(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077467
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】インプラント
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
A61B17/12
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-554816(P2013-554816)
(86)(22)【出願日】2012年2月22日
(65)【公表番号】特表2014-508006(P2014-508006A)
(43)【公表日】2014年4月3日
(86)【国際出願番号】EP2012000772
(87)【国際公開番号】WO2012113554
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2015年2月4日
(31)【優先権主張番号】102011011869.1
(32)【優先日】2011年2月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508140512
【氏名又は名称】フェノックス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】PHENOX GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ハネス,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】モンスタット,ヘルマン
【審査官】
木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−131406(JP,A)
【文献】
特表2008−501388(JP,A)
【文献】
特表2008−513141(JP,A)
【文献】
特表2008−515468(JP,A)
【文献】
特表2010−500915(JP,A)
【文献】
国際公開第2001/093782(WO,A1)
【文献】
国際公開第2002/000139(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0198075(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0203567(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102008028308(DE,A1)
【文献】
国際公開第2010/028314(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 ― 17/94
A61F 2/82 ― 2/945
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐動脈瘤の、メッシュ構造による閉塞に用いるためのインプラントにおいて、前記インプラントが、近端から遠端にかけて、区画(a)から(d)を有し、
区画(a)は、前記メッシュ構造が1つまたはいくつかの結合素子を形成するために合一される、近端にかけて先細りになっている区画、
区画(b)は前記インプラントを血管の壁上に支持することができる固定区画、
区画(c)は血管分岐の領域のための浸透性区画、及び
区画(d)は、前記インプラントが前記区画(b)に比較して拡張され、前記動脈瘤内への配置が目的とされている、遠端区画、
であって、
前記区画(c)と区画(d)の間に分離帯が配されており、
前記インプラントに対して斜行する平面内に実質的に延びるフィラメントを含む分離素子が前記分離帯に設けられており、
前記遠端区画(d)が複数のループを有する、
ことを特徴とするインプラント。
【請求項2】
前記遠端区画(d)が、編組によるかまたはループにより、トランペット様またはバスケット様の形状に外側に広げられていることを特徴とする請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
形状記憶材料を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のインプラント。
【請求項4】
前記インプラントが少なくとも一部は切り開かれたチューブからなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインプラント。
【請求項5】
前記近端区画(a)が結合ワイヤで終端していることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインプラント。
【請求項6】
前記遠端区画(d)が、非外傷性で、弾性があるように、構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のインプラント。
【請求項7】
前記遠端区画(d)においてアイレットが前記ループに設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインプラント。
【請求項8】
前記遠端区画(d)の前記ループに、丸められた嘴先が遠端に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
横方向に閉じたチューブ構造を有することを特徴とする請求項1から8に記載のインプラント。
【請求項10】
前記インプラントに、部分的にまたは連続的に、スロットが形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のインプラント。
【請求項11】
前記遠端区画(d)にマーカー素子が配されていることを特徴とする請求項1から10に記載のインプラント。
【請求項12】
ガイドワイヤに結合されていることを特徴とする請求項1から11に記載のインプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血管枝における動脈瘤、特に分岐動脈瘤の閉塞のために用いられるインプラントに関する。そのようなインプラントはインプラントを永続的に埋め込む目的のため、カテーテル及びガイドワイヤを用いて、配置部位に輸送されることになる。したがって、本発明は、ガイドワイヤに取り付けられ、よって埋込の準備が整っている、そのようなインプラントにも関する。
【背景技術】
【0002】
動静脈奇形は患者の健康をかなり損なうことがあり、致命的なリスクをもたらすことさえあり得る。特に、これは動脈瘤に、脳の領域にあることが分かった場合には特に、当てはまる。通常、この種の奇形にはインプラントを用いる閉塞が試みられる。そのようなインプラントは一般に、カテーテルを用いる血管内法(endovascular method)によって配置される。
【0003】
脳の領域の動脈瘤を処置する場合には特に、螺状白金線の埋込が有効であることが分かっており、螺状線は動脈瘤を概ね完全に埋めて、血液の流入のほとんどを妨げ、動脈瘤を満たして最終的には封鎖する局所的な血栓または血餅の形成を可能にする。それにもかかわらず、この処置手法は、血管系への通路が比較的狭い動脈瘤、いわゆる葡萄状動脈瘤にしか適していない。血管への通路が広い血管肥大の場合、埋め込まれた螺状線またはコイルが押し流され得るリスクがある。押し流された螺状線またはコイルは次いで血管系の他の領域にとどまり、そこでさらに損傷を生じさせ得る。
【0004】
そのような場合には、動脈瘤の開口を「格子戸で塞ぎ」、そのようにして閉塞コイルが押し流されることを防止する、一種のステントを所定の位置に配置することが既に提案されている。そのようなステントは比較的広幅のメッシュ壁を有するように設計され、いくつかの形態の動脈瘤を処置するために既に用いられている。
【0005】
血管枝、特に血管分岐には極めて頻繁に現象がおこる。弱い血管壁の場合、分岐において前壁に作用する、動脈を通る血流は、迅速に一層拡張する傾向がある肥大または膨らみを迅速に生じさせる。たいてい、そのような分岐動脈瘤は閉塞コイルの配置に適していない太いネックを有する。
【0006】
さらに、ステントには血管が分岐する領域にある動脈瘤への通い口を「格子戸で塞ぐ」に役立つ構造が欠けている。そのような構造を有するステントは製造が困難であり、高コストでしか製造できない。さらに、そのような構造をもつステントの配置は極めて手間もかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に鑑みて、本発明の課題は、特に分岐動脈瘤の領域において用いることができる、動脈瘤のアクセス開口を「格子戸で塞ぐ」に役立つインプラントを提供することにある。次いで動脈瘤を、続いて導入される閉塞コイルを用いて、閉鎖することができる。
【0008】
血流に影響を与えて閉塞コイルの数を減じるかまたはゼロにさえする目的で、このように動脈瘤を「格子戸で塞ぐ」ことも考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題はメッシュ構造を有するインプラントを提供することで達成され、本インプラントは−近端から遠端にかけて−区画(a)〜(d)を有し、(a)は、メッシュ構造が合一されて1つまたはいくつかの結合素子を形成する、近端にかけて先細りになる区画、(b)はそれによってインプラントを血管壁上に支持することができる固定区画、(c)は血管分岐の領域のための浸透性区画、及び(d)は、インプラントが区画(b)に比較して拡張され、動脈瘤内への配置が目的とされている、遠端区画であって、区画(c)または(d)の区画の領域、特に区画(c)と(d)の間に、分離帯が配置される。
【0010】
語「近端」及び「遠端」は、ガイドワイヤに向き、したがってカテーテル及び担当医師に向くインプラントの部分(近端)、あるいは、場合に応じて、ガイドワイヤまたは担当医師とは逆の側に向く部分(遠端)を指すように理解されるべきである。したがって、近端はガイドワイヤに面している部品を指し、遠端はガイドワイヤとは逆の側に面していることを意味する。
【0011】
本発明にしたがうインプラントは個別のワイヤの編組からなることができるメッシュ構造を有して提供され、メッシュ構造はチューブから切り開かれるか、あるいはメッシュ構造は2つのメッシュの組合せである。この点に関し、インプラントはその専用化された布置及び設計の態様によって弁別されるステントまたはステント様物体と一般に見なされるべきである。
【0012】
本発明のインプラントは、近端から遠端までを見ると、4区画、すなわち区画(a)〜(d)に分割される。
【0013】
区画(a)は、メッシュ構造が合一されて1つまたはいくつかの結合素子の形態にされる、近端に向けて先細りになる区画である。好ましくは、結合素子は縁辺に配置される。すなわち、埋め込まれた状態において、結合素子は血管壁に置かれる。布置に関係する理由のため、中心配置は適当であると見なされない。結合素子の縁辺配置により、誤配置の場合にインプラントを配置カテーテルに容易に引き込むことが可能になる。1つまたは2つの結合素子を備える実施形態が好ましい。
【0014】
区画(b)は、インプラントの固定のためにはたらき、血液がそれを通して導き入れられる血管の壁上のインプラントの支持を可能にする。この領域において、血管は無損傷であり、血管壁はステント壁を受け入れることができる。自己拡張式インプラントの場合、区画(b)はステントが解放されたときに血管壁に自動的に接触させられるが、所定の位置に配置され、バルーンによって張り広げられるインプラントは、この領域で配置バルーンにより血管壁に押し付けられる。
【0015】
区画(c)は、特に区画(b)より大きいメッシュ寸法を有し、血管分岐が実在する区域に配置される。より大きなメッシュ寸法により、血液が阻止されずにメッシュを通って輸出血管枝に入ることが多少なりとも可能になる。
【0016】
区画(b)と、また通常は区画(c)とも、比較して、遠端区画(d)は外向きに拡張された形状を有する。遠端区画(d)は動脈瘤自体内に配置されるべきであり、動脈瘤の拡幅された壁に適合することになる。
【0017】
区画(c)及び(d)の領域に、特に区画(c)と(d)の間に、分岐動脈瘤内に配置されている閉塞手段を保持するためにはたらくことになる分離帯が配置される。
【0018】
本発明にしたがうインプラントの区画(d)の拡張はトランペット様またはバスケット様の形状を有することが好ましい。そのような拡張は編組を与えるかまたはループを配することによってもつくることができる。この種のループ形拡張は通常少なくとも2つのループ、特に3つ以上のループを含む。ループは適切に形成されたワイヤ素子でつくることができるが、インプラントがチューブから切り開かれている場合には、レーザ切断法をチューブに施せるように適合させることでつくることもできる。
【0019】
本発明にしたがうインプラントは従来のステント材料、例えば医用の鋼またはコバルト−クロム合金で作製することができるが、特に、ニチノールまたは三元ニッケル−チタン合金のような形状記憶材料からなる。
【0020】
上述したように、本発明にしたがうインプラントは少なくとも一部はチューブから、特に形状記憶合金でつくられたチューブから切り開かれることが好ましい。
【0021】
本発明のインプラントに設けられる分離帯は特に区画(c)と(d)の間に広がる。この状況において、区画(c)は区画(b)に比較して少なくとも遠端領域内で拡張形状をとるように設けることができ、これは血管枝の「衝撃壁」の部分に分岐動脈瘤が既に形成されている場合に役立つことに注意されたい。この場合、動脈瘤のアクセス部は、分離帯が動脈瘤自体内で広がるように、分岐する血流に対して離されていなければならない。区画(c)の既拡張部は次いで区画(d)に合体し、場合に応じてそこでさらに拡張することができる。この場合も、分離帯は区画(c)と(d)の間に配される。区画(d)の構成の奥行きが非常に小さい場合、分離帯は区画(d)と一致することさえあり得る。
【0022】
分離帯は、一方で、ファイバ、糸、細ワイヤ、メンブランまたは同様の分離素子が組み込まれるように設計することができるが、分離素子が基材チューブから切り開かれて、例えばループまたはウエブの形態に適切に変形され得るという意味において、インプラントの一体部分とすることができる。この分離帯は、インプラントの遠端領域(d)に導入された閉塞手段、例えば閉塞コイルを確実に保持するか、あるいは閉塞手段がさらに必要とされることのないような態様で血流をそらすという、意図された機能を果たすことが最も重要である。
【0023】
分離帯がファイバ、糸または細ワイヤを組み込むことで構成されていれば、分離帯領域にアイレットを配すると便宜がよいと考えられる。例えば、ナイロン糸がそれを通して十文字または星形の態様で結ばれる、適切なアイレットを区画(d)のメッシュに設けることができる。
【0024】
しかし、分離帯はチューブ材から切り開かれた弯曲素子を用いて形成することもでき、この場合、区画(d)のメッシュは外向きに変形され、分離域の弯曲素子はインプラントの本体内に内向きに曲げられる。少なくとも1つの弯曲素子が必要である。2つから4つの間の弯曲素子が適用されれば、それらの弯曲素子は、動脈瘤内に導入された閉塞手段を確実に保持する、安定な分離素子を形成する。
【0025】
本発明によって提供されるインプラントの遠端区画(d)は、特に、非外傷性であり、軟質で、弾性があるように構成される。動脈瘤の壁はかなり繊細であり、力が印加されると破裂し得るが、これは絶対に防がればならない。この目的のため、特に本発明のインプラントの遠端区画(d)は非外傷性であるように構成されなければならない。これは、例えば、それぞれが接触する場所において動脈瘤の壁に優しく当たるように調整できるループの配列によって達成される。インプラントの他の領域と同様に、そのようなループはチューブからレーザ切断によってつくられるが、例えばレーザ溶接法によって区画(c)に連結されたワイヤに留め付けることで形成することもできる。この遷移領域は特に分離帯と一致するが、分離帯がその遠位に配されている区画(c)の延長領域を構成することもできる。
【0026】
ここで、遠端区画(d)においては、動脈瘤壁の穿孔が生じ得ないことを確実にするために非外傷性態様で全てのワイヤの末端を合一させることが最も重要である。
【0027】
遠端区画(d)のメッシュは丸曲げまたは弧で終端することができるが、特に遠端において鼻の形に丸められ、そのようにして非外傷性態様で構成された嘴先の形態で与えることもできる。そのような丸められた嘴先により、インプラントをカテーテル内で動かすために大きな力を必要とせずにより容易に動かせるように、インプラントを細長形状でカテーテル内部におくことが可能になる。
【0028】
本発明のインプラントはメッシュ構造を有する連続的な横方向に閉じたチューブの形態で提供され得るが、部分的にまたは全体にわたって側面にスロットを形成することもできる。このスロット形状は軸方向に平行に延びるか、あるいは斜行/螺旋配置とすることができる。そのような場合、スロット領域のメッシュ構造は、例えば金網フェンスの巻取部分の形態の、血管の形状に適合するように巻き上げられる。配置中に、そのようなスロット付インプラントは、通常は問題が生じないと見なされているメッシュ構造の横方向縁辺の若干のアンダーラップ(間隙)またはオーバーラップをもって、特に供給血管の、血管腔に適当に適合することができる。
【0029】
遠端区画(d)で終端する部分スロットが好ましい。そのようなスロット付構成を提供することにより、特に区画(a)〜(c)において、血管形状への調節が強化され、血管内部でのインプラントの固定が改善される。驚くことには、スロット付き構成が径方向力に悪影響を及ぼすことはないことが分かった。
【0030】
一般に、本発明にしたがうインプラントは配置部位における配置を容易にするマーカー素子を含めて提供される。このタイプのマーカー素子は、例えば、区画(d)の遠端の領域に配され、非外傷性であるように合一されたワイヤの連結点の形をとることができる。しかし、そのようなマーカー素子はワイヤループにおける巻線の形態あるいは区画(c)及び(d)の遷移領域におけるスリーブの形態で与えることもできる。マーカー素子には特に、マーキングの目的のため及び閉塞コイルのための材料として従来技術で頻繁に用いられているから、白金材料及び白金合金材料、例えば白金とイリジウムの合金が、適している。
【0031】
さらに、本発明は上述にしたがうインプラントに関し、インプラントは従来のガイドワイヤに結合されている。そのような取付けは、例えば、電流の影響の下で電気化学的に溶解する連結素子によって達成することができる。そのような連結素子は特に閉塞コイル及びステントの分離に関して説明されていることが多い。また、結合素子による機械的取外しも困難をともなわずに実現することができ、そのような結合素子はガイドワイヤの適する態様で設計された部分と適切に相互作用する。カテーテルまたはエンクロージャの外部拘束の下ではこの連結はそのままでいられるが、インプラント及びその結合部がカテーテルまたはエンクロージャから放出された後は、取付けが外れて、インプラントがインプラントの一部を形成する結合素子とともに解放される。
【0032】
本発明のインプラントは従来のカテーテルまたはマイクロカテーテルを用いて配置され、これは頻繁に採用されている実証済の技術である。
【0033】
本発明は添付図面を用いてさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図2】
図2は分岐動脈瘤をもつ血管分岐の領域に配置された本発明のインプラントを簡略に示す。
【
図3】
図3は本発明のインプラントの各区画を含む略図である。
【
図4】
図4は
図2と同じように用いられ得る本発明のインプラントを示す。
【
図5】
図5a〜dは本発明にしたがうインプラントの区画(d)の様々な形態のを示す。
【
図6】
図6aおよびbは本発明の好ましい実施形態を広げられた平面図として示す。
【
図7a】
図7aは
図6にしたがう本発明のインプラントの別の実施形態を示す。
【
図7b】
図7bは
図6にしたがう本発明のインプラントの別の実施形態を示す。
【
図8a】
図8aは遠端区画(d)がループ形につくられた本発明にしたがうインプラントの様々な形態の1つを示す。
【
図8b】
図8bは遠端区画(d)がループ形につくられた本発明にしたがうインプラントの様々な形態の別の1つを示す。
【
図8c】
図8cは遠端区画(d)がループ形につくられた本発明にしたがうインプラントの様々な形態の別の1つを示す。
【
図8d】
図8dは遠端区画(d)がループ形につくられた本発明にしたがうインプラントの様々な形態の別の1つを示す。
【
図8e】
図8eは遠端区画(d)がループ形につくられた本発明にしたがうインプラントの様々な形態の別の1つを示す。
【
図8f】
図8fは遠端区画(d)がループ形につくられた本発明にしたがうインプラントの様々な形態の別の1つを示す。
【
図8g】
図8gは遠端区画(d)がループ形につくられた本発明にしたがうインプラントの様々な形態の別の1つを示す。
【
図9】
図9は、本発明のインプラントを所定の場所にもつ、動脈瘤から血管が横方向に分岐している分岐動脈瘤の図である。
【
図10a】
図10aは本発明にしたがう様々な形態の1つのインプラントの広げられた平面図である。
【
図10b】
図10bは本発明にしたがう様々な形態の別の1つのインプラントの広げられた平面図である。
【
図10c】
図10cは本発明にしたがう様々な形態の別の1つのインプラントの広げられた平面図である。
【
図10d】
図10dは本発明にしたがう様々な形態の別の1つのインプラントの広げられた平面図である。
【
図10e】
図10eは本発明にしたがう様々な形態の別の1つのインプラントの広げられた平面図である。
【
図11】
図11aおよびbは内側及び外側に向けられた弯曲素子を区画(c)に有する別の形態を示す。
【
図12】
図12は、関節形接続部を区画(c)に有する、別の形態を示す。
【
図13】
図13は、高められた柔軟性を有する、本発明のインプラントの別の形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、供給血管Zを有する分岐動脈瘤を示し、2本の輸出血管が動脈瘤Aと同様に分岐内にある。長い矢印は、動脈瘤壁に打ちあたり、よって外向きの圧力を生じさせて動脈瘤Aを拡張させる(短い矢印)、動脈瘤A内への血流を表す。
【0036】
図2は
図1に説明されるような動脈瘤Aを有し、本発明のインプラント1が動脈瘤内に配されている、血管形状を示す。本インプラントは、結合素子が設けられ、切り離されるまでは、ガイドワイヤ(本図には示されていない)に連結されている、近端2を有する。メッシュ3によりインプラント1は供給血管Zの壁に留め付けられ、分岐領域において、網目寸法がより大きいメッシュ4を有する。動脈瘤のネックに遠端領域5が示される。遠端領域5とより大きな網目のメッシュ4が配されている領域の間に、インプラントが所定の位置に配置された後の、動脈瘤A内に導入された閉塞手段の保持が目的とされる分離帯がある。
【0037】
分岐領域の拡張メッシュ4により、供給血管Zを通って流れる血流が過度の影響を受けずに分枝X及びYを通って流出することが可能になる。本図には示されていない閉塞手段の動脈瘤内への配置後は、動脈瘤を遮断するプラグが形成されるような程度まで、動脈瘤A内への血液の流入が妨げられる。あるいは、分離帯が十分に不浸透性であれば、閉塞手段を用いずに閉塞を達成することができる。
【0038】
図3は、個々の区画を示している、本発明のインプラントの略図である。
【0039】
インプラント1は、インプラントが先細りになり、本図ではワイヤの形態で示される、結合素子で終端する、近端区画(a)を有する。この区画は
図2の領域2に対応する。
【0040】
近端区画(a)に遠位で隣接して、インプラントを供給血管Zの壁に確実に固定するためにはたらく区画(b)が続く。この領域において、メッシュ3の網目寸法は、血管壁への確実な接触が達成されるように、比較的狭い。
【0041】
遠位方向には、比較的大きな網目寸法を有するメッシュ4が配された区画(c)も続く。この領域は流入する血液を分枝X及びY内に流出させることが目的とされている。この点に関しては
図1及び2を見よ、
インプラント1の遠端は、図示される事例ではトランペットに似た態様で構造5が拡大する区画(d)である。この領域は動脈瘤A内に配されるであろう。区画(d)はインプラントの一体化部分、すなわち区画(a)〜(c)とともに(ニチノールの)チューブから切り開かれたか、またはこの材料のワイヤを用いて編組に形成された、部分とすることができる。しかし、区画(a)〜(c)はチューブから切り開き、区画(d)のための編組を得て、この編組を溶接によって区画(c)に取り付けることも可能である。
【0042】
分離帯T
1が区画(c)と区画(d)の間に配され、分離帯は1つまたはいくつかの分離素子6からなる。これらの分離素子は束縛された糸、ワイヤまたは、例えばポリイミドの、ファイバの形態で与えることができるが、内向きの方位を有するように形成された切開構造部分とすることもできる。分離素子6を有する分離帯T
1は動脈瘤内に導入された閉塞手段を保持するためにはたらく。
【0043】
動脈瘤の性質に応じて、分離帯は区画(d)内に移すこともでき、あるいは区画(d)の遠端に配置することさえもできる。そのような分離帯T
2は、輸出血管X及びYが供給血管から直接分岐しておらず、代わりに動脈瘤から分岐しているような態様で分岐が形成されている場合に、特に有用である。この場合、分離帯はインプラントの拡張区画において分岐の直上に配置されなければならない。区画(d)はインプラント1の遠端に限定され、分離帯T
2に延び込む。
【0044】
図4は、
図2にしたがって用いられ得るような、本発明のインプラント1を示す。インプラント1はガイドワイヤ9を含めて示され、近端2にX線不透過性マーカーコイル7が設けられている。ガイドワイヤ9を介してインプラント1に連結された1つまたは複数の結合素子は、図に示されていないが、マーカーコイル7の領域に配されている。
【0045】
図に示されるインプラントは、ニチノールでつくられることが好ましく、インプラントの最終形態が刷り込まれた、個々のワイヤの編組である。形状記憶材料としてのニチノールにより、インプラントの形状が失われずに圧縮された形態でのインプラントのカテーテルへの挿入が可能になる。カテーテルから解放されると、インプラントは刷り込まれた形状をとり、よって意図された目的を果たすことができる。
【0046】
インプラント1は4つの区画(a)〜(d)に分割され、区画(a)は、近端2において合一され、1つまたはいくつかの結合素子で終端する、先細りの近端区画である。区画(b)は、固定機能を有し、供給血管Zの壁と接触する、この区画には網目が比較的狭いメッシュ3が設けられる。区画(c)は浸透性であるように構成され、血流がそれを通って輸出血管X及びYに流れ出ることができる、網目が広いメッシュ4が設けられる。区画(b)と比較して、また区画(c)に対しても、区画(d)は拡張された形状を有し、動脈瘤A内に配される。個々のワイヤの末端はX線不透過性材料、例えば白金または白金合金の、マーカーコイル8を設けることで、非外傷性であるように構成される。区画(c)と(d)の間に、例えばナイロンからなることができ、分離帯T
1も形成する、ファイバ編組6が配置される。参照数字5は、遠端領域において外側に広がる、インプラント1のメッシュまたはフィラメントを表す。
【0047】
図5は、本発明にしたがうインプラント1の遠端領域5がどのように構成され得るかの4つの形態を示す略図である。
図5aはトランペット様の形態で外向きに開く、インプラントの遠端を示す。すなわち、区画(d)はカリス形の拡大形態をとるように構成される。
図5bに示されるように、遠端5は、遠端区画(d)が極限されている、ディスク様拡大形態を有する。
図5cは
図5a及び
図5bに含まれる構造要素の複合形態を示す。
【0048】
図5dは、
図1のインプラントの個々のフィラメントの遠端が巻き上げられている遠端領域を示す。さらに良い教導のため、
図5a及び
図5bのそれぞれに区画(a),(b),(c)も示されている。
【0049】
図6は、区画(a)〜(d)を示す、本発明のインプラント1の好ましい実施形態の広げられた平面図である。インプラント1はニチノールチューブから切り開かれたメッシュ構造として理解されるべきであり、図において破線として示されるウエブ11は対向側に配置される実線のウエブに対応する。区画(c)のより大きなハニカムは
図6aの図面に容易に見てとることができ、同様、カリス形またはトランペット形の拡大部が
図6bによる略図に見られる。ナイロン糸6からなる挿入レベルの形の分離素子を有する分離帯T
1も示されている。
【0050】
図7は、ニチノールチューブから切り開かれた、インプラント1の別の実施形態を示し、インプラントは、近端に配された結合素子10,近端方向に先細りの区画(a),固定区画(b),網目寸法がより大きな区画(c)及び拡大区画(d)からなる。この場合も、
図6に示される実施形態と同様に、インプラントに対して平面図が選ばれ、インプラントはニチノールチューブから切り開かれた素子を含む専用分離帯T
1を有し、素子は畳み込まれるが遠端は外側に開いてトランペット様形状をとるように形成される。
図6を用いて説明した実施形態の挿入ナイロン糸と同じく、分離帯T
1の畳み込まれたウエブ6が動脈瘤内に導入された閉塞手段を保持するためにはたらく。
【0051】
図6及び7にしたがうインプラントはチューブ構造を有している必要はなく、血管の壁に対して所定の位置に支持される、巻き上げられた「マット」の形態で提供することもできる。インプラントには部分的にスロットを設けることもできる。
【0052】
図8は、区画(d)がよりディスクに似た形状を有する、本発明のインプラント1を示し、区画(d)は主要部分がワイヤループ12からなる。ワイヤループはインプラント本体1の円筒部に連結し、この円筒部は区画(a)〜(c)からなる。取り付けられたループ12に隣接する遷移領域には、インプラントの安全な配置を保証することになるマーカー素子8が配置される。ループ12が配される区画(d)にインプラント1の円筒体が連結する領域には、流入血液の横方向流出血管を通る流出を可能にする区画(c)がある。したがって、血液はマーカー素子8が設けられたウエブ間の輸出血管(X及びY,
図2)に入る。
【0053】
遠端区画(d)の様々な実施形態が
図8b〜8gに上面図として示され、1つまたはいくつかのループ12にマーカーコイル13を設けることができる。マーカーコイル13はループの全体または一部を取り巻くことができる。図に示される場合において、ループは、
図8b〜8gから分かるようにインプラントの円筒部への推移領域をなす内円14との、マーカー素子8も付けている、4つのコネクタ15から始まる。分離帯T
1またはT
2に存在し得るブレーシングは全く示されていない。
【0054】
図8f及び8gに示される実施形態は拡張可能なメンブラン16が設けられたループ12を示し、ループは同時に、
図3に示されるように分離帯T
2として機能する。
【0055】
分離帯T
1及びT
2が閉塞されるべき動脈瘤Aを仕切って区画に分けなければならないことは当然である。動脈瘤のタイプに応じて、この分離帯は−血管が入口領域近くで分岐している場合−入口領域に、また−2本の血管が動脈瘤空間自体から分岐している場合−動脈瘤内に配置することができるが、後者の場合、血管分岐から離れている動脈瘤の領域だけが閉塞され得る。本発明のインプラントのループ形遠端区画(d)の場合には特に、特に非常に多くのワイヤループが設けられているときには、追加のブレーシングまたはチューブから切り開かれた分離素子の配列を配することができる。
【0056】
インプラント本体の残余部分と同じく、
図8に示されるループ形遠端区画(d)は、一方で、適する直径のチューブから切り開くことができる。しかし、インプラント本体の区画(a)〜(c)を従来の態様でチューブから切り開き、これにワイヤフィラメントからなる区画(d)を、例えばレーザ溶接法を用いて、取り付けることも可能である。
【0057】
図9は、輸出血管X及びYが動脈瘤から分岐している、特別な場合の動脈瘤Aを示す。この場合、
図8を用いて説明したインプラント1が特に有用であり、このインプラントは分離帯T
2を同時に形成するループ12を有し、動脈瘤自体の内部で、分岐する血管から遠位に配置されている。インプラント1の区画(a)及び(b)を有する円筒体は供給血管Z内に配置され、分枝X及びYへの血流の通過を可能にする区画(c)はこれらの分枝の領域に置かれ、ループ12をもつ区画(d)が区画(c)に隣接して遠位に配される。ループはメンブランで覆うことができ、メンブランは拡張可能な材料、例えばテフロン(登録商標)、または不織布からなる。ポリカーボネートウレタンのそのような不織布は公告された独国特許発明第2806030号の明細書により既知であり、カテーテルを通してのインプラントの配置に資する高弾性率が特徴である。メンブランは、例えば、材料を節約し、カテーテルを通しての輸送を容易にするため、スロットを形成するか、畳むかまたは多孔性の構造とすることができる。
【0058】
そのようなメンブランは区画(c)と(d)の間に配される分離帯のための分離素子として用いることもできる。
【0059】
図10は、ハニカム面がより大きい遠端ループを除いてハニカム構造が実質的に等しい寸法のハニカムからなる、本発明にしたがうインプラント1のいくつかの好ましい実施形態を示す。
【0060】
図6に示されるウエブと同様に、破線として示されるウエブ11は対向側の実線と一致する。したがって、インプラント1は格子構造またはハニカム構造を有するチューブに相当する。
【0061】
近位に配された結合素子10に近端区画(a)が取り付けられ、近端区画(a)に固定区画(b)が続く。遠端区画(d)は分離レベルがインプラント内にそれを用いて配されるワイヤまたはナイロンの素子を収めて確実に固定するためにはたらくアイレット17の領域に始まる。外向きに開く区画(d)内に配置される遠端ループの先端にはカテーテルによる配置部位におけるインプラントの位置決めに資する丸められた嘴先が設けられる。
【0062】
図10bは、矢印19の領域に部分的なスロット、すなわちインプラント1のチューブ構造が閉じられていない場所、が与えられていることを除き、
図10aの表示と全ての点において対応する。スロット付形状は軸方向に平行に延び、浸透性区画(c)が配置されるポイントにおいて遠端区画(d)より前で終わる。
【0063】
図10cは、軸方向に平行には延びず、軸線の周りに巻き上げられているが、同じく遠端区画(d)より前で終わる、スロット19が配されている、別の実施形態を示す。
【0064】
このタイプのスロット付構成は、固定区画(b)の領域における柔軟性に関してかなり有益であることが実証されている。このようにすれば、インプラント1の径方向力が血管構造及び血管腔を有意に傷付けることはなく、血管構造及び血管腔への適合が向上する。
【0065】
図10dもスロットが設けられた本発明のインプラントを示すが、この場合、スロットはインプラントの端まで延びていない。
【0066】
スロット19を有する別の実施形態が
図10eに示され、本スロットも軸線の周りに巻き上げられるが、並んで存在するハニカム形を有する。このハニカムの形は柔軟性に効果を有し、該当する必要を満たすように選ぶことができる。
【0067】
図10において、遠端区画(d)のハニカムのそれぞれの全てのループは参照数字12によって識別される。
【0068】
図11は、追加のループ20が分離素子として配されている、個別の結合素子10及び実質的に正則なハニカム構造が設けられた本発明のインプラント1の別の実施形態を示す。この点において、
図11に示される実施形態は
図7の実施形態に対応する。埋め込まれた製品において、追加ループ20は内側を指し、分離レベルT
1をなす。これらのループ20には、カテーテルを通しての輸送を容易にすることが目的とされている、丸められた嘴先18も設けられる。
【0069】
図11bは、内側を指しているループ20及び分離レベルT
1を含む、
図11aに示されるインプラントの略図である。
【0070】
図12は、分岐の領域における弯曲した血管形状へのインプラント1の適合を向上させる目的で設けられた、それぞれのウエブのジグザグ配列の形態の関節式コネクタ21を有する、別の実施形態の特に柔軟なインプラント1を示す。
【0071】
最後に、
図13は、柔軟性及び曲げ性のいずれをも高めるためにより細いウエブ(領域W)を有する多くのハニカムを区画(b)に含む、別の実施形態を示す。この領域22は固定区画(b)に配され、固定区画における不規則な血管形状に関わる要件を満たすことが目的とされている。他の点では、このインプラント1は上述した様々な実施形態に対応する。
【符号の説明】
【0072】
1 インプラント
2 近端
3,4 メッシュ
5 遠端領域
6 分離素子
7,8,13 マーカーコイル
9 ガイドワイヤ
10 結合素子
11 ウエブ
12,20 ワイヤループ
15 コネクタ
16 メンブラン
17 アイレット
18 嘴先
19 スロット
21 関節式コネクタ
A 動脈瘤
T
1,T
2 分離帯
X,Y 輸出血管
Z 供給血管