(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077448
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】液体処理装置および懸濁液処理方法
(51)【国際特許分類】
B01F 7/26 20060101AFI20170130BHJP
B01F 1/00 20060101ALI20170130BHJP
B01F 3/04 20060101ALI20170130BHJP
B01F 11/00 20060101ALI20170130BHJP
C02F 1/50 20060101ALI20170130BHJP
C02F 1/34 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
B01F7/26 Z
B01F1/00 A
B01F3/04 Z
B01F11/00 Z
C02F1/50 510A
C02F1/50 520P
C02F1/50 531J
C02F1/50 550B
C02F1/50 560Z
C02F1/34
C02F1/50 540B
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-532079(P2013-532079)
(86)(22)【出願日】2011年10月7日
(65)【公表番号】特表2013-545594(P2013-545594A)
(43)【公表日】2013年12月26日
(86)【国際出願番号】EP2011005022
(87)【国際公開番号】WO2012045470
(87)【国際公開日】20120412
【審査請求日】2014年9月16日
(31)【優先権主張番号】102010047947.0
(32)【優先日】2010年10月8日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509181644
【氏名又は名称】ウルトラソニック・システムズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ULTRASONIC SYSTEMS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】グラウ,ヨルグ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴェリ,カルメロ
【審査官】
庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−142592(JP,A)
【文献】
特表2010−514552(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0233044(US,A1)
【文献】
特開2009−150223(JP,A)
【文献】
特開2010−031808(JP,A)
【文献】
特開2009−082923(JP,A)
【文献】
仏国特許出願公開第2640328(FR,A1)
【文献】
実開平03−054742(JP,U)
【文献】
特表平08−501247(JP,A)
【文献】
特開2002−085949(JP,A)
【文献】
特開平04−161296(JP,A)
【文献】
特公昭50−021682(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 1/00−5/26
B01F 7/00−7/32
B01F 9/00−13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を処理する装置であって、
チャンバ(12)と、
前記チャンバ(12)内に配置された回転式キャビテーション要素(18)とを備え、
前記チャンバ(12)が、前記チャンバ(12)の領域であって前記キャビテーション要素(18)を取り囲む前記領域内に、前記キャビテーション要素(18)の回転軸に垂直な断面であって異なる丸み(34、36)をもつ前記断面を有し、
前記チャンバ(12)の前記断面が3葉形を有することを特徴とする、前記装置。
【請求項2】
前記チャンバ(12)の前記断面が、丸みを帯びた角部をもつ多角形の基本形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記多角形の基本形状の複数の辺が凸状であることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記断面の前記基本形状が、正多角形からなる基本形状であることを特徴とする、請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
前記断面の前記基本形状が、不等辺多角形からなる基本形状であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記チャンバ(12)が、プラスチックから製作されたハウジング(10)内に配置されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
入口(14)および出口(16)が、前記チャンバ(12)内に開口し、前記入口および出口が、半径方向rにおいて互いに180度未満の角度で配置されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記キャビテーション要素(18)の上面に軸線方向に向けられた口を有するガス供給パイプ(24)をさらに含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記ガス供給パイプ(24)が、駆動シャフト(20)に対して、平行な断面内で少なくとも延在し、前記駆動シャフト上に、前記キャビテーション要素(18)が配置されることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
音波を直接前記チャンバ(12)内に射出するように配置された少なくとも1つの音響パワートランスデューサ(30、32)をさらに含み、
前記音波の周波数が超音波の周波数領域より低い、請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項による装置を用いて、懸濁液を処理する方法であって
a)回転するキャビテーション要素が受け入れられたチャンバ内に、処理すべき前記分散液を導入するステップと、
b)前記液体を超音波によって処理することなく、キャビテーションが発生するまで前記キャビテーション要素を回転させるステップと、
c)前記キャビテーションによって前記液体中の粒子の大きさを減らすステップと
を含む前記方法。
【請求項12】
ガスが、前記懸濁液に導入され、超音波なしの態様で、発生させたキャビテーションによって前記懸濁液中に溶解されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、液体塗料を製造する方法、紙面コーティングのためのホワイティングを処理する方法、または廃水を処理する方法である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
入口(14)および出口(16)が、前記チャンバ(12)内に開口し、前記入口および出口が、半径方向rにおいて互いに120度未満の角度で配置されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記キャビテーション要素(18)の回転軸線の近傍で、前記キャビテーション要素(18)の上面に軸線方向に向けられた口を有するガス供給パイプ(24)をさらに含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体を処理する装置に関する。より詳細には、本発明は、懸濁液を処理する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体にガスを充填することは、多くの目的にとって有利である。たとえば、それにより、ガスと液体との間、またはガスと液体に含有された物質との間に化学反応を起こすことが可能になる。1つの潜在的使用目的は、適切な反応ガスを導入することによって細菌含有量を減らすことができる、飲料水および廃水両方の水の処理である。
【0003】
国際公開第2008/080618A1号は、チャンバ内に配置された機械的キャビテーション要素と、キャビテーション要素を通って延在するガス供給手段とを備える液体処理用装置を開示する。装置は、直接チャンバ内に音波を発射する音響パワートランスデューサをさらに備える。キャビテーション要素の運動が、供給されたガスを処理すべき液体と確実に混合させるが、その場合、平均バブルサイズはまだ比較的大きい。第2の処置として、音波が、同時に、音響パワートランスデューサによって直接液体内に導入され、その結果、平均バブルサイズが、液体全体に亘ってさらに小さくなる。既知の装置および既知の方法が、ガスの液体内への音響化学的溶解を達成するために使用され、その場合、ガスの大部分が分子状態で分散された溶解状態で存在するとき、パワートランスデューサは、400〜1500kHz、好ましくは600〜1200kHzの範囲の周波数を供給する超音波トランスデューサの形態である必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、液体にガスを充填する効率をさらに一層向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1の特徴を有する装置、および請求項7の特徴を有する装置によって達成される。本発明による装置の有利かつ好都合なより以上の発展が従属請求項に示されている。
【0006】
第1の態様によれば、液体を処理するための本発明による装置は、チャンバと、チャンバ内に配置された、特に流れ物体の形態の回転式キャビテーション要素(素子、エレメント)とを備える。チャンバは、キャビテーション要素の領域に、異なる丸みをもつ断面を有する。
【0007】
本発明のこの態様は、異なる丸みを有する断面が、一方で、キャビテーション要素の回転軸線周りの望ましくない液体の回転流を阻止し、他方で、少量の液体交換しか行われない「死水」チャンバ角部を防止するという知見に基づく。むしろ、本発明によるチャンバの断面形状は、キャビテーション効果を著しく増加させる高流速の局所渦の形成を助長する。
【0008】
好ましくは、チャンバの断面は、丸みを帯びた角部を有する多角形からなる基本形状を有する。丸みを帯びた角部は、液体が角部に滞留するのを効果的に防止する。
【0009】
チャンバ内のいかなる「静水域」をも避けるために、多角形の基本形状の諸辺は、凸状であることが好ましい。
【0010】
一般に、チャンバは、有利には、チャンバの断面の基本形状が正多角形の基本形状になるように設計される。
【0011】
3葉形(trilobular shape)をもつ断面を有するチャンバは、特に有利であることが判明している。そのような形状は、望ましくない回転流を助長する円形からは明らかに変わっているが、それでも、全体的に円板形のキャビテーション要素に対してほぼ接線方向に延在する壁部分を備える。
【0012】
ただし、基本的に、チャンバは、有利には、その基本形状が不等辺多角形からなる基本形状である断面を有してもよい。
【0013】
第2の態様によれば、液体を処理するための本発明による装置は、チャンバと、チャンバ内に配置された実質的に円板形のキャビテーション要素とを備える。キャビテーション要素は、(好ましくは長円形の)丸みを帯びた内壁をもつ通路開口を有する。
【0014】
本発明のこの態様は、キャビテーション要素が速く回転するとき、通路開口のそのような形状は、望ましくない液体の剥離を生じることなく液体を最適に加速することができるという知見に基づく。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、通路開口はそれぞれ、上面からキャビテーション要素を完全に貫通して下面まで延在する。これは、基本的に、キャビテーション要素を貫通する液体の通過を限定することを可能にする。
【0016】
通路開口の好ましい設計は、通路開口の直径が、その軸線方向高さを通して、50%未満、好ましくは30%未満、さらに好ましくは20%未満しか変化しないように行われる。これにより、通路開口内に液体が確実に滞留しないようにする。
【0017】
通路開口の特に好ましい設計によれば、内壁は、上面近くの領域および下面近くの領域において異なる度合いに丸められている。特に、丸められた部分は、意図する圧力変動に好都合な全体的流れ状態が得られるように、キャビテーション要素の形状に適合させることができる。
【0018】
通路開口は、上面および下面のそれぞれに細長い孔のような長円形の縁部を有し得る。
【0019】
別の好ましい実施形態では、上視図において、上面上の通路開口の縁部が、下面上の通路開口の関連する縁部と一致しないようになされる。
【0020】
詳細には、通路開口の長手方向において、上面での縁部の範囲が、下面での縁部とは寸法が異なり、かつ/または下面での縁部に対して偏倚し得る。
【0021】
丸みを帯びた部分と併せて、キャビテーション効果は、各通路開口の中心が、その長手方向中心軸線が該軸線に垂直なキャビテーション要素の半径線と交わる点に対して、長手方向中心軸線の方向に偏倚するような通路開口の配置によって、さらに最適化することができる。
【0022】
水、特に飲料水の処理に関し、チャンバがプラスチックから製作されたハウジングの中に配置されている装置は、有利である。金属ハウジングに比較して、プラスチックのハウジングは、掃除に向いており、消毒剤によって侵されないという利点を示す。液体への電解質の添加も、なんら問題なく可能である。
【0023】
特に、液体の入口および出口がその中に開口するチャンバの3葉形断面との組合せにおいて、入口と出口とが、半径方向で互いに180度未満の角度、好ましくは約120度の角度で配置されている構成が好都合である。
【0024】
液体中へのガスの供給に関し、好ましくはキャビテーション要素の回転軸線の近傍で、キャビテーション要素の上面に軸線方向に向けられた口を有するガス供給パイプが好ましい。
【0025】
詳細には、ガス供給パイプは、少なくとも断面図内で、キャビテーション要素が配置されている駆動シャフトに平行に延在することができる。
【0026】
本発明による装置の実現におけるコスト削減が、音波を直接チャンバ内に射出するように配置された少なくとも1つの音響パワートランスデューサによって達成され、音波の周波数は超音波の周波数領域より低い。始めに述べた従来技術によって知られている装置と比較して、所望のバブルサイズを達成するのに、より低い音響パワートランスデューサのパワーで十分であることが判明している。
【0027】
一般に、本発明による処置は、極めて高い割合のガスを液体に導入することができる。したがって、本発明による装置は、水、特に飲料水または廃水の浄化に高度に適している。特にオゾンが供給されるとき、そのオゾンは液体中に分子状に分散して溶解されるが、装置は、液体の殺菌消毒、または、一般に、バクテリア、ウイルス、真菌胞子、毒素もしくは内分泌撹乱物質の撲滅、あるいはタンパク質の変性のために使用することができる。さらに、装置は、水または廃水のみではなく、液体をあらゆる適切なガスによって充填するために一般に使用することができる。
【0028】
本発明は、特に本発明による装置を用いて懸濁液を処理する方法にさらに関し、回転するキャビテーション要素が装入されているチャンバに、処理すべき分散液を導入するステップと、液体を超音波によって処理することなく、キャビテーションが発生するまでキャビテーション要素を回転させるステップと、キャビテーションによって前記液体中の粒子の大きさを減らすステップとを特徴とする。
【0029】
本発明による方法は、超音波によって懸濁液に作用することなく、機械的に作用するキャビテーション要素のみに基づいて実施される。このキャビテーション要素の表面において、内破する小さな空洞が液体中に形成される。この内破過程によって、液体内に存在する固体粒子が、大きさをさらに減らされる。これは、粒子の大きさの減少が、粒子がキャビテーション要素に衝突することによって(のみ)生じるのではなく、キャビテーション要素の表面における夥しい数の内破に際して放出されるエネルギーによって生じることを意味する。
【0030】
ガスが懸濁液に導入され、さらに、超音波なしに、発生したキャビテーションによって懸濁液中に溶解されると、同時にキャビテーションは減少する。液相中のガスの溶解は、懸濁液にとって利点を有し得、適宜、望ましい化学作用をもたらし得る。その一例が、廃水処理である。
【0031】
本発明による方法は、塗料の顔料がその場合に特に細かく分散されるので、液体塗料、特にラッカの製造に特別な利点をもたらす。本方法は、有利には、紙のコーティング用懸濁液(たとえばホワイティング(whiting))の処理、および廃水の処理にさらに用いることができる。廃水処理に関し、細菌が、特に排水中の固体粒子の陰で生き残り易いことを付け加えるべきである。したがって、UV光線による処理は、単なる補完的な処置と見なすべきである。しかし、本発明によって教示されるように、固体粒子の大きさがさらに一層減らされれば、細菌処理は著しくより効果的になる。細菌を死滅させるために、液体内へのガスの同時溶解を使用することができる。
【0032】
本発明のさらに別の特徴および利点が、以下の説明および参照される添付図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明による方法を実施するための本発明による装置の側面図である。
【
図3】やはり本発明による方法を実施するために使用することができる代替実施形態による、本発明による装置の上視部分断面図である。
【
図4】本発明による装置の機械的キャビテーション要素の上視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1および2は、液体にガスを充填することによって液体を処理する、本発明による装置を示す。以下の説明では、下側、上側などの表現は理解を容易にするために使用されている。これら表現は、
図1に示された装置の向きに対する。しかし、装置は、基本的に、横にして配置されても作動することができる。
【0035】
そのような装置の基本的な構造および基本的な作動モードは、特に国際公開第2008/080618A1号から、当業者には知られており、したがって、本発明による装置の特別な特徴のみがここでは主として説明される。
【0036】
液体を受け入れるチャンバ12が、装置のハウジング10内に設けられ、ハウジングは金属またはプラスチックから形成することができる。入口14および出口16がチャンバ12内に開口し、それによって、液体が、チャンバ12を通って連続的に流れることができる。軸線方向Aでは、入口14と出口16とは、互いに偏倚して配置され、半径方向rでは、それらは、直径上に対向して(180度の角度)配置されている。
【0037】
図3は、入口14と出口16とが互いに120度の角度で配置されている、装置の代替実施形態を示す。
【0038】
チャンバ12内の中心には、回転するように装着され、実質的に円盤形の流れ物体の形態である機械的キャビテーション要素18が配置されている。キャビテーション要素18は、駆動シャフト20を用いて連続的に制御可能なモータ22に連結され、そのモータは、キャビテーション要素18の速度を決定する。
【0039】
ガス供給源に接続されたガス供給手段の一部であるガス供給パイプ24が、駆動シャフト20の隣に配置され、駆動シャフトと平行にチャンバ12内に開口する。ガス供給パイプ24の口は、軸線方向に、キャビテーション要素18の上面に向いている。
【0040】
90度曲がり、それらに接続された音響パワートランスデューサ30、32をそれぞれが有する2つの短い接続ピース26、28が、半径方向に延在する入口14および出口16上に配置されている。両方の音響パワートランスデューサ30、32は、超音波範囲、または好ましくはより低い周波数範囲で作動する音響発生器の形態である。
【0041】
図2および3から明らかなように、両方の実施形態とも、チャンバ12は特別な形状を有する。チャンバ12は、キャビテーション要素18の領域(キャビテーション要素18を取り巻くチャンバ12の部分に対応する)で、円形から外れる非回転対称断面(軸線方向Aに垂直な半径方向断面)を有する。
【0042】
図示の実施形態では、チャンバ12の断面は、「丸い3角形」と呼ばれることもある3葉形を有する。真の3角形とは異なり、角が丸く(小さい丸み34)、諸辺が外側に湾曲(大きい丸み36)している。3葉形は、基本形状が3角形によるにも拘らず、大きい丸み34と小さい丸み36とが常に互いに直接対向するので、転動径(rolling diameter)Dが常に同じになることを特徴とする。
【0043】
3角形の基本形状ではなくて、4つ以上の角を有する(特に、4つまたは5つの角を有する)基本形状を用いることもでき、その場合、角は丸められ、諸辺は外側に湾曲(凸状)している。それらとは異なる極めて著しい丸みを有する他の変則的な基本形状も可能である。3角形の基本形状は円形から最も大きい逸脱を示すが、湾曲は類似しており、その形状は、さらに以下に述べるように、キャビテーション効果から見て望ましい。
【0044】
図4では、チャンバ12内で回転するように配置されるキャビテーション要素18が、単独に示されている。キャビテーション要素18は、実質的に、鋭角の円形外周縁部42で合体する対向凸面38、40を有する円盤(両凸状の円板)の形状を有する。2つの面38、40の曲率は互いに異なり得る。
【0045】
キャビテーション要素18は、上面38からキャビテーション要素18を完全に貫通して下面40まで延在する複数の通路開口44を有する。通路開口44は、上面38および下面40それぞれの上の細長い孔のような長円形の縁部46および48を有する。ただし、上視図において、上面38の縁部46は、下面の関連する縁部48と一致せず、詳細には、上面の縁部46と下面の縁部48それぞれの長手方向の範囲が寸法上異なり、かつ/または偏倚している。したがって、上面の縁部46の外周は、関連する下面の縁部48より大きくもしくは小さく、または同じ寸法であり得る。
【0046】
図5〜8の断面図から明らかなように、通路開口44の内壁は真直ぐではなく、丸みを帯びている。これは、1つには、内壁が湾曲した形状を有し、他方、縁部46、48は別として、内壁が陵または角部を有しないことを意味する。ある場合には、丸みは、少なくとも断面図では、下面近くの領域よりも上面38近くの領域でより顕著であり、ある場合には、別様の丸みである。
【0047】
さらに、通路開口44の直径が、丸みを帯びた部分にも拘らず、軸線方向高さを通して50%未満、好ましくは30%未満しか変化しないことが通路開口44の特徴である。図示の例示的実施形態では、その直径の変化は明らかに20%未満である。
【0048】
さらに、各通路開口44は、その中心が、その長手方向中心軸線(断面線A−A、B−B、C−C、およびD−Dそれぞれ)が該軸線に垂直なキャビテーション要素18の半径線Rと交わる点に対して、長手方向中心軸線の方向に偏倚するように配置されている。
【0049】
装置を使用して液体にガスを充填する際、液体は、好ましくはチャンバ12が完全に液体で満たされるように、チャンバ12を通って流れる。モータ22が、液体中に完全に浸漬されたキャビテーション要素18を、液体中にキャビテーションが生じるような速さで回転させる。
【0050】
これに関して、3葉形断面(または上記の同様な断面)を有するチャンバ12の特別な形状、およびキャビテーション要素18の特別な形状が、キャビテーション効果の増進を実現する。
【0051】
異なる丸み34、36を有するチャンバ12の断面形状に依って、キャビテーション要素18の回転が、キャビテーション効果に至らない望ましくない完全に回転循環流状態で液体を運動させることはない。ただし、角部は鋭くなく、丸みを帯びているので、少量の液体交換しか行われない「死水」点が、チャンバ12の角部に形成されることはない。チャンバ12の形状は、また、確実に、可能な限り少ない定常波しかチャンバ12内に生じさせない。
【0052】
キャビテーション要素18内の丸みを帯びた通路開口44に基づいて、キャビテーション要素18の外周縁部の領域のみではなく、通路開口44の領域にも極めて高い流速が発生し、その結果、まさにこれらの個所に、極めて高いキャビテーション効果が生じる。一方で、通路開口44はまた、特にキャビテーション要素18が高速のときに、液体の望ましくない剥離を効果的に防止する。
【0053】
異なる丸み34、36を有するチャンバ断面の特別な形状、およびキャビテーション要素18の通路開口44の特別な形状に依って、液体へのキャビテーション要素18の望ましくないポンプ作用が全般的に回避される。
【0054】
ガスは、ガス供給ライン24の中を軸線方向Aにキャビテーション要素18の上面上へ導かれる。ガスは、液体状態、たとえば液体酸素の状態でシステム内に供給することもできるが、ガス供給ライン24を通過するときには、ガスは、既に気体状態で存在することが好ましい。
【0055】
高いキャビテーション効果に基づいて、導かれたガスは、実質的に完全に液体中に取り込まれる。15℃の温度を有する井戸水に導入されるガスの量は、たとえば酸素で285g/hに達し得る。
【0056】
チャンバ12全体が、同時に、音響パワートランスデューサ30、32の音波によって満たされ、その結果、キャビテーション要素18によって発生したバブルが、直ちに音響エネルギーによる作用をさらに受け、その過程で大きさが減らされる。
【0057】
要するに、特別な形状をしたチャンバ12内の特別な形状をしたキャビテーション要素18の助けによるキャビテーション、および比較的低周波数領域での発生バブルの追加音響処理の結果、ナノメートル領域の平均バブルサイズが効率的に得られ、オングストローム領域のバブルが大きな割合で生成される。これにより、導入されたガスの大部分が、液体中に分子状態で分散して溶解されることになる。したがって、取り込まれたガスの全体が、比較的長い期間に亘って液体中に残留することになる。
【0058】
本発明が、好ましい実施形態を参照して説明されてきた。変更および追加は、それにより本発明の理念から逸脱することなく、当然、当業者が自由に行うことができる。
【0059】
前述の装置は、懸濁液内に存在する微小粒子の大きさをさらに減らすことができるので、懸濁液を極めて効果的に処理することができる。その方法は、以下のステップを含む。すなわち、回転式キャビテーション要素18が装入されているチャンバ12に、処理すべき分散液を導入するステップと、液体を超音波によって処理することなく、キャビテーションが発生するまでキャビテーション要素18を回転させるステップと、キャビテーションによって液体中の粒子の大きさを減らすステップとである。この方法では、チャンバ12内でさらに加えて超音波処理は行わない。懸濁液は、また、それをチャンバ12に導入する前、またはそれをチャンバ12から取り出した後も、超音波による処理は行われない。
【0060】
本方法は、懸濁液を超音波に曝すことなく、機械的に働くキャビテーション要素18のみによって実施される。内破する液体中の小さな空洞がこのキャビテーション要素18の表面に生じる。この内破によって、液体内に存在する固体粒子が、大きさをさらに減らされる。
【0061】
あるいは、ガスを、懸濁液中にさらに導入し、やはり、超音波なしの態様で、発生したキャビテーションによって懸濁液中に溶解することができる。液相中のガスの溶解は、懸濁液にとって利点を有し得、適宜、望ましい化学作用をもたらし得る。その一例が、廃水処理である。
【0062】
本方法は、塗料の顔料がその場合に特に細かく分散されるので、液体塗料、特にラッカの製造に使用することができる。
【0063】
さらに、本方法は、紙の製造に有利に用いられる。本方法では、紙のコーティング用懸濁液(たとえばホワイティング)中の固体粒子を液体中に特に十分に分散させ、大きさを減らすことができる。このように処理された懸濁液が、ドクタブレードによってペーパウェブ上に塗布され、滑らかな紙面を形成する。
【0064】
廃水の処理では、本方法を使用すると、固体粒子の大きさがさらに一層減少し、その結果、細菌の処理が著しくより効果的になる。細菌を死滅させるために、液体内へのガスの同時溶解を使用することができる。
なお、本発明には以下の態様も含まれる。
[項1]
液体を処理する装置であって、
チャンバ(12)と、
前記チャンバ(12)内に配置された回転式キャビテーション要素(18)と、を備える装置において、
前記チャンバ(12)が、前記キャビテーション要素(18)の領域内に、異なる丸み(34、36)をもつ断面を有することを特徴とする、装置。
[項2]
前記チャンバ(12)の前記断面が、丸みを帯びた角部をもつ多角形の基本形状を有することを特徴とする、項1に記載の装置。
[項3]
前記多角形の基本形状の複数の辺が凸状であることを特徴とする、項2に記載の装置。
[項4]
前記断面の前記基本形状が、正多角形からなる基本形状であることを特徴とする、項2または3に記載の装置。
[項5]
前記チャンバ(12)の前記断面が、3葉形を有することを特徴とする、項4に記載の装置。
[項6]
前記断面の前記基本形状が、不等辺多角形からなる基本形状であることを特徴とする、項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
[項7]
液体を処理する装置であって、
チャンバ(12)と、
前記チャンバ(12)内に配置された実質的に円板形状のキャビテーション要素(18)と、を備える装置において、
前記キャビテーション要素(18)が、好ましくは長円形である、丸みを帯びた内壁をもつ通路開口(44)を有することを特徴とする、装置。
[項8]
前記通路開口(44)がそれぞれ、上面(38)から前記キャビテーション要素(18)を完全に貫通して下面(40)まで延在することを特徴とする、項7に記載の装置。
[項9]
前記通路開口(44)の直径が、その軸線方向高さを通して、50%未満、好ましくは30%未満、さらに好ましくは20%未満、変化することを特徴とする、項8に記載の装置。
[項10]
前記内壁が、前記上面(38)近くの領域および前記下面(40)近くの領域において異なる度合いに丸められていることを特徴とする、項8または9に記載の装置。
[項11]
前記通路開口(44)が、前記上面(38)および前記下面(40)のそれぞれに細長い孔のような長円形の縁部(46、48)を有することを特徴とする、項8〜10のいずれか一項に記載の装置。
[項12]
上から視て、前記上面(38)上の前記通路開口(44)の前記縁部(46)が、前記下面(40)上の前記通路開口(44)の前記関連する縁部(48)と一致していないことを特徴とする、項8〜11のいずれか一項に記載の装置。
[項13]
前記通路開口(44)の長手方向において、前記上面(38)での前記縁部(46)の範囲が、前記下面(40)での前記縁部(48)とは寸法が異なり、かつ/または前記縁部(48)に対して偏倚することを特徴とする、項12に記載の装置。
[項14]
前記通路開口の長手方向中心軸線が当該軸線に対して垂直な前記キャビテーション要素(18)の半径線Rと交わる点に対して、前記通路開口の中心が前記長手方向中心軸線の方向に偏倚するように、それぞれの前記通路開口(44)が配置されることを特徴とする、項7〜13のいずれか一項に記載の装置。
[項15]
前記チャンバ(12)が、プラスチックから製作されたハウジング(10)内に配置されることを特徴とする、前記項のいずれか一項に記載の装置。
[項16]
入口(14)および出口(16)が、前記チャンバ(12)内に開口し、前記入口および出口が、半径方向rにおいて互いに180度未満の角度、好ましくは約120度の角度で配置されることを特徴とする、前記項のいずれか一項に記載の装置。
[項17]
好ましくは前記キャビテーション要素(18)の回転軸線の近傍で、前記キャビテーション要素(18)の上面に軸線方向に向けられた口を有するガス供給パイプ(24)を特徴とする、前記項のいずれか一項に記載の装置。
[項18]
前記ガス供給パイプ(24)が、駆動シャフト(20)に対して、平行な断面内で少なくとも延在し、前記駆動シャフト上に、前記キャビテーション要素(18)が配置されることを特徴とする、項17に記載の装置。
[項19]
音波を直接前記チャンバ(12)内に射出するように配置された少なくとも1つの音響パワートランスデューサ(30、32)を特徴とし、前記音波の周波数が超音波の周波数領域より低い、前記項のいずれか一項に記載の装置。
[項20]
特に前記項のいずれか一項による装置を用いて、懸濁液を処理する方法であって、
a)回転するキャビテーション要素が受け入れられたチャンバ内に、処理すべき前記分散液を導入するステップと、
b)前記液体を超音波によって処理することなく、キャビテーションが発生するまで前記キャビテーション要素を回転させるステップと、
c)前記キャビテーションによって前記液体中の粒子の大きさを減らすステップと、を特徴とする方法。
[項21]
ガスが、前記懸濁液に導入され、超音波なしの態様で、発生させたキャビテーションによって前記懸濁液中に溶解されることを特徴とする、項20に記載の方法。
[項22]
前記方法が、液体塗料、特にラッカを製造する方法、紙面コーティングのためのホワイティングを処理する方法、または廃水を処理する方法である、項20または21に記載の方法。