【実施例】
【0023】
図1および
図2において、10はこの発明の実施例1に係る障害者支援施設(移動式建物、以下、支援施設)である。この支援施設10は、多数の障害者が共同して居住するドーム型の障害者支援施設で、事務室および調理室、食堂などが配設された平屋の管理棟(母屋)11に対して、渡り廊下12を介して繋がっている。支援施設10は、主に、基礎13と、基礎13に固定柱14を介して固定された円形の屋根15と、屋根15の中央部の下方に配置された円形の中央ホール16と、屋根15に覆われた状態で、中央ホール16の
外周りに円環形状に配置された移動建造部17と、移動建造部17の
外周りに設けられた円環形状で避難用のテラス18と、中央ホール16と移動建造部17との床下に形成されたピット19と、移動建造部17を、中央ホール16の中心線を中心として水平面内で90°
ごとに回転(回動)させる回転手段(建造部移動手段)20とを備えている。
【0024】
以下、これらの構成体を具体的に説明する。
図2および
図3に示すように、渡り廊下12は、その支援施設10側の端部がテラス18の一部分に挿入され、移動建造部17の後述する十字配置(90°配置)された廊下21と連通可能に構成されている。移動建造部17の外周壁22の外面の上部には、渡り廊下12の軒先から雨樋に落ちた雨水が、移動建造部17の廊下21の出入口の中に入り込まないように、円環ひさし形状の雨水侵入防止カバーが周設されている。4つの廊下21をそれぞれ90°配置したため、移動建造部17を90°回転させた時、回転前に渡り廊下12と連通した廊下21を基準として、回転方向とは反対側に配置された次の廊下21を渡り廊下12に連通させることができ、これにより回転後も支援施設10と管理棟11との間での居住者の出入りに支障がない。しかも、90°配置された各廊下21のドアを開放状態としておけば、屋外と中央ホール16との風通しが良くなり、中央ホール16の換気性が高まる。
【0025】
図4〜
図7に示すように、基礎13は、平面視して円形の本体部24と、本体部24の上面に一体形成され、かつピット19を区画する隔壁部25とが一体形成されたものである。隔壁部25は、本体部24Aの中央部上に立設された平面視して正方形の内周隔壁26と、本体部24Aの外周部に立設された平面視して正十二角形の外周隔壁27と、内周隔壁26と外周隔壁27との間に配置され、かつ中央ホール16の中心線(基礎13の中心線)を中心とした2本の同心円上に立設された平面視して円形の内レール用基台壁28および外レール用基台壁29とを有している。内レール用基台壁28の上面には、平面視して内レール用基台壁28と同一直径の円環形状となるように曲げられ、かつ後述する内レール78の取り付け架台となる内下側H型鋼24が固定されている。また、外レール用基台壁29の上面には、平面視して外レール用基台壁29と同一直径の円環形状となるように曲げられ、かつ後述する外レール79の取り付け架台となる外下側H型鋼30が固定されている。
【0026】
このうち、内レール用基台壁28より内側の空間が後述する中央ピット19Aとなり、また内レール用基台壁28と外レール用基台壁29との
間の空間が、後述する外周ピット19Bとなり、さらに外周隔壁27と外レール用基台壁29との間上にテラス18が配置される。また、内レール用基台壁28と外周隔壁27との間には、外周ピット19Bをその周方向に十二等分する12枚の放射隔壁31が配設されている。このうち、内周隔壁26の対角線の延長上に配置された4枚の放射隔壁31は、基礎13の中央に向かって延長されて、その中央部で一体的に連結されている。これらの放射隔壁31は高さが低く、移動建造部17の床板32との間に、作業者が通れるほどの空間が形成されている。
【0027】
図1〜
図3に示すように、中央ホール16は、リビング、食堂、レクレーション室などとして利用される。中央ホール16の上端部は、移動建造部17より上方に突出している。この突出部分には、採光用の多数個の窓16aが、中央ホール16の周方向に向かって所定ピッチで配設されている。
屋根15は、このように中央ホール16の上端部を突出させたため、中央ホール16を覆う中央屋根15Aと、これより下段配置されて移動建造部17を覆う外周屋根15Bとから構成されている。外周屋根15Bと移動建造部17とは分離(非固定)している。中央屋根15Aの中央部には、太陽光を中央ホール16内へ導く平面視して円形の採光部33を設けている。また、外周屋根15Bは、その内周部が、中央ホール16の外周壁22と、中央ホール16の周方向に所定ピッチで立設された多数本の固定柱14の上部とに固定されている。さらに、外周屋根15Bの外周部は、テラス18の外周部に、その周方向に向かって所定ピッチで立設された複数本の別の固定柱14Aによって支持されている。
【0028】
図3〜
図5、
図7に示すように、移動建造部17の内部空間は、平面視して二十四等分されている。そのうちの平面視して90°配置された4つの部分空間が、中央ホール16とテラス18とを連通する廊下21となり、残りの20の部分空間が居室(部屋)34となっている。これらの廊下21および居室34は、それぞれ仕切り板35を介して分割されている。
また、移動建造部17は、中央ホール16の中心線を中心とした2本の同心円と、中央ホール16の中心線を中心として移動建造部17の周方向に15°ピッチで引かれた24本の放射線とが、移動建造部17の直径に対して線対象で交わる位置に、複数本(24×2=48本)の移動柱36がそれぞれ立設されている。具体的には、各廊下21および各居室34の四隅に移動柱36が1本ずつ配設されている。各移動柱36は、その下端部が、移動建造部17の床板32を貫通し、外周ピット19Bの上部空間まで延出されている。これらの移動柱36のうち、中央ホール16側に配置される各移動柱36の下端には、前記内下側H型鋼24と同一形状を有した内上側H型鋼37の上フランジの上面の一部が、内上側H型鋼37の周方向に向かって15°ピッチで固定されている。また、テラス18側に配置される各移動柱36の下端には、前記外下側H型鋼30と同一形状を有した外上側H型鋼38の上フランジの上面の一部が、外上側H型鋼38の周方向に向かって15°ピッチで固定されている。
【0029】
図3、
図5、
図8に示すように、各居室34は2人居室であり、それぞれ2台のベッド39と、洗面台40と、エアコン41と、テレビ、電気ポットなどの各種の家電製品を利用するためのコンセントが配設されている。各居室34の内周壁(中央ホール16側の壁)43には、中央ホール16への出入り用のドア44が設けられ、移動建造部17の外周壁22の一部を構成する各居室34の外周壁45には、テラス18への出入りが可能な大型の窓(出入口)46が形成されている。また、緊急避難時には、この窓46を通して、居室34からテラス18へ居住者が屋外退避することができる。エアコン41はその室外機47が各居室34の外周壁45の上部に形成された凹部48に収納されている。これにより、移動建造部17が回転する際には、室外機47も含めて回転するため、移動建造部17に配備されたエアコン41であっても運転に支障がない。なお、重量物である各室外機47を所定の移動柱36の中心線上に配置すれば、移動建造部17の回転時の安定性を高めることができる。
また、移動建造部17と中央ホール16との
間の隙間(天井部分および床部分の隙間)、および、移動建造部17とテラス18との
間の隙間(天井部分および床部分の隙間)は、それぞれの空間の機密性を保つため、上下一対の円環形状のゴムカバー49によりそれぞれ塞がれている。
【0030】
図1、
図3〜
図5に示すように、ピット19は、中央ホール16の直下に形成された前記中央ピット19Aと、移動建造部17の直下に形成された前記外周ピット19Bとから構成されている。中央ピット19Aへの出入口51は、中央ホール16の床板32の一部に形成され、出入口51の直下には階段52が設けられている。また、外周ピット19Bへの出入口は、図示しないものの1つの廊下21に設けられている。
図3、
図9に示すように、ピット19には、後述する屋内配線53と、各居室34の洗面台40に連通した配管54とが配設されている。配管54は、管理棟11の配管と連通した主管55と、主管55から移動建造部17の各洗面台40に着脱自在に分岐されたフレキシブルチューブからなる20本の分岐管56とを有し、各主管55の分岐部分には電動弁57が配設されている。また、主管55と分岐管56との間には、切り離し時に切り離し信号を回転制御部74に送る管継確認スイッチ57Aが配設されている。移動建造部17の回転時、各電動弁57を閉じて分岐管56を主管55から取り外す。これにより、各電動弁57および管継確認スイッチ57Aから回転制御部74にそれぞれ対応する信号が送られる。また、移動建造部17の回転終了後には、各分岐管56を主管55に連通して各電動弁57を開く。
【0031】
次に、
図3を参照して、支援施設10のピット19に設けられた屋内配線53を具体的に説明する。
支援施設10の屋内配線53は、基礎13に固定された中央ホール16の電気機器に送電する床下配線58と、回転する移動建造部17に送電する建造部用配線59とから構成されている。
中央ホール16用の床下配線58は一般的な配線である。
また、建造部用配線59は、移動建造部17の床板32の外周部の裏面に平面視してC形状に配設された1本の空調用配線60と、移動建造部17の幅方向の中間部における床板32の裏面に平面視して円環形状に配設された1本のモータ電源用配線61と、移動建造部17の内周部の床板32の裏面に平面視して円環形状に配設された2本1組の設備用配線62とを有している。
【0032】
空調用配線60は、各居室34の外周壁45の上部に配設されたエアコン41と、居室用分岐配線63を介して各居室34の天井に配設された移報器64とが接続されている。空調用配線60は、設備用配線62と電気的に接続されている。
モータ電源用配線61は、移動建造部17の床板32の裏面に固定され、かつ中央ホール16の中心線を中心とした円環形状の本体ケーブル65と、この本体ケーブル65への電力の入力配線となり、かつ移動建造部17の回転方向につづれ織り状に伸縮可能なモータ用電源ケーブル66とを有している。
本体ケーブル65には、その周方向に向かって90°ごとに、前記回転手段20のうち、移動建造部17の周方向へ90°間隔で配設された4個の前記電動モータ(アクチュエータ)67が、それぞれプルボックス68を介して接続されている。各プルボックス68には、コネクタCを有する別の短尺な給電ケーブル69が接続されている。
【0033】
また、モータ用電源ケーブル66は、外周ピット19Bを平面視した際の4分の1部分(外周ピット19Bの管理棟11側の半分の空間)に配置されている。この4分の1部分の空間には、この空間の両端に配置された一対の放射隔壁31間に、中央ホール16の中心線を中心として円弧形状に湾曲したI型鋼からなるガイドレール70が水平配置されている。ガイドレール70には、多数のケーブルカッシャー71を介して、モータ用電源ケーブル66が、ガイドレール70の長さ方向に向かって伸縮可能なつづら折り状態で吊下されている。また、ガイドレール70の先端部付近には、モータ用電源ケーブル66の先端部が固定された最も先側に配置されたケーブルカッシャー71の当接を検出し、移動建造部17の回転を停止する回転リミットスイッチ72が配置されている。回転リミットスイッチ72は、中央ピット19Aの管理棟11側の端部に固定された電源切り替え盤73に、電線を介して電気的に接続されている。
【0034】
モータ用電源ケーブル66の元側および先側の各端部には、それぞれコネクタCが固定されている。そのうち、元側のコネクタCは、電源切り替え盤73から導出された短尺な給電ケーブル74AのコネクタCに接続されている。また、モータ用電源ケーブル66の先側のコネクタCは、4つの電動モータ67のうち、電源切り替え盤73に最も近い電動モータ67のプルボックス68から導出された前記短尺な別の給電ケーブル69のコネクタCに接続されている。対応する各コネクタCを接続することで、電源切り替え盤73から各電動モータ67への電力供給が可能になる。移動建造部17が回転することで、電動モータ67のプルボックス68も回転し、これに伴いモータ用電源ケーブル66が、ガイドレール70に沿って移動建造部17の回転方向に徐々に伸長して行く。
【0035】
前記2本1組の設備用配線62には、各廊下21との対向部分に、短尺なコイル状の分岐配線100を介して一対のプラグPがそれぞれ接続されている。各対のプラグPは、外周ピット19Bのうち、管理棟11側の廊下21との対向部分の床に固定された電源切り替え盤73のレセプタクルLに、着脱可能に接続されている。電源切り替え盤73には、移動建造部17の回転制御部74が設けられている。
図9、
図10に示すように、回転制御部74は、その入力部に、移動建造部17の左半分と右半分との各居室34の照明などに送電する左右一対の配電盤75と、各居室34のコンセントの使用検出センサ76と、後述する移動建造部17の回転駆動源となる4個のモータ電動モータ67の起動スイッチ77と、移動建造部17の回転リミットスイッチ72と、前記各電動弁57とがそれぞれ接続されている。また、回転制御部74の出力部には、4個の電動モータ67が接続されている。
【0036】
回転制御部74に対して、一対の配電盤75からの給電停止信号と、各居室34のコンセントの使用検出センサ76からの不使用信号と、回転リミットスイッチ72のオフ信号と、各電動弁57からの閉弁信号および管継確認スイッチ57Aから配管切り離し信号がすべて入力されたとき、回転制御部74からモータ起動スイッチ77に入力操作可能信号が送られ、その後、作業者がモータ起動スイッチ77を押すことで、4個の電動モータ67が同期駆動して移動建造部17が低速で回転する。移動建造部17が90°回転した時、回転リミットスイッチ72が前記先頭のケーブルカッシャー71に当接する。これにより、回転リミットスイッチ72がオン状態となり、回転制御部74から各電動モータ67に駆動停止信号が送信される。その結果、移動建造部17は、回転前の周方向の位置を基準とし、中央ホール16の中心線を中心として90°だけその周方向に向かって回転(回動)する。
【0037】
次に、
図1、
図3〜
図7、
図11〜
図15を参照して、前記回転手段20を詳細に説明する。
回転手段20は、基礎13の移動建造部17との対向部分に、中央ホール16の中心線を中心とした同心円と同一の同心円で配設された内レール(円環レール)78および外レール(円環レール)79と、複数本の移動柱36の直下に配設され、対応する内レール78上または外レール79上を転動し、かつ電動モータ67により回転する4個の駆動車輪80を含む合計48個の車輪81とを有している。したがって、従動側となる車輪81の総数は44個である。
図11〜
図13に示すように、従動用の各車輪81は、車輪81の走行方向に各回転軸82が水平状態で平行に離間した2個1組の耐圧ローラ83を、車輪81の走行方向に長い2枚の連結板84の間に横架した構造を有している。各耐圧ローラ83と回転軸81の中間部との間には、耐圧ローラ83を回転自在とするベアリング84Aを介在している。また、各連結板84の長さ方向の中間部には車輪用ブラケット85が固定されている。この車輪用ブラケット85を介して、対応する車輪81が、前記内上側H型鋼37および前記外上側H型鋼38の各下側フランジの下面のうち、対応する移動柱36の直下位置に配設された固定板86に、それぞれハイテンションボルトHを介して着脱自在に連結されている。
【0038】
図7、
図14、
図15に示すように、各駆動車輪80は、外上側H型鋼38の下側フランジの下面のうち、90°間隔で配置された4本の移動柱36の直下位置にそれぞれ固定される。各駆動車輪80は、駆動車輪80の走行方向に各駆動用回転軸87が水平状態で平行に離間した2個1組の駆動ローラ88を、駆動車輪80の走行方向に長い2枚の連結板89の間に横架した構造を有している。各連結板89と各駆動用回転軸87との間には、各駆動ローラ88に固定された各駆動用回転軸87を回転自在とするベアリング90が介在している。また、各連結板84の長さ方向の中間部には、駆動車輪用ブラケット91が固定されている。この駆動車輪用ブラケット91を介して、各駆動車輪80が、外上側H型鋼38の各下側フランジの下面のうち、90°間隔で配置された移動柱36の直下位置に配設された固定板86Aに、それぞれハイテンションボルトHを介して着脱自在に連結されている。
また、各駆動用回転軸87の中央ホール16側の端部は外方にそれぞれ延長され、各延長部分には、一対の変速機93が配設されている。各変速機93には、一対の電動モータ67が互いの出力軸を対向させて配設されている。
【0039】
内レール78は、前記内下側H型鋼24の上フランジの上面に固定されている。また、外レール79は、前記外下側H型鋼30の上フランジの上面に固定されている。
このうち、
図13に示すように、内レール78の長さ方向の一部は除かれており、この空間部分に、車輪81のメンテナンスを行う際に内レール78の本体部78aから取り外される1本の内側部分レール(部分レール)94が嵌め込まれている。具体的には、前記内下側H型鋼24の上フランジの上面に、ボルト96を介して、内側部分レール94が着脱自在に連結されている。また、
図14に示すように、外レール79の長さ方向の一部も除かれており、この空間部分に、車輪81のメンテナンスを行う際に外レール79の本体部79aから取り外される1本の外側部分レール(部分レール)95が嵌め込まれている。具体的には、前記外下側H型鋼30の上フランジの上面に、ボルト96を介して、外側部分レール95が着脱自在に連結されている。内側部分レール94および外側部分レール95の具体的な長さおよび高さは、駆動車輪80を含む車輪81のメンテナンス(新旧品の交換を含む)を支障なく行うことができる長さ100cm、高さ12.22cmである。また、作業者が内側部分レール94および外側部分レール95を外して駆動車輪80および車輪81のメンテナンスが容易なように、内レール78上での内側部分レール94の着脱位置と、外レール79上での外側部分レール95の着脱位置とを、移動建造部17の回転中心(中央ホール16の中心線)を中心とした同一の放射線上に配置している。
【0040】
図3において、符号97は移動建造部17の廊下21の一方の側壁内に形成された倉庫、符号98は中央ホール16の床板32の下方に所定間隔をあけて配設された合計8個の床下収納部である。なお、図示しないものの、移動建造部17の床板32の裏面には、移動建造部17の周方向に一定ピッチで複数個の上側連結部材が配設され、これらにボルト締結される複数個の下側連結部材が、基礎13の外周ピット内にその周方向に一定ピッチで配設されている。
【0041】
次に、
図1〜
図3を参照して、この発明の実施例1に係る支援施設10の利用方法を説明する。
支援施設10を利用する際には、あらかじめ上述した屋内配線53の電気的な接続と、各居室34の洗面台40に対する配管54の連通とが行われているため、各居室34において電気機器および洗面台40の使用が可能となる。すなわち、各居住者はそれぞれの居室34に入居することができる。
また、
図3〜
図7に示すように、移動建造部17の回転時(90°回転時)には、まず各居室34のコンセントから電気機器などのプラグを取り外し、居住者を含むすべての人間を支援施設10の外に退避させる。その後、作業者がピット19に入り、各電動弁57を閉弁し、管継確認スイッチ57Aを切り、各分岐管56を主管55から取り外す。その後、一対の配電盤75を給電オフ状態とする。さらに、各ケーブルカッシャー71をガイドレール70の元側(管理棟11側)の端部に移動させ、モータ用電源ケーブル66をこの元側に手繰り寄せる。次に、モータ用電源ケーブル66の両端部のコネクタCを、電源切り替え盤73の給電ケーブル75のコネクタCまたはプルボックス68の別の給電ケーブル69のコネクタCにそれぞれ接続する。
【0042】
以上の操作により、回転制御部74に対して、一対の配電盤75からの給電停止信号と、各居室34のコンセントからの不使用信号と、回転リミットスイッチ72のオフ信号と、各電動弁57からの閉弁信号とがそれぞれ入力される。これらの信号がすべて回転制御部74に入力されることで、移動建造部17の回転可能条件が満たされ、回転制御部74からモータ起動スイッチ77に入力操作可能信号が送られる。作業者は、この信号を確認後、モータ起動スイッチ77を入れることで、電源切り替え盤73からモータ電源用配線61を介して4個の電動モータ67に電力が供給される。これにより、各駆動車輪80が同期回転し、移動建造部17が中央ホール16の中心線を中心にして、内レール78および外レール79上に沿って低速で回転する。
【0043】
移動建造部17が90°回転した時、回転リミットスイッチ72がケーブルカッシャー71に当接する。これにより、回転リミットスイッチ72がオン状態となり、回転制御部74から各電動モータ67に駆動停止信号が送られ、移動建造部17は、回転前のその周方向の位置を基準として、中央ホール16の中心線を中心とした90°の回転(回動)を終了する。その後、図示しない各上側連結部材と各下側連結部材とを連結ボルトにより連結するとともに、モータ用電源ケーブル66の先端部のコネクタCを、プルボックス68の別の給電ケーブル69のコネクタCから外し、各ケーブルカッシャー71をガイドレール70の元側の端部に移動させて、モータ用電源ケーブル66を初期位置まで手繰り寄せ、次回の移動建造部17の回転のために備える。その後、上述した一連の回転操作を繰り返すことで、移動建造部17を180°、270°、360°…と90°ピッチで回転順次させることができる。
その後、各居室34のコンセントに電気機器などのプラグPを接続し、居住者などが支援施設10に戻り、作業者がピット19に入り、各電動弁57を開弁させ、各分岐管56を主管55に接続するとともに、一対の配電盤75を給電可能状態とする。
【0044】
次に、
図13、
図14に示すように、駆動車輪80を含む車輪81のメンテナンス方法について説明する。
図13に示すように、内レール78上を転動する車輪81のメンテナンス時には、まず内レール78の本体部78aから、ボルト96を外して1本の内側部分レール94を取り外す。この状態で、移動建造部17を中央ホール16の中心線を中心として所定角度だけ回転し、例えば交換が必要な車輪81を、内レール78の途中に現出した空間部分に配置する。次に、ハイテンションボルトHを外して、内上側H型鋼37の固定板86から車輪用ブラケット85とともに車輪81を取り外し、その後、新しい車輪81を取り付ける。
【0045】
また、
図14に示すように、外レール79上を転動する駆動車輪80および車輪81のメンテナンス時には、まず外レール79の本体部79aから、ボルト96を外して1本の外側部分レール95を取り外す。この状態で、移動建造部17を中央ホール16の中心線を中心にして所定角度だけ回転し、例えば交換が必要な駆動車輪80または車輪81を、外レール79の途中に現出した空間部分に配置する。次に、ハイテンションボルトHを外して、外上側H型鋼38の固定板86Aから駆動車輪用ブラケット91とともに駆動車輪80を取り外した後、新しい駆動車輪80を取り付けるか、車輪用ブラケット85とともに車輪81を取り外した後、新しい車輪81を取り付ける。これにより、駆動車輪80および車輪81のメンテナンスを円滑に行うことができる。
【0046】
以上のように、支援施設10を構成したため、支援施設10の各居室34の窓46からの景観に変化を与えることができるとともに、各居室34の日照時間を調整することができる。また、移動建造部17を屋根15に対して非固定状態としたため、移動建造部17は屋根15を伴わず単独で回転することができる。これにより、従来の移動式建物ように回転部分が屋根と一体的に回転する場合に比べて、回転駆動用の電動モータ67の低出力化が図れる。また、各移動柱36の直下に駆動車輪80を含む車輪81を配設したため、仮に移動柱36の直下から離反した位置に、駆動車輪80を含む車輪81を配置した場合に生じる、移動柱36からの離間距離に応じたモーメントが発生しない。これにより、駆動車輪80を含む車輪81は、移動建造部17の荷重のみに耐えられる、従来品より小型で低強度のものを採用することができる。そのため、回転手段20、ひいては支援施設10の小型化が図れるとともに、建造コストも抑えることができる。
【0047】
また、複数本(48本)の移動柱36を、円環形状の移動建造部17の屋内空間を周方向に等分割した居室34の四隅にそれぞれ移動柱36を立設し、これらの移動柱36を平面視して中央ホール16の中心点を中心とした2つの同心円上で、かつ周方向に一定ピッチで配置したため、移動建造部17の全体的な剛性が高まるとともに、移動建造部17の周方向での移動柱36の偏りがなく、移動建造部17の偏重を抑制して回転の安定性を高めることができる。
さらに、移動建造部17の
外周りに、屋根15により覆われた円環形状のテラス18を設け、各居室34の外周壁45に出入口となる窓46を設けたため、緊急時には窓46からテラス18に避難することができる。
さらにまた、回転制御部74によって、上述したように移動建造部17の回転を制御するようにしたため、回転制御部74の回転に伴う配管設備の破損防止が図れるとともに、電動弁57、管継ぎ手確認スイッチ57A、回転リミットスイッチ72、配電盤75およびコンセントの使用検出センサ76からの全ての安全確認信号が揃わなければ移動建造部17を回転させることができないように構成したため、移動建造部17を回転させた際の事故の発生を抑制することができる。特に、移動建造部17の1回の回転角度(回動角度)を90°としため、管理棟11との接続通路の確保が図れるとともに、設備配管の再連結が容易になる。
また、4個の駆動車輪80を外レール79のみに90°間隔で配設したため、移動建造部17の回転中心線に近い内レール78に駆動車輪80を設けた場合に比べて、小さい動力(出力)で移動建造部17を水平回転させることができる。そのため、各電動モータ67の小型化およびその使用個数を減らすことができる。
【0048】
次に、
図16を参照して、この発明の
参考例に係る移動式建物を説明する。
図16において、10Aはこの発明の
参考例に係る住宅(移動式建物)で、この住宅10Aは、屋根15Cを含む住宅全体が、平面視して横長な矩形状で、かつ水平方向に移動する移動建造部を構成しているとともに、実施例1の回転手段20に代わる建造部移動手段として、住宅10Aを水平方向に移動させる水平移動手段20Aを採用した点を特徴としている。
具体的には、平面視して
図16の前後(正背)方向に長い(横長な)矩形状の基礎13A上に、この横方向に直線状に延びた5本のレール100が平行な離間状態で配設され、駆動車輪80を含む複数個の車輪81が、住宅10Aの横方向に平行に延びた5本の土台101の下面に固定された5本の上側H型鋼104の下側のフランジのうち、各隅柱(移動柱)102および通し柱(移動柱)103の直下位置に固定されている。このうち、各駆動車輪80は、それぞれの上側H型鋼104の長さ方向の両端部に1個ずつ配設されている。
各電動モータ67を駆動することで5本のレール100上で各駆動車輪80が転動し、これに伴い、各車輪81が転動することで、住宅10Aを各レール100に沿って横方向に水平移動させることができる。その結果、住宅10Aの各部屋の窓からの景観に変化を与えることができる。
その他の構成、作用および効果は、実施例1から推測可能な範囲であるため、説明を省略する。