(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の間隙を挟んで対向する端部のうち前記第1の導体と接続する部分から近くない方に接続され、前記第1の導体と略平行に配置された屈曲導体部をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
[構成の説明]
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0010】
図1aおよび
図1bは本実施形態の構成を示す図である。
図1aはアンテナ形成面を上面から見た図であり、
図1bはアンテナ形成面を横から見た断面図である。
【0011】
図1aおよび
図1bに示すようにアンテナ1は片面銅張基板20で形成され、片面銅張基板20は銅箔層21と誘電体層22からなる。アンテナ1は、銅箔層21をエッチングやレーザー加工などで、所望のアンテナ形状に沿って銅箔を剥離して形成される。銅箔を剥離して形成したアンテナを
図1aに示す。
図1aで黒い部分が銅箔部分、白い部分は銅箔を剥離した部分である。
【0012】
図2は
図1aの拡大図である。
図2を参照すると、本アンテナ1は、開口部2と開口部3を有し、開口部2と開口部3は伝送線路5で隔離されている。そして、伝送線路5は、一端を開口部の外側に位置する2つの端子をもつ給電点4の1つの端子41と接続され、給電点4のもう1つの端子42は給電点4に近接する銅箔層21に接続される。さらに開口部2は一定間隔の空隙11を有し、この空隙11を挟む導体の端部には補助導体6と補助導体7が接続され、補助導体6と補助導体7は開口部2の内側で互いに対向するように配置される。
[動作の説明]
次に本実施形態の動作について図を参照して説明する。
【0013】
図2における給電点4に給電された高周波電流は伝送線路5を通って、開口部2および開口部3の領域に伝送される。伝送線路5の特性インピーダンスは、伝送線路5に接続される無線回路とインピーダンス整合されており、例えば50オームである。ここで、アンテナ1の動作上の給電点は
図2に示す動作上の給電点8であり、動作上の給電点8から銅箔層21内の任意の位置の給電点4まで伝送線路5によって延伸されても、給電点4の位置に関わらず、アンテナの動作は変化しない。尚、
図2において、動作上の給電点8から実際の給電点4までの伝送線路5はコプレーナ線路で構成しているが、同区間の伝送線路5は外導体が銅箔層21と等電位となる様に半田付された同軸線など、コプレーナ線路以外の伝送線路であっても良い。
【0014】
図3はアンテナ1の動作を説明するための図である。
図2に示す構成と異なる点は、
図2における給電点4の代わりに動作上の給電点8を示していることであり、その他の構成は
図2と同一である。
図3を参照すると、第1の周波数に共振するAルート、第2の周波数に共振するBルート、第1の周波数および第2の周波数において給電線の特性インピーダンスと整合するためのループCが存在する。以下、アンテナ1の動作をAルート、Bルート、ループCに分けて説明する。
【0015】
図3に示したAルートの経路上に導体間の空隙11が存在し、この空隙11の両端に位置する補助導体6と補助導体7の対向部分がキャパシタンスを生じる。このキャパシタンスは補助導体6と補助導体7の間隔の距離の逆数と補助導体6と補助導体7の対向部分の面積に比例する。ここで示す面積は、対向部分の長さと銅箔層の厚みとを乗じたものである。尚、空隙11で対向する導体のキャパシタンスだけで実現可能な場合、補助導体7は不要である。
【0016】
また、
図3に示したAルートの導体長はインダクタンスを生じる。そして、
図3における動作上の給電点8に高周波電流を給電すると、Aルートは
図4に示す給電点17にインダクタ9とキャパシタ10が直列接続された等価回路で表される直列共振回路を形成し、Aルートは第1の共振周波数で共振する。一般的に直列共振回路の共振周波数はインダクタンスにキャパシタンスを乗じた値の平方根に反比例する。
【0017】
従って、第1の共振周波数は補助導体6と補助導体7の間隔の距離の逆数と、補助導体6と補助導体7の対向部分の面積と、Aルートの導体長を乗じた値の平方根に反比例する。
【0018】
以上説明したAルートの共振を利用したアンテナは、前述の特許文献1に示され、スプリットリング共振器アンテナ(SRRアンテナ)と称される。
【0019】
尚、Aルートが上記の条件を満足すれば、必ずしもSRRアンテナに限定されるものではない。
【0020】
一方、本実施形態のアンテナは、上記で説明した第1の共振周波数に共振するAルートの他に、
図3に示す第2の共振周波数に共振するBルートを有する。
図3に示すBルートは、補助導体6の開放先端と開口部2を形成する銅箔層21との間隙12を有し、間隙12においてキャパシタンスを生じる。このキャパシタンスは補助導体6の先端と先端近くの開口部2の周囲の銅箔層21との間隙12の間隔の距離の逆数と、間隙12を挟む導体同士の対向面積に比例する。
【0021】
また、Bルートの導体長はインダクタンスを生じる。そして、
図3における動作上の給電点8に高周波電流を給電すると、Bルートは
図4に示す等価回路で表される直列共振回路を形成し、Bルートは第2の共振周波数で共振する。Aルートの説明と同様に、直列共振回路の共振周波数はインダクタンスにキャパシタンスを乗じた値の平方根に反比例する。
【0022】
従って、第2の共振周波数は補助導体6の先端と先端近くの開口部2の周囲の銅箔層21との間隙12の間隔の距離の逆数と、間隙12を挟む導体同士の対向面積と、Bルートの導体長を乗じた値の平方根に反比例する。
【0023】
このようにして、アンテナ1はAルートとBルートの2つの異なる形状に由来する、2周波数共振特性を有する。
【0024】
次に、ループCについて説明する。ループCの導体長は給電点8の両端子間にインダクタンスを生じる。このループCの導体長に由来するインダクタンスにより、アンテナ1は第1の周波数と第2の周波数において、給電点8に接続される給電線の特性インピーダンスとインピーダンス整合をする。
【0025】
以上、第1の実施形態におけるアンテナ1の動作を説明した。
【0026】
次に、アンテナ1の設計例を、
図5と
図6を参照して示す。
【0027】
設計目標は、第1の周波数をf0、第2の周波数を2.7×f0として、第1および第2の周波数における給電点8で観測する反射損失を-10dB以下とする。尚、以下に示す各寸法は、Aルートの共振周波数f0に対応する空間波長λで正規化されている。
【0028】
図5に示す各寸法は Xa=0.088λ、Xb=0.044λ、Xc=0.026λ、Y=0.028λ、D=0.00080λ、とする。また、補助導体6と補助導体7および伝送線路5の幅はいずれも0.0040λとし、補助導体6の長さ L6=0.026λ、補助導体7の長さ L7=0.020λ、銅箔の厚みは 0.00080λとする。
【0029】
これらの設計値に基づき数値計算を行い、アンテナ1の給電点におけるインピーダンスを反射損失(リターンロス)の形式で表示したグラフが
図6である。
図6に示す様に目標の第1の周波数(f0)と第2の周波数(2.7×f0)で共振し、第1および第2の周波数における反射損失は、目標の-10dB以下である。
【0030】
ここでは、
図3に示すようにアンテナの開口部形状を矩形としたが、開口部の形状が円形や多角形など、矩形以外の形状でも設計可能である。
【0031】
以上説明したように、第1の実施形態に示すアンテナは、素子1個で複数の周波数で共振することが可能である。従って、特願2012-248169号に示されるように素子2個で2周波数対応を実現する場合と比べて、本実施形態に示すアンテナは小型で複数周波数に対応することが可能となる。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。
[構成の説明]
図7は本実施形態の構成を示す図である。
図7のアンテナ形状と第1の実施形態の説明で用いた
図3に示すアンテナ形状を比較すると、補助導体7の先端部分が屈曲部13で屈曲し、屈曲部13から先端部分が間隙12をはさんで開口部2の周囲と対向している。
[動作の説明]
第1の実施形態で示した
図3のアンテナ形状における間隙12と、
図7の間隙12の間隔の距離が同じ寸法であっても、
図7に示すアンテナ形状は
図3に示すアンテナ形状と比べて補助導体7の先端が開口部3の周囲と対向している導体部分が大きい。従って、補助導体7の先端部分と開口部2の周囲との間で生じるキャパシタンスは、
図7に示すアンテナ形状の方が
図3に示すアンテナ形状より大きい。
【0032】
第2の実施形態に示すアンテナの等価回路は、第1の実施形態で示した
図4と同一で、直列共振である。第1の実施形態で説明したように、直列共振の共振周波数はインダクタンスにキャパシタンスを乗じた値の平方根に反比例する。従って、補助導体7の先端部分の形状の変化に伴って、間隙12で生じるキャパシタンスが大きくなると、同一の共振周波数で共振するためにはインダクタンスを小さくする必要がある。ここで、
図7および
図3のインダクタンスは
図3に示したAルートで示す電気長で決定される。つまり、間隙12で生じるキャパシタンスを大きくすると、同一周波数で共振する為には、
図3のAルートで示す電気長を小さくする必要があるのでアンテナ形状は小さくなる。
【0033】
従って、第2の実施形態で示した
図7のアンテナ形状は、第1の実施形態で示した
図3のアンテナ形状と比べて小型化が可能となる。
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について図面を参照して説明する。
[構成の説明]
図9は本実施形態の構成を示す図である。
図9に示すアンテナ形状は、補助導体6の先端と補助導体6に近接する開口部2の周囲の導体1との間に、チップ部品のキャパシタ15を備えることが、第1の実施形態の説明で用いた
図3に示すアンテナ形状と異なる。
[動作の説明]
第1の実施形態では、補助導体6の先端と開口部2の周囲の銅箔層21との間隙12においてキャパシタンスが生じる。一方、第3の実施形態では、間隙12にチップ部品のキャパシタ15を装荷することにより、第1の実施形態に示したような間隙12を挟んだ導体間のキャパシタンスでは不足する場合にも、アンテナ外形の小型化が可能となる。
【0034】
尚、空隙11にチップ部品のキャパシタ16を装荷する方法が特許文献1に示されていて、
図10に示すように間隙12と同様に空隙11のキャパシタンスをチップ部品のキャパシタ16とすることが可能である。
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について図面を参照して説明する。
[構成の説明]
図11は本実施形態の構成を示す図である。第1の実施形態の説明で用いた
図3のアンテナ1が第1の導体形成面31に形成され、第1の導体形成面31の上面に一定の厚さの誘電体層を挟んで、第2の導体形成面32が配置される。第2の導体形成面32には、
図3に示したアンテナ1の導体形状から伝送線路5と給電点4を取り除いた導体形状が形成されている。
【0035】
また、第1の導体形成面31と第2の導体形成面32の導体同士は、プリント基板の複数のスルーホールで導通するために、両導体は高周波的に等電位に保たれる。
[動作の説明]
第4の実施形態のアンテナは、複数のスルーホールで第1の導体形成面31と第2の導体形成面32が接続されているため、第1の導体形成面31と第2の導体形成面32の間隔が導体で満たされてアンテナが形成されていることと同等となる。従って、1面の導体形成面だけで形成した第1の実施形態のアンテナより、2面の導体形成面をスルーホールで接続して形成した第4の実施形態のアンテナの方が、空隙11の導体同士の対向面積は大きいためキャパシタンスも大きい。
【0036】
間隙12のキャパシタンスも同じ理由で、第1の実施形態のアンテナより第4の実施形態のアンテナの方が大きい。キャパシタンスが大きいとアンテナ外形を小さくすることが可能であることは、第2の実施形態の動作の説明で記した通りである。
【0037】
このようにして、第4の実施形態に示すアンテナは第1の実施形態に示すアンテナより小型化が可能となる。
[第5の実施形態]
次に第5の実施形態について図面を参照して説明する。
[構成の説明]
図12は第5の実施形態の構成を示す図である。
【0038】
図12で示すように、アンテナ1に近接する位置に、アンテナ51が配置されている。アンテナ1は第1の実施形態で示したアンテナ1と同一構成であるが、動作目的とする周波数は、第1の実施形態の説明で用いた
図3のAルートの共振周波数(以下周波数F1)だけで、Bルートの共振はアンテナ1の動作目的の周波数ではない。また、アンテナ51の共振周波数(以下周波数F51)は、アンテナ1より高い周波数である。
【0039】
尚、
図12ではアンテナ51をモノポールアンテナとして描いているが、SRRアンテナなどの他の形式のアンテナでも良い。
[動作の説明]
次に本実施形態の動作について
図3、
図12および
図13を参照して説明する。
【0040】
図12に示すアンテナ1とアンテナ51とは空間で電磁結合があり、アンテナ1の存在がアンテナ51の特性に悪影響を及ぼすことがある。この空間での電磁結合を回避するためには、周波数F51において、アンテナ1を高リアクタンスに設定する方法がある。
【0041】
例えば、アンテナ1と給電線路との間に、インピーダンス調整回路を構成し、周波数F1で給電線の特性インピーダンスに整合し、周波数F51で高リアクタンスとなる回路を形成するなどである。しかし、この方法は周波数F1と周波数F51が十分に離れていないと実現が困難である。
【0042】
図3から明らかな様に、アンテナ1は、第1の実施形態で説明したBルートの形状を変化してもAルートの共振周波数(周波数F1)のインピーダンスは殆ど変化しない。一方、Bルートの形状の変化に伴って、周波数F51におけるインピーダンスを変化させることが可能である。すなわち、
図3に示すBルートの電気長に由来するインダクタンスと、間隙12で生じるキャパシタンスを変化させることで、アンテナ1の周波数F51におけるリアクタンスを高い値に設計し、開放に近いインピーダンスにすることが出来る。
【0043】
以上の説明に基づいて設計したアンテナ1の数値解析によるインピーダンスを、スミスチャート上に示したものが
図13である。アンテナ1は周波数F1でほぼ伝送線路の特性インピーダンスに整合し、アンテナ51の共振周波数F51におけるアンテナ1のインピーダンスは、高リアクタンスでほぼ開放インピーダンスとなっている様子が示されている。
【0044】
このようにすることで、アンテナ1とアンテナ51の空間での電磁結合が疎になり、アンテナ1の周波数F1におけるインピーダンスは殆ど変化させることなく、アンテナ1がアンテナ51の特性に及ぼす悪影響を回避することが可能となる。
【0045】
尚、
図13のアンテナ1の形状に対し、Aルートの導体長を変えずにBルートの導体長を長くすると、周波数F1を示す点は動かず、周波数F51を示す点はグラフの軌跡にほぼ沿って時計回りに移動する。また、開放インピーダンスに最も近い周波数はF15より高い周波数となる。
[第6の実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態について
図14を参照して説明する。
【0046】
本実施形態におけるアンテナ1は、空隙61を有する環状の第1の導体62と、前記環の内部に配置されるとともに両端が前記第1の導体62に接続され、第1の間隙63を有する第2の導体64を備える。さらに、前記第1の導体62のうち前記空隙61を含まない部分と前記第2の導体64とで囲まれる領域に配置されるとともに両端が前記第1の導体62に接続され、第2の間隙65を有する第3の導体66を備える。
【0047】
そして、アンテナ1は上記構成に基づく第1の値と第2の値とを有する。
【0048】
第1の値は、前記第1の導体62のうち前記空隙61を含む部分と前記第3の導体66とで囲まれる領域の外周の長さに前記空隙61のキャパシタンスを乗じた値である。
【0049】
一方、第2の値は、前記第2の導体64と前記第3の導体66と前記第1の導体62とで囲まれる領域の外周の長さに前記第1の間隙63のキャパシタンスを乗じた値である。
【0050】
そして、本実施形態におけるアンテナ1は、第1の値と第2の値が異なる。
【0051】
このようにして、第6の実施形態に示すアンテナは、素子1個で複数の周波数で共振することが可能である。従って、特願2012-248169号に示されるように素子2個で2周波数対応を実現する場合と比べて、本実施形態に示すアンテナは小型で複数周波数に対応することが可能となる。
【0052】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上記実施形態に限定されるものではなく、次のように拡張または変形できる。
【0053】
例えば、本発明の第1の実施形態を変形して、
図16に示すように補助導体6は、空隙11の端部から伝送線路5寄りにずれて開口内周に接続されても良い。
【0054】
また、本発明の第1の実施形態を変形して、
図17に示すように伝送線路5をストリップ線路を開口内に延長することで、動作上の給電点8が移動可能である。
【0055】
或いは、本発明の第2の実施形態では、
図7に示した様に補助導体6は屈曲部13から先端が屈曲する形状とした。一方、
図8のように屈曲部13に相当する箇所から先端を先端部14のように左右に拡大した形状に変形することで、先端部14と開口部2の周囲の導体1で形成されるキャパシタンスを大きくすることができる。その結果、アンテナ1の形状は
図7に示すアンテナ1の形状より小型にすることも可能である。
【0056】
さらに、本発明の第6の実施形態で説明した条件を満たせば、
図18のような形状に変形して実現することも可能である。