(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スイッチング素子(21a,22a,23a,…,2na)を含み、キャリア周波数(fc1,fc2,fc3,…)に基づく所定の変調パターンで前記スイッチング素子のスイッチングを行うことにより、入力される電力を変換して出力する電力変換装置(10)において、
それぞれが前記スイッチングを行うことにより、前記キャリア周波数よりも低いノイズが発生するとともに、並列接続される複数のスイッチ回路(21,22,23,…,2n)を有し、
前記複数のスイッチ回路のうちで一以上のスイッチ回路は、波形合成によって前記ノイズを抑制するように前記所定の変調パターンの位相をずらす制御を行う変調制御手段(21b,22b,23b,…,2nb)を有することを特徴とする電力変換装置。
前記変調制御手段は、前記所定の変調パターンにかかる変調周期(T1,T2,T3)の一周期が同じになるように制御することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電力変換装置。
前記変調制御手段は、前記キャリア周波数の増減変化に対応する変化期間(T1a,T1b,T2a,T2b,T3a,T3b)が同じになるように制御することを特徴とする請求項7に記載の電力変換装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のスイッチング信号は、所定の繰り返し順序で選択して時間順次に配列するので、単位周期内における変調周波数が変化する。当該変調周波数の変化は、キャリア波(搬送波)のように作用するため、AM(中波)帯域よりも低いLW(長波)帯域のノイズとしてあらわれる。特に可聴周波数帯と重なる場合には、回路部品(例えばトランスやコンデンサ等)で生じる異音の要因となり得る。また、ラジオやオーディオ機器のスピーカから異音となって発生する。特にトンネルなどの弱電界下では、不快に感じやすい異音になる。
【0005】
本発明はこのような点に鑑みてなしたものであり、AM帯域よりも低い帯域におけるノイズの発生を抑制できる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、スイッチング素子(21a,22a,23a,…,2na)を含み、キャリア周波数(fc1,fc2,fc3,…)に基づく所定の変調パターンで前記スイッチング素子のスイッチングを行うことにより、入力される電力を変換して出力する電力変換装置(10)において、それぞれが前記スイッチングを行
うことにより、前記キャリア周波数よりも低いノイズが発生するとともに、並列接続される複数のスイッチ回路(21,22,23,…,2n)を有し、前記複数のスイッチ回路のうちで一以上のスイッチ回路は、
波形合成によって前記ノイズを抑制するように前記所定の変調パターンの位相をずらす
制御を行う変調制御手段(21b,22b,23b,…,2nb)を有することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、あるスイッチ回路のスイッチングによって
キャリア周波数よりも低いノイズが発生しても、他のスイッチ回路では
波形合成によってノイズを抑制するように位相をずらした所定の変調パターンでスイッチングを行う。したがって、
キャリア周波数よりも低いノイズの発生を抑制することができる。
【0008】
第2の発明は、前記複数のスイッチ回路をn(nは2以上の整数)とすると、前記変調制御手段は、所定の前記スイッチ回路を基準とし、前記所定の変調パターンの位相を360度/nずつずらすように制御することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、所定の変調パターンの位相を360度/nずつずらすことで、AM帯域よりも低い帯域におけるノイズの発生を抑制することができる。
【0010】
第3の発明は、スイッチング素子(21a,22a,23a,…,2na)を含み、キャリア周波数(fc1,fc2,fc3
,…)に基づく所定の変調パターンで前記スイッチング素子のスイッチングを行うことにより、入力される電力を変換して出力する電力変換装置(10)において、それぞれが前記スイッチングを行い、並列接続される複数のスイッチ回路(21,22,23,…,2n)を有し、前記複数のスイッチ回路のうちで一以上のスイッチ回路は、前記所定の変調パターンを反転させるように制御する変調制御手段(21b,22b,23b,…,2nb)を有することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、あるスイッチ回路のスイッチングによってAM帯域よりも低い帯域のノイズが発生しても、他のスイッチ回路では当該ノイズとの波形合成によって消音するように反転させた所定の変調パターンでスイッチングを行う。したがって、AM帯域よりも低い帯域におけるノイズの発生を抑制することができる。
【0012】
なお「スイッチ回路」は、スイッチング素子を含み、スイッチングを行う回路であればよい。例えば、コンバータやインバータ等が該当する。「所定の変調パターン」は、一種類の変調パターン(周期パターンを含む)でもよく、二種類以上を組み合わせた変調パターンでもよく、作動中に変調パターンを変更してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、特に明示しない限り、「接続する」という場合には電気的に接続することを意味する。各図は、本発明を説明するために必要な要素を図示し、実際の全要素を図示しているとは限らない。上下左右等の方向を言う場合には、図面の記載を基準とする。
【0015】
〔実施の形態1〕
実施の形態1は
図1〜
図5を参照しながら説明する。電力変換装置10は、「コンバータ」に相当し、入力電圧Vin(例えば288[V])を所要の出力電圧Vout(例えば14[V])に変換して出力する機能を担う。電力変換装置10の入力端子Tinには電力源Ebが接続され、出力端子Toutには負荷Zが接続される。電力源Ebは、例えばバッテリ(二次電池等)や燃料電池などが該当する。負荷Zは、例えば電力源Ebとは別個のバッテリ、回転電機(電動発電機、発電機,電動機等)、ヘッドランプなどが該当する。出力電圧Voutは任意の値で設定してよい。電力変換装置10内に設定してもよく、外部処理装置(例えばECUやコンピュータ等)から受ける信号やデータ等に基づいて設定してもよい。
【0016】
図1に示す電力変換装置10は、スイッチ回路21,22やフィルタ回路30などを有する。スイッチ回路21は、基準となる「所定のスイッチ回路」に相当し、スイッチング素子21aや変調制御手段21bなどを有する。スイッチ回路22は、「複数のスイッチ回路のうちで一以上のスイッチ回路」に相当し、スイッチング素子22aや変調制御手段22bなどを有する。本形態のスイッチ回路21を「マスター」とし、スイッチ回路22を「スレーブ」として作動する主従関係で制御を行う。図示および説明を省略するが、スイッチ回路22を「マスター」とし、スイッチ回路21を「スレーブ」として作動する主従関係で制御を行ってもよい。
【0017】
スイッチ回路21に備えるスイッチング素子21aの数と、スイッチ回路22に備えるスイッチング素子22aの数とは、それぞれ一以上で任意に設定してよい。スイッチ回路21,22で同じ数としてもよく、異なる数としてもよい。具体的には、フルブリッジ型、ハーフブリッジ型、フォワード型、プッシュプル型、フライバック型などの回路構成型に応じて、必要となるスイッチング素子の数が異なる。
【0018】
変調制御手段21bは、所定の変調パターンでスイッチング素子21aをスイッチングするように制御し、変調制御手段22bに対して同期信号Ps2を伝達する。同期信号Ps2を受けた変調制御手段22bは、所定の変調パターンの位相をずらしてスイッチング素子22aをスイッチングするように制御する。「所定の変調パターン」は任意のパターンを設定してよい。例えば、一種類の変調パターンで設定してもよく、二種類以上を組み合わせた変調パターンで設定してもよく、作動中に変調パターンを変更してもよい。
【0019】
フィルタ回路30は平滑部などを有し、必要に応じて整流部を有する。平滑部は、コイル(インダクタ)やコンデンサなどを有し、出力電圧Voutを平滑化する。整流部は、ダイオードなどの整流素子を有し、スイッチング素子21a,22aによって出力される電力が交流である場合に整流を行う。
【0020】
上述のように構成された電力変換装置10において、スイッチ回路21,22の制御例について
図2と
図3を参照しながら説明する。
図2は、キャリア波を正弦波(奇関数波形)として、所定の変調パターンでスイッチングする場合の制御例である。
図2の上段には、キャリア周波数fc1を基準とし、上限周波数fc1(1+δ)と下限周波数fc1(1-δ)との間で変化するスイッチ回路21の制御例を示す。
図2の下段には、キャリア周波数fc2を基準とし、上限周波数fc2(1+δ)と下限周波数fc2(1-δ)との間で変化するスイッチ回路22の制御例を示す。δには任意の値を設定してよい。
図2の上段と下段に示す例は、後述する
図3〜
図5についても同様である。
【0021】
図示するように、キャリア波(正弦波)は、スイッチ回路21とスイッチ回路22とで位相が180度ずれる。本形態では、スイッチ回路22がスイッチ回路21と比べて位相を遅らせるが、位相を進めてもよい。
【0022】
具体的には、スイッチ回路21のキャリア波を基準とするとき、スイッチ回路22のキャリア波は逆相となるように制御される。スイッチ回路21の変調周期T1(時刻t12から時刻t14まで)と、スイッチ回路22の変調周期T2(時刻t12から時刻t14まで)とが等しくなるように制御するとよい(T1=T2;時刻t12から時刻t14まで)。キャリア周波数の増減変化については、スイッチ回路21の変化期間T1aと、スイッチ回路22の変化期間T2aとが等しくなるように制御するとよい(T1a=T2a;時刻t12から時刻t13まで)。また、スイッチ回路21の変化期間T1bと、スイッチ回路22の変化期間T2bとが等しくなるように制御するとよい(T1b=T2b;時刻t13から時刻t14まで)。
【0023】
図3は、キャリア波を三角波(奇関数波形)として、所定の変調パターンでスイッチングする場合の制御例である。
図2との相違は波形である。スイッチ回路21の変調周期T1(時刻t22から時刻t24まで)と、スイッチ回路22の変調周期T2(時刻t22から時刻t24まで)とが等しくなるように制御するとよい(T1=T2;時刻t22から時刻t24まで)。キャリア周波数の増減変化については、スイッチ回路21の変化期間T1aと、スイッチ回路22の変化期間T2aとが等しくなるように制御するとよい(T1a=T2a;時刻t22から時刻t23まで)。また、スイッチ回路21の変化期間T1bと、スイッチ回路22の変化期間T2bとが等しくなるように制御するとよい(T1b=T2b;時刻t23から時刻t24まで)。
【0024】
上述した実施の形態1によれば、以下に示す各効果を得ることができる。
【0025】
(1)電力変換装置10において、それぞれがスイッチングを行い、並列接続される複数のスイッチ回路21,22を有し、複数のスイッチ回路21,22のうちで一以上のスイッチ回路21,22は、所定の変調パターンの位相をずらすように制御する変調制御手段21b,22bを有する構成とした(
図1を参照)。この構成によれば、あるスイッチ回路21のスイッチングによってAM帯域よりも低い帯域のノイズが発生しても、他のスイッチ回路22では当該ノイズとの波形合成によって消音するように位相をずらした所定の変調パターンでスイッチングを行う。したがって、AM帯域よりも低い帯域におけるノイズの発生を抑制することができる。また、ノイズの発生が抑制されるので、フィルタ回路30を簡素化することができ、コストを低減できる。
【0026】
(2)複数のスイッチ回路21,22を2(n=2)とし、変調制御手段22bは、所定のスイッチ回路21を基準とし、所定の変調パターンの位相を180度(360度/n)ずらすように制御する構成とした(
図1〜
図3を参照)。スイッチ回路22を基準とする場合、変調制御手段21bは所定の変調パターンの位相を180度ずらすように制御すればよい。これらの構成によれば、所定の変調パターンの位相を180度ずらすことで、AM帯域よりも低い帯域におけるノイズの発生を抑制することができる。
【0027】
(3)変調制御手段22bは、位相を遅らせるように制御する構成とした(
図2,
図3を参照)。スイッチ回路22を基準とする場合、変調制御手段21bは位相を遅らせればよい。これらの構成によれば、位相を遅らせることでノイズが相殺されるので、結果としてAM帯域よりも低い帯域におけるノイズの発生を抑制することができる。
【0028】
(4)所定の変調パターンは、正弦波や三角波を含む奇関数波形である構成とした(
図2,
図3を参照)。この構成によれば、キャリア波が奇関数波形の場合において、AM帯域よりも低い帯域におけるノイズの発生を抑制することができる。
【0029】
(7)変調制御手段21b,22bは、所定の変調パターンにかかる変調周期T1,T2の一周期が同じになる(T1=T2)ように制御する構成とした(
図2,
図3を参照)。この構成によれば、変調周期T1,T2の一周期が同じになるように制御すると、AM帯域よりも低い帯域におけるノイズの発生を確実に抑制することができる。
【0030】
(8)変調制御手段21b,22bは、キャリア周波数fc1,fc2の増減変化に対応する変化期間T1a,T1b,T2a,T2bが同じになる(T1a=T2a,T1b=T2b)ように制御する構成とした(
図2,
図3を参照)。この構成によれば、キャリア周波数fc1,fc2の増減変化に対応する変化期間が同じになるように制御すると、AM帯域よりも低い帯域におけるノイズの発生を確実に抑制することができる。
【0031】
〔実施の形態2〕
実施の形態2は
図4と
図5を参照しながら説明する。なお、電力変換装置10の構成等は実施の形態1と同様であり、図示および説明を簡単にするために実施の形態2では実施の形態1と異なる点について説明する。よって実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0032】
実施の形態2が実施の形態1と異なるのは、キャリア波である。具体的には、実施の形態1が奇関数波形であるのに対し、実施の形態2は偶関数波形である点で相違する。よって、実施の形態2の変調制御手段21b,22bは実施の形態と機能が異なる。本形態は実施の形態1と同様に、スイッチ回路21を「マスター」とし、スイッチ回路22を「スレーブ」として作動する主従関係で制御を行う例について説明する。
【0033】
変調制御手段21bは、実施の形態1と同様に作動し、所定の変調パターンでスイッチング素子21aをスイッチングするように制御する。変調制御手段21bから同期信号Ps2を受けた変調制御手段22bは、所定の変調パターンを反転させてスイッチング素子22aをスイッチングするように制御する。
【0034】
図4は、キャリア波を鋸波(偶関数波形)として、所定の変調パターンでスイッチングする場合の制御例である。
図2に示す制御例とは、位相をずらすのではなく、所定の変調パターンを反転させる点が相違する。スイッチ回路21の変調周期T1(時刻t32から時刻t34まで)と、スイッチ回路22の変調周期T2(時刻t32から時刻t34まで)とが等しくなるように制御するとよい(T1=T2;時刻t32から時刻t34まで)。キャリア周波数の増減変化については、スイッチ回路21の変化期間T1aと、スイッチ回路22の変化期間T2aとが等しくなるように制御するとよい(T1a=T2a;時刻t32から時刻t33まで)。また、スイッチ回路21の変化期間T1bと、スイッチ回路22の変化期間T2bとが等しくなるように制御するとよい(T1b=T2b;時刻t33から時刻t34まで)。
【0035】
図5は、キャリア波を矩形波(偶関数波形)として、所定の変調パターンでスイッチングする場合の制御例である。
図5は、PWM(Pulse Width Modulation)でスイッチング素子21a,22aをスイッチングする制御例を示す。キャリア周波数の増減変化については、スイッチ回路21の変化期間T1aと、スイッチ回路22の変化期間T2aとが等しくなるように制御するとよい(T1a=T2a;時刻t42から時刻t43まで)。また、スイッチ回路21の変化期間T1bと、スイッチ回路22の変化期間T2bとが等しくなるように制御するとよい(T1b=T2b;時刻t43から時刻t44まで)。
【0036】
上述した実施の形態2によれば、以下に示す各効果を得ることができる。なお、電力変換装置10の構成については実施の形態1と同様であるので、上述した(1),(2),(7),(8)と同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
(5)スイッチング素子21a,22aを含み、キャリア周波数fc1,fc2に基づく所定の変調パターンでスイッチング素子21a,22aのスイッチングを行うことにより、入力される電力を変換して出力する電力変換装置10において、それぞれがスイッチングを行い、並列接続される複数のスイッチ回路21,22を有し、複数のスイッチ回路21,22のうちで一以上のスイッチ回路21,22は、所定の変調パターンを反転させるように制御する変調制御手段21b,22bを有する構成とした(
図1,
図4,
図5を参照)。この構成によれば、あるスイッチ回路21のスイッチングによってAM帯域よりも低い帯域のノイズが発生しても、他のスイッチ回路22では当該ノイズとの波形合成によって消音するように反転させた所定の変調パターンでスイッチングを行う。したがって、AM帯域よりも低い帯域におけるノイズの発生を抑制することができる。
【0038】
(6)所定の変調パターンは、鋸波や矩形波を含む偶関数波形である構成とした(
図4,
図5を参照)。この構成によれば、キャリア波が奇関数波形の場合において、AM帯域よりも低い帯域におけるノイズの発生を抑制することができる。
【0039】
〔実施の形態3〕
実施の形態3は
図6〜
図8を参照しながら説明する。なお、電力変換装置10の構成等は実施の形態1と同様であり、図示および説明を簡単にするために実施の形態3では実施の形態1,2と異なる点について説明する。よって実施の形態1,2で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
実施の形態3が実施の形態1,2と異なるのは、スイッチ回路の数である。具体的には、実施の形態1,2が2(n=2)であるのに対し、実施の形態3は3(n=3)である点で相違する。実施の形態3では、スイッチ回路23を新たに備える。
【0041】
スイッチ回路23は、「複数のスイッチ回路のうちで一以上のスイッチ回路」に相当し、スイッチング素子23aや変調制御手段23bなどを有する。本形態では実施の形態1,2と同様に、スイッチ回路21を「マスター」とし、スイッチ回路22,23を「スレーブ」として作動する主従関係で制御を行う例について説明する。なお、スイッチ回路21,22,23のうちで、いずれか一のスイッチ回路を「マスター」とし、「マスター」以外のスイッチ回路を「スレーブ」として作動する主従関係で制御を行ってもよい。
【0042】
変調制御手段21bは、変調制御手段22bに対して同期信号Ps2を伝達するとともに、変調制御手段23bに対して同期信号Ps3を伝達する。同期信号Ps3を受けた変調制御手段23bは、所定の変調パターンの位相をずらしてスイッチング素子23aをスイッチングするように制御する。
【0043】
上述のように構成された電力変換装置10において、スイッチ回路21,22,23の制御例について
図7と
図8を参照しながら説明する。キャリア波を正弦波(奇関数波形の一例)とする制御例を
図7に示し、キャリア波を矩形波(偶関数波形の一例)とする制御例を
図8に示す。
【0044】
実施の形態1,2と同様に、
図7の上段にはスイッチ回路21の制御例を示し、
図7の中段にはスイッチ回路22の制御例を示す。さらに
図7の下段には、キャリア周波数fc3を基準とし、上限周波数fc3(1+δ)と下限周波数fc3(1-δ)との間で変化するスイッチ回路23の制御例を示す。図示するように、キャリア波(正弦波)は、スイッチ回路21,22,23の相互間で位相が120度(=360度/3)ずつずれる。図示しないが、
図3に示す三角波についても同様に制御できる。本形態では、スイッチ回路22,23がスイッチ回路21と比べて位相を遅らせるが、位相を進めてもよい。
【0045】
スイッチ回路21の変調周期T1(時刻t52から時刻t54まで)と、スイッチ回路22の変調周期T2(時刻t52から時刻t54まで)と、スイッチ回路23の変調周期T3(時刻t52から時刻t54まで)とが等しくなるように制御するとよい(T1=T2=T3;時刻t52から時刻t54まで)。キャリア周波数の増減変化については、スイッチ回路21の変化期間T1aと、スイッチ回路22の変化期間T2aと、スイッチ回路23の変化期間T3aとが等しくなるように制御するとよい(T1a=T2a=T3a;時刻t52から時刻t53まで)。また、スイッチ回路21の変化期間T1bと、スイッチ回路22の変化期間T2bと、スイッチ回路23の変化期間T3bとが等しくなるように制御するとよい(T1b=T2b=T3b;時刻t53から時刻t54まで)。
【0046】
図8は、キャリア波を矩形波(偶関数波形)として、所定の変調パターンでスイッチングする場合の制御例である。最上段(1段目)にはスイッチ回路21の制御例を示し、2段目にはスイッチ回路22の制御例を示し、3段目にはスイッチ回路23の制御例を示し、最下段(4段目)には
図6に二点鎖線で示すスイッチ回路24の制御例を示す。すなわち、PWMでスイッチング素子21a,22a,23a,24aをスイッチングする制御例である。スイッチ回路24の変調制御手段24bは、キャリア周波数fc4を基準とし、上限周波数fc4(1+δ)と下限周波数fc4(1-δ)との間で変化するように制御する。
【0047】
図中のキャリア周波数の増減変化については、スイッチ回路21の変化期間T1aと、スイッチ回路22の変化期間T2aとが等しくなるように制御するとよい(T1a=T2a;時刻t62から時刻t63まで)。スイッチ回路21の変化期間T1bと、スイッチ回路22の変化期間T2bとが等しくなるように制御するとよい(T1b=T2b;時刻t63から時刻t64まで)。スイッチ回路23の変化期間T3aと、スイッチ回路24の変化期間T4aとが等しくなるように制御するとよい(T3a=T4a;時刻t62から時刻t63まで)。スイッチ回路23の変化期間T3bと、スイッチ回路24の変化期間T4bとが等しくなるように制御するとよい(T3b=T4b;時刻t63から時刻t64まで)。消音できる限り、
図8の最上段から最下段までに示す制御をどのように組み合わせて行ってよい。スイッチ回路21〜24の全部で行う場合の変調周期は、T1=T2=T3=T4になるように制御するとよい。
【0048】
上述した実施の形態3によれば、実施の形態1,2とはスイッチ回路の数が相違するに過ぎないので、実施の形態1,2と同様の作用効果を得ることができる。
【0049】
〔実施の形態4〕
実施の形態4は
図9を参照しながら説明する。なお、電力変換装置10の構成等は実施の形態1と同様であり、図示および説明を簡単にするために実施の形態4では実施の形態1〜3と異なる点について説明する。よって実施の形態1〜3で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
実施の形態4が実施の形態1〜3と異なるのは、スイッチ回路の数である。具体的には、実施の形態1,2が2であり、実施の形態3が3であるのに対し、実施の形態4はn(n>3)である点で相違する。すなわち、
図9に示す電力変換装置10は、nのスイッチ回路21,22,23,…,2nを有する。
【0051】
本形態では実施の形態1〜3と同様に、スイッチ回路21を「マスター」とし、スイッチ回路22,23,…,2nを「スレーブ」として作動する主従関係で制御を行う例について説明する。なお、スイッチ回路21,22,23,…,2nのうちで、いずれか一のスイッチ回路を「マスター」とし、「マスター」以外のスイッチ回路を「スレーブ」として作動する主従関係で制御を行ってもよい。
【0052】
図示しないが、キャリア波が奇関数波形の場合には、
図7に示す制御例と同様に、位相を360度/nずつずらしてスイッチング素子をスイッチングするように制御すればよい。同様にキャリア波が偶関数波形の場合には、
図8に示す制御例と同様に、PWMでスイッチング素子をスイッチングするように制御すればよい。
【0053】
上述した実施の形態4によれば、実施の形態1〜3とはスイッチ回路の数が相違するに過ぎないので、実施の形態1〜3と同様の作用効果を得ることができる。
【0054】
〔実施の形態5〕
実施の形態5は
図10を参照しながら説明する。なお、電力変換装置10の構成等は実施の形態1と同様であり、図示および説明を簡単にするために実施の形態5では実施の形態1〜3と異なる点について説明する。よって実施の形態1〜3で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
実施の形態5が実施の形態1〜4と異なるのは、指令系統である。具体的には、実施の形態1〜4では一のスイッチ回路(例えばスイッチ回路21)を「マスター」とし、他のスイッチ回路(例えばスイッチ回路22等)を「スレーブ」として作動する主従関係で制御する指令系統である。これに対して本形態は、スイッチ回路21,22等に対してそれぞれ同期信号Ps1,Ps2等を伝達する制御装置40を備える点が相違する。制御装置40は、例えばECUやコンピュータ等でもよく、外部処理装置でもよい。
【0056】
図10に示す電力変換装置10は、実施の形態4と同様に、nのスイッチ回路21,22,23,…,2nを有する。制御装置40は、スイッチ回路21に対して同期信号Ps1を伝達し、スイッチ回路21に対して同期信号Ps2を伝達し、…、スイッチ回路2nに対して同期信号Psnを伝達する。言い換えると、スター型の指令系統で構成する。制御方法は実施の形態1〜4と同様に行えばよい。なお、
図10の制御装置40は電力変換装置10の外に備える例を示すが、電力変換装置10内に備えてもよい。
【0057】
上述した実施の形態5によれば、実施の形態1〜4とは指令系統が相違するに過ぎない。n=2の場合には実施の形態1,2と同様の作用効果を得ることができ、n=3の場合には実施の形態3と同様の作用効果を得ることができ、n>3の場合には実施の形態4と同様の作用効果を得ることができる。
【0058】
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための形態について実施の形態1〜5に従って説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。例えば、次に示す各形態を実現してもよい。
【0059】
上述した実施の形態1〜4ではマスター・スレーブ型の指令系統で構成し、実施の形態5では制御装置40を中心とするスター型の指令系統で構成した(
図1,
図6,
図9,
図10を参照)。この形態に代えて、n>2の場合は他の指令系統で構成してもよい。他の指令系統には、例えばバス型,デイジーチェーン型,リング型などが該当する。バス型は、1本状の信号線にスイッチ回路21,22,23,…,2nをそれぞれ接続し、当該信号線を介して同期信号を伝達する。デイジーチェーン型は、変調制御手段21b,22b,23b,…,2nbを列状(数珠つなぎ)に接続し、同期信号はスイッチ回路を介して順次伝達する。リング型は環状の信号線に変調制御手段21b,22b,23b,…,2nbをそれぞれ接続し、当該信号線を介して同期信号(トークンとも呼ばれる)を伝達する。いずれの指令系統で構成するにせよ、キャリア周波数の位相をずらしたり、反転させたりすることができるので、発生するノイズを消音することができる。したがって、実施の形態1〜5と同様の作用効果を得ることができる。
【0060】
上述した実施の形態1〜5では、キャリア周波数fc1,fc2,fc3を中心周波数として対称的に±δの範囲内で変化させる構成とした(
図2〜
図5,
図7を参照)。この形態に代えて、中心周波数に対して非対称の範囲内で変化させる構成としてもよい。言い換えると、中心周波数から上限周波数までの範囲と、中心周波数から下限周波数までの範囲とを異ならせる。このように構成しても、キャリア周波数の位相をずらしたり、反転させたりすることで、発生するノイズを消音することができる。したがって、実施の形態1〜5と同様の作用効果を得ることができる。
【0061】
上述した実施の形態1〜5では、電力変換装置10をコンバータとして適用する構成とした(
図1,
図6,
図9,
図10を参照)。この形態に代えて、電力変換装置10をインバータとして適用する構成としてもよい。負荷Z(例えば回転電機等)によっては、フィルタ回路30を不要としてもよい。インバータとして適用する場合でも、あるスイッチ回路でノイズが発生しても、他のスイッチ回路22で当該ノイズとの波形合成によって消音する。したがって、実施の形態1〜5と同様の作用効果を得ることができる。