(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077277
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド及び設計方法
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20170130BHJP
【FI】
A63B53/04 A
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-252583(P2012-252583)
(22)【出願日】2012年11月16日
(65)【公開番号】特開2014-100186(P2014-100186A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】坂 航
【審査官】
吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】
実開平02−136664(JP,U)
【文献】
特開平11−155982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェース部及びクラウン部を含み、体積が400cc以上のゴルフクラブヘッドにおいて、
前記クラウン部が、
フェース−バック方向およびトウ−ヒール方向に延在し、前記フェース部側の抗力低減部と、
フェース−バック方向およびトウ−ヒール方向に延在し、前記抗力低減部よりもバック側に位置する打音促進部と、を含み、
規定ライ角通りに前記ゴルフクラブヘッドを水平面上に配置した場合に前記フェース部のフェースセンタをフェース−バック方向に横断する垂直な仮想平面において、前記抗力低減部の輪郭の曲率半径が100mm以下であり、
前記打音促進部の輪郭の曲率半径が200mm以上であり、
前記抗力低減部は、
規定ライ角通りに前記ゴルフクラブヘッドを水平面上に配置した場合における前記クラウン部の頂点を含み、
フェース−バック方向に流れる空気流が、前記クラウン部から剥離する剥離点が前記打音促進部よりも前記フェース部側に位置する、
ことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
フェース−バック方向に流れる空気流が、前記クラウン部から剥離する剥離点が前記抗力低減部よりもバック側に位置する、
ことを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記クラウン部が、
前記抗力低減部と前記打音促進部との間の曲率遷移部を含み、
フェース−バック方向に流れる空気流が、前記クラウン部から剥離する剥離点が前記曲率遷移部上に位置する、
ことを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記打音促進部は、前記クラウン部の他の部分よりも薄肉である、
ことを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記打音促進部は、前記クラウン部の一次振動モードの腹の位置を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記仮想平面と、前記クラウン部の前記フェース部側の端部との第1交点から、前記仮想平面と、前記クラウン部のバック側の端部との第2交点までの水平距離をLとすると、
前記抗力低減部のバック側端部は、前記第1交点からバック側に水平距離で0.3L〜0.5Lの範囲内に位置し、
前記打音促進部の前記フェース部側の端部は、前記第1交点からバック側に水平距離で0.5L〜0.6Lの範囲内に位置する、
ことを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記打音促進部は、前記クラウン部側から見た平面視で円形又は楕円形である、
ことを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記抗力低減部は、前記クラウン部側から見た平面視で楕円形である、
ことを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記打音促進部は、平坦面である、
ことを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
フェース部及びクラウン部を含み、体積が400cc以上のゴルフクラブヘッドの設計方法において、
前記クラウン部の前記フェース部側に形成される抗力低減部を設計する抗力低減部設計工程と、
前記クラウン部において前記抗力低減部よりもバック側に位置する打音促進部を設計する打音促進部設計工程と、を含み、
前記抗力低減部とは、規定ライ角通りに前記ゴルフクラブヘッドを水平面上に配置した場合に前記フェース部のフェースセンタをフェース−バック方向に横断する垂直な仮想平面において、その輪郭の曲率半径が100mm以下であり、
前記打音促進部とは、前記仮想平面においてその輪郭の曲率半径が200mm以上であり、
前記抗力低減部設計工程では、
前記抗力低減部の仕様を異ならせた前記ゴルフクラブヘッドのモデルについて、コンピュータ上で空力解析を行って前記抗力低減部の仕様を決定し、
前記打音促進部設計工程は、前記抗力低減部の仕様の決定後に行う、
ことを特徴とする設計方法。
【請求項11】
フェース部及びクラウン部を含み、体積が400cc以上のゴルフクラブヘッドの設計方法において、
前記クラウン部の前記フェース部側に形成される抗力低減部を設計する抗力低減部設計工程と、
前記クラウン部において前記抗力低減部よりもバック側に位置する打音促進部を設計する打音促進部設計工程と、を含み、
前記抗力低減部とは、規定ライ角通りに前記ゴルフクラブヘッドを水平面上に配置した場合に前記フェース部のフェースセンタをフェース−バック方向に横断する垂直な仮想平面において、その輪郭の曲率半径が100mm以下であり、
前記打音促進部とは、前記仮想平面においてその輪郭の曲率半径が200mm以上であり、
前記打音促進部設計工程では、
前記打音促進部の仕様を異ならせた前記ゴルフクラブヘッドのモデルについて、コンピュータ上で打音のシミュレーションを行って前記打音促進部の仕様を決定し、
前記抗力低減部設計工程は、前記打音促進部の仕様の決定後に行う、
ことを特徴とする設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ウッド型に代表されるゴルフクラブヘッドでは、年々大型化が進んでおり、スイング時の空気抵抗の影響が大きくなってきている。空気抵抗が大きくなると、ヘッドスピードが低下して打球の飛距離低下を招く場合がある。特許文献1には、空気抵抗の低下に着目したゴルフクラブヘッドが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2011−528263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空気抵抗を小さくしてヘッドスピードを向上させるには、空気流のゴルフクラブヘッドからの剥離を抑えることが重要である。クラウン部からの空気流の剥離を抑えるためには、クラウン部に丸みを持たせることが有効である。しかし、クラウン部の丸みを強めると打音の響きが悪くなり易い。
【0005】
本発明の目的は、空気抵抗を低減しつつ、打音の悪化を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、フェース部及びクラウン部を含み、体積が400cc以上のゴルフクラブヘッドにおいて、
前記クラウン部が、
フェース−バック方向およびトウ−ヒール方向に延在し、前記フェース部側の抗力低減部と、
フェース−バック方向およびトウ−ヒール方向に延在し、前記抗力低減部よりもバック側に位置する打音促進部と、を含み、
規定ライ角通りに前記ゴルフクラブヘッドを水平面上に配置した場合に前記フェース部のフェースセンタをフェース−バック方向に横断する垂直な仮想平面において、前記抗力低減部
の輪郭の曲率半径が100mm以下であり、
前記打音促進部
の輪郭の曲率半径が200mm以上であ
り、
前記抗力低減部は、
規定ライ角通りに前記ゴルフクラブヘッドを水平面上に配置した場合における前記クラウン部の頂点を含み、
フェース−バック方向に流れる空気流が、前記クラウン部から剥離する剥離点が前記打音促進部よりも前記フェース部側に位置する、
ことを特徴とするゴルフクラブヘッドが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、空気抵抗を低減しつつ、打音の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(A)及び(B)は本発明の一実施形態の係るゴルフクラブヘッドの斜視図及び側面視図。
【
図4】(A)は基準姿勢の説明図、(B)はフェースセンタの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1(A)は本発明の一実施形態のゴルフクラブヘッド10の斜視図である。ゴルフクラブヘッド10は中空体をなしており、その周壁が、フェース面(打撃面)を形成するフェース部11と、ゴルフクラブヘッド10の上部を形成するクラウン部12と、ゴルフクラブヘッド10の底部を形成するソール部13と、ゴルフクラブヘッド10の側部を形成するサイド部14と、を構成している。サイド部14は、トウ側の部分、ヒール側の部分及びバック側の部分を含む。また、ゴルフクラブヘッド10はシャフトが取付けられるホゼル部15と、を備える。ゴルフクラブヘッド10は、その体積が400cc以上のものを想定しており、好ましくは500cc以下である。
【0010】
ゴルフクラブヘッド10はドライバ用のゴルフクラブヘッドであるが、本発明はドライバ以外のフェアウエイウッド等も含むウッド型のゴルフクラブヘッド、ユーティリティ型(ハイブリッド型)のゴルフクラブヘッド、その他の中空のゴルフクラブヘッドに好適である。ゴルフクラブヘッド10は、金属材料から作成することができ、そのような金属材料としては、チタン系金属(例えば、6Al−4V−Tiのチタン合金等)、ステンレス、ベリリウムカッパー等の銅合金が挙げられる。
【0011】
ゴルフクラブヘッド10は、複数のパーツを接合して組み立てることができる。例えば、クラウン部12、ソール部13、サイド部14及びフェース部11の周縁部分を構成し、フェース部11に相当する部分の一部に開口部が形成された本体部材と、該本体部材の該開口部に接合されるフェース部材と、から構成できる。
【0012】
図1において、矢印D1はフェース−バック方向を例示している。フェース−バック方向は、通常は、飛球線方向(打球の目標方向)となる。矢印D2はトウ−ヒール方向を示している。トウ−ヒール方向は、ソール部13のトウ側端とヒール側端とを結ぶ方向とする。
【0013】
図1(B)、
図2及び
図3を参照してクラウン部12の構成について説明する。
図1(B)はゴルフクラブヘッド10の側面視図である。より詳しくは、規定ライ角通りにゴルフクラブヘッド10を水平面上に配置した場合(以下、基準姿勢ともいう)に、ヒール側からゴルフクラブヘッド10を見た図である。
図2は抗力低減部12aと打音促進部12bとの説明図である。より詳しくは、基準姿勢にあるゴルフクラブヘッド10の平面図である。
図3は
図2のI−I線切断面端面図である。I−I線はフェース部11のフェースセンタをフェース−バック方向に横断する垂直な仮想平面Sに一致している。
【0014】
基準姿勢について
図4(A)を参照して補足すると共にフェースセンタについて
図4(B)を参照して説明する。
【0015】
まず、基準姿勢について
図4(A)を参照して、ゴルフクラブヘッド10は仮想水平面Sh上に配置されており、規定ライ角がθ1である場合を想定している。線XAはホゼル部15に装着されるシャフトの軸線である。なお、規定ライ角が不明な場合、そのゴルフクラブの番手に応じた平均的なライ角としてもよい。例えば、ドライバのゴルフクラブヘッドの場合、59度にする。
【0016】
フェースセンタについて
図4(B)を参照して、縦と横に目盛を有するゲージGをフェース部11にあてがい、縦の目盛と横の目盛の中央となる点をフェースセンタFCとする。ゲージGは、縦の目盛と横の目盛の交点に孔が形成された、透過性を有する薄板であって、いわゆるインパクトポイントテンプレートと同じものを利用することができる。インパクトポイントテンプレートとは、フェース部のCT値を計測する際にフェースセンタを特定するためのテンプレートである。
【0017】
次に、
図1(B)、
図2及び
図3を参照してクラウン部12の構成について説明する。クラウン部12は、フェース部11側の抗力低減部12aと、抗力低減部12aよりもバック側に位置する打音促進部12bとこれらの間の曲率遷移部12cとを含む。
【0018】
抗力低減部12aは、ゴルフクラブヘッド10の打撃時における空気抵抗を低減することを目的としてその形状が形成されている。具体的には、抗力低減部12aの任意の位置において、D1方向(フェース−バック方向)の輪郭の曲率半径R1は100mm以下とする。
【0019】
曲率半径R1が100mmを超えると、空気抵抗の低減効果があまり期待できない。曲率半径R1は、より小さい方が空気抵抗の低減効果が高まるが限界があると共にクラウン部12の形状が歪になる。したがって、曲率半径R1は30mm以上であることが好ましく、特に、50mm以上80mm以下が好ましい。
【0020】
抗力低減部12aはクラウン部12のフェース部11側端部から開始されることが好ましく、本実施形態では、少なくとも仮想平面S周辺において、抗力低減部12aはフェース部11側端部からトップエッジ部TEに続いて開始されている。
【0021】
クラウン部12から空気流が早期に剥離することを防止する点で、フェース部11とクラウン部12との境界部分であるトップエッジ部TEの曲率半径は、抗力低減部12aの中でも最小とされることが好ましく、例えば、3mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0022】
抗力低減部12aのD1方向(フェース−バック方向)の幅は、長い方が空気流を剥離させない距離を長くとる点で好ましいが、空気流を剥離を防止可能な距離には限界があり、かつ、後述する打音促進部12bの形成が困難となる。また、抗力低減部12aのD1方向(フェース−バック方向)の位置は、フェース部11に近い方が好ましい。ここで、
図2に示すように、基準姿勢において、仮想平面Sと、クラウン部12のフェース部11側の端部との第1交点P1から、仮想平面Sと、クラウン部12のバック側の端部との第2交点P2までの水平距離をLとする。抗力低減部12aのバック側端部は、第1交点P1からバック側に水平距離で0.3L〜0.5Lの範囲内に位置することが好ましい。つまり、
図2において、L1=0.3L〜0.5Lである。
【0023】
クラウン部12全体の曲率半径を小さくすると、クラウン部12が振動しにくくなって打音の響きが悪くなる。また、クラウン部12全体の曲率半径を小さくしたとしても、空気抵抗の低減効果には限界があり、特に、空気流の剥離点からバック側の領域については、空気抵抗の低減に寄与しない。
【0024】
打音促進部12bは、打音の響きを向上することを目的として、その曲率半径R2を相対的に大きくした部分である。具体的には、打音促進部12bの任意の位置において、D1方向(フェース−バック方向)の輪郭の曲率半径R2は200mm以上とする。
【0025】
曲率半径R2が200mm未満であると、打音の響きの向上効果があまり期待できない。曲率半径R2は、より大きい方が打音の響きの向上効果が高まる。本実施形態では、打音促進部12bを平坦面(曲率半径=∞)としている。
【0026】
曲率半径R2を大きくすると、打音促進部12bの周縁において、その曲率の変化が大きくなる。そのため、打音促進部12bが振動し易くなる。
図3は打音促進部12bの振動態様を模式的に、誇張して示している。打音促進部12bは矢印d3方向に、破線で示すように振動する。その結果、打音を、より響きがよくすることができる。
【0027】
打音促進部12bの形状はどのような形状であってもよいが、振動し易くする点で円形又は楕円形であることが好ましい。本実施形態では円形としている。打音促進部12bのの面積を小さくすると、打音がより高打音となるが、響きの向上効果が薄くなる場合がある。そこで、打音促進部12bの面積は、例えば、700〜8000mm
2が好ましい。
【0028】
打音促進部12bのD1方向(フェース−バック方向)の位置は、抗力低減部12aの位置及び範囲を優先して設定することが好ましい。したがって、抗力低減部12aを優先的に確保する点で、打音促進部12bのフェース部11側の端部は、第1交点P1からバック側に水平距離で0.5L〜0.6Lの範囲内に位置することが好ましい。つまり、
図2において、L2=0.5L〜0.6Lである。
【0029】
次に、打音促進部12bはクラウン部12の一次振動モードの腹の位置を含むことが好ましい。これにより、打音促進部12bの振幅が大きくなって響きが更によくなる。クラウン部12の一次振動モードの腹の位置は、コンピュータによるモーダル解析やFEMでの固有値解析を行うことで求めることができる。高打音化の点で、クラウン部12の一次振動モードの固有値は4000Hz以上であることが好ましい。
【0030】
また、本実施形態では、打音促進部12bの肉厚を、クラウン部12の他の部分よりも薄肉としている。これにより、打音促進部12bを更に振動し易くすることができる。
【0031】
本実施形態の場合、打音促進部12bは、
図2で破線DPで示す剥離点よりもバック側に位置している。換言すると、剥離点DPは打音促進部12bよりもフェース部11側に位置している。剥離点DPはD1方向(フェース−バック方向)に流れる空気流がクラウン部12から剥離する位置である。剥離点DPはコンピュータシミュレーション(空力解析)の結果SRから特定することができる。
【0032】
剥離点DPよりも打音促進部12bがバック側に位置している場合、打音促進部12bの存在がゴルフクラブヘッド10の空力性能に悪影響を与えない。
【0033】
本実施形態の場合、剥離点DPが抗力低減部12aよりもバック側に位置するように、抗力低減部12aの外形が設定されている。通常、剥離点DPはクラウン部12の頂点TPよりもバック側に位置することになることから、本実施形態では、抗力低減部12aがクラウン部12の頂点TPを含む形状としている。頂点TPはゴルフクラブヘッド10が基準姿勢の場合におけるクラウン部12の最高点である。頂点TPからバック側の形状によって、抗力低減部12aのバック側に剥離点DPを位置させることができる。つまり、抗力低減部12aによって、空気流が早期に剥離することを防止して空気抵抗を低減することが可能となる。
【0034】
抗力低減部12aと打音促進部12bとは、D1方向(フェース−バック方向)に連続して形成してもよいが、そうすると境界部分における曲率の変化が急激に過ぎる場合があり、応力集中等のようにクラウン部12の強度に影響を与える場合がある。
【0035】
そこで、本実施形態では、抗力低減部12aと打音促進部12bとの間に曲率遷移部12cを形成している。曲率遷移部12cは抗力低減部12aから打音促進部12bに向かって曲率を徐々に変化させた部分であり、抗力低減部12aと打音促進部12bとが滑らかにつながるようにしている。なお、本実施形態の場合、剥離点DPは曲率遷移部12cに位置している。
【0036】
以上述べた通り、本実施形態では、抗力低減部12aと打音促進部12bとを設けたことで、抗力低減部12aで空力性能を向上し、打音促進部12bにより空力性能に悪影響を与えない範囲で、打音の響きを向上できる。よって、空気抵抗を低減しつつ、打音の悪化を抑制することができる。
【0037】
ゴルフクラブヘッド10の設計方法としては、例えば、ゴルフクラブヘッド10の概略が定まった後、始めに抗力低減部12aの設計を行う。ここでは、例えば、抗力低減部12aの外形、大きさ、範囲等といった仕様を異ならせたモデルについて、コンピュータ上で空力解析を行う。目的とする水準の空力特性が得られたら、その内容で抗力低減部12aの仕様を決定し、次に、打音促進部12bの設計を行う。ここでは、例えば、打音促進部12bの外形、大きさ、範囲、肉厚等の仕様を異ならせたモデルについて、コンピュータ上で打音のシミュレーションを行う。目的とする水準の打音が得られたら、その内容で打音促進部12bの仕様を決定する。これにより抗力低減部12a及び打音促進部12bの設計を確定させることができる。目的とする水準の打音が得られない場合、打音促進部12bの設計自由度を向上するために、抗力低減部12aの設計からやり直せばよい。
【0038】
逆に、打音を優先させる場合は、始めに打音促進部12bの設計を行い、次に抗力低減部12aの設計を行えばよい。