(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記設定電流値が、前記ゼロクロスタイミングでソレノイドへの通電を開始した後、プランジャーが吸引子に吸着する電流値であることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁駆動制御装置。
前記保持モードにおいて、プランジャーが吸引子への吸着状態から離反した脱落状態を検知する脱落検知手段を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電磁弁駆動制御装置。
前記脱落検知手段が、前記ゼロクロスタイミングでソレノイドへの通電を開始した時の電流値を電流検知手段で測定して、所定の脱落検知電流値以下であるか否かで判断して脱落を検出するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の電磁弁駆動制御装置。
前記脱落検知手段が、前記ゼロクロスタイミングでソレノイドへの通電を開始した時から、前記電流検知手段により検出したソレノイドに流れる電流値が、前記所定の設定電流値Iaに達した時までの時間を測定して、所定の脱落検知時間であるか否かで判断して脱落を検出するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の電磁弁駆動制御装置。
前記ゼロクロスタイミングでソレノイドへの通電を最初に開始した初期通電時から、前記電流検知手段により検出したソレノイドに流れる電流値が、所定の回路保護電流値Icになった際に、前記スイッチ手段によりソレノイドへの通電を遮断する回路保護手段を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の電磁弁駆動制御装置。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、一般的な電磁弁は、
図9に示したように構成されている。
【0003】
すなわち、
図9に示したように、電磁弁100は、弁体102を備えた制御部104を備えている。
【0004】
また、この電磁弁100の制御部104は、
図9に示したように、駆動部106が挿通された電磁コイル108を備えている。
【0005】
そして、電磁コイル108は、巻線が巻かれたボビン120とボビン120の周囲を囲むようにモールド樹脂112でモールドされている。さらに、
図9に示したように、電磁コイル108は、磁気フレーム114の内部に装着され、磁気フレーム114を介して駆動部106に固定されている。
【0006】
すなわち、磁気フレーム114の底板部116の中央部に形成された駆動部挿通孔118、ボビン120の駆動部挿通孔122に、駆動部106が挿通されている。そして、駆動部106の吸引子124の上部に形成されたボルト挿通孔126に、磁気フレーム114の上板部128の中央部に形成されたボルト挿通孔130を介して、締結ボルト132が螺合されている。
【0007】
これにより、電磁コイル108が駆動部106に挿通して固定され、電磁弁100の制御部104が構成されている。
【0008】
なお、駆動部106は、プランジャーケース134を備え、このプランジャーケース134内に上下に移動可能な弁体102を固定したプランジャー136を備えている。そして、吸引子124とプランジャー136との間に、プランジャー136を下方に、すなわち、弁座138の方向に弁体102を付勢する付勢バネ140が介装されている。
【0009】
このような電磁弁100は、電磁コイル108に通電することにより、プランジャー136が、付勢バネ140に抗して吸引子124方向に移動し、プランジャー136に連結された弁体102が、弁座138から離反して、弁口142が開放されるようになっている。
【0010】
また、電磁コイル108への通電を遮断することにより、プランジャー136が、付勢バネ140の付勢力により、吸引子124から離反する方向に移動し、プランジャー136に連結された弁体102が、弁座138に当接して、弁口142が閉止されるようになっている。
【0011】
また、電磁コイル108に交流電流を通電した際には、渦電流を発生させることで、プランジャー136が、付勢バネ140に抗して吸引子124方向に移動して、プランジャー136と吸引子124とが当接した状態、すなわち、弁体102が、弁座138から離反して、弁口142が開放された状態を保持している。
【0012】
渦電流を発生させるためには、従来より、吸引子124のプランジャー136と対峙する下端面144に形成した環状のコイル装着用溝146に、環状の隈取りコイル(隈取りリング)148を装着することが行われている。
【0013】
ここで、電磁弁100の駆動に使用する電磁コイル108は、電源電圧毎に消費電力が異なるので、電磁コイル108の温度上昇許容限度を超えない様な巻き線仕様で用意する必要がある。
【0014】
つまり、交流磁界を電磁コイル108に発生させただけでは、プランジャー136を吸引できないので、吸引子124(またはプランジャー136側)に隈取りコイル148を埋め込んで、渦電流を発生させて吸引子124の方向に引き上げる構造を採用している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、このように構成される従来の電磁弁100では、隈取りコイル148を挿入することによって、力率が悪化するため、また、通電による電磁コイル108の温度上昇によって、所定の吸引力を得られなくなるため、電磁コイル108の巻線を余分に巻く必要があり、部材および加工工数が増加して、コストが増加する要因になっている。
【0017】
また、従来の電磁弁100では、プランジャー136を吸引子124の方向に吸引した後は、電磁コイル108に通電し続ける必要があるため、無駄な電力を消費しているのが実情である。
【0018】
ところで、特許文献1(特許第3777265号公報)では、弁体と一体のプランジャーをコアに吸着および吸着保持させるために、コイルへ流す電流を制御する電磁弁であって、プランジャー吸着時に吸引力を高めるとともに、吸着保持するために流す電流を低電流にして不要な電力消費を削減した電磁弁が提案されている。
【0019】
そのために、この特許文献1の電磁弁駆動制御装置200では、
図10のブロック図に示したように、交流電源を直流電源に変換する全波整流回路部202と、全波整流回路部202によって直流化された電源電圧から一定値以上の電圧を取り出して平滑化する電源平滑部204と、ソレノイド(電磁コイル)206への通電・通電遮断を制御する比較演算部208と、比較演算部208の出力により、電磁コイル206への通電・通電遮断を行う駆動素子部210とを備えている。
【0020】
さらに、プランジャーをコア(吸引子)に吸着させるために必要な最低保持電流の2倍程度の電流を電磁コイル206に流すように、通電時間を比較演算部208に指示する吸着電流指示部212と、プランジャーとコアとの吸着保持に必要な電流を電磁コイル206へ流すように、電磁コイル206への通電・通電遮断の時間を、比較演算部208に指示する吸着保持電流指示部214とを備えている。
【0021】
すなわち、全波整流回路部202による直流電源によって、電磁コイル206に対してプランジャーをコアに吸着させるために必要な電流が流れて、励磁されたコアにプランジャーが吸着する。
【0022】
そして、比較演算部208からの出力に基づいて、駆動素子部210による電磁コイル206への通電・通電遮断が制御されて、吸着保持の際に必要な最低保持電流の2倍程度の電流が流されることによって吸着保持が行われる。
【0023】
その際、最初の吸着に必要な電流を、電磁コイル206へ流す通電時間が、吸着電流指示部212によって決定される。また、吸着後の吸着保持に必要な電流を、電磁コイル206へ、通電・遮断する時間が、吸着保持電流指示部214によって決定されるように構成されている。
【0024】
これによって、電磁コイル206への通電電流を最大限まで増大でき、プランジャーがコアに吸着保持された際に、電磁コイル206に流れる電流が低電流になって不要な電力消費を削減することができるものである。
【0025】
しかしながら、特許文献1の電磁弁駆動制御装置200では、その図面にも示されているように、コア(吸引子)に隈取りコイル(隈取りリング)を設けた構成である。このため、隈取りコイルを挿入することによって、力率が悪化するため、また、通電による電磁コイルの温度上昇によって、所定の吸引力を得られなくなるため、電磁コイルの巻線を余分に巻く必要があり、コストが増加する要因になる。
【0026】
また、特許文献1の電磁弁駆動制御装置200では、プランジャーを吸引子の方向に吸引した後は、電磁コイルに最低保持電流を通電し続ける必要があるため、無駄な電力を消費している。
【0027】
一方、特許文献2(特許第4911847号公報)では、電磁弁制御装置を備えた空気調和機が開示されている。
【0028】
すなわち、特許文献2の電磁弁制御装置300は、
図11のブロック図に示したように、四方切換電磁弁の弁コイル302に接続された正特性温度係数素子304と、正特性温度係数素子304に接続された第1スイッチ手段としてのリレー306を備えている。
【0029】
また、弁コイル302にカソードが接続されたダイオードD1と、ダイオードD1のアノードにコレクタが接続された第2スイッチ手段としてのトランジスタQ1を備えている。
【0030】
さらに、リレー306に制御信号を出力するとともに、トランジスタQ1のベースに抵抗R1を介して制御信号を出力する制御部308を備えている。
【0031】
また、リレー306の他端には、空気調和機の圧縮機を駆動するインバータ回路のためのインバータ用電源部310からの直流高電圧(DC280V)が印加され、トランジスタQ1のエミッタに、空気調和機のインバータ回路の制御用電源部312からの直流低電圧(DC16V)が印加されている。
【0032】
これにより、第1スイッチ手段としてのリレー306、第2スイッチ手段としてのトランジスタQ1を切り替えることによって、空気調和機の圧縮機を駆動するためのインバータ用電源部310から直流高電圧(DC280V)が供給され、空気調和機の制御用電源部312から直流低電圧(DC16V)が供給されるので、別に電磁弁駆動用電源を用意する必要がなく、コストを低減することができるように構成されている。
【0033】
しかしながら、この構成は、空気調和機の圧縮機を駆動するためのインバータ用電源部310、空気調和機の制御用電源部312が必要であって、あくまで空気調和機に限って使用できるものであって、その他の用途に汎用的に用いることはできない。
【0034】
また、この場合にも、プランジャーを吸引子の方向に吸引した後は、電磁コイルに最低保持電流を通電し続ける必要があるため、無駄な電力を消費している。
【0035】
このため、本出願人は、特許文献3(特開2014−105722号公報)において、弁座に設けられた弁口を開弁するための開弁駆動期間(A)において、直流高電圧(Va)をソレノイドに印加した後、開弁状態を保持するための保持期間(B)において、直流低電圧(Vb)を印加するように構成するとともに、ソレノイド66への供給電圧を、開弁駆動期間(A)から保持期間(B)に切り替える際に、直流高電圧(Va)から直流低電圧(Vb)に向かって電圧を一定勾配で低下させる電圧低下手段を設けた電磁弁駆動制御装置を提供している。
【0036】
これによって、吸引子またはプランジャーに隈取りコイル(隈取りリング)が不要で、ソレノイド(電磁コイル)の巻線を余分に巻く必要がなく、部材および加工工数が減少して、コストを低減することが可能である。
【0037】
しかも、プランジャーを吸引子の方向に吸引した後において、電磁コイルに最低保持電流を通電し続ける必要があるが、その電流が極めて低く、無駄な電力を消費することがなく、しかも、プランジャーが離脱する現象が発生することがないように構成されている。
【0038】
このような電磁弁はコイル体格が大きくなり、そのため、プランジャーの吸引に要する電力も大きくなってしまう。さらに、このように、コイル体格が大きいと、コイルの浮遊容量が大きくなり、コイルへの電圧印加時に浮遊容量に大きな突入電流が流れることになる。
【0039】
また、このように、突入電流が発生すると、突入電流に起因するノイズが発生し、EMS規格(環境マネジメントシステム(Environmental Management System)規格)を外れるおそれがある。
【0040】
従って、本発明の目的は、交流電源電圧(実効電圧:100Vac〜240Vac)で使用することができ、しかも、コイルの浮遊容量への突入電流をなくして、コイルにエネルギーを蓄積することにより、突入電流に起因するノイズの発生を抑制することができるとともに、省エネが図れる電磁弁駆動制御装置、および、電磁弁駆動制御装置を備えた電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0041】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明の電磁弁駆動制御装置は、
ソレノイドに通電することによってプランジャーを移動させて、プランジャーに設けた弁体が弁座に対して離接移動して、
通電時に弁体が弁座から離反して吸引子に吸着することにより開弁状態となり、非通電時に弁体が弁座に当接して弁閉状態となるように構成した電磁弁駆動制御装置であって、
前記ソレノイドへの通電・遮断を行うスイッチ手段と、
前記スイッチ手段によるソレノイドへの通電を、電源周期のゼロクロスタイミングで通電を開始するように制御するゼロクロスタイミング発生手段と、
前記ソレノイドに流れる電流値を検知する電流検知手段とを備え、
前記ゼロクロスタイミング発生手段の制御によって、前記スイッチ手段によりゼロクロスタイミングでソレノイドへの通電を開始した後、前記電流検知手段により検出したソレノイドに流れる電流値が、所定の設定電流値Iaに達した時に、前記スイッチ手段によりソレノイドへの通電を遮断する遮断モードと、
前記スイッチ手段によりソレノイドへの通電を遮断した後、次のゼロクロスタイミングまでの間、スナバー回路を通してソレノイドに蓄積したエネルギーを放電することにより保持力を発生させ、ソレノイドに流れる電流値が、所定の保持電流値Ib以上になるように設定された保持モードと、
を備えることを特徴とする。
【0042】
このように構成することによって、ゼロクロスタイミング発生手段によって、スイッチ手段によるソレノイドへの通電を、電源周期のゼロクロスタイミングで通電を開始するように制御される。
【0043】
これによって、コイルの浮遊容量への突入電流を抑制することができ、コイルの浮遊容量への突入電流をゼロにして、ソレノイド(電磁コイル)にエネルギーを蓄積することにより、いわゆる「オフ位相制御」によって、ノイズの発生を抑制することが可能である。
【0044】
また、電源電圧が、20V以下では、コイルの浮遊容量への突入電流は、EMC規格の限度値を超えるような値にはならず、省エネが図れることになる。
【0045】
さらに、遮断モードでは、ゼロクロスタイミング発生手段の制御によって、スイッチ手段によりゼロクロスタイミングでソレノイドへの通電を開始した後、電流検知手段により検出したソレノイドに流れる電流値が、所定の設定電流値Iaに達した時に、スイッチ手段によりソレノイドへの通電を遮断するようになっている。
【0046】
また、保持モードでは、スイッチ手段によりソレノイドへの通電を遮断した後、次のゼロクロスタイミングまでの間、スナバー回路を通してソレノイドに蓄積したエネルギーを放電することにより保持力を発生させ、ソレノイドに流れる電流値が、所定の保持電流値Ib以上になるように設定されている。
【0047】
これにより、次のゼロクロスタイミングまでの間、スナバー回路を通してソレノイドに蓄積したエネルギーを放電することにより保持力を発生させ、ソレノイドに流れる電流値が、所定の保持電流値Ib以上になるように設定されているので、ソレノイドへの通電を遮断した後は、電源周期よりも長い保持電流を、例えば、ダイオードを用いたスナバー回路に回路を切り替えることによって、ゆっくり放電し、エネルギーを保持でき、プランジャーを吸引子に吸引状態(開弁状態)に保つことが可能で、省エネが図れることになる。
【0048】
このように、交流電源電圧(実効電圧:100Vac〜240Vac)で使用することができ、しかも、コイルの浮遊容量への突入電流をなくして、コイルにエネルギーを蓄積することにより、突入電流に起因するノイズの発生を抑制することができるとともに、省エネが図れる電磁弁駆動制御装置を提供することができる。
【0049】
また、本発明の電磁弁駆動制御装置は、前記設定電流値が、前記ゼロクロスタイミングでソレノイドへの通電を開始した後、プランジャーが吸引子に吸着する電流値であることを特徴とする。
【0050】
このように設定電流値が、ゼロクロスタイミングでソレノイドへの通電を開始した後、プランジャーが吸引子に吸着する電流値であるので、余分な電流をソレノイドへ印加することがないので、省エネが図れる。
【0051】
また、本発明の電磁弁駆動制御装置は、前記保持電流値が、プランジャーが吸引子に吸着した状態を保持できる電流値であることを特徴とする。
【0052】
このように保持電流値が、プランジャーが吸引子に吸着した状態を保持できる電流値であるので、プランジャーを吸引子に吸引状態(開弁状態)に保つことが可能で、プランジャーが吸引子への吸着状態から離反した脱落状態となることがない。
【0053】
また、本発明の電磁弁駆動制御装置は、前記保持モードにおいて、プランジャーが吸引子への吸着状態から離反した脱落状態を検知する脱落検知手段を備えることを特徴とする。
【0054】
すなわち、本発明の電磁弁駆動制御装置では、前述したように、ソレノイド(電磁コイル)に余分な電流を流さなくするので、例えば、何らかの振動、圧力の変動、冷媒が揺れて引っ張られてしまうなどの原因(外因)で、プランジャーが吸引子に吸着した状態から脱落するおそれがある。
【0055】
このように脱落状態になった場合には、再吸引できないおそれがあるので、保持モードにおいて、万一プランジャーが脱落した場合にも、脱落検知手段によってプランジャーが吸引子への吸着状態から離反した脱落状態を検知して、再度ソレノイドへの通電を開始することによって、プランジャーが吸引子への吸着状態から離反した脱落状態を回避でき、作動性、信頼性が向上する。
【0056】
また、本発明の電磁弁駆動制御装置は、前記脱落検知手段が、前記ゼロクロスタイミングでソレノイドへの通電を開始した時の電流値を電流検知手段で測定して、所定の脱落検知電流値以下であるか否かで判断して脱落を検出するように構成されていることを特徴とする。
【0057】
このように、ゼロクロスタイミングでソレノイドへの通電を開始した時の電流値を電流検知手段で測定して、所定の脱落検知電流値以下であるか否かで判断して脱落を検出するように構成されている。
【0058】
すなわち、プランジャーが吸引子に吸着した状態では、コイルインダクタンスは、例えば、2.5H以上であり、一方、プランジャーが脱落した状態では、コイルインダクタンスは、例えば、1.5H(ヘンリー)以下になる。
【0059】
従って、ゼロクロスタイミングでソレノイドへの通電を開始した時の電流値は、プランジャーが吸引子に吸着した状態(高インダクタンス)では、例えば、21mAを超えることになる。これに対して、プランジャーが脱落した状態の低インダクタンスでは、21mA以下から導通開始することになる。
【0060】
従って、これを指標(所定の脱落検知電流値)として、ゼロクロスタイミングでソレノイドへの通電を開始した時の電流値を電流検知手段で測定して、所定の脱落検知電流値以下であるか否かで判断して脱落を検出すればよい。
【0061】
これにより、脱落検知手段によってプランジャーが吸引子への吸着状態から離反した脱落状態を検知して、再度ソレノイドへの通電を開始することによって、プランジャーが吸引子への吸着状態から離反した脱落状態を回避でき、作動性、信頼性が向上する。
【0062】
また、本発明の電磁弁駆動制御装置は、前記脱落検知手段が、前記ゼロクロスタイミングでソレノイドへの通電を開始した時から、前記電流検知手段により検出したソレノイドに流れる電流値が、前記所定の設定電流値Iaに達した時までの時間を測定して、所定の脱落検知時間であるか否かで判断して脱落を検出するように構成することも可能である。
【0063】
すなわち、脱落検知手段が、ゼロクロスタイミングでソレノイド66への通電を開始した時から、電流検知手段78により検出したソレノイド66に流れる電流値が、所定の設定電流値Iaに達した時までの時間を測定して、所定の脱落検知時間であるか否かで判断して脱落を検出するように構成してもよい(例えば、
図7において、1.3Hの場合のt3を測定して判断する)。
【0064】
また、
図7に示したように、プランジャー46が吸引子34に吸着した状態では、コイルインダクタンスは、例えば、2.5H以上であり、一方、プランジャー46が脱落した状態では、コイルインダクタンスは、例えば、1.5H以下になる。
【0065】
従って、ゼロクロスタイミングでソレノイド66への通電を開始した時の電流値は、プランジャーが吸引子に吸着した状態(高インダクタンス、例えば、
図7において2.5Hの場合)では、例えば、21mAを超えることになる。これに対して、プランジャー46が脱落した状態(低インダクタンス、例えば、
図7において1.3Hの場合)では、21mA以下から導通開始することになる。
【0066】
また、前述したように、遮断モードにおいて、電流検知手段78により検出したソレノイド66に流れる電流値が、所定の設定電流値Ia(例えば、55mA)に達した時で、スイッチ手段68によりソレノイド66への通電を遮断している。
【0067】
従って、
図7に示したように、プランジャー46が吸引子34に吸着した状態(高インダクタンス、例えば、
図7において2.5Hの場合)から通電を遮断して、設定電流値Iaまでに要する時間t2と、プランジャーが脱落した状態(低インダクタンス、例えば、
図7において1.3Hの場合)から通電を遮断して、設定電流値Iaまでに要する時間t1では、電磁コイルの充電時間の影響により、プランジャー46が脱落した状態(低インダクタンス)では、プランジャー46が吸引子34に吸着した状態(高インダクタンス)に比べて、この充電に要する通電時間が短くなる。
【0068】
図7に示したように、この時間差(t2−t1)を測定することにより、プランジャー46の脱落可否を判定することができる。すなわち、ゼロクロスタイミングでソレノイドへ66の通電を開始した時から、電流検知手段78により検出したソレノイド66に流れる電流値が、所定の設定電流値Iaに達した時までの時間を測定して、所定の脱落検知時間以下であるか否かで判断して脱落を検出すればよい。
【0069】
これにより、脱落検知手段によってプランジャーが吸引子への吸着状態から離反した脱落状態を検知して、再度ソレノイドへの通電を開始することによって、プランジャーが吸引子への吸着状態から離反した脱落状態を回避でき、作動性、信頼性が向上する。
【0070】
また、本発明の電磁弁駆動制御装置は、前記ゼロクロスタイミングでソレノイドへの通電を最初に開始した初期通電時から、前記電流検知手段により検出したソレノイドに流れる電流値が、所定の回路保護電流値Icになった際に、前記スイッチ手段によりソレノイドへの通電を遮断する回路保護手段を備えることを特徴とする。
【0071】
すなわち、当初プランジャーが吸引子から離れている状態(吸引されていない状態)は、磁気回路ができないので、小さなインダクタンスを示す(例えば、0.2H)。一方、プランジャーが吸引子に吸着された状態では、ソレノイドに磁気回路ができ、インダクタンスが大きくなる(例えば、2.5H)。
【0072】
従って、最初は、コイル巻線(コイル直流抵抗230Ω)ぐらい抵抗があるので、抵抗値分だけ流れる。すなわち、例えば、200Vであれば1Aの電流が流れることになる。しかしながら、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などのスイッチ手段が、例えば、0.5Aしか流せないので、回路が壊れてしまうので、所定の回路保護電流値(例えば、0.5A)以上流れる状態になれば、通電を遮断して回路を保護する。
【0073】
このように、初期の通電時には、ソレノイド(電磁コイル)のインダクタンスが小さいため、大電流が流れるので、回路保護のために電流遮断保護機能を付与すればよい。
【0074】
このように、ゼロクロスタイミングでソレノイドへの通電を最初に開始した初期通電時から、電流検知手段により検出したソレノイドに流れる電流値が、所定の回路保護電流値Icになった際に、スイッチ手段によりソレノイドへの通電を遮断する回路保護手段を備えるので、回路を効果的に保護することができる。
【0075】
また、本発明の電磁弁は、前述のいずれかに記載の電磁弁駆動制御装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0076】
本発明によれば、ゼロクロスタイミング発生手段によって、スイッチ手段によるソレノイドへの通電を、電源周期のゼロクロスタイミングで通電を開始するように制御される。
【0077】
これによって、コイルの浮遊容量への突入電流を抑制することができ、コイルの浮遊容量への突入電流をゼロにして、ソレノイド(電磁コイル)にエネルギーを蓄積することにより、いわゆる「オフ位相制御」によって、ノイズの発生を抑制することが可能である。
【0078】
また、電源電圧が、20V以下では、コイルの浮遊容量への突入電流は、EMC規格の限度値を超えるような値にはならず、省エネが図れることになる。
【0079】
さらに、遮断モードでは、ゼロクロスタイミング発生手段の制御によって、スイッチ手段によりゼロクロスタイミングでソレノイドへの通電を開始した後、電流検知手段により検出したソレノイドに流れる電流値が、所定の設定電流値Iaに達した時に、スイッチ手段によりソレノイドへの通電を遮断するようになっている。
【0080】
また、保持モードでは、スイッチ手段によりソレノイドへの通電を遮断した後、次のゼロクロスタイミングまでの間、スナバー回路を通してソレノイドに蓄積したエネルギーを放電することにより保持力を発生させ、ソレノイドに流れる電流値が、所定の保持電流値Ib以上になるように設定されている。
【0081】
これにより、次のゼロクロスタイミングまでの間、スナバー回路を通してソレノイドに蓄積したエネルギーを放電することにより保持力を発生させ、ソレノイドに流れる電流値が、所定の保持電流値Ib以上になるように設定されているので、ソレノイドへの通電を遮断した後は、電源周期よりも長い保持電流を、例えば、ダイオードを用いたスナバー回路に回路を切り替えることによって、ゆっくり放電し、エネルギーを保持でき、プランジャーを吸引子に吸引状態(開弁状態)に保つことが可能で、省エネが図れることになる。
【0082】
このように、交流電源電圧(実効電圧:100Vac〜240Vac)で使用することができ、しかも、コイルの浮遊容量への突入電流をなくして、コイルにエネルギーを蓄積することにより、突入電流に起因するノイズの発生を抑制することができるとともに、省エネが図れる電磁弁駆動制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0084】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
(実施例1)
【0085】
図1は、本発明の電磁弁駆動制御装置を適用する電磁弁の縦断面図、
図2は、本発明の電磁弁駆動制御装置の回路図、
図3は、本発明の電磁弁駆動制御装置の制御を示すフローチャート、
図4は、本発明の電磁弁駆動制御装置の制御を示す概略図、
図5は、本発明の電磁弁駆動制御装置の保持モードの状態を示す時間と電流の関係を示すグラフである。
【0086】
図1において、符号10は、全体で本発明の電磁弁駆動制御装置を適用する電磁弁を示している。
【0087】
図1に示したように、電磁弁10は、弁体12を備えた制御部14を備えている。
【0088】
また、この電磁弁10の制御部14は、
図1に示したように、駆動部16が挿通された電磁コイル18を備えている。
【0089】
そして、電磁コイル18は、巻線が巻かれたボビン30とボビン30の周囲を囲むようにモールド樹脂22でモールドされている。さらに、
図1に示したように、電磁コイル18は、磁気フレーム24の内部に装着され、磁気フレーム24を介して駆動部16に固定されている。
【0090】
すなわち、磁気フレーム24の底板部26の中央部に形成された駆動部挿通孔28、ボビン30の駆動部挿通孔32に、駆動部16が挿通されている。そして、駆動部16の吸引子34の上部に形成されたボルト挿通孔36に、磁気フレーム24の上板部38の中央部に形成されたボルト挿通孔40を介して、締結ボルト42が螺合されている。
【0091】
これにより、電磁コイル18が駆動部16に挿通して固定され、電磁弁10の制御部14が構成されている。
【0092】
なお、駆動部16は、プランジャーケース44を備え、このプランジャーケース44内に上下に移動可能な弁体12を固定したプランジャー46を備えている。そして、吸引子34とプランジャー46との間に、プランジャー46を下方に、すなわち、弁座48の方向に弁体12を付勢する付勢バネ50が介装されている。
【0093】
このような電磁弁10は、電磁コイル18に通電することにより、プランジャー46が、付勢バネ50に抗して吸引子34方向に移動し、プランジャー46に連結された弁体12が、弁座48から離反して、弁口52が開放されるようになっている。
【0094】
また、電磁コイル18への通電を遮断することにより、プランジャー46が、付勢バネ50の付勢力により、吸引子34から離反する方向に移動し、プランジャー46に連結された弁体12が、弁座48に当接して、弁口52が閉止されるようになっている。
【0095】
さらに、
図9に示した従来の電磁弁100では、吸引子124に環状の隈取りコイル(隈取りリング)148が設けられていたが、
図1に示したように、本発明の電磁弁駆動制御装置を適用する電磁弁10では、吸引子34またはプランジャー46のいずれにも、このような隈取りコイル(隈取りリング)が設けられていない構造である。
【0096】
図2は、本発明の電磁弁駆動制御装置60を示す回路図であり、この実施例では、一例として、交流電源を用いて、このような構成の電磁弁10の駆動を制御する実施例を示している。
【0097】
なお、本発明の電磁弁駆動制御装置60は、交流電源、直流電源(脈動電流)のいずれにおいても使用できるものである。直流電源の場合には、後述する全波整流回路64を省略すれば良い。本発明は、コイルの浮遊容量に充電電流が発生しないことを特徴としているので、例えば0V〜20V以下の所定電圧においてクロスするタイミングがある直流電源(例えば、矩形波・三角波)で使用可能である。
【0098】
この実施例の電磁弁駆動制御装置60は、例えば、商用の実効電圧:100V〜240Vの単相交流電源からなる交流電源62を備えており、交流電源62からの交流電流は、ダイオードブリッジから構成される全波整流回路64によって、全波整流が行われ、直流電流が発生されるようになっている。
【0099】
そして、
図2に示したように、この全波整流回路64からの交流電流は、電磁弁10のソレノイド66(電磁コイル18)に通電され、ソレノイド66を駆動させるように構成されている。これにより、プランジャー46が、付勢バネ50に抗して吸引子34方向に移動し、プランジャー46に連結された弁体12が、弁座48から離反して、弁口52が開放されるようになっている。
【0100】
この場合、このように全波整流回路64によって全波整流して、直流電流に変換することによって、電磁弁10には、吸引子34またはプランジャー46のいずれにも隈取りコイルを設ける必要がないので、プランジャー46を吸引するために必要な磁束は同じでも、隈取りコイルをなくすことにより、ソレノイド66の電磁コイル18の巻線を余分に巻く必要がなく、部材および加工工数が減少して、コストを低減することが可能である。
【0101】
また、プランジャー46を吸引するために必要な磁束は同じでも、隈取りコイルをなくすことにより、プランジャー46の磁気抵抗が低下し、直流駆動に近づくため、見掛けのインダクタンスが小さくなるので、電磁コイル18のコイルサイズを下げることができる。
【0102】
また、この実施例の電磁弁駆動制御装置60では、
図2に示したように、全波整流回路64で全波整流された電流は、電磁弁10のソレノイド66の一端にプラス側電源として接続されている。
【0103】
また、電磁弁10のソレノイド66の他端には、ソレノイド66への通電・遮断を行う、例えばMOSFETなどのスイッチ手段68が接続されている。
【0104】
さらに、電磁弁10のソレノイド66は、通電遮断時にソレノイド66に還流する電流還流部材として、例えば、ダイオードを用いたスナバー回路70が接続されている。
【0105】
このように構成することによって、例えば、フライホイールダイオードを電流還流部材として用いることによって、ソレノイド66への通電を遮断する期間において、ソレノイド66(電磁コイル18)に電流を流すことができるので、プランジャーが振動することがなく、しかも、ゆっくり放電し、エネルギーを保持できるように構成されている。
【0106】
また、電磁弁駆動制御装置60は、
図2に示したように、スイッチ手段68によるソレノイド66への通電を、後述するように、単相交流電源の電源周期のゼロクロスタイミングで通電を開始するように制御するゼロクロスタイミング発生手段72を備えている。
【0107】
すなわち、具体的には、
図2に示したように、このゼロクロスタイミング発生手段72は、単相交流電源の電源周期のゼロクロスを検出するためのゼロクロス検出回路74と、スイッチ手段68によるソレノイド66への通電・遮断を制御するタイミング発生回路76とを備えている。
なお、このゼロクロス検出回路74は、
図2に示した回路以外にも、周知のゼロクロス検出回路74を用いることができる。
【0108】
また、電磁弁駆動制御装置60は、
図2に示したように、ソレノイド66に流れる電流値を検知する電流検知手段78を備えている。
【0109】
すなわち、具体的には、
図2に示したように、この電流検知手段78は、ソレノイド66に流れる電流値を検知する電流検出抵抗80(R7)と、後述するように、所定の設定電流値Iaと、所定の保持電流値Ibを検出するために、コンパレーターからなる電流リミット比較回路82から構成されている。
【0110】
このように構成される電磁弁駆動制御装置60では、
図3に示したフローチャートに示したように制御される。
【0111】
先ず、
図3、
図4に示したように、初期モードが開始される。すなわち、
図3に示したように、ステップS1において、コイル通電シーケンスが開始され、ステップS2において、通電時間のタイマー計測が開始される。
【0112】
そして、
図3に示したように、ステップS3において、コイル通電が開始される。すなわち、
図3、
図4に示したように、ゼロクロスタイミング発生手段72のゼロクロス検出回路74において、単相交流電源の電源周期のゼロクロスを検出して、タイミング発生回路76により、スイッチ手段68によるソレノイド66への通電を、単相交流電源の電源周期のゼロクロスタイミング(
図4のA1〜A3参照)で通電を開始する。
【0113】
次に、
図3に示したように、ステップS4において、所定の初期通電時間が経過したか否かが判断される。具体的には、最初は最大でも1秒以内(所定時間)経過したか否かが、
ノイズ規格(1秒以内)に従って、例えば、40msecの時間が経過したか否かが判断される。
【0114】
そして、ステップS4において、所定の初期通電時間が経過したと判断された場合には、ステップS5に進み、電流検知手段78により検出したソレノイド66に流れる電流値が、所定の設定電流値Iaに達した否かが判断される(
図4参照)。
【0115】
すなわち、この設定電流値Iaは、ゼロクロスタイミングでソレノイド66への通電を開始した後、プランジャー46が吸引子34に吸着する電流値であり、
図5に示したように、例えば、55mAに設定されている。
【0116】
このように設定電流値Iaが、ゼロクロスタイミングでソレノイド66への通電を開始した後、プランジャー46が吸引子34に吸着する電流値であるので、余分な電流をソレノイド66へ印加することがないので、省エネが図れる。
【0117】
そして、
図2、ステップS5において、ソレノイド66に流れる電流値が、所定の設定電流値Iaに達したと判断された場合(時に)には、ステップS6において、スイッチ手段68によりソレノイド66への通電を遮断する遮断モードに移行する(
図4、
図5の実線参照)。
【0118】
一方、ステップS5において、ソレノイド66に流れる電流値が、所定の設定電流値Iaに達していないと判断された場合には、再び、ステップS5に戻り、電流検知手段78により検出したソレノイド66に流れる電流値が、所定の設定電流値Iaに達した否かが判断される。
【0119】
そして、ステップS6において、スイッチ手段68によりソレノイド66への通電を遮断する遮断モードに移行した後、ステップS7において、単相交流電源の電源周期のゼロクロスであるか否かが判断される。
【0120】
すなわち、
図4に示したように、ステップS7において、ゼロクロスタイミング発生手段72のゼロクロス検出回路74において、単相交流電源の電源周期のゼロクロスを検出して、単相交流電源の電源周期のゼロクロスであると判断された場合には、ステップS3に戻り、タイミング発生回路76により、スイッチ手段68によるソレノイド66への通電を、単相交流電源の電源周期のゼロクロスタイミングで通電を開始する(
図4、
図5の実線参照)。
【0121】
一方、ステップS7において、単相交流電源の電源周期のゼロクロスでないと判断された場合には、再び、ステップS7において、単相交流電源の電源周期のゼロクロスであるか否かが判断される。
【0122】
以下、ステップS3〜ステップS7が繰り返され、
図4に示したように、保持モード(定常モード)に移行する。
【0123】
この場合、
図4に示したように、スイッチ手段68によりソレノイド66への通電を遮断した後、次のゼロクロスタイミングまでの間、スナバー回路70を通してソレノイド66に蓄積したエネルギーを放電することにより保持力を発生させ、ソレノイド66に流れる電流値が、所定の保持電流値Ib以上になるように設定された保持モードが維持される。
【0124】
すなわち、この保持電流値Ibは、プランジャー46が吸引子34に吸着した状態を保持できる電流値であり、例えば、
図5に示したように、21mAに設定されている。
【0125】
このように、保持電流値Ibが、プランジャー46が吸引子34に吸着した状態を保持できる電流値であるので、プランジャー46が吸引子34に吸引状態(開弁状態)に保つことが可能で、プランジャー46が吸引子34への吸着状態から離反した脱落状態となることがない。
【0126】
また、本発明の電磁弁駆動制御装置60では、ゼロクロスタイミングでソレノイド66への通電を最初に開始した初期通電時から、電流検知手段78により検出したソレノイド66に流れる電流値が、所定の回路保護電流値Icになった際に、スイッチ手段68によりソレノイド66への通電を遮断する回路保護手段を備えている。
【0127】
すなわち、
図3において、ステップS4において、所定の初期通電時間が経過していないと判断された場合には、ステップS8において、電流検知手段78により検出したソレノイド66に流れる電流値が、所定の回路保護電流値Icになったか否かが判断される。
【0128】
そして、ステップS8において、電流検知手段78により検出したソレノイド66に流れる電流値が、所定の回路保護電流値Icになったと判断された場合には、ステップS6において、スイッチ手段68によりソレノイド66への通電を遮断する遮断モードに移行する。
【0129】
一方、ステップS8において、電流検知手段78により検出したソレノイド66に流れる電流値が、所定の回路保護電流値Icでないと判断された場合には、ステップS4に戻り、所定の初期通電時間が経過したか否かが判断される。
【0130】
すなわち、当初プランジャー46が吸引子34から離れている状態(吸引されていない状態)は、磁気回路ができないので、小さなインダクタンスを示す(例えば、0.2H)。一方、プランジャー46が吸引子34に吸着された状態では、ソレノイド66に磁気回路ができ、インダクタンスが大きくなる(例えば、2.5H)。
【0131】
従って、最初は、コイル巻線は、直流抵抗が200Ωぐらいあるので、その分だけ電流が流れる。すなわち、例えば、200Vであれば1Aの電流が流れることになる。しかしながら、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などのスイッチ手段68が、例えば、0.5Aしか流せないので、回路が壊れてしまうので、所定の回路保護電流値(例えば、0.5A)以上流れる状態になれば、通電を遮断して回路を保護する。
【0132】
このように、初期の通電時には、ソレノイド66の電磁コイル18のインダクタンスが小さいので、大電流が流れるので、回路保護のために電流遮断保護機能を付与すればよい。
【0133】
このように、ゼロクロスタイミングでソレノイド66への通電を最初に開始した初期通電時から、電流検知手段78により検出したソレノイド66に流れる電流値が、所定の回路保護電流値Icになった際に、スイッチ手段68によりソレノイド66への通電を遮断する回路保護手段を備えるので、回路を効果的に保護することができる。
【0134】
このように構成される本発明の本発明の電磁弁駆動制御装置60では、ゼロクロスタイミング発生手段72によって、スイッチ手段68によるソレノイド66への通電を、単相交流電源の電源周期のゼロクロスタイミングで通電を開始するように制御される。
【0135】
これによって、コイルの浮遊容量への突入電流を抑制することができ、コイルの浮遊容量への突入電流をゼロにして、ソレノイド66の電磁コイル18にエネルギーを蓄積することにより、いわゆる「オフ位相制御」によって、ノイズの発生を抑制することが可能である。
【0136】
また、電源電圧が、例えば、20V以下では、コイルの浮遊容量への突入電流は、EMC規格の限度値を超えるような値にはならず、省エネが図れることになる。
【0137】
さらに、遮断モードでは、ゼロクロスタイミング発生手段72の制御によって、スイッチ手段68によりゼロクロスタイミングでソレノイド66への通電を開始した後、電流検知手段78により検出したソレノイド66に流れる電流値が、所定の設定電流値Iaに達した時に、スイッチ手段68によりソレノイド66への通電を遮断するようになっている。
【0138】
また、保持モードでは、スイッチ手段68によりソレノイド66への通電を遮断した後、次のゼロクロスタイミングまでの間、スナバー回路70を通してソレノイド66に蓄積したエネルギーを放電することにより保持力を発生させ、ソレノイド66に流れる電流値が、所定の保持電流値Ib以上になるように設定されている。
【0139】
これにより、次のゼロクロスタイミングまでの間、スナバー回路70を通してソレノイド66に蓄積したエネルギーを放電することにより保持力を発生させ、ソレノイド66に流れる電流値が、所定の保持電流値Ib以上になるように設定されているので、ソレノイド66への通電を遮断した後は、電源周期よりも長い保持電流を、例えば、ダイオードを用いたスナバー回路に回路を切り替えることによって、ゆっくり放電し、エネルギーを保持でき、プランジャー46を吸引子34に吸引状態(開弁状態)に保つことが可能で、省エネが図れることになる。
【0140】
このように、交流電源電圧(実効電圧:100Vac〜240Vac)で使用することができ、しかも、コイルの浮遊容量への突入電流をなくして、コイルにエネルギーを蓄積することにより、突入電流に起因するノイズの発生を抑制することができるとともに、省エネが図れる電磁弁駆動制御装置60を提供することができる。
(実施例2)
【0141】
図6は、本発明の別の実施例の電磁弁駆動制御装置の制御を示すフローチャート、
図7は、
図6の電磁弁駆動制御装置の制御を示す時間と電流の関係を示すグラフ、
図8は、
図6の電磁弁駆動制御装置の制御を示すフローチャートである。
【0142】
この実施例の電磁弁駆動制御装置60では、上記実施例の電磁弁駆動制御装置60の
図3に示したフローチャートと同様なステップS1〜ステップS8までは、同様であるのでその詳細な説明は省略する。
【0143】
この実施例の電磁弁駆動制御装置60では、保持モードにおいて、プランジャー46が吸引子34への吸着状態から離反した脱落状態を検知する脱落検知手段を備えている。
【0144】
すなわち、本発明の電磁弁駆動制御装置60では、前述したように、ソレノイド66の電磁コイル18に余分な電流を流さなくするので、例えば、何らかの振動、圧力の変動、冷媒が揺れて引っ張られてしまうなどの原因(外因)で、プランジャー46が吸引子34に吸着した状態から脱落するおそれがある。
【0145】
このように脱落状態になった場合には、再吸引できないおそれがあるので、保持モードにおいて、万一プランジャー46が脱落した場合にも、脱落検知手段によってプランジャー46が吸引子34への吸着状態から離反した脱落状態を検知して、再度ソレノイド66への通電を開始することによって、プランジャー46が吸引子34への吸着状態から離反した脱落状態を回避でき、作動性、信頼性が向上するように構成されている。
【0146】
具体的には、
図6に示したように、ステップS6とステップS7との間に、ステップS9において、プランジャー46が吸引子34から脱落したか否か、すなわち、プランジャー46の脱落が検出されたか否かが判断されるようになっている。
【0147】
そして、ステップS9において、プランジャー46が吸引子34から脱落したと判断された場合には、ステップS2に戻り、ステップS2において、通電時間のタイマー計測が開始され、ステップS3において、コイル通電が開始される。
【0148】
一方、ステップS9において、プランジャー46が吸引子34から脱落していないと判断された場合には、ステップS7において、単相交流電源の電源周期のゼロクロスであるか否かが判断される。
【0149】
この場合、
図8に示したように、脱落検知手段が、ゼロクロスタイミングでソレノイド66への通電を開始した時の電流値を電流検知手段78で測定して、所定の脱落検知電流値Id以下であるか否かで判断して脱落を検出するように構成されている。
【0150】
このように、ゼロクロスタイミングでソレノイド66への通電を開始した時の電流値を電流検知手段78で測定して、所定の脱落検知電流値Id以下であるか否かで判断して脱落を検出すればよい(
図8のB部参照)。
【0151】
すなわち、プランジャー46が吸引子34に吸着した状態では、コイルインダクタンスは、
図8に示したように、例えば、2.5H以上であり、一方、プランジャー46が脱落した状態では、コイルインダクタンスは、例えば、1.5H以下になる。
【0152】
従って、ゼロクロスタイミングでソレノイド66への通電を開始した時(瞬間)の電流値は、プランジャー46が吸引子34に吸着した状態(高インダクタンス)では、例えば、21mAを超えることになる。これに対して、プランジャー46が脱落した状態の低インダクタンス(
図8では、実線の2.5H以外)では、21mA以下から導通開始することになる。
【0153】
従って、これを指標(所定の脱落検知電流値Id)として、ゼロクロスタイミングでソレノイド66への通電を開始した時の電流値を電流検知手段78で測定して、所定の脱落検知電流値Id以下であるか否かで判断して脱落を検出すればよい(
図8のB部参照)。
【0154】
これにより、脱落検知手段によってプランジャー46が吸引子34への吸着状態から離反した脱落状態を検知して、再度ソレノイドへ66の通電を開始することによって、プランジャー46が吸引子34への吸着状態から離反した脱落状態を回避でき、作動性、信頼性が向上する。
【0155】
また、脱落検知手段が、ゼロクロスタイミングでソレノイド66への通電を開始した時から、電流検知手段78により検出したソレノイド66に流れる電流値が、所定の設定電流値Iaに達した時までの時間を測定して、所定の脱落検知時間であるか否かで判断して脱落を検出するように構成してもよい(例えば、
図7において、1.3Hの場合のt3を測定して判断する)。
【0156】
また、
図7に示したように、プランジャー46が吸引子34に吸着した状態では、コイルインダクタンスは、例えば、2.5H以上であり、一方、プランジャー46が脱落した状態では、コイルインダクタンスは、例えば、1.5H以下になる。
【0157】
従って、ゼロクロスタイミングでソレノイド66への通電を開始した時の電流値は、プランジャーが吸引子に吸着した状態(高インダクタンス、例えば、
図8において2.5Hの場合)では、例えば、21mAを超えることになる。これに対して、プランジャー46が脱落した状態(低インダクタンス、例えば、
図8において1.3Hの場合)では、21mA以下から導通開始することになる。
【0158】
また、前述したように、遮断モードにおいて、電流検知手段78により検出したソレノイド66に流れる電流値が、所定の設定電流値Ia(例えば、55mA)に達した時で、スイッチ手段68によりソレノイド66への通電を遮断している。
【0159】
従って、
図7に示したように、プランジャー46が吸引子34に吸着した状態(高インダクタンス、例えば、
図7において2.5Hの場合)から通電を遮断して、設定電流値Iaまでに要する時間t2と、プランジャーが脱落した状態(低インダクタンス、例えば、
図7において1.3Hの場合)から通電を遮断して、設定電流値Iaまでに要する時間t1では、電磁コイルの充電時間の影響により、プランジャー46が脱落した状態(低インダクタンス)では、プランジャー46が吸引子34に吸着した状態(高インダクタンス)に比べて、この充電に要する通電時間が短くなる。
【0160】
図7に示したように、この時間差(t2−t1)を測定することにより、プランジャー46の脱落可否を判定することができる。すなわち、ゼロクロスタイミングでソレノイドへ66の通電を開始した時から、電流検知手段78により検出したソレノイド66に流れる電流値が、所定の設定電流値Iaに達した時までの時間を測定して、所定の脱落検知時間以下であるか否かで判断して脱落を検出すればよい。
【0161】
これにより、脱落検知手段によってプランジャー46が吸引子34への吸着状態から離反した脱落状態を検知して、再度ソレノイド66への通電を開始することによって、プランジャー46が吸引子34への吸着状態から離反した脱落状態を回避でき、作動性、信頼性が向上する。
【0162】
この場合、充電時間には電源電圧依存性があるので、電源電圧で導通時間の判定値を変更する必要がある。
【0163】
すなわち、コイルと電源電圧によって充電時間が変わり、電源電圧が大きいと時間が短くなる。そのために、例えば、110Vより高い電圧なのか、低い電圧なのかによって、ソレノイド66へ通電している時間が短いか長いか検出しなければならない。すなわち、これを比較するため、高い電源電圧では、判定時間を短くしなければならない。
【0164】
従って、例えば、
図8に示したフローチャートのように制御すればよい。
【0165】
すなわち、ステップS11において判定を開始する。そして、ステップS12において、電源電圧が所定の電源電圧V(例えば、110V)より小さいか否かが判断される。
【0166】
そして、ステップS12において、電源電圧が所定の電源電圧V(例えば、110V)より小さいと判断された場合には、ステップS13において、通電時間が、所定の通電時間T1(例えば、1.3msec)より大きいか否か判断される。
【0167】
そして、ステップS13において、通電時間が、所定の通電時間T1(例えば、1.3msec)より大きいと判断された場合には、ステップS14において、プランジャー46が吸引子34への吸着状態であり、吸引判定がされる。
【0168】
一方、ステップS13において、通電時間が、所定の通電時間T1(例えば、1.3msec)より小さいと判断された場合には、ステップS15において、プランジャー46が吸引子34から脱落した状態であり、脱落判定がされる。
【0169】
また、ステップS12において、電源電圧が所定の電源電圧V(例えば、110V)より大きいと判断された場合には、ステップS16において、通電時間が、所定の通電時間T2(例えば、0.8msec)より大きいか否か判断される。
【0170】
そして、ステップS16において、通電時間が、所定の通電時間T2(例えば、0.8msec)より大きいと判断された場合には、ステップS14において、プランジャー46が吸引子34への吸着状態であり、吸引判定がされる。
【0171】
一方、ステップS16において、通電時間が、所定の通電時間T2(例えば、0.8msec)より小さいと判断された場合には、ステップS15において、プランジャー46が吸引子34から脱落した状態であり、脱落判定がされる。
なお、これらの所定の電源電圧V、所定の通電時間T1、所定の通電時間T2などは、予め測定、決定してデーターベース化して、記憶部に記憶して用いれば良い。
【0172】
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、上記の実施例では、電磁弁駆動制御装置60として、交流電源を用いた実施例について説明したが、本発明の電磁弁駆動制御装置60は、交流電源、直流電源(脈動電流)のいずれにおいても使用できるものであって、直流電源の場合には、全波整流回路64を省略すれば良い。
【0173】
また、本発明は、コイルの浮遊容量に充電電流が発生しないことを特徴としているので、例えば0V〜20V以下の所定電圧においてクロスするタイミングがある直流電源(例えば、矩形波・三角波)で使用可能である。
【0174】
さらに、上記実施例では、ソレノイド66に、通電遮断時にソレノイド66に還流する電流還流部材として、フライホイールダイオードを用いたが、例えば、RCスナバー回路などを電流還流部材として用いることができるなど本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0175】
本発明は、力率の悪化を許容すれば、隈取りコイル(隈取りリング)を有している電磁弁でも使用可能である。