(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077297
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】手術ロボット
(51)【国際特許分類】
A61B 34/35 20160101AFI20170130BHJP
B25J 3/00 20060101ALI20170130BHJP
B25J 19/06 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
A61B34/35
B25J3/00 Z
B25J19/06
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-281179(P2012-281179)
(22)【出願日】2012年12月25日
(65)【公開番号】特開2014-124229(P2014-124229A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(74)【代理人】
【識別番号】110001575
【氏名又は名称】リングループ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】掃 部 雅 幸
(72)【発明者】
【氏名】野 口 健 治
【審査官】
木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】
特開平7−194610(JP,A)
【文献】
特開2000−153475(JP,A)
【文献】
特開2010−35874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/00 ― 34/37
B25J 1/00 ― 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療器具が装着されるロボット本体と、
前記ロボット本体の制御情報を入力するための入力手段と、
前記入力手段に入力された前記制御情報に基づいて前記ロボット本体を制御するための制御手段と、
操作者の操作への専念に関連する異常を検出するための入力側異常検出手段と、
前記医療器具による患者への影響を推定できる検出値に基づいて、前記医療器具による手術状態の異常を検出するための出力側異常検出手段と、
前記出力側異常検出手段によって検出された前記手術状態の異常に対応するための異常対応手段であって、異常対応動作の内容を前記入力側異常検出手段の検出結果に基づいて変更するように構成されている、異常対応手段と、を備えた手術ロボットであって、
前記入力側異常検出手段が異常を検出していない場合には、前記異常対応手段が、前記医療器具による患者への影響が比較的大きくなってから手術の異常状態に対応して患者の人体への直接的間接的な影響を少なくする異常対応動作を起動し、
前記入力側異常検出手段が異常を検出している場合には、前記異常対応手段が、前記医療器具による患者への影響が比較的小さい段階で手術の異常状態に対応して患者の人体への直接的間接的な影響を少なくする異常対応動作を起動する、手術ロボット。
【請求項2】
前記異常対応手段は、前記入力側異常検出手段の検出結果に基づいて、前記異常対応手段による異常対応動作の開始基準を変更する機能を有する、請求項1記載の手術ロボット。
【請求項3】
前記異常対応手段は、前記異常対応手段による異常対応動作の開始基準について予め複数の閾値を有しており、前記入力側異常検出手段の検出結果に基づいて、前記複数の閾値の中から、適用すべき閾値を選択する機能を有する、請求項1または2に記載の手術ロボット。
【請求項4】
前記入力側異常検出手段は、前記入力手段に設けられている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の手術ロボット。
【請求項5】
前記入力手段は、前記操作者によって操作されるハンドルを含み、
前記入力側異常検出手段は、前記操作者の異常を検出するために前記ハンドルに設けられた入力側検出器を含む、請求項4記載の手術ロボット。
【請求項6】
前記入力側異常検出手段は、前記操作者の異常を検出するための複数の入力側検出器を含み、
前記制御手段は、前記異常対応手段による異常対応の内容を前記複数の検出器からの複数の検出結果に基づいて変更するように構成されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の手術ロボット。
【請求項7】
前記出力側異常検出手段は、前記医療器具が患者の人体に与える影響を検出する出力側検出器を有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の手術ロボット。
【請求項8】
前記出力側検出器は、前記医療器具が前記患者の人体との接触部位に与える圧力を検出するものである、請求項7記載の手術ロボット。
【請求項9】
前記出力側検出器は、前記医療器具が前記患者の人体との接触部位を変位させる変位量を検出するものである、請求項7または8に記載の手術ロボット。
【請求項10】
前記異常対応手段は、前記手術状態の異常を報知するための報知手段を含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の手術ロボット。
【請求項11】
前記異常対応手段は、前記ロボット本体の制御モードを変更するための制御モード変更手段を含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の手術ロボット。
【請求項12】
前記制御モード変更手段は、前記ロボット本体の動作の制限速度を変更するものである、請求項11記載の手術ロボット。
【請求項13】
前記制御モード変更手段は、前記入力手段からの前記制御情報に応じて前記医療器具を駆動するモードと、前記医療器具に作用する患者の人体からの外力を受け流す方向へ前記医療器具を駆動するモードとを切り替えるものである、請求項11または12に記載の手術ロボット。
【請求項14】
前記制御モード変更手段は、前記医療器具が患者の人体に極力影響を与えないように前記ロボット本体を自動的に制御する自動制御モードへの切換機能を有する、請求項11乃至13のいずれか一項に記載の手術ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具が装着されて手術を補助する手術ロボットおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マスタースレーブ方式の手術ロボットにおいて、マスター側、すなわち、ロボット本体の制御情報を入力するための入力手段に、操作者の異常を検出するための検出スイッチを設けたものが提案されている(特許文献1)。
【0003】
この従来の手術ロボットにおいては、検出スイッチの検出状態によって、ロボットを停止または位置保持させたり、自動と手動を切り替えたりする。
【0004】
また、従来提案の手術ロボットの中には、体内に刺入されたトラカールの外周壁面の圧電フィルムによって圧力が検出されると、警告用のブザーを作動させるものがある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−525097号公報
【特許文献2】特開2003−79638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の手術ロボット(特許文献1)において、操作者が入力手段から手を離して検出スイッチが異常を検出した場合でも、ロボットを停止等するのではなく、患者に対する安全率を上げつつ制御は継続することで十分な場合もある。
【0007】
ところが、従来の手術ロボットは、検出スイッチの検出状態によって一律にロボットを停止等するように構成されているので、上記のごとく患者に対する安全率を上げつつ制御を継続させるという対応ができなかった。
【0008】
また、従来の手術ロボット(特許文献2)においては、操作者が、誤操作ではなく意図的に患者の体を僅かに動かしたような場合でも、一律に異常と判定してブザーを作動させてしまうので、操作者による施術の自由度が阻害されてしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みて成されたものであり、施術の自由度を高めることができる手術ロボットおよびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明による手術ロボットは、医療器具が装着されるロボット本体と、前記ロボット本体の制御情報を入力するための入力手段と、前記入力手段に入力された前記制御情報に基づいて前記ロボット本体を制御するための制御手段と、操作者の異常を検出するための入力側異常検出手段と、前記医療器具による手術状態の異常を検出するための出力側異常検出手段と、前記出力側異常検出手段によって検出された前記手術状態の異常に対応するための異常対応手段であって、異常対応動作の内容を前記入力側異常検出手段の検出結果に基づいて変更するように構成されている、異常対応手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、好ましくは、前記異常対応手段は、前記入力側異常検出手段の検出結果に基づいて、前記異常対応手段による異常対応動作の開始基準を変更する機能を有する。
【0012】
また、好ましくは、前記異常対応手段は、前記異常対応手段による異常対応動作の開始基準について予め複数の閾値を有しており、前記入力側異常検出手段の検出結果に基づいて、前記複数の閾値の中から、適用すべき閾値を選択する機能を有する。
【0013】
また、好ましくは、前記入力側異常検出手段は、前記入力手段に設けられている。
【0014】
また、好ましくは、前記入力手段は、前記操作者によって操作されるハンドルを含み、前記入力側異常検出手段は、前記操作者の異常を検出するために前記ハンドルに設けられた入力側検出器を含む。
【0015】
また、好ましくは、前記入力側異常検出手段は、前記操作者の異常を検出するための複数の入力側検出器を含み、前記制御手段は、前記異常対応手段による異常対応の内容を前記複数の検出器からの複数の検出結果に基づいて変更するように構成されている。
【0016】
また、好ましくは、前記出力側異常検出手段は、前記医療器具が患者の人体に与える影響を検出する出力側検出器を有する。
【0017】
また、好ましくは、前記出力側検出器は、前記医療器具が前記患者の人体との接触部位に与える圧力を検出するものである。
【0018】
また、好ましくは、前記出力側検出器は、前記医療器具が前記患者の人体との接触部位を変位させる変位量を検出するものである。
【0019】
また、好ましくは、前記異常対応手段は、前記手術状態の異常を報知するための報知手段を含む。
【0020】
また、好ましくは、前記異常対応手段は、前記ロボット本体の制御モードを変更するための制御モード変更手段を含む。
【0021】
また、好ましくは、前記制御モード変更手段は、前記ロボット本体の動作の制限速度を変更するものである。
【0022】
また、好ましくは、前記制御モード変更手段は、前記入力手段からの前記制御情報に応じて前記医療器具を駆動するモードと、前記医療器具に作用する患者の人体からの外力を受け流す方向へ前記医療器具を駆動するモードとを切り替えるものである。
【0023】
また、好ましくは、前記制御モード変更手段は、前記医療器具が患者の人体に極力影響を与えないように前記ロボット本体を自動的に制御する自動制御モードへの切換機能を有する。
【0024】
上記課題を解決するために、本発明は、医療器具が装着されたロボット本体を有する手術ロボットの制御方法において、前記ロボット本体の制御情報を入力する制御情報入力工程と、前記制御情報に基づいて前記ロボット本体を制御する制御工程と、操作者の異常を検出する入力側異常検出工程と、前記医療器具による手術状態の異常を検出する出力側異常検出工程と、前記出力側異常検出工程において検出された前記手術状態の異常に対応するための異常対応工程であって、異常対応動作の内容を前記入力側異常検出工程の検出結果に基づいて変更する、異常対応工程と、を備えたことを特徴とする。
【0025】
また、好ましくは、前記異常対応工程は、前記入力側異常検出工程の検出結果に基づいて、前記異常対応工程における異常対応動作の開始基準を変更する。
【0026】
また、好ましくは、前記異常対応工程は、前記異常対応工程における異常対応動作の開始基準について予め複数の閾値を有しており、前記入力側異常検出工程の検出結果に基づいて、前記複数の閾値の中から、適用すべき閾値を選択する。
【0027】
なお、本件明細書中において「異常」とは、検出手段によって検出可能な何らかの指標(例えばセンサのON/OFF、センサが出力する圧力等)において正常状態と区別される状態を表し、国語的な意味での「異常」とは必ずしも一致しない。
【発明の効果】
【0028】
本発明による手術ロボットおよびその制御方法によれば、入力側異常検出手段の検出結果に基づいて、異常対応手段による異常対応の内容を変更するようにしたので、手術の安全性を十分に確保しつつ、施術の自由度を高めることができる
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態による手術ロボットを示した模式図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態による手術ロボットおよびその制御方法について、
図1を参照して説明する。
【0031】
本実施形態による手術ロボット1は、先端に医療器具2が装着されるロボットアーム3を備えたロボット本体4を有している。ロボット本体4の制御情報は、入力手段5によって入力される。医療器具としては、鉗子、焼灼器、電気メス、撮像装置等が使用されるが、これには限られない。
【0032】
入力手段5には、操作者(医者)の異常を検出するための入力側異常検出手段6が設けられている。具体的には、入力手段5の一部である操作ハンドル7に検出スイッチ(入力側検出器)が設けられている。
【0033】
検出スイッチ(入力側検出器)としては、操作者の握り力の有無を検出するもの、操作者の手の接触の有無を検出するもの、操作者が意識的に操作ハンドル7を握っていることを伝えるためのトリガーやスイッチを特に設けたもの、等があげられる。
【0034】
或いは、ヘッドマウントディスプレイを使用する場合には、このヘッドマウントディスプレイが正規の位置からずれたことを検出する検出スイッチでもよい。
【0035】
要するに、入力側異常検出手段6は、操作ハンドル7に付設する検出スイッチに限られず、例えば操作者が手術に専念しているか、そうでないかの判断に資する情報を出力するものであれば良い。
【0036】
また、上述した各種の検出スイッチ等の全部または一部を適宜組み合わせて、2つの状態のみならず、複数の状態を検出するようにして、それらの状態毎に閾値を設定しても良い。
【0037】
本実施形態による手術ロボット1は、さらに、医療器具2による手術状態の異常を検出するための出力側異常検出手段8を備えている。具体的には、医療器具2が患者Pの人体に与える影響を検出する出力側検出器が、医療器具2に設けられている。出力側異常検出手段8は、医療器具2やロボットアーム3に設けられても良いし、単独で設けられても良い。
【0038】
出力側異常検出手段8を構成する出力側検出器としては、医療器具2が患者Pの人体との接触部位(特に切開部O)に与える圧力を検出するもの(フィルムセンサ等)、医療器具2が患者Pの人体との接触部位(特に切開部O)を変位させる変位量を検出するもの等があげられる。或いは、ロボットアーム3の患者Pあるいは手術補助者への接近/接触を検出するものでも良い。
【0039】
要するに、出力側異常検出手段8は、例えば医療器具2による患者Pへの影響を推定できるものであれば良い。また、出力側異常検出手段8による検出部位も、患者Pの切開部Oに限られず、手術部位からロボットアーム3や医療器具2の先端部に加わる反力を検出しても良い。或いはまた、患者Pと接触する可能性のある複数の箇所にセンサを配置して、患者Pへの影響を総合的に判断しても良い。
【0040】
本実施形態による手術ロボット1は、さらに、出力側異常検出手段8によって検出された手術状態の異常に対応するための異常対応手段9を備えている。この異常対応手段9の一例は、手術状態の異常が発生したことを報知するための報知手段である。
【0041】
報知手段は、例えば、ディスプレイ10上に異常状態を表示するものでも良いし、音声や警報灯の点灯、操作ハンドル7に振動を加える等、様々な方法のものを採用することができる。要するに報知手段は、異常を報知できれば足りる。
【0042】
また、異常対応手段9の他の例は、ロボット本体4の動作を停止させるものである。即ち、出力側異常検出手段8によって異常が検出された時点で、ロボット本体4の動作が停止されてロック状態となる。
【0043】
要するに、異常対応手段9は、手術の異常状態に対応して患者Pの人体への直接的間接的な影響を極力少なくするものであれば良い。
【0044】
本実施形態による制御手段11は、入力手段5により入力された制御情報に基づいてロボット本体4を制御すると共に、ディスプレイ10の表示内容等を入力手段5に送信する。
【0045】
そして、異常対応手段9は、異常対応の内容を、入力側異常検出手段6の検出結果に基づいて変更するように構成されている。より具体的には、異常対応手段9は、異常対応動作の開始基準について予め複数の閾値を有しており、入力側異常検出手段6の検出結果に基づいて、複数の閾値の中から、適用すべき閾値を選択する機能を有している。
【0046】
例えば、異常対応手段9は、操作ハンドル7に設けられた検出スイッチ(入力側検出器)6がオン(正常)であるか、オフ(異常)であるかを判断し、オンの場合には、操作者が手術に専念していると考えられるので、出力側異常検出手段8からの検出値の閾値を比較的高いレベルに設定する。
【0047】
ここで、出力側異常検出手段8からの検出値の閾値とは、例えば、検出値が閾値を超えた場合に異常対応手段9による異常対応動作(異常報知および/またはロボット停止)を開始させる開始基準(トリガー)となるものである。
【0048】
従って、出力側異常検出手段8からの検出値の閾値を比較的高いレベルに設定することにより、異常対応手段9による異常対応動作(異常報知および/またはロボット停止)が、比較的鈍感に(遅めに)起動されることになる。
【0049】
一方、操作ハンドル7に設けられた検出スイッチ(入力側検出器)6がオフ(異常)の場合には、操作者が手術に専念していないと考えられるので、出力側異常検出手段8からの検出値の閾値を比較的低いレベルに設定する。
【0050】
このように出力側異常検出手段8からの検出値の閾値を、比較的低いレベルに設定することにより、異常対応手段9による異常対応動作(異常報知および/またはロボット停止)が、比較的敏感に(早めに)起動されることになり、安全レベルが引き上げられる。
【0051】
上記の通り、検出スイッチ(入力側検出器)6がオンであり、操作者が手術に専念していると考えられる場合には、異常対応手段9による異常対応動作(異常報知および/またはロボット停止)を比較的鈍感に(遅めに)することにより、例えば、操作者が意図的に患者Pの体を僅かに動かした場合でも、異常報知やロボット停止が引き起こされることなく、手術を続行することができる。
【0052】
一方、検出スイッチ(入力側検出器)6がオフであり、操作者が手術に専念していないと考えられる場合には、異常対応手段9による異常対応動作(異常報知および/またはロボット停止)を比較的敏感に(早めに)することにより、手術の異常状態に確実に対応することができる。
【0053】
なお、上述した異常対応手段9は、異常を複数のレベルに分けて対応するように構成されても良い。例えば、安全レベル、中間レベル、危険レベルと三段階に分けて、それぞれディスプレイ10上に青色で「安全」、黄色で「中間」、赤色で「危険」と表示されるように構成されても良い。
【0054】
ここで、「安全」と「中間」を分ける閾値を第1閾値、「中間」と「危険」を分ける閾値を第2閾値とすると、検出スイッチ(入力側検出器)6の状態がON/OFFの2つの状態である場合は、スイッチONの場合の第1、第2閾値、スイッチOFFの場合の第1、第2閾値が、それぞれ設定される(すなわち4つの閾値が設定される)ことになる。なお、このようにして設定される閾値の一部が同じ値になることはあり得る。
【0055】
さらに、異常対応手段9は、操作者に異常を報知する報知手段とともに(または報知手段の代わりに)、ロボットの制御モードを変化させる制御モード変更手段を備えることができる。
【0056】
例えば、安全レベルではロボット本体4の動作の制限速度を比較的高く設定し、危険レベルでは比較的低く設定することによって、患者Pに対する安全率を変化させても良い。
【0057】
また、制御モード変更手段は、入力手段5からの制御情報に応じて医療器具2を駆動するモードと、医療器具2に作用する患者Pの人体からの外力を受け流す方向へ医療器具2を駆動するモードとを切り替えるように構成することができる。
【0058】
また、制御モード変更手段は、手術部位の画像情報や各種センサ情報に基づいて、医療器具2が患者Pの人体に極力影響を与えないようにロボット本体4を自動的に制御する自動制御モードへの切換機能を備えることができる。
【0059】
ここで、「人体に極力影響を与えないように」とは、患者Pの切開部Oの人体の側壁への圧力を低くする、或いは、内臓等に近接している医療器具2があればそれを内蔵等から遠ざける、といった対応方法を言う。
【0060】
また、入力側異常検出手段6は、操作者の異常を検出するための複数の入力側検出器を備えることができる。この場合、制御手段11は、出力側異常検出手段8の検出結果に応じて、異常対応手段9による異常対応の内容を、複数の検出器からの各検出結果に基づいて変更するように構成される。
【0061】
本実施形態の説明においては、異常対応手段9が制御手段11に対して異常対応信号を送信することによりロボット本体4に異常対応動作(例えばロボット本体4をロック状態とする)を行わせたり、入力手段5に異常対応動作(例えばディスプレイ10への警告の表示を行う)を行わせたりすることを想定して異常対応手段9が制御手段11と接続される例を示した。
【0062】
上記実施形態の変形例として、例えば異常対応手段9が制御手段11から独立して単独で異常に対応する(例えば異常の発生をブザーで報知する)場合には、異常対応手段9と制御手段11を接続しないことも考えられる。さらに、制御手段11と異常対応手段9はそれぞれあるプログラム上の機能として実現されても良く、画像処理手段等の他の手段を含んでも良い。
【0063】
以上述べたように、本実施形態による手術ロボット1によれば、入力側異常検出手段6の検出結果に基づいて、異常対応手段9による異常対応の内容を変更するようにしたので、手術の安全性を十分に確保しつつ、施術の自由度を高めることができる。
【0064】
なお、本発明の構成は、本発明以外の構成や方法等によって施術の自由度が確保される場合には必ずしも必須のものではない。
【符号の説明】
【0065】
1 手術ロボット
2 医療器具
3 ロボットアーム
4 ロボット本体
5 入力手段
6 入力側異常検出手段(検出スイッチ)
7 操作ハンドル
8 出力側異常検出手段
9 異常対応手段
10 ディスプレイ
11 制御手段
O 患者の人体の切開部
P 患者