【実施例】
【0057】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、本明細書において部および%はそれぞれ重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0058】
なお、各薬品・填料の添加率は、長繊維画分・短繊維画分と填料を合わせた総固形分に対する数値である。このように表記することで、総固形分を基準として、実験結果間での添加率の比較を行いやすくした。
【0059】
評価方法
分級前の繊維、及び、得られた長繊維画分と短繊維画分について、ろ水度、及び、平均繊維長あるいは篩分繊維組成を以下のように測定した。
(カナダ標準ろ水度:CSF)
JIS P 8121:1995に基づき測定した。
(平均繊維長)
ファイバーテスター(Lorentzen&Wettre社製)を用いて長さ加重平均繊維長を測定した。
(篩分繊維組成)
JIS P 8207:1976に従い、24メッシュ、42メッシュ、80メッシュ、150メッシュのふるいを用いて繊維組成を測定した。なお、以下の表2・表3において、24mesh onは、24メッシュのふるいを用いて篩い分けを行った場合にふるい上に残る繊維の割合を示すものである。また、42mesh onは、24メッシュのふるいは通過するが、42メッシュのふるい上に残る繊維の割合を示すものである(80mesh on、150mesh onもそれぞれ同様の意味である)。さらに、150mesh passは、150メッシュのふるいを通過する繊維の割合を示すものである。
【0060】
また、以下の方法で製造した紙について、灰分、厚さ、坪量、密度、裂断長、層間強度(紙の厚さ方向の強度)を測定した。なお、以下の実験における添加率は、全紙料固形分重量に対しての数値である。
・灰分:JIS P 8251:2003に従った。
・厚さ:JIS P 8118:1998に従った。
・坪量:JIS P 8124:1998に従った。
・密度:厚さ(紙厚)、坪量の測定値より算出した。
・引張り強さ:JIS P 8113に準じて測定した。
・裂断長:JIS P 8113:1998に従った。
・層間強度:TAPPI T 541(ISO 15754)に従って、L&W ZD Tensile Tester SE 155 (Lorentzen&Wettre社製)で層間強度を測定した。
【0061】
さらに、炭酸カルシウムの物性については、平均粒径は、マスターサイザーマイクロ(Malvern Instruments社製)を使用してレーザー回折法により測定し、BET比表面積は、マイクロメリティックス・ジェミニ2360(島津製作所製)を用いて窒素吸着法により算出した。
【0062】
実験1:紙の製造
(実施例1−1)
LBKP(叩解後ろ水度310ml)からなるスラリー(固形分濃度3.0重量%)を、100meshの篩いを用いて、長繊維画分と短繊維画分の固形分比(分級比率)が50:50となるように分級した。短繊維画分のろ水度は220mlであり、分級前のパルプスラリーと比較して29%小さかった。
【0063】
この分級後の原料に対して、以下の薬品処理を行った。
【0064】
長繊維画分を固形分濃度0.5%まで希釈し、スリーワン・モーターにて500rpmの速度で攪拌しながら、バンドを3%添加した後、抄紙用添加剤として紙力剤(カチオン化澱粉)を0.5%添加して、長繊維を前処理した。
【0065】
このように前処理した長繊維を、固形分濃度0.5%に調整した短繊維画分のパルプスラリーと、長繊維:短繊維の重量比が50:50となるように混合した。このパルプスラリーに、軽質炭酸カルシウムを10%添加・混合し、その後抄紙用添加剤として歩留向上剤(ハイモ株式会社製ND300)を300ppmとなるように添加・混合し、紙料を調成した。パルプスラリーに添加した軽質炭酸カルシウムは、平均粒子径が2.5μm、比表面積が9.0m
2/gであるロゼッタ型軽質炭酸カルシウムであった。
【0066】
この紙料を用いて、JIS P 8209に基づいて坪量60g/m
2の手抄シートを作製した。
【0067】
(実施例1−2)
軽質炭酸カルシウムの添加量を15%とした以外は、実施例1−1と同様に抄紙した。
【0068】
(実施例1−3)
軽質炭酸カルシウムの添加量を20%とした以外は、実施例1−1と同様に抄紙した。
【0069】
(実施例1−4)
実施例1−1と同様にして、長繊維画分と短繊維画分を得た。
【0070】
この分級後の原料に対して、以下の薬品処理を行った。
<試料A> 長繊維のスラリー(濃度0.5%)に、スリーワン・モーターを用いて500rpmの速度で攪拌しながら、硫酸バンドを3%添加して混合し、その後抄紙用添加剤として紙力剤紙力剤(カチオン化澱粉)を0.5%添加した。
<試料B> 短繊維のスラリー(濃度0.5%)に、スリーワン・モーターを用いて500rpmの速度で攪拌しながら、軽質炭酸カルシウムを10%添加・混合し、その後抄紙用添加剤として歩留り向上剤(ハイモ株式会社製ND300)を150ppmとなるように添加した。軽質炭酸カルシウムは、平均粒子径が2.5μm、比表面積が9.0m
2/gであるロゼッタ型軽質炭酸カルシウムであった。
【0071】
この試料Aと試料Bを、紙料A:紙料Bの重量比が50:50となるように混合後、抄紙用添加剤として歩留向上剤(ハイモ株式会社製ND300)を150ppmとなるように添加・混合し、紙料を調製した。
【0072】
この紙料を用いて、JIS P 8209に基づいて坪量60g/m
2の手抄シートを作製した。
【0073】
(実施例1−5)
軽質炭酸カルシウムの添加量を15%とした以外は、実施例1−4と同様に抄紙した。
【0074】
(実施例1−6)
軽質炭酸カルシウムの添加量を20%とした以外は、実施例1−4と同様に抄紙した。
【0075】
(比較例1−1)
分級後の短繊維画分と長繊維画分に抄紙用添加剤を添加することなく、長繊維と短繊維を50:50の重量比で混合した後、硫酸バンド(添加量3%)、紙力剤(カチオン化澱粉、添加量0.5%)、軽質炭酸カルシウム(平均粒子径2.5μm、添加量10%)、歩留向上剤(ハイモ株式会社製ND300、添加量300ppm)をこの順番で添加して紙料を調成した。次いで、この紙料を用いて、JIS P 8209に基づいて坪量60g/m
2の手抄シートを抄紙した。パルプスラリーに添加した軽質炭酸カルシウムは、比表面積が9.0m
2/gであるロゼッタ型軽質炭酸カルシウムであった。
【0076】
(比較例1−2)
軽質炭酸カルシウムの添加量を15%とした以外は、比較例1−1と同様に抄紙した。
【0077】
(比較例1−3)
軽質炭酸カルシウムの添加量を20%とした以外は、比較例1−1と同様に抄紙した。
【0078】
<評価結果>
分級により得られた繊維の物性を表1、作製した紙の評価結果を表2に示す。長繊維を紙力剤で処理した実施例の手抄き紙は、前処理を行わなかった比較例と比べて、裂断長が高くなる傾向にあった。また、長繊維を紙力剤、短繊維を填料と歩留り向上剤半量で処理した後に混合し、抄紙すると(実施例1−4、1−5、1−6)、長繊維を紙力剤で処理し、短繊維と混合後に填料と歩留り向上剤を配合した場合(実施例1−1、1−2、1−3)よりも、裂断長がさらに高くなった。また、裂断長上昇率も高くなっていた。
【0079】
以上のことから、特に、比較的紙力が発現しづらい長繊維を、あらかじめ紙力剤で処理することで、紙力が大きく向上すること、また、比較的紙力が発現しやすい短繊維に填料を添加し、短繊維と填料とを凝集させることで、さらに紙力が向上することを見出した。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
実験2:紙の製造
(実施例2−1)
実施例1−1と同様にして、長繊維画分と短繊維画分を得た。
この分級後の原料に対して、以下の薬品処理を行った。
<試料C> 長繊維のスラリー(濃度0.5%)に、スリーワン・モーターを用いて50
0rpmの速度で攪拌しながら、硫酸バンドを3%添加して混合し、その後抄紙用添加剤として紙力剤(ポリアクリルアミド、ハリマ化成社製DS4412)を0.2%添加した。
<試料D> 短繊維のスラリー(濃度0.5%)に、スリーワン・モーターを用いて500rpmの速度で攪拌しながら、軽質炭酸カルシウムを10%添加・混合し、その後抄紙用添加剤として歩留り向上剤(ハイモ株式会社製ND300g)を100ppmとなるように添加した。軽質炭酸カルシウムは、平均粒子径が2.5μm、比表面積が9.0m
2/gであるロゼッタ型軽質炭酸カルシウムであった。
【0083】
この試料Aと試料Bを、紙料A:紙料Bの重量比が50:50となるように混合後、抄紙用添加剤として歩留向上剤(ハイモ株式会社製ND300)を100ppmとなるように添加・混合し、紙料を調製した。
【0084】
この紙料を用いて、JIS P 8209に基づいて坪量60g/m
2の手抄シートを作製した。
【0085】
(実施例2−2)
軽質炭酸カルシウムの添加量を15%とした以外は、実施例2−1と同様に抄紙した。
【0086】
(実施例2−3)
軽質炭酸カルシウムの添加量を20%とした以外は、実施例2−1と同様に抄紙した。
【0087】
(比較例2−1)
分級後の短繊維画分と長繊維画分に抄紙用添加剤を添加することなく、長繊維と短繊維を50:50の重量比で混合した後、硫酸バンド(添加量3%)、紙力剤(ポリアクリルアミド、ハリマ化成社製DS4412、添加量0.2%)、軽質炭酸カルシウム(平均粒子径2.5μm、添加量10%)、歩留向上剤(ハイモ株式会社製ND300、添加量200ppm)をこの順番で添加して紙料を調成した。次いで、この紙料を用いて、JIS P 8209に基づいて坪量60g/m
2の手抄シートを抄紙した。軽質炭酸カルシウムは、比表面積が9.0m
2/gであるロゼッタ型軽質炭酸カルシウムであった。
【0088】
(比較例2−2)
軽質炭酸カルシウムの添加量を15%とした以外は、比較例2−1と同様に抄紙した。
【0089】
(比較例2−3)
軽質炭酸カルシウムの添加量を20%とした以外は、比較例2−1と同様に抄紙した。
【0090】
<評価結果>
作製した紙の評価結果を表3に示す。長繊維を紙力剤で処理した実施例の手抄き紙は、前処理を行わなかった比較例と比べて、裂断長が高くなる傾向にあった。また、裂断長の上昇率は、灰分が高いほど大きくなる傾向にあった。
【0091】
紙力剤の種類を実施例1と変更しても(実施例1:カチオン化澱粉、実施例2:ポリアクリルアミド)、同様の効果を見出した。
【0092】
【表3】
【0093】
実験3:紙の製造
(実施例3−1)
相川鉄工株式会社パイロットテストプラントにて、LBKP(叩解後ろ水度285ml)のスラリー(固形分濃度1.0重量%)について、スリットスクリーンを用いて長繊維画分と短繊維画分に分級した。具体的には、スリットスクリーンとして相川鉄工社製ラボスクリーンを用い、スリット幅0.15mm、アジテータ周速16m/sの条件で処理し、長繊維画分と短繊維画分を得た。ここで、スクリーンのリジェクト分が長繊維画分であり、アクセプト分が短繊維画分であり、長繊維画分と短繊維画分の固形分比(分級比率)は55:45であった。短繊維画分のろ水度は235mlであり、分級前のパルプスラリーと比較して18%小さかった。
この分級後の原料に対して以下の薬品処理を行った。添加率は、全紙料固形分重量に対しての数値である。
<試料E> 長繊維画分のスラリー(濃度0.5%)に、スリーワン・モーターを用いて500rpmの速度で攪拌しながら、硫酸バンドを3%添加して混合し、その後抄紙用添加剤として紙力剤(ポリアクリルアミド、ハリマ化成社製DS4412)を0.2%添加した。
<試料F> 短繊維画分のスラリー(濃度0.5%)に、スリーワン・モーターを用いて500rpmの速度で攪拌しながら、軽質炭酸カルシウムを10%添加・混合し、その後抄紙用添加剤として歩留り向上剤(ハイモ株式会社製ND300)を100ppmとなるように添加した。軽質炭酸カルシウムは、平均粒子径が2.5μm、比表面積が9.0m
2/gであるロゼッタ型軽質炭酸カルシウムであった。
【0094】
この試料Eと試料Fを、紙料E:紙料Fの重量比が55:45となるように混合後、抄紙用添加剤として歩留向上剤(ハイモ株式会社製ND300)を100ppmとなるように添加・混合し、紙料を調製した。
【0095】
この紙料を用いて、JIS P 8209に基づいて坪量60g/m
2の手抄シートを作製した。
【0096】
(実施例3−2)
軽質炭酸カルシウムの添加量を20%とした以外は、実施例3−1と同様に抄紙した。
【0097】
(実施例3−3)
軽質炭酸カルシウムの添加量を30%とした以外は、実施例3−1と同様に抄紙した。
【0098】
(比較例3−1)
分級後の短繊維画分と長繊維画分に抄紙用添加剤を添加することなく、長繊維と短繊維を55:45の重量比で混合した後、硫酸バンド(添加量3%)、紙力剤(ポリアクリルアミド、ハリマ化成製DS4412、添加量0.2%)、軽質炭酸カルシウム(平均粒子径2.5μm、添加量10%)、歩留向上剤(ハイモ株式会社製ND300、添加量200ppm)をこの順番で添加して紙料を調成した。この紙料を用いて、JIS P 8209に基づいて坪量60g/m
2の手抄シートを抄紙した。軽質炭酸カルシウムは、比表面積が9.0m
2/gであるロゼッタ型軽質炭酸カルシウムであった。
【0099】
(比較例3−2)
軽質炭酸カルシウムの添加量を20%とした以外は、比較例3−1と同様に抄紙した。
【0100】
(比較例3−3)
軽質炭酸カルシウムの添加量を30%とした以外は、比較例3−1と同様に抄紙した。
【0101】
<評価結果>
分級により得られた繊維の物性を表4、作製した紙の評価結果を表5に示す。長繊維を紙力剤で処理した実施例の手抄き紙は、前処理を行わなかった比較例と比べて、裂断長が高くなることを見出した。また、裂断長の上昇率は、灰分が高いほど大きくなる傾向にあった。
【0102】
【表4】
【0103】
【表5】
【0104】
実験4:紙の製造
(実施例4−1)
分級処理前のLBKPのろ水度を430mlとした以外は、実験3と同様にして長繊維画分と短繊維画分を得た。短繊維画分のろ水度は380mlであり、分級前のパルプスラリーと比較して12%小さかった。
この分級後の原料に対して、実施例3−1と同様の薬品処理を行い、紙料を調製した。
【0105】
この紙料を用いて、JIS P 8209に基づいて坪量60g/m
2の手抄シートを作製した。
【0106】
(実施例4−2)
軽質炭酸カルシウムの添加量を20%とした以外は、実施例4−1と同様に抄紙した。
【0107】
(実施例4−3)
軽質炭酸カルシウムの添加量を30%とした以外は、実施例4−1と同様に抄紙した。
【0108】
(比較例4−1)
実施例4−1の分級後の原料に、抄紙用添加剤を添加することなく、長繊維と短繊維を55:45の重量比で混合した後、硫酸バンド(添加量3%)、紙力剤(ポリアクリルアミド、ハリマ化成製DE4412、添加量0.2%)、軽質炭酸カルシウム(平均粒子径2.5μm、添加量10%)、歩留向上剤(ハイモ株式会社製ND300、添加量200ppm)をこの順番で添加して紙料を調成した。この紙料を用いて、JIS P 8209に基づいて坪量60g/m
2の手抄シートを抄紙した。軽質炭酸カルシウムは、比表面積が9.0m
2/gであるロゼッタ型軽質炭酸カルシウムであった。
【0109】
(比較例4−2)
軽質炭酸カルシウムの添加量を20%とした以外は、比較例4−1と同様に抄紙した。
【0110】
(比較例4−3)
軽質炭酸カルシウムの添加量を30%とした以外は、比較例4−1と同様に抄紙した。
【0111】
<評価結果>
分級により得られた繊維の物性を表6、作製した紙の評価結果を表7に示す。長繊維を紙力剤で処理した実施例の手抄き紙は、前処理を行わなかった比較例と比べて、裂断長が高くなることを見出した。また、裂断長の上昇率は、灰分が高いほど大きくなる傾向にあった。
【0112】
【表6】
【0113】
【表7】
【0114】
実験5:紙の製造
(実施例5−1)
相川鉄工株式会社パイロットテストプラントにて、LBKPとNBKPを7:3の割合で混合したパルプスラリー(混合後ろ水度381ml、固形分濃度2.2重量%)について、スリットスクリーンを用いて長繊維画分と短繊維画分に分級した。スリットスクリーンとして相川鉄工社製MAXセーバー(MAX−S、アウトワード形式)を用い、スリット幅0.13mmの条件で処理し、長繊維画分と短繊維画分を得た。ここで、スクリーンのリジェクト分が長繊維画分であり、アクセプト分が短繊維画分であり、長繊維画分と短繊維画分の固形分比(分級比率)は60:40であった。短繊維画分のろ水度は290mlであり、分級前のパルプスラリーと比較して24%小さかった。
この分級後の原料に対して以下の薬品処理を行った。添加率は、全紙料固形分重量に対しての数値である。
<試料G> 長繊維画分のスラリー(濃度0.5%)に、スリーワン・モーターを用いて500rpmの速度で攪拌しながら、硫酸バンドを3%添加して混合した。
<試料H> 短繊維画分のスラリー(濃度0.5%)に、スリーワン・モーターを用いて500rpmの速度で攪拌しながら、ロゼッタ型の軽質炭酸カルシウム(平均粒子径2.5μm、比表面積9.0m
2/g)を20%添加・混合し、その後抄紙用添加剤として、紙力剤(ポリアクリルアミド、ハリマ化成製DE4412、添加量0.2%)を添加した。
【0115】
この試料Gと試料Hを、紙料G:紙料Hの重量比が20:80となるように混合後、抄紙用添加剤として歩留向上剤(ハイモ株式会社製ND300)を200ppmとなるように添加・混合し、紙料を調製した。
【0116】
この紙料を用いて、JIS P 8209に基づいて坪量60g/m
2の手抄シートを作製した。
【0117】
(実施例5−2)
試料Gと試料Hの重量比を40:60とした以外は、実施例5−1と同様に抄紙した。
【0118】
(実施例5−3)
試料Gと試料Hの重量比を80:20とした以外は、実施例5−1と同様に抄紙した。
【0119】
(比較例5−1)
この分級後の原料に抄紙用添加剤を添加することなく、長繊維と短繊維を20:80の重量比で混合した後、硫酸バンド(添加量3%)、紙力剤(ポリアクリルアミド、ハリマ化成製DE4412、添加量0.2%)、ロゼッタ型の軽質炭酸カルシウム(平均粒子径2.5μm、比表面積9.0m
2/g、添加量20%)、歩留向上剤(ハイモ株式会社製ND300、添加量200ppm)をこの順番で添加して紙料を調成した。この紙料を用いて、JIS P 8209に基づいて坪量60g/m
2の手抄シートを抄紙した。
【0120】
(比較例5−2)
長繊維と短繊維の混合割合を40:60とした以外は、比較例4−1と同様に抄紙した。
【0121】
(比較例5−3)
長繊維と短繊維の混合割合を80:20とした以外は、比較例4−1と同様に抄紙した。
【0122】
<評価結果>
分級により得られた繊維の物性を表8、作製した紙の評価結果を表9に示す。短繊維を紙力剤で処理した実施例の手抄き紙は、前処理を行わなかった比較例と比べて、裂断長が高くなることを見出した。
【0123】
【表8】
【0124】
【表9】
【0125】
実験6:紙の製造
(実施例6−1)
実施例5−1と同様にして、長繊維画分と短繊維画分を得た。
この分級後の原料に対して、以下の薬品処理を行った。
<試料I> 長繊維画分のスラリー(濃度0.5%)に、スリーワン・モーターを用いて500rpmの速度で攪拌しながら、硫酸バンドを3%添加して混合した。
<試料J> 短繊維画分のスラリー(濃度0.5%)に、スリーワン・モーターを用いて500rpmの速度で攪拌しながら、紡錘状の軽質炭酸カルシウム(平均粒子径2.6μm、比表面積6.0m
2/g、
図2参照)を20%添加・混合し、その後抄紙用添加剤として、紙力剤(ポリアクリルアミド、ハリマ化成製DE4412、添加量0.2%)を添加した。
【0126】
この試料Iと試料Jを、紙料I:紙料Jの重量比が40:60となるように混合後、抄紙用添加剤として歩留向上剤(ハイモ株式会社製ND300)を200ppmとなるように添加・混合し、紙料を調製した。
【0127】
この紙料を用いて、JIS P 8209に基づいて坪量60g/m
2の手抄シートを作製した。
【0128】
(比較例6−1)
この分級後の原料に抄紙用添加剤を添加することなく、長繊維と短繊維を40:60の重量比で混合した後、硫酸バンド(添加量3%)、紙力剤(ポリアクリルアミド、ハリマ化成製DE4412、添加量0.2%)、紡錘状の軽質炭酸カルシウム(平均粒子径2.6μm、比表面積6.0m
2/g、添加量20%、
図2参照)、歩留向上剤(ハイモ株式会社製ND300、添加量200ppm)をこの順番で添加して紙料を調成した。この紙料を用いて、JIS P 8209に基づいて坪量60g/m
2の手抄シートを抄紙した。
【0129】
<評価結果>
作製した紙の評価結果を表10に示す。短繊維を紙力剤で処理した実施例の手抄き紙は、前処理を行わなかった比較例と比べて、裂断長が高くなることを見出した。
【0130】
ただし実施例5と比較すると、使用する軽質炭酸カルシウムをロゼッタ型から紡錘状へ変更したことで、裂断長の上昇率は小さくなった。これは、紡錘状の軽質炭酸カルシウムとロゼッタ型の軽質炭酸カルシウムとを比較して、構造が異なること、比表面積が小さいことに由来すると考えられた。
【0131】
【表10】
【0132】
実験7:紙の製造
(実施例7−1)
相川鉄工株式会社パイロットテストプラントにて、LBKPとNBKPを7:3の割合で混合したパルプスラリー(混合後ろ水度357ml、固形分濃度2.6重量%)について、スリットスクリーンを用いて長繊維画分と短繊維画分に分級した。具体的には、スリットスクリーンとして相川鉄工社製MAXセーバー(MAX−S、アウトワード形式)を用い、スリット幅0.15mmの条件で処理し、長繊維画分と短繊維画分を得た。ここで、スクリーンのリジェクト分が長繊維画分であり、アクセプト分が短繊維画分であり、長繊維画分と短繊維画分の固形分比(分級比率)は20:80であった。短繊維画分のろ水度は198mlであり、分級前のパルプスラリーと比較して45%小さかった。
この分級後の原料に対して、以下の薬品処理を行った。
【0133】
長繊維画分を固形分濃度0.5%まで希釈し、スリーワン・モーターにて500rpmの速度で攪拌しながら、硫酸バンド(添加量3%)、ロゼッタ型の軽質炭酸カルシウム(平均粒子径2.5μm、比表面積9.0m
2/g、添加量10%)、紙力剤(ポリアクリルアミド、ハリマ化成製DE4412、添加量0.2%)、歩留向上剤(ハイモ株式会社製ND300、添加量200ppm)をこの順番で添加して紙料を調成した。この紙料を用いて、JIS P 8209に基づいて坪量60g/m
2の手抄シートを作製した。
【0134】
(実施例7−2)
分級後の原料として、短繊維画分を使用した以外は、実施例6−1と同様に抄紙した。
【0135】
(比較例7−1)
分級後の原料に抄紙用添加剤を添加することなく、長繊維と短繊維を20:80の重量比で混合した後、硫酸バンド(添加量3%)、ロゼッタ型の軽質炭酸カルシウム(平均粒子径2.5μm、比表面積9.0m
2/g、添加量10%)、紙力剤(ポリアクリルアミド、ハリマ化成製DE4412、添加量0.2%)、歩留向上剤(ハイモ株式会社製ND300、添加量200ppm)をこの順番で添加して紙料を調成した。この紙料を用いて、JIS P 8209に基づいて坪量60g/m
2の手抄シートを作製した。
【0136】
<評価結果>
分級により得られた繊維の物性を表8、作製した紙の評価結果を表9に示す。長繊維だけを使用した実施例1の手抄き紙は、分級前と同様の比率で長繊維と短繊維とを混合したパルプを使用した比較例と比べて、特に比引裂き強さが高くなることを見出した。一方、短繊維だけを使用した実施例1の手抄き紙は、同様の比較例と比べて、特に裂断長が高くなることを見出した。
【0137】
実施例7−1、実施例7−2、及び比較例7−1では、裂断長の値が、他の実験の填料添加が同じ場合の結果と比べ、高めの傾向であったが、実験7ではNBKPを30%配合しており、裂断長が高まり、このような結果が得られたと考えられた。
【0138】
【表11】
【0139】
【表12】