(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077457
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】電子胃腸用カプセル
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
A61B1/00 320B
A61B1/00 300D
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-543840(P2013-543840)
(86)(22)【出願日】2011年12月9日
(65)【公表番号】特表2013-545567(P2013-545567A)
(43)【公表日】2013年12月26日
(86)【国際出願番号】ES2011070845
(87)【国際公開番号】WO2012080545
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年11月28日
(31)【優先権主張番号】P201031835
(32)【優先日】2010年12月13日
(33)【優先権主張国】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】513148565
【氏名又は名称】メドルミクス,エセ.エレ.
【氏名又は名称原語表記】MEDLUMICS,S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】マルガロ バルバス,エドゥアルド
(72)【発明者】
【氏名】ルビオ ギベルナウ,ホセ ルイス
【審査官】
佐藤 高之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−072431(JP,A)
【文献】
特開2009−244207(JP,A)
【文献】
特開2007−151631(JP,A)
【文献】
特開平11−056751(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/065955(WO,A1)
【文献】
特開2007−175447(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/078254(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/154460(WO,A1)
【文献】
国際公開第02/004929(WO,A2)
【文献】
特開2002−202253(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0119740(US,A1)
【文献】
国際公開第2008/012701(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0177033(US,A1)
【文献】
国際公開第2007/091881(WO,A2)
【文献】
米国特許第06485413(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0244547(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0051512(US,A1)
【文献】
特開2004−243034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消化器官システム内の環境に耐え、生物学的適応性を有する外殻部によって保護されていることによって特徴づけられた電子胃腸用カプセルであって、
少なくとも一つの光源(4)と、
光源(4)からやってくる、第1の波長範囲を有する光ビームを分割し、それをレファレンスアーム(6)およびサンプリングアーム(9)へと導く分割部(5)と、
アーム(6,9)の少なくとも一つに配置された、分析する組織までの距離に依存する可変型グループ遅延素子(24)と、
サンプリングアーム(9)の光ビーム(30)の交差部を、分析する組織を横断して移動させるように構成された光学移動部(7)と、
サンプリングアーム(9)からの光ビーム(30)を、分析する前記組織の表面上で結像させるように構成された光学系(8)と、
サンプリングアーム(9)およびレファレンスアーム(6)からやってくる反射光同士の間で干渉を生じさせる干渉部(10)と、
レファレンスアーム(6)およびサンプリングアーム(9)からやってくる光同士の間での前記干渉を受け取る第1の検出器(11)と、
検出器(11)によって取得された情報を加工するように構成された加工部(2)と、
外部との物理的接続なしに、当該カプセルへ電気的に動力を供給するように構成された動力供給部(3)と、
当該カプセルの周囲に存在する前記組織の画像を捕捉するように構成されたビデオ装置(14)と、を備え、
ビデオ装置(14)は、前記組織の表面からやってくる、第2の波長範囲を有する反射光と、前記第1の波長範囲を有する前記組織の表面からの反射光の少なくとも一部とを受光するように構成された第2の検出器(11)を備え、
第2の波長範囲は、ビデオ装置(14)と関連付けられており、
ビデオ装置(14)から生成された画像は、第1の波長範囲を有する光および第2の波長範囲を有する光の両方からの寄与を含んでいることを特徴とする電子胃腸用カプセル。
【請求項2】
可変型グループ遅延素子(24)が、少なくとも一つの光学スイッチ(31)を備えて
おり、少なくとも一つの光学スイッチ(31)は、互いに異なるグループ遅延を導入する、予め確立された複数の光学的経路の中から一つを選択することを特徴とする請求項1に記載の電子胃腸用カプセル。
【請求項3】
可変型グループ遅延素子(24)は、共同してグループ遅延および結像距離を調整するように、光学系(8)と相互作用することを特徴とする請求項1または2に記載の電子胃腸用カプセル。
【請求項4】
アーム(6,9)の少なくとも一つに、色分散を補償するための能動素子であって、(i)フォトニック結晶、(ii)チャープされたブラッグ格子、(iii)異常色分散を引き起こす特性を有する導波管部、から選択される能動素子を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子胃腸用カプセル。
【請求項5】
サンプリングアーム(9)およびレファレンスアーム(6)は、同一の物理的経路を少なくとも部分的に共有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子胃腸用カプセル。
【請求項6】
加工部(2)は、加工部(2)によって加工された情報を記憶するように構成された記憶ユニット(12)を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子胃腸用カプセル。
【請求項7】
加工部(2)は、加工部(2)によって加工された情報を外部通信装置に送信し、また前記外部通信装置から指示を受信するように構成された通信ユニット(13)を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子胃腸用カプセル。
【請求項8】
光学移動部(7)は、光ビーム(30)と分析する前記組織の表面との交差部の点を移動するように構成された電気機械部を備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子胃腸用カプセル。
【請求項9】
光学系(8)は、光学干渉断層撮影システムによって用いられる波長範囲を該システムに導き、他の波長範囲をビデオ装置(14)に導く、波長に応じたビーム分離システム(19)を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電子胃腸用カプセル。
【請求項10】
特定部(15)をさらに備え、
上記特定部(15)は、外部通信ユニットによって受信された指示に従って、サンプリングアーム(9)から出てゆく前記光ビームの位置に適応するように、光学移動部(7)および光学系(8)と相互作用することを特徴とする請求項7に記載の電子胃腸用カプセル。
【請求項11】
ビデオ装置(14)は、波長に応じた光学フィルターと、当該カプセルの周囲に存在する前記組織からやってくる蛍光を捕捉する補色光源と、を備えていることを特徴とする請求項9または10に記載の電子胃腸用カプセル。
【請求項12】
当該カプセルの動作に対する相対的な情報を提供する動作センサーを備えていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の電子胃腸用カプセル。
【請求項13】
当該カプセルの位置に対する相対的な情報を提供する位置センサーを備えていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の電子胃腸用カプセル。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔本発明の分野〕
本発明は、断層撮影法、好ましくは光学干渉断層撮影法を用いた胃腸管検査のための装置の分野に含まれる。
【0002】
〔本発明の背景〕
伝統的な結腸内視術は、患者に対して大きな苦痛および不快さを与えている。現在の技術は、消化管を通過することができ、消化管の情報を得て、その情報を外部の受信機に送信するカプセルを提供している。例えば、ハイデルベルク(Heidelberg)カプセルは、pHレベルを測定することができる。一方、特許WO0165995に記載された装置は、管内壁の画像を取得する。両者の場合において、情報は、外部の受信機へ無線で送信される。しかしながら、上述した構成では、高解像度の部位情報が欠けている。部位情報は、組織構造の検査において重要であり、従って、正確な診断を提供するために重要である。このように、それらは、ポリープ(polyp)およびその他の危険な構造体の視覚的な特定および発見が可能であるものの、その後の生検(バイオプシー;biopsy)がなお要求されるために、それらの有用さは限定される。
【0003】
この要求は、文献において繰り返し確認されてきた。米国特許出願2005/0096526A1は、調整可能な画像素子を備えた胃腸用カプセルを開示している。この出願は、伝統的な写真画像システムに焦点を当てているものの、断層撮影情報取得の手段を含んでいることにより、代替の画像素子を利用する可能性を高めている。しかしながら、前記の出願は、本発明に係る問題を解決する必要性を示唆するのみであり、それを達成するための手段を全く特定していない。
【0004】
米国特許出願2007/0142708A1は、胃腸用画像化カプセル内に超音波振動機を導入することに言及している。この技術は、いくつかの出願において光学干渉断層撮影法の代替となり得るが、胃腸用カプセル内に集積する観点において、重大な制限を有する。超音波振動機は、低い空間解像度を提供し、音響インピーダンスに適合する伝達媒質を必要とし、また巨大な器械を使用する。さらに、前記の出願は、超音波画像化技術を胃腸用カプセルに集積することを開示していない。
【0005】
特許出願WO2008/012701A1は、可変レンズシステムを備えた胃腸用ビデオカプセルを開示している。可変レンズシステムは、画像センサーと共同して、画像化のために、光源からの光のビームを導くことを可能にする。この特許出願は、本発明の適用例を含んでいる。この特許出願では、未来にはそれを胃腸用カプセルに集積することが可能であるという限りにおいて、それが光学干渉断層撮影システムに使用されている。前記の出願は、断層撮影情報を得ることの重要さに気付いているが、何ら解決法を記載していない。
【0006】
出願JP2004/243034Aは、ミラウ(mirau)干渉計を用いて、全場OCT(Optical Coherence Tomography)システムを集積する方法を開示している。その真の本質によって、それは自由空間の光学素子に基づいており、集積された光学機器の使用と両立することはできない。前記の発明の重大な制限の一つは、対象物までの距離が多様である場合、様々な光学素子を所望の走査と同等の範囲で調整する必要があるので、記載されている様なミラウ干渉計を適用することが大変困難であることである。カプセル(10−20mm)の次元と同等の距離範囲は、実際には到達され得ない。また、明細書自体も、軸方向走査によってカバーされる最大距離は1−2mmであることを認識している。システムは、1−2mmを超えて走査範囲を調整することができないので、JP2004−243034に記載された発明は、サンプルの横方向の画像を生成することに限定される。それにより、腸管全体の画像を生成することができない場合がある。前記の発明の他の重大な制限は、光学画像がミラウ干渉計の視野と一致する必要があることである。この第2の視野は、組織構造の情報を提供するOCT技術の特徴である肉眼的(マクロスコピック;macroscopic)な解像度を得るために、小さくなければならない。しかしながら、診断上の目的のために画像化をするとき、マクロスコピックな横方向の大きさの損傷およびその周囲は、干渉計の視野よりも大きなオーダーの寸法になる可能性がある。
【0007】
これらの全ての制限は、JP2004−243034に記載された前記の発明の実現を大変困難にする。また、彼らは、この出願において、光学干渉断層撮影法の有用な診断上の評価値を、大変な危険にさらしている。
【0008】
そのために、サンプルから複数の異なる距離で作動するように適合させることができるOCT画像化システムを集積した胃腸用カプセルが望まれていた。これらの特性を備えたカプセルは、腸管全体の断層撮影情報を得ることができるだろう。また、ビデオ装置を備えたOCTシステムと組み合わせることにより、バイオプシーの実施の必要を排除することができる仮想的なバイオプシーを提供することによって、医者に対して、使用可能なカプセルといったビデオ情報だけでなく、ビデオ内に現れる構造の断層撮影情報も与えることができる可能性がある。
【0009】
〔本発明の説明〕
本発明は、付随するバイオプシーが介在する数を最小化することによって、従来技術の段階の制限、ひどい不快さ、および、消化器官の内視鏡を用いた処理が患者に引き起こす罹患を解決することを目的とする。質的な進歩をもたらす可能性がある処理は、食道十二指腸鏡検査、直腸S状結腸鏡検査、大腸内視鏡検査、内視鏡を用いた退歩的な胆道膵管造影、または小腸鏡検査である。特に、後者の場合、内視鏡を用いた通常の接近の困難さは、代替の診断方法を探索することを特に価値のあるものにする。
【0010】
本発明は、OCTシステムを集積した胃腸用カプセルを開示する。OCTシステムは、その動作範囲を、対象物までの距離(数センチメートルまで)の広いインターバルに適合することができる。また、OCTの走査領域と光学機器の一般的な視野とを分断することにより、フォーカシング(focusing)用光学機器の視野内における広い範囲の領域内で、横方向の走査範囲を選択し、変化させることができる。
【0011】
本発明はまた、ビデオシステムを備えたOCTシステムを集積する方法も開示する。ビデオシステムの視野は、一般的な光学機器と一致するが、OCTシステムによって走査される領域から常に独立している。2つの相対的な位置を所望に応じて記録することができる方法も開示する。本発明は、さらに、集積された光学機器に基づいた装置化の解決法を開示する。このことは、本発明が、胃腸用カプセルに要求される小さなサイズに適していることを実証する。非断層撮影画像化システムに関して、本発明は、ビデオ画像と組み合わされた軸方向の情報を得ることができるという利点を与える。軸方向の情報は、診断上の大きな評価値であり、バイオプシーの実施を回避することを可能にする。
【0012】
本発明は、生物学的適応性を有する外殻部を備える。殻部は、高解像度の断層撮影画像化システムの大変小さな機器内に存在する情報取得部、加工部、および動力供給部と同様に、消化器官システムの化学的な環境に耐えることができる。加工部は、検査および分析のために、収集された情報を外部のシステムに送信することができる。しかしながら、内部記憶ユニットが含まれていてもよい。カプセルは、誘導性のリンクを通して、または他の手段によって(例えば、バッテリーによって)、動力を供給されることができる。
【0013】
情報取得部は、断層撮影画像化システムを備える。断層撮影画像化システムは、プラーナ技術および固体状態の素子を用いて組み立てられた光学干渉断層撮影法を使用する。このシステムは、光学干渉断層撮影法で用いられる多数の構成の一つに従って配置された光源、検出器、および集積された光学素子を備える。従来の段階で使用される技術と対比すると、本発明は、全場OCTを提供せず、むしろ走査ビームOCTを提供する。走査ビームOCTは、導波された光学機器、特に、集積された光学機器を使用するために必要である。集積された光学機器は、いくつかの利点:製造費用、システムの小ささ、信頼性、および耐久性、を提供する。製造費用およびシステムの小ささは、末端の費用およびプラーナ製造技術の高い集積密度を減少させることによっている。一方、信頼性および耐久性は、移動部材および電気機械素子を最小にすることによっている。
【0014】
光学干渉断層撮影システムのサンプリングアームは、電気機械部と接続されている。これにより、分析する組織の表面と光ビームとの交差点を移動させることが可能である。カプセルは、組織の表面と光ビームとの交差点が、広い作動範囲内で移動することを可能にする。ビームの角度方向は、光学素子がビームの経路内で移動することができるように、MEMS(MicroElectroMechanical System)素子または他の電気機械装置を用いて調整することができる。システムは、所望の組織の領域上で光ビームを結像させるために、固定焦点(fixed-focus)レンズの組、または好ましくは、可変レンズを有する。固定焦点レンズの場合、作動範囲は、光学設計によって予め確立される距離の範囲に限定される。可変レンズの場合、広い作動距離範囲を達成することができる。このことは好ましい。横方向の高速走査は、特にOCTの場合、同じMEMS素子、または、所望の組織の領域を交差部するようにビームを導く他の電気機械装置により実現することができる。
【0015】
OCTシステムは、好ましくは、固体状態のセンサーに基づくビデオ装置と組み合わされる。この目的のため、例えば、ビームを構成する光の波長に応じたビーム分離システムを用いることができる。実現可能で単純な実行案は、二色性ミラーに基づくだろう。二色性ミラーは、光学干渉断層撮影システムによって使用される波長範囲を、前記システムに向けて反射する。また、他の波長範囲にビデオ装置を通過させる。あるいは、ビーム分離システムは、半反射ミラーに基づいていてもよい。
【0016】
ビデオ装置は、断層撮影情報を、分析されたマクロスコピックな解剖学的構造に関連付けるために使用される。好ましくは、OCTシステムおよびビデオ装置は、OCTシステムの各部によってビデオ画像内で調べられた体積(volume)の位置を正確に示すためにリンクされる。OCTシステムによって使用されたビームの波長をビデオ装置のCCD/CMOS(Charge Coupled Device/Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)センサーによって検出することができる(シリコン内において、波長は1000nmより小さい)場合であって、ビーム分離システムはOCT波長の一部をセンサーへ通過させることができるように設計されている場合、一度、OCT走査領域内で散乱された光が、光学ビデオシステムによって収集され、画像内で明るい領域として検出されたならば、画像センサー内におけるOCTビームの位置を即座に明らかにすることができる。
【0017】
一方、OCTシステムはビデオ装置センサーによって検出され得る波長よりも長い波長を使用する場合、または、ビデオ装置および光学干渉断層撮影システムの完全なフィルタリングが選択される場合、または、何らかの理由で単純に好ましい場合、ビデオ装置によって取得された画像に関して、OCTシステムによってカバーされる空間範囲を計算することができるように、固定焦点レンズまたは可変レンズの対象距離を組み合わせて、ビームを導く電気機械部の機械的な較正を実行することができる。
【0018】
センサー、および、ビデオ画像を加工するための電子機器は、同じ基板上に含めることができる。基板内には、光学干渉断層撮影システムのための導波管および他のプラーナ光学素子が設けられている。または、それらは、他の分離した基板上に含まれていてもよい。
【0019】
ビデオシステムは、組織内での異なる蛍光現象の励起のための適切な波長の照明を有していてもよいし、また、励起波長を除去する適切なフィルターに伴われてもよい。これにより、蛍光を発する組織の領域を記録して、光学干渉断層撮影法により得られた 組織構造の情報を補足する診断情報を提供することが可能になる。
【0020】
システムが、装置に用いられる物質の色分散によるデグラデーション(degradation)なしに作動する程度内において、得られるレファレンスパターンが、光源のバンド幅によってのみ決定されるように、両方のアーム(レファレンスおよびサンプリング)でそれを均等化することが必要である。選択された導波管の技術に潜在的に備わる複屈折にも同じことが言える。この複屈折が、製造プロセス中に完全に中和されない場合、両方のアームでそれを均等化する必要がある。
【0021】
同時に、広い焦点深度範囲をカバーするために、OCT画像を生成するのに必要な長さ分を超えて長さを調整することが可能なレファレンスアームを用いる必要がある。特に、OCT画像は、典型的に深度1−2mmを有するが、望ましい焦点距離範囲は数センチメートルである。本発明では、このことは、集積された光学システムにおけるレファレンスアームおよび/またはサンプリングアームの内部的経路を、異なる物理的長さ同士の間で切り替えることによって達成される。
【0022】
しかしながら、注意したように、最も一般的な能動素子、例えばケイ素は、相対的に分散しやすくかつ複屈折しやすいため、これは、集積されたOCTシステム内で問題を提出する。その結果、走査の間、レファレンスアームとサンプリングアームとの間で、物質の長さの平均差異をゼロでなくすることは、アーム同士の間の色分散がアンバランスになるため、最終的なシステムの解像度に問題を招く。
【0023】
上述した問題は、他の方法で解決することができる。第1の方法は、一方のアームに、分散を補償する能動素子を用いるものである。能動素子は、フォトニック(photonic)結晶またはチャープ(chirp)されたブラッグ(Bragg)格子などの分散的な設計に基づいていてもよい。しかしながら、導波管の一部を用いることもできる。導波管は、幾何的なまたは物質としての特性が与えられたならば、異常色分散を示す。この能動素子の設計は、一方ではバンド幅に、もう一方では高次の色分散に特別な注意を払う必要がある。熱光学的効果または荷電キャリアの注入効果で物質の屈折率を変化させることにより、異なるオーダーの分散係数に働きかけることで、例えば、能動素子の動作点を調整すること、および、導入された色分散を補償することが可能である。確実に、これらの素子は、アームの実効的な長さの物理的変化に匹敵するので、グループ遅延にも影響を与える。そのため、その設計は、物理的長さに適切に等しくされている必要がある。
【0024】
他の解決法は、ハイブリッド(hybrid)技術で装置を実現することである。ハイブリッド技術では、低い分散を有するケイ素などの能動物質および/または窒化ケイ素(oxy)または酸化窒素などの複屈折物質を組み合わせる。単一のプロセス内での前記の技術の組み合わせが、技術的にあまりに複雑であるか、あるいは経済的理由またはその他の理由のために望ましくないことが判明した場合、能動素子および受動素子を備えた2つの異なる基板に基づく解決法を使用することができる。受動素子は、異なる物理的長さを有する反射体内に端部を有する導波管のアレイ(array)を含むほかには、なにも含まない。異なる長さを有し、反射体内に端部を有する分離したファイバー(fibre)のアレイを、光学干渉断層撮影システムが設けられた基板と結合することを考慮することも役立つ。
【0025】
加えて、本発明は、収集された情報の逐次解釈を容易にするために、躯体内でのカプセルの位置を確立する手段を含んでいてもよい。カプセルの位置は、生体の異なる位置特定および操縦技術を用いて確立することができる。位置特定および操縦技術は、殻部内から送信される電磁信号からの三角測量の使用を含む。あるいは、殻部内で検出された外部磁場を生成することによる。
【0026】
カプセルの位置を確立するための他のオプションは、装置の動作に相対的な情報を提供するために、加速度計やジャイロスコープ(gyroscope)などの、ある種の動作センサーを装置内に含んでおり、これにより、例えば、一旦、装置の動作が検出されたならば、画像化を開始することができることである。
【0027】
結論として、生物学的適応性を有し、消化器官システムの環境に抵抗する外殻部によって保護された電子胃腸用カプセルは、内部的に、以下を備える:
−少なくとも一つの光源;
−光源からやってくる光ビームを分割し、それをレファレンスアームおよびサンプリングアームへ導くように構成された分割部;
−少なくとも一つのアーム内に位置付けられた、分析する組織までの距離に依存する可変型グループ遅延素子;
−サンプリングアームからの光ビームの交差部を、分析する組織を横断して移動させるように構成された光学移動部;
−サンプリングアームからの光ビームの焦点を、分析する組織の表面上に合わせるように構成された光学システム;
−レファレンスアームおよびサンプリングアームからやってくる反射光同士の間で干渉を生じるように構成された干渉部;
−レファレンスアームおよびサンプリングアームからやってくる反射光同士の間での前記干渉を受け取る少なくとも一つの検出器;
−検出器によって取得された情報を加工するように構成された加工部;
−外部との物理的接続なしにカプセルへ電気的に動力を供給するように構成された動力供給部;
可変型グループ遅延素子は、複数の光学的経路の中から一つを選択する、少なくとも一つの光学スイッチを備えていてもよい。ここで、前記光学的経路は、予め確立された互いに異なるグループ遅延を導入する。
【0028】
加えて、前記可変型グループ遅延素子は、グループ遅延および焦点距離を共同して調整するように、光学システムと相互作用することができる。
【0029】
好ましくは、カプセルは、少なくとも一つのアーム内に色分散のための能動素子を備えている。能動素子は、以下から選択される。
−フォトニック結晶;
−チャープされたブラッグ格子;
−異常色分散を引き起こす特性を有する導波管部。
【0030】
サンプリングアームおよびレファレンスアームは、少なくとも部分的に同じ物理的経路を共有してもよい。
【0031】
加工部は、加工部によって加工された情報を記憶する記憶ユニットを備えていてもよい。
【0032】
好ましくは、加工部は、加工部によって加工された情報を外部通信装置へ送信し、前記外部通信装置から指示を受信する通信ユニットを備える。
【0033】
光学移動部は、好ましくは、分析する組織の表面との光ビームの交差点を移動させるように構成された電気機械部を備える。
【0034】
好ましくは、カプセルは、カプセル内で組織の画像を捕捉するように構成されたビデオ装置を備える。
【0035】
光学システムは、光学干渉断層撮影システムによって用いられた波長範囲を前記システムへ導き、他の波長範囲をビデオ装置へと導く、波長に応じたビーム分離システムを備えてもよい。
【0036】
加えて、カプセルは、光学断層撮影システムのサンプリングアームの出射光ビームの位置を、ビデオ装置によって取得された画像内で特定するように構成された特定部を備えていてもよい。
【0037】
特定部は、外部通信装置によって受信された指示に従って、サンプリングアームの出射光ビームの位置に適応するように、光学移動部および光学システムと相互作用することができる。
【0038】
ビデオ装置は、波長に応じた光学フィルター、および、カプセルの周囲の組織からやってくる蛍光を捕捉することができる補色光源を備えていてもよい。
【0039】
好ましくは、カプセルは、カプセルの動作に対して相対的な情報を提供する動作センサーを含んでいる。
【0040】
カプセルは、カプセルの位置に関する情報を提供する位置センサーを備えていてもよい。
【0041】
基板上に集積された光学干渉断層撮影法のコンセプトは、ケイ素の熱光学効果を用いて、高速走査可変遅延ラインなどの、鍵となるOCT素子の一つのプラーナ技術に含まれる集積の手段によって可能である。この集積および本発明に特有の進歩のために、胃腸用カプセル内に集積されたOCTシステムを設計することが可能である。周波数領域などの他の光学干渉断層撮影法の実現案も、アレイ導波管格子の手段で集積された光学機器を利用することによって、最小化の対象となる可能性がある。可変周波数固体光源を用いた波長走査(Swept-source)型に基づくシステムも、本発明に特有の進歩によって集積することができる。
【0042】
本発明は、従来は存在しなかった機能性の解決法を提供する。また、本発明は、非侵入的に、かつ、患者に対する不快さおよび危険を最小に、潜在的に腫瘍性のある組織の断層撮影情報を取得することを可能にする。
【0043】
本発明の実現には、健康機関によるいくらかの投資が必要であるだろう。しかしながら、前者が要求するカプセルおよび装置の再利用は、必要な投資の収益性を向上させるだろう。また、実現には、生み出される大量のデータのために、装置を管理する人間の仕事を増大させることを必要とするだろう。この大量のデータは、画像化法を用いることによって、動作時間を限定し、データが取得される領域を適切に選択するように、適切な計画を用いて制御することができる。さらに、断層撮影データを自動的または半自動的に取得すること、および、手作業で加工する必要がある大量の取得情報を減少させるように、フィルタリングアルゴリズム(filtering algorithms)を適用することができる。取得が自動的である場合、断層撮影情報を、ビデオ情報に結合させ、従属させることができる。これにより、医者は、ビデオ記録を観察することによって、検査する部位を選択することができる
〔図面の簡単な説明〕
本発明をより理解する助けとなる図面の系列を、以下で簡単に説明する。図面の系列は、実例および非限定的な例として与えられる本発明の実施例に対して、明示的に関係する。
【0044】
図1は、電子胃腸用カプセルの平面視を示す。
【0045】
図2は、前記電子胃腸用カプセルの一部を示す。
【0046】
図3は、誘導性リンク動力供給部がバッテリーに置換された前記電子胃腸用カプセルの一部を示す。
【0047】
図4は、使用中の前記電子胃腸用カプセルを示し、検査対象の組織の断層撮影画像を得るために用いられる光の向きを決め、焦点を定めている様子を示す。
【0048】
図5は、取り付け可能な遅延素子の実施例を示す。取り付け可能な遅延素子内では、2つのスイッチが 、複数の中間ガイドのうちの一つによって、入口ガイドの光を出口ガイドへ導く。各中間ガイドは、互いに異なる固定された遅延によって特徴付けられている。
【0049】
図6は、ビデオ画像上での断層撮影画像の位置を示しており、高解像度の断層撮影情報と、マクロスコピックなビデオ画像とをリンクしている様子を示す。
【0050】
〔実施例の詳細な説明〕
図1、2、および3は、カプセルの概要を示す。カプセルの情報取得部1は、振動障害を送信および受信することによって、カプセルの周囲の組織の断層撮影情報を取得するように構成されており、胃腸用カプセルを囲む外殻部25内に収容された光学的コヒーレンス断層撮影システムを備える。この殻部25は、生物学的適応性を有している必要があり、またその一部は、情報取得部1による送信および受信を促進するために用いられる波に対して透明である必要がある。
【0051】
図1および2は、コイルに基づいた動力供給部3を示す。コイルの機能は、装置の外部で生起された交流磁場から誘導電流を生み出すことによって、カプセルに対して、電気的に動力を供給することである。コイルの向きが複数通り存在することは、場に対するカプセルの物理的方向に関わらず、電気的な動力供給を継続することを促進する。しかしながら、このことは厳密には必須ではない。コイルは、カプセルの通信ユニット13の一部であってもよい。この意味で、外部磁場はカプセルに情報を送信するように変調されてもよく、また、負荷偏移変調(load shift keying)などの、この目的のための周知技術が外部のシステムに情報を送ることに適用される場合、リンクは二方向性に形成されていてもよい。あるいは、カプセルの通信ユニットは、誘電性リンクとは異なる送信および受信チャンネルを用いることができる。
【0052】
図では、集積された光学機器の方法によって基板22上に備えられた光学的コヒーレント断層撮影システムを観察することもできる。固体光源(例えば、超発光ダイオードまたはSLD)などの小さな光源4から出射された光は、分割部5、
図1ではこれは50/50カプラーである、へ導かれ、分割部5は、光を2つのアーム、レファレンスアーム6およびサンプリングアーム9、に分割する。
【0053】
レファレンスアーム6は、時間領域におけるこの基本的な装置の中に、軸方向の走査を行う微小な熱光学遅延ライン16を含んでいる。よく知られているように、他のOCTシステムの構成も可能であるだろう(周波数領域、swept-source、など)。レファレンスアーム6内には、可変型グループ遅延素子24も示されている。レファレンスアーム6は、サンプリングアーム9内において、検査対象の組織に対する異なる距離に対応する広い距離幅で干渉計を調整することができる。レファレンスアーム6の端部には、アーム6を通して光を戻すリフレクタ―23が存在している。
【0054】
サンプリングアーム9からの光は、サンプリングアーム9からやってくる光ビーム30と分析する組織との交差点を移動させる光学系移動部7へと送られる。図に示すシステムでは、光学系移動部7は、サンプリングアーム9から出射された光を平行にするための手段、例えば、屈折率勾配17(GRIN)などの小さなレンズの一種、に基づいて構成されている。屈折率勾配17は、図に示すように、MEMS微細製作(マイクロファブリケーション;microfabrication)技術を用いて、平行化されたビームを、移動型ミラー18の方向に導く。移動型ミラー18は、ビーム30を組織の所望の位置に向けることに加えて、断層撮影イメージングの軸方向の走査を補足する側面走査を提供することもできる。移動型ミラー18で反射された光は、次に光学系8に向かう。光学系8は、ビーム30の向きおよび焦点を組織上に合わせる。図に示すシステムでは、光学系8は、例えば二色性ミラーまたは半反射型ミラーなどのビーム分離システム19から構成されている。ビーム分離システム19は、移動型ミラー18からやってくる平行化されたビームを受け取って、ビームをレンズ20の方向へ反射する。レンズ20は、検査する組織の上に焦点を合わせる。二色性ミラーを使用するのは、ビデオ装置14によって検出された波長帯域を該装置に導き、他の波長帯域を光学干渉断層撮影システムに導くためである。これにより、動力の損失なしに、両者に光学系8を共有させることができる。半反射ミラーは同じ効果を達成するが、光のパワーが失われる。レンズ20(またはレンズシステム)は、広い距離幅で機能するように、焦点を調整可能であることができることが好ましい。この能力は、光学素子を移動させるか、またはレンズの焦点距離を用いることによって提供することができる。焦点距離は、液晶やエレクトロウェッティング(electrowetting)などの他の手段により調整することができる。
【0055】
焦点の調整は、自動的に、かつ、レファレンスアーム6内の可変型グループ遅延素子24により導入される遅延調整の組み合わせで行われることが好ましい。その理由は、両者は、分析する組織までの距離に関係するためである。異なる角度方向についてこれらの距離を記録することにより、組織の表面の解剖図が構成される。これらの距離はまた外部に送信されて、潜在的な診断評価値を有する断片としてユーザに与ることができる。
【0056】
組織からやってくる反射光は、再度このレンズ20により収集されて、集積光学基板22内のサンプリングアーム9に戻る方向へ向かい、先に通った経路を逆戻りする。レファレンスアーム6およびサンプリングアーム9からやってくる2本の光成分は、それぞれ、干渉部10によって結合される。干渉部10は、この機器内において、分割部(5)と同じ位置を占めており、結果の信号は検出器11で検出される。技術的な製造プロセスが必要である場合、記憶ユニット12および通信ユニット13を含む電子加工部2は、図に示すように、集積された光学機器のために用いられる同じ基板22内に備えられてもよいし、あるいは、分離した基板内に作製されてもよい。
図2は側面視を示す。側面視では、ビーム分離システム19の背後に配置されたビデオ装置14の位置を見ることができる。ビデオ装置14は、センサー上で適切な画像を形成するために、可視光波長域内に組織照射部を含んでいる。画像センサーは、基本的に、基板22の一部であってよい。基板22内には、特に、製造技術が集積電子回路製造プロセスと両立できる場合、導波管、および、光学干渉断層撮影システムの他の平面光学素子が設けられており、カプセルの最終的な大きさに良い影響を与える。
【0057】
図3は、カプセルの動力供給部3を実現するために、誘導型リンクコイルをバッテリーに置換する。この装置では、誘導性リンクを介する通信ユニット13は採用されないかもしれない。しかしながら、無線周波数リンクなどの他のルートが必要であるだろう。
【0058】
図4は、分析したい組織が存在する消化管の点で使用中のカプセルを示している。カプセルは、前記の領域にOCTビームを向けて、焦点を合わせる。これにより、高解像度の断層撮影画像を提供する。
【0059】
図5は、光学スイッチ31に基づいた適応性を有する遅延素子の実施例を示す。遅延素子の実施例は、好ましくは集積された光学機器を用いて実現される。これらの光学スイッチ31は、マルチモード干渉デバイス(multimode interference devices;MMI)、または移動可能な方向性カプラー(coupler)の縦続を用いて確立することができる。同図は、共同して、入口ガイドから、複数の中間ガイドのうちの一つへと光を導くことが可能な2つのスイッチング素子を示す。光は、固定された互いに異なるグループの遅延素子によって特徴づけられ、今度は、対照的に、前記の中間ガイドから出口ガイドへと導かれる。互いに異なるグループの遅延素子を備えた導波管の部分は、例えば、異なる長さの導波管によって得ることができる。
【0060】
図6は、ビデオ画像上において、走査された領域を特定するプロセスを示す。このプロセスは、高解像度の断層撮影ビデオ画像とマクロスコピックなビデオ画像との間のリンクを提供する。このリンクを確立するために、カプセルは、同等のOCTに用いられる光ビームの位置をビデオ画像から特定するための特定部15を有する必要がある。これにより、ビームの位置を常にビデオ画像上で示すことができる。先に注意したように、特定部15は、光ビームを走査する能力を有する光学素子の位置センサー内、または画像センサー上のビームの位置の方向検出器内で、光学移動部7内のビームを移動させる電気機械の素子の較正、および光学系8を構成していてもよい。
【0061】
本発明を明確に説明したが、上述した具体的な実施例は、本発明の基本原則およびエッセンスを変えない限りにおいて、変更することができることを注意しておく。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図3】誘導性リンク動力供給部がバッテリーに置換された前記電子胃腸用カプセルの一部を示す。
【
図4】使用中の前記電子胃腸用カプセルを示し、検査対象の組織の断層撮影画像を得るために用いられる光の向きを決め、焦点を定めている様子を示す。
【
図5】取り付け可能な遅延素子の実施例を示す。取り付け可能な遅延素子内では、2つのスイッチが 、複数の中間ガイドのうちの一つによって、入口ガイドの光を出口ガイドへ導く。各中間ガイドは、互いに異なる固定された遅延によって特徴付けられている。
【
図6】ビデオ画像上での断層撮影画像の位置を示しており、高解像度の断層撮影情報と、マクロスコピックなビデオ画像とをリンクしている様子を示す。