特許第6077304号(P6077304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077304
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】伸縮継目を橋渡しする装置
(51)【国際特許分類】
   E01C 11/02 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   E01C11/02 B
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-531181(P2012-531181)
(86)(22)【出願日】2010年9月30日
(65)【公表番号】特表2013-506070(P2013-506070A)
(43)【公表日】2013年2月21日
(86)【国際出願番号】AT2010000359
(87)【国際公開番号】WO2011038434
(87)【国際公開日】20110407
【審査請求日】2013年9月25日
(31)【優先権主張番号】A1541/2009
(32)【優先日】2009年9月30日
(33)【優先権主張国】AT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514057787
【氏名又は名称】マゲバ − エスハー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mageba − SH AG
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】グスタフ ガライ
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク ミヒャエル ボルフ
(72)【発明者】
【氏名】エルビン デター
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−541367(JP,A)
【文献】 特開2004−027630(JP,A)
【文献】 特開2002−348810(JP,A)
【文献】 特開平08−120608(JP,A)
【文献】 特開2005−336881(JP,A)
【文献】 実開平05−067605(JP,U)
【文献】 特開昭59−052002(JP,A)
【文献】 特開平11−322386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00−17/00
E01D 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車道の領域内の伸縮継目(2)を橋渡しする装置であって、
上部構造(5)と下部構造(6)とを有し、上部構造(5)が弾性的な部材(15)であり、下部構造(6)が上部構造(5)のための支持部を形成し、
少なくとも1つの保持部材(19、20)が上部構造(5)内に配置され、保持部材が少なくとも部分的に弾性的な部材(15)内に埋め込まれており、
前記上部構造(5)の前記部材(15)が、建設現場において直接的注ぎ込み可能な冷間硬化する合成樹脂又はプラスチックで作られており、
前記弾性的な部材(15)内に、1つまたは複数の安定化部材(30)を案内する1つまたは複数のスリーブ形状の部材(32)が設けられていることを特徴とする装置。
【請求項2】
保持部材(19、20)が、上部構造(5)の少なくともほぼ全長にわたってつながって延びるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
1つまたは複数の保持部材(19,20)が、少なくとも1つの切欠きを有し、切欠き内へ弾性的な部材(15)が延びていることを特徴とする請求項1または2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記合成樹脂がポリウレタンまたはポリ尿素−ないしポリユリア系−であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項5】
弾性的な部材(15)が最大60mmの層厚(29)を有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項6】
下部構造(6)が、少なくとも部分的に、エポキシ樹脂、ポリマーコンクリート、コンクリート、鋼を含むグループからの少なくとも1つの材料からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項7】
1つまたは複数の保持部材(19、20)が、少なくとも1つの結合アンカー(25、26)によって下部構造(6)と結合していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項8】
弾性的な部材(15)の、下部構造(6)の方向を向いた下側に、少なくとも1つの剪断キー(27、28)が形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記剪断キー(27、28)が上部構造(5)の全長にわたってつながって延びることを特徴とする請求項8に記載の装置(1)。
【請求項10】
1つまたは複数の安定化部材(30)が1つまたは複数の保持部材(19、20)で支持されることを特徴とする請求項に記載の装置(1)。
【請求項11】
1つまたは複数の保持部材(19、20)が1つまたは複数の曲がった形態であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項12】
1つまたは複数の安定化部材(30)が、曲がった形態の上方へ向かって張り出す脚(23、24)の間に延びていることを特徴とする請求項11に記載の装置(1)。
【請求項13】
1つまたは複数の安定化部材(30)がそれぞれ圧縮ばね(31)を有していることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項14】
1つまたは複数の安定化部材(30)あるいは1つまたは複数のスリーブ形状の部材(32)が、少なくとも部分的に螺旋チューブ(33)によって包囲されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部構造と下部構造を有し、その場合に上部構造が少なくとも1つの弾性的な部材を有し、下部構造が上部構造のための支持部を形成する、車道の領域内の伸縮継目を橋渡しするための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路とブリッジ構造の間の伸縮継目を橋渡しするための、一般的な概念に基づく構造は、従来技術からすでに知られている。
【0003】
すなわち、たとえば特許文献1は、伸張および/または収縮を経験する構成部分のための結合構造を記述しており、その結合構造が結合層を有し、その結合層が、構成部分に固定される、フレキシブルな補強手段を有している。フレキシブルな補強手段は、結合層内に鋳込まれた少なくとも1つのばねによって形成することができ、そのばねの端部がそれぞれの構成部分に支承されている。ばねは、特に付勢された引張りばねである。さらに、弾性的な結合層内にフレキシブルな補強手段としてワイヤマットを鋳込むことができる。弾性的な結合層は、伸張および収縮可能な重合化された瀝青によって形成されている。
【0004】
特許文献2は、エラストマー伸張部材を有する車道内の伸縮継目カバーを記述しており、その伸張部材が、継目を両側で画成する、エラストマーコンクリートからなる端縁ボディの凹部内に水密に収容されており、その端縁ボディが、建設箇所において車道の該当する凹部に注ぎ込むことによって、車道近傍において車道に連続するように、形成される。伸張部材は、端縁ボディのエラストマー成分に相当するエラストマーからなる。端縁ボディ間に注ぎ込むことによって形成される伸張部材は、端縁ボディ間の継目を閉鎖し、それにしっかりと付着する。端縁ボディのエラストマーコンクリートは、連結剤としてのエラストマー成分の他に、混和材として鉱物の粒を有している。伸張部材のエラストマーないし端縁ボディのエラストマー成分は、冷間硬化するポリウレタンによって形成することができる。
【0005】
特許文献3からは、継目を橋渡しする、押出し成形された、エラストマー材料からなるマットを有する、車道内の伸縮継目を橋渡しする装置が知られており、そのマットの、継目に対して平行な端縁が、それぞれ端縁側の保持プロフィールの上へ向かって開放した溝内に固定されており、そのためにマット下側にはリブが形成されており、そのリブが溝内へ形状結合で嵌入し、その溝を係止空間を残して実質的に満たす。係止空間は、鋳造通路を形成するマット内の穴またはスリットを介して上側と接続されている。リブは、鋳造通路と係止空間を満たす、エラストマー合成樹脂からなる鋳造ボディによって保持プロフィールと結合されている。合成樹脂は、たとえばポリウレタンから形成することができる。エラストマーマット自体は、ゴムからなる。
【0006】
COLAS GmbH社、A-8101 Gratkornから、「Thorma Joint」(登録商標)の名称で弾性的な舗装伸縮継目が知られており、それは、ポリマーコーティングされた瀝青と硬質岩石からなる鉱物の支持ボディとからなるマット構造で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】スイス国特許公報CH691496A5
【特許文献2】独国特許公報DE3225304C2
【特許文献3】独国特許公報DE3739717C1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、車道の領域内の伸縮継目を橋渡しする、改良された装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、冒頭で挙げた装置によって解決され、その装置において上部構造内に少なくとも1つの保持部材が配置されており、それが少なくとも部分的に弾性的な部材内に埋め込まれている。それによって上部構造の弾性的な部材と隣接する道路舗装との間の接触面の垂直領域内で上部構造と下部構造の間の結合の強化が得られるので、この接触面の負荷が除かれ、従って圧縮応力または引張り応力の結果としての剥がれが減少される。水平領域内では、少なくとも1つの保持部材が、下部構造への弾性的な部材の付着を改良する。従ってそれによって、装置の改良された機械的耐性が得られるので、この装置はより長い寿命を有し、それに伴って保守作業およびそれと結びつくコストを削減することができる。
【0010】
本発明の実施変形例によれば、保持部材は、上部構造の少なくともほぼ全長にわたって延びている。従って他の言葉で表現すると、保持部材は伸縮継目の少なくともほぼ全長にわたって延びている。それによって装置の構造がそれ自体簡略化される−好ましくは弾性的な部材の形成は、後で詳しく説明するように、現場で流し込みによって行なわれる−だけでなく、それによって、伸縮継目によって吸収可能な、添接する力が弾性的な部材の内部でより大きい面積にわたって分配され、従って保持部材ないし装置の負荷における局所的な差が効力を発せず、ないしは効力を発することが少ないことによって、その力のさらなる改良も得ることができる。
【0011】
さらに、1つまたは複数の保持部材が、少なくとも1つの切欠きを有することができ、その中へ弾性的な部材が突出する。従って弾性的な部材内の1つまたは複数の保持部材の埋込みが改良され、それによっても、特に剥がれに対する、装置の機械的安定性を改良することができる。
【0012】
装置の好ましい実施変形例において、上部構造の弾性的な部材は、少なくとも部分的に注ぎ込み可能な合成樹脂ないし注ぎ込み可能なプラスチックから、特にポリウレタンまたはポリ尿素−ないしポリユリア系から形成される。それによって一方で、建設箇所における装置の簡単な形成が改良され、他方では、瀝青系におけるのとは異なり、たとえば直射日光において気候温度が高い場合(その場合に瀝青系はすでに軟化する)でも、走行可能性は維持される。さらに、特にポリウレタンまたはポリ尿素−ないしポリユリア系は、従来技術において知られている瀝青ベースの系よりも摩耗に強い。特にポリウレタンまたはポリ尿素−ないしポリユリア系を使用することによって、轍溝形成、押しつぶれ、および表面の張り出しが、より良好に防止される。ポリウレタン材料またはポリ尿素−ないしポリユリア系は、広い温度領域内で冷間で組み込むことができる。従来の瀝青系は、熱間で組み込まなければならず、それが著しいエネルギ消費および高い騒音放出と結びついている。さらに、従来より大きい伸張距離を克服すること、すなわち橋渡しすることもできる。
【0013】
特に弾性的な部材を形成するためにポリウレタンまたはポリ尿素−ないしポリユリア系を使用する場合に、弾性的な部材の層厚が最大60mmとなることが、可能である。従ってこの弾性的な部材は、市場にあるアスファルト継目とは異なり、ずっと薄い。層厚のこの減少は、変形力がより小さい、という利点を有している。支持機構の長さが変化した場合に発生する(引張り/圧縮)変形力は、一方で、軸受台、支持機構、橋支承部のような、隣接する構成部分の負荷をもたらし、他方では弾性的な部材の材料内に内部応力をもたらす。従って弾性的な部材の層厚の減少は、構築物の隣接する構成部分と後続の構成部分をより小さく、より経済的に形成することを許す。
【0014】
下部構造は、少なくとも部分的に、エポキシ樹脂、ポリマーコンクリート、コンクリート、たとえば鋼のような金属を含むグループからの材料からなることができる。従ってコスト的に好ましく形成可能な下部構造が提供され、その下部構造は、上部構造、すなわち特に弾性的な部材を支持するために必要な硬直した特性を提供する。
【0015】
1つまたは複数の保持部材が、少なくとも1つの結合アンカーによって下部構造と結合されていると、効果的である。本発明のこの実施変形例によって、保持部材を下部構造に、従って支持機構に固定することを介して弾性的な部材の領域内の剥がれをより良好に防止することができることにより、装置の負荷耐性がさらに向上する。それによってさらに、1つまたは複数の保持部材の上側が弾性的な部材内へ突出し、従って1つまたは複数の結合アンカーの端部も弾性的な部材内へ突出するので、より良好な結合作用が得られ、その結合作用が、上部構造と下部構造の間の付着面に生じる圧縮応力ないし引張り応力を逃がすのに寄与する。
【0016】
他の実施変形例によれば、弾性的な部材の、下部構造の方向を向いた下側に、少なくとも1つの、好ましくは上部構造の少なくともほぼ全長にわたってつながって延びる剪断キーが形成されている。それによって一方で、弾性的な部材と下部構造との間に機械的な結合が形成され、それによって上部構造、すなわち弾性的な部材と下部構造の間の接触面が剪断応力の負荷を除かれる。それに伴って他方で、この接触面が増大され、それによって付着応力の削減も達成することができる。
【0017】
弾性的な部材内に、少なくとも1つの安定化部材を配置することができる。それによって、弾性的な部材は、瀝青材料からなる単純な弾性的舗装伸縮継目よりもずっと大きい伸張距離ないし摺動距離を吸収することができる。
【0018】
付加的に、本発明の他の実施変形例に基づく1つないし複数の安定化部材は、スリーブ形状の1つないし複数の部材を有することができ、その中に安定化部材が配置されている。1つないし複数のスリーブ形状の部材は、プッシュスリーブとして作用し、その中で1つないし複数の安定化部材が案内されており、かつその中で移動することができ、それによって上部構造の弾性的な部材のための補強としての安定化部材の作用を改良することができる。
【0019】
好ましくは1つまたは複数の安定化部材が1つまたは複数の保持部材に支持され、それによってこの安定化部材と好ましくは硬直した保持部材を介して伸縮継目の安定化を改良することができる。
【0020】
そのための特に好ましい実施変形例によれば、1つないし複数の保持部材は、1つないし複数箇所が曲がった形態で形成されているので、1つないし複数のこの保持部材に脚が設けられており、その脚が弾性的な部材内へ達し、それによって弾性的な部材における1つないし複数の保持部材の付着を改良することができ、それによってより大きい力も伝達可能となる。
【0021】
この場合において、安定化部材と1つないし複数の保持部材との協働による安定化機能のさらなる改良を達成するために、1つまたは複数の安定化部材が、曲がった形態で上方へ張り出す脚、すなわち曲がった形態の弾性的な部材内へ突出する脚の間に延び、特にこれらの脚に添接すると、効果的である。
【0022】
さらに好ましくは、弾性的な部材から安定化部材が抜けることを防止するために、1つまたは複数の安定化部材は、圧縮ばねを有することができる。
【0023】
他の実施変形例によれば、1つまたは複数の安定化部材あるいは1つまたは複数のスリーブ形状の部材は、少なくとも部分的に螺旋チューブによって包囲されている。この螺旋チューブは特に、弾性的な部材内に鋳込まれており、伸張を1つないし複数の安定化部材へ均一に伝達することをもたらす。さらにそれによって弾性的な部材、従ってたとえばポリウレタン鋳造物に対する摩擦が減少され、ないしは回避される。
【0024】
本発明をさらに良く理解するために、以下の図面を用いて本発明を詳細に説明する。
【0025】
簡略化された図が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る装置の第1の実施例を側面で示す断面図である。
図2】装置の他の実施例を側面で示す断面図である。
図3】本発明に係る装置の詳細を、安定化部材の領域で示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
最初に記録に残すが、異なるように記述される実施形態において、同一の部分は同一の参照符号ないし同一の構成部品名称を有し、その場合に明細書全体に含まれる開示は、等しい参照符号ないし等しい構成部品名称を有する同一の部分へ意味に従って移し替えることができる。また、明細書内で選択される、たとえば上、下、側方などのような位置記載は、直接説明され、かつ図示された図に関するものであって、位置が変化した場合に、新しい内へ移し替えられる。
【0028】
図1は、車道3とそれに連続する、橋、特に道路橋の車道4との間の伸縮継目2を橋渡しする装置1を示している。
【0029】
装置1は、上部構造5と下部構造6を有している。
【0030】
下部構造6は、この実施変形例においては、2つの互いに離隔した底部材7、8を有しており、それらは伸縮継目2の領域内まで達している。これら底部材7、8上に、それぞれ下部構造底要素9、10が配置されており、特に底部材7ないし8と結合されている。
【0031】
底部材7、8は、たとえば、道路建設で使用されるような、コンクリートからなることができる。
【0032】
2つの下部構造底要素(sole piece)9、10は、車道3、4の間で伸縮継目2内に配置されており、特にエポキシ樹脂またはポリマーコンクリートあるいは他の適切な硬い建材から形成することができる。特に、これら2つの下部構造底要素9、10を、すでに予め形成されているそのための部材が使用されない限りにおいて、建設箇所の現場で形成することもできる。
【0033】
下部構造6は、上部構造5に関して剛性で形成されている。本発明の主旨において「剛性」という概念は、この下部構造6ないしその構成部品が熱膨張ないし収縮を別にして、装置1の駆動の間の他の寸法変化を経験しないことを、意味している。
【0034】
2つの下部構造底要素9、10は、好ましくは、2つの底部材7、8の互いに対して離隔した配置によって形成される間隙が、くびれないように寸法決めされた幅11、12を有しており、従って好ましくは下部構造底要素9、10の互いに向き合う端面が、図1に示すように、2つの互いに向き合う底部材7、8のそれぞれの端面と面一になるように配置されている。
【0035】
伸縮継目2への接続領域内に、かつ部分的に伸縮継目2内へ達して、車道3、4と底部材7、8の間に、それぞれシール部材13、14、たとえばシール箔が、従来技術から知られているように、配置されている。
【0036】
上部構造5は、弾性的な部材15を有しており、その部材は2つの車道3、4と伸縮継目2との間に橋を架けるように延びている。特にこの弾性的な部材は、上側において車道3、4の表面と面一になるように形成されているので、従って伸縮継目2の領域内では、道路側において走行快適性に影響する、ないしは実質的に影響する隆起部または凹部は存在しない。
【0037】
弾性的な部材15は、下部構造底要素9、10に支持される。弾性的な部材15は、注ぎ込み工法で合成樹脂ないしプラスチックから、また好ましくは直接建設箇所において、形成されるので、弾性的な部材15の材料が少なくとも、この弾性的な材料15が接触面16を形成しながら直接下部構造底要素9、10に添接する領域内で、結合される可能性が生じる。
【0038】
好ましくは、弾性的な材料15を建設箇所において直接注ぎ込みによって形成することができるようにするために、弾性的な部材15のために、冷間硬化する、注ぐことのできる合成樹脂ないし冷間硬化する、注ぐことのできるプラスチック、特にポリウレタンまたはポリ尿素−ないしポリユリア系、が使用される。ポリウレタンまたはポリ尿素−ないしポリユリア系−として、ポリウレタンまたはポリ尿素−ないし使用に適した硬度を有するポリユリア系が使用されるので、一方で、できる限りわずかな抵抗を有する変形が可能であり、他方では交通に基づく負荷ができる限りわずかな変形しかもたらさない。たとえば、2Kポリユリア系を使用することができる。ポリウレタンまたはポリ尿素−ないしポリユリア系は、55から80のショア硬度Aを有することができる。DIN53504に基づくポリウレタンまたはポリ尿素−ないしポリユリア系の抗張力は、10と30N/mm2とすることができる。さらに、ポリウレタンまたはポリ尿素−ないしポリユリア系は、400と1200%の間のDIN53504に基づく伸張を有することができる。特に、揺変特性を有するポリウレタンまたはポリ尿素−ないしポリユリア系が使用される場合、ないしは23℃における粘性が4000と6000mPa・sの間であると、効果的である。
【0039】
付着性を改良するために、前もって付着媒介剤、いわゆるプライマーを塗布することができる。
【0040】
水平方向において下部構造底要素9、10ないし底部材7、8の間に形成される間隙の領域内で、下部構造底要素9、10の上に、この間隙を水密に覆うカバー部材17が配置されている。このカバー部材17は、金属またはプラスチック細片からなることができる。好ましくは、カバー部材17は、このカバー部材17をより正確に組み込むため、ないし装置1の駆動安全性を向上させるために、センタリング部材18を有しており、その場合にセンタリング部材18は、2つの底部材7、8ないし下部構造底要素9、10の間の間隙内へ突出する。
【0041】
図1に示す実施変形例において、弾性的な部材15と下部構造底要素9、10の間の結合を改良するために、接触面16の領域内に2つの保持部材19、20が配置されている。従って2つの保持部材19、20は、少なくとも、弾性的な部材15の方向へ突出する表面において、この弾性的な部材内に埋め込まれている。
【0042】
保持部材19、20は、好ましくはベース21、22とベース21、22から少なくともほぼ直角に上方へ向かって弾性的な部材15内へ突出して、その中に埋め込まれる脚23、24とを有する曲がった部材としてとして形成されている。その場合に、2つの脚23、24は、図示されるように、好ましくはそれぞれ車道3,4へ向けられている。
【0043】
好ましくは、保持部材19、20は、金属、たとえば鋼からなる。
【0044】
弾性的な部材15と保持部材19、20との間の結合を改良するために、後者は、少なくとも1つの切欠きを有しており、好ましくは穴あき薄板ないし穴を開けた薄板として形成されており、それによって弾性的な部材を注ぎ込み可能、硬化可能な合成樹脂ないしプラスチックから形成する間に、それをこの切欠き内へ流入させることができる。
【0045】
好ましい実施変形例において、2つの保持部材19、20は、図1に示す実施変形例を見る方向に延びる、伸縮継目2の全長にわたって延びる。もちろん、長さ方向に複数の個別の保持部材19、20を並べて配置する可能性もある。その他に、2つの下部構造底要素9、10の上に載置されて、間隙を橋渡しするように配置される唯一の保持部材19のみを使用する可能性もある。この場合においては、この唯一の保持部材19が、たとえば下部構造底要素9、10ないし底部材7、8の間の間隙の領域内に、少なくとも1つの弾性的な領域を有すると、効果的であって、それによって温度変化によってもたらされる車道3、4ないし道路および橋の寸法変化に基づく伸張ないし収縮を可能にすることができる。そのために、この保持部材19は、弾性的な中間片をもって、幾つかに分けて形成することができ、ないしは保持部材19の幾何学的形成によってこの伸張ないし収縮を可能にする、可能性もある。そのために、この保持部材19は、特に間隙の領域内で、ジグザグ形状ないしアコーディオン形状などで形成することができる。
【0046】
保持部材19、20と下部構造6との間の結合を改良するために、保持部材19、20に、それぞれ少なくとも1つの結合アンカー25、26を設けることができ、その場合にこれらの結合アンカー25、26は、弾性的な部材15から少なくとも下部構造底要素9ないし10の領域内まで、好ましくは、図1に示すように、底部材7ないし8の領域内まで突出する。特にこの結合アンカー25、26は、対応する合くぎ(dowel)によって下部構造底要素9、10および/または底部材7、8内に保持することができる。また、この結合アンカー25、26がすでに底部材7、8と共にコンクリートで固定され、ないしは下部構造底要素9、10内に鋳込まれる、可能性もある。結合アンカーの、弾性的な部材15内へ突出する上方の端部を弾性的な部材15内へ埋め込むことは、合成樹脂ないしプラスチックからなる弾性的な部材を、伸縮継目2に注ぎ込むことによって形成する間に、行なわれる。
【0047】
伸縮継目2の側毎に、それぞれ1つだけの結合アンカー25、26を配置することが可能ではあるが、本発明の枠内で好ましくは、伸縮継目2の長手方向に複数のこの種の結合アンカー25、26が並べて、好ましくは互いに対して規則的な間隔で、配置される。
【0048】
複数の保持部材19、20が伸縮継目2の縦に延びる方向に並べて配置されている、実施変形例において、好ましくは、これら保持部材19、20の各々が、専用の結合アンカー25、26を有している。
【0049】
結合アンカー25、26は、好ましくは金属から、特に鋼からなる。
【0050】
本発明の他の変形例によれば、弾性的な部材15がそれぞれ伸縮継目2の両側に、従って下部構造底要素9、10ないし底部材7、8の間に形成される間隙の隣りの領域内の各側に、少なくとも1つの剪断キー27を有している。これら2つの剪断キー27,28は、伸縮継目2に合成樹脂ないしプラスチックを注ぐことによって弾性的な部材15を形成する間に形成され、そのために下部構造底要素9、10内に対応する溝状の畝が設けられており、それによってこの溝内への合成樹脂ないしプラスチックの流出ないし流入が可能になる。従って、この剪断キー27、28を弾性的な部材15と一体的に形成することが可能である。下部構造底要素9、10内への合成樹脂ないしプラスチックの流入は、保持部材19、20内の切欠きを通して可能にされる。
【0051】
しかしもちろん本発明の枠内で、下部構造底要素9、10の内部に複数のこの種の剪断キー27、28が走行方向に相前後して配置される、可能性もある。
【0052】
好ましくはこれらの剪断キー27、28は、伸縮継目2ないし弾性的な部材15の全長にわたってつながって延びているが、複数のこの種の剪断キー27、28が伸縮継目2の長さの方向に並べて配置される、可能性もある。
【0053】
さらに、剪断キー27、28は、伸縮継目2の長さの方向に見て、矩形の横断面を有することができ、同様に溝状の畝の横断面は少なくとも1つのアンダーカットを有し、それによって、合成樹脂ないしプラスチックがこれらのアンダーカットを充填することにより、より良好な結合が得られる。しかし、剪断キー27、28は、方形、多角形などの横断面を有することもできる。
【0054】
図2には、本発明に係る装置1の実施変形例が示されている。図2に示す装置1のこの実施変形例は、それぞれ底部材7、8が下部構造底要素9、10のそれぞれ1つと一体的に形成されていることを例外として、図1に示すそれに実質的に等しい。たとえば、下部構造6のこれらの部材は、建設コンクリートなどから注ぎ込みによって形成することができる。
【0055】
本発明のこの実施変形例の他の詳細に関しては、不必要な繰返しを避けるために、図1についての説明を参照するよう指示する。
【0056】
好ましくは、弾性的な部材15は、最大60mm、特に最大50mmの層厚29(図1)を有している。
【0057】
図3は、装置1の実施変形例の詳細を示している。本発明の枠内において、弾性的な部材15内に少なくとも1つの安定化部材30が配置されることが、可能である。たとえばこの安定化部材30は、丸鋼から形成することができ、好ましくは複数のこの種の安定化部材30が、伸縮継目2の長さに渡って分配して配置される。他の幾何学的な、ロッド状の形状も可能である。この安定化部材30は、弾性的な部材15の補強とそれに伴ってその機械的な特性の改良をもたらす。1つの安定化部材30ないし複数の安定化部材30は、好ましい形態において、1つないし複数の保持部材19、20に支持されている。特に、図3に示すように、保持部材19、20の2つの脚23、24に支持することが行なわれる。2つの脚23、24の間で安定化部材30の付勢をもたらすために、保持部材19、20の2つの脚23、24へ向いた端部に、ナットおよびワッシャ(図示せず)を配置することができる。さらに、安定化部材が弾性的な部材15の鋳込みから抜けることを防止するために、安定化部材30の少なくとも一部にわたって圧縮ばね31、たとえばコイルばねを取り付けることが、可能である。
【0058】
好ましい実施変形例において、安定化部材30は弾性的な部材15内に直接埋め込まれず、これらの安定化部材30は、それぞれ安定化部材30を径方向に包囲する、スリーブ形状の部材32内で案内される。
【0059】
スリーブ形状の部材32内に複数の安定化部材30を配置する可能性があるが、これは好ましい実施変形例ではない。というのは、弾性的な部材15を形成するための容積が失われるからである。
【0060】
弾性的な部材15、従ってポリウレタン鋳造物の間の摩擦を防止するために、スリーブ形状の部材32の代りに、あるいはそれに加えて、それを包囲して、たとえばプラスチックからなる螺旋チューブ33を設けることができ、その螺旋チューブは、弾性的な部材を形成する間に、その中に鋳込まれる。従って、伸張を均一に安定化部材30へ伝達することが、可能である。
【0061】
実施例は、装置1の可能な実施変形例を示しており、その場合にここで注意すべきであるが、本発明は具体的に示されたその実施変形例に限定されるものではなく、むしろ個々の実施変形例を互いに様々に組み合わせることが可能であって、これらの変形可能性は、具体的発明による技術的教示によって、この技術分野に従事する当業者の裁量の範囲内にある。
【0062】
念のために最後に指摘するが、装置1の構造をより良く理解するために、装置ないしその構成部分は部分的に縮尺通りでなく、かつ/または拡大および/または縮小して示されている。
図1
図2
図3