(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態を説明する。具体的な実施形態を説明する前に、まず、本開示の技術の基礎となった知見を説明する。なお、本明細書において、「光」には、可視光の他、赤外線および紫外線が含まれるものとし、前者を「赤外光」、後者を「紫外光」と呼ぶ。
【0011】
図11は、特許文献1に開示された装置に類似する構成を有する液晶表示装置を模式的に示す図である。液晶表示装置101は、行および列状に配列された複数のカラーフィルタを有する透過液晶パネル102と、2つの蛍光管104a、104bと、散乱パネル105と、可視光よりも波長の長い光(赤外光)に感度を有する2つの赤外光カメラ103a、103bとを備えている。
【0012】
散乱パネル105における2枚のガラス基板106a、106bの間には、液晶層107および反射膜109が積層されている。液晶層107には透明電極108が、反射膜109には2つの透明電極108a、108bが埋め込まれており、透明電極108と、透明電極108a、108bとの間に電圧を印加することにより、液晶層107中の透明電極108a、108bに対向する部分を光が透過する状態(透過モード)に変化させることができる。透過モードにすることにより、透明電極108aおよび透明電極108bの背後にそれぞれ設置された赤外光カメラ103aおよび赤外光カメラ103bに光が入射し、撮像が可能となる。
【0013】
蛍光管104a、104bから出射した光は、主に反射膜109によって反射され、透過液晶パネル102の方に向かう。この光はバックライトとしての役割を果たす。
【0014】
赤外光は、複数のカラーフィルタを有する透過液晶パネル102を透過する率が可視光に比べて高いという性質を有している。このため、透過液晶パネル102および透過モードの散乱パネル105を透過した赤外光を、透過液晶パネル102の背面側に配置された赤外光カメラ103a、103bによって受光することができる。これにより、撮像と表示との両立が可能となる。
【0015】
液晶表示装置101は、2つの赤外光カメラ103a、103bによる撮像を交互に行う。具体的には、透明電極108aに対向する液晶層107の部分が透過モードで、かつ蛍光管104aが消灯しているときに赤外光カメラ103aで撮像を行う。一方、透明電極108bに対向する液晶層107の部分が透過モードで、かつ蛍光管104bが消灯しているときに赤外光カメラ103bで撮像を行う。赤外光カメラ103a、103の各々について、近くの蛍光管が消灯しているときに撮像を行うのは、蛍光管から出射される光に含まれる赤外光成分が赤外光カメラ103a、103bに入射することによって発生するノイズを低減させるためである。
【0016】
このように、
図11に示す表示装置101は、透明電極108a、蛍光管104b、および赤外光カメラ103aの組と、透明電極108b、蛍光管104a、および赤外光カメラ103bの組とを交互に駆動させる。これにより、透過液晶パネル102に映像を表示しながら、透過液晶パネル102の背面側に配置された赤外光カメラ103a、103bによって表示面側の被写体を撮像することができる。
【0017】
しかしながら、この表示装置101は、撮像の際、透明電極108a、108b、蛍光管104a、104b、および赤外光カメラ103a、103bを上記のように複雑に制御する必要がある。また、蛍光管104a、104bの点灯と消灯とを繰り返すため、映像のちらつきが発生するという課題がある。
【0018】
上記の課題を解決するために、本願発明者らは、以下に説明する新たな構成の撮像表示装置を完成させた。本開示の実施形態の概要は、以下のとおりである。
【0019】
(1)本開示の一態様に係る撮像表示装置は、第1波長域の光を出射するように構成された光源と、前記光源から出射された前記第1波長域の光の光路上に配置され、前記第1波長域の光の少なくとも一部を反射し、前記第1波長域とは異なる第2波長域の光の少なくとも一部を透過させるように構成された光学系と、前記光源から出射され、前記光学系によって反射された前記第1波長域の光の光路上に配置され、前記第1波長域の光および前記第2波長域の光を透過させるように構成された表示パネルと、前記光学系に対して前記表示パネルが設けられた側とは反対の側に設けられ、前記表示パネルおよび前記光学系を透過した前記第2波長域の光を受けて画像信号を出力するように構成された撮像部と、を備える。
【0020】
(2)ある実施形態において、前記光学系は、前記第1波長域の光を反射し、前記第2波長域の光を透過させる特性を有するダイクロイックミラーである。
【0021】
(3)ある実施形態において、前記光学系は、ハーフミラーである。
【0022】
(4)ある実施形態において、前記第1波長域の光は、可視光であり、前記第2波長域の光は、赤外光または紫外光である。
【0023】
(5)ある実施形態において、前記光源は、前記第1波長域の光および前記第2波長域の光を出射するように構成され、前記光源と前記光学系との間に、前記第1波長域の光を透過させ、前記第2波長域の光を透過させないように構成された光学フィルタをさらに備えている。
【0024】
(6)ある実施形態において、前記表示パネルは、前記撮像部から出力された前記画像信号に基づく画像を表示するように構成されている。
【0025】
(7)ある実施形態において、前記第2波長域の光を被写体に照射するように配置された少なくとも1つの照明源をさらに備えている。
【0026】
(8)ある実施形態において、前記少なくとも1つの照明源は、前記表示パネルの側部に設けられている。
【0027】
(9)ある実施形態において、前記第1波長域の光は可視光であり、前記第2波長域の光は赤外光であり、被写体からの可視光を受けて少なくとも1つのカラー画像信号を出力するように構成された少なくとも1つのカラー撮像部をさらに備えている。
【0028】
(10)ある実施形態において、前記撮像部および前記少なくとも1つのカラー撮像部による撮像のタイミングを同期させるための制御信号を出力する撮像制御部と、前記撮像部から出力された前記画像信号と、前記少なくとも1つのカラー撮像部から出力された前記少なくとも1つのカラー画像信号とから、合成カラー画像信号を生成する画像処理部と、をさらに備えている。
【0029】
(11)ある実施形態において、前記少なくとも1つのカラー撮像部の数は2つである。
【0030】
(12)ある実施形態において、前記少なくとも1つのカラー撮像部は、前記表示パネルの中心に対して対称な位置に配置されている。
【0031】
(13)ある実施形態において、前記少なくとも1つのカラー撮像部の近傍に配置され、赤外光を被写体に照射する少なくとも1つの赤外光源をさらに備えている。
【0032】
(14)ある実施形態において、前記光源は、前記表示パネルに表示される画像に応じたカラー画像を表示するカラー表示パネルを含む。
【0033】
(15)ある実施形態において、前記光源における前記カラー表示パネルおよび前記表示パネルに、同期した映像を表示させる表示制御部をさらに備えている。
【0034】
(16)ある実施形態において、前記撮像部から出力された前記画像信号をネットワークに送信し、前記ネットワークから他の画像信号を受信するように構成された通信回路とをさらに備え、前記表示パネルは、前記通信回路によって受信された前記他の画像信号に基づく画像を表示するように構成されている。
【0035】
(17)本開示の一態様に係る遠隔コミュニケーションシステムは、上記のいずれかの撮像表示装置と、前記撮像表示装置を他の撮像表示装置にネットワークを介して接続する中継装置と、を備える。
【0036】
以下、本開示の実施形態の基本構成および動作を説明する。
【0037】
図1は、本開示の実施形態における撮像表示装置100の基本的な構成例を示す図である。図示される撮像表示装置100は、第1波長域の光を出射するように構成された光源53と、光源53から出射された第1波長域の光の光路上に配置され、第1波長域の光の少なくとも一部を反射し、第1波長域とは異なる第2波長域の光の少なくとも一部を透過させるように構成された光学系55と、光源53から出射され、ダイクロイックミラー55によって反射された第1波長域の光の光路上に配置され、第1波長域の光および第2波長域の光を透過させるように構成された表示パネル(ディスプレイ)51と、光学系55に対して表示パネル51が設けられた側とは反対の側に設けられ、表示パネル51および光学系55を透過した第2波長域の光を受けて画像信号を出力するように構成された撮像部52とを備えている。
【0038】
第1波長域は、例えば可視光の波長域であり、第2波長域は、例えば赤外光の波長域であり得るが、後述するように、これに限定されない。
図1では、第1波長域の光をL1と表し、第2波長域の光をL2で表している。
【0039】
光源53から出射した第1波長域の光L1は、光学系55で反射され、表示パネル51を透過する。この光L1は、表示パネル51のバックライトとして機能する。これにより、使用者(被写体)57は、表示パネル51に表示された映像を視聴することができる。
【0040】
外界または不図示の照明源から第2波長域の光L2が使用者57に入射すると、その光L2は、表示パネル51および光学系55を透過して撮像部52に入射する。撮像部52は、第2波長域の光L2に感度を有しているため、受けた光L2の強度に応じた画像信号を生成して出力する。この画像信号は、例えば不図示の画像処理部で処理され、表示パネル51に画像として表示され得る。あるいは、不図示の通信回路を介して外部ネットワークに送信され、他の拠点に設けられた撮像表示装置に送られ、そこで画像として表示されてもよい。
【0041】
以下、本開示のより具体的な実施の形態を説明する。
【0042】
(実施の形態1)
図2は、本開示の実施の形態1における撮像表示装置110の概略構成を示す図である。撮像表示装置110は、被写体(使用者)7を撮像しながらディスプレイに表示する電子ミラーとしての機能を有する。撮像表示装置110は、光透過性を有する透過液晶パネル1と、透過液晶パネル1の背面側に配置されたコールドミラー5と、コールドミラー5の背面側に配置された赤外光カメラ2と、コールドミラー5に光を照射する面発光ダイオード3と、面発光ダイオード3およびコールドミラー5の間に設けられた赤外光カットフィルタ4とを備えている。撮像表示装置110は、さらに、透過液晶パネル1の周辺に設けられ、赤外光を出射する2つの発光ダイオード(赤外光源)6と、赤外光カメラ2および透過液晶パネル1に接続された画像処理部8とを備えている。本実施形態では、透過液晶パネル1、コールドミラー5、赤外光カメラ2、面発光ダイオード3、赤外光カットフィルタ4、発光ダイオード(赤外光源)6が、それぞれ上記の表示パネル、光学系(ダイクロイックミラー)、撮像部、光源、光学フィルタ、照明源として機能する。また、可視光の波長域(約350nm〜約750nm)が第1波長域に対応し、近赤外光の波長域(約750nm〜約1400nm)が第2波長域に対応する。
【0043】
透過液晶パネル1は、行および列方向に配列された複数のカラーフィルタと、液晶層と、透明電極とを有する表示パネルである。透過液晶パネル1は、可視光および赤外光を透過させることができる。透過液晶パネル1は、画像処理部8から送られてきた映像データに基づき、各画素ごとに液晶の配向を変化させることにより、映像を表示する。ここで表示される映像は、例えば使用者7自身を写したリアルタイムの映像であり得る。透過液晶パネル1は、遠隔地で撮影された人物を写したリアルタイムの映像や、録画された映像または静止画を表示するように構成されていてもよい。透過液晶パネル1に代えて、同等の特性を有する他の種類の透光性ディスプレイを用いてもよい。
【0044】
コールドミラー5は、可視光の波長域の光を反射し、赤外光の波長域の光を透過させる特性を有するダイクロイックミラーである。コールドミラー5は、ガラス基盤に屈折率の異なる複数の誘電体膜を積層コーティングすることによって作製され得る。各誘電体層の屈折率や厚さを調整することにより、反射および透過する光の波長域を調整することができる。コールドミラー5は、例えば
図3Aに示す反射特性および透過特性を有する。
図3Aでは、約350nm〜約650nmの波長域の可視光の透過率がほぼ100%であり、約700nm以上の波長域の赤外光および約300nm以下の紫外光の透過率がほぼ0%である例を示しているが、必ずしもこのような特性である必要はない。例えば、可視光の波長域の光の全体の透過率(分光透過率を波長について積分したもの)が70%以上であり、近赤外光の全体の透過率が30%以下であるような特性であってもよい。例えば、
図3Bに示されるような透過特性および反射特性を有するコールドミラー(ダイクロイックミラー)を光学系として採用してもよい。
【0045】
コールドミラー5は、面発光ダイオード3から出射され、赤外光カットフィルタ4を通過した可視光を反射して透過液晶パネル1に入射させることにより、透過液晶パネル1のバックライトとしての役割を果たす。また、コールドミラー5は、使用者7の側から透過液晶パネル1に入射して透過した赤外光を赤外光カメラ2の側へ透過させる。赤外光カメラ2の側からコールドミラー5に入射する可視光は赤外光カメラ2の側に反射されるため、透過液晶パネル1の側から赤外光カメラ2が見えることはない。
【0046】
なお、コールドミラー5の特性をもつ部分を赤外光カメラ2に対向する部分だけにし、残りの部分は光を反射する反射鏡などで構成してもよい。すなわち、
図4Aに示すように、コールドミラー5aと、その周囲の反射鏡5bとを組み合わせたものを光学系として用いてもよい。
図4Bは、このような光学系を正面から見た場合の模式図である。図中において斜線で表した部材5aの背後に赤外光カメラ2が配置され得る。また、
図4Aに示されるコールドミラー5は、その上端部が透過液晶パネル1の上端部に接し、その主面が透過液晶パネル1の表示面に対して傾斜しているが、必ずしも傾斜している必要はない。コールドミラー5を透過液晶パネル1と平行に配置する場合であっても、可視光が効率よく透過液晶パネルに向かうように面発光ダイオード3の位置および向きが調整されていればよい。
【0047】
赤外光カメラ2は、可視光よりも波長の長い赤外光に感度を有する撮像部である。赤外光カメラ2は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complimentary Metal Oxide Semiconductor)などのイメージセンサと、赤外光のみを透過させ、可視光を除去する赤外光透過フィルタとの組み合わせによって好適に実現され得る。赤外光カメラ2は、撮像によって生成した画像信号を画像処理部8に出力する。
【0048】
赤外光カメラ2は、透過液晶パネル1およびコールドミラー5を介して使用者7に対向する位置に配置され得る。これにより、透過液晶パネル1に表示される使用者7の視線が正面を向くため、使用者7自身と視線が合わないという課題を解決できる。赤外線カメラ2は、典型的には、透過液晶パネル1の表示面の中心部を通る垂線上に配置されるが、当該垂線から多少ずれていてもよい。
【0049】
面発光ダイオード3は、可視光領域の波長の光を含む光を出射するように構成された光源である。面発光ダイオードの代わりに、白熱電球や冷陰極管といった他の種類の光源を用いてもよい。面発光ダイオード3から出射される光には、可視光成分だけでなく、赤外光成分も含まれ得る。このため、面発光ダイオード3の後段に赤外光カットフィルタ4が配置される。
【0050】
赤外光カットフィルタ4は、入射光に含まれる赤外光成分を除去し、可視光を透過させる特性を有する光学フィルタである。
図5Aは、赤外光カットフィルタ4の分光透過率特性の一例を示す図である。
図5Aに示される例では、300nm〜700nmの波長域の光(主に可視光)の透過率が100%に近く、それ以外の波長域の赤外光や紫外光の透過率はほぼ0%であるが、このような特性に限定されない。例えば、
図5Bに示すような分光透過特性を有する赤外光カットフィルタを用いてもよい。赤外光の波長域の光を70%以上除去し、可視光の波長域の光を70%以上透過させるように設計された光学フィルタであれば、赤外光カットフィルタ4として用いてもよい。赤外カットフィルタ4を設けることにより、面発光ダイオード3からの出射光に含まれる赤外光成分が除去され、可視光成分がコールドミラー5に到達する。なお、本実施形態における赤外光カットフィルタ4は、光源(面発光ダイオード3)と分離しているが、光源と一体化されていてもよい。
【0051】
面発光ダイオード3からの光は、赤外光カットフィルタ4を通過することによって赤外光成分が除去されるため、面発光ダイオード3を点灯させたまま赤外光カメラ2で撮像することができる。したがって、従来技術では必要であった光源の制御が不要になるという利点がある。
【0052】
本実施形態では、透過液晶パネル1の側部に、赤外光を出射する2つの発光ダイオード(赤外光源)6が配置されている。赤外光源6は、透過液晶パネル1の正面に位置する使用者7に向けて赤外光を照射するように配置される。これにより、外部光に含まれる赤外光だけでは赤外光量が不足する場合であっても、使用者7から十分な量の赤外光を赤外光カメラ2に入射させることができる。2つの赤外光源6は、例えば透過液晶パネル1の表示面の中心に対して対称な位置に配置され得るが、そのような配置に限定されない。また、赤外光源6の数は2つである必要はなく、少なくとも1つ設けられていれば、不足する赤外光を補うことができる。
【0053】
図6Aおよび
図6Bは、赤外光源6の他の構成例を示す図である。
図6Aに示される例では、透過液晶パネル1の左右両側に縦長の2つの赤外光源6が設けられている。左右ではなく上下の両側に横長の2つの赤外光源6が設けられていてもよい。
図6Bに示される例では、透過液晶パネル1の上下に細長の2つの赤外光源6が、透過液晶パネル1の左右に縦長の2つの赤外光源6が設けられている。この例では、分離された4つの赤外光源6が設けられているが、透過液晶パネル1の周囲を囲むように構成された1つの照明源が設けられていてもよい。
【0054】
赤外光源6から照射された赤外光は、使用者7によって反射され、透過液晶パネル1およびコールドミラー5を透過して赤外光カメラ2に入射する。赤外光源6を設けることにより、赤外光カメラ2に入射する赤外光が増幅されるため、より鮮明な画像を撮像することが可能となる。
【0055】
本実施の形態における撮像表示装置110は、画像処理部8さらに備える。画像処理部8は、赤外光カメラ2および透過液晶パネル1に電気的に接続され、赤外光カメラ2から送出された画像信号(赤外光画像データ)に基づいて、透過液晶パネル1に表示させる画像データを生成する。画像処理部8は、例えば、公知のデジタル信号処理プロセッサ(DSP)などのハードウェアと、不図示のメモリに記録されたソフトウェア(コンピュータプログラム)との組み合わせによって好適に実現され得る。画像処理部8は、専用の画像処理回路によって実現されていてもよい。
【0056】
画像処理部8は、例えば、赤外光画像データから計算される温度分布に応じて色分けをしたカラー画像データを生成し、透過液晶パネル1に表示させることができる。また、画像処理部8は、透過液晶パネル1へ表示させる画像データの大きさの調整および位置合わせを行うこともできる。
【0057】
画像処理部8は、TOF(Time Of Flight)方式による測距を行うように構成されていてもよい。具体的には、赤外光源6によって照射された赤外光が、使用者7で反射されて赤外光カメラ2へ入射するまでの時間を計測することにより、使用者7までの距離を求めてもよい。そのような距離情報から、距離に応じて輝度を変えた距離画像を生成してもよい。さらに、赤外光カメラ2より得られた画像データをもとに、顔検出や目検出を行うことで、使用者7の位置を特定することもできる。これらの使用者7の距離情報および位置情報を利用すれば、透過液晶パネル1に表示させる画像の位置や大きさを調整することもできる。
【0058】
なお、本実施形態の撮像表示装置110は、
図2に示される要素以外にも、各構成要素の動作を制御する制御回路、各種のデータを記録するメモリ、外部ネットワークと通信を行う通信インターフェース、電源回路、スピーカ、ユーザインターフェースといった構成要素を備え得るが、それらの説明は本実施形態の理解に特に必要でないため省略する。
【0059】
以上のように、本実施形態の撮像表示装置110によれば、面発光ダイオード3の後段に赤外光カットフィルタ4が設けられているため、赤外光カメラ2に面発光ダイオード3からの赤外光が入射することはない。このため、特許文献1の装置とは異なり、光源の制御を不要にすることができる。さらに、コールドミラー5を用いることによって透過液晶パネル1のバックライトの役割を果たすと共に、透過液晶パネル1の背面側からの撮像を可能にしている。かかる構成によれば、複雑な制御を必要とせずに撮像と映像の表示とを両立でき、かつ、使用者7の視線と、ディスプレイ(透過液晶パネル1)に表示される使用者7の視線とを一致させることができるという従来にない効果を得ることができる。
【0060】
(実施の形態2)
図7は、実施の形態2における撮像表示装置120の概略構成を示す図である。
図7において、
図2と同様の構成要素については同一の符号を付している。本実施の形態における撮像表示装置120は、カラー画像信号を取得する可視光カメラ(カラー撮像部)9と、各撮像部を制御する撮像制御部10とを備える点で、実施の形態1における撮像表示装置110とは異なっている。その他の要素については実施の形態1と同様である。以下、実施の形態1と異なる点を説明し、共通する事項についての説明は省略する。
【0061】
可視光カメラ9は、可視光に感度を有する撮像部である。本実施形態では、2つの可視光カメラ9が透過液晶パネル1の周囲に設けられている。可視光カメラ9は、透過液晶パネル1の正面に位置する使用者7に向けて配置される。2つの可視光カメラ9は、透過液晶パネル1の表示面の中心に対して対称な位置に配置され得るが、そのような配置に限定されない。また、可視光カメラ9の数は2つである必要はなく、少なくとも1つ設けられていればよい。本実施形態では、各可視光カメラ9の近傍に赤外光源6が設けられているが、必ずしもこのような配置関係である必要はない。可視光カメラ9と赤外光源6とは、一体化されていてもよい。
【0062】
赤外光カメラ2および2つの可視光カメラ9は、撮像制御部10に電気的に接続される。撮像制御部10は、赤外光カメラ2および2つの可視光カメラ9の撮像のタイミングを制御するための同期信号を生成し、各カメラに送信する。これにより、各カメラから同時刻の画像フレームを取得することができる。撮像制御部10は、例えばCPUなどのプロセッサと、不図示のメモリ等に格納された制御プログラムとの組み合わせ、または専用の制御回路によって実現され得る。
【0063】
赤外光カメラ2および2つの可視光カメラ9は、画像処理部8を介して透過液晶パネル1と接続される。赤外光カメラ2および2つの可視光カメラ9によって取得された画像データは、画像処理部8に送られる。
【0064】
画像処理部8は、赤外光カメラ2から得られた赤外光画像データと、2つの可視光カメラ9から得られたカラー画像データとに基づいて、透過液晶パネル1に表示させるカラー画像データを生成する。画像処理部8は、例えば特許文献2に記載されている画像処理を行うことにより、赤外光画像データとカラー画像データとを合成したカラー画像データ(合成カラー画像信号)を生成することができる。特許文献2の記載内容全体を本願明細書に援用する。具体的には、まず、2つの可視光カメラ9から得られたカラー画像データを、可視光カメラ9が使用者7に対して傾いて取り付けられていることに起因する傾斜角度分の歪みを補正した画像データに変換する。次に、補正後の画像データと赤外光カメラ2から得られた画像データとを合成する。これにより、使用者7の正面から撮影したものと同様のカラー画像を生成することができる。
【0065】
また、実施の形態1で説明したTOF方式を用いることにより、使用者7の距離情報(3次元情報)を取得することができる。画像処理部8は、この3次元情報を利用して、使用者7の3次元カラー画像データを生成することもできる。例えば、得られた3次元情報に対して、CG技術で用いられるテクスチャマッピングを用いることで、3次元カラー画像データを生成できる。具体的には、得られた3次元情報から、頂点、稜線、面の接続情報をもつポリゴンによって表現される3次元オブジェクトを構築し、その表面にカラー画像データから得られるテクスチャーをマッピングする(壁紙のように張り付ける)ことにより、3次元カラー画像を生成することができる。
【0066】
以上のように、本実施形態によれば、少なくとも1つのカラー撮像部(可視光カメラ9)によってカラー画像を取得することができるため、これと赤外光画像とを合成することにより、使用者7を正面から撮影したものと同等のカラー画像を得ることができる。複雑な制御を必要とせずに撮像と映像の表示とを両立でき、かつ、使用者7の視線と、ディスプレイ(透過液晶パネル1)に表示される使用者7の視線とを一致させることができるという従来にない効果を得ることができる。
【0067】
(実施の形態3)
図8は、本開示の実施の形態3における撮像表示装置130の構成図である。
図8において、
図2および
図7と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0068】
本実施の形態における撮像表示装置130は、光源としてカラー表示パネル11aを備えている。カラー表示パネル11aとしては、液晶パネルやプラズマパネル、有機ELパネルなどのカラー表示が可能なディスプレイを広く用いることができる。
【0069】
光源としてカラー表示パネル11aを設けるのは、透過液晶パネル1の発色性が不足する場合に、透過液晶パネル1の背面側から、透過液晶パネル1に表示させる映像と同期した映像を表す光を照射することで透過液晶パネル1の発色性を向上させるためである。
【0070】
カラー表示パネル11aは、透過液晶パネル1に対して90度の傾斜角度で配置され、画像処理部8と電気的に接続される。
【0071】
コールドミラー5は、透過液晶パネル1に対して45度の傾斜角度で配置され、カラー表示パネル11aに表示された映像による光を透過液晶パネル1へ反射する。したがって、使用者7から見た場合、カラー表示パネル11aに表示された映像は、見かけ上、
図8に示すカラー表示パネル11bに表示されているように見える。
【0072】
画像処理部8は、赤外光カメラ2から得られた赤外光画像データに基づいて透過液晶パネル1およびカラー表示パネル11aに表示させる画像データを作成する。透過液晶パネル1およびカラー表示パネル11aに表示させる画像データは同じ内容であるが、大きさが異なる。使用者7から見た場合に、透過液晶パネル1に表示される映像と見かけ上のカラー表示パネル11bの映像との大きさおよび位置が一致するように、透過液晶パネル1に表示される画像データは、カラー表示パネル11aに表示される画像データを縮小したものになる。縮小比率は、使用者7と赤外光カメラ2との距離によって異なる。このようにして、画像処理部8は、透過液晶パネル1およびカラー表示パネル11aに、同期した映像を表示させる。このため、画像処理部8は、表示制御部と呼んでもよい。
【0073】
かかる構成によれば、カラー表示パネル11aの光が透過液晶パネル1の色情報を補うことができるため、透過液晶パネル1の発色性を向上させることができる。なお、本実施の形態においても、実施の形態2と同じように可視光カメラ9と撮像制御部10とを設けても良い。
【0074】
(実施の形態4)
図9は、本開示の実施の形態4における遠隔コミュニケーションシステムの構成例を示す模式図である。本実施の形態の遠隔コミュニケーションシステムは、複数の拠点の各々に設けられた撮像表示装置12と、ネットワーク15に接続するための中継装置13とを備える。ネットワーク15は、例えばインターネット、広域LAN、または専用回線であり得る。本実施形態の遠隔コミュニケーションシステムによれば、異なる複数の拠点における撮像表示装置12の使用者14同士でビデオ通話などの遠隔コミュニケーションを実現することができる。
【0075】
図10は、本実施形態における撮像表示装置12の構成例を示す図である。図示される撮像表示装置12は、実施形態1における撮像表示装置110の構成要素に加え、通信IF20をさらに備えている。通信IF20は、公知のネットワークインターフェースカードなどの通信回路であり、中継装置13との間で通信を行う。言い換えれば、通信IF20は、中継装置13を介して撮像部(赤外線カメラ)から出力された画像信号をネットワークに送信し、ネットワークから他の画像信号を受信する。これにより、画像情報や音声情報などのデータの送受信を行うことができる。なお、撮像表示装置12は、通信IF20を除いて実施形態1における撮像表示装置と同様の構成を有しているが、実施形態2または3の撮像表示装置と同様の構成を採用してもよい。
【0076】
なお、遠隔コミュニケーションシステムとして機能するためには、マイクやスピーカも必要であるが、それらは、本開示の技術の本質ではないため、説明を省略する。
【0077】
本実施形態によれば、各拠点の撮像表示装置12は、中継装置13によってネットワーク15を介して互いに接続されている。これにより、複数の使用者14がお互いの映像および音声を通信することが可能となる。かかる構成によれば、各拠点の使用者14の視線と、ディスプレイに表示される他の拠点の使用者14の視線とを一致させながらお互いにコミュニケーションをとることが可能となる。
【0078】
(他の実施の形態)
以上のように、本開示の技術の例示として、実施の形態1〜4を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施の形態1〜4で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。以下、他の実施の形態を例示する。
【0079】
以上の実施の形態1から4においては、反射特性と透過特性を有する光学系としてコールドミラー5を設けたが、光学系はコールドミラーに限定されない。例えば、可視光および赤外光の両方を約50%透過し、約50%反射するような特性をもつハーフミラーを光学系として利用してもよい。この場合、透過液晶パネル1を透過した赤外光はハーフミラーで約半分が反射してしまうため、赤外光源6の光の強度を強くする必要がある。また、面発光ダイオード3の光も半分が撮像部側へ透過してしまうため、光の強度を強くする必要もある。
【0080】
また、実施の形態1から4において、可視光領域以外の波長の光に感度を有する撮像部として、赤外光カメラ2を設けたが、このような構成に限定されない。例えば、可視光よりも波長の短い光(紫外光)に感度を有する紫外光カメラを赤外光カメラ2の代わりに設けても良い。その場合、反射特性および透過特性を有する光学系として、紫外光を透過し可視光を反射するミラーを設け、赤外光カットフィルタ4の代わりに紫外光を遮断する紫外光カットフィルタを設け、赤外光源6の代わりに紫外光を照射する発光ダイオードなどの紫外光源を設ければよい。青色から近紫外線の波長域の光は、人の顔の内部でシミが発生している領域に生成されるメラニンによって減衰され易いため、シミを検出するために利用できる。したがって、近紫外線の波長域の紫外光に感度を有する紫外光カメラを用いれば、画像処理部8は、紫外光カメラから得られた画像データに基づいて皮膚のシミ検出を行い、シミの位置を表示した画像データを生成してディスプレイに表示させることもできる。
【0081】
また、光学系は、上記のダイクロイックミラーやハーフミラーに限らず、光源から出射された第1波長域の光の光路上に配置され、第1波長域の光の少なくとも一部を反射し、第1波長域とは異なる第2波長域の光の少なくとも一部を透過させる特性を有している限り、どのような構成であってもよい。第1波長域としては、可視光全体の波長域に限らず、可視光の一部の波長域であってもよい。第2波長域としては、近赤外光や近紫外光の波長域に限らず、可視光の一部の波長域であってもよい。例えば、第1波長域の光として、赤および緑の波長域(例えば約500nm〜約700nm)の光を採用し、第2波長域として、その補色(青)の波長域(例えば約350nm〜約500nm)を採用してもよい。上記のように、紫外線に近い青い光は、シミを検出するのに有効であるため、本構成例によってもシミを検出することができる。なお、本構成例では、表示パネルのバックライトが白色光ではなく、黄色の光になってしまうため、これを防ぐため、別途青色の光源を表示パネルの背後に設けてもよい。その際、撮像部に当該光源からの青色光が入らないように、撮像部の対向部分にのみ青光を透過させるダイクロイックミラーを設け、その周囲には反射鏡を設けた構成を採用してもよい。
【0082】
上記の各実施形態では、赤外光源や紫外光源などの照明源が設けられているが、これらは必須の要素ではない。例えば、撮像に利用する波長域の光が十分に存在する環境下においては、照明源を設ける必要はない。