特許第6077332号(P6077332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077332
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】直流電源回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   H02M3/28 H
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-30887(P2013-30887)
(22)【出願日】2013年2月20日
(65)【公開番号】特開2014-161169(P2014-161169A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2016年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124291
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(72)【発明者】
【氏名】柿原 利之
(72)【発明者】
【氏名】平川 智浩
【審査官】 佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−222457(JP,A)
【文献】 特開2009−183091(JP,A)
【文献】 特開平04−342272(JP,A)
【文献】 米国特許第07005625(US,B1)
【文献】 特開平09−009621(JP,A)
【文献】 実開昭56−002789(JP,U)
【文献】 特開2009−177906(JP,A)
【文献】 特開昭53−32801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
G01T 1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定電圧信号と出力端子から帰還された帰還電圧信号とを基に電圧信号を生成するエラーアンプと、
前記エラーアンプによって生成された電圧信号を、交流電圧信号に変換する発振回路と、
前記交流電圧信号を直流電圧信号に変換して前記出力端子に向けて出力するAC−DCコンバータ回路と、
前記エラーアンプの出力と前記出力端子との間に接続されて、前記エラーアンプによって生成された電圧信号に応じた定電流を前記出力端子に向けて生成する定電流源回路と、
を備えることを特徴とする直流電源回路。
【請求項2】
前記定電流源回路は、前記電圧信号を閾値電圧と比較する比較部と、前記比較部の出力に応じた定電流を出力する出力部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1記載の直流電源回路。
【請求項3】
前記定電流源回路は、前記電圧信号の大きさが閾値電圧を下回ったときに前記定電流を生成するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の直流電源回路。
【請求項4】
前記AC−DCコンバータ回路と前記出力端子との間に接続され、RCフィルタと前記出力端子に接続された可変抵抗素子とを含むフィルタ回路をさらに備え、
前記定電流源回路は、前記フィルタ回路の出力に接続され、前記フィルタ回路の前記可変抵抗素子に向けて前記定電流を出力する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の直流電源回路。
【請求項5】
前記AC−DCコンバータ回路は、コンデンサとダイオードとが複数接続されて構成されたダイオードキャパシタポンプ回路である、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の直流電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の電圧を生成する直流電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、所望の電圧を生成するための直流電源回路においては、出力安定化のために帰還制御ループ構成を備えている。このような直流電源回路には、電圧を設定するための設定電圧信号に対して短時間で電圧出力がオーバーシュート無く設定値に収束すること、電圧出力において精度及び安定度が高いこと、が望ましい。この要求に応えるためには、帰還制御用の検出電圧は、帰還抵抗の抵抗値を大きくして電圧出力から直接分圧して得る必要がある。一方で、直流電源回路の出力にはリップル低減のためにコンデンサが接続されるのが一般的である。従って、従来の直流電源回路は、このコンデンサの存在のために設定電圧信号に対する応答特性が十分でない。
【0003】
下記特許文献1に記載のチャージポンプ回路では、出力電圧が高くなってオーバーシュートが発生したときに出力端子に接続されたトランジスタをオンして、出力端子をディスチャージする構成を採用している。これにより、出力電圧がオーバーシュート後の電圧から所望の電圧になるまでの時間が短縮化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−177906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来のチャージポンプ回路においては、出力端子に接続するトランジスタには全出力電圧に耐えうる高耐圧半導体が必要になり回路の大型化を招いてしまう。また、出力端子に接続されたトランジスタがオンされた際には突発的な電流が生成されるためにアンダーシュートが発生しやすい。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、回路を小型化しつつ、設定電圧に対して出力電圧を高速に安定化させることが可能な直流電圧回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態にかかる直流電源回路は、設定電圧信号と出力端子から帰還された帰還電圧信号とを基に電圧信号を生成するエラーアンプと、エラーアンプによって生成された電圧信号を、交流電圧信号に変換する発振回路と、交流電圧信号を直流電圧信号に変換して出力端子に向けて出力するAC−DCコンバータ回路と、エラーアンプの出力と出力端子との間に接続されて、エラーアンプによって生成された電圧信号に応じた定電流を出力端子に向けて生成する定電流源回路と、を備える。
【0008】
このような直流電源回路によれば、設定電圧信号と帰還電圧信号を基にエラーアンプで設定された電圧信号が発振回路に入力されることにより、その電圧信号が交流電圧信号に変換され、その交流電圧信号を基に、AC−DCコンバータ回路によって直流電圧信号が出力される。また、それと同時に、エラーアンプから出力された電圧信号の変化に応じた定電流が、定電流源回路から出力端子に向けて供給される。これにより、高耐圧半導体を必要とすることなしに、出力電圧の変化時に、直流電源回路内部に含まれるキャパシタや出力端子に接続されたキャパシタに蓄積された電荷を速やかに放電させることができる。このとき、定電流を供給することで出力電圧にアンダーシュートを発生させることなく設定電圧に速やかに安定化させることができる。その結果、回路を小型化しつつ、設定電圧に対して出力電圧を高速に安定化させることができる。
【0009】
ここで、定電流源回路は、電圧信号を閾値電圧と比較する比較部と、比較部の出力に応じた定電流を出力する出力部と、を有することが好適である。かかる構成を採れば、エラーアンプから出力された電圧信号と閾値電圧との比較結果に応じて出力端子に定電流が供給されるので、出力電圧の上昇動作或いは下降動作に高速に追随することができ、出力電圧の高速応答性を実現することができる。
【0010】
また、定電流源回路は、電圧信号の大きさが閾値電圧を下回ったときに定電流を生成するように構成されていることも好適である。この場合、電圧信号の下降動作に同期して出力端子に定電流を供給することができ、直流電源回路内部に含まれるキャパシタや出力端子に接続されたキャパシタに蓄積された電荷を速やかに放電させることができる。
【0011】
さらに、AC−DCコンバータ回路と出力端子との間に接続され、RCフィルタと出力端子に接続された可変抵抗素子とを含むフィルタ回路をさらに備え、定電流源回路は、フィルタ回路の出力に接続され、フィルタ回路の可変抵抗素子に向けて定電流を出力することも好適である。こうすれば、フィルタ回路によって出力のリップルの低減と出力インピーダンスの低下を実現しつつ、出力電圧を高速に安定化させることができる。
【0012】
またさらに、AC−DCコンバータ回路は、コンデンサとダイオードとが複数接続されて構成されたダイオードキャパシタポンプ回路であることも好適である。こうすれば、電圧信号の下降動作に同期して、AC−DCコンバータ回路に含まれるキャパシタに蓄積された電荷を速やかに放電させることができ、設定電圧に対して出力電圧を特に高速に安定化させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回路を小型化しつつ、設定電圧に対して出力電圧を高速に安定化させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の好適な一実施形態に高圧電源装置1の概略構成を示すブロック図である。
図2図1の高圧電源装置1の回路構成を詳細に示す回路図である。
図3図2の高圧電源装置1の各部の出力信号の時間変化を示す図である。
図4図2の高圧電源装置1の各部の出力信号の時間変化を示す図である。
図5図2の高圧電源装置1の出力信号の応答特性を示す図である。
図6図2の高圧電源装置1の出力信号の応答特性を示す図である。
図7】比較例に係る高圧電源装置の出力信号の応答特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明による直流電源回路の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態の高圧電源装置1の概略構成を示すブロック図である。本実施形態による高圧電源装置1は、負荷装置Aに対して高圧の直流電圧を供給するための電源装置である。負荷装置Aとしては、光電子増倍管(PMT:Photomultiplier Tube)等の電子管装置が挙げられるが、これに限定されず直流電圧によって駆動される様々な装置が対象になりうる。
【0017】
同図に示すように、高圧電源装置1は、エラーアンプ3、高圧生成回路5、アクティブフィルタ部7、帰還抵抗9、及び定電流制御アンプ11と電流源13とを有する定電流源回路15を含んで構成され、入力端子Tから入力された設定電圧信号Vに対応する出力電圧信号Voutを生成して、出力端子Tに出力する。エラーアンプ3は、設定電圧信号Vと出力端子Tから帰還抵抗9を介して帰還された出力電圧信号Voutとを受けて、設定電圧信号Vと出力電圧信号Voutとの差分電圧に対応して調整された電圧信号Vを生成して出力する。高圧生成回路5は、エラーアンプ3からの電圧信号Vを受けて、その電圧信号Vに対応する振幅の交流電圧信号に変換し、その交流電圧信号を直流電圧信号Vにさらに変換して出力する。アクティブフィルタ部7は、高圧生成回路5によって生成された直流電圧信号Vを受けて、直流電圧信号Vのリップル成分を除去して出力電圧信号Voutを生成し出力端子Tに出力する。また、アクティブフィルタ部7は、出力端子Tにおける出力インピーダンスを低下させるための役割も有する。
【0018】
ここで、高圧電源装置1の出力端子Tには、出力電圧信号Voutにおけるリップルを低減するために、容量値の比較的大きいキャパシタ17が負荷装置Aに並列に接続される。そのため、出力電圧信号Voutの立上り或いは立下りの変化時における応答特性が劣化する傾向にある。定電流源回路15は、出力電圧信号Voutの応答特性を改善するためにエラーアンプ3と出力端子Tとの間に接続されて設けられ、エラーアンプ3から電圧信号Vを受けて、その電圧信号Vに応じた定電流Iを生成してアクティブフィルタ部7を経由して出力端子Tに供給する。具体的には、定電流源回路15は、電圧信号Vの振幅(大きさ)が所定の閾値電圧を下回ったときに定電流Iを生成することにより、出力電圧信号Voutの立下り時にアクティブフィルタ部7に定電流Iを供給する。
【0019】
次に、高圧電源装置1の回路構成の具体例について説明する。図2は、負荷装置Aとして光電子増倍管Aを対象とした場合の高圧電源装置1の回路構成を詳細に示す回路図である。
【0020】
エラーアンプ3は、オペアンプ(差動増幅器)3aと抵抗素子3bとを含んで構成され、オペアンプ3aの一方の入力が接地され、他方の入力には、帰還抵抗9が接続されるとともに、抵抗素子3bを介して入力端子Tが接続されている。このような構成によって、エラーアンプ3は、出力電圧信号Voutと設定電圧信号Vとの差分電圧を帰還抵抗9と抵抗素子3bとで分圧した電圧に対応する電圧信号Vを生成する。この差分電圧は、出力端子Tから帰還抵抗9を介して帰還された帰還電圧信号である。
【0021】
高圧生成回路5は、抵抗素子5a,5bとスイッチング素子5c,5dとキャパシタ5eとトランス5fとを含む発振回路、及びAC−DCコンバータ回路(ダイオードキャパシタポンプ回路)5gによって構成されている。抵抗素子5a,5bは、エラーアンプ3の出力とグラウンドとの間に直列に接続され、電圧信号Vを分圧した電圧を、キャパシタ5eを介してトランス5fの一方の入力に入力する。スイッチング素子5c,5dは、エラーアンプ3の出力とグラウンドとの間に直列に接続され、さらに、それらの間の接続点がトランス5fの他方の入力に接続されている。これらのスイッチング素子5c,5dがデューティー比50%で交互にオン/オフされることにより、発振回路はトランス5fの出力端に電圧信号Vに対応する振幅を有する交流電圧信号Vを生成する。つまり、この発振回路は、電圧信号Vを交流電圧信号Vに変換するハーフブリッジ回路である。さらに、発振回路の出力端とアクティブフィルタ部7との間にはAC−DCコンバータ回路5gが接続され、このAC−DCコンバータ回路5gが、交流電圧信号Vを直流電圧信号Vに変換してアクティブフィルタ部7に出力する。詳細には、AC−DCコンバータ回路5gは、複数組(例えば8組)のダイオード素子5iとキャパシタ(コンデンサ)5hとを有し、複数のダイオード素子5iはそれらの極性を交互に入れ替えてトランス5fの出力端に並列に複数段で接続されており、複数のキャパシタ5hは、前段のダイオード素子5iのカソード(或いはトランス5fの出力端)と後段のダイオード素子5iのアノードとの間に接続されている。このような構成のAC−DCコンバータ回路5gは、いわゆるコッククロフト・ウォルトン回路であり、複数の出力端から、トランス5fからそれぞれの出力端までのキャパシタ5h及びダイオード素子5iの段数に対応して、交流電圧信号Vを直流電圧信号Vに所定の増幅率で昇圧して出力することができる。
【0022】
アクティブフィルタ部7は、抵抗素子7aとキャパシタ7bとからなる複数のRCフィルタ、複数のトランジスタ素子(可変抵抗素子)7c、及び複数のダイオード素子7dを含んで構成される。抵抗素子7aとキャパシタ7bとからなる複数のRCフィルタは、AC−DCコンバータ回路5gの複数の出力端に接続され、複数のトランジスタ素子7cの制御端子はこれらのRCフィルタを介してAC−DCコンバータ回路5gの複数の出力端に接続される。また、複数のトランジスタ素子7cは、負荷電流に応じて能動的に自己の抵抗値を可変するアクティブ可変抵抗素子であって、互いに直列に接続されており、それぞれの2つの電流端子が出力端子Tを介して負荷装置Aに接続されている。さらに、複数のダイオード素子7dは、それぞれ、トランジスタ素子7cの2つの電流端子間に接続される。これらのトランジスタ素子7cとしてはP型FETやPNPトランジスタが使用される。このような構成のアクティブフィルタ部7は、高圧生成回路5によって生成された直流電圧信号Vからリップルを除去するとともに、負荷装置Aに対する出力インピーダンスを下げて出力電圧信号Voutを安定化するための役割を有する。
【0023】
定電流源回路15は、定電流制御アンプ(比較部)11、及びオペアンプ13aと抵抗素子13b,13dとトランジスタ素子(出力部)13cとから構成された電流源13を備えて構成される。定電流制御アンプ11の一方の入力には既定の閾値電圧Vthが印加され、定電流制御アンプ11の他方の入力にはエラーアンプ3から電圧信号Vが入力され、定電流制御アンプ11は、閾値電圧Vthと電圧信号Vとを比較し、電圧信号Vが閾値電圧Vthを下回った場合に所定電圧の電圧信号を出力する。電流源13においては、定電流制御アンプ11が出力した電圧信号を受けて、その電圧信号に応じてトランジスタ素子13cを定電流I×抵抗素子13dの値が閾値電圧Vthと等しくなる様にリニア制御することにより定電流Iを生成し、定電流Iをアクティブフィルタ部7のトランジスタ素子7cに向けて出力する。このトランジスタ素子13cとしては、例えば、P型MOSFETが使用される。なお、トランジスタ素子13cには並列に寄生するボディダイオード13eが存在するが、それに対応してトランジスタ素子13cには電流端子の両側に逆流防止用のダイオード素子13f,13gが直列接続されている。この逆流防止用ダイオード13f,13gは、光電子増倍管Aからの出力電流が定電流源回路15内を逆流することを防止する。
【0024】
以上説明した高圧電源装置1によれば、設定電圧信号Vと帰還電圧信号を基にエラーアンプ3で設定された電圧信号Vが高圧生成回路5の発振回路に入力されることにより、その電圧信号Vが交流電圧信号に変換され、その交流電圧信号を基に、高圧生成回路5のAC−DCコンバータ回路5gによって直流電圧信号Vが出力される。また、それと同時に、エラーアンプ3から出力された電圧信号Vの振幅の低下に応じた定電流Iが、定電流源回路15から出力端子Tに向けて供給される。これにより、従来のチャージポンプ回路のように高耐圧半導体を必要とすることなしに、出力電圧Voutの振幅の低下指令時に、高圧電源装置1内部に含まれるキャパシタ5h,7bや出力端子Tと負荷装置Aとの間に接続されたキャパシタ17a,17b,17cに蓄積された電荷を、速やかに、且つ制御性を保ちながら放電させることができる。つまり、定電流源回路15においては低圧電源から定電流を送り込む構成を採用しているので、高耐圧部品は不要である。さらに、定電流源回路15から定電流Iを供給することで出力電圧Voutにアンダーシュートを発生させることなく設定電圧に速やかに安定化させることができる。その結果、回路を小型化しつつ、設定電圧に対して出力電圧を高速に安定化させることができる。なお、電圧信号Vは、エラーアンプ3からの出力そのものに限らず、エラーアンプ3からの信号を元に、パルス幅変調やパルス周波数変調等の処理を行なわれたものでも良い。
【0025】
ここで、定電流源回路15を追加することにより、エラーアンプ3から出力された電圧信号Vと閾値電圧Vthとの比較結果に応じて出力端子Tに定電流Iが供給されるので、放電経路が無い状態(非常に軽負荷状態)であっても出力電圧Voutの下降要求時には速やかにキャパシタ(5h、7b、17a、17b、17c)に蓄積された電荷を放電することができ、出力電圧の高速応答性を実現することができる。具体的には、設定電圧信号Vを変更して出力電圧Voutを下降させようとしたとき、或いは、負荷抵抗の変動(軽負荷時)によって出力電圧Voutが上昇したときに、出力電圧を高速に安定化させることができる。
【0026】
さらに、定電流源回路15を備えることにより、アクティブフィルタ部7を構成するトランジスタ素子7cを必要に応じて、必要最小限の定電流値を設定する事で常に能動領域に持ち込むことができ、負荷過渡特性の改善が可能になり、出力におけるリップルの低減と出力インピーダンスの低下を実現しつつ、出力電圧を高速に安定化させることができる。
【0027】
また、高圧生成回路5に含まれるAC−DCコンバータ回路5gとしてキャパシタ5hとダイオード素子5iとが複数接続されて構成されたコッククロフト・ウォルトン回路(ダイオードキャパシタポンプ回路)を採用している。これにより、消費電力を低減できると共に、電圧信号Vの下降動作に同期してAC−DCコンバータ回路5gに含まれるキャパシタ5hに蓄積された電荷を速やかに放電させることができる。従って、設定電圧信号Vに対して出力電圧Voutを特に高速に安定化させることができる。なお、コッククロフト・ウォルトン回路に限らず、その他の直列入力直列出力型のダイオードキャパシタポンプ回路や並列入力直列出力型のダイオードキャパシタポンプ回路を用いても良い。
【0028】
図3図6には、本実施形態の高圧電源装置1の各部の出力信号の時間変化を示している。図3に示すように、設定電圧信号Vの低下に伴い、エラーアンプ3の電圧信号Vが最低レベルに低下すると同時に、定電流源回路15から供給される定電流Iが一定値に設定される。それに伴い、出力端子Tを流れる負荷電流Ioutも所定値に維持される一方で、負電圧である高圧電源装置1の出力電圧Voutの振幅が所定の安定電圧に至るまでリニアに下降する。出力電圧Voutの安定化に伴って、エラーアンプの電圧信号Vが上昇し、それに応じて定電流源回路15から供給されていた定電流Iが停止される。このように、設定電圧信号Vを変更して出力電圧Voutを下降させようとしたときに、定電流Iが供給されることにより出力電圧が所定電圧に近づけられて安定化されるので、アンダーシュートの発生が抑制される。
【0029】
また、図4に示すように、高圧生成回路5の生成する直流電圧信号Vにおけるリップル成分は2.905Vp−pであるのに対して、出力電圧Voutにおけるリップル成分は51.23mVp−pに低減されている。この結果より、アクティブフィルタ部7によるリップル低減の効果も維持されていることがわかる。
【0030】
さらに、図5に示す結果から、設定電圧信号Vをステップ状に低下させた場合の出力電圧Voutの応答時間は、5ms以下であった。また、図7には、定電流源回路15を備えない点を除いては高圧電源装置1と同一構成の比較例における出力電圧Voutの応答特性を示している。この結果により、比較例における出力電圧Voutの応答時間は3600ms以上であり、高圧電源装置1の出力電圧信号Voutにおける設定電圧信号Vに対する応答時間は、比較例に比較して劇的に向上されていることがわかる。また、図6に示す結果から、設定電圧信号Vをパルス状に上昇及び低下を繰り返すように設定した場合の出力電圧Voutの応答特性も良好であることがわかり、出力電圧低下時のアンダーシュートも見られないことがわかった。
【符号の説明】
【0031】
1…高圧電源装置、3…エラーアンプ、5…高圧生成回路、5a,5b…抵抗素子(発振回路)、5c,5d…スイッチング素子(発振回路)、5e…キャパシタ(発振回路)、5f…トランス(発振回路)、5g…AC−DCコンバータ回路、7…アクティブフィルタ部(フィルタ回路)、7a…抵抗素子(RCフィルタ)、7b…キャパシタ(RCフィルタ)、7c…トランジスタ素子(可変抵抗素子)、9…帰還抵抗、11…定電流制御アンプ(比較部)、13…電流源、13c…トランジスタ素子(出力部)、15…定電流源回路、A…負荷装置、A…光電子増倍管、T…入力端子、T…出力端子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7