特許第6077466号(P6077466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6077466車両にシートベルト用支持体を取り付けるための取付構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077466
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】車両にシートベルト用支持体を取り付けるための取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/24 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   B60R22/24
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-554013(P2013-554013)
(86)(22)【出願日】2012年2月17日
(65)【公表番号】特表2014-505632(P2014-505632A)
(43)【公表日】2014年3月6日
(86)【国際出願番号】GB2012050360
(87)【国際公開番号】WO2012110827
(87)【国際公開日】20120823
【審査請求日】2015年2月17日
(31)【優先権主張番号】1102743.0
(32)【優先日】2011年2月17日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】502407266
【氏名又は名称】ベントレー モーターズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(74)【代理人】
【識別番号】100173657
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬沼 宗一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100186819
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 俊尚
(72)【発明者】
【氏名】ダウニー,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】レッドマン,アレクサンダー ジェームス
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−175324(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/069398(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第1854706(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/00 − 22/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両にシートベルト用支持体を取り付けるための取付構造であって、
前記取付構造は、前記車両に取り付けられると、前記取付構造を第1の方向範囲内の一方向に付勢する第1の力がかかった場合には、前記取付構造が前記車両に対して相対的に第1の方向範囲を動くが、前記取付構造を前記第1の方向範囲外の方向に付勢する前記第1の力よりも大きな第2の力がかかった場合には、前記取付構造が前記車両に対して相対的に第1の方向範囲外の方向に動かないように構成されており、
前記取付構造は、1以上の細長いスロットを有するブラケットと、前記ブラケットを前記車両に向かって付勢することで、前記ブラケットが前記車両に対して締結されているときに前記スロットまたは前記スロットのそれぞれを貫通する個別の締結具とを備え、
前記締結具または前記締結具のそれぞれは、個別のデカプラも貫通しており、
前記デカプラは、所定の力がかかった場合に、前記ブラケットと前記車両の間の相対的なスライド動作を許容するように構成されており、
前記デカプラまたは前記デカプラのそれぞれは、カラーと、ワッシャー構造体とを備えており、
前記カラーは、その一端から延びるフランジを有しており、前記フランジの表面には、複数の歯が形成されており、
前記ワッシャー構造体は、前記ブラケットが前記車両に対して締結されているときに前記締結具が貫通しており、前記車両に対して前記ブラケットを締結するために前記締結具が使用されると、前記カラーの前記フランジが、前記ワッシャー構造体と接触した状態に付勢されるように前記カラーの前記フランジに隣接して配置されていることを特徴とする取付構造。
【請求項2】
前記ワッシャー構造体が、開口端を有するスロットを備えている請求項1に記載の取付構造。
【請求項3】
前記ワッシャー構造体が、前記ワッシャー構造体に対して前記カラーを保持するために、前記カラーの前記フランジを捕捉するように構成された実質的に平行に並んだ2つの側壁部を備えている請求項1または2に記載の取付構造。
【請求項4】
別のブラケットを備えており、
前記別のブラケットは、前記車両に対して固定されるように前記車両に対して取り付けられるように構成され、且つ、2つの前記ブラケット間の1以上の方向への相対的な動きを制限する係止部を備えている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の取付構造。
【請求項5】
前記シートベルト用支持体が、前記ブラケットに取り付けられており、
前記別のブラケットの前記係止部が、前記シートベルト用支持体の動きを制限するように構成されている請求項4に記載の取付構造。
【請求項6】
前記ブラケットにシートベルトプレゼンター機構が取り付けられている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の取付構造。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の取付構造を取り付けた車両。
【請求項8】
前記車両は、自動車であり、
前記取付構造は、前記自動車の前座席の乗員のための三点式シートベルトの上側取付部を支持するために、前記自動車のリアクオーターパネルに取り付けられている請求項7に記載の車両。
【請求項9】
車両にシートベルト用支持体を取り付けるための取付構造を備えた車両であって、
前記取付構造は、前記取付構造を第1の方向範囲内の一方向に付勢する第1の力がかかった場合には、前記取付構造が前記車両に対して相対的に第1の方向範囲を動くが、前記取付構造を前記第1の方向範囲外の方向に付勢する前記第1の力よりも大きな第2の力がかかった場合には、前記取付構造が前記車両に対して相対的に第1の方向範囲外の方向に動かないように構成されており、
前記取付構造は、締結具により前記車両に取り付けられたブラケットを備えており、
前記締結具は、前記車両及び/または前記ブラケットに形成された細長いスロットを貫通し、前記ブラケットを前記車両に付勢することで前記ブラケットを前記車両に締結し、
前記締結具は、デカプラも貫通しており、
前記デカプラは、所定の力がかかった場合に、前記ブラケットと前記車両の間の相対的なスライド動作を許容するように構成されており、
前記デカプラは、カラーと、ワッシャー構造体とを備えており、
前記カラーは、その一端から延びるフランジを有しており、前記フランジの表面には、複数の歯が形成されており、
前記ワッシャー構造体は、前記締結具が貫通しており、前記車両に対して前記ブラケットを締結するために前記締結具が使用されると、前記カラーの前記フランジが、前記ワッシャー構造体と接触した状態に付勢されるように前記カラーの前記フランジに隣接して配置されていることを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両にシートベルト用支持体(support)を取り付けるための取付構造(mounting structure)に関するものである。また、取付構造その他のアプリケーションに使用するデカプラ・アセンブリ(de-coupler assembly)に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
目的を果たし、また、法的な要求事項(regulatory requirements)を満たすために、車両用のシートベルトは、車両に対してしっかりと取り付けられていなければならない。通常、自動車は、三点式シートベルトを備えている。三点式シートベルトは、上側取付部(upper mounting point)を有しており、上側取付部においてショルダーストラップが支持されている。オープントップ型自動車の場合、前座席用のシートベルトの上側取付部は、典型的には、車両のリアクオーターパネル(rear quarter panel)に設けられている。大型の車両(larger vehicles)及び後部座席の乗員の出入りを許容するためのドアを有する車両の場合、シートベルトの上側取付部は、前座席から少し離れた後部に設けられており、そのため、前座席の乗員がシートベルトに届きにくい。多くの場合、この課題は、リアクオーターパネルから延びて、前座席の乗員にシートベルトを送り出す(offer)、リアクオーターパネルに取り付けられたモータ駆動のアーム部を備えたシートベルトプレゼンター(presenter)を設けることで対処されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
リアクオーターパネルの外表面の上側部分から車両内にかけての部分は、衝突等によって車両が急減速した場合において、車両の後部座席の乗員の潜在的な頭部衝突領域(potential head impact area)になる。頭部に重傷を負うリスクを減らし、また、法的な要求事項を満たすために、車両のその潜在的な頭部衝突領域は、衝突を和らげて、衝突時に表面と接触する頭部の減速量(magnitude of deceleration)を制限するようにしなければならない。リアクオーターパネルの上側部分との衝突の影響を低減する1つの方法は、パネルの下に存在する下部構造体(underlying structure)から距離を離して、パネルの外表面を形成するケーシングを設けることである。このように構成することで、あまり撓まない下部構造体と衝突する前に、ケーシングが変形することで、衝突のエネルギを吸収することができる。しかしながら、この場合の問題は、下部構造体からケーシングを離して配置すると、どうしても、車両の内部空間が減ってしまうことである。これはクローズド型車両(closed vehicles)のものよりもリアクオーターパネルがかさ高(bulky)であり、そのために、固定された屋根がないことを補う、または、収納スペース(storage)を提供するために余分な構造体が必要となる、オープントップ型車両の場合に特有の問題である。さらに、シートベルトプレゼンターは、必然的にパネルの表面に向かって取り付けられなければならず、リアクオーターパネルにシートベルトプレゼンターを収納する必要がある場合に特に問題である。
【0004】
本発明は、これらの課題を解決するために発明されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様によれば、車両にシートベルト用支持体を取り付けるための取付構造であって、取付構造は、車両に取り付けられると、取付構造を第1の方向範囲内の一方向に付勢する(urging)第1の力がかかった場合には、取付構造が車両に対して相対的に第1の方向範囲を動くが、取付構造を第1の方向範囲外の方向に付勢する第1の力よりも大きな第2の力がかかった場合には、取付構造を車両に対して相対的に第1の方向範囲外の方向に動かないように構成されており、取付構造は、1以上の細長いスロット(elongate slots)を有するブラケット(bracket)とブラケットを車両に向かって付勢することで、ブラケットが車両に対して締結されているときにスロットまたはスロットのそれぞれを貫通する個別の締結具(fastener)とを備え、締結具または締結具のそれぞれは、個別のデカプラも貫通しており、デカプラは、所定の力がかかった場合に、ブラケットと車両の間の相対的なスライド動作を許容するように構成されており、デカプラまたはデカプラのそれぞれは、カラー(collar)と、ワッシャー構造体(washer structure)とを備えており、カラーは、その一端から延びるフランジを有しており、フランジの表面には、複数の歯(teeth)が形成されており、ワッシャー構造体は、ブラケットが車両に対して締結されているときに締結具が貫通しており、車両に対してブラケットを締結するために締結具が使用されると、カラーのフランジが、ワッシャー構造体と接触した状態に付勢されるようにカラーのフランジに隣接して配置されてことを特徴とする取付構造が提供される。
【0006】
本発明の取付構造によれば、シートベルトに必要なサポートを提供するシートベルトの取付構造を提供することができる。すなわち、シートベルトにより加えられる荷重に耐えるが、頭部への衝撃等の結果として加えられる複数方向への力に対して、撓むことにより吸収するように構成することが可能である。
【0007】
本発明の取付構造は、車両に対して相対的に、方向の一部であり、第1の方向範囲外である第2の方向範囲内の方向に動かないように構成されていてもよい。第1の方向範囲と第2の方向範囲は互いに概ね垂直であってもよい。取付構造は、車両に取り付けられた場合に、車両に対して相対的に横方向(sideways direction)に動くが、前方向(forwards direction)に動かないように構成されていてもよく、このことにより、横方向の頭部への衝撃を吸収するが、衝突時の前座席の乗員によってシートベルトにかかる荷重に耐えることができる。
【0008】
締結具は、スロットの長さに沿って移動可能な大きさであってもよく、また、ボルト、スタッド(stud)、ピン(pin)、その他の適切な締結具であってもよい。
【0009】
フランジは、カラーの一端の周囲から延びていてもよい。
【0010】
ワッシャー構造体(washer structure)は、開口端を有するスロットを備えていてもよい。ワッシャー構造体は、ワッシャー構造体に対してカラーを保持するために、カラーのフランジを捕捉する(capture)ように構成された実質的に平行に並んだ2つの側壁部を備えていてもよい。
【0011】
本発明の取付構造は、別のブラケット(第2のブラケット)を備えていてもよい。第2のブラケットは、車両に対して固定されるように車両に対して取り付けられるように構成されていてもよい。第2のブラケットは、2つのブラケット間の1以上の方向への相対的な動きを制限する係止部(stop)を備えていてもよい。
【0012】
シートベルト用支持体は、ブラケット(第1のブラケット)に取り付けられていてもよい。第2のブラケットの係止部は、シートベルト用支持体の動きを制限するように構成されていてもよい。シートベルト用支持体が、ループ状(loop)であってもよい。
【0013】
ブラケットには、シートベルトプレゼンター機構も取り付けられていてもよい。
【0014】
取付構造は、自動車などの車両に取り付けられていてもよい。
【0015】
取付構造は、自動車のリアクオーターパネルに取り付けられていてもよい。取付構造は、自動車の前座席の乗員のための三点式シートベルトの上側取付部を支持するように構成されていてもよい。
【0016】
他の実施の形態では、車両にシートベルト用支持体を取り付けるための取付構造を備えた車両であって、取付構造は、取付構造を第1の方向範囲内の一方向に付勢する第1の力がかかった場合には、取付構造が車両に対して相対的に第1の方向範囲を動くが、取付構造を第1の方向範囲外の方向に付勢する第1の力よりも大きな第2の力がかかった場合には、取付構造が車両に対して相対的に第1の方向範囲外の方向に動かないように構成されており、取付構造は、締結具により車両に取り付けられたブラケットを備えており、締結具は、車両及び/またはブラケットに形成された細長いスロットを貫通し、ブラケットを車両に付勢することでブラケットを車両に締結し、締結具は、デカプラも貫通しており、デカプラは、所定の力がかかった場合に、ブラケットと車両の間の相対的なスライド動作を許容するように構成されており、デカプラは、カラーと、ワッシャー構造体とを備えており、カラーは、その一端から延びるフランジを有しており、フランジの表面には、複数の歯が形成されており、ワッシャー構造体は、締結具が貫通しており、車両に対してブラケットを締結するために締結具が使用されると、カラーのフランジが、ワッシャー構造体と接触した状態に付勢されるようにカラーのフランジに隣接して配置されていることを特徴とする車両が提供される。
【0017】
本発明は、取付構造のブラケットに設けるよりも、車両にスロットを設けることによって達成されることが好ましい。
【0018】
他の実施の形態では、1つの部材(第1の部材)に形成された開口部を貫通し、該部材を別の部材(第2の部材)に対して付勢して部材同士を締結するが、所定の力がかかった場合に2つの部材の相対的な動きを許容する締結具と共に使用し、第1の部材の開口部を通り、且つ、第2の部材と接触する第1の部分と、第1の部材を覆う第2の部分とを備えたスペーサ(spacer)と、スペーサの第2の部分と第1の部材の間に配置されるワッシャー構造体とを備え、スペーサは、カラーを備えており、カラーは、その一端から延びるフランジを有しており、フランジの表面には、2つの部材同士を締結する締結具と共に使用されたときに、ワッシャー構造体と対向する複数の歯が形成されたデカプラ・アセンブリが提供される。
【0019】
このようなデカプラは、1つの部材(第1の部材)が該部材に形成されたスロットを貫通したボルトによって別の部材(第2の部材)にボルト締めされている場合に有用である。このボルトによって、第2の部材に対して第1の部材が相対的にスライド可能である。第1の部材に向かうスペーサの動きは、第2の部材との接触によって制限される。したがって、第1の部材を第2の部材に対して付勢する第1の部材にかかる力は、第1の部材及びワッシャー構造体の大きさによって制限され、結果として、2つの部材を他方の部材に対して相対的にスライドさせるのに必要とされる力も制限される。
【0020】
カラーは、第1の部材の開口部を通り抜ける(pass through)大きさが選ばれ、フランジは、第1の部材の開口部を通り抜けない大きさが選ばれるとよい。ボルト、スタッドまたはピンのような締結具がカラーを貫通すればよい。
【0021】
したがって、第1の部材を第2の部材に対して付勢する締結具によって加えられる力を決定するために、それゆえに、第2の部材に対して相対的に第1の部材をスライドさせるのに必要とされる力を決定するために、カラーの奥行き(depth)及びワッシャー構造体の厚み(thickness)を選択することができる。
【0022】
ワッシャー構造体の表面に、フランジの複数の歯と接触する隆起パッド部(raised pads)を形成しておいてもよい。複数の歯の数及び歯たけ(depth)並びにワッシャー構造体の材料を変えることで、第2の部材に対して相対的に第1の部材をスライドさせるのに必要とされる力を調整することができる。
【0023】
ワッシャー構造体は、開口端を有するスロットを備えていてもよい。ワッシャー構造体は、ワッシャーに対してカラーを保持するために、カラーのフランジを捕捉するように構成された実質的に平行に並んだ2つの側壁部を備えていてもよい。側壁部に、フランジの端部が延び入ることが可能なスロットが形成されていてもよい。側壁部の対向面には、それぞれ段部(stepped)が形成されており、段部の下(beneath)で、フランジを捕捉することが可能であってもよい。
【0024】
カラー及びフランジは、1つの部品から形成された金属製の部品であってもよい。例えば、スチールでもよい。
【0025】
ワッシャー構造体は、弾性のある材料から形成されていてもよい。ワッシャー構造体は、プラスチック材料から形成されていてもよい。例えば、PP GF30などのガラス強化プラスチック材料(glass reinforced material)を用いてもよい。
【0026】
本発明をはっきりと理解するために、本発明の実施の態様を、例として、添付の図を参照して示す:
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】2ドア式のオープントップ型自動車の上方からの斜視図である。
図2図1に示した自動車のリアクオーターパネルの内側の拡大斜視図である。
図3図2に示したリアクオーターパネルの斜視図であり、シートベルト取付構造を見えるようにするために外側ケーシングを取り除いた状態を示す図である。
図4図3に示したシートベルト取付構造の斜視図であり、シートベルト取付構造が平常位置にある状態を示す図である。
図5図4に対応する図であるが、シートベルトプレゼンターのアーム部を取り除いた状態を示す図である。
図6図4に対応する図であり、シートベルト取付構造が変位位置にある状態を示す図である。
図7図5に対応する図であり、シートベルト取付構造のガイド部が変位位置にある状態を示す図である。
図8図3に示したリアクオーターパネル及びシートベルト取付構造の内部構造体の一部の分解図である。
図9】展開前の状態で図4乃至図7に示したアセンブリのデカプラの斜視図である。
図10図9に示したデカプラを底部から見た斜視図である。
図11図9に示したデカプラの側面図である。
図12図9に示したデカプラの斜視図であり、展開後の状態を示す図である。
図13図9に示したデカプラのカラーを下方から見た斜視図である。
図14図4乃至図7に示したアセンブリに取り付けられた図9に示したデカプラの垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、同様の構成要素に対しては同様の参照番号が用いられている。上(up)、下(down)、上部(top)及び底部(bottom)の用語は、図面に示されている方向で、図示されている装置を表すのに使用されているが、そのように限定することを意図している訳ではない。
【0029】
図面を参照すると、2ドア式のオープントップ型自動車1は、2つのリアクオーターパネル2を備えている。リアクオーターパネルのそれぞれは、車両の対応する前座席用の慣性リール・シートベルト(図示せず)を収納している。シートベルトは、リアクオーターパネルの車両内部のケーシングの前方に向いた表面に形成されたスロット3を通して繰り出されている(pays out)。
【0030】
後部座席の乗員が乗り降りするために十分なスペースを確保するための車両の長さ及びドアの大きさのために、スロット3が形成されているリアクオーターパネルの前方に向いた表面は、対応する前座席のやや後ろに配置されている。このことが、前座席の乗員がシートベルトを装着する際に、シートベルトに手を伸ばすことを困難にしている。この問題を解決するために、シートベルトプレゼンター機構が設けられている。シートベルトが繰り出されるスロット3は、細長いアーム部5に取り付けられたパネル4に形成されている。シートベルトは、前座席の乗員がシートベルトに容易に手が届くように、前座席の乗員に向かって引き出され、アーム部5は、パネル4を動かすために、リアクオーターパネルのケーシングから延び出て、及び、ケーシングに引き込まれ、図2に示した位置にパネルを戻す。アーム部は、駆動機構(drive mechanism)によって駆動されている。シートベルトプレゼンターの動作は周知であるため、本明細書ではさらに詳細には説明しない。
【0031】
シートベルトプレゼンターのアーム部5は、スライド可能にガイド部6に取り付けられており、同様に、リアクオーターパネルに取り付けられたブラケット7の上側且つ側面に取り付けられている。シートベルトプレゼンターのアーム部5及びパネル4は、専ら、シートベルトの使い勝手を向上させるために提供されており、車両が衝突した場合に、乗員によってシートベルトに対してかかる荷重を支持する役に立つものではない。むしろ、シートベルトの荷重に耐える上側取付部は、シートベルトが通してある金属製のD字形ループ部(D-loop)8によって提供されている。D字形ループ部8も、ブラケット7に取り付けられている。
【0032】
シートベルトがその機能を発揮し、且つ、法的な要求事項を満たすために、D字形ループ部は、図5に示す矢印9の一般的方向(general direction)にかかる大きな荷重に耐えられなければならない。この荷重は、回り回って、ブラケット7が耐えなければならない。
【0033】
しかしながら、矛盾する懸念事項がさらにある。車両が衝突した場合に、後部座席の乗員の安全、及び、法的な要求事項を満たすために、リアクオーターパネルの上側部分の内側、すなわち、シートベルト及びシートベルトプレゼンター取付構造の周りの領域と衝突した際、後部座席の乗員の頭部の加速度を制限する必要がある。車両内部のリアクオーターパネルのケーシングは、衝突時に、乗員が最初に接触する箇所であり、頭部が衝突するときの加速度を低減するために、変形するように設計されていてもよい。しかしながら、ケーシング自体によって十分な保護を提供しようとすると、撓まない下部構造体から十分に離して設置せざるを得ず、車両の内部に進入するリアクオーターパネルの部分が増大し、乗員用の空間が減ってしまうことになる。これは、多くの場合、相当するクローズド型のボディーよりもリアクオーターパネルがかさ高であり、そのため、屋根がないことを補うために車体の剛性を上げる必要があり、且つ、フード(hood)または折りたたみ式の屋根を収納するスペースを備えなければならないオープントップ型車両の場合に特有の課題である。
【0034】
そのため、内部のリアクオーターパネルのケーシングと下部構造体(本件の場合には、ブラケット7に取り付けられているシートベルトプレゼンターのアーム部5、その取付金具6及びD字形ループ部8)との間のスペースの量を最小にするのであれば、頭部が衝突するときの加速度を低減するために、下部構造体を、中程度の力(moderate force)に対して撓むようにしなければならない。図示した構成では、これは、図5に示した矢印10の一般的方向にかかる中程度の力に対応してブラケット7が動くことが要求されるということである。
【0035】
図示した構成では、力に対するブラケットの反応に関する矛盾する要件は、中程度の力がかかった場合に、ブラケットが下部構造体に対して相対的に矢印10の一般的方向(general direction)に動くが、他の方向には動かないように、ブラケット7を下部構造体に対して取り付け、且つ、D字型ループ部が矢印9の方向に移動した場合に、D字型ループ部の動きを拘束する第2の耐荷重構造体(secondary load bearing structure)を備えることで対処された。以下では、両方の構成が詳細に説明してある。さらに、シートベルトプレゼンター5が取り付けられるブラケット7の隆起した部分(raised part)は、頭部が衝突したときに変形するように設計されている。
【0036】
ブラケット7(以下では、上側ブラケット)は、下側ブラケット11の上に取り付けられている。両方のブラケットは、ホワイトボディ(body in white)として知られる車両の下部構造体に取り付けられている。下側ブラケット11には、D字型ループ部8の下方に形成されたリップ(lip)13と同じ平面上でリアクオーターパネルの前端に沿って延びる湾曲した金属製バー(curved metal bar)12が取り付けられている。リップ13は、バー12と適合する形状をしており、D字型ループ部8とバー12とが接触することで、両部材の相対的な動きを妨げることになる。したがって、上側ブラケット及び下側ブラケットの複数の方向への相対的な動作の結果として、バー12がD字型ループ部の変位を制限することになる。
【0037】
上側ブラケット7及び下側ブラケット11は、ホワイトボディに対してボルト締めされている。下側ブラケット11には、前方及び後方に、実質的に円形の開口部14が形成されている。そして、上側ブラケット7には、開口部14と対応する、細長い(elongate)直線状の平行に並ぶ複数のスロット15が形成されている。各スロットにはデカプラ(de-coupler)が配置されており、ボルト18のそれぞれは、デカプラ、スロット、下側ブラケットに形成された開口部、ホワイトボディの対応する開口部を貫通し、キャプティブ・ナット(captive nut)17で留められている。下側ブラケット11の開口部及びホワイトボディは、ボルトと密着するように合わされており(closely accommodate)、したがって、下側ブラケット11が(ゆえに、バー12も)ホワイトボディに対して固定されている。上側ブラケットの複数のスロット15によって、上側ブラケット7が下側ブラケット11及びホワイトボディに対して矢印10の一般的方向に相対的に動くことが許容される。それにもかかわらず、スロットには、上側ブラケットが動くことを許容するのに十分なゆとり(sufficient clearance)があり、一方のボルトにおいて上側ブラケットが下側ブラケットに対して相対的にスライドし、他方のボルトを中心にして上側ブラケットが旋回する(pivot)。
【0038】
下側ブラケット11に対して上側ブラケット7を動かすのに必要とされる力は、2つのブラケットの間の摩擦力(friction)及びボルトとの間の摩擦力、並びに、2つのブラケットを留めているボルトの締め具合による。下側ブラケットに対して上側ブラケットが相対的に動く力は、予想可能であり、且つ、調節可能であることが望ましい。これは、デカプラのためである。
【0039】
各デカプラは、カラー構造体を捕捉するワッシャー構造体を備えている。カラー構造体は、実質的に円筒形状の金属製カラー19を備えており、カラー19は、一方の端部が、概ね環状のフランジ20に囲まれている。フランジ20は、相対する2箇所が延びて、対向する2つのタブ(opposed tabs)21を形成している。各タブのカラーに向いた側の表面には、一連の複数の歯(series of teeth)22が形成されている。ワッシャー構造体23は、PP GF30等のガラス強化プラスチック材料から形成されている。ワッシャー構造体は、概ねU字型形状をしたプレート24を備えており、プレート24は、直立している2つの側壁部25による対向する実質的に平行な外側端部に配置されている(bounded on)。側壁部は、自由端部に向かうにしたがい厚くなり、プレート24に向かうにしたがい薄くなるように構成されている。側壁部の厚みは、側壁部に沿うおよそ中央部で、一段階変位する(changes in a single step)ようになっている。各側壁部の自由端部付近に向かって、プレートの表面と実質的に平行に延びる細長いスロットが形成されている。各側壁部25に隣接して、プレートの表面には、隆起部(raised portion)26が形成されている。プレート24の下面、すなわち、隆起部26が形成された側の反対側の面には、反対側に配置された側壁部25よりもかなり低い側壁部27が、プレート24により形成されたU字型のスロットの対向する2つの内側端縁に沿って延びている。この側壁部それぞれのおよそ中ほどに、おおよそ半円形の構造部(semicircular formations)28が形成されている。
【0040】
デカプラ16は、当初は、図9に示すように、カラー構造体の2つのタブ21が、側壁部25の2つのスロットから延び出るように組み立てられている。このことにより、カラー構造体のフランジ上の複数の歯22を、ワッシャー構造体の隆起部の上に、隆起部から間隔をあけるように配置することになる。ワッシャー構造体を構成する材料の弾性及び可撓性により、カラー構造体のタブを側壁部25のスロットに挿入することが可能である。
【0041】
この状態で、デカプラは、ワッシャー構造体の方を下にして、2つの側壁部27が1つのスロット15の平行する2つの端縁に隣接した状態で、上側ブラケット7に形成された1つのスロット15の一端に入れられて、ワッシャー構造体のU字型部分の開口端が、スロットの他端に向けられた状態で配置されている。2つの側壁部27は、スロット15の直線的に平行に延びる2つの辺のほぼ全体に沿うように延びており、また、各スロット15の2つの辺には、2つの半円状の構造部28を受けるための2つの切欠部(shaped cuts)が形成されている。このことにより、ワッシャー構造体の動きを、スロット内の長手方向に制限することができる。そして、ボルト18は、カラー、上側ブラケット7、下側ブラケット11、ホワイトボディを貫通して、キャプティブ・ナット17で留められている。それからボルトは、所定のトルクにより締められる。このことにより、デカプラのカラーがナット17に向かって付勢される。まず、ワッシャー構造体の弾性により、カラー構造体の2つのタブ21が2つの側壁部25の2つのスロットから押し出され(forced out)、さらにカラー構造体がワッシャー構造体に向かって移動すると2つの側壁部に形成された段部の下に係合し、カラー構造体の複数の歯がワッシャープレート24上の隆起部26と噛み合うようになり、ワッシャー構造体が上側ブラケット7の表面に対して接触した状態で付勢されるようになる。カラー19の外径は、上側ブラケット7のスロットの幅よりも小さく、また、カラー19の内径は、下側ブラケット11に開けられた開口部よりも大きい。そのため、カラー構造体がナットに向かって下ろされると、下側ブラケットと接触するようになる。さらにボルトを締めると下側ブラケットをホワイトボディに対して付勢する力を増大させることになるが、上側ブラケットを下側ブラケットに付勢する力は増大しない。この力は、上側ブラケット及びワッシャープレートの相対的な厚み、カラー構造体の奥行き(depth)、複数の歯の大きさ及び形状、ワッシャー構造体の材料によって決定される。そのため、上側ブラケットを下側ブラケットに向かって付勢する力は、デカプラの設計によって選択することが可能である。また、この力は、下側ブラケットに対して相対的に上側ブラケットを動かすのに必要とされる力にも影響を与え、後述のように、2つのブラケットの相対的なスライド動作によって、ワッシャー構造体に対する複数の歯の動きを生じさせるため、これも複数の歯の特性及びワッシャー構造体の材料によって調節される。
【0042】
最初の組み立ての時点では、下側及び上側ブラケットは、ホワイトボディに対して取り付けられている。デカプラと適合する上側ブラケットのスロット15は、ホワイトボディに対する上側ブラケットの位置を正確に調節することを可能にする。そのため、D字型ループ部を的確な位置に配置することを可能にし、ホワイトボディに許容誤差(tolerance)を与えることができる。したがって、上側ブラケットは、実質的に図4及び図5に示した位置に、スロット15によって許容される最も内部の位置にまたはその近くに(すなわち、車両の内側に向かって)ブラケットがある状態で配置される。この位置では、D字型ループ部は、前座席の乗員及びシートベルトプレゼンターのアーム部に対して正しい位置に配置されており、乗員がシートベルトに容易に手が届く。それから、ブラケットを固定するために、ボルトを締める。
【0043】
車両が衝突し、または、その他の原因で車両が急減速し、後部座席の乗員が、リアクオーターパネルの内側のブラケットやシートベルトプレゼンターの領域にぶつかる結果となった場合、乗員の最初の衝撃は、シートベルトプレゼンター及びブラケット構造体と接触するまで、リアクオーターパネルのケーシングによって吸収される。矢印10の方向への設定された閾値を超える上記の衝突による力または力の成分により、スロット15の方向に、上側ブラケットが下側ブラケットに対して相対的にスライドする。ワッシャー構造体の下面に形成された構造部28がスロットと係合しているため、ワッシャー構造体はブラケットと共に、及び、デカプラのカラー構造体20に対して相対的に動き、ワッシャー構造体の隆起部上をデカプラの複数の歯が引きずられる(drag)。上側ブラケットは、図6及び図7に示した位置に移動する。この位置では、ブラケットが移動し、前方のボルト18及びカラー構造体が、もともと配置されていたスロット15の一端から反対側の他端に位置するようになったことがわかる。後方のボルト及びカラー構造体の位置は、スロットに対してほぼ一定のままであり、ブラケットは、後方のボルト及びカラーアセンブリの周りを大きく回動している。上側ブラケットのこの動きにより、後部座席の乗員がリアクオーターパネルの上側部分に衝突した際の力が吸収され、後部座席の乗員の減速を制限し、傷害のリスクを減らすことができる。
【0044】
同時に、車両が減速すると、D字型ループ部を通したシートベルトを装着している前座席の乗員はシートベルトにより減速され、そのため、矢印9の一般的方向にシートベルトを介してD字型ループ部に大きな力がかかる。この方向は、上側ブラケットのスロット15の方向と一般的に垂直であるため、上側ブラケットは、この方向に動きにくい。しかしながら、もし何らかの動きがあった場合には、D字型ループ部8の下側リップ13が湾曲したバー12と接触し、上側及び下側ブラケットの間のさらなる相対的な動きを阻止する。
【0045】
説示した構成は、シートベルトのD字型ループ部を的確な位置に配置することを可能にする。さらに、適切にシートベルトにかかる力を支持する機能を発揮する一方で、リアクオーターパネルへの乗員の衝突の影響を抑えるために、D字型ループ部によって支持される力よりも小さな力がかかった場合に、シートベルトプレゼンター及び組み合わされたブラケットを外へ向かう方向に移動させるD字型ループ部を提供する。
【0046】
上記実施の態様は、例示としてのみ説明されている。添付の請求の範囲に定めたように、本発明の範囲を逸脱することなく、多くの変形例が可能である。
図1
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