(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077431
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】硬貨検知装置および硬貨出金装置
(51)【国際特許分類】
G07D 1/00 20060101AFI20170130BHJP
G07D 9/02 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
G07D1/00 Z
G07D9/02
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-227501(P2013-227501)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2015-88053(P2015-88053A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小谷 和己
【審査官】
大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−065427(JP,A)
【文献】
特開2004−119370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00
G07D 9/00−9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨を受け止める受皿上の硬貨の有無を、磁気センサを用いて判断する硬貨検知装置であって、
前記磁気センサは、コイルおよび該コイルが巻きつけられるコアを備え、磁力線が前記受皿の硬貨貯留部へ向かう位置に配され、
前記磁気センサの周囲に、非磁性体を含み、前記磁気センサの磁気を受けて生じるうず電流によって、硬貨にうず電流を誘発させて該磁気センサの検知範囲を広げる金属製部材を備える
硬貨検知装置。
【請求項2】
硬貨を受け止める受皿上の硬貨の有無を、磁気センサを用いて判断する硬貨検知装置であって、
前記磁気センサは、コイルおよび該コイルが巻きつけられるコアを備え、磁力線が前記受皿の硬貨貯留部へ向かう位置に配され、
前記磁気センサの周囲に、該磁気センサの検知範囲を広げる金属製部材を備え、
前記コアは、前記コイルが巻きつけられる内筒と、前記コイルの周囲の少なくとも一部を覆う外壁と、を有し、
前記金属製部材は、板金であって、前記受皿に向かう面が、前記外壁の前記受皿側の端面と略同一平面に位置している
硬貨検知装置。
【請求項3】
硬貨を収納する収納部と、
前記収納部から所定の硬貨を放出する出金部と、
前記出金部が放出した硬貨を受け止める受皿と、
前記受皿上の硬貨の有無を判別する請求項1または2に記載の硬貨検知装置と、を備える硬貨出金装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、硬貨検知装置および硬貨出金装置に関する。
【背景技術】
【0002】
硬貨釣銭機などの硬貨を払い出す装置は、払い出した硬貨を受け止める受皿に、硬貨の有無を検知するためのセンサを備えている。このセンサには、従来、光センサが用いられている。光センサは、光センサの光軸が受皿の底を這うように配され、光軸が遮られると、受皿上に物があるとする。
【0003】
ここで、受皿のセンサが光センサであると、硬貨でないものも検知してしまう。そこで、硬貨でないものを極力検知しないセンサとして、金属を検知する磁気センサが用いられることがある。しかしながら、磁気センサは、検知領域が概ねセンサの真上や真下に限られ、その範囲から外れると検知できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、磁気センサを用い、かつ、検知領域が広い硬貨検知装置および硬貨出金装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の硬貨検知装置は、硬貨を受け止める受皿上の硬貨の有無を、磁気センサを用いて判断する硬貨検知装置であって、前記磁気センサは、コイルおよび該コイルが巻きつけられるコアを備え、磁力線が前記受皿の硬貨貯留部へ向かう位置に配され、前記磁気センサの周囲に、
非磁性体を含み、前記磁気センサの磁気を受けて生じるうず電流によって、硬貨にうず電流を誘発させて該磁気センサの検知範囲を広げる金属製部材を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態の硬貨出金装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態の受皿の外観を示す平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態の受皿の下面からの外観を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態の硬貨検知装置の外観を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態の硬貨検知装置の構造を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態の金属製部材が磁性体を含む場合の磁力線を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態の金属製部材が非磁性体を含む場合のうず電流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、硬貨釣銭機(硬貨出金装置)1の外観を示す斜視図である。硬貨釣銭機1は、筐体2、操作部3、入金部4、出金部5、および返金部6を備えている。操作部3および入金部4は、筐体2の上面に設けられ、出金部5および返金部6は、筐体2の前面に設けられている。また、硬貨釣銭機1は、筐体2内に、識別部、収納部、および搬送部(いずれも不図示)を備えている。
【0008】
操作部3は、オペレータの操作を受け付ける。入金部4は、硬貨を筐体2内へ取り込む。出金部5は、硬貨を筐体2外へ放出する。識別部は、入金部4が取り込んだ硬貨が正常な硬貨(正貨)であるかを識別する。収納部は、正貨を収納する。搬送部は、入金部4から識別部を経て収納部まで硬貨を搬送する。返金部6は、識別部が正貨でないとした硬貨を返却する。
【0009】
出金部5は、出金口51および受皿52を備えている。出金口51は硬貨を放出する。受皿52は、出金口51から放出された硬貨を受け止める。
【0010】
図2は、受皿52の外観を示す平面図である。
図3は、受皿52の下面からの外観を示す斜視図である。受皿52は、中央部に、硬貨貯留部53を備えている。硬貨貯留部53は、周囲よりも窪んでいる。硬貨貯留部53の周囲は、硬貨貯留部53へ向かって硬貨を導く斜面54とされている。そして、受皿52の下面における硬貨貯留部53の裏側にあたる位置には、硬貨検知部(硬貨検知装置)55が設けられている。
【0011】
図4は、硬貨検知部55の外観を示す斜視図である。
図5は、硬貨検知部55の構造を示す図である。硬貨検知部55は、二つの磁気センサ56と、板金(金属製部材)57とを備えている。磁気センサ56の大きさは、二つ横並びにすると硬貨貯留部53の横幅に相当する程度である。磁気センサ56は、コイル60およびコア70を備えている。コイル60は、導線61が巻かれたものである。
【0012】
コア70は、内筒71、外壁72、および底部73を備えている。内筒71は、コイル60が巻きつけられる。外壁72は、コイル60の外周を覆う。導線61を外壁72の外へ這わせるために、外壁72は、円筒を一部切り取ったような形状をなしている。これによりコイル60の外周が、一部露出する。底部73は、内筒71の一端と外壁72の一端とを連結する。
【0013】
硬貨検知部55は、内筒71および外壁72の底部73がない方の端面を受皿52の下面に向けて、配される。これにより、磁気センサ56の磁力線が硬貨貯留部53へ向かう。
【0014】
板金57は、磁性体を含む金属製の板材である。板金57は、磁気センサ56の周りを囲むように配されている。また、板金57は、受皿52に向かう面が、外壁72の受皿52側の端面72aと略同一平面に位置するよう、配されている。なお、板金57は、受皿52に取り付けるためのネジ孔や、他の部材との干渉を避ける逃げ57aを有している。
【0015】
図6は、板金57が磁性体を含む場合の磁力線を示す図である。ここでの磁性体は、磁石で引き寄せられる強磁性を示すものである。
【0016】
板金57がない場合、磁力線は、矢印Mで示すように外壁72の端部から出て内筒71の端部へ入る曲線を描くが、磁性体を含む板金57がコア70の周りを囲んでいることによって、矢印mで示すようにコア70の外側へと誘導される。これにより、硬貨検知部55の検知範囲は、周囲に広がる。
【0017】
このような構成において、磁気センサ56の磁力線は、磁気センサ56の真上だけでなく、板金57により誘導されて、磁気センサ56の周囲に広がる。これにより、硬貨検知部55は、磁気センサ56自体の大きさより広い領域をカバーする。
【0018】
硬貨検知部55は、硬貨貯留部53の奥行方向中央部において、幅方向には、二つの磁気センサ56によってカバーできているが、奥行方向には、磁気センサ56の前後に、カバーしきれない部分が残る。これらの部分を、本実施形態によれば、磁気センサ56の周囲に検知範囲が広げられて、カバーすることができる。
【0019】
ここで、板金57の厚さp(
図5)は、この用途においては、1mm程度あれば十分な効果が得られた。また、厚さpが、薄くなりすぎると効果が不十分になったが、2倍にしても効果が2倍になるということはなかった。さらに、板金57の広さqは、コア70の厚さ寸法と同程度あれば十分な効果が得られた。また、板金57の内周縁57bとコア70との距離rは、狭いほど効果が得やすい。そして、板金57が外壁72の端面72aと略同一平面よりも低く位置すると、十分な効果が得にくく、高く位置すると、硬貨センサ56が板金57を検知してしまうので、略同一平面に位置させるのが好適である。
【0020】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
図7は、板金57が非磁性体を含む場合のうず電流を示す図である。本変形例では、板金57は、非磁性体を含む金属製の板材である。
【0021】
板金57が非磁性体を含んでいると、磁気センサ56の磁力により、板金57にうず電流が生じる。板金57にうず電流が生じていると、このうず電流に誘発されて、硬貨貯留部53を介して板金57上に位置する硬貨Cにうず電流が生じる。あるいは、磁気センサ56の磁力により硬貨Cに生じたうず電流が、板金57のうず電流により促進される。
【0022】
これにより、硬貨検知部55は、磁気センサ56自体の大きさより広い領域をカバーする。
【0023】
以上説明したとおり、上記実施形態および上記変形例によれば、金属を検知する磁気センサを用いた硬貨検知装置とすることにより、手指などを硬貨と誤検知することがなく、硬貨でないものの誤検知を極力排した硬貨検知装置とするとともに、磁気センサの周囲に金属製部材を配して検知範囲を広げることにより、磁気センサの弱点である検知範囲の狭さを克服し、検知領域が広い硬貨検知装置を得ることができる。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0025】
1…硬貨釣銭機、
2…筐体、3…操作部、4…入金部、5…出金部、6…返金部、
51…出金口、52…受皿、
53…硬貨貯留部、54…斜面、
55…硬貨検知部、56…磁気センサ、57…板金、
60…コイル、61…導線、
70…コア、71…内筒、72…外壁、73…底部、
72a…端面。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開平5−225427号公報