(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コントローラにより、トンネル照明の制御が前記トンネル内で設定された所定区間毎に行なわれる場合の請求項1記載のトンネル照明システムにおいて、前記トンネルの当該区間の照明を担当する照明ブロックは、可視光通信機能を有した主照明器具と、複数の従照明器具と、前記コントローラにより生成された当該区間の制御指令に基づいて前記主照明器具及び従照明器具を制御する制御装置とを有していることを特徴とするトンネル照明システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のトンネル照明システムによる場合、全ての照明器具とコントローラとの間に通信線を施設することが必要不可欠となり、システム全体の低コストを図ることが困難という問題がある。しかもトンネルに設置された照明器具の台数が多く、これに伴ってメンテナンスが大変となり、この面でもコスト高になっている。
【0005】
本発明は上記背景に鑑みて創作されたものであり、その目的とするところは、コスト上の問題を改善することが可能なトンネル照明システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るトンネル照明システムは、
LEDその他の光源から出力された照明光を点滅又は変調させて照明光通信を行なう可視光通信機能を有しており且つトンネルに
対向配列方式により配置される複数の照明器具と、前記照明器具を制御する分電盤(コントローラを含む)とを備え、トンネル照明を制御及び/又は管理するために必要な制御情報、計測情報及び/又は管理情報を前記照明器具の可視光通信機能を用いて各照明器具にトンネルの一方の坑口から他方の坑口にかけて又は他方の坑口から一方の坑口にかけて順に伝送する構成になって
おり、対向配置された一方側の照明器具は、対向配置された他方側の照明器具の照明光の明るさを検出し、当該検出結果を当該器具の汚れ情報として前記可視光通信機能を用いて前記他方側の照明器具に送信する機能を有した構成になっている一方、対向配置された他方側の照明器具は、前記可視光通信機能を用いて前記汚れ情報を受信し、当該汚れ情報に基づいて自機の照明光の明るさを補正する機能を有した構成になっている。
【0007】
上記発明に係るトンネル照明システムによる場合、トンネル照明を制御及び/又は管理するために必要な制御情報、計測情報及び/又は管理情報がコントローラにて生成された制御指令が可視光通信により各照明器具に伝送される構成になっているので、従来とは異なり、照明器具とコントローラとの間の通信線や電源線の施設が簡単になり、この点でシステム全体の低コスト化を容易に図ることが可能になる。しかも、トンネル照明の計測情報及び/又は管理情報を集中的に管理することが容易であることから、トンネル照明の管理等を効率的及び効果的に行なうことが可能になり、特にメンテナンス上のメリットが大きく、この面での低コスト化を図ることも可能になる。
また、上記発明に係るトンネル照明システムによる場合、トンネル内の排ガス等が照明器具のガラスに付着すると、一方側の照明器具の照明光の明るさが低下することを利用して、他方側の照明器具において、一方側の照明器具の汚れ具合を把握し、その汚れ情報を可視光通信機能を用いて同器具に伝送し、一方側の照明器具において、伝送された汚れ情報に基づいて自機の照明光の明るさをその汚れの程度に応じて補正する構成になっているので、メンテナンスの面でのメリットがあるだけでなく、特別なハードウエアを追加することなく排ガス等による照明光の明るさの低下の問題を緩和することができ、この面での低コスト化及び高性能化を容易に図ることが可能になる。また、対向配置された照明器具の機能によりそのガラスの汚れに応じた照明光の明るさの補正がリアルタイムに行なわれる。しかもトンネル保守管理作業に当たり、従来の例えば車に搭載の照度計による照度確認行為が不要となり、トンネルの走行(利用)車両に全く影響を及ぼすこともないことから、安全性が高まることになる。
【0008】
前記分電盤(コントローラを含む)により、トンネル照明の制御が前記トンネル内で設定された所定区間毎に行なわれる場合、トンネルの当該区間の照明を担当する照明ブロックについては、可視光通信機能を有した主照明器具と、複数の従照明器具と、前記分電盤(コントローラを含む)より生成された当該区間の制御指令に基づいて前記主照明器具及び従照明器具を制御する制御装置とを有した構成とすることが好ましい。制御指令の例については、トンネルの区間を示す位置情報(制御装置機器アドレス)と、当該区間の照明の明るさ等を制御するための照明指令情報とが対になった内容のものがある。
【0009】
上記発明に係るトンネル照明システムによる場合、トンネルに配置された主照明器具及び従照明器具が分電盤(コントローラを含む。)により照明ブロック毎に制御される構成になっているので、トンネルの所定区間に応じた適切な明るさの照明を行なうことが可能になり、走行の安全性が一層高まる。特に、主照明器具については、その機能面から従照明器具に比べて高価であり、所要台数を実質的に抑えることができることから、この点でシステム全体の低コスト化及び高性能化を容易に図ることが可能になる。
【0012】
また、前記照明器具により計測された計測データを各照明器具に一方の坑口から他方の坑口にかけて順に伝送し、最終的に他方の坑口に位置する制御装置に伝送する構成としても良い。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
ここに例として挙げるトンネル照明システムは、
図1に示されているように上下二車線のトンネルTに沿って且つ対向配列方式により配置される複数の照明器具(本案例では主照明器具10、従照明器具20、30及び制御装置40を有した照明ブロック1A〜1Pを用いてトンネルTの照明を行なっている。)と、トンネル照明の制御を照明ブロック1毎に行なう分電盤(コントローラを含む。)2とを備え、トンネル照明を制御及び管理するために必要な制御情報、計測情報及び管理情報を主照明器具10及び従照明器具30の可視光通信機能を用いて各主照明器具10等にトンネルTの一方の坑口h1から他方の坑口h2にかけて順に伝送する基本構成になっている。特に、主照明器具10により計測される計測データ(計測情報)を主照明器具10及び従照明器具30の可視光通信機能を用いて各制御装置40等にトンネルTの一方の坑口h1から他方の坑口h2にかけて順に伝送し、最終的に坑口末端照明ブロック1Pの制御装置40Pに伝送するようになっている。
【0016】
本案例においては、主照明器具10及び従照明器具30の可視光通信機能をLEDを用いた照明光通信により行なっており、その通信仕様については下記の通りである。
データ形式:JEITA CP−1222準拠
送信変調方式:サブキャリア 28.8kbps
通信速度:4.8kbps
LED:定電流による調光制御
【0017】
また、トンネルTの上り車線については、その進行方向に沿って設定された上り区間1〜上り区間8に区分けされている一方、下り車線については、その進行方向に沿って設定された下り区間1〜下り区間8に区分けされている。
【0018】
上り区間1、2、3・・・・8の各照明については、照明ブロック1A、1C、1E・・・・1O が担当し、照明ブロック1Aを用いて入口部照明、照明ブロック1C、1E、1G、1I、1K、1Mを用いて基本照明、照明ブロック1Oを用いて出口部照明が各々行われるようになっている。一方、下り区間1、2、3・・・・8の各照明については、照明ブロック1B、1D、1F・・・・1Pが各々担当し、照明ブロック1Pを用いて入口部照明、照明ブロック1N、1L、1J、1H、1F、1Dを用いて基本照明、照明ブロック1Bを用いて出口部照明が各々行われるようになっている。これらの照明器具としては、低消費電力であり且つ照明光通信に適したLED灯具を使用している。
【0019】
トンネル照明の制御等を照明ブロック1A〜1P毎に行うために該当照明ブロック1内の制御装置40に対して管理番号(制御装置機器アドレス)が各々指定されている。
【0020】
分電盤2にて生成される制御指令は、上記管理番号(トンネルTの区間を示す位置情報にも相当)と、当該管理番号に対応する区間の照明器具の照明光の明るさ等を制御するための調光指令データ(照明指令情報に相当)等とが対になった内容になっている。このような制御指令(制御情報)が電文(テキストデータ)の形式で各照明ブロック1A〜1Pに順に伝送されるようになっている。そして照明ブロック1A〜1Pの各主照明器具10A〜10Pにおいて、同器具10のLED点灯情報(LED点灯電流(振幅調光)、LED累積点灯時間、LED灯具の照明光の明るさ計測情報)が常時計測されており、制御指令を次段の照明ブロック1に送信する際に当該計測情報が付加されるようになっている。
【0021】
図1中の矢印は本案例の上記した制御情報等の光空間通信上の流れを便宜上示したもので、照明ブロック1Aの主照明器具10Aと照明ブロック1Bの主照明器具10Bとの間は対向光通信、照明ブロック1Bの主照明器具10Bと照明ブロック1Cの主照明器具10Cとの間は斜め光通信である。他の照明ブロック間についても同様である。
【0022】
照明ブロック1の基本形については、
図2に示されているように3種類のLED灯具の組み合わせになっており、器具自体は合計約30台である。具体的には、トンネルTの該当区間の一部エリアの照明を担当する1台の主照明器具10と、該当区間の他のエリアの照明を担当する複数台の従照明器具20、30と、分電盤2にて生成される制御指令に基づいて照明ブロック1の全体を主照明器具10の関与の下で制御する制御装置40とを備え、主照明器具10と制御装置40との間が通信ラインL1を通じて相互接続され、主照明器具10と従照明器具20、30との間が通信ラインL2を通じて接続されている。
【0023】
図1中のa〜hは、照明ブロック1A及び照明ブロック1Bを中心とした制御情報等のデータの流れ等を便宜上示したものである。即ち、a:照明ブロック1Aの制御装置40Aにおいて、分電盤2から転送された制御指令(制御情報)を受信する。b:照明ブロック1Aの制御装置40Aにおいて、受信した制御指令に含まれた照明ブロック内電文(調光指令値)を照明ブロック1Aの主照明器具10Aに転送する(照明ブロック内通信)。c:照明ブロック1Bの主照明器具10Bにおいて、照明ブロック1Aの照明光の明るさを計測するとともにその計測情報を照明ブロック1Aの主照明器具10Aに送信する(照明ブロック間光通信)。d:照明ブロック1Aの主照明器具10Aにおいて、受信した当該計測情報により補正された照明ブロック1Aの調光指令値に基づいて光束自律調整を行ってLED点灯電流を調整し(後記する自灯具光束減衰抑制機能及び光束自律調整機能に基づく)、当該調光指令値を照明ブロック1Aの従照明器具20、30に転送し(照明ブロック内通信)、従照明器具20、30を主照明器具10Aと同様に調光制御を行なわせる。e:照明ブロック1Aの主照明器具10Aにおいて、LED点灯情報を制御装置40Aに転送する(照明ブロック内通信)。f:照明ブロック1Aの制御装置40Aにおいて、照明ブロック1の管理情報/計測情報(照明ブロックの管理番号、調光指令値、LED点灯情報)を後段の照明ブロック1の制御情報(調光指令値)とともに照明ブロック1Aの主照明器具10Aに送信する(照明ブロック間光通信)。g:照明ブロック1Aの主照明器具10Aにおいて、受信した照明ブロック1の管理情報/計測情報等を照明ブロック1Bの主照明器具10Bに送信する(照明ブロック間光通信)。h:照明ブロック1Bの主照明器具10Bにおいて、受信した照明ブロック1の制御情報等を照明ブロック1Bの制御装置40Bに転送する(照明ブロック内通信)。なお、照明ブロック1B以降の制御情報等のデータの流れについても上記と同様であるので、その説明は省略する。
【0024】
以下、照明ブロック1の構成の詳細について説明する。但し、照明ブロック1A〜1Pについては、同様の構成であることから、照明ブロック1Aの構成についてのみ説明するものとし、他の照明ブロック1B〜1Pについては、その説明を省略するものとする。ま
ず、主照明器具10Aについては、送受信の可視光通信機能を有し、
図3に示されているように光源の照明用LEDランプ100から出力された照明光を点滅させて照明光通信を行なう構成になっている。従照明器具30Aについては、
図5に示すように主照明器具10と似通った構成であるが、送信の可視光通信機能のみ有している。従照明器具20Aについては、可視光通信機能を有しておらず、
図4に示すように主照明器具10の機能により従照明器具30とともに調光制御される構成となっている。
【0025】
主照明器具10Aの基本的機能については、上記制御指令を受信し、受信した制御指令に係る制御信号に含まれる照明ブロック1Aの担当照明区間の調光指令データに基づいて自器具10A及び従照明器具20A及び30Aの調光制御を行い、自器具10AのLED点灯情報を計測し、受信した制御情報を当該LED点灯情報とともに次段の照明ブロック1Bに送信するようになっている(照明光通信)。また、主照明器具10Aの付加的機能については、対向主照明器具10Bの照明光の明るさを可視光通信用のフォトダイオード200により計測し、当該計測結果をトンネルT内の排ガスによる対向主照明器具10Bのガラスの汚れ情報として対向主照明器具10Bに送信し(照明光通信)、その一方で、対向主照明器具10Bから送信された自器具10Aの汚れ情報を受信し(照明光通信)、受信した自器具10Aの汚れ情報に基づいて自器具10Aの照明光の明るさ(調光指令データ)を自器具10Aのガラスの汚れに伴う光束低下を抑制する方向に補正するようになっている。
【0026】
なお、上記のような光空間通信(灯具間単方向通信)が可能になるように主照明器具10、従照明器具20及び従照明器具30の配置等が決定されている。逆に言えば、上記のような光空間通信が可能である限り、主照明器具10、従照明器具20及び従照明器具30の配置等が任意であり、コスト対効果が最も高いものを決定すれば良い。
【0027】
次に、主照明器具10の構成の詳細について
図3を参照して説明する。主照明器具10については、照明光を出力する光源として照明用LEDランプ100と、定電流駆動回路101と、照明用LEDランプ100の点灯電流を生成するとともに照明用LEDランプ100のLED点灯電流の大きさを制御するためのDA変換回路102と、照明用LEDランプ100の照明光の明るさを検出する光束センサ103と、対向主照明器具10から照明光を受光するフォトダイオード200と、フォトダイオード200の後段に接続されたPDプリアンプ201及び増幅回路202と、フォトダイオード200にて受信された変調信号の所定帯域成分を抽出するためのバンドパスフィルタ回路203及びAD変換回路204と、従照明器具20、及び次段の照明ブロック1に対する制御指令と照明器具のLED点灯情報(LED点灯電流(振幅調光)、LED累積点灯時間、LED灯具の明るさ計測情報)を送信する通信回路(ドライバ)401と、制御装置40との間で相互通信するための通信回路(ドライバ/レシーバ)402と、主照明器具10を制御する制御部300とを有した構成になっている。
【0028】
制御部300については、制御装置40と同じくマイクロコンピュータを主要構成とするもので、制御装置40と一体になって、変調信号復調処理機能、制御指令転送機能、制御指令更新機能、光束自律調整機能、対向灯具光束減衰抑制機能、自灯具光束減衰抑制機能、各種データ計測機能を発揮するようになっている。
【0029】
変調信号復調処理機能については次のような内容になっている。即ち、制御指令(照明ブロック間通信用)がフォトダイオード200等を通じて受信され、これに伴って、制御指令に係る変調信号がAD変換回路204を通じて制御部300に入力されると、復調処理するとともに受信されたデータ(制御指令とLED点灯情報)を制御装置40に伝送を行う。
【0030】
制御指令転送機能については次のような処理内容になっている。即ち、主照明器具10A、10B、10C、10E、10G、10I、10K、10M、10Oの各制御部300に関しては、制御装置40から導かれた制御指令を次段の主照明器具10に転送するために、制御指令に係るデータに基づいて送信データの符号化(本案例では4PPM符号化)を行い、定電流駆動回路101をオンオフ制御して照明用LEDランプ100を用いた照明光通信を行う。主照明器具10D、10F、10H、10J、10L、10Nの各制御部300に関しては、制御装置40から出力された制御指令を次段の主照明器具10に転送するために、制御指令を通信回路401を用いて従照明器具20又は30に出力する。このような処理が制御指令が入力される度に行われる。
【0031】
制御指令更新機能については次のような処理内容になっている。即ち、制御装置40から伝送された制御指令(照明ブロック通信用)に含まれる調光指令データを所定レジスタに記録保持して上書きする。このような処理が制御指令(照明ブロック通信用)が入力される度に行われる。
【0032】
光束自律調整機能については次のような処理内容になっている。即ち、最新の調光指令データに係る調光指令値に基づいて照明用LEDランプ100の照明光の明るさを負帰還制御する。具体的には、光束センサ103の検出データを入力して照明光の明るさを検出し、当該調光指令値との偏差量のデータをDA変換回路102に出力し、定電流駆動回路101を用いて照明用LEDランプ100の点灯電流を制御する。また、主照明器具10だけでなく従照明器具20,30についても同一の調光制御を行なうために、照明用LEDランプ100の点灯電流値のデータをドライバ401を用いて従照明器具20,30に出力する。このような処理が常時行われる。
【0033】
対向灯具光束減衰抑制機能については次のような処理内容になっている。即ち、主照明器具10は、照明ブロック間通信用の制御指令を含む電文を光空間通信(可視光通信)により受信している。この時の光空間通信の受信レベルは、対向配置された主照明器具10の照明光の明るさに対応しており、主照明器具10のAD変換回路204の出力データの最大値で示される。この受信レベル(灯具照度データ)を対向配置された主照明器具10に送信するために、灯具照度データに係るデータに基づいて送信データの符号化(4PPM符号化)を行い、定電流駆動回路101をオンオフ制御して照明用LEDランプ100を用いた照明光通信を行う。このような処理を照明ブロック間通信用の制御指令を含む電文を受ける度に行なわれる。なお、対向配置された主照明器具10の前面ガラスが汚れると、自照明器具の受信レベル(計測値)低下する。この対向当具照度データ(対向当具汚れ情報)を計測するとともに、対向配置された主照明器具10に送信する機能が対向灯具光束減衰抑制機能である。
【0034】
自灯具光束減衰抑制機能については次のような処理内容になっている。即ち、対向配置された主照明器具10の対向灯具光束減衰抑制機能により送信された当該灯具照度データが主照明器具10のフォトダイオード200にて受信され、これに伴って、対向灯具照度データに係る変調信号がAD変換回路204を通じて制御部300に入力されると、当該対向灯具照度データ(自灯具汚れ情報)に基づいて照明用LEDランプ100の照明光の明るさを補正する。具体的には、光束自律調整機能にて行なわれる照明用LEDランプ100のLED点灯電流値(DA変換回路102の設定値)を当該対向灯具照度データに応じて補正する。このような処理が灯具照度データが入力される度に行われる。
【0035】
各種データ計測機能については、主照明器具10の点灯情報(本案例では、LED点灯電流、LED累積点灯時間及び照明光の明るさ等の各種データである。)を下記の方法で取得し、最終的に坑口末端照明ブロック1Pの制御装置40Pに伝送する。
【0036】
調光指令データは、制御指令更新機能を利用して取得している。LED点灯電流は、光束センサ103を用いた対向の照明器具からの光通信を利用した光束自律調整機能及び自灯具光束減衰抑制機能を用いて取得している。LED累積点灯時間は、照明用LEDランプ100の駆動時間を計数する方法で取得している。照明光の明るさは、AD変換回路204の出力データ(変調信号)の最大値より取得している。
【0037】
このような方法で取得された主照明器具10の点灯情報を坑口末端照明ブロック1Pの制御装置40Pに転送するために、制御装置機器アドレス及び点灯情報に係るデータに基づいて送信データの符号化(4PPM符号化)を行い、定電流駆動回路101をオンオフ制御して照明用LEDランプ100を用いた照明光通信を行う。このような処理が所定のタイミングで行なわれる。
【0038】
従照明器具30の構成については
図5に示されているように照明用LEDランプ602、定電流駆動回路603、DA変換回路604、レシーバ601及び制御部605を有し、主照明器具10を簡略化した内容になっている。主照明器具10と大きく異なるのは、上記したように受信用の可視光通信機能がない点である。主照明器具10から転送された照明ブロック内通信の制御指令に基づいて照明用LEDの調光制御を行なう点と、照明用LEDランプ602を用いて照明ブロック間通信用の制御指令・LED点灯情報を次段の照明ブロック1に伝送する(照明光通信)点については、主照明器具10の機能と同様である。
【0039】
従照明器具20の構成については
図4に示されているように照明用LEDランプ505、定電流駆動回路504、レシーバ501、ドライバ502及び制御部503を有し、主照明器具10をより簡略化した内容になっている。主照明器具10と大きく異なるのは、上記したように可視光通信機能がない点と、照明用LEDランプ505の照明光の調光制御が主照明器具10の下で行なわれる点と、主照明器具10から送信されたLED点灯電流の制御指令値のデータに係る信号をドライバ502を用いて他の従照明器具20に出力する機能が追加されている点である。
【0040】
制御装置40については、マイクロコンピュータを主要構成とするものであり、メモリに予め記録されたソフトウエアがCPUにより処理されることにより、次のような機能を発揮するようになっている。即ち、主照明器具10から転送された制御指令を含む電文を受信し、その内容を解読するとともに、自照明ブロックの管理番号(制御装置機器アドレス)が一致した制御信号に係る制御指令を抽出し、主照明器具10へ転送する。
【0041】
なお、主照明器具10の制御指令転送機能、制御指令更新機能及び光束自律調整機能については、制御装置40から転送された自照明ブロックの制御指令を主照明器具10が受信することにより上記の通り発揮されるようになっている。
【0042】
照明ブロック1A〜1Oにおける制御装置40A〜40Oの機能については上記した通りであるが、坑口末端照明ブロック1Pの制御装置40Pについては、次のような機能が付加されている。即ち、照明ブロック1A〜1Pの照明器具より転送された各照明ブロック1の調光指令値及びLED点灯情報(LED点灯電流、LED累積点灯時間、LED灯具の明るさ計測情報)をメモリに随時記録保持して、必要に応じてメモリを再生して外部出力可能な構成になっている。この調光指令値及びLED点灯情報は、トンネルT内の照明器具の動作状態を示すもので、照明器具の保守情報として活用することができ、外部ネットワークと接続することで、照明器具の状態をリアルタイムに管理することもできる。
【0043】
分電盤2については、マイクロコンピュータを有しており、トンネルTに設置された照明ブロック1A〜1Pをマイクロコンピュータにて生成された制御指令により照明ブロック毎に制御する基本構成になっている。制御する対象については、本案例では、照明ブロック1A〜1Pの各主照明器具10等の調光指令値による照明器具の照明光の明るさである。
【0044】
上記のように構成されたトンネル照明システムについては以下のような効果を期待することができる。まず、制御指令が可視光通信により照明ブロック1A〜1Pに順次的に伝送される構成になっているので、照明ブロック1A〜1Pと分電盤2との間の通信線や電源線の工事が非常に簡単になる。主照明器具10及び従照明器具20,30がブロック単位で制御される構成になっているので、トンネルTの区間に応じた適切な明るさの照明を行なうことが可能になり、走行の安全性が高まる。しかも、トンネル照明の管理に必要な調光指令値及びLED点灯情報を集中的に管理することが容易であることから、トンネル照明の管理等を効率的及び効果的に行なうことが可能になり、特にメンテナンス上のメリットが大きく、この面での低コスト化を図ることも可能になる。また、主照明器具10については、機能面から従照明器具20,30に比べて低価格であり且つ主照明器具10の所要台数を実質的に抑えることができ、全体として大幅な低コスト化を図ることが可能になった。
【0045】
特に、主照明器具10において自灯具照度低下抑制機能等を有することから、トンネルT内の排ガス等が主照明器具10のガラスに付着しても主照明器具10の輝度が高くなり照明光の明るさが大きく変化することがない。この点で保守期間を長くすることができ、保守面での高性能化を図ることが可能になる。上記のように主照明器具10の機能により、そのガラスの汚れに応じた補正がリアルタイムに行われる。しかもトンネル保守管理作業に当たり、従来の例えば車に搭載の照度計による照度確認行為が不要となり、トンネルの走行(利用)車両に全く影響を及ぼすこともないことから、安全性が高まることになった。
【0046】
なお、本発明に係るトンネル照明システムについては、上記実施形態に限定されず以下のように設計変更することが可能である。まず、トンネル照明を制御及び/又は管理するために必要な制御情報、計測情報及び/又は管理情報の内容の形態については任意であり、これらの情報の伝送方向についても上記制御及び/又は管理を行なう機器等の位置に応じて適宜設計変更すれば良く、トンネル内の全区間ではなく一部区間の伝送でも構わない。また、照明ブロックの主照明器具及び従照明器具の互いの配置、各器具の機能については任意であり、制御装置の機能を主照明器具に持たせる形態でも良い。照明器具については
、光源の種類につきLEDだけでなく有機ELや蛍光灯等であっても良い。可視光通信機能については、LED等の光源を点滅させる方式だけでなく、光源の前方に配置された液晶等のシャッターにより照明光を変調させる方式により実現したり、照明器具に外付けした光通信機器により実現するようにしても良い。また、可視光通信機能を有する照明器具を用いる代わりに、可視光通信機能を有した光学ユニット(周辺機器に相当)を照明器具に外付けする形態であっても良い。コントローラについては、分電盤に含めた形態ではなく、トンネルを含む広域の道路管理を行なう上位コンピュータの下で制御される形態を採用しても構わない。