(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077364
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】車両構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20170130BHJP
B60J 5/06 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
B62D25/20 F
B60J5/06 A
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-75561(P2013-75561)
(22)【出願日】2013年3月31日
(65)【公開番号】特開2014-201073(P2014-201073A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】岩田 晃幸
(72)【発明者】
【氏名】松田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】市川 隆幸
【審査官】
川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−083255(JP,A)
【文献】
特開平10−316047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00 − 25/08
B62D 25/14 − 29/04
B60J 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッカリインフォースとして、前部リインフォースと、この前部リインフォースの車両後方側に位置する後部リインフォースとを備えており、
この後部リインフォースの上側領域に、リヤスライドドアのロアガイド用のレールケースが配設されている、車両構造であって、
前記前部リインフォースの少なくとも後部は、その形状が断面ハット状とされ、かつ横向き開口の取付け姿勢とされて略水平状の板部を有しており、
前記レールケースは、このレールケースを構成する上側ケースパネルおよび下側ケースパネルに設けられている一対のフランジがこのレールケースの前部から車両前方に向けて突出した構成とされており、
前記前部リインフォースの前記板部と前記レールケースの前記一対のフランジとは接合されていることを特徴とする、車両構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両構造であって、
前記上側ケースパネルのうち、前記一対のフランジの近傍部分には、リヤスライドドアのロアローラ用のストッパ片が取り付けられ、かつこのストッパ片の下部は、前記後部リインフォースに接合されている、車両構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リヤスライドドアを有するタイプの車両構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両構造の一例として、特許文献1に記載のものがある。
同文献に記載の車両構造においては、リヤスライドドアのロアガイド用のレールケースが、車両下部のロッカ(サイドシル)内に配設されており、このロッカ内には、ロッカリインフォースも配設されている。このロッカリインフォースは、前部および後部の2つのリインフォースに分割して設けられ、かつ前部リインフォースをレールケースと連結することにより、前突荷重の伝達が図られるようにされている。前部リインフォースをレールケースに連結するための手段としては、それらとは別体の連結部材を利用し、前部リインフォースをレールケースの上面部に連結する手段が採用されている。前記連結部材は、センタピラーのリインフォースにも連結されており、前突荷重の入力時には、この荷重がレールケースの上面部に集中しないようにされている。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次のような不具合がある。
【0004】
すなわち、前部リインフォースとレールケースの上面部とを連結するための専用の連結部材が用いられているため、その分だけ部品点数が増える。したがって、軽量化や低コスト化を図る上で余り好ましくない。
また、前記従来技術は、連結部材をセンタピラーにも連結させるものであるために、センタピラーを有しない車両には適切に採用することができない。
仮に、センタピラーとの連結を図ることなく、ただ単純に前部リインフォースとレールケースの上面部とを連結部材で連結するだけの構造を採用した場合には、レールケースの上面部の剛性をかなり高める必要がある。剛性が不足したのでは、前突荷重の入力時に大きく変形し、適切な荷重伝達ができない。これを防止すべくレールケースの上面部の剛性を高めるには、この部分の厚肉化などを図る必要があり、重量増加や製造コストの上昇を招いてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−23632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、専用部品を用いるようなことなく、構成が簡易な手段によって、前突荷重を車両後部側に適切に伝達することが可能な車両構造を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される車両構造は、ロッカリインフォースとして、前部リインフォースと、この前部リインフォースの車両後方側に位置する後部リインフォースとを備えており、この後部リインフォースの上側領域に、リヤスライドドアのロアガイド用のレールケースが配設されている、車両構造であって、前記前部リインフォースの少なくとも後部は、その形状が断面ハット状とされ、かつ横向き開口の取付け姿勢とされて略水平状の板部
を有しており、前記レールケースは、このレールケースを構成する上側ケースパネルおよび下側ケースパネルに設けられている一対のフランジがこのレールケースの前部から車両前方に向けて突出した構成とされており、前記前部リインフォースの前記板部と前記レールケースの前記一対のフランジとは接合されていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
第1に、前部リインフォースとレールケースとは直結されており、これらを連結するための専用部品は不要である。したがって、部品点数の削減による軽量化や製造コストの低減を好適に図ることができる。
第2に、前部リインフォースの後部は、断面ハット状であり、その剛性を高くすることが可能である。一方、レールケースの一対のフランジが設けられている箇所は、たとえばレールケースの上面部などと比較すると、その剛性が格段に高い部分である。したがって、前突荷重を受けた際に前記した各所が大きく変形するようなことはなく、荷重伝達を適切に行なわせることが可能である。このため、特許文献1とは異なり、センタピラーを有しない車両にも好適となる。
第3に、前部リインフォースと接合される一対のフランジとしては、上側ケースパネルと下側ケースパネルとの接合に利用されるものを用いることができる。このため、たとえばレールケースに特別な改良を加えるといった必要はない。レールケースを厚肉化するといった必要性もない。さらに、前部リインフォースの後部の略水平状の板部と、レールケースの一対のフランジとを接合する作業は容易に行なうことが可能である。このようなことから、製造コストの一層の低減を図ることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記上側ケースパネルのうち、前記一対のフランジの近傍部分には、リヤスライドドアのロアローラ用のストッパ片が取り付けられ、かつこのストッパ片の下部は、前記後部リインフォースに接合されている。
【0011】
このような構成によれば、前突荷重の入力時にレールケースの一対のフランジが、いわゆる口開き状態に変形し難くなる効果が得られる。このような効果は、ロアローラ用のストッパ片を利用して得られるので合理的である。
【0012】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(a)は、本発明に係る車両構造の一例を示す要部斜視図である。(b)は、(a)の要部拡大斜視図である。(c)は、(b)のIc−Ic断面図である。(d)は、(a)のId−Id断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
図面において、矢印Frは車両前方を示し、矢印Ouは車幅方向外方を示し、矢印Upは上方を示す。
【0015】
図1に示す車両構造Cは、センタピラーを有しない車両構造であり、フロントピラー90とリヤピラー91との間に形成されたドア用開口部95の下側には、ロッカリインフォースとして、前部リインフォース1、およびその車両後部側に位置する後部リインフォース2が設けられている。後部リインフォース2の上側領域には、リヤスライドドア(図示略)のロアガイド用のレールケース3が配設されている。なお、
図1(d)の仮想線に示すように、ロッカ4は、ロッカアウタパネル40とロッカインナパネル41とを組み合わせて構成される。
【0016】
前部リインフォース1は、
図1(b)に示すように、その略全長域が断面ハット状であり、その取付け姿勢は横向き開口状である。このため、前部リインフォース1は、略水平状の上下一対の板部10a,10b、これらの一側縁どうしを繋ぐ起立板部11、および板部10a,10bの他側縁に繋がった一対の起立板部12a,12bを有している。
【0017】
レールケース3は、上側ケースパネル30aと下側ケースパネル30bとを組み合わせて構成されており、上側ケースパネル30aには、リヤスライドドアのロアガイドレール31が設けられている。上側ケースパネル30aと下側ケースパネル30bとは、フランジ接合されており、
図1(c)に示すように、レールケース3の前部には、車両前方に向けて突出した一対のフランジ32が設けられている。これら一対のフランジ32と前部リインフォース1の板部10aとは、互いに重ね合わされて接合されている。接合手段は、たとえばスポット溶接である(
図1(c)の符号Wで示す部分は、溶接部である)。なお、レールケース3の前面部33と前部リインフォース1の後端面14とは、互いに対面している。
【0018】
レールケース3の車幅方向内側には、スライドドアのロアローラを受けるガセット6が取り付けられている。上側ケースパネル30aのうち、一対のフランジ32の近傍部分には、ロアローラ用のストッパ片7が取り付けられている。このストッパ片7の下部は、後部リインフォース2に接合されている。
【0019】
次に、前記した車両構造Cの作用について説明する。
【0020】
まず、前部リインフォース1の後部は、既述したように断面ハット状であり、その剛性は高い。一方、レールケース3の一対のフランジ32およびその周辺部も、剛性が高い部分である。したがって、前突荷重を受けた際に、それらの部分が大きく変形するようなことはなく、前突荷重は前部リインフォース1からレールケース3に対して適切に伝達され、車両後部側において前突荷重を適切に受けることが可能となる。ロアローラ用のストッパ片7は、上側ケースパネル30aのうち、一対のフランジ32の近傍部分から後部リインフォース2に跨がるようにして取り付けられているため、前突荷重を受けた際に一対のフランジ32が上下に開くように変形することも抑制される。
【0021】
前突荷重が相当に大きいなどの何らかの事情に起因し、仮に、一対のフランジ32と前部リインフォース1との接合状態が解除されたとしても、この場合には前部リインフォース1の後端面14(起立板部12aの後端面も含む)がレールケース3の前面部33に直接当接する。したがって、この場合においても、前突荷重がレールケース3側に適切に伝達される。なお、本実施形態では、後端面14と前面部33とを離間させた状態に設定しているが、本発明はこれに限定されず、これら後端面14と前面部33とを対面接触させた状態に設定してもよい。
【0022】
前部リインフォース1とレールケース3とは直結されており、これらを連結するための専用部品は不要である。レールケース3の一対のフランジ32は、レールケース3に元々具備されるものである。このようなことから、本実施形態では、部品点数の少数化による軽量化や製造コストの低減を適切に図ることが可能である。前部リインフォース1の板部10aとレールケース3の一対のフランジ32とを接合する作業も、容易に行なうことが可能である。
【0023】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る車両構造の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
本発明は、センタピラーを有するタイプの車両にも適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0024】
C 車両構造
1 前部リインフォース(ロッカリインフォース)
2 後部リインフォース(ロッカリインフォース)
3 レールケース
4 ロッカ
7 ロアローラ用のストッパ片
10a 板部(前部リインフォースの)
30a 上側ケースパネル
30b 下側ケースパネル