(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6077504
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】調整構造を備えたロボットアーム装置
(51)【国際特許分類】
B25J 18/02 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
B25J18/02
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-188344(P2014-188344)
(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公開番号】特開2015-127090(P2015-127090A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2016年2月16日
(31)【優先権主張番号】102148927
(32)【優先日】2013年12月30日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】513241523
【氏名又は名称】上銀科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100141379
【弁理士】
【氏名又は名称】田所 淳
(72)【発明者】
【氏名】江宗憲
(72)【発明者】
【氏名】謝武燈
(72)【発明者】
【氏名】陳彦羽
【審査官】
佐々木 一浩
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−094691(JP,U)
【文献】
実開昭60−177312(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調整構造を備えたロボットアーム装置であって、
移動基座と、調整モジュールと、を含み、
前記移動基座は、複数個の作動自由度を有し、
前記調整モジュールは、一端が前記移動基座に連結されるとともに、本体と、套筒と、固定部と、結合手段とを含み、
前記本体は、一方向に延伸された長条状構造で、この延伸方向が軸方向であると定義し、その表面に外ねじと軸方向に設置された凹溝が設けられ、
前記套筒は、連通孔を有し、この連通孔が前記外ねじを套設し、且つこの連通孔の内縁面に前記凹溝に対応する凸ブロックが設けられ、この凸ブロックが前記凹溝内に収容されることで、本体に対して前記套筒の回転自由度を制限し、
前記固定部は、貫通孔を有し、この貫通孔の内縁面に内ねじが設けられ、この内ねじが前記本体の前記外ねじを螺合し、前記固定部は、前記結合手段を介して前記套筒の一端面を固定することを特徴とする、調整構造を備えたロボットアーム装置。
【請求項2】
前記結合手段は、複数のねじを介して前記固定部を前記套筒の一端面に固定することを特徴とする、請求項1に記載の調整構造を備えたロボットアーム装置。
【請求項3】
前記固定部には、軸方向に設置された複数個の魚眼状孔が設けられ、前記套筒の端面に前記魚眼状孔に対応する複数個のねじ孔が設けられ、複数の前記ねじが前記魚眼状孔を貫通して前記ねじ孔内に螺入することで、前記固定部を前記套筒の一端面に固定することを特徴とする、請求項1に記載の調整構造を備えたロボットアーム装置。
【請求項4】
前記結合手段は、ロック構造とし、このロック構造を介して前記固定部を前記套筒の一端面に固定することを特徴とする、請求項1に記載の調整構造を備えたロボットアーム装置。
【請求項5】
前記移動基座は、基座と、第1アーム部と、を含み、
前記基座には、第1枢設部が回動自在に設けられ、
前記第1アーム部は、連結アームと、第2枢設部と、第3枢設部と、を含み、前記第2枢設部と前記第3枢設部が、前記連結アームの両端に位置され、且つ前記第2枢設部が前記第1枢設部と連結することで、前記基座に前記第1アーム部を固定することを特徴とする、請求項1に記載の調整構造を備えたロボットアーム装置。
【請求項6】
前記第3枢設部には、第1結合面が設けられ、この第1結合面に前記套筒を固定することを特徴とする、請求項5に記載の調整構造を備えたロボットアーム装置。
【請求項7】
前記本体は、前記第3枢設部の前記第1結合面に固定されることを特徴とする、請求項6に記載の調整構造を備えたロボットアーム装置。
【請求項8】
前記調整構造を備えたロボットアーム装置は、第2アーム部をさらに備え、前記第2アーム部が、第2結合面と挟持部を有し、前記第2結合面が、前記調整モジュールの他端と連結することを特徴とする、請求項1に記載の調整構造を備えたロボットアーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロボットに係り、特にアームの長さを調整することができる、調整構造を備えたロボットアーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットアーム装置は制御性に優れるため、産業の各種分野に広く利用されている。例えば、機械加工の分野において、加工機にロボットアーム装置を搭載し、このロボットアーム装置が加工物品を自動に取り付けたり取り外したりすることにより、加工機に加工物品を加工させる。また、医療機械の分野において、医師がこのロボットアーム装置を制御することにより、患者に対して医療手術を行う。さらにゲーム娯楽の分野において、このロボットアーム装置を移動して制御することにより、ゲームの対象物を挟持して移動することができる。
【0003】
図9は、従来技術のロボットアーム装置を示すものであり、このロボットアーム装置は、基座11と、第1アームエレメント12と、第2アームエレメント13と、を少なくとも含む。基座11は回動可能に設けられ、基座11には、第1アームエレメント12を枢設し、第1アームエレメント12には、第2アームエレメント13を枢設する。第2アームエレメント13は、第1アームエレメント12を枢設する枢設部131を有し、枢設部131の一端に支持部132の一端を固定し、支持部132の他端に付設部14を付設した係合部133を設ける。第1アームエレメント12と第2アームエレメント13を制御することにより、付設部14の移動とコントロールを行う。
【0004】
ところで、第2アームエレメント13では、支持部132の長さが一定で調整することができない。このため、このロボットアーム装置は単一の距離に対して制御しかできない。異なる距離に対してコントロールするとき、アームがより長いロボットアーム装置を再び購入しければならない。例えば、
図10に示すように、第2アームエレメントの支持部152が
図9の第2アームエレメント13の支持部132より長い。これにより、より長い距離をコントロールことができる。よって、同一規格のロボットアーム装置は所定の最長距離で制御しかできないので、適用の限界というデメリットがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アームの長さを調整でき、より広い範囲の作動軌跡に適し、汎用性を高める調整構造を備えたロボットアーム装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は調整構造を備えたロボットアーム装置であって、移動基座と、調整モジュールと、を含み、前記移動基座は、複数個の作動自由度を有し、前記調整モジュールは、一端が前記移動基座に連結されるとともに、本体と、套筒と、固定部と、結合手段とを含み、前記本体は、一方向に延伸された長条状構造で、この延伸方向が軸方向であると定義し、その表面に外ねじと軸方向に設置された凹溝が設けられ、前記套筒は、連通孔を有し、この連通孔が前記外ねじを套設し、且つこの連通孔の内縁面に前記凹溝に対応する凸ブロックが設けられ、この凸ブロックが前記凹溝内に収容されることで、本体に対して前記套筒の回転自由度を制限し、前記固定部は、貫通孔を有し、この貫通孔の内縁面に内ねじが設けられ、この内ねじが前記本体の前記外ねじを螺合し、前記固定部は、前記結合手段を介して前記套筒の一端面を固定することを特徴とする調整構造を備えたロボットアーム装置である。
【0008】
ここでは、前記結合手段は、複数のねじを介して前記固定部を前記套筒の一端面に固定することが好適である。
【0009】
ここでは、前記固定部には、軸方向に設置された複数個の魚眼状孔が設けられ、前記套筒の端面に前記魚眼状孔に対応する複数個のねじ孔が設けられ、複数の前記ねじが前記魚眼状孔を貫通して前記ねじ孔内に螺入することで、前記固定部を前記套筒の一端面に固定することが好適である。
【0010】
ここでは、前記結合手段は、ロック構造とし、このロック構造を介して前記固定部を前記套筒の一端面に固定することが好適である。
【0011】
ここでは、前記移動基座は、基座と、第1アーム部と、を含み、前記基座には、第1枢設部が回動自在に設けられ、前記第1アーム部は、連結アームと、第2枢設部と、第3枢設部と、を含み、前記第2枢設部と前記第3枢設部が、前記連結アームの両端に位置され、且つ前記第2枢設部が前記第1枢設部と連結することで、前記基座に前記第1アーム部を固定することが好適である。
【0012】
ここでは、前記第3枢設部には、第1結合面が設けられ、この第1結合面に前記套筒を固定することが好適である。
【0013】
ここでは、前記本体は、前記第3枢設部の前記第1結合面に固定されることが好適である。
【0014】
ここでは、前記調整構造を備えたロボットアーム装置は、第2アーム部をさらに備え、前記第2アーム部が、第2結合面と挟持部を有し、前記第2結合面が、前記調整モジュールの他端と連結することが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、調整モジュールが本体と套筒との軸方向相対滑動を介してアームの長さを調整することができるので、各種の作動軌跡のニーズを満たし、しかも固定部の内ねじと本体の外ねじを螺号することで、さらに結合手段が固定部を套筒の一端面に固定することを利用して本体と套筒との間の軸方向変位の自由度を制限し、故に調整モジュールの任意自由度を完全に制限することができ、即ち、アームの長さ調整作業を完成することができる。よって、アームの長さを調整する操作方式は相当簡単かつ迅速で、各種産業又は異なる生産ラインのニーズを満たし、その応用範囲を広げ、ユーザーが異なる規格のロボットアーム装置を購入するのを回避し、その購入コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の調整構造を備えたロボットアーム装置の好適な実施例1の全体分解斜視図である。
【
図2】本発明の調整構造を備えたロボットアーム装置の好適な実施例1のアセンブリ図である。
【
図3】本発明の調整構造を備えたロボットアーム装置の好適な実施例1の側面図であって、アームの伸長状態を示している。
【
図4】本発明の調整構造を備えたロボットアーム装置の好適な実施例1の側面図であって、アームの収縮状態を示している。
【
図5】本発明の調整構造を備えたロボットアーム装置の好適な実施例2の全体分解斜視図である。
【
図6】本発明の調整構造を備えたロボットアーム装置の好適な実施例2のアセンブリ図である。
【
図7】本発明の調整構造を備えたロボットアーム装置の好適な実施例2の側面図であって、アームの伸長状態を示している。
【
図8】本発明の調整構造を備えたロボットアーム装置の好適な実施例2の側面図であって、アームの収縮状態を示している。
【
図9】従来技術のロボットアーム装置の側面図である。
【
図10】従来技術のロボットアーム装置の側面図であって、
図9のアームより長いアームのケースを示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の特徴および技術内容のよりよい理解のために、本発明の実施方式の説明及び図面を参照していただきたい。ただし、この実施方式及び図面は説明及び参考用のものであり、これらにより本発明に対するいかなる制限も加えられるものではない。
【実施例1】
【0018】
図1から
図4に示している本発明の好適な実施例1を参照して、本発明は 調整構造を備えたロボットアーム装置であって、移動基座と、調整モジュール3と、を含む。
【0019】
前記移動基座は、複数個の作動自由度を有する。実施例1では、前記移動基座が、基座1と、第1アーム部2と、を含む。
【0020】
前記基座1には、第1枢設部11が回動自在に設けられる。前記第1アーム部2は、連結アーム21と、第2枢設部22と、第3枢設部23と、を含み、前記第2枢設部22と前記第3枢設部23が、前記連結アーム21の両端に位置され、且つ前記第2枢設部22が前記第1枢設部11と連結することで、前記基座1に前記第1アーム部2を固定する。
【0021】
前記調整モジュール3は、一端が前記第3枢設部23の第1結合面231と連結されるとともに、本体32と、套筒31と、固定部33と、結合手段とを含む。
【0022】
前記本体32は、一方向に延伸された長条状構造で、この延伸方向が軸方向であると定義し、前記本体32の表面に外ねじ321と、軸方向に沿って設置された凹溝322が設けられる。
【0023】
前記套筒31は、連通孔311を有し、この連通孔311が前記外ねじ321を套設し、且つこの連通孔311の内縁面に前記凹溝322に対応する凸ブロック312が設けられ、この凸ブロック312が前記凹溝322内に収容されることで、本体32に対して前記套筒31の回転自由度を制限する。本実施例1では、套筒31は一端が前記第1結合面231に連結される。
【0024】
前記固定部33は、貫通孔を有し、この貫通孔の内縁面に内ねじ331が設けられ、この内ねじ331が前記本体の前記外ねじ321に螺設される。前記固定部33は、結合手段を介して前記套筒31の他端を固定する。本実施例1では、結合手段が前記固定部33に軸方向に設置された複数個の魚眼状孔332が設けられ、前記魚眼状孔332を穿設する複数個のねじ34をねじ孔313に螺合することで、前記固定部33を前記套筒31の端面に固定する方式とする。これは固定部33と套筒31を固定する一つの固定方式であって、ロック構造で両者を固定する方式でもいい。
【0025】
第2アーム部4をさらに備え、前記第2アーム部4は、第2結合面41と挟持部42を有し、前記第2結合面41が、前記本体32の端面と連結することで、第3枢設部23に前記第2アーム部4を間接的に連結する。挟持部42には、所定の加工プログラムに応じて、所定の挟み爪や工具を取付ける。
【0026】
上述した内容は本発明の各構成要素及び各構成要素間の組合せ関係を説明するものであり、以下、本発明の作動方式、特に長さの調整方式について説明する。
【0027】
上記の調整構造を備えたロボットアーム装置を使用するに当たっては、異なる範囲の作動軌跡が必要となる。通常は、異なる規格の製品を変更するか、又は異なる生産ラインを使用する。しかもこのような状況の発生周期が2ヵ月毎に一回程度で、故に常習性を有することではない。もしこのような状況が発生すれば、ユーザーが結合手段における固定部33と套筒31の固定を緩めて開けることで、両者の分離を行い、所定の位置に本体32を再び移動する。例えば、アームが短くて長く伸ばす必要があるとき、套筒31の連通孔31から前記本体32を引っ張り出することで、第2アーム部4と第3枢設部23との距離を長くすることができる(
図3を参照)。また、アームが長く短く縮む必要があるとき、套筒31の連通孔31中に前記本体32を押し入れることで、第2アーム部4と第3枢設部23との距離を短くすることができる(
図4を参照)。
図3と
図4に示すように、所期の長さを調整した後に、套筒31の端面に固定部33を結合手段で固定する。こうしてアームの長さを調整する作業を完成するのは、異なる各種大小の移動軌跡の作業環境ニーズを満たすことができる。
【実施例2】
【0028】
図5から
図8に示している本発明の好適な実施例2を参照して、実施例2は実施例1と異なる点が、本体32の一端面が第1結合面231に固定され、套筒31の一端面が第2結合面41に固定され、故にアームの長さを調整するとき、套筒31を移動して調整することにある。他の構成及び作用・効果は実施例1と同一であるため、その詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0029】
<本発明>
1:基座
11:第1枢設部
2:第1アーム部
21:連結アーム
22:第2枢設部
23:第3枢設部
231:第1結合面
3:調整モジュール
31:套筒
311:連通孔
312:凸ブロック
313:ねじ孔
32:本体
321:外ねじ
322:凹溝
34:ねじ
4:第2アーム部
41:第2結合面
42:把挟部(又は把挟端)
<従来技術>
11:基座
12:第1アームエレメント
13:第2アームエレメント
131:枢設部
132:支持部
133:係合部
14:付設部
15:第2アームエレメント
152:支持部