の効果と同様の効果を得ることができる。
【0102】
また、このように構成した場合、高温下において本体部210が熱膨張した場合、蓋部220の空間形成部321において緩和空間S2が形成される部分が、本体部210の変形に追随して変形することができる。このため、蓋部220及び各セル100の境界、例えば接合材300に、応力集中が発生しづらい。すなわち、接合材300にクラックが発生しづらい。これにより、各セル100をマニホールド200によって安定的に支持することができる。
【0103】
(D)前記実施形態では、空間形成部321の先端部321bにおける空間形成部321及び鍔部213の間の距離LMが、最大となる場合の例を示した。これに代えて、空間形成部321及び鍔部213の間の距離が最大となる位置は、セル100側であれば、前記実施形態に限定されず、どの位置であってもよい。例えば、空間形成部321の基端部321a及び空間形成部321の先端部321bの間において、距離が最大となるように、空間形成部321を形成してもよい。
【0104】
(E)前記実施形態では、壁部212(壁本体部212a)が、底部211から高さ方向(x軸方向)に向かって延びる場合の例を示したが、壁部212(壁本体部212a)が延びる方向は、前記実施形態に限定されない。
【0105】
例えば、
図9に示すように、壁部212(壁本体部212a)が、底部211に対して傾斜するように、マニホールド200を構成してもよい。すなわち、第1壁部222及び第2壁部223は、上方に向かって外方に広がるように傾斜されていてもよい。特に限定されるものではないが、例えば、第1壁部222及び第2壁部223と、底部211とがなす角度αは、90.1〜135°程度とすることができる。このように第1壁部222及び第2壁部223が傾斜しているため、マニホールド200の内部空間を底部211と平行な面(yz平面)で切断した断面積は、上方にいくにつれて大きくなる。また、マニホールド20の内部空間を、底部211に垂直で幅方向(y軸方向)に延びる面(xy平面)で切断した断面は、台形状となっている。また、マニホールド20の内部空間を、底部211に垂直で奥行方向(z軸方向)に延びる面(xz平面)で切断した断面は、台形状となっている。
【解決手段】マニホールド200は、本体部210と、蓋部220とを、備える。本体部210は、底部211と、壁部212と、鍔部213とを、有する。壁部212は、底部211の外周部から延びる。鍔部213は、開口側の壁部212に設けられる。蓋部220には、セル100が配置される。蓋部220は、鍔部213に接合される。ここで、蓋部220及び鍔部213の間には、緩和空間S2が設けられている。