(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077247
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】静止形高圧自動電圧調整器
(51)【国際特許分類】
H02M 5/12 20060101AFI20170130BHJP
G05F 1/20 20060101ALI20170130BHJP
G05F 1/24 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
H02M5/12 B
G05F1/20
G05F1/24
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-208006(P2012-208006)
(22)【出願日】2012年9月21日
(65)【公開番号】特開2014-64388(P2014-64388A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年9月11日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行人:愛知電機技報編集会議、刊行物名:愛知電機技報、号数:No.33、発行年月日:平成24年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116666
【氏名又は名称】愛知電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】苻川 謙治
(72)【発明者】
【氏名】梶田 寛
(72)【発明者】
【氏名】高木 俊明
【審査官】
松尾 俊介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−061171(JP,A)
【文献】
特開昭61−206014(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00004462(EP,A1)
【文献】
特開2002−075630(JP,A)
【文献】
米国特許第06137277(US,A)
【文献】
符川譲治,外7名,新型三相静止型高圧自動電圧調整器(三相TVR)の開発,愛知電気技報,日本,愛知電機株式会社,2012年 3月23日,第7-12頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 5/12
G05F 1/20
G05F 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器、サイリスタ式タップ切換器、制御装置の各部で構成され、電圧調整変圧器の低圧回路側と、線路に対し直列に挿入した直列変圧器の低圧回路側を、前記サイリスタ式タップ切換器で結合し、配電線の電圧を予め設定してある基準電圧に調整するようサイリスタを切り換えて前記電圧調整変圧器のタップを切り換える静止形高圧自動電圧調整器において、前記直列変圧器の高圧巻線を内側に巻き、低圧巻線を外側に巻くことにより、低圧巻線が内側で高圧巻線が外側とした通常の巻線構造と比較して、当該直列変圧器の低圧巻線の空心インダクタンスを大きく設定することを特徴とする静止形高圧自動電圧調整器。
【請求項2】
変圧器、サイリスタ式タップ切換器、制御装置の各部で構成され、電圧調整変圧器の低圧回路側と、線路に対し直列に挿入した直列変圧器の低圧回路側を、前記サイリスタ式タップ切換器で結合し、配電線の電圧を予め設定してある基準電圧に調整するようサイリスタを切り換えて前記電圧調整変圧器のタップを切り換える静止形高圧自動電圧調整器において、前記直列変圧器の高圧巻線を内側に巻き、低圧巻線を外側に巻くことにより、低圧巻線が内側で高圧巻線が外側とした通常の巻線構造と比較して、当該直列変圧器の低圧巻線の空心インダクタンスを大きく設定するとともに、前記サイリスタを、常に電圧調整変圧器の励磁電圧のピーク時に投入するよう前記制御装置によって制御するように構成したことを特徴とする静止形高圧自動電圧調整器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電線に取り付けられる自動電圧調整器に関し、タップ切換時に発生する励磁突入電流を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーの大量導入が進められている。また、平成23年3月に発生した東北地方太平洋沖地震による電力供給不安から、国内の再生可能エネルギーへの転換の機運は更に高まってきた。
【0003】
一方で、再生可能エネルギーが配電系統に大量に連系されると、急激な電圧変動が発生する恐れがある。高圧配電系統では負荷時タップ切換変圧器や自動電圧調整器などで、適正電圧範囲内に収まるように制御されてはいるが、高圧配電系統への再生可能エネルギーの連系や家庭用太陽光発電等の大量導入に伴う急激な電圧変動への対応は難しい。
【0004】
そこで、近年、急激な電圧変動への対応が可能であり、電圧調整を高速かつ多頻度に行えるサイリスタ式の自動電圧調整器が注目されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3506808号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図2は、上記特許文献1記載の自動電圧調整器の1例を示したものであり、変圧器をV−V結線して構成したものである。具体的には、線路に直列に挿入した2つの直列変圧器2u,2wの二次巻線2su,2swの一端をU相,W相の電源側主回路端子TU,TWに接続し、二次巻線2su,2swの他端は主回路中継端子TU´,TW´に接続されている。
【0007】
直列変圧器2u,2wの1次巻線2pu,2pwはV結線され、各々が限流リアクトル6u〜6wを介して調整電圧入力端子tu〜twに接続されている。また、線間に挿入した2つの電圧調整用変圧器3u,3wの一次巻線3pu,3pwはV結線され、その三相の端子が第2の負荷側主回路端子Tu〜Twに接続されている。
【0008】
電圧調整用変圧器3u,3wの二次巻線3su,3swはそれぞれタップt1〜tnを有し、サイリスタ式タップ切換器4を介して三相の調整電圧出力端子tu´〜tw´に接続されている。前記サイリスタ式タップ切換器4は制御装置5によって制御される。
【0009】
ここで、サイリスタ式タップ切換器4によってタップt1〜tnを切り換える際、直列変圧器2u,2wの一次巻線2pu,2pwには、電圧調整用変圧器3su,3swのタップ電圧が印加される。
【0010】
この時、印加されるタップ電圧値と投入位相及び投入時の残留磁束によって、直列変圧器2u,2wの鉄心が飽和して一次巻線2pu,2pwが空心リアクトルと同じ状態となり、直列変圧器2pu,2pwの励磁インダクタンスが激減し、大きな励磁突入電流が流れるが、この電流は限流リアクトル6u〜6wによって確実に抑制される。
【0011】
しかし、通常、限流リアクトル6u〜6wは、高圧配電線の短絡事故による過電流が低圧側へ移行するのを直列変圧器の鉄心飽和で抑制するため、空心とする。したがって、限流リアクトルの外形や損失が増大するとともに、機器全体の外形や質量が増加するといった欠点がある。
【0012】
本発明は、上記欠点を解消しつつ励磁突入電流を効果的に抑制できる構成の静止形高圧自動電圧調整器を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の発明は、変圧器、サイリスタ式タップ切換器、制御装置の各部で構成され、電圧調整変圧器の低圧回路側と、線路に対し直列に挿入した直列変圧器の低圧回路側を、前記サイリスタ式タップ切換器で結合し、配電線の電圧を予め設定してある基準電圧に調整するようサイリスタを切り換えて前記電圧調整変圧器のタップを切り換える静止形高圧自動電圧調整器において、
前記直列変圧器の高圧巻線を内側に巻き、低圧巻線を外側に巻くことにより、低圧巻線が内側で高圧巻線が外側とした通常の巻線構造と比較して、当該直列変圧器の低圧巻線の空心インダクタンスを大きく設定したことを特徴とする。
【0015】
請求項
2記載の発明は、変圧器、サイリスタ式タップ切換器、制御装置の各部で構成され、電圧調整変圧器の低圧回路側と、線路に対し直列に挿入した直列変圧器の低圧回路側を、前記サイリスタ式タップ切換器で結合し、配電線の電圧を予め設定してある基準電圧に調整するようサイリスタを切り換えて前記電圧調整変圧器のタップを切り換える静止形高圧自動電圧調整器において、
前記直列変圧器の高圧巻線を内側に巻き、低圧巻線を外側に巻くことにより、低圧巻線が内側で高圧巻線が外側とした通常の巻線構造と比較して、当該直列変圧器の低圧巻線の空心インダクタンスを大きく設定するとともに、前記サイリスタを、常に電圧調整変圧器の励磁電圧のピーク時に投入するよう前記制御装置によって制御するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、直列変圧器の低圧巻線の空心インダクタンスを大きく設定することによって、限流リアクトルを省略しても励磁突入電流を効果的に抑制することが可能になる。
【0018】
請求項
2記載の発明によれば、直列変圧器の低圧巻線の空心インダクタンスを大きく設定するとともに、サイリスタを常に電圧調整変圧器の励磁電圧のピーク時に投入することによって、限流リアクトルを省略しても励磁突入電流を効果的に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の静止形高圧自動電圧調整器を示す回路図である。
【
図2】従来の静止形高圧自動電圧調整器を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について
図1を用いて説明する。
図1は本発明の静止形高圧自動電圧調整器Aを示す回路図である。
図1に示す自動電圧調整器Aは、変圧器の結線をV−星形結線としている。
【0021】
具体的には、電圧調整変圧器ETrの低圧回路側と、線路に直列に挿入した直列変圧器STrの低圧回路側をサイリスタ式タップ切換器で結合した間接切換方式であり、サイリスタ式タップ切換器は制御装置からのタップ切換信号によって所定のサイリスタ素子が投入/開放される。
【0022】
サイリスタ式タップ切換器は、タップ切換用サイリスタTh1〜Th6及び限流ヒューズと、ブリッジ用サイリスタThb及び変成器CTと、スナバ回路やサージ吸収器及びゲート駆動装置からなるGUユニットによって構成されており、制御装置は、電圧調整制御及び装置の外部・内部故障に対し保護制御を行う制御部と、該制御部からのタップ切換指令信号からサイリスタの組み合わせを選択するGA部及び電源部からなる制御・GAユニットと、自動電圧調整器Aの運転開始,停止時及び外部・内部故障保護動作時に前記制御部からの指令により電磁接触器MC1,MC2の開閉を行うMCユニットによって構成されている。
【0023】
そして、前記サイリスタ式タップ切換器と制御装置が制御箱内に収納され、本発明の自動電圧調整器Aは構成されている。
【0024】
以上のように構成した自動電圧調整器Aは、制御装置の制御部で取り込んだ電圧、電流要素をアナログ処理した後、A/D変換し、CPUによってデジタル演算処理を行うことにより、配電線の電圧を予め設定してある基準電圧に調整するよう、投入/開放するサイリスタの組み合わせを選択している。
【0025】
ここで、サイリスタを投入する際には、前述したように大きな励磁突入電流が流れる。本発明の自動電圧調整器Aはこれを抑制する限流リアクトルを省略しているが、直列変圧器STrの低圧巻線の空心インダクタンスを大きく設定することによって励磁突入電流を効果的に抑制している。
【0026】
具体的には、直列変圧器STrの高圧巻線を内側に巻き低圧巻線を外側に巻くことにより、通常の巻線構造(低圧巻線が内側で高圧巻線が外側)と比較して、空心インダクタンスを大きく設定している。これは自動電圧調整器Aの直列巻線STrは低圧巻線から励磁されるからに他ならない。
【0027】
また、サイリスタの投入を常に電圧調整変圧器の励磁電圧のピーク時に行う同期制御を併用することによって、限流リアクトルを省略しても励磁突入電流を効果的に抑制し、装置Aの小形・軽量化を実現することができた。
【0028】
なお、本電圧調整器Aはその設置場所を変電所から5[km]以上にすることで、高圧配電線短絡事故による過電流を2[kA]以下に制限し、サイリスタに流れる電流をサイリスタの許容過負荷耐量以下とすることで、限流リアクトルの省略が可能となる。
【0029】
以上説明したように、本発明の静止形高圧自動電圧調整器は、直列変圧器の低圧巻線の空心インダクタンスを大きくすることにより、限流リアクトルを省略しても、タップ切換時に発生する励磁突入電流を確実に抑制することが可能となる。
【0030】
また、サイリスタの投入を常に電圧調整変圧器の励磁電圧のピーク時に行う同期制御を併用することにより、限流リアクトルを省略しても、タップ切換時に発生する励磁突入電流を確実に抑制することが可能となる。
【0031】
更に、本発明の静止形高圧自動電圧調整器は、直列変圧器の低圧巻線の空心インダクタンスを大きくし、サイリスタの投入を常に電圧調整変圧器の励磁電圧のピーク時に行う同期制御を併用することにより、限流リアクトルを省略しても、タップ切換時に発生する励磁突入電流を確実に抑制し、装置Aの小形・軽量化を実現することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、配電系統の電圧変動に対応する機器に利用される可能性が高い。
【符号の説明】
【0033】
STr 直列変圧器
ETr 電圧調整変圧器
VT,CT 変成器
Th1〜Th6 タップ切換用サイリスタ
Thb ブリッジ用サイリスタ
F1,F2 限流ヒューズ
R 限流抵抗
MC1,MC2 電磁接触器
A 静止形高圧自動電圧調整器